(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035530
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】空洞探査器
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01V3/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142444
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】399116054
【氏名又は名称】上森 三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上森 三郎
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB05
2G105DD01
2G105EE02
2G105LL03
(57)【要約】
【課題】簡便、且つ迅速に空洞の探査を行うことができる空洞探査器の提供。
【解決手段】L字型の金属棒を有する探査部と、前記探査部の前記金属棒の一端側を、回転自在に把持するための把持部と、前記探査部の前記金属棒の他端から垂下するアンテナと、前記金属棒を挟んで互いに対向する少なくとも一対の第一永久磁石を有する第一磁界発生器とを備える。一対の前記第一永久磁石は、前記金属棒の一端側から見た際に、前記金属棒を中心として、磁力線が右回転となるように、前記第一磁界発生器に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L字型の金属棒を有する探査部と、
前記探査部の前記金属棒の一端側を、回転自在に把持するための把持部と、
前記探査部の前記金属棒の他端から垂下するアンテナと、
前記金属棒を挟んで対向する少なくとも一対の第一永久磁石を有し、前記金属棒の一端側から見た際に、前記金属棒を中心として、右回転の磁力線を形成する第一磁界発生器と、
を備える、空洞探査器。
【請求項2】
前記第一磁界発生器は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ前記仮想枠の中心に対して等距離になるように配列された二対の前記第一永久磁石を備える、請求項1に記載の空洞探査器。
【請求項3】
前記第一磁界発生器は、前記把持部に配置されている請求項1又は2に記載の空洞探査器。
【請求項4】
前記第一磁界発生器よりも、前記金属棒の一端側に、少なくとも一対の第二永久磁石を有する第二磁界発生器をさらに備え、
前記一対の第二永久磁石は、前記金属棒を挟んで互いに対向し、互いに対向する面側が同一磁極である、請求項1から3のいずれかに記載の空洞探査器。
【請求項5】
前記第二磁界発生器は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ前記仮想枠の中心に対して等距離になるように配列された二対の前記第二永久磁石を有し、隣接する第二永久磁石の前記金属棒に臨む面側の磁極が互いに逆極性である、請求項4に記載の空洞探査器。
【請求項6】
前記把持部は、前記第一磁界発生器、及び前記第二磁界発生器を保持するための保持具を有する、請求項4又は5に記載の空洞探査器。
【請求項7】
前記金属棒は、IACS導電率が70%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の空洞探査器。
【請求項8】
前記金属棒は、クロム銅を含む、請求項7に記載の空洞探査器。
【請求項9】
前記アンテナは、銅を含む、請求項1~8のいずれかに記載の空洞探査器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の空洞探査器の構成を有する、ダウジングロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞を探査するための空洞探査器に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の空洞、埋設配管、及び遺跡調査等のため、地中空洞探査が行われている。特に、トンネル工事、埋設配管の老朽化、及び豪雨による道路冠水などを原因とする、地中の空洞化による陥没は、突然発生することが多く、人命に関わる重大事故を引き起こす可能性がある。陥没事故を未然に防ぐためには、地中空洞探査により空洞を把握する必要がある。
【0003】
地中空洞探査には、表面波探査、地中レーダー探査、及び重力探査が主に用いられている。また、赤外線カメラで撮像した地表面の温度分布の画像を解析することで、地中空洞探査を行う技術も知られている。
【0004】
特許文献1には、地中に埋設された配管にマイクロ波を放射して加熱するマイクロ波発生装置と、地表面の温度分布に応じた階調画像を生成する赤外線撮像装置とを用い、埋設配管の地中の経路を探索するシステムが開示されている。
【0005】
非特許文献1には、地表加熱後、地表面の温度分布を、遠赤外線領域を撮影できる赤外線カメラで得られた画像を解析することで、埋没物を探査する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平田克己著、「赤外線熱画像解析による浅層地中探査に関する基礎検討」小山工業高等専門学校研究紀要 第44号(2011) p.143-146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術は、探査対象である配管を、赤外線カメラの撮像開始前に加熱する必要がある。非特許文献1に記載の技術は、探査領域の地表を、赤外線カメラの撮像開始前に加熱する必要がある。すなわち、特許文献1、及び非特許文献1に記載の技術による地中空洞探査は、加熱工程が必要であり、操作が煩雑で時間がかかる。
【0009】
また、特許文献1、及び非特許文献1に記載の技術は、上述の配管や地表を加熱するための加熱装置と、加熱装置による加熱後、地表の温度分布を撮像するための赤外線カメラと、赤外線カメラで撮像された、地表の温度分布を分析するための分析装置と、が必要となる。すなわち、特許文献1、及び非特許文献1に記載の技術による地中空洞探査は、加熱装置、赤外線カメラ、及び分析装置のシステムが必要となり、システムが大型化する。
【0010】
なお、ダウジングロッドは、玩具として市販されており、余興として楽しまれている。
【0011】
本発明は、簡便、且つ迅速に、空洞探査を行うことができる空洞探査器の提供を目的としている。また、本発明の空洞探査器は、ダウジングロッドの玩具としても利用することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、L字型の金属棒を有する探査部と、上記探査部の上記金属棒の一端側を、回転自在に把持するための把持部と、上記探査部の上記金属棒の他端から垂下するアンテナと、上記金属棒を挟んで対向する少なくとも一対の第一永久磁石を有し、上記金属棒の一端側から見た際に、上記金属棒を中心として、右回転の磁力線を形成する第一磁界発生器と、を備える空洞探査器である。
また、本発明の空洞探査器は、余興としてダウジングロッドを楽しむための、玩具としても利用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空洞探査器、及びそれを用いる探査方法は、簡便、且つ迅速に探査対象の探査を行うことができる。
【0014】
なお、本発明の空洞探査器は、玩具としても用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、空洞探査器の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、空洞探査器の使用形態を示す側面図である。
【
図4】第一磁界発生器、及び第二磁界発生器の斜視図である。
【
図5】第一磁界発生器、及び第二磁界発生器の、
図4におけるX-X断面図である。
【
図6】第一磁界発生器の
図1におけるA-A断面図である。
【
図7】第二磁界発生器の
図1におけるB-B断面図である。
【
図9】本発明の別実施形態に係る、空洞探査器の側面図である。
【
図10】導線に作用する力の向きを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
(1)本発明の一実施形態に係る空洞探査器は、L字型の金属棒を有する探査部と、
上記探査部の上記金属棒の一端側を、回転自在に把持するための把持部と、
上記探査部の上記金属棒の他端から垂下するアンテナと、
上記金属棒を挟んで対向する少なくとも一対の第一永久磁石を有し、前記金属棒の一端側から見た際に、前記金属棒を中心として、右回転の磁力線を形成する第一磁界発生器と、
を備える。
【0018】
上記(1)の空洞探査器は、簡便、且つ迅速に探査対象の探査を行うことができる。
【0019】
(2)上記(1)に記載の空洞探査器において、上記第一磁界発生器は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ前記仮想枠の中心に対して等距離になるように配列された二対の上記第一永久磁石を備えている。
【0020】
上記(2)に記載の空洞探査器は、探査精度を高めることができる。
【0021】
(3)上記(1)又は(2)に記載の空洞探査器において、上記第一磁界発生器は、上記把持部に配置されている。
これにより、空洞探査器をコンパクトにすることができる。
【0022】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の空洞探査器において、上記第一磁界発生器よりも、上記金属棒の一端側に、少なくとも一対の第二永久磁石を有する第二磁界発生器をさらに備え、
上記一対の第二永久磁石は、上記金属棒を挟んで互いに対向し、互いに対向する面側が同一磁極である。
これにより、探査精度をさらに高めることができる。
【0023】
(5)上記(4)に記載の空洞探査器において、上記第二磁界発生器は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ前記仮想枠の中心に対して等距離になるように配列された二対の前記第二永久磁石を有し、隣接する第二永久磁石の前記金属棒に臨む面側の磁極が互いに逆極性である。
これにより、隣接する第二永久磁石の端部間の4箇所で、それぞれ磁力線を形成することができ、探査精度をさらに高めることができる。
【0024】
(6)上記(4)又は(5)に記載の空洞探査器において、上記把持部は、上記第一磁界発生器、及び上記第二磁界発生器を保持するための保持具を有する。
【0025】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の空洞探査器において、上記金属棒は、IACS導電率が70%以上である。
【0026】
(8)上記(7)に記載の空洞探査器において、上記金属棒は、クロム銅を含む。
【0027】
上記(2)から(8)の空洞探査器は、探査対象の探査能が向上する。
【0028】
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載の空洞探査器において、上記アンテナは、銅を含む。
【0029】
(10)上記(2)から(9)の空洞探査器は、空洞の探査を簡便、且つ迅速に行うことができる。
【0030】
(11)上記(1)から(10)のいずれかに記載の空洞探査器の構成を有する、ダウジングロッド。
【0031】
(12)上記(11)のダウジングロッドは、玩具としても用いることができる。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る、空洞探査器1の側面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る、空洞探査器1の使用形態を示す側面図である。
図3A、及び
図3Bは、探査部10の側面図である。
【0033】
本実施形態の空洞探査器1は、探査部10と、把持部20と、アンテナ30を備えている。把持部20には、後述する第一磁界発生器21、第二磁界発生器22、及び保持具23が配置されている。空洞探査器1を用い、探査を行う際は、
図2に示すように、二つの空洞探査器1が使用される。一方の空洞探査器1の把持部20は、右手で把持される。他方の空洞探査器1の把持部20は、左手で把持される。探査部10は、その探査側末端12Tに、アンテナ30を吊り下げるための取付具31を有している。
【0034】
空洞探査器1の探査部10は、実質的にL字型の金属棒で構成されている。L字型の金属棒は、金属であれば良く、特に制限されないが、導電性が高く耐腐食性がある金属が好ましく、IACS導電率が70%以上の金属が、特に好ましい。本実施形態のL字型の金属棒には、クロム銅が、用いられている。
【0035】
本実施形態の探査部10のL字型の金属棒は、取付具31が配置される探査側金属棒12と、第一磁界発生器21、第二磁界発生器22、及び保持具23に設けられている挿入孔H1(
図5及び
図8参照)に挿入される挿入側金属棒11とを有している。取付部31は、探査側金属棒12の、後述するスライド金属棒12Bの末端に配置されている。そのため、本実施形態では、探査側金属棒12の探査側末端12Tは、取付具31の末端となる。
【0036】
図3A、及び
図3Bに示されるように、本実施形態の探査側金属棒12は、2本の固定金属棒12A、スライド金属棒12B、固定部101、及びスライド部102を備えている。2本の固定金属棒12Aは、互いに平行となるように、挿入側金属棒11の
図3Aにおいて上端部から、挿入側金属棒11と直角に延びている。
2本の固定金属棒12Aの、挿入側金属棒11と反対側の末端には、固定部101が固定されている。スライド部102は、2本の固定金属棒12Aが摺動可能に挿入される、2つの挿入孔(図示せず)を有している。これにより、スライド部102は、2本の固定金属棒12Aに沿って、挿入側金属棒11と、固定部101との間をスライドすることが可能となるように構成されている。
【0037】
スライド金属棒12Bは、2本の固定金属棒12Aの間に、且つ2本の固定金属棒12Aと平行となるように、スライド部102に固定されている。また、固定部101は、スライド金属棒12Bが摺動可能に挿入される、1つの挿入孔(図示せず)を有している。
図3Aに示されるように、スライド部102が、最も挿入側金属棒11側にスライドした状態において、スライド金属棒12Bは、取付具31が固定部101と接触しない範囲で、固定部101の挿入孔を貫通する長さを有している。
【0038】
探査時には、
図3Bに示すように、探査側金属棒12が伸ばされた状態(スライド部102が、最も固定部101側にスライドした状態)で、空洞探査器1は使用される。このように、探査側金属棒12を、伸縮可能な構成とすることで、探査前の空洞探査器1の携帯性が向上する。なお、探査側金属棒12のL字型の金属棒は、一体型で形成しても良い。また、探査側金属棒12のL字型の金属棒は、複数の金属棒に分離できる構成とすることもできる。
【0039】
図3Aを参照して、挿入側金属棒11は、把持部20に対し、その挿入側末端(
図3Aにおいて下端)11Tの側から挿入されている。挿入側金属棒11は、第一磁界発生器21、第二磁界発生器22、及び保持具23に設けられている挿入孔H1に挿入される。なお、挿入側金属棒11が把持部20に挿入された状態において、第二磁界発生器22は、第一磁界発生器21よりも、挿入側末端11T側に配置される。これにより、空洞探査器1の探査の精度が向上することが判明している。
【0040】
図4は、第一磁界発生器21、及び第二磁界発生器22の斜視図である。
図5は、第一磁界発生器21、及び第二磁界発生器22の、
図4におけるX-X断面である。
【0041】
第一磁界発生器21、及び第二磁界発生器22の構成は、第一磁界発生器21の第一永久磁石213、及び第二磁界発生器22の第二永久磁石223の、磁極の配列以外は、同じである。以下、第一磁界発生器21、及び第二磁界発生器22の構成を、第一磁界発生器21を主として説明する。
【0042】
第一磁界発生器21は、筒体211、外装ケース212、及び第一永久磁石213を有している。筒体211は、挿入側金属棒11が挿入される挿入孔H1を形成する部材である。
外装ケース212は、略球状のものであり、その内部に4つの第一永久磁石213、及び筒体211を保持している。外装ケース212は、保持する4つの第一永久磁石213が、筒体211に挿入された挿入側金属棒11を、略均等に取り囲むように配置されている。なお、
図4に示される第一磁界発生器21(22)の外装ケース212(222)は、透明な樹脂成形品であって、外周面が多面体からなるものを例示している。
【0043】
図6は、
図1において矢印Y1で示される、挿入側金属棒11の挿入側末端11Tの側から見た、第一磁界発生器21のA-A断面である。
【0044】
図6の矢印FL1は、第一磁界発生器21に保持される4つの第一永久磁石213で形成される磁力線の向きを示す。4つの第一永久磁石213は、挿入側金属棒11を挟んで互いに対向する2個を一対として二対設けられている。4つの第一永久磁石213は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ仮想枠(正四角形)の中心に対して各磁石が等距離になるように配置されている。これにより、仮想枠の中心には、回転を伴う動的なゼロ磁場が形成されていることが確認されている。
【0045】
矢印Y1から、第一磁界発生器21のA-A断面を見た場合、4つの第一永久磁石213は、これらで形成される磁力線の向きが、第一磁界発生器21に挿入される挿入側金属棒11を中心として、矢印FL1で示すように右回転になるように、それぞれのN極、及びS極が配置されている。これにより、空洞探査器1の探査の精度が向上する。
なお、各第一永久磁石213は、磁束密度が高いネオジム磁石を用いるのが好ましい。また、
図6には、N極、及びS極の配置の理解を補助すべく、4つの第一永久磁石213それぞれに、「N」、及び「S」の符号が、標記されている。
【0046】
図7は、
図1において矢印Y1で示される、挿入側金属棒11の挿入側末端11Tの側から見た、第二磁界発生器22のB-B断面である。
図7の矢印FL2は、第二磁界発生器22に保持される4つの第二永久磁石223で形成される磁力線の向きを示す。4つの第二永久磁石223は、探査側金属棒12を挟んで互いに対向する2個を一対として二対設けられている。4つの第二永久磁石223は、正四角形の仮想枠の各辺に沿って、且つ仮想枠(正四角形)の中心に対して各磁石が等距離になるように配置されている。
【0047】
互いに対向する一対の第二永久磁石223は、互いに対向する面側がN極になるように配置されている。他の一対の第二永久磁石223は、互いに対向する面側がS極になるように配置されている。つまり、二対の第二永久磁石223は、隣接する第二永久磁石223の挿入側金属棒11に臨む面側の磁極が、互いに逆極性になるように配列されている。これにより、隣接する第二永久磁石223の端部間の4箇所で、それぞれ磁力線を形成することができる。
各磁力線の向きは、挿入側金属棒11を挟んで対向する2箇所が、矢印FL2で示されるように、右回転になる。また、挿入側金属棒11を挟んで対向する他の2箇所が、矢印FL3で示されるように、左回転になる。
以上により、仮想枠(正四角形)の中心には、磁力線が拮抗した静的なゼロ磁場が形成されていることが確認されている。
上記の構成の第二磁界発生器22により、空洞探査器1の探査の精度がより効果的に向上することが確認されている。
なお、各第二永久磁石223は、磁束密度が高いネオジム磁石が用いられる。また、
図7には、N極、及びS極の配置の理解を補助すべく、4つの第一永久磁石223それぞれに、「N」、及び「S」の符号が、標記されている。
【0048】
図8は、保持具23の側面図を示す。保持具23は、側面から見た場合、略S字の形状を有している。保持具23は、
図1に示すように、挿入側金属棒11の挿入側末端11Tにねじ込まれたねじSWにより、挿入側金属棒11からが抜けるのが規制されている。
保持具23の、矢印Y2の遠方側、つまり
図8の上側のカーブ部分は、第一磁界発生器21が収容される、第一収容部231となる。保持具23の、矢印Y2の近方側、つまり
図8の下側のカーブ部分は、第二磁界発生器22が収容される、第二収容部232となる。
【0049】
第一収容部231及び第二収容部232の、
図8における上下方向の長さは、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22の外径よりもわずかに長くなっている。このため、保持具23から挿入側金属棒11を引き抜いた状態で、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22を、それぞれ第一収容部231及び第二収容部232に容易に挿抜することができる。
なお、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22は、保持具23とともに把持されるので、つまり、把持部20の一部を兼ねるので、その分、空洞探査器1をコンパクトにすることができる。
【0050】
保持具23に設けられる3つの挿入孔H1の中心は、挿入側金属棒11が貫通できるように、同一軸線上に配置されている。また、保持具23に設けられる3つの挿入孔H1は、同一径である。そのため、矢印Y2から保持具23を見た場合、挿入孔H1は、一つの円孔として示される(図示せず)。
【0051】
アンテナ30は、金属であれば良く、特に制限されない。探査側金属棒12と同様に、アンテナ30に用いられる金属も、伝導性が高く耐腐食性がある金属が好ましく、IACS導電率が70%以上の金属が、特に好ましい。アンテナ30は、棒状、又はチェーン状に構成することができるが、チェーン状が好ましい。チェーン状に構成されたアンテナ30は、水平な地面に対し垂直に保たれるため、空洞探査器1の探査精度が向上する。本実施形態のアンテナ30には、銅が用いられている。これにより、空洞探査器1は、地中空洞の探査が可能となる。なお、アンテナ30に、金が用いられる場合、空洞探査器1は、金の探査が可能となる。
【0052】
以上の構成の空洞探査器1は、挿入側金属棒11を、第一磁界発生器21、第二磁界発生器22、及び保持具23から抜くと、これらを別々に分解することができる。このため、空洞探査器1は、探査前に、空洞探査器1の第一磁界発生器21、第二磁界発生器22、及び保持具23を分割して持ち運ぶことが可能となり、空洞探査器1の携帯性が向上する。
【0053】
次に、空洞探査器1の使用方法について説明する。
まず、探査開始時に、探査者は、右手に把持する空洞探査器1の探査側末端12Tと、左手に把持する空洞探査器1の探査側末端12Tとを結ぶ直線、及び両空洞探査器1の探査側金属棒12が、略水平になるように、把持状態を調整する。この状態で、左右の探査側金属棒12の探査側末端12Tどうしが離反して(開いて)いる場合には、空洞探査器1及び探査側金属棒12が互いに略平行になるように、把持状態を調整する。
なお、探査開始時の、左右の探査側末端12Tを結ぶ直線の長さは、把持部20を握った左右の手の握りこぶしどうしが接触する程度が好ましい。
【0054】
次に、探査者は、上記把持状態を調整後、探査を行う領域内を、上記調整した把持状態を維持しつつ、0.1~0.3m/秒でゆっくりと歩行する。探査者が、地中に空洞が存在する領域に入ると、上記左右の探査側末端12Tとを結ぶ直線の長さが長くなる。より具体的には、右手に把持する空洞探査器1が、挿入側金属棒11を中心として、探査者から見て右方向へ旋回する。また、左手に把持する空洞探査器1が、挿入側金属棒11を中心として、探査者から見て左方向へ旋回する。これにより、探査者は、地中の空洞の有無を、探査することができる。
【0055】
図9は、本発明の別実施形態に係る、空洞探査器1の側面図を示す。
図9に示す空洞探査器1と
図1に示す空洞探査器1とは、保持具23の構成が相違するのみである。したがって、他の構成部材ついては説明を省略する。
図9に示す空洞探査器1の持具23は、側面から見て左右の面が、挿入側金属棒11に対して傾斜するほぼ平板状のものである。保持具23は、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22を、保持具23と一体に保持する第一保持部23A及び第二保持部23Bを有している。第一保持部23A及び第二保持部23Bは、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22の外周面を、半周以上にわたって包囲している。また、第一保持部23A及び第二保持部23Bの内周面は、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22の外周面に合致する曲面で構成されている。さらに、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22は、第一保持部23A及び第二保持部23Bに対して無理嵌めされている。これにより、保持具23と、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22とを一体化している。
【0056】
このように、保持具23と第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22とを一体化することにより、保持具23とともに第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22を挿入側金属棒11から抜き取った状態で、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22が保持具23から脱落するのを防止することができる。このため、一旦抜き取った保持具23、第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22を、再び挿入側金属棒11に挿入する際に、保持具23の挿入孔H1と第一磁界発生器21及び第二磁界発生器22の挿入孔H1との芯合わせが不要となる。これにより、空洞探査器1の組み立てが容易となる。
【0057】
<効果確認試験>
本発明に係る空洞探査器の効果を確認するための試験を行った。この試験は、兵庫県神河町において、40歳から67歳の男性7人の被検者により空洞探査を行った。また、試験には、
図1に示す空洞探査器1を用いた。
【0058】
ランダムな間隔で直線状に、空洞を有する探査対象を埋設した。探査対象、及び埋設条件を表1に示す。なお、被検者は、探査対象の埋設位置を知らされていない。
【0059】
【0060】
空洞探査器1の使用方法を被検者に説明した後、探査対象の埋設領域を、両手に空洞探査器1を持つ被検者に歩かせた。左右の空洞探査器1の探査側末端12Tを結ぶ直線の長さが長くなった(探査側末端12Tが開いた)時に、被検者に探査対象が有る旨の申告をさせた。探査実験を計3回行った。
【0061】
1回目の実験では、7人中5人が、鉄管、硬質塩化ビニール管、硬質塩化ビニール管(水)、塩化ビニール管、及び塩化ビニール管(水)の埋設位置の特定に成功した。空洞探査器1の使用方法を再度説明した後、2回目の実験を行ったところ、7人中6人が、鉄管、硬質塩化ビニール管、硬質塩化ビニール管(水)、塩化ビニール管、及び塩化ビニール管(水)の埋設位置の特定に成功した。三回目の実験では7人全員が、埋設位置の特定に成功した。
上記、探査実験から、本発明の空洞探査器により、地中空洞探査が可能であることが、実験的に示された。
【0062】
本発明の空洞探査器により地中の空洞探査ができる理由は、以下の通りであると推測される。
空洞探査器1の挿入側金属棒11及び探査側金属棒12には、第一磁界発生器21から発生する磁界によって、その中心周りに右回転する磁力線が形成される。この結果、右ねじの法則により、挿入側金属棒11及び探査側金属棒12には、挿入側金属棒11側から探査側金属棒12の末端12Tに向かって超微弱電流が流れる。この超微弱電流は、アンテナ30を伝って放電される。
【0063】
図10を参照して、2本の平行な導線d1,d2に、同一方向に電流を流すと、右ネジの法則により生じる回転磁界の磁力線は、同じ方向に回転する。このため、2本の導線の間の空間SPにおいては、磁力線の方向が互いに逆向きとなるので、磁束は打ち消し合う。この結果、空間SPにおける磁力線の密度が減少し、電線どうしは引き合うことになる。この点は、物理学の法則として周知である。
【0064】
ところで、鉄は地球重量の約30%を占めており、他の金属と比べて埋蔵量が格段に多いので、地球は大きな鉄の塊で構成されていると言われている。このため、地中の鉄が発する電子が、地表面に向けて常に放射されていると言われている。
この鉄からの電子の有無が、空洞探査器1の探査側金属棒12が左右に開く要因になると推測される。さらに詳述すると、空洞探査において、地中に空洞が存在しない場所では、地表面から放射される鉄からの電子が、アンテナ30を伝って、探査側金属棒12方向に流れる。この鉄からの電子の流れの向きは、探査側金属棒12を流れる超微弱電流の電子の流れの向きと一致する。このため、探査側金属棒12に生じた超微弱電流は、アンテナ30側にスムースに流れて放電される。したがって、略平行に把持した一対の探査側金属棒12は、鉄からの電子を受けている限り、互いに引き合う力が作用して平行状態が維持される。
【0065】
ところが、地中に空洞が存在する場所では、地中から放射される鉄からの電子が、空洞により遮断される。このため、アンテナ30に鉄からの電子が流れなくなり、探査側金属棒12を流れる超微弱電流が遮断される。このため、互いに引き合う力が消失し、その反動により、両探査側金属棒12は互いに離反する(開く)ことになる。これにより、地中に空洞が存在することを知得することができると推測される。
【0066】
この発明は前記した実施形態に限定されるものでない。例えば、第一永久磁石213及び第二永久磁石223は、互いに対向させて少なくとも一対設けられていればよい。また、探査側金属棒12は1本の金属棒で構成してもよい。
さらに、第一永久磁石213及び第二永久磁石223は、探査部10側に設けてもよい。但し、これらを把持部20側に設ける方が、探査部10の全長を短くすることができ、空洞探査器1をコンパクトにすることができるので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明された、空洞探査器は、ダウジングロッドとして適用されうる。
【符号の説明】
【0068】
1 空洞探査器
10 探査部
11 挿入側金属棒
11T 挿入側末端
12 探査側金属棒
12A 固定金属棒
12B スライド金属棒
12T 探査側末端
101 固定部
102 スライド部
20 把持部
21 第一磁界発生器
211 筒体
212 外装ケース
213 第一永久磁石
22 第二磁界発生器
221 筒体
222 外装ケース
223 第二永久磁石
23 保持具
231 第一収容部
23A 第一保持部
232 第二収容部
23B 第二保持部
30 アンテナ
31 取付具
H1 挿入孔
SW ねじ
SP 空間