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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003558
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】混練攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/70 20220101AFI20230110BHJP
   B01F 35/00 20220101ALI20230110BHJP
【FI】
B01F7/04 C
B01F15/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104700
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃史
(72)【発明者】
【氏名】大濱 徳也
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037DA21
4G037EA03
4G078AA02
4G078BA01
4G078BA07
4G078DA01
4G078DB02
4G078DB10
(57)【要約】
【課題】混練攪拌装置において、混練条件に応じた最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定できるようにする。
【解決手段】攪拌翼5として、攪拌翼本体10と、攪拌翼本体10の中心に形成された金具取付孔12に嵌め込まれる軸受金具13とを備え、その金具取付孔12および軸受金具13の外形がnを5以上の整数とする正n角形に形成され、軸受金具13がスプライン結合によって回転軸と結合されるものを採用して、回転軸の軸方向で、回転軸に対する軸受金具13の相対位相と、軸受金具13に対する攪拌翼本体10の相対位相との組み合わせを変えて、攪拌翼5の回転軸への取付位相を変化させられるようにした。これにより、様々な混練条件に対応して、最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング(1)と、前記ケーシング(1)の内部にその筒軸方向に延びるように設けられる少なくとも1つの回転軸(3)と、前記回転軸(3)にその軸方向に順々に所定の位相で取り付けられる複数の攪拌翼(5)とを備えた混練攪拌装置において、
前記複数の攪拌翼(5)のうちの少なくとも一部の攪拌翼(5)は、厚み方向から見て複数の頂点を有する板状に形成される攪拌翼本体(10)と、前記攪拌翼本体(10)の中心に形成された金具取付孔(12)に嵌め込まれる軸受金具(13)とを備え、前記攪拌翼本体(10)が前記回転軸(3)の軸方向と直交する姿勢で前記軸受金具(13)を介して回転軸(3)に外嵌されるものであり、前記金具取付孔(12)および前記軸受金具(13)の外形はnを5以上の整数とする正n角形に形成され、前記軸受金具(13)はスプライン結合によって前記回転軸(3)と結合され、そのスプライン結合を構成する突起とその突起が嵌まり込む溝は同一形状のものが周方向に等間隔で形成されており、前記回転軸(3)の軸方向で、前記回転軸(3)に対する前記軸受金具(13)の相対位相と、前記軸受金具(13)に対する前記攪拌翼本体(10)の相対位相との組み合わせを変えることにより、前記攪拌翼(5)の回転軸(3)への取付位相を変化させていることを特徴とする混練攪拌装置。
【請求項2】
前記回転軸(3)の軸方向で、前記攪拌翼(5)の回転軸(3)への取付位相を順々に同一角度ずつ変化させていることを特徴とする請求項1に記載の混練攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体、液体、高粘度流体等の混練攪拌を行う混練攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混練攪拌装置は、一般に、筒状のケーシングと、ケーシングの内部にその筒軸方向に延びるように設けられる少なくとも1つの回転軸と、回転軸にその軸方向に順々に取り付けられる複数の攪拌翼(パドル)とを備え、その回転軸を回転駆動することにより、ケーシングに供給される被処理物を攪拌翼で混練攪拌するようになっている。
【0003】
このような混練攪拌装置では、攪拌翼の形状のほか、攪拌翼の回転軸への取付位相も被処理物の処理後の混練状態に大きく影響する。このため、被処理物の性状、要求される処理後の混練状態等の混練条件に応じて、1つの回転軸についてすべての攪拌翼を同一位相で取り付けたり、例えば特許文献1に記載されているように回転軸の軸方向で攪拌翼の取付位相を変化させたりしている。
【0004】
ところで、上記特許文献1の混練攪拌装置では、攪拌翼をキー結合により回転軸に取り付けるようになっているので、回転軸の軸方向で攪拌翼の取付位相を変化させるには、軸方向に延びる1つのキーを有する回転軸に対して、キー溝の周方向位置が異なる攪拌翼を複数種類取り付ける必要があり、攪拌翼の製作種類が多くなるという問題がある。
【0005】
これに対し、例えば特許文献2で提案されている混練攪拌装置のように、攪拌翼をスプライン結合によって回転軸に取り付けるようにすれば、そのスプライン結合を構成する突起とその突起が嵌まり込む溝は、通常、同一形状のものが周方向に等間隔で形成されているので、1つの回転軸について1種類の攪拌翼を異なる位相で取り付けることができ、攪拌翼をキー結合で回転軸に取り付ける場合に比べて、攪拌翼の製作種類を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-6338号公報
【特許文献2】特許第6771908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように攪拌翼をスプライン結合によって回転軸に取り付けた混練攪拌装置では、回転軸の軸方向で攪拌翼の取付位相を変化させる場合に、その取付位相の変化のさせ方(以下、「攪拌翼取付パターン」と称する。)の種類を増やそうとすると、スプライン結合を構成する突起と溝の数を増やすことになり、突起の幅が狭くなって使用中に突起が破損しやすくなる。このため、攪拌翼取付パターンの種類をあまり多くできず、必ずしも混練条件に応じた最適な攪拌翼取付パターンを設定できないという点で改善の余地があった。
【0008】
そこで、この発明は、混練攪拌装置において、混練条件に応じた最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明は、筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部にその筒軸方向に延びるように設けられる少なくとも1つの回転軸と、前記回転軸にその軸方向に順々に所定の位相で取り付けられる複数の攪拌翼とを備えた混練攪拌装置において、前記複数の攪拌翼のうちの少なくとも一部の攪拌翼は、厚み方向から見て複数の頂点を有する板状に形成される攪拌翼本体と、前記攪拌翼本体の中心に形成された金具取付孔に嵌め込まれる軸受金具とを備え、前記攪拌翼本体が前記回転軸の軸方向と直交する姿勢で前記軸受金具を介して回転軸に外嵌されるものであり、前記金具取付孔および前記軸受金具の外形はnを5以上の整数とする正n角形に形成され、前記軸受金具はスプライン結合によって前記回転軸と結合され、そのスプライン結合を構成する突起とその突起が嵌まり込む溝は同一形状のものが周方向に等間隔で形成されており、前記回転軸の軸方向で、前記回転軸に対する前記軸受金具の相対位相と、前記軸受金具に対する前記攪拌翼本体の相対位相との組み合わせを変えることにより、前記攪拌翼の回転軸への取付位相を変化させている構成を採用した。
【0010】
上記の構成によれば、軸受金具を備えていない従来の攪拌翼をスプライン結合で回転軸に取り付ける場合に比べて、攪拌翼取付パターンの種類を大幅に増やすことができるので、そのうちの複数の攪拌翼取付パターンでの実験等を行うことにより、混練条件に応じた最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定することができる。
【0011】
ここで、具体的な攪拌翼取付パターンとしては、例えば、前記回転軸の軸方向で、前記攪拌翼の回転軸への取付位相を順々に同一角度ずつ変化させているものを採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の混練攪拌装置は、上述したように、少なくとも一部の攪拌翼として、板状の攪拌翼本体の中心に、nを5以上の整数とする正n角形に形成され、回転軸とスプライン結合する軸受金具を嵌め込んだものを用いることにより、非常に多くの種類の攪拌翼取付パターンを設定可能としたものであるから、混練条件に応じた最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る実施形態の混練攪拌装置の縦断正面図
図2図1の混練攪拌装置の横断平面図
図3図2のIII-III線に沿った断面図
図4図1の混練攪拌装置の攪拌翼の分解斜視図
図5図4の攪拌翼の正面図
図6図4の攪拌翼の取付位相を回転軸の軸方向で変化させた例を示す説明図(混練攪拌装置の一端側から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。この混練攪拌装置は、図1乃至図3に示すように、筒状のケーシング1の内部の処理室2に、一対の回転軸3をケーシング1の筒軸方向に延びるように互いに平行に設けたものであり、各回転軸3には多数の攪拌翼5が取り付けられている。なお、この図1乃至図3は、各回転軸3についてすべての攪拌翼5を同一位相で取り付けた例を示している。
【0015】
前記ケーシング1は、同径の2つの円が交差する断面形状を有するものであり、一端側に供給口が、他端側に排出口がそれぞれ設けられ(いずれも図示は省略)、その供給口と排出口を除く外周面に加熱・冷却用のジャケット8が設けられている。
【0016】
前記各回転軸3は、それぞれの両端部をケーシング1から突出させており、その一方の突出端部に連結されたモータ(図示省略)によって、同一方向に同一回転速度で回転するようになっている。
【0017】
前記攪拌翼5は、一方の回転軸3に取り付けられるものと他方の回転軸3に取り付けられるものの取付位置が両回転軸3の軸心を含む断面において千鳥状となるように、各回転軸3の軸方向に順々に固定されている。
【0018】
これらの各攪拌翼5は、図3乃至図5に示すように、略三角形の板状の攪拌翼本体10と、攪拌翼本体10の外周側に取り付けられる3つの掻上部材11と、攪拌翼本体10の中心に形成された金具取付孔12に嵌め込まれる軸受金具13とで構成されるものであり、その攪拌翼本体10が回転軸3の軸方向と直交する姿勢で、軸受金具13と回転軸3とのスプライン結合によって回転軸3に外嵌固定されている。
【0019】
攪拌翼本体10は、厚み方向から見て、正三角形の各頂点を含む頂部をそれぞれ同一回転方向に傾けた形状に形成されており、その傾斜した各頂部14の長辺側の厚み面15のそれぞれに掻上部材11が取り付けられている。各掻上部材11は、攪拌翼本体10の厚み方向から見た断面が略台形に形成された板状の部材であり、その台形の一方の脚が攪拌翼本体10の三角形の一辺に沿って延び、攪拌翼本体10の厚み方向の前後に張り出す状態で、その表面から攪拌翼本体10の頂部14にねじ込まれる2本のボルト16によって攪拌翼本体10に取り付けられている。そして、各ボルト16の頭部を収容した掻上部材11の座ぐり部は溶接によって埋められており、その溶着金属19が表面仕上げされている。
【0020】
また、攪拌翼本体10の金具取付孔12および軸受金具13の外形は正8角形に形成され、軸受金具13と回転軸3とのスプライン結合を構成する突起とその突起が嵌まり込む溝は、同一形状のものが周方向に等間隔で10個ずつ形成されている。したがって、攪拌翼本体10と軸受金具13をそれぞれ1種類製造しておくだけで、攪拌翼5の組立時に金具取付孔12への軸受金具13の嵌め込み位置を変更することにより、8種類の攪拌翼5が得られ、各種類の攪拌翼5をそれぞれ10種類の位相で回転軸3に取り付けることができる。
【0021】
すなわち、回転軸3の軸方向で、回転軸3に対する軸受金具13の相対位相と、軸受金具13に対する攪拌翼本体10の相対位相(攪拌翼5の種類)との組み合わせを変えることにより、従来の攪拌翼をスプライン結合で回転軸に取り付ける場合に比べて、非常に多くの種類の攪拌翼取付パターン(攪拌翼の回転軸への取付位相の変化のさせ方)を設定できるようになっている。
【0022】
図6は攪拌翼取付パターンの一例を示す。この攪拌翼取付パターンは、回転軸3の軸方向で、攪拌翼5の回転軸3への取付位相を順々に15度ずつ変化させたものである。回転軸3の軸方向での攪拌翼5の取付位相の変化の角度は、種々変更することができるし、必ずしも同一にしなくてもよい。
【0023】
なお、攪拌翼本体10の金具取付孔12とそこに嵌まり込む軸受金具13の外形は、実施形態のような正8角形に限らず、nを5以上の整数とする正n角形とすることができる。ここで、nを5以上の整数としたのは、攪拌翼本体が正三角形状あるいは交差する同径の2つの円の交差部分のような形状に形成される場合が多いので、nを3または4にすると、金具取付孔への軸受金具の嵌め込み位置の変化が攪拌翼本体の形状の対称性によって打ち消されて、十分な攪拌翼取付パターンの種類を得られないことがあるからである。
【0024】
また、軸受金具13と回転軸3とのスプライン結合を構成する突起と溝は、実施形態では10個ずつとしたが、個数によらず、同一形状のものが周方向に等間隔で形成されていればよい。
【0025】
この混練攪拌装置は、上述したように、設定可能な攪拌翼取付パターンの種類が非常に多いので、被処理物の性状、要求される処理後の混練状態等の混練条件に応じて、複数の攪拌翼取付パターンでの実験等を行うことにより、最適な攪拌翼取付パターンを確実に設定することができる。言い換えれば、多種多様な被処理物に対して、要求される混練状態を確実に実現することができる。
【0026】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
例えば、攪拌翼本体に嵌め込まれる正n角形の軸受金具をスプライン結合によって回転軸に取り付ける攪拌翼の構成は、実施形態のように回転軸に取り付けられるすべての攪拌翼に適用することが望ましいが、混練条件を考慮して一部の攪拌翼のみに適用するようにしてもよい。
【0028】
また、この発明は、実施形態のようにケーシング内に一対の回転軸を設けた2軸型の混練攪拌装置に限らず、少なくとも1つの回転軸を有する混練攪拌装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ケーシング
3 回転軸
5 攪拌翼
10 攪拌翼本体
11 掻上部材
12 金具取付孔
13 軸受金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6