(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035464
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142336
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB03
2C056EB27
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC77
2C056EC79
2C056EE17
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA42
2C056HA44
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】複数の突起を有する印刷層を印刷する際、複数の突起の一部が重なった状態で印刷され難い。
【解決手段】プリンタ10は、媒体5に印刷層72Aを印刷するように制御する制御装置60を備える。印刷層72Aは、少なくとも3つの突起75Aを有する。制御装置60は、印刷層72Aにおいて隣り合う2つの突起75Aの突起間隔L3Aを取得する取得部62と、最小の突起間隔L3Aを除いた突起間隔L3Aの中から、1つの突起間隔L3Aを基準間隔RL1Aとして選択し、基準間隔RL1Aを成す2つの突起75Aを基準突起R1Aとして選択する選択部63と、2つの基準突起R1Aを結ぶ軸A1Aが向く方向を基準方向RD1Aとして決定する基準方向決定部64と、基準方向RD1Aが、主走査方向Yまたは副走査方向Xに合うように、印刷層72Aを媒体5に印刷する印刷制御部65と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記支持台に支持された媒体と、前記インクヘッドとの主走査方向の相対的な位置を移動させる第1移動機構と、
前記支持台に支持された媒体と、前記インクヘッドとの副走査方向の相対的な位置を移動させる第2移動機構と、
媒体に印刷層を印刷するように制御を行う制御装置と、
を備え、
前記印刷層は、インクによって形成された少なくとも3つの突起を有し、
前記制御装置は、
前記印刷層に関する印刷データが記憶された記憶部と、
前記印刷データに基づいて、前記印刷層において隣り合う2つの前記突起の突起間隔を取得する取得部と、
最小の前記突起間隔を除いた前記突起間隔の中から、1つの前記突起間隔を基準間隔として選択し、前記基準間隔を成す2つの前記突起を基準突起として選択する選択部と、
2つの前記基準突起を結ぶ軸が向く方向を基準方向として決定する基準方向決定部と、
前記基準方向が、前記主走査方向または前記副走査方向に合うように、前記印刷データに基づいて前記印刷層を媒体に印刷するように制御を行う印刷制御部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記印刷データに基づいた前記印刷層の複数の前記突起は、所定の格子間隔で格子状に配置されている、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された印刷データには、前記格子間隔と、前記突起の大きさに関する情報が少なくとも含まれている、請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記選択部は、前記格子間隔よりも大きい前記突起間隔の1つを前記基準間隔として選択する、請求項2または3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記格子間隔は、500μm以下である、請求項2から4までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記印刷データに基づいた前記印刷層の複数の前記突起は、多角形で示された格子状に配置されている、請求項2から5までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記印刷データに基づいた前記印刷層の複数の前記突起は、正方形で示された格子状に配置され、
前記選択部は、前記正方形の対角線上の2つの前記突起の前記突起間隔を前記基準間隔として選択する、請求項2から6までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項8】
平面視における前記突起の最大寸法は、1mm以下である、請求項1から7までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記突起の平面形状は、円形状である、請求項1から8までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項10】
前記制御装置は、前記インクヘッドにおける前記主走査方向の吐出タイミングのズレである吐出誤差と、前記支持台に支持された媒体と前記インクヘッドとの前記副走査方向における相対的な位置の移動のズレである移動誤差とに基づいて、前記基準方向を合わせる向きを、前記主走査方向か前記副走査方向に決定する印刷方向決定部を備え、
前記印刷制御部は、前記基準方向が、前記印刷方向決定部によって決定された方向に合うように、前記印刷データに基づいて前記印刷層を媒体に印刷するように制御を行う、請求項1から9までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項11】
前記制御装置は、前記吐出誤差と前記移動誤差とのうちのどちらの誤差が大きいかを利用者から取得する誤差取得部を備え、
前記印刷方向決定部は、前記誤差取得部によって前記吐出誤差が前記移動誤差以上のことを取得した場合、前記基準方向を合わせる向きを前記主走査方向に決定し、前記移動誤差が前記吐出誤差よりも大きいことを取得した場合、前記基準方向を合わせる向きを前記副走査方向に決定する、請求項10に記載されたプリンタ。
【請求項12】
前記印刷層は、
複数の第1突起を有する第1印刷領域と、
複数の第2突起を有する第2印刷領域と、
を備え、
前記第1印刷領域における前記第1突起の第1配列間隔は、前記第2印刷領域における前記第2突起の第2配列間隔と異なっており、
前記制御装置は、
前記第1印刷領域における前記第1配列間隔のうちの最小の間隔である第1最小間隔と、前記第2印刷領域における前記第2配列間隔のうちの最小の間隔である第2最小間隔とを取得する最小間隔取得部と、
前記第1最小間隔が前記第2最小間隔以下の場合、前記第1印刷領域を基準領域に決定すると共に前記第1突起を基準領域突起に決定し、前記第1最小間隔が前記第2最小間隔より大きい場合、前記第2印刷領域を前記基準領域に決定すると共に前記第2突起を前記基準領域突起に決定する領域決定部と、
を備え、
前記算出部は、前記基準領域において隣り合う2つの前記基準領域突起の前記突起間隔を算出し、
前記選択部は、前記基準領域において、最小の前記突起間隔を除いた前記突起間隔の中から、1つの前記突起間隔を前記基準間隔として選択し、前記基準間隔を成す2つの前記基準領域突起を前記基準突起として選択する、請求項1から11までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項13】
前記インクヘッドは、クリアインクを吐出する第1インクヘッドを有し、
前記印刷制御部は、媒体にクリアインクを吐出することで前記印刷層を印刷するように制御を行う、請求項1から12までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項14】
前記インクヘッドは、
クリアインクを吐出する第1インクヘッドと、
カラーインクを吐出する第2インクヘッドと、
を有し、
前記印刷制御部は、媒体にクリアインクおよびカラーインクを吐出することで前記印刷層を印刷するように制御を行う、請求項1から12までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、記録媒体の表面に質感を与えるために、記録媒体に凹凸層を印刷して印刷物を作製するプリンタが開示されている。プリンタは、主走査方向に沿って移動可能に構成され、インクを吐出する記録ヘッドと、主走査方向と直交する副走査方向に記録媒体を搬送させる搬送ローラとを備えている。記録ヘッドと記録媒体とを主走査方向または副走査方向に相対的に移動させ、記録媒体にインクを吐出させることで凹凸層を形成することができる。
【0003】
この凹凸層は、凹部と凸部とから構成されている。凹凸層は、規則的な万線パターンで凹凸が形成されている。凹部および凸部は、所定の方向(万線パターンの線方向という。)に延びた線状のものである。凹部と凸部とは、万線パターンの線方向と直交する方向に沿って交互に配置されている。
【0004】
特許文献1に開示されたプリンタでは、副走査方向における印刷の位置ズレよりも、主走査方向における印刷の位置ズレの方が大きい傾向がある。そのため、万線パターンの線方向を主走査方向に合わせて凹凸層を印刷することで、凹凸層の万線パターンの再現精度を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、凹凸層は、万線パターンではないパターンで凹凸が形成されることがあり得る。例えば凹凸層は、複数の突起を有する印刷層であり得る。この印刷層では、例えば複数の突起が、互いに直交する第1方向と第2方向とに沿って等間隔で配置されている。突起は、印刷層を有する印刷物を触れたときに触感を与えるものである。突起同士の間隔は、より小さいことがあり得る。そのため、仮に印刷層の第1方向と主走査方向を合わせて印刷層を印刷すると、主走査方向の印刷の位置ズレに起因して、複数の突起の一部が重なって印刷される、すなわち凝集した状態で印刷されるおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の突起を有する印刷層を印刷する際、複数の突起の一部が凝集して重なった状態で印刷され難いプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、媒体を支持する支持台と、インクを吐出するインクヘッドと、前記支持台に支持された媒体と、前記インクヘッドとの主走査方向の相対的な位置を移動させる第1移動機構と、前記支持台に支持された媒体と、前記インクヘッドとの副走査方向の相対的な位置を移動させる第2移動機構と、媒体に印刷層を印刷するように制御を行う制御装置と、を備えている。前記印刷層は、インクによって形成された少なくとも3つの突起を有している。前記制御装置は、記憶部と、取得部と、選択部と、基準方向決定部と、印刷制御部と、を備えている。前記記憶部には、前記印刷層に関する印刷データが記憶されている。前記取得部は、前記印刷データに基づいて、前記印刷層において隣り合う2つの前記突起の突起間隔を取得する。前記選択部は、最小の前記突起間隔を除いた前記突起間隔の中から、1つの前記突起間隔を基準間隔として選択し、前記基準間隔を成す2つの前記突起を基準突起として選択する。前記基準方向決定部は、2つの前記基準突起を結ぶ軸が向く方向を基準方向として決定する。前記印刷制御部は、前記基準方向が、前記主走査方向または前記副走査方向に合うように、前記印刷データに基づいて前記印刷層を媒体に印刷するように制御を行う。
【0009】
例えば最小の突起間隔を成す2つの突起を結ぶ軸の方向を、主走査方向または副走査方向に合わせて印刷層を印刷すると、主走査方向によるインクの吐出タイミングのズレに起因した吐出誤差、または、副走査方向に媒体が移動するときのズレに起因した移動誤差によって、複数の突起の一部が凝集して重なった状態で印刷されることがあり得る。しかしながら、上記プリンタでは、最小の突起間隔を除いた突起間隔の中から、1つの突起間隔を成す2つの突起を結ぶ軸の方向を基準方向にする。そして、基準方向が主走査方向または副走査方向に合うように、印刷層の向きを変えて印刷する。このことで、主走査方向または副走査方向に沿った突起の間隔を比較的に大きくすることができる。よって、吐出誤差や移動誤差に起因して、複数の突起が凝集して重なった状態で印刷層が印刷され難くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の突起を有する印刷層を印刷する際、複数の突起の一部が凝集して重なった状態で印刷され難いプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
【
図2】カバーが開いた状態のプリンタを示す正面図である。
【
図3】第1実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図4】キャリッジ、インクヘッドおよび光照射装置を示す底面図である。
【
図6】第1実施形態に係る印刷物の第2印刷層を示す平面図である。
【
図7】印刷の制御手順を示したフローチャートである。
【
図8】印刷の制御手順を説明するための第2印刷層の平面図である。
【
図9】
図8に示す第2印刷層の基準方向を主走査方向に合わせた図である。
【
図10】
図6に示す第2印刷層の基準方向を主走査方向に合わせた図である。
【
図11】
図6に示す第2印刷層の基準方向を副走査方向に合わせた図である。
【
図12】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層の平面図である。
【
図13】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層の平面図である。
【
図14】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層の平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る印刷物の第2印刷層を示す平面図である。
【
図16】第2実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に関する実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0013】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係るプリンタ10について説明する。
図1、
図2は、それぞれ本実施形態に係るプリンタ10の斜視図、正面図である。
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図面中において、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号Y、Xは、それぞれ主走査方向、副走査方向を示している。例えば主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0014】
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5にインクを吐出して、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は、例えば紙である。ただし、媒体5の種類は特に限定されない。例えば媒体5は、PCV、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、金属板、ガラス板、木材板などの比較的に厚みを有するものであってもよい。また、媒体5は、例えばスマートフォンケースなどの立体物であってもよい。
【0015】
プリンタ10は、インクジェット式のプリンタ、すなわちインクジェットプリンタである。本実施形態では、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであり、後述の支持台40(
図2参照)が副走査方向Xに移動することで、媒体5も副走査方向Xに移動する。ただし、プリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであってもよく、ロール状の媒体5のみを副走査方向Xに移動させるものであってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ10は、ケース11と、カバー12とを備えている。ケース11は、例えば直方体形状であり、内部空間を有している。当該内部空間において、媒体5に対して印刷が行われる。
図2に示すように、ケース11の前部には開口15が形成されている。
【0017】
カバー12は、開口15を開閉自在にケース11に支持されている。カバー12は、後端を軸に回転可能に構成されている。
図1に示すように、カバー12の前部および上部には、窓16が設けられている。窓16は、透明または半透明の部材、例えばアクリル板によって形成されている。利用者は、窓16を通じてケース11の内部空間を視認することができる。
【0018】
次に、プリンタ10の内部構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド22と、光照射装置30と、支持台40とを備えている。
【0019】
ガイドレール18は、ケース11の内部空間においてケース11に固定されている。ガイドレール18は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ20は、ガイドレール18に摺動自在に係合している。キャリッジ20は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0020】
インクヘッド22は、支持台40に支持された媒体5に対してインクを吐出する。インクヘッド22は、キャリッジ20に設けられている。インクヘッド22は、キャリッジ20と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。なお、インクヘッド22の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド22の数は4つである。4つのインクヘッド22は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0021】
図4は、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30を示す底面図である。
図4に示すように、インクヘッド22は、ノズル面23を有している。ノズル面23は、インクヘッド22の底面を構成している。ノズル面23は、キャリッジ20から下方に露出している。1つのノズル面23には、複数のノズル24が形成されている。本実施形態では、1つのノズル面23における複数のノズル24は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここでは、副走査方向Xに並んだ複数のノズル24の列のことをノズル列25という。本実施形態では、1つのノズル面23におけるノズル列25の数は2つである。しかしながら、1つのノズル面23におけるノズル列25の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0022】
本実施形態では、インクヘッド22のノズル列25毎に、ノズル24から異なる色のインクが吐出される。ノズル24から吐出されるインクは、例えばカラーインクまたは特色インクである。カラーインクとは、ここではプロセスカラーインクのことである。プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクは、プロセスカラーインク以外の色のインクである。特色インクには、下地インクが含まれている。下地インクは、例えばプライマーインクや、ホワイトインクのことである。特色インクには、更に、例えばクリアインク、グロスインク、蛍光インク、メタリックインク、オレンジインク、レッドインク、バイオレットインク、ブルーインク、グリーンインクなどが含まれる。
【0023】
本実施形態では、クリアインクを吐出するインクヘッド22が、本発明の第1インクヘッドの一例である。カラーインクを吐出するインクヘッド22が、本発明の第2インクヘッドの一例である。
【0024】
インクヘッド22のノズル24から吐出されるインクは、光が照射されると乾燥が促進される光硬化型インクである。光とは、例えば紫外線であり、ここではインクは、紫外線が照射されると乾燥が促進される紫外線硬化型インクである。ただし、インクは、例えば水性インクであってもよい。
【0025】
本実施形態では、インクヘッド22から吐出されるインクは、
図2に示すインクカートリッジ26に収容されている。インクカートリッジ26は、例えばケース11の内部空間に配置されている。インクカートリッジ26は、例えば1つのインクヘッド22につき1つ接続されている。ただし、インクカートリッジ26は、1つのノズル列25につき1つ接続されていてもよい。インクカートリッジ26は、例えば図示しないチューブを介してインクヘッド22に接続されている。インクカートリッジ26に収容されたインクは、チューブを通じてインクヘッド22に供給される。
【0026】
光照射装置30は、インクヘッド22のノズル24から吐出されたインクに光を照射する装置である。ここでは、光照射装置30は、支持台40に支持された媒体5に吐出されたインクに光を照射可能に構成されている。本実施形態では、上述のように、ノズル24から吐出されたインクは、紫外線硬化型インクであるため、光照射装置30は、ノズル24から吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射装置であることが好ましい。ただし、光照射装置30は、赤外線を照射する赤外線照射装置であってもよい。この場合、インクヘッド22のノズル24から吐出されるインクは、いわゆる水性インクであってもよい。
【0027】
図4に示すように、光照射装置30は、キャリッジ20に設けられており、キャリッジ20およびインクヘッド22と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。本実施形態では、光照射装置30は、キャリッジ20における主走査方向Yの一方側(ここでは左側)であって、インクヘッド22における主走査方向Yの一方側に設けられている。しかしながら、光照射装置30は、キャリッジ20における主走査方向Yの他方側(ここでは右側)であって、インクヘッド22における主走査方向Yの他方側に設けられてもよい。
図4では、光照射装置30の数は1つであるが、複数(例えば2つ)であってもよい。光照射装置30は、キャリッジ20の左側と右側の両側に設けられてもよい。
【0028】
光照射装置30の構成は特に限定されない。本実施形態では、光照射装置30は、照射本体31(
図4参照)と、光源32(
図3参照)とを有している。
図4に示すように、照射本体31は、例えば直方体形状であり、中空のものである。照射本体31の底面には、照射口33が形成されている。照射口33の形状は、四角形状であるが、特に限定されない。光源32は、光(ここでは紫外線)を発するものであり、照射本体31の内部に配置されている。光源32から発せられた光は、照射口33を通り、媒体5に吐出されたインクに照射される。
【0029】
図2に示すように、支持台40は、媒体5を支持する。ここでは、支持台40の上面に媒体5が載置される。支持台40上で媒体5への印刷が行われる。支持台40の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0030】
本実施形態では、
図2に示すように、プリンタ10は、移動機構50を備えている。移動機構50は、支持台40に支持された媒体5に対してインクヘッド22を相対的に3次元方向に移動させる機構である。なお、移動機構50の構成は特に限定されない。ここでは、移動機構50は、ヘッド移動機構51と、媒体移動機構52とを有している。
【0031】
ヘッド移動機構51は、本発明の第1移動機構の一例である。ヘッド移動機構51は、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との主走査方向Yの相対的な位置を移動させる機構である。本実施形態では、ヘッド移動機構51は、支持台40に支持された媒体5に対してインクヘッド22を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構51は、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30をガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動させる機構である。
【0032】
なお、ヘッド移動機構51の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構51は、図示は省略するが、例えば左右のプーリと、ベルトと、スキャンモータとを有している。左のプーリはガイドレール18の左端部の周囲に設けられ、右のプーリはガイドレール18の右端部の周囲に設けられている。ベルトは、例えば無端状のベルトであり、左右のプーリに巻き掛けられている。ベルトには、キャリッジ20が取り付け固定されている。スキャンモータは、左右のプーリのうちの一方のプーリに接続されている。ここでは、スキャンモータが駆動することでプーリが回転し、左右のプーリの間においてベルトが走行する。このことで、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動する。
【0033】
媒体移動機構52は、本発明の第2移動機構の一例である。媒体移動機構52は、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との副走査方向Xの相対的な位置を移動させる機構である。本実施形態では、媒体移動機構52は、インクヘッド22に対して、支持台40に支持された媒体5を相対的に副走査方向Xに移動させる機構である。本実施形態では、媒体移動機構52は、支持台40を副走査方向Xに移動させることで、支持台40に支持された媒体5も副走査方向Xに移動させる機構である。
【0034】
なお、媒体移動機構52の構成は特に限定されない。ここでは、媒体移動機構52は、図示は省略するが、支持台40を支持する支持台キャリッジと、支持台キャリッジをスライド可能に支持し、副走査方向Xに延びた左右一対のスライドレールとを有している。媒体移動機構52は、図示は省略するが、更にスライドレールの前方および後方に設けられた前後一対のスライドプーリと、前後一対のスライドプーリに巻き掛けられたスライドベルトとを有している。このスライドベルトには、支持台キャリッジが固定されている。前後一対のスライドプーリのうちの一方のプーリには、フィードモータが接続されている。ここでは、フィードモータが駆動してスライドベルトが走行することで、支持台キャリッジと共に支持台40および媒体5が副走査方向Xに移動する。
【0035】
本実施形態では、詳しい構成は省略するが、
図2に示すように、プリンタ10の移動機構50は、支持台40および媒体5を昇降させる昇降機構53を備えている。
【0036】
図1に示すように、プリンタ10は、操作パネル90を備えている。操作パネル90は、例えばケース11の右上部に設けられている。操作パネル90は、プリンタ10の状態を表示する表示画面91と、利用者によって操作される入力キー92などを有している。
【0037】
図2に示すように、プリンタ10は、制御装置60を備えている。制御装置60は、印刷に関する処理を実行する。なお、制御装置60の構成は特に限定されない。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置60は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置60は、ケース11の内部に設けられている。ただし、制御装置60は、ケース11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置60は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0038】
本実施形態では、
図3に示すように、制御装置60は、インクヘッド22と、光照射装置30(詳しくは光源32)と、移動機構50(詳しくは、ヘッド移動機構51、媒体移動機構52および昇降機構53)と、操作パネル90(詳しくは、表示画面91および入力キー92)に通信可能に接続されている。制御装置60は、インクヘッド22、光照射装置30、ヘッド移動機構51、媒体移動機構52、昇降機構53および操作パネル90を制御する。
【0039】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。
図5、
図6は、それぞれ本実施形態に係る印刷物70の断面図、平面図である。ところで、本実施形態では、制御装置60は、媒体5に印刷することで、印刷物70(
図5参照)を作製するように構成されている。
【0040】
次に、印刷物70について説明する。ここで、印刷物70に関する図面において、符号D11は第1方向を示している。符号D12は第2方向を示している。第1方向D11と第2方向D12とは、平面視において交差(ここでは直交)している。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、印刷物70を何ら限定するものではない。
【0041】
図5に示すように、印刷物70は、媒体5と、第1印刷層71と、第2印刷層72とを備えている。
【0042】
本実施形態では、第1印刷層71および第2印刷層72は、プリンタ10のインクヘッド22(
図4参照)から吐出されたインクによって形成される層である。第1印刷層71は、媒体5に直接印刷される層である。第1印刷層71は、媒体5上(言い換えると、媒体5の表面(または上面))に形成される層である。本実施形態では、第1印刷層71は、下地層であり、例えばプライマーインクやホワイトインクなどの下地インクによって形成される層である。
【0043】
しかしながら、第1印刷層71は、例えば画像データに基づいて、絵、模様、図形や文字などの画像が形成される画像形成層であってもよい。また、第1印刷層71は、下から下地層と画像形成層が積層された層であってもよい。すなわち、第1印刷層71は、下地層と画像形成層とから構成された層であってもよい。
【0044】
第1印刷層71では、例えば複数の層が積層されることで、1つの下地層や、1つの画像形成層が形成されてもよい。下地層を構成する層の数、および、画像形成層を構成する層の数は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0045】
第2印刷層72は、媒体5に印刷される層である。ここでは、第2印刷層72は、媒体5に印刷された第1印刷層71に重なるように、第1印刷層71に印刷される層である。第2印刷層72は、媒体5上(言い換えると、媒体5の表面(または上面))に形成される。本実施形態では、第2印刷層72は、第1印刷層71の表面(または上面)に直接形成される層であり、第1印刷層71を介して媒体5の表面に間接的に形成される層である。本実施形態では、第2印刷層72は、媒体5に直接形成されない。
【0046】
第2印刷層72は、本発明の印刷層の一例である。第2印刷層72は、クリアインクが吐出されて印刷される層である。すなわち、第2印刷層72は、クリアインクによって形成されている。第2印刷層72は、複数の層が積層されることで形成される層であってもよい。第2印刷層72を構成する層の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0047】
本実施形態では、媒体5に第1印刷層71が印刷され、第2印刷層72は、第1印刷層71に重なるように第1印刷層71に印刷されている。下地層の一例である第1印刷層71は、第2印刷層72のインクと媒体5との接着性の観点から、第2印刷層72と媒体5との間に形成される層である。そのため、例えば第2印刷層72のインクと媒体5との接着性が高い場合などには、第1印刷層71を省略することも可能である。この場合、媒体5に第2印刷層72が直接印刷されることになる。
【0048】
第2印刷層72は、印刷物70の表面(ここでは最上面)を構成する層であり、印刷物70の外部に露出している。第2印刷層72は、印刷物70に触感を付与する触感付与層であり得る。第2印刷層72には、凹凸が形成されている。そのため、第2印刷層72によって、印刷物70の表面に凹凸が形成される。利用者は、例えば印刷物70の表面を指先で触れることで、第2印刷層72に触れることになる。その結果、指先に印刷物70の触感が与えられる。ここでは、第2印刷層72の凹凸の間隔や大きさなどを変更することで、様々な種類の触感を表現することが可能になる。
【0049】
図6に示すように、第2印刷層72は、複数の突起75を有している。複数の突起75は、媒体5上において上方に向かって突出している。本実施形態では、各突起75における大きさ、高さH1(
図5参照)、平面形状、および、側面形状は同じである。ここで、突起75の「大きさ」とは、突起75の平面視における面積、体積、平面視における最大寸法(例えば直径)の少なくとも1つ以上のことをいう。
図6に示すように、例えば、各突起75における平面視の最大寸法L1は同じである。しかしながら、一部の突起75は、他の突起75に対して大きさ(例えば最大寸法L1)、高さH1、平面形状、および、側面形状のうちの何れかが異なっていてもよい。
【0050】
本実施形態では、平面視における突起75の最大寸法L1は、1mm以下、好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.6mm以下である。
図5に示す突起75の高さH1は、10mm以下であり、好ましくは8mm以下、特に好ましくは6mm以下である。
【0051】
本実施形態では、
図6に示すように、突起75の平面形状は、円形状である。しかしながら、突起75の平面形状は、円形状に限定されず、例えば三角形状や四角形状などの多角形状であってもよいし、リング形状であってもよい。突起75の平面形状が円形状の場合、突起75の最大寸法L1は、突起75の直径と言い換えることができる。本実施形態では、
図5に示すように、突起75の側面形状は、上に凸の半円形状であるが、特に限定されない。突起75の側面形状は、例えば四角形状や三角形状などの多角形状であってもよい。
【0052】
図6に示すように、複数の突起75は、互いに離間して配置されており、ここでは、格子状に並んで配置されている。本実施形態では、複数の突起75は、矩形状(例えば四角形状)の格子状に配置されている。詳しくは、複数の突起75は、
図6の破線で示すように、正方形状の格子状に配置されている。本実施形態では、複数の突起75は、第1方向D11に並んで配置されていると共に、第2方向D12に並んで配置されている。複数の突起75は、第1方向D11に等間隔で配置され、かつ、第2方向D12に等間隔で配置されている。
【0053】
本実施形態では、突起75の格子間隔L2は、同じである。ここで、格子間隔L2は、格子状の基となる形状(ここでは正方形状(
図6では、破線で示された形状))の1辺の長さのことをいう。ここでは、格子間隔L2は、第1方向D11に隣り合う突起75の間隔であり、第2方向D12に隣り合う突起75の間隔でもある。格子間隔L2とは、例えば配列間隔とも言える。また、格子間隔L2は、隣り合う突起75の間隔のうちの最小の間隔である。格子間隔(配列間隔)L2とは、隣り合う一方の突起75と他方の突起75において、一方の突起75における他方の突起75側の端から、他方の突起75における一方の突起75側の端までの距離のことをいう。
【0054】
例えば格子間隔L2は、500μm以下であり、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。また、格子間隔L2は、10μm以上、好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上である。
【0055】
なお、本実施形態では、第2印刷層72において突起75が形成されていない部分には、インクが吐出されておらず、第1印刷層71が露出している。しかしながら、第2印刷層72において、突起75が形成されていない部分には、インク(例えばクリアインク)によって形成された層(ここでは、突起75よりも高さが低い層)が形成されてもよい。
【0056】
例えばこのような第1印刷層71および第2印刷層72を媒体5に印刷する。第2印刷層72を印刷するとき、例えば第2印刷層72の第1方向D11が主走査方向Yと同じ向きになり、かつ、第2方向D12が副走査方向Xと同じ向きになるように第2印刷層72が印刷される。すなわち、突起75が主走査方向Yに並び、かつ、副走査方向Xに並ぶように印刷される。このとき、主走査方向Yにおける突起75の間隔と、副走査方向Xにおける突起75の間隔は、格子間隔L2となり、比較的に小さい間隔になる。
【0057】
ところで、プリンタ10による印刷の際、インクヘッド22が主走査方向Yに移動しているときに、インクヘッド22からインクが吐出される。このインクの吐出タイミングがズレることで、吐出誤差が生じる。この吐出誤差によって、主走査方向Yにおけるインクの着弾位置がズレることがあり得る。また、プリンタ10による印刷の際、支持台40に支持された媒体5が副走査方向Xに移動する際にズレが生じることで、移動誤差が生じる。この移動誤差によって、副走査方向Xにおけるインクの着弾位置がズレることがあり得る。
【0058】
このように、吐出誤差または移動誤差が大きい状態で、複数の突起75を有する第2印刷層72の印刷が行われると、主走査方向Yに隣り合う突起75や、副走査方向Xに隣り合う突起75が凝集された状態で印刷されることがある。この突起75の凝集とは、例えば吐出誤差や移動誤差に起因して、隣り合う突起75が重なった状態で印刷されることをいう。特に、第2印刷層72の印刷時、上述のように、主走査方向Yにおける突起75の間隔や、副走査方向Xにおける突起75の間隔が、格子間隔L2のように小さいと、突起75がより凝集されて、重なって印刷され易くなる。
【0059】
そこで、本実施形態では、第2印刷層72の突起75が印刷されるときに、隣り合う突起75が凝集されて重なって印刷され難くするための制御を制御装置60が行う。本実施形態では、
図3に示すように、制御装置60は、記憶部61と、取得部62と、選択部63と、基準方向決定部64と、印刷制御部65と、誤差取得部66と、印刷方向決定部67とを備えている。ここで、制御装置60の各部61~67は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0060】
次に、制御装置60による制御手順について、
図7に示すフローチャートに沿って説明する。
図8、
図9は、制御手順を説明するための第2印刷層72Aの平面図である。ここでは、制御装置60による基本的な制御手順を説明するために、
図8に示すような第2印刷層72Aを一例に説明する。
【0061】
図8に示すように、第2印刷層72Aは、少なくとも3つの突起75Aを有している。ここでは、3つの突起75Aを、それぞれ第1突起75Aa、第2突起75Ab、第3突起75Acとする。
【0062】
本実施形態では、
図3に示すように、記憶部61には、第2印刷層72Aに関する第2印刷データDT2Aが記憶されている。この第2印刷データDT2Aには、突起75Aの大きさに関する情報や、突起75A同士の間隔に関する情報、突起75Aの位置に関する情報などが含まれている。
【0063】
まず
図7のステップS101では、
図3の取得部62は、
図8に示すように、隣り合う突起75Aの突起間隔L3Aを取得する。
図8の一例では、第1突起75Aaと第2突起75Abとの第1突起間隔L3Aaと、第2突起75Abと第3突起75Acとの第2突起間隔L3Abと、第3突起75Acと第1突起75Aaとの第3突起間隔L3Acとの3つの突起間隔L3Aを算出して取得する。本実施形態では、突起が「隣り合う」とは、例えば2つの突起の中心を結んだ線分に、他の突起が重なっていない場合に、2つの突起が隣り合っているという。
【0064】
次に、
図7のステップS103では、
図3の選択部63は、
図8に示すように、最小の突起間隔L3Aを除いた突起間隔L3Aの中から1つの突起間隔L3Aを選択し、基準間隔RL1Aとする。
図8の一例では、最小の突起間隔L3Aは、第2突起間隔L3Abである。そのため、選択部63は、第1突起間隔L3Aaと第3突起間隔L3Acとの中から、1つの突起間隔L3Aを選択し、基準間隔RL1Aとする。
【0065】
この第1突起間隔L3Aaと第3突起間隔L3Acのどちらを基準間隔RL1Aにするかは、特に限定されず、例えば所定の基準条件をもとに決定されるものであってもよい。この基準条件は、例えばランダムであってもよいし、所定の式に基づいて最小の突起間隔L3Aとの関係を考慮したものであってもよい。ここでは、選択部63は、第1突起間隔L3Aaを基準間隔RL1Aとして選択するものとする。
【0066】
選択部63は、基準間隔RL1Aを成す2つの突起75Aを基準突起R1Aとして選択する。ここでは、基準間隔RL1Aは第1突起間隔L3Aaであり、第1突起間隔L3Aaは、第1突起75Aaと第2突起75Abとの間隔である。そのため、選択部63は、第1突起75Aaと第2突起75Abとを基準突起R1Aに選択する。
【0067】
次に、
図7のステップS105では、
図3の基準方向決定部64は、
図8に示すように、2つの基準突起R1Aを結ぶ軸A1Aが向く方向を基準方向RD1Aとして決定する。この軸A1Aとは、例えば2つの基準突起R1Aの中心C1Aを結んだ軸のことをいう。基準方向RD1Aとは、上記の基準間隔RL1Aが向く方向とも言い換えることができる。
【0068】
次に、
図7のステップS107では、
図3の印刷制御部65は、媒体5に第1印刷層71(
図5参照)と、第2印刷層72A(
図8参照)とを印刷するように制御を行い、印刷物70を作製する。
【0069】
ここでは、印刷制御部65は、媒体5に第1印刷層71を印刷する。
図3に示すように、例えば記憶部61には、第1印刷層71に関する第1印刷データDT1が記憶されている。この第1印刷データDT1に基づいて、媒体5に対する第1印刷層71の向きを変えることなく印刷を行う。ここでは、第1印刷層71の第1方向D11が主走査方向Yに対応し、第2方向D12が副走査方向Xに対応するように、第1印刷層71の印刷が行われる。
【0070】
印刷制御部65は、ヘッド移動機構51を作動させて、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させている間、インクヘッド22から媒体5に向かってインク(例えば下地インク)を吐出させて、第1印刷層71における第1方向D11に沿った1ライン分の印刷を行う。1ライン分の印刷の後、印刷制御部65は、媒体5を支持する支持台40を副走査方向Xに所定の距離、移動させるように媒体移動機構52を制御する。その後、印刷制御部65は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させて、次の第1方向D11に沿った1ライン分の第1印刷層71の印刷を媒体5に行う。このように、1ライン分の第1印刷層71の印刷と、支持台40における副走査方向Xへの移動とを交互に繰り返し行うことで、媒体5に第1印刷層71の印刷を行うことができる。
【0071】
次に、印刷制御部65は、媒体5に第2印刷層72A(
図8参照)を印刷する。ここでは、媒体5に印刷された第1印刷層71に重ねて、第1印刷層71に第2印刷層72Aを印刷する。ここでは、印刷制御部65は、記憶部61に記憶された第2印刷データDT2A(
図3参照)に基づいて、複数の突起75Aを印刷する。ここでは、印刷制御部65は、
図9に示すように、基準方向RD1Aが主走査方向Yに合うように、第2印刷データDT2Aに基づいて第2印刷層72Aを媒体5に印刷する。本実施形態では、第2印刷層72Aの基準方向RD1Aが主走査方向Yになるように、第2印刷層72Aの向きを変えた状態で、第2印刷層72Aの印刷が行われる。
【0072】
印刷制御部65は、ヘッド移動機構51を作動させて、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させている間、インクヘッド22から媒体5に向かってインク(例えばクリアインク)を吐出させて、第2印刷層72Aにおける基準方向RD1Aに沿った1ライン分の印刷を行う。1ライン分の印刷の後、印刷制御部65は、媒体5を支持する支持台40を副走査方向Xに所定の距離、移動させるように媒体移動機構52を制御する。その後、印刷制御部65は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させて、次の基準方向RD1Aに沿った1ライン分の第2印刷層72Aの印刷を媒体5に行う。このように、基準方向RD1Aに沿った1ライン分の第2印刷層72Aの印刷と、支持台40における副走査方向Xへの移動とを交互に繰り返し行うことで、媒体5に第2印刷層72Aの印刷を行うことができる。以上のようにして、印刷物70を作製することができる。
【0073】
以上、
図8に示す第2印刷層72Aを印刷する場合について説明した。次に、
図6に示すような、格子状に配置された複数の突起75を有する第2印刷層72を印刷する場合について説明する。以下、第2印刷層72のことを、格子状の第2印刷層72ともいう。
【0074】
本実施形態では、
図3に示すように、記憶部61には、格子状の第2印刷層72に関する第2印刷データDT2が記憶されている。第2印刷データDT2には、突起75の大きさに関する情報や、突起75同士の間隔(例えば格子間隔L2)に関する情報、突起75の位置に関する情報などが含まれている。なお、本実施形態では、第2印刷データDT2は、本発明の印刷データの一例である。
【0075】
格子状の第2印刷層72を印刷する際、
図7のステップS101では、
図3の取得部62は、第2印刷データDT2に基づいて、第2印刷層72において隣り合う2つの突起75の突起間隔L3を取得する。ここでは、突起間隔L3には、格子間隔L2も含まれる。ただし、格子間隔L2は、第2印刷データDT2から取得される。ここでは格子間隔L2以外の突起間隔L3が算出される。
【0076】
格子状の第2印刷層72では、突起75が規則的に配列されているため、いくつかの突起間隔L3の値は重複する。そのため、全ての隣り合う2つの突起75の突起間隔L3が取得されなくてもよく、一部の突起間隔L3の取得は省略されてもよい。
【0077】
次に、
図7のステップS103では、
図3の選択部63は、格子間隔L2よりも大きい突起間隔L3のうちの1つを基準間隔RL1として選択する。そして、基準間隔RL1を成す2つの突起75を基準突起R1に選択する。
図6に示すように、例えば正方形の格子状の場合、正方形の対角線L4に位置する2つの突起75の突起間隔L3を基準間隔RL1とする。なお、正方形には、対角線L4は2つ存在する。選択部63は、2つの対角線L4のどちらを選択してもよく、例えばランダムで2つの対角線L4のうちの1つを選択する。
【0078】
ただし、格子状の第2印刷層72において対角線L4に位置する突起75の突起間隔L3を基準間隔RL1に設定しなくてもよく、例えば
図6の突起間隔L3a、L3b、L3c、L3dの何れかを基準間隔RL1に設定してもよい。
【0079】
次に、
図7のステップS105では、
図3の基準方向決定部64は、
図6に示すように、2つの基準突起R1を結ぶ軸A1が向く方向を基準方向RD1として決定する。そして、
図7のステップS107では、
図3の印刷制御部65は、媒体5に第1印刷層71を印刷し、第1印刷層71に重なるように2印刷層72を印刷する。ここでは、第2印刷層72を印刷する際、
図10に示すように、基準方向RD1が主走査方向Yに合うように第2印刷層72の向きを変えて印刷する。このとき、第1印刷層71が印刷された部分に、第2印刷層72の突起75が印刷されるが、第1印刷層71が印刷されていない部分には、突起75は印刷されない。すなわち、媒体5上に突起75が直接印刷されないように構成されている。
【0080】
なお、本実施形態では、
図10に示すように、第2印刷層72を印刷する際、第2印刷層72の基準方向RD1と、プリンタ10の主走査方向Yとが同じ、すなわち一致するように第2印刷層72の向きを変えていた。しかしながら、
図11に示すように、第2印刷層72を印刷する際、基準方向RD1と、プリンタ10の副走査方向Xとが同じになるように第2印刷層72の向きを変えて印刷を行ってもよい。
【0081】
本実施形態では、第2印刷層72を印刷する際、基準方向RD1と向きを揃える方向を、主走査方向Yか副走査方向Xのどちらの方向にするかは、例えば吐出誤差と移動誤差との比較によって決定されてもよい。上述のように、吐出誤差は、インクヘッド22における主走査方向Yの吐出タイミングのズレによる、主走査方向Yにおけるインクの着弾位置のズレである。移動誤差は、支持台40に支持された媒体5における副走査方向Xの移動のズレによる、副走査方向Xにおけるインクの着弾位置のズレである。
【0082】
図3の制御装置60の印刷方向決定部67は、吐出誤差と移動誤差とに基づいて、基準方向RD1を合わせる向きを、主走査方向Yか副走査方向Xに決定する。ここで、吐出誤差が移動誤差以上の場合には、印刷方向決定部67は、
図10に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを主走査方向Yに決定する。一方、移動誤差が吐出誤差よりも大きい場合には、印刷方向決定部67は、
図11に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを副走査方向Xに決定する。
【0083】
ここで、吐出誤差および移動誤差の検出は、プリンタ10が自動で実行するものであってもよく、吐出誤差と移動誤差との比較も、プリンタ10が自動で実行するものであってもよい。本実施形態では、吐出誤差と移動誤差との比較は、利用者が目視で行い、当該比較の結果を入力する。例えば吐出誤差と移動誤差のどちらが大きいかを、
図1に示す操作パネル90の入力キー92を操作して入力する。
【0084】
なお、吐出誤差および移動誤差を利用者が目視で確認する手段は、特に限定されない。例えばプリンタ10は、吐出誤差テスト印刷、および、移動誤差テスト印刷を媒体5に行う。この吐出誤差テスト印刷は、吐出誤差の程度を測るための印刷であり、従来公知のテストパターンで印刷される。移動誤差テスト印刷は、移動誤差の程度を測るための印刷であり、従来公知のテストパターンで印刷される。
【0085】
利用者は、媒体5に印刷された吐出誤差テスト印刷と、移動誤差テスト印刷を目視し、吐出誤差と移動誤差のうちのどちらの誤差が大きいかを判断する。そして、吐出誤差と移動誤差のうちのどちらの誤差が大きいかを、入力キー92を操作して入力する。
図3の制御装置60の誤差取得部66は、入力キー92によって入力された結果を取得する。すなわち、誤差取得部66は、吐出誤差と移動誤差とのうちのどちらの誤差が大きいかを利用者から取得する。
【0086】
図3の印刷方向決定部67は、誤差取得部66によって吐出誤差が移動誤差以上であることを取得した場合、
図10に示すように、第2印刷層72の基準方向RD1を合わせる向きを主走査方向Yに決定する。一方、印刷方向決定部67は、誤差取得部66によって移動誤差が吐出誤差よりも大きいことを取得した場合、
図11に示すように、第2印刷層72の基準方向RD1を合わせる向きを副走査方向Xに決定する。そして、印刷制御部65は、基準方向RD1が、印刷方向決定部67によって決定された方向に合うように、第2印刷データDT2に基づいて第2印刷層72を媒体5に印刷するように制御する。
【0087】
以上、本実施形態では、プリンタ10は、
図2に示すように、媒体5を支持する支持台40と、インクを吐出するインクヘッド22とを備えている。またプリンタ10は、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との主走査方向Yの相対的な位置を移動させるヘッド移動機構51と、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との副走査方向Xの相対的な位置を移動させる媒体移動機構52と、媒体5に第2印刷層72A(例えば
図8参照)を印刷するように制御を行う制御装置60とを備えている。
図8に示すように、第2印刷層72Aは、インクによって形成された少なくとも3つの突起75Aを有している。
図3に示すように、制御装置60は、記憶部61と、取得部62と、選択部63と、基準方向決定部64と、印刷制御部65とを備えている。記憶部61には、第2印刷層72Aに関する第2印刷データDT2Aが記憶されている。取得部62は、第2印刷データDT2Aに基づいて、
図8に示すように、第2印刷層72Aにおいて隣り合う2つの突起75Aの突起間隔L3Aを取得する。選択部63は、最小の突起間隔L3A(ここでは、第2突起間隔L3Ab)を除いた突起間隔L3Aの中から、1つの突起間隔L3A(例えば第1突起間隔L3Aa)を基準間隔RL1Aとして選択し、基準間隔RL1Aを成す2つの突起75Aを基準突起R1Aとして選択する。基準方向決定部64は、2つの基準突起R1Aを結ぶ軸A1Aが向く方向を基準方向RD1Aとして決定する。印刷制御部65は、基準方向RD1Aが、
図9に示すように、主走査方向Yまたは副走査方向X(ここでは主走査方向Y)に合うように、第2印刷データDT2Aに基づいて第2印刷層72Aを媒体5に印刷するように制御を行う。
【0088】
例えば最小の突起間隔L3A(ここでは第1突起間隔L3Ab)を成す2つの突起75Aを結ぶ軸の方向を、主走査方向Yまたは副走査方向Xに合わせて第2印刷層72Aを印刷すると、主走査方向Yによるインクの吐出タイミングのズレに起因した吐出誤差、または、副走査方向Xに媒体5が移動するときのズレに起因した移動誤差によって、複数の突起75Aの一部が凝集して重なった状態で印刷されることがあり得る。しかしながら、本実施形態では、最小の突起間隔L3Aを除いた突起間隔L3Aの中から、1つの突起間隔L3Aを成す2つの突起75Aを結ぶ軸A1Aの方向を基準方向RD1Aにする。そして、基準方向RD1Aが主走査方向Yまたは副走査方向Xに合うように、第2印刷層72Aの向きを変えて印刷する。このことで、主走査方向Yまたは副走査方向Xに沿った突起75Aの間隔を比較的に大きくすることができる。よって、吐出誤差や移動誤差に起因して、複数の突起75Aが凝集して重なった状態で第2印刷層72Aが印刷され難くすることができる。
【0089】
本実施形態では、
図6に示すように、第2印刷データDT2(
図3参照)に基づいた第2印刷層72の複数の突起75は、所定の格子間隔L2で格子状に配置されている。このように、格子状の第2印刷層72は、複数の突起75が規則的に配列されることになる。そのため、格子状の第2印刷層72における突起間隔L3の幾つかは値が重複する。そのため、より少ない計算量で基準方向RD1を決定することができる。
【0090】
本実施形態では、
図6に示すように、第2印刷データDT2(
図3参照)に基づいた第2印刷層72の複数の突起75は、正方形で示された格子状に配置されている。
図3の選択部63は、正方形の対角線L4上の2つの突起75の突起間隔L3を基準間隔RL1として選択する。このことによって、複数の突起75は、例えば第1方向D11および第2方向D12において、等間隔で規則的に配列される。この場合、対角線L4上の2つの突起75の突起間隔L3を基準間隔RL1に設定することで、吐出誤差と移動誤差との両方の影響を受け難くすることができるため、複数の突起75が凝集して重なった状態で第2印刷層72が印刷され難くすることができる。
【0091】
本実施形態では、記憶部61に記憶された第2印刷データDT2には、格子間隔L2と、突起75の大きさに関する情報が少なくとも含まれている。このことによって、第2印刷データDT2に記憶された情報に基づいて、突起間隔L3を取得または算出し易くなり、基準方向RD1を決定し易くすることができる。
【0092】
本実施形態では、
図3の選択部63は、格子間隔L2よりも大きい突起間隔L3の1つを基準間隔RL1として選択する。格子状の第2印刷層72において、隣り合う2つの突起75の最小となる間隔は、格子間隔L2である。そのため、格子間隔L2よりも大きい突起間隔L3を基準間隔RL1とすることで、主走査方向Yまたは副走査方向Xに沿った突起75の間隔を比較的に大きくすることができる。よって、吐出誤差や移動誤差に起因して、複数の突起75が凝集して重なった状態で第2印刷層72が印刷され難くすることができる。
【0093】
本実施形態では、
図3に示すように、制御装置60は、印刷方向決定部67を備えている。印刷方向決定部67は、インクヘッド22における主走査方向Yの吐出タイミングのズレである吐出誤差と、支持台40に支持された媒体5とインクヘッド22との副走査方向Xにおける相対的な位置の移動のズレである移動誤差とに基づいて、基準方向RD1を合わせる向きを、主走査方向Yか副走査方向Xに決定する。印刷制御部65は、基準方向RD1が、印刷方向決定部67によって決定された方向に合うように、第2印刷データDT2に基づいて第2印刷層72を媒体5に印刷するように制御を行う。
【0094】
このことによって、例えば吐出誤差が大きいときには、
図10に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを主走査方向Yに決定することで、吐出誤差に起因して、複数の突起75が凝集して重なった状態で第2印刷層72が印刷され難くすることができる。例えば移動誤差が大きいときには、
図11に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを副走査方向Xに決定することで、移動誤差に起因して、複数の突起75が凝集して重なった状態で第2印刷層72が印刷され難くすることができる。
【0095】
本実施形態では、
図3に示すように、制御装置60は、誤差取得部66を備えている。誤差取得部66は、吐出誤差と移動誤差とのうちのどちらの誤差が大きいかを利用者から取得する。印刷方向決定部67は、誤差取得部66によって吐出誤差が移動誤差以上のことを取得した場合、
図10に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを主走査方向Yに決定する。一方、印刷方向決定部67は、誤差取得部66によって移動誤差が吐出誤差よりも大きいことを取得した場合、
図11に示すように、基準方向RD1を合わせる向きを副走査方向Xに決定する。このことによって、例えば利用者は、媒体5に印刷された吐出誤差テスト印刷と、移動誤差テスト印刷とを目視して、吐出誤差と移動誤差のどちらが大きいかを判断する。そして、利用者によって吐出誤差と移動誤差のどちらが大きいかを判断した結果に基づいて、基準方向RD1を合わせる向きを主走査方向Yか副走査方向Xかを決定することができる。
【0096】
本実施形態では、
図6に示す格子間隔L2は、500μm以下である。そのため、格子間隔L2は比較的に小さい。このように、比較的に小さい格子間隔L2であっても、上記のように決定された基準方向RD1を主走査方向Yまたは副走査方向Xに合うように、第2印刷層72の向きを変えて印刷することで、突起75が凝集して重なった状態で印刷され難くすることができる。よって、格子間隔L2を500μm以下にすることで、より効果を発揮させることができる。
【0097】
本実施形態では、平面視における突起75の最大寸法L1(
図6参照)は、1mm以下である。仮に突起75の最大寸法L1を1mmより大きくすると、突起75を点字と間違える可能性があり得る。しかしながら、本実施形態のように、突起75の最大寸法L1を1mm以下にすることで、点字と間違えることを抑制できると共に、第2印刷層72でミクロなテクスチャを表現することができる。
【0098】
本実施形態では、
図6に示すように、突起75の平面形状は、円形状である。インクヘッド22から吐出されるインクのドット形状は円形状である。突起75は、インクのドット形状の集合物である。そのため、突起75の平面形状を円形状とすることで、円形状であるドット形状で突起75を形成し易い。
【0099】
本実施形態では、制御装置60の印刷制御部65(
図3参照)は、媒体5にクリアインクを吐出することで第2印刷層72を印刷するように制御を行う。すなわち、突起75は、クリアインクによって形成されている。突起75は、触感を与えるために形成されるものであり、目視で確認されなくてもよいものである。そのため、突起75をクリアインクで形成することで、印刷物70の表面を目視したとき、突起75を見難くすることができる。
【0100】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図12、
図13、
図14は、第1実施形態の変形例に係る第2印刷層72B、72C、72Dの平面図である。第1実施形態では、
図6に示すように、複数の突起75が配置される格子状の形状は、矩形状、詳しくは四角形状、更に詳しくは正方形状であった。
【0101】
しかしながら、
図12に示すように、第2印刷層72Bが有する複数の突起75Bが配置される格子状の形状のように、三角形状(
図12の破線参照)であってもよい。
図12の一例の場合、格子間隔L2Bは、三角形の1辺の長さのことをいう。
【0102】
また、
図13に示すように、第2印刷層72Cが有する複数の突起75Cが配置される格子状の形状のように、菱形形状(
図13の破線参照)であってもよい。
図13の一例の場合、格子間隔L2Cは、菱形の1辺の長さのことをいう。
【0103】
また、
図14に示すように、第2印刷層72Dが有する複数の突起75Dが配置される格子状の形状のように、平行四辺形状(
図14の破線参照)であってもよい。
図14の一例の場合、格子間隔L2Dは、平行四辺形の1辺の長さのことをいう。
【0104】
このように、第2印刷データに基づいた第2印刷層72、72B、72C、72Dの複数の突起75、75B、75C、75Dは、
図6および
図12~
図14に示すように、多角形で示された格子状に配置されたものであってもよい。これらの場合であっても、複数の突起75、75B、75C、75Dを規則的に配置することができるため、格子状の第2印刷層72、72B、72C、72Dにおける突起間隔の幾つかは値が重複する。そのため、より少ない計算量で基準方向RD1を決定することができる。
【0105】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る印刷物70E、および、印刷物70Eを作製するプリンタ10Aについて説明する。
【0106】
図15は、第2実施形態に係る印刷物70Eの第2印刷層72Eを示す平面図である。本実施形態に係る印刷物70Eは、媒体5(
図5参照)と、第1印刷層71(
図5参照)と、第2印刷層72E(
図15参照)とを備えている。
【0107】
図15に示すように、第2印刷層72Eは、第1印刷領域81と、第2印刷領域82とを備えている。第2印刷層72Eは、第1印刷領域81と、第2印刷領域82とで異なる触感を指先に与えることができるように構成されている。1つの第1印刷領域81は、複数の第1突起85を有している。1つの第2印刷領域82は、複数の第2突起86を有している。
【0108】
本実施形態では、第1突起85および第2突起86は、それぞれ媒体5上において上方に向かって突出している。各第1突起85における大きさ、高さ、平面形状、側面形状は、同じである。しかしながら、一部の第1突起85は、他の第1突起85に対して大きさ、高さ、平面形状、側面形状の何れかが異なっていてもよい。同様に、各第2突起86における大きさ、高さ、平面形状、側面形状は、同じである。しかしながら、一部の第2突起86は、他の第2突起86に対して大きさ、高さ、平面形状、側面形状の何れかが異なっていてもよい。
【0109】
本実施形態では、複数の第1突起85は、矩形状(ここでは正方形状)の格子状に配置され、複数の第2突起86も矩形状(ここでは正方形状)の格子状に配置されている。ここでは、複数の第1突起85は、第1方向D11および第2方向D12に並んで配置されている。複数の第2突起86も、第1方向D11および第2方向D12に並んで配置されている。
【0110】
このように、本実施形態では、第1突起85の配列方向と、第2突起86の配列方向とは、同じであった。しかしながら、第1突起85の配列方向と、第2突起86の配列方向とは異なっていてもよい。例えば複数の第1突起85は、第1方向D11および第2方向D12に並んで配列され、複数の第2突起86は、第1方向D11と第2方向D12との間において、第1方向D11および第2方向D12から斜めに延びた方向に並んで配列されてもよい。
【0111】
本実施形態では、第1印刷領域81における第1突起85の大きさ、配列間隔L61が、第2印刷領域82における第2突起86の大きさ、配列間隔L62と異なる。このことで、第1印刷領域81の触感と、第2印刷領域82の触感とを異ならせることができる。ここでは、第1突起85および第2突起86は、共に平面形状が円形状であり、側面形状が半円形状である。
【0112】
第1突起85は第2突起86よりも大きい。言い換えると、第1突起85の最大寸法(ここでは直径)L51は、第2突起86の最大寸法(ここでは直径)L52よりも大きい。また、平面視において、第1突起85の面積は、第2突起86の面積よりも大きい。第1突起85の体積は、第2突起86の体積よりも大きい。
【0113】
本実施形態では、複数の第1突起85の第1配列間隔L61は、複数の第2突起86の第2配列間隔L62と異なっている。ここでは、第1突起85の第1配列間隔L61は、第2突起86の第2配列間隔L62よりも小さい。ここで、第1配列間隔L61は、第1突起85の格子間隔でもある。同様に、第2配列間隔L62は、第2突起86の格子間隔でもある。
【0114】
このように、触感が異なる複数の印刷領域を有する第2印刷層72Eを印刷する際、基準方向RD1Eは、以下のようにして決定される。
図16は、本実施形態に係るプリンタ10Aのブロック図である。本実施形態では、
図16に示すように、プリンタ10Aは、制御装置60Aを備えている。制御装置60Aは、第1実施形態の制御装置60と同様に、記憶部61と、取得部62と、選択部63と、基準方向決定部64と、印刷制御部65と、誤差取得部66と、印刷方向決定部67とを備えている。制御装置60Aは、更に、最小間隔取得部68と、領域決定部69とを備えている。
【0115】
ここでは、最小間隔取得部68は、
図15に示すように、第1印刷領域81における第1配列間隔L61のうちの最小の間隔である第1最小間隔L71を取得する。本実施形態では、第1印刷領域81において第1突起85は、第1方向D11および第2方向D12に等間隔で配置されている。そのため、第1印刷領域81における第1配列間隔L61は全て同じであり、第1最小間隔L71は、第1配列間隔L61、すなわち第1突起85の格子間隔になる。
【0116】
最小間隔取得部68は、第2印刷領域82における第2配列間隔L62のうちの最小の間隔である第2最小間隔L72を取得する。本実施形態では、第2印刷領域82において第2突起86も、第1方向D11および第2方向D12に等間隔で配置されている。そのため、第2印刷領域82における第2配列間隔L62は全て同じであり、第2最小間隔L72は、第2配列間隔L62、すなわち第2突起86の格子間隔になる。
【0117】
図16の領域決定部69は、基準領域RA1および基準領域突起RAR1を決定する。ここでは、領域決定部69は、第1最小間隔L71が第2最小間隔L72以下の場合、第1印刷領域81を基準領域RA1に決定し、かつ、第1突起85を基準領域突起RAR1に決定する。一方、領域決定部69は、第1最小間隔L71が第2最小間隔L72よりも大きい場合、第2印刷領域82を基準領域RA1に決定し、かつ、第2突起86を基準領域突起RAR1に決定する。
【0118】
その後、基準領域RA1および基準領域突起RAR1に基づいて基準方向RD1Eを決定するとよい。例えば
図16の取得部62は、基準領域RA1において隣り合う2つの基準領域突起RAR1の突起間隔L3Eを取得する。
【0119】
図16の選択部63は、基準領域RA1において、最小の突起間隔L3Eを除いた突起間隔L3Eの中から、1つの突起間隔L3Eを基準間隔RL1Eとして選択する。そして、
図16の選択部63は、基準間隔RL1Eを成す2つの基準領域突起RAR1を基準突起R1Eとして選択する。
図16の基準方向決定部64は、2つの基準突起R1Eを結ぶ軸A1Eが向く方向を基準方向RD1Eに決定する。
【0120】
図16の印刷制御部65は、基準方向RD1Eが、主走査方向Yまたは副走査方向Xに合うように、第2印刷層72Eの向きを変えて、媒体5に第2印刷層72Eを印刷する。
【0121】
このように、本実施形態のように第2印刷層72Eが複数の印刷領域81、82を有している場合、最小間隔L71、L72が小さい方の印刷領域(ここでは第1印刷領域81)に基づいて、基準方向RD1Eを決定する。そのため、第2印刷層72Eを印刷する際、主走査方向Yまたは副走査方向Xに沿った突起85、86の間隔を、最小間隔L71、L72のうちの小さい方の値よりも大きくすることができる。よって、吐出誤差や移動誤差に起因して、複数の突起85、86が凝集して重なった状態で第2印刷層72Eが印刷され難くすることができる。また、この効果は、例えば第1突起85の配列方向と、第2突起86の配列方向とが異なる場合により発揮されることがあり得る。
【0122】
<他の実施形態>
上記各実施形態では、第2印刷層72などは、クリアインクを媒体5に吐出することで、クリアインクによって形成されていた。すなわち、第2印刷層72などの突起75は、クリアインクによって形成されていた。しかしながら、第2印刷層72は、クリアインクおよびカラーインクを吐出することで、クリアインクとカラーインクとによって形成されていてもよい。制御装置60は、媒体5にクリアインクおよびカラーインクを吐出することで第2印刷層72を印刷するように、インクヘッド22、ヘッド移動機構51および媒体移動機構52の制御を行ってもよい。すなわち、第2印刷層72の突起75は、クリアインクおよびカラーインクによって形成されてもよい。第2印刷層72を形成するカラーインクは、例えば第2印刷層72と重なる第1印刷層71で使用されたカラーインクと同じ色のインクであってもよい。
【0123】
更に、第2印刷層72は、クリアインクを吐出せずに、カラーインクを吐出することで、カラーインクによって形成されてもよい。すなわち、第2印刷層72などの突起75は、クリアインクによって形成されずに、カラーインクによって形成されてもよい。制御装置60は、媒体5にカラーインクを吐出することで第2印刷層72を印刷するように、インクヘッド22、ヘッド移動機構51および媒体移動機構52の制御を行ってもよい。
【0124】
このように、突起75をクリアインクおよびカラーインクで形成することで、突起75を、第1印刷層71で使用されたカラーインクと同じ色のインクを使用して形成させることができる。よって、印刷物70の表面を目視したとき、突起75を見難くすることができる。
【0125】
なお、本発明に係るプリンタは、いわゆるガントリータイプのプリンタであってもよい。ここで、ガントリータイプのプリンタとは、支持台40に支持された媒体5自体は移動せずに、インクヘッド22が主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するものである。この場合、本発明に係る第1移動機構は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させることで、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との主走査方向Yの相対的な位置を移動させる。この場合、本発明に係る第2移動機構は、インクヘッド22を副走査方向Xに移動させることで、支持台40に支持された媒体5と、インクヘッド22との副走査方向Xの相対的な位置を移動させる。
【符号の説明】
【0126】
5 媒体
10 プリンタ
22 インクヘッド
40 支持台
51 ヘッド移動機構
52 媒体移動機構
60 制御装置
61 記憶部
62 取得部
63 選択部
64 基準方向決定部
65 印刷制御部
66 誤差取得部
67 印刷方向決定部
68 最小間隔取得部
69 領域決定部
72 第2印刷層(印刷層)
75 突起