(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035567
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】物品搬送装置及びこれを含む保管庫
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B65G1/04 531A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142523
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幸範
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE01
3F022FF01
3F022JJ07
3F022KK00
3F022MM03
3F022MM11
3F022MM21
3F022MM51
(57)【要約】
【課題】物品搬送装置における走行方向の移動について高精度なガイドを実現する。
【解決手段】物品搬送装置1は、第1レール2と第2レール3と可動体10とスライダ6とローラ機構部7とを含む。第1レール2は円形断面を有するレール部2aを有し、第2レール3は第1レール2側に開口した溝31を有する。スライダ6は、可動体10に固定され、レール部2aに対して走行方向に摺動し且つレール部2aの中心軸線X1回りに回動可能に結合する。ローラ機構部7は、可動体10に固定される基準部71と、溝31の一方の内側面31aに沿って転動可能な第1ローラ721を有し基準部71に固定される固定ローラ部72と、可動ローラ部73とを有する。可動ローラ部73は、溝31の他方の内側面31bを転動可能な第2ローラ731と溝31内で第2ローラ731と基準部71を引き離す付勢力を発生する付勢部734を有し基準部71に取り付けられる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に離隔して配置される第1レール及び第2レールと、前記第1レールと前記第2レールの間に配置されて各レールに沿って走行可能に支持されると共に物品を上下方向に昇降可能な可動体とを含む、物品搬送装置であって、
前記第1レールは円形断面を有して走行方向に延びるレール部を有し、前記第2レールは前記走行方向に延びると共に前記第1レール側に開口した溝を有する構成とし、
前記可動体に固定され、前記レール部に対して前記走行方向に摺動し且つ前記レール部の中心軸線回りに回動可能に結合するスライダと、
前記可動体に固定される基準部と、前記溝の一方の内側面に沿って転動可能な第1ローラを有し前記基準部に固定される固定ローラ部と、前記溝の他方の内側面に沿って転動可能な第2ローラと前記溝内で前記第2ローラと前記基準部を互いに引き離す付勢力を発生する可動体位置決め用の付勢部を有し前記基準部に取り付けられる可動ローラ部と、を有する、ローラ機構部と、
を含む、物品搬送装置。
【請求項2】
前記スライダは、前記レール部が挿入される挿入孔を有し、前記レール部の前記中心軸線回りに回動可能に形成されている、請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記第1レールは前記第2レールの下方に配置される構成とし、
前記第1レールが固定される基準面に沿って転動可能な第3ローラと前記可動体と前記第3ローラを互いに引き離す付勢力を発生する下付勢部とを有し、前記可動体の下部に取り付けられる下ローラ機構部を含む、
請求項1又は2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記第1レールは前記第2レールの上方に配置される、請求項1~3のいずれか一つに記載の物品搬送装置。
【請求項5】
前記第1レールが固定される第1ベースと、
前記第2レールが固定される第2ベースと、
前記第1ベースの一端部と前記第2ベースの一端部を接続する第1フレームと、
前記第1ベースの他端部と前記第2ベースの他端部を接続する第2フレームと、
を有し、前記可動体を収容可能な収容領域を形成する、フレームユニットを、
さらに含む、請求項1~4のいずれか一つに記載の物品搬送装置。
【請求項6】
前記第1フレーム及び前記第2フレームの一方には、可動体挿入用の開口が形成されている、請求項5に記載の物品搬送装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の物品搬送装置と、物品を保管する保管棚と、入出庫部と、を含む保管庫であって、
前記物品搬送装置が前記保管棚に沿って配置され前記保管棚と前記入出庫部との間で物品を搬送する、
保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品を保管する保管棚を有する保管庫内などに設けられる物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ファイルホルダの管理システム(以下では、「保管庫」という)が開示されている。この保管庫は、それぞれ物品を収納する複数の収納部を有し互いに間隔をあけて相対する二つの保管棚と、一方の保管棚の一部に設けられる入出庫部と、保管棚と入出庫部との間で物品を搬送する物品搬送装置とを有している。この物品搬送装置は、上下に離隔して配置される下レール及び上レールと、下レールに沿って移動する搬送台車と、搬送台車の上に設けられ物品を上下方向に昇降させる搬送ユニットと、を有している。そして、この物品搬送装置では、搬送台車と搬送ユニットとからなる可動体が、上下の各レール(下レール、上レール)に対して、一対のガイドローラの間にレールを挟み込む方式でレールに沿って走行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような上下の各レールに一対のガイドローラによる挟み込み方式を採用した構造では、可動体についてレールに沿う走行方向の移動について高精度なガイドを行うことが困難な場合があり、その工夫が求められ得る。また、高精度なガイド構造の採用により、過度な摺動抵抗を発生させないようにする必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、過度な摺動抵抗を発生させることなく走行方向の移動についての高精度なガイドを容易に実現可能な物品搬送装置及びこれを備えた保管庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、上下に離隔して配置される第1レール及び第2レールと、前記第1レールと前記第2レールの間に配置されて各レールに沿って走行可能に支持されると共に物品を上下方向に昇降可能な可動体とを含む、物品搬送装置が提供される。この物品搬送装置では、前記第1レールは円形断面を有して走行方向に延びるレール部を有し、前記第2レールは前記走行方向に延びると共に前記第1レール側に開口した溝を有する構成とする。そして、この物品搬送装置は、スライダと、ローラ機構部と、を含む。前記スライダは、前記可動体に固定され、前記レール部に対して前記走行方向に摺動し且つ前記レール部の中心軸線回りに回動可能に結合する。前記ローラ機構部は、前記可動体に固定される基準部と、固定ローラ部と、可動ローラ部と、を有する。前記固定ローラ部は、前記溝の一方の内側面に沿って転動可能な第1ローラを有し前記基準部に固定される。前記可動ローラ部は、前記溝の他方の内側面に沿って転動可能な第2ローラと、前記溝内で前記第2ローラと前記基準部を互いに引き離す付勢力を発生する可動体位置決め用の付勢部と、を有し、前記基準部に固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面による前記物品搬送装置によれば、前記第1レールは円形断面を有して走行方向に延びるレール部を有しており、前記スライダによって、前記可動体が前記レール部に対して前記走行方向に摺動し且つ前記レール部の中心軸線回りに回動可能に結合している。つまり、前記可動体と前記第1レールとの間のガイド構造として、レールに摺動可能に結合するスライダを用いた摺動方式の構造を採用しており、前記第1レールに沿う走行方向の移動について高精度のガイドがなされる。そして、前記第2レールは、前記走行方向に延びると共に前記第1レール側に開口した溝を有しており、前記ローラ機構部は、前記可動体に固定される基準部と、前記溝の一方の内側面に沿って転動可能な第1ローラを有し前記基準部に固定される固定ローラ部と、前記溝の他方の内側面に沿って転動可能な第2ローラ及び前記溝内で前記第2ローラと前記基準部を互いに引き離す付勢力を発生する可動体位置決め用の付勢部を有し前記基準部に取り付けられる可動ローラ部と、を有している。つまり、前記可動体と前記第2レールとの間のガイド構造として、ローラを用いた摺動抵抗の比較的に低い簡易なガイド構造を採用している。
【0008】
上記の各レールに対する前記ガイド構造によれば、前記第1レール側では、前記スライダが前記レール部に結合することで前記可動体が高精度に位置決めされているが、前記レール部の中心軸線回りの前記可動体の回動が許容されている。そのため、前記第2レール側で、前記溝内に前記ローラ機構部が位置すると、前記可動体は、前記可動体位置決め用の付勢部の付勢力によって前記第1ローラ及び前記第2ローラのいずれもが前記第2レールの位置に応じて前記溝の内側面に当接した姿勢をとることになる。したがって、例えば、前記第1レールに対する前記第2レールの位置決め精度が多少悪かったとしても、前記可動体は、前記第1レール側では、前記スライダを介して前記上下方向の移動と溝幅方向の移動を阻止された状態で、前記走行方向の移動が前記第1レールに沿って高精度にガイドされ、前記第2レール側では、前記第1ローラ及び前記第2ローラが前記第2レールの内側面に沿って過度な摺動抵抗を発生させることなく安定して転動するように押し付けられた姿勢で、前記第2レールに沿ってガイドされることになる。その結果、前記可動体の走行方向の移動について前記第1レール側で高精度なガイドを担保しつつ、前記第2レール側で前記第1レールに対する位置決め精度誤差を吸収した状態で、前記可動体を過度な摺動抵抗を発生させることなく走行方向に移動させることができる。このようにして、過度な摺動抵抗を発生させることなく走行方向の移動についての高精度なガイドを容易に実現可能な物品搬送装置及びこれを備えた保管庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る物品搬送装置を含む保管庫の内部構造を説明するための図である。
【
図4】前記物品搬送装置の第1レールを説明するための拡大斜視図である。
【
図5】前記物品搬送装置の第2レールを説明するための拡大斜視図である。
【
図6】前記物品搬送装置のフレームユニットの斜視図である。
【
図8】前記可動体の別の角度から示した斜視図である。
【
図11】前記物品搬送装置の側面図(右側面図)及び部分拡大図である。
【
図12】前記物品搬送装置の下部の分解斜視図である。
【
図13】前記物品搬送装置の上部の分解斜視図である。
【
図14】前記物品搬送装置の変形例を説明するための図である。
【
図15】前記変形例1に係る物品搬送装置1の下ローラ機構部の斜視図である。
【
図17】前記物品搬送装置の別の変形例を説明するため側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る物品搬送装置1を含む保管庫100の内部構造を説明するための概念図である。なお、
図1は保管庫100の概略の縦断面図として示されている。まず、本実施形態に係る物品搬送装置1が適用される保管庫100について説明する。
【0011】
[保管庫]
保管庫100は、複数の物品Pを搬入して保管するとともに、保管した複数の物品Pを搬出するように構成されている。保管対象の物品Pとしては、医薬品、書籍、文具、飲料、食品等の適宜の種類の物品が採用され得る。保管庫100は、例えば、薬局の建物内に設置され、販売する医薬品等の商品(物品P)の在庫管理用に用いられる。例えば、店員が保管庫100の利用者であり、利用者は保管庫100に対する物品Pの入庫や出庫といった物品Pの出し入れ作業を行う。但し、保管庫100の設置場所や用途は、これに限られるものではなく、保管庫100は、保管対象の物品の種類に応じた適宜の場所に設置され、設置場所や物品の種類に応じた適宜の用途(利用態様)で用いられ得る。
【0012】
本実施形態では、利用者は保管庫100の前後方向の前側から保管庫100にアクセスするものとする。保管庫100内において、物品Pは、可搬式のトレイTの上に載置された状態で保管されるとともに、トレイTと一緒に搬送される。なお、説明の便宜のため、前後、左右及び上下のそれぞれの方向が適宜に図面に示され、左右の方向は保管庫100の前方に立つ利用者側から視た方向で示されている。
【0013】
保管庫100は、箱体101と、物品Pを保管するための保管棚102と、作業ステーション103と、保管棚102に沿って並列して配置され保管棚102と作業ステーション103との間で物品Pを搬送する物品搬送装置1と、を有する。
【0014】
箱体101は、直方体状に形成され、保管庫100の筐体を構成するものである。箱体101は、前側の正面パネル101a、後側の背面パネル101b、左パネル101c(
図1では奥側に示されている)、右パネル(図示省略)、上パネル101d及び底パネル101eからなる外装パネルを有する。前記外装パネルの内側には、例えば、フレーム材(図示省略)が設けられている。
【0015】
保管棚102は、複数の物品Pを保管する棚であり、物品搬送装置1に沿うように配置され、物品搬送装置1により搬送された物品Pが載置されるようになっている。保管棚102は、物品PをトレイTの上に載置した状態で保管し、複数の物品P(詳しくは、それぞれに物品Pが載置された複数のトレイT)を収納可能に構成される。本実施形態では、箱体101内において、二つの保管棚102が前後方向に間隔をあけて相対するように配置され、物品搬送装置1が二つの保管棚102の間の領域に配置される。
【0016】
各保管棚102は、上下方向に間隔をあけて配置されそれぞれ左右方向に延びた複数(図では11段)の棚板102aと、各棚板102aにおいて左右方向に間隔をあけて配置されそれぞれ上下方向に延びた複数の仕切り板102bと、を有する。そして、保管棚102を構成する部材(棚板102aや仕切り板102b等)により、上下及び左右に並んだ複数の物品載置室Hが形成され、各物品載置室Hに物品P(トレイT)を載置できるようになっている。各物品載置室Hは前後方向に開口した筒状に形成されている。
【0017】
作業ステーション103は、利用者が保管庫100に対する物品Pの入庫や出庫といった物品Pの出し入れ作業を行うためのものである。本実施形態では、作業ステーション103は前側の保管棚102の一部を利用して構成される。なお、本実施形態では、作業ステーション103が本発明に係る「入出庫部」に相当する。
【0018】
例えば、前側の保管棚102の複数の物品載置室Hのうち複数段(図では、下から4段目及び5段目における上下に2段)でそれぞれ左右に複数列に並ぶ複数の物品載置室Hが、作業ステーション103として用いられる。正面パネル101aにおける作業ステーション103に対応する部分は左右に長い矩形状に開口され、作業ステーション103用の各物品載置室Hは利用者及び物品搬送装置1の双方からアクセス可能になっている。但し、作業ステーション103用の物品載置室Hにおける利用者側(前側)の開口と物品搬送装置1側(後側)の開口は、扉D1、D2により開閉されるように構成されている。利用者が作業ステーション103にアクセスする際には、前側の扉D1が開き且つ後側の扉D2が閉じた状態になり、物品搬送装置1が作業ステーション103にアクセスする際には、前側の扉D1が閉じ且つ後側の扉D2が開いた状態になるように構成されている。
【0019】
[物品搬送装置の概要]
次に、物品搬送装置1について、詳述する。
図2は物品搬送装置1の斜視図であり、
図3は物品搬送装置1の正面図である。
図4及び
図5はそれぞれ物品搬送装置1の部分拡大斜視図であり、
図4には右下側の部分が示され、
図5には右上側の部分が示されている。
【0020】
本実施形態では、物品搬送装置1は、二つの保管棚102の間に配置され、箱体101内で物品Pを作業ステーション103の物品載置室Hと他の物品載置室Hとの間で搬送(移送)する装置として用いられる。このため、物品搬送装置1は物品Pを二つの保管棚102の間で上下左右に移動させる機能の他に、物品P(詳しくはトレイT)を対象の物品載置室Hとの間で受け渡しできるように、前後に移動させる受け渡し用機能をも有する。
【0021】
物品搬送装置1は、上下に離隔して配置される第1レール2及び第2レール3と、第1レール2と第2レール3の間に配置されて各レール(2,3)に沿って走行可能に支持されると共に物品を上下に昇降可能な可動体10と、スライダ6(後述する
図11等参照)と、ローラ機構部7(
図11等参照)とを含み、保管棚102に沿って配置されている。
【0022】
本実施形態では、第1レール2は第2レール3の下方に配置されているレール(つまり、下レール)である。したがって、第2レール3は第1レール2の上方に配置されているレール(上レール)である。また、本実施形態では、可動体10は、第1レール2に沿って走行可能に支持される走行台4と、走行台4上に設けられ物品を上下方向に昇降させる昇降装置5と、を含む。
【0023】
本実施形態では、物品搬送装置1は、第1レール2及び第2レール3が固定されるフレームユニット20をさらに含む。ここで、物品搬送装置1の組立の際に、例えば、走行台4と昇降装置5は一体に組み立てられ可動体10を構成する。そして、フレームユニット20は、走行台4と昇降装置5との組立体からなる可動体10を収容可能な領域を形成するとともに、物品搬送装置1の筐体(外殻)をなすものであり、可動体10はフレームユニット20内に組み付けられる。
【0024】
[第1レール及び第2レール]
第1レール2は、物品を保管する保管棚102に並列して配置されており、保管棚102に沿うように延伸している。つまり、第1レール2は、二つの保管棚102の間において保管棚102の左右の幅方向の全体に亘って直線的に延伸している。第1レール2の延伸方向である保管棚102の左右の幅方向が走行台4(可動体10)の走行方向であり、本実施形態では、保管庫100の左右方向と、保管棚102の左右の幅方向と、走行台4(可動体10)の走行方向と、各レール(2,3)の延伸方向と、各レール(2,3)の長手方向はそれぞれ同一の方向である。第1レール2は、フレームユニット20の後述する第1ベース21の上面に固定されている。
【0025】
本実施形態では、第1レール2は、円形断面を有して走行方向に延在するレール部2aと、レール部2aを支持するレール支持板2bとを有する。具体的には、レール部2aは、円筒状に形成されている。レール支持板2bは、レール部2aの下方においてレール部2aと同程度の長手方向(つまり、走行方向)の長さを有しており、平面視で矩形板状に形成された支持板部2b1と、支持板部2b1とレール部2aとの間を接続する接続部2b2とからなる。接続部2b2は、支持板部2b1の上面から斜め上方に突出し、レール部2aの外周面におけるレール部2aの中心軸線X1回りの所定の角度位置まで延在しており、レール部2aの長手方向(走行方向)の全体に亘ってレール部2aの外周面の前記所定の角度位置と支持板部2b1との間を接続している。
【0026】
第2レール3は、可動体10を走行台4の走行方向に移動可能にガイドするレールである。第2レール3は、第1レール2の上方に離隔し、第1レール2と相対し且つ第1レール2と平行に配置されている。つまり、可動体10は、第1レール2と第2レール3との間に位置しており、可動体10の上下の両端がそれぞれ対応するレール(2,3)にガイドされた状態で、レール(2,3)に沿って走行(移動)するようになっている。第2レール3は、フレームユニット20の後述する第2ベース22の下面に固定されている。
【0027】
第2レール3は、走行方向に延びると共に第1レール2側に開口した溝31(以下では、ガイド溝31という)を有している。本実施形態では、第2レール3は第1レール2の上に配置されているため、ガイド溝31は下方開口の溝である。具体的には、第2レール3は、例えば、溝形断面を有した長尺鋼材からなり、底板3aと、底板3aの幅方向の一方から突出した一方の側板3bと、底板3aの幅方向の他方から突出し一方の側板3bと相対する他方の側板3cとからなる。本実施形態では、一方の側板3bは前側の側板であり、他方の側板3cは後側の側板であるものとして説明する。
【0028】
[フレームユニット]
図6は、フレームユニット20の斜視図である。フレームユニット20は、前述したように物品搬送装置1の筐体(外殻)をなすものであり、例えば、正面視で、保管棚102の外形と同程度の外形で形成されている。
【0029】
本実施形態では、フレームユニット20は、第1レール2が固定される第1ベース21と、第2レール3が固定される第2ベース22と、第1ベース21の一端部と第2ベース22の一端部を接続する第1フレーム23と、第1ベース21の他端部と第2ベース22の他端部を接続する第2フレーム24と、を有しており、可動体10を収容可能な収容領域を、第1ベース21と第2ベース22との間に形成するように構成されている。本実施形態では、第1ベース21は第2ベース22の下方に位置している。特に限定されるものではないが、以下では、第1フレーム23が左側に位置し、第2フレーム24が右側に位置しているものとして説明する。
【0030】
本実施形態では、第1フレーム23及び第2フレーム24のいずれか一方には、可動体挿入用の開口20aが形成されている。後述するように可動体10の下部及び上部には、後述するようにスライダ6、ローラ機構部7及び各ブラケット(87a、87b、88a、88b)が固定される。可動体挿入用の開口20aは、走行方向で視た平面視(換言すると、フレームユニット20の側面視)での、スライダ6、ローラ機構部7、各ブラケット(87a、87b、88a、88b)及び可動体10の全体の外形(輪郭)より大きい。物品搬送装置1の組立の際には、可動体10が開口20aを通じてフレームユニット20内に挿入され、フレームユニット20内に、容易に配置されるようになっており、効率的な組立が図られる。なお、特に限定されるものではないが、開口20aは、右側の第2フレーム24に形成されている。
【0031】
具体的には、第1ベース21及び第2ベース22は、互いに上下方向に間隔をあけて相対し且つ平行に配置されており、それぞれ、左右方向に長い概ね矩形の板状に形成されている。第1フレーム23及び第2フレーム24は、互いに左右方向に間隔をあけて相対し且つ平行に配置されている。開口20aが形成されていない第1フレーム23は側面視で上下方向に長い矩形の板状に形成されており、開口20aが形成されている第2フレーム24は側面視で上下方向に長い矩形の枠状に形成されている。第1フレーム23は、その上下の両端部において右側に張り出した接続板23aを有している。第1ベース21の左端部は第1フレーム23の下側の接続板23aの上面に固定され、第1ベース21の右端部は第2フレーム24の下側の枠板の上面に固定され、第2ベース22の左端部は第1フレーム23の上側の接続板23aの下面に固定され、第2ベース22の右端部は第2フレーム24の上側の枠板の下面に固定されている。
【0032】
[可動体]
図7及び
図8は可動体10の斜視図である。
図9は可動体10の上側の部分斜視図であり、
図10は可動体10の下側の部分斜視図である。
図11~
図13は物品搬送装置1における主に走行用の構造及び昇降用の構造を説明するための図であり、それぞれ、物品搬送装置1における、
図11は側面図(一部省略の右側面図)、
図12は下部の分解斜視図、
図13は上部の分解斜視図である。なお、
図11では第1ベース21が取り外され、
図13では第2ベース22が第2レール3と一緒に取り外されている。
【0033】
図7~
図12に示すように、走行台4は、第1レール2に沿って走行可能に支持され基台であり、可動体10の下部を構成する。走行台4の上部には、昇降装置5が固定される。走行台4は、例えば、可動体10の底壁を構成する矩形板状の基台底板部4aと、基台底板部4aの左右の両端からそれぞれ上方に突出する基台側板部4bとを有する。
【0034】
昇降装置5は、走行台4上に設けられ物品Pを上下方向に昇降させる装置であり、可動体10における走行台4より上方の部分を構成している。昇降装置5は、第2レール3に相対する上壁51と、互いに左右方向に間隔をあけて相対し走行台4と上壁51との間を接続する左柱体52及び右柱体53(換言すると、一対の柱体52,53)と、左柱体52と右柱体53との間において左柱体52及び右柱体53に沿って上下方向に昇降可能に支持された昇降台54と、昇降台54を上下に昇降駆動させる昇降駆動機構55と、を有する。
【0035】
具体的には、上壁51は、昇降装置5(換言すると可動体10)の天板を構成する矩形板状の装置天板部51aと、装置天板部51aの左右の両端部からそれぞれ下方に突出する装置側板部51bとを有する。
【0036】
左柱体52及び右柱体53は、それぞれ、平面視で上下方向に長い矩形板状に形成されている。左柱体52は左側の基台側板部4bと装置側板部51bとの間を接続し、右柱体53は右側の基台側板部4bと装置側板部51bとの間を接続している。したがって、可動体10において、走行台4、上壁51、左柱体52及び右柱体53により、前後方向に開口した縦長矩形筒状(換言すると上下方向に長い矩形枠状)のフレーム構造体が構成されており、可動体10は前記フレーム構造体を有している。左柱体52及び右柱体53の内側面には、昇降台54の上下方向に移動可能に支持するための昇降ガイド溝56aが形成された昇降ガイド部56がそれぞれ取り付けられている。
【0037】
昇降台54は、物品Pが載置される台である。詳しくは、物品Pが載置されたトレイTを対象の物品載置室Hとの間で受け渡し可能に、当該トレイTを前後方向に移動可能に保持する保持体が、昇降台54の上に固定されている。
図2、
図3、
図7~
図9、
図13において、トレイT及び前記保持体は、図の簡略化のため物品Pとあわせた一つのものとして示されている。昇降台54は、左柱体52に取り付けられた昇降ガイド部56の昇降ガイド溝56aに沿って上下方向に移動可能に支持される左プレート54aと、右柱体53に取り付けられた昇降ガイド部56の昇降ガイド溝56aに沿って上下方向に移動可能に支持される右プレート54bと、左プレート54aと右プレート54bとによって走行台4の基台底板部4aと平行な姿勢で支持される昇降板54cとを有する。昇降板54cの上には、トレイTを保持する前記保持体が固定されている。
【0038】
昇降駆動機構55は、例えば、ベルト駆動式の昇降機構であり、昇降駆動モータM1と、昇降動力伝達シャフト551と、上下一対の第1プーリ552、552(
図7及び
図9参照)と、第1ベルト553と、上下一対の第2プーリ554、554(
図8参照)と、第2ベルト555と、を有する。
【0039】
昇降駆動モータM1は、走行台4(基台底板部4a)の上面にモータボックス556を介して固定されている。昇降動力伝達シャフト551は、図示省略した複数のギアを介して昇降駆動モータM1の駆動シャフトに連結されており、モータボックス556を左右方向に貫通して走行台4の左右の幅方向全体に亘って延伸している。上下一対の第1プーリ552、552は左柱体52の内側面における上下の両端部に左右方向に延伸した中心軸回りに回動可能に設けられ、これらの第1プーリ552に、第1ベルト553が架け渡されている。第1ベルト553の周方向における第1所定位置には左プレート54aが固定されている。同様に、上下一対の第2プーリ554、554は右柱体53の内側面における上下の両端部に左右方向に延伸した中心軸回りに回動可能に設けられ、これらの第2プーリ554に、第2ベルト555が架け渡されている。前記第1所定位置に対応する第2ベルト555の周方向における第2所定位置には右プレート54bが固定されている。そして、下側の第1プーリ552と下側の第2プーリ554とは昇降動力伝達シャフト551を介して互いに連結されている。
【0040】
昇降駆動機構55は、昇降駆動モータM1によって昇降動力伝達シャフト551を介して下側の第1プーリ552及び第2プーリ554を回転駆動することで、可動体10の前記フレーム構造体内において前記保持体が固定された昇降台54を上下に移動させる(昇降させる)ように構成されている。なお、ここで説明した昇降装置5における昇降機構は一例にすぎず、前記保持体を昇降させることのできる種々の構成の機構が用いられ得る。
【0041】
[スライダ及びローラ機構部]
物品搬送装置1は、前述したように、スライダ6とローラ機構部7とを有している。そして、本実施形態では、以下に詳述するように、下レール側(第1レール2側)では、レールに摺動可能に結合するスライダを用いた摺動方式によるガイド構造を採用し、上レール側(第2レール3側)では、ローラを用いた摺動抵抗の比較的に低く且つレール位置決め精度に対する許容範囲が比較的に高い簡易なガイド構造を採用している。
【0042】
[スライダ]
スライダ6は、
図11及び
図12に示すように、可動体4(基台底板部4aの下面)に固定され、第1レール2のレール部2aに対して走行方向に摺動し且つレール部2aの中心軸線X1回りに回動可能に結合するものである。スライダ6は、可動体10における第1レール2に沿った走行方向の移動のガイド構造を構成する。
【0043】
スライダ6は、第1レール2のレール部2aが挿入される挿入孔6aと、第1レール2の接続部2b2が通過するスリット6bとを有しており、レール部2aの中心軸線X1回りに回動可能に形成されている。本実施形態では、スライダ6は、基台底板部4aの下面における左右方向の両端側の部分にそれぞれ固定されている。
【0044】
スライダ6は、可動体10(基台底板部4a)の下面における前後方向の中央部に固定されている。具体的には、可動体10の下面のスライダ6の軸受6d内にレール部2aが挿入された状態において、可動体10の前後方向の中心を通る中心線X2がレール部2aの中心軸線X1を通るように、スライダ6が可動体10の下面に固定されている。換言すると、スライダ6は、その挿入孔6aの孔中心線が可動体10の前後方向の中心を通る中心線X2を通るように、可動体10の下面に固定される。
【0045】
詳しくは、スライダ6は、概ね直方体状の外観を有している。そして、スライダ6は、レール部2aの外周面の周方向についての大半の部分を取り囲むように形成されており、レール部2aの長さより十分に短い長さを有している。直方体状のスライダ6における下側の角部(図では前角部)は左右方向の全体に亘って斜めに傾斜している。スリット6bは、スライダ6の下側の前角部の傾斜面6cを貫通して挿入孔6aに連通し、左右方向の全体に亘って挿入孔6aの周縁部における接続部2b2に対応する部分を切り欠くように形成されている。また、スライダ6の挿入孔6aの内壁面と第1レール2のレール部2aの外周面との間には、例えば、軸受6dが挿入されている。軸受6dは、例えば、樹脂材からなり、スライダ6の挿入孔6aに嵌合し、スライダ6と一体になっている。また、軸受6dは、挿入孔6aの曲率半径及びレール部2aの曲率半径に応じた曲率及び厚みを有し、円弧状断面(概ねC形断面)で一方向に延伸するように形成されている。また、軸受6dの内周面には、摺動抵抗低減用のセレーション加工が施されている。
【0046】
スライダ6は、第1レール2のレール部2aに対して軸受6dを介して走行方向に摺動可能で且つレール部2aの中心軸線X1回りに回動可能に結合している。この結合状態において、スライダ6及び走行台4(換言すると可動体10)について、レール部2aの中心軸線X1回りの回動が許容されているとともに、上下方向の移動と前後方向の移動を阻止された状態で、スライダ6及び走行台4(可動体10)の第1レール2に沿った走行方向の移動が第1レール2に沿って高精度にガイドされている。
【0047】
なお、物品搬送装置1は、走行台4(換言すると可動体10)を走行駆動させる走行駆動機構8を有している。この走行駆動機構8については、後述する。
【0048】
[ローラ機構部]
ローラ機構部7は、
図11及び
図13に示すように、可動体10(装置天板部51a)の上面に取り付けられ第2レール3のガイド溝31内に位置し、可動体10における第2レール3に沿った走行方向の移動のガイド構造を構成する。
【0049】
ローラ機構部7は、基準部71と、固定ローラ部72と、可動ローラ部73と、を有する。本実施形態では、ローラ機構部7は、可動体10(装置天板部51a)の上面における左右の両端側の部分にそれぞれ取り付けられている(
図7、
図8、
図13参照)。そして、各ローラ機構部7は、可動体10(上壁51)の上面における前後方向の概ね中央部に配置されている。
【0050】
基準部71は、可動体10(装置天板部51a)に固定されるものである。基準部71は、上壁51の装置天板部51aに固定され上方に突出しており、ガイド溝31における相対する一対の内側面31a,31bのうちの一方の内側面31aに相対する第1面71aと他方の内側面31bに相対する第2面71bとを有する。具体的には、基準部71は、下方開口のコ字状断面を有した突出板部71cと、突出板部71cの下端部においてそれぞれ前後に張り出したフランジ部71dとからなり、全体として概ねハット形状に形成されており、そのフランジ部71dが可動体10に固定されている。そして、第1面71a及び第2面71bはそれぞれ突出板部71cに設けられている。
【0051】
本実施形態では、ガイド溝31において、一方の内側面31aは第2レール3の前側の側板3bの内側面であり、他方の内側面31bは第2レール3の後側の側板3cの内側面であるものとする。
【0052】
固定ローラ部72は、本実施形態では、第1ローラ721と、固定ローラ支持部722とを有し、基準部71に固定されるものである。
【0053】
第1ローラ721は、ガイド溝31の一方の内側面31aに沿って転動可能なローラである。つまり、第1ローラ721は、一方の内側面31aと基準部71の第1面71aとの間に配置されている。
【0054】
固定ローラ支持部722は、第1ローラ721を上下方向に延びた第1ローラ中心軸72X回りに回動可能に支持し、基準部71の第1面71aに固定される。固定ローラ支持部722は、例えば、一方の内側面31a側に開口したコ字状断面を有し、内側面31aに相対した底壁部722aが第1面71aに固定されており、上下に相対した側壁部722bが第1ローラ中心軸72Xを支持している。
【0055】
可動ローラ部73は、本実施形態では、第2ローラ731と、可動ローラ支持部732と、横スライド軸部733と、可動体位置決め用の付勢部734とを有し、基準部71に取り付けられるものである。
【0056】
第2ローラ731は、ガイド溝31の一対の内側面31a,31bのうちの他方の内側面31bに沿って転動可能なローラである。第2ローラ731と第1ローラ721は基準部71を基準として互いに逆向きに張り出すように配置されている。つまり、基準部71は第1ローラ721と第2ローラ731との間に位置し、第1ローラ721はガイド溝31の一方の内側面31aと基準部71の第1面71aとの間に配置され、第2ローラ731はガイド溝31の他方の内側面31bと基準部71の第2面71bとの間に配置されている。
【0057】
可動ローラ支持部732は、第2ローラ731を上下方向に延伸した第2ローラ中心軸73X回りに回動可能に支持し、横スライド軸部733を介して基準部71の第2面71bに取り付けられる部材である。可動ローラ支持部732は、例えば、他方の内側面31b側に開口したコ字状断面を有し第2ローラ731を回動可能に支持する。可動ローラ支持部732の底壁部732aは、他方の内側面31bと第2面71bとの間において、これらの面(31b,72a)と概ね平行な姿勢で位置しており、可動ローラ支持部732の上下に相対した側壁部732bが第2ローラ中心軸73Xを支持している。
【0058】
横スライド軸部733は、可動ローラ支持部732を基準部71に対してガイド溝31の溝幅方向(つまり、前後方向)に移動可能に支持する部材である。横スライド軸部733は、例えば、可動軸部733aと可動軸部733a内に挿入される固定軸部733bとからなる。
【0059】
可動軸部733aは、円筒状の円筒部733a1と、円筒部733a1の一端側から径方向外側に突出したフランジ部733a2とからなる。円筒部733a1は可動ローラ支持部732の底壁部732aに開口された孔に挿通され、この状態で、可動軸部733aのフランジ部733a2は可動ローラ支持部732の底壁部732aにおける他方の内側面31b側の面に相対している。
【0060】
固定軸部733bは、例えば、基準部71の第2面71bに螺合するネジ部733b1と、ネジ部733b1より大径であり且つ可動軸部733aの円筒部733a1より長い軸部733b2と、軸部733b2より大径の頭部733b3とからなる段付きボルトである。
【0061】
横スライド軸部733は、固定軸部733bの頭部733b3が可動軸部733aのフランジ部733a2側に位置させた状態で、固定軸部733b及び可動軸部733aが可動ブラケット76の底壁部76aの孔に挿通されて、固定軸部733bのネジ部733b1が基準部71に螺合している。これにより、横スライド軸部733によって、可動ローラ支持部732が基準部71に対してガイド溝31の溝幅方向(前後方向)に移動可能に支持される。
【0062】
可動体位置決め用の付勢部734は、ガイド溝31内で第2ローラ731と基準部71を互いに引き離す付勢力を発生する付勢部部材である。付勢部734は、例えば、コイルバネであり、可動ローラ支持部732と基準部71との間に配置され、圧縮されることによって、付勢力を発生する。具体的には、付勢部734は、可動ローラ支持部732の底壁部732aと基準部71の第2面71bとの間において、横スライド軸部733を取り囲むように組付けられる。ローラ機構部7が第2レール3のガイド溝31内に装着された状態で、基準部71と可動ローラ支持部732の底壁部732aとの間の間隔が狭くなることによって、付勢部734は圧縮され、この状態で、ガイド溝31内で、第2ローラ731と基準部71を互いに引き離す付勢力を発生する。
【0063】
ローラ機構部7は、第2レール3のガイド溝31に対して、基準部71を中心として互いに逆向きに配置された第1ローラ721及び第2ローラ731を介して走行方向に移動可能に連結している。この状態において、可動体10は、第2レール3側で、可動体位置決め用の付勢部734の付勢力によって第1ローラ721及び第2ローラ731のいずれもが第2レール3の位置決め精度に応じてガイド溝31の内側面31a,31bに当接した姿勢をとることになる。したがって、第1レール2に対する第2レール3の位置決め精度が悪かったとしても、可動体10は、第2レール3側では、第1ローラ721及び第2ローラ731が第2レール3の内側面31a,31bに沿って過度な摺動抵抗を発生させることなく安定して転動するように押し付けられた姿勢で、第2レール3に沿ってその走行方向に移動可能にガイドされることになる。その結果、可動体10は、第2レール3側では、第1ローラ721及び第2ローラ731が第2レール3の内側面31a,31bに沿って過度な摺動抵抗を発生させることなく安定して転動するように押し付けられた姿勢で、第2レール3に沿ってガイドされることになる。
【0064】
[走行駆動機構]
走行駆動機構8は、前述したように、可動体10(走行台4)を走行駆動するための駆動部である。
図4~
図6、
図11~
図13に示すように、本実施形態では、走行駆動機構8は、フレームユニット20に設けられている。
【0065】
走行駆動機構8は、例えば、ベルト駆動式の昇降機構であり、走行駆動モータM2と、走行動力伝達シャフト81と、左右一対の第3プーリ82、82と、第3ベルト83と、左右一対の第4プーリ84、84と、第4ベルト85と、を有している。
【0066】
走行駆動モータM2は、
図3、
図6及び
図12に示すように、フレームユニット20の第1フレーム23の内側面の下端側の部分にモータボックス86を介して固定されている。走行動力伝達シャフト81は、複数のギアGを介して走行駆動モータM2の駆動シャフトに連結されており、モータボックス86を上下方向に貫通して可動体10の上下の高さ方向全体に亘って延伸している。左右一対の第3プーリ82、82は第1ベース21の上面における左右の両端部に上下方向に延伸した中心軸回りに回動可能に設けられ、これらの第3プーリ82に、第3ベルト83が架け渡されている。第3ベルト83の一端部は下右ブラケット87aを介して可動体10の下面(走行台4の基台底板部4aの下面)における右端部側の部分に固定され、第3ベルト83の他端部は下左ブラケット87bを介して可動体10の下面(走行台4の基台底板部4aの下面)における左端部側の部分に固定されている(
図12参照)。同様に、左右一対の第4プーリ84、84は第2ベース22の下面における左右の両端部に上下方向に延伸した中心軸回りに回動可能に設けられ、これらの第4プーリ84に、第4ベルト85が架け渡されている。第4ベルト85の周方向における所定範囲の部分は上右ブラケット88a及び上左ブラケット88bを介して可動体10の上面(昇降装置5の上壁51の装置天板部51aの上面)に固定されている(
図13参照)。そして、左側の第3プーリ82と左側の第4プーリ84とは走行動力伝達シャフト81を介して互いに連結されている。
【0067】
走行駆動機構8は、走行駆動モータM2によって走行動力伝達シャフト81を介して左側の第3プーリ82及び第4プーリ84を回転駆動することで、可動体10を第1レール2と第2レール3との間において各レール(2,3)に沿って左右に移動させる(走行させる)ように構成されている。なお、ここで説明した走行駆動機構8における機構は一例にすぎず、可動体10を各レール(2,3)に沿う方向に移動させることのできる種々の構成の機構が用いられ得る。
【0068】
次に、物品搬送装置1の組立方法について説明する。
【0069】
例えば、可動体10とフレームユニット20がそれぞれ個別に組み立てられる。走行台4と昇降装置5を一体に組み立てることにより、可動体10の組立が完了する。そして、可動体10に、スライダ6、ローラ機構部7及び各ブラケット(87a、87b、88a、88b)等の付属部品を固定する。この時、スライダ6は、その挿入孔6aの孔中心線が可動体10の前後方向の中心を通る中心線X2を通るように、可動体10の下面に固定される。そして、ローラ機構部7は可動体10の前後方向の中央部に取り付けられる。そして、フレームユニット20には、まず、例えば、第1レール2、第2レール3、走行駆動モータM2、走行動力伝達シャフト81及びモータボックス86が取り付けられる。この状態で、スライダ6等の前記付属部品が取り付けられた可動体10をフレームユニット20内に開口20aを通じて挿入する。この時、第1レール2側では、可動体10の下側のスライダ6の挿入孔6aの軸受6d内に第1レール2のレール部2aが挿入されると共に、第2レール3側では、可動体10の上側のローラ機構部7が第2レール3のガイド溝31内に装着される。この状態で、ローラ機構部7の付勢部734が第2ローラ731と基準部71を互いに引き離す付勢力を発生し、第1ローラ721及び第2ローラ731がそれぞれガイド溝31の対応する内側面(31a、31b)に転動可能に押し付けられ、基準部71の第1面71aとガイド溝31の一方の内側面31a(第1ローラ71側の内側面31a)との間の距離が付勢部734の付勢力によって一定に維持される。その結果、第2レール3側においても、第2レール3に沿った走行方向の移動について、レールとスライダ6とによる摺動方式が採用された第1レール2と同程度の直進性を有した高精度のガイドがなされる。このように、可動体10をフレームユニット20内に収容させた後、例えば、走行駆動機構8の各プーリ(82、84)や各ベルト(83、85)が取り付けられる。これにより、物品搬送装置1の組立が完了する。
【0070】
本実施形態に係る物品搬送装置1によれば、可動体10と第1レール2との間のガイド構造としてレールに摺動可能に結合するスライダ6を用いた摺動方式の構造を採用しており、第1レール2に沿う走行方向の移動について高精度のガイドがなされる。そして、可動体10と第2レール3との間のガイド構造として固定ローラ部72と可動ローラ部73とを用いた摺動抵抗の比較的に低い簡易なガイド構造を採用している。これらのガイド構造によれば、第1レール2側では、スライダ6がレール部2aに結合することで可動体10が高精度に位置決めされているが、レール部2aの中心軸線X1回りの可動体10の回動が許容されている。そのため、第2レール3側で、ガイド溝31内にローラ機構部7が位置すると、可動体10は、可動体位置決め用の付勢部734の付勢力によって第1ローラ721及び第2ローラ731のいずれもが第2レール3の位置に応じてガイド溝31の内側面(31a、31b)に当接した姿勢をとることになる。したがって、例えば、第1レール2に対する第2レール3の位置決め精度が多少悪かったとしても、可動体10は、前第1レール2側では、スライダ6を介して上下方向の移動と溝幅方向の移動を阻止された状態で、走行方向の移動が第1レール2に沿って高精度にガイドされ、第2レール3側では、第1ローラ721及び第2ローラ731が第2レール3の内側面(31a、31b)に沿って過度な摺動抵抗を発生させることなく安定して転動するように押し付けられた姿勢で、第2レール3に沿ってガイドされることになる。その結果、可動体10の走行方向の移動について第1レール2側で高精度なガイドを担保しつつ、第2レール3側で第1レール2に対する位置決め精度誤差を吸収した状態で、可動体10を過度な摺動抵抗を発生させることなく走行方向に移動させることができる。このようにして、過度な摺動抵抗を発生させることなく走行方向の移動についての高精度なガイドを容易に実現可能な物品搬送装置1及びこれを備えた保管庫100を提供することができる。
【0071】
本実施形態では、物品搬送装置1は、可動体10を収容可能な収容領域を形成するフレームユニット20を有している。これにより、物品搬送装置1を、主な可能部分と固定部分とに分離することができ、組み立て性に優れた構造を有した物品搬送装置1を提供することができる。また、本実施形態では、フレームユニット20の第1フレーム23には、可動体挿入用の大きな開口20aが形成されているため、可動体10を容易にフレームユニット20内に収容して組み付けることができ、組み立て性のさらなる向上を図ることができる。
【0072】
ここで、本実施形態では、第1レール2側では、前記摺動方式のガイド構造によって、走行方向について高精度に位置決めを行って走行方向の移動をガイドしているが、これと同時に、第1レール2のレール部2aが可動体10の重量(搬送中の物品Pの重量も含む)も受けている。そのため、可動体10の重量が重くなるほど摺動抵抗が増加する。したがって、スムーズな走行の妨げになり得るほどの摺動抵抗が生じる場合には、その対策が求められ得る。この点に対して、物品搬送装置1は、以下のように下ローラ機構部9を更に備えるとよい。
【0073】
図14~
図16は、物品搬送装置1の変形例(変形例1)を説明するための図である。この変形例1では、物品搬送装置1は下ローラ機構部9を更に備えている。
図14は物品搬送装置1の下部の部分拡大側面図であり、
図15は下ローラ機構部9の斜視図であり、
図16は
図14に示すA-A線断面図である。なお、
図14では、フレームユニット20の第2フレーム24が図示省略されている。
【0074】
下ローラ機構部9は、例えば、第3ローラ91と下支持部92と下付勢部93とを有する。本実施形態では、下ローラ機構部9は、可動体10の走行台4の基台底板部4aにおける前後方向の前端と後端の両方に取り付けられており、可動体10の下部は、第1レール2に加えて二つの下ローラ機構部9によって支持されている。
【0075】
第3ローラ91は、第1レール2が固定される基準面Sに沿って転動可能なローラである。本実施形態では、基準面Sはフレームユニット20の第1ベース21の上面である。
【0076】
下支持部92は、可動体10の下部(走行台4の基台底板部4aの前端と後端)に固定され、第3ローラ91を転動可能で且つ上下方向に移動可能に支持するものである。
【0077】
具体的には、下支持部92は、下ブラケット921と、上ブラケット922と、左右に一対の規制ピン兼スライド軸部923と、上ブラケット922を可動体10の下部(基台底板部4a)に固定する固定ブラケット924とを有する。下ブラケット921は、第3ローラ91を前後方向に延伸した第3ローラ中心軸91X回りに回動可能に支持し、上方開口の概ねコ字状断面を有して形成された部材である。上ブラケット922は、下方開口の概ねコ字状断面を有し下ブラケット921を上方から挟み込むようにして下ブラケット921に組み合わされる部材である。上ブラケット922は固定ブラケット924を介して可動体10の下部(走行台4の基台底板部4aの前端と後端)に固定されている。各規制ピン兼スライド軸部923は、下ブラケット921及び上ブラケット922を貫通して下ブラケット921に対する上ブラケット922の走行方向の移動を規制するピンである。また、規制ピン兼スライド軸部923は、下ブラケット921を上ブラケット922に対して上下方向に移動可能に支持する部材である。規制ピン兼スライド軸部923は、例えば、下ブラケット921に螺合するネジ部923aと、ネジ部923aより大径の軸部923bと、軸部923bより大径の頭部923cとからなる段付きボルトである。規制ピン兼スライド軸部923の軸部923bは上ブラケット922に開口された孔に挿入され、この状態で、ネジ部923aが下ブラケット921にネジ止めされると共に頭部923cが上ブラケット922の上方に位置するようになっている。これにより、一対の規制ピン兼スライド軸部923によって、下ブラケット921が上ブラケット922に対して上下方向に移動可能に支持される。
【0078】
下付勢部93は、可動体10と第3ローラ91を互いに引き離す付勢力を発生する部材であり、例えば、コイルバネからなり、下ブラケット921と上ブラケット922との間において、規制ピン兼スライド軸部923(軸部923b)を取り囲むように組付けられる。可動体10のスライダ6が第1レール2のレール部2aに結合した状態で、下付勢部93は、下ブラケット921と上ブラケット922との間で圧縮され、可動体10と第3ローラ91を互いに上下に引き離す付勢力を発生する。
【0079】
下ローラ機構部9を備えた物品搬送装置1では、可動体10(搬送中の物品Pも含む)は、下付勢部93の付勢力によって上方に付勢されている。下付勢部93の付勢力により、第1レール2とスライダ6(詳しくは樹脂製の軸受6d)との摺動抵抗が低減され、この付勢力を可動体10(搬送中の物品も含む)の荷重に応じて適宜に設定することにより、可動体10を第1レール2に沿ってよりスムーズに走行させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、第1レール2は第2レール3の下方に配置されているものとしたが、これに限らず、
図17に示す別の変形例(変形例2)のように、第1レール2は第2レール3の上方に配置されていてもよい。つまり、レールに摺動可能に結合するスライダを用いた摺動方式のガイド構造を可動体10の上部に採用し、ローラを用いた摺動抵抗の比較的に低い簡易なガイド構造を可動体10の下部に採用してもよい。この場合、第1ベース21は第2ベース22の上方に配置され、第1レールはレール部2aを下方に向けた姿勢で第1ベース21の下面に固定され、第2レールはガイド溝31の開口を上方に向けた姿勢で第2ベース22の上面に固定され、スライダ6は可動体10の上面(昇降装置5の上壁51の装置天板部51aの上面)に固定され、ローラ機構部7は可動体10の下面(走行台4の基台底板部4aの下面)に取り付けられる。
【0081】
また、開口20aは第1フレーム23に限らず、第2フレーム24に形成してもよい。この場合、走行駆動機構8の走行駆動モータM2や走行動力伝達シャフト81を第1フレーム23に取り付ければよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…物品搬送装置、2…第1レール、2a…レール部、3…第2レール、31…ガイド溝(溝)、31a…一方の内側面、31b…他方の内側面、6…スライダ、6a…挿入孔、7…ローラ機構部、71…基準部、72…固定ローラ部、721…第1ローラ、73…可動ローラ部、731…第2ローラ、734…可動体位置決め用の付勢部、9…下ローラ機構部、91…第3ローラ、93…下付勢部、10…可動体、100…保管庫、P…物品、X1…中心軸線