(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035558
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A41D13/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142507
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】517187658
【氏名又は名称】株式会社ミンラック
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスクの着用時にマスクと口、鼻との間に空間を形成し、この空間を確実に維持できるようにしたマスクを提供する。
【解決手段】本発明のマスク1は、口及び鼻を覆うマスク本体2と、前記マスク本体2の両端部に設けた耳掛け部3、3とを有し、前記マスク本体2は、口ワイヤー8が設けられている領域13を有し、前記口ワイヤー8が設けられている領域13に空間部形成部材7を設けてなり、前記空間部形成部材7は、前記マスク本体2を湾曲させることができ且つ湾曲により形成される空間部を維持することができるための曲げ特性を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口及び鼻を覆うマスク本体と、前記マスク本体の両端部に設けた耳掛け部とを有し、前記マスク本体は、口ワイヤーが設けられている領域を有し、前記口ワイヤーが設けられている領域に空間部形成部材を設けてなり、前記空間部形成部材は、前記マスク本体を湾曲させることができ且つ湾曲により形成される空間部を維持することができるための曲げ特性を有していることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記空間部形成部材は、厚みが0.1mm以上、0.4mm以下であり且つ目付量が、40g/m2以上、80g/m2以下である請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記空間部形成部材は、スパンボンド不織布からなる請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体は、複数の不織布シートを重ね合わせた不織布複合層からなり、前記空間部形成部材は前記不織布複合層を構成する不織布シート相互間に介在して設けられている請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記空間部形成部材と前記口ワイヤーとは、相互に接触した状態で、前記不織布複合層を構成する不織布シート相互間に介在して設けられている請求項1~4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
前記空間部形成部材は、接合部によって前記不織布複合層を構成する不織布シートに接合されている請求項1~5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
前記マスク本体は、鼻ワイヤーが収納されている鼻ワイヤー収納部を有している請求項1~6のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
前記マスク本体は、複数の折り部を有している請求項1~7のいずれかに記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時の圧迫感がなく使用感に優れたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは主に衛生面から日常使用されているが、従来からマスクは一般的に不織布やガーゼ等の柔軟な材料を用いて製造されている。マスクは、口や鼻を覆うように装着されるため、着用時に圧迫感があるものであった。特に、マスクを着用した状態で会話をする際に、マスクによって圧迫されているため話しにくいという問題があった。
【0003】
上記問題点を解決するため従来から種々検討されており、例えば下記特許文献1は、口ワイヤーを設けたマスクを提案している。同文献には、被覆部の左右方向に沿ってボックスプリーツを設け、このボックスプリーツを構成する不織布層の間に口ワイヤーを介装して設けてなるマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたマスクにおいて、マスク着用時に口ワイヤーが湾曲してマスクと口や鼻との間に通気のための隙間が形成されるものであるが、口ワイヤーによりある程度の隙間は形成されるとしても、十分な隙間形成は不可能であった。従来公知の口ワイヤーは一般的に上下幅寸法の小さい線状の細長い可撓性合成樹脂成形品からなるものであるため、口ワイヤーの湾曲によりマスクシートを押し広げる力にも限界があり、口、鼻との接触領域を含む広い範囲での隙間を設けることは不可能であった。また、口ワイヤーは柔軟な不織布シートに取り付けられているため、会話時の息遣いにより、マスクが口及び鼻に接触したり離れたりして、マスクが前後に揺れ動くという現象がみられていた。特に、運動時のように息遣いの激しいときにはマスクの前後の動きによって、マスクが口及び鼻に密に接触し、圧迫感が顕著になるという問題があった。このように従来のマスクにおける口ワイヤーは、隙間の形成状態を維持する機能において劣るものであった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、マスクの着用時にマスクと口、鼻との間に空間を形成し、この空間を確実に維持できるようにしたマスクを提供することを目的とするものである。従ってまた本発明は、マスクを着用して会話や運動を行っても、マスクが口及び鼻に密に接触して圧迫感や不快感を生じさせることがない使用感に優れたマスクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)口及び鼻を覆うマスク本体と、前記マスク本体の両端部に設けた耳掛け部とを有し、前記マスク本体は、口ワイヤーが設けられている領域を有し、前記口ワイヤーが設けられている領域に空間部形成部材を設けてなり、前記空間部形成部材は、前記マスク本体を湾曲させることができ且つ湾曲により形成される空間部を維持することができるための曲げ特性を有していることを特徴とするマスク、
(2)前記空間部形成部材は、厚みが0.1mm以上、0.4mm以下であり且つ目付量が、40g/m2以上、80g/m2以下である前記(1)に記載のマスク、
(3)前記空間部形成部材は、スパンボンド不織布からなる前記(1)又は(2)に記載のマスク、
(4)前記マスク本体は、複数の不織布シートを重ね合わせた不織布複合層からなり、前記空間部形成部材は前記不織布複合層を構成する不織布シート相互間に介在して設けられている前記(1)~(3)のいずれかに記載のマスク、
(5)前記空間部形成部材と前記口ワイヤーとは、相互に接触した状態で、前記不織布複合層を構成する不織布シート相互間に介在して設けられている前記(1)~(4)のいずれかに記載のマスク、
(6)前記空間部形成部材は、接合部によって前記不織布複合層を構成する不織布シートに接合されている前記(1)~(5)のいずれかに記載のマスク、
(7)前記マスク本体は、鼻ワイヤーが収納されている鼻ワイヤー収納部を有している前記(1)~(6)のいずれかに記載のマスク、
(8)前記マスク本体は、複数の折り部を有している前記(1)~(7)のいずれかに記載のマスクを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、マスク本体を湾曲させることができ且つ湾曲により形成される空間部を維持することができるための曲げ特性を有している空間部形成部材を設けたので、マスクの着用の際、空間部形成部材と口ワイヤーとの協働作用により、マスク本体と、口及び鼻との間に一段と広い空間部を形成することができ、また空間部の維持機能を一段と大きくすることができる。従って、マスクの着用時に会話を行ったり、或いは運動を行ったりした場合、そのときの息遣いにより、マスク本体が口及び鼻に接触したり離れたりして、マスク本体が前後に揺れ動くという現象を抑制することができ、会話時や運動時等にマスク本体が口及び鼻に密に接触して圧迫感や不快感を生じさせるという不具合を解消することができる。このように、空間部形成部材は口ワイヤーと協働して、マスク着用時の空間部の形成作用及びマスク着用中の空間部の維持作用を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスクの正面図である。
【
図2】
図1のA-A線縦断面図に表れる層構成の各構成要素を分離して描いた模式図である
【
図3】
図1のB-B線縦断面図に表れる層構成の各構成要素を分離して描いた模式図である
【
図4】
図1のC-C線縦断面図に表れる層構成の各構成要素の図示を省略し、外形線のみを描いた模式図である。
【
図5】空間部形成部材の寸法について説明する説明図である。
【
図6】本実施形態のマスクを、
図1に示す折り畳み状態から、上下に引っ張って広げた状態の態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマスク1の正面図である。本実施形態において、「上方」とは、
図1を正面から見た場合の上方向を指し、「下方」とは、
図1を正面から見た場合の下方向を指し、また「左方向」、「右方向」とは、
図1を正面から見た場合のそれぞれ左方向、右方向を指す。マスク1は、利用者がマスクを着用したとき利用者の口及び鼻を覆うことができる大きさの形状に形成されている。同図に示すマスク1は長方形の形状に形成されているが、長方形に限定されず他の形状のものでもよい。マスク1は、この長方形状に形成されたマスク本体2と、マスク本体2の左方向側端部2a及び右方向側端部2bにそれぞれ設けた耳掛け部3、3を有している。
【0011】
マスク本体2は、複数の不織布シートを重ね合わせた不織布複合層10からなる。
図2は、
図1のA-A線に沿う縦断面図を模式的に示した模式図である。即ち、
図2は
図1のA-A線縦断面図に表れる層構成の各構成要素を分離して描いた模式図である。同図に示すように本実施形態の不織布複合層10は、第1不織布シート4と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とからなる。第1不織布シート4は、マスク本体2の外表面に位置する不織布シート即ち、マスク着用時に顔面に接触する側とは反対方向の側に位置する不織布シートであり、また第3不織布シート6は、マスク本体2の内表面に位置する不織布シート即ち、マスク着用時に顔面に接触する側の不織布シートである。7は湾曲自在な空間部形成部材、8は口ワイヤーで、それらは共に第1不織布シート4と第2不織布シート5の相互間に介在して設けられている。尚、本実施形態では不織布複合層10を構成する不織布シートとして、第1不織布シート4と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6の3枚の不織布シートを用いているが、これに限定されず2枚以上であればよく、不織布複合層10を構成する不織布シートの枚数は任意に選択できる。耳掛け部3、3は、それぞれ伸縮性のあるゴム状紐から形成されている。
【0012】
9は、
図1に示すように口ワイヤー8の周りを囲むようにして形成された接合部であり、この接合部9は、第1不織布シート4と、空間部形成部材7と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とを一体的に接合している。この口ワイヤー8の周りを囲む接合部9によって、口ワイヤー8が所定の区画内に収納された状態となり、それにより口ワイヤー収納部14が形成されている。接合部9によって空間部形成部材7も接合されているので、空間部形成部材7のうちの接合部9によって囲まれている部分は、口ワイヤー収納部14内に存在することになる。このように、口ワイヤー収納部14には空間部形成部材7の一部と口ワイヤー8とが相互に接触した状態で収納されている。接合部9は、超音波シール、熱シール、接着剤による接着等の手段により形成されるが、超音波シールによる接合が好ましい。接合部9は点状に形成されているが、点状に限定されるものではない。
【0013】
不織布複合層10を構成する第1、第2、第3の不織布シート4、5、6はそれぞれ汎用の不織布を用いて形成され、それらの不織布シートの素材として用いられる不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。不織布の繊維基材としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等から選ばれた1種又は2種以上の混合繊維が挙げられ、不織布の種類によって適宜選択して用いられる。
【0014】
本実施形態において、第1不織布シート4として、スパンボンド不織布を用いることが好ましく、その繊維基材としては、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維、ナイロン繊維等を用いることができるが、ポリプロピレン繊維を用いることが好ましい。また第1不織布シート4の目付量は、15m2以上、35m2以下が好ましい。
【0015】
また、第2不織布シート5として、メルトブロー不織布を用いることが好ましく、その繊維基材としては、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等を用いることができるが、ポリプロピレン繊維を用いることが好ましい。第2不織布シート5の目付量は、20m2以上、30m2以下が好ましい。この第2不織布シート5は、フィルター機能を有する。
【0016】
更に、第3不織布シート6として、スパンボンド不織布を用いることが好ましく、その繊維基材としては、前記した第1不織布シート4におけると同様の繊維を用いることができるが、その他にコットン繊維を用いることができる。ポリプロピレン繊維又はコットン繊維を用いることが好ましい。第3不織布シート6の目付量は、15m2以上、35m2以下が好ましい。
【0017】
図1において、マスク本体2の左右方向が長手方向であり、これを横切る方向(垂直方向)が短手方向である。
図1及び
図4に示すように、マスク本体2には、長手方向の一端から他端に亘って直線状に折られた複数の折り部11が設けられている。これらの折り部11はマスク本体2の短手方向に沿って順次設けられている。折り部11は、マスク本体2の外表面に表れている外表面折り部11a、11b、11c及び11dと、その内表面に表れている内表面折り部11e、11f、11g及び11hとからなり、これらの外表面折り部11a、11b、11c、11d及び内表面折り部11e、11f、11g、11hは連続して形成されており、襞状の折り目を形成している。これらの複数の折り部11は、不織布複合層10を所定位置で折り畳むことにより形成されるものである。
【0018】
マスク本体2の上方端部及び下方端部にもそれぞれ折り部が形成されている。即ち、不織布複合層10の上方端部付近及び下方端部付近を、それぞれマスク本体2の外表面側に折り畳み、それによりマスク本体2に上端折り部12a及び下端折り部12bが形成されている。尚、
図4は、
図1のC-C線縦断面図に表れる層構成の各構成要素の図示を省略し、外形線のみを描いた模式図である。
【0019】
外表面折り部11bと、外表面折り部11cと、マスク本体2の左方向側端部2aと、マスク本体2の右方向側端部2bとの間に区画される領域は、マスク本体2の略中央に位置する領域であり、この領域内に前記した口ワイヤー8が設けられている。そして、この口ワイヤー8が設けられている領域13に、前記した湾曲自在な空間部形成部材7が設けられている。空間部形成部材7と口ワイヤー8は、相互に対向して設けられ且つ相互に接触した状態で、第1不織布シート4と第2不織布シート5との間に介在して設けられている。
【0020】
空間部形成部材7の大きさは、前記領域13に収納される大きさに形成されている。即ち、空間部形成部材7の上下幅は、外表面折り部11bから外表面折り部11cまでの長さの範囲内の寸法を有し、また空間部形成部材7の左右長さは、マスク本体2の左方向側端部2aからマスク本体2の右方向側端部2bまでの長さの範囲内の寸法を有している。空間部形成部材7の寸法について
図5に基づき具体的に説明すると、空間部形成部材7の上下幅Wは、15mm以上、5.5cm以下が好ましい。この場合において、口ワイヤー8の上部端縁8aから空間部形成部材7の上部端縁7aまでの長さW1は、5mm以上、2.5cm以下が好ましく、また口ワイヤー8の下部端縁8bから空間部形成部材7の下部端縁7bまでの長さW2は、同様に5mm以上、2.5cm以下が好ましい。更に、空間部形成部材7の左右長さLは、14cm以上、18cm以下が好ましい。このように空間部形成部材7は、口ワイヤー8よりも大きい面積を有している。
【0021】
空間部形成部材7は不織布シートにて形成される。空間部形成部材7に用いられる不織布シートの素材として用いられる不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられるが、スパンボンド不織布が好ましい。スパンボンド不織布の繊維基材としては、ポリプロピレン/ポリエステル複合繊維が好ましい。
【0022】
空間部形成部材7はマスク本体2を湾曲させることができ且つ湾曲により形成される空間部を維持することができるための曲げ特性(以下、「所定の曲げ特性」という。)を有している。このような所定の曲げ特性は、空間部形成部材7の厚み及び目付量を規定することにより得ることができる。そのための空間部形成部材7の厚みは、0.1mm以上、0.4mm以下が好ましく、また目付量は、40g/m2以上、80g/m2以下が好ましい。空間部形成部材7の厚みが0.1mm未満では、所定の曲げ特性を得ることができず、厚みが0.4mmを超えると、ゴワゴワ感が出て、硬い感触となる。また目付量が40g/m2未満では、所定の曲げ特性を得ることができず、目付量が80g/m2を超えると、通気性に劣るものとなる。
【0023】
上記の如き厚み及び目付量を有することにより、空間部形成部材7は、所定の曲げ特性を有することができる。それにより、マスク1の着用時にアーチ状に湾曲して、マスク本体2と、顔面の口及び鼻との間に空間部を形成し、しかもその空間部を維持できる機能を発揮することができる。前記したように、口ワイヤー収納部14には空間部形成部材7の一部と口ワイヤー8とが相互に接触した状態で収納されているので、空間部形成部材7と口ワイヤー8の協働作用が発揮され、マスク本体2と、口及び鼻との間に一段と広い空間部を形成することができる。マスク1の着用の際、口ワイヤー8の位置を中心として口ワイヤー8がアーチ状に湾曲すると共に、空間部形成部材7がアーチ状に湾曲する。口ワイヤー8の作用により、湾曲方向が一定となる。空間部形成部材7は所定の曲げ特性を有していることと、口ワイヤー8よりも大きい面積を有していることによって、マスク本体2は一段と広い面積で湾曲状になる。従って、マスク本体2と、口及び鼻との間に一段と広い空間部を形成することができる。
【0024】
また、空間部形成部材7と口ワイヤー8の協働作用により、空間部の維持機能を一段と大きくすることができる。口ワイヤー8は、アーチ状の湾曲形状の湾曲方向を保持する作用を行う。空間部形成部材7は所定の曲げ特性を有していることにより、マスク本体2に、息遣いによる力がかかったとしても、空間部を収縮させない作用を行う。従って、マスク1の着用時に会話を行ったり、或いは運動を行ったりした場合、そのときの息遣いにより、マスク本体2が口及び鼻に接触したり離れたりして、マスク本体2が前後に揺れ動くという現象を抑制することができ、会話時や運動時等にマスク本体が口及び鼻に密に接触して圧迫感や不快感を生じさせるという不具合を解消することができる。このように、空間部形成部材7は口ワイヤー8と協働して、マスク着用時の空間部の形成作用及びマスク着用中の空間部の維持作用を顕著に向上させることができるものである。
【0025】
空間部形成部材7の所定の曲げ特性は、曲げ試験を行って曲率と曲げモーメントの関係をみることによって確認することができる。この曲げ試験はカトーテック(株)製 KES-FB2-A 純曲げ試験機を用いて行うことができる。曲げ試験における空間部形成部材7の単位幅当りの曲げモーメントの変化量を測定することによって、曲げ硬さの大小を規定することができる。
【0026】
上記純曲げ試験機を用いて、空間部形成部材7の曲率と曲げモーメントの関係を測定した。試料は、本実施形態における空間部形成部材7の不織布シート(スパンボンド不織布シート)(本発明品)を用い、比較のため、汎用品の不織布であるメルトブロー不織布シート(比較品1)と、抗菌不織布シート(比較品2)を用いた。試料である不織布シートの厚みとしては、本発明品は、0.28mmのものを、比較品1は、0.14mmのものを、比較品2は、0.13mmのものを、それぞれ用いた。不織布シートを幅4cm、長さ20cmに切断して試験片とし、水平な試料台上に試験片を載せ、長手方向においてクランプ間隔1cmでチャックした。片側のクランプを固定し、もう一方のクランプを作動させて不織布シートを曲率ゼロ位置から下方向に試験片を湾曲変形させた後、曲率ゼロ位置まで試験片を回復させ、次に上方向に試験片を湾曲変形させた後に曲率ゼロ位置まで試験片を回復させた。このときの曲率変形速度を0.5cm-1/secとし、湾曲変形による曲率と試験片の単位幅当りの曲げモーメントの変化をみた。上記した湾曲変形において曲率0.5cm-1を開始点として、曲率1.5cm-1になった時点における試験片単位幅当りの曲げモーメントの変化量を算出して、測定値とした。3回測定を行い、測定値の平均値を求めた。結果については、本発明品は、1.864gf・cm2/cmであり、比較品1は、0.049gf・cm2/cmであり、比較品2は、0.014gf・cm2/cmであった。このことから、本発明品は、比較品1、2に比較して曲げ硬さが大きく(曲げ剛性が大きく)、従って、曲げ特性に優れていることが判る。本実施形態において、上記した曲げ試験における空間部形成部材7の単位幅当りの曲げモーメントの変化量は、1.0gf・cm2/cm以上、2.0gf・cm2/cm以下であることが好ましい。上記変化量が、1.0gf・cm2/cm未満では、マスク着用時の広い空間部の形成作用及び空間部維持作用を十分に発揮できず、上記変化量が、2.0gf・cm2/cmを超えると、ゴワゴワ感が出て、硬い感触となる。
【0027】
本実施形態において、空間部形成部材7の厚み及び目付量を規定する以外に、空間部形成部材7の製造時の温度条件によっても、所定の曲げ特性を有する空間部形成部材7を得ることができる。即ち、空間部形成部材7の製造に当たって、熱により繊維同士を融着する方法を採用する場合には、紡糸により得られたフィラメントをネットコンベア上に開繊し堆積させてウエッブを形成した後、ウエッブを熱ロールで加熱してシート状に結合させる工程を有するが、この場合の加熱温度を150℃以上、170℃以下という温度範囲に設定することにより、所定の曲げ特性を有する空間部形成部材7を得ることができる。
【0028】
マスク本体2の上方位置、即ち口ワイヤー8が設けられている領域13よりも上方位置に鼻ワイヤー15が設けられている。
図3は、
図1のB-B線縦断面図に表れる層構成の各構成要素を分離して描いた模式図であり、
図3に示すように、鼻ワイヤー15は、不織布複合層10における第1不織布シート4と、第2不織布シート5との相互間に介在して設けられている。16は、
図1に示すように鼻ワイヤー15の周りを囲むようにして形成された接合部であり、この接合部16は、第1不織布シート4と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とを一体的に接合している。この鼻ワイヤー15の周りを囲む接合部16によって、鼻ワイヤー15が所定の区画内に収納された状態となり、それにより鼻ワイヤー収納部17が形成されている。接合部16は接合部9と同様、超音波シール、熱シール、接着剤による接着等の手段により形成されるが、超音波シールによる接合が好ましい。接合部16は点状に形成されているが、点状に限定されるものではない。
【0029】
口ワイヤー8及び鼻ワイヤー15は、いずれも合成樹脂からなる断面長方形状の細長い棒状成形品である。材質としては、可撓性を有する合成樹脂であればよく、任意に選択できるが、ポリエチレン樹脂が好ましい。口ワイヤー8の上下幅寸法は、1.8mm以上、3.8mm以下が好ましく、厚さ寸法は、0.7mm以上、0.9mm以下が好ましく、長さ寸法は、10cm以上、14cm以下が好ましい。また鼻ワイヤー15の上下幅寸法は、2mm以上、4mm以下が好ましく、厚さ寸法は、0.7mm以上、0.9mm以下が好ましく、長さ寸法は、8cm以上、12cm以下が好ましい。
【0030】
図1に示すように、マスク本体2の左方向側端部2aの近傍及び右方向側端部2bの近傍において、それぞれ接合部18、19が形成されている。これらの接合部18、19は、いずれも口ワイヤー8が設けられている領域13とそれ以外の領域に跨って設けられており、前記領域13においては、接合部18、19は、第1不織布シート4と、空間部形成部材7と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とを一体的に接合している。また前記領域13以外の領域においては、接合部18、19は、第1不織布シート4と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とを一体的に接合している。接合部18、19は、いずれも接合部9、16と同様、超音波シール、熱シール、接着剤による接着等の手段により形成されるが、超音波シールによる接合が好ましい。接合部18、19は、いずれも斜め方向に傾斜した状態で2列平行に形成されているが、これに限定されず接合部の数は任意であり、また接合部形成方向として、上下垂直方向に形成されていてもよい。接合部18、19は、いずれも点状に形成されているが、点状に限定されるものではない。
【0031】
20は、マスク本体2の下端縁近傍に設けた接合部であり、この接合部20は、第1不織布シート4と、第2不織布シート5と、第3不織布シート6とを一体的に接合している。接合部20は、接合部9、16、18、19と同様、超音波シール、熱シール、接着剤による接着等の手段により形成されるが、超音波シールによる接合が好ましい。接合部20は、2列平行の点状接合部として形成されているが、これに限定されず接合部の数は任意であり、また点状に限定されるものではない。
【0032】
図6には、本実施形態のマスク1を、
図1に示す折り畳み状態から、上下に引っ張って広げた状態の態様が示されている。マスク1におけるマスク本体2には、空間部形成部材
7及び口ワイヤー8が設けられているので、マスク1を広げた時点で、マスク本体2が外方に向かって湾曲した状態となる。
【符号の説明】
【0033】
1 マスク
2 マスク本体
3 耳掛け部
7 空間部形成部材
8 口ワイヤー
13 口ワイヤーが設けられている領域