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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035583
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】壁埋込形子機および機器状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61G12/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142557
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 修
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341JJ01
4C341MR11
4C341MR17
(57)【要約】
【課題】壁埋込形子機のコネクタを介して複数の接続機器が接続された場合でも、接続機器ごとの操作状態および接続状態を正確に判定できるようにする。
【解決手段】壁埋込形子機4のコネクタ40に接続される呼出ラインNC4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、ハンド形子機6の操作状態および接続状態とセンサ子機7の操作状態とを判定する第1の判定部41Aと、ハンド形子機6のLED62が点灯しない程度の弱電流を供給することによってLEDラインEL4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、センサ子機7の接続状態を判定する第2の判定部41Bとを備え、センサ子機7の接続状態については、呼出ラインNC4とは異なるLEDラインEL4に生じる電圧を用いて判定を行うことにより、判定のために使用する閾値の数を減らし、接続機器ごとの操作状態および接続状態が判定しやすくなるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号ラインに接続されるコネクタを備え、当該コネクタを介して接続機器を接続可能になされた壁埋込形子機であって、
上記複数の信号ラインは、呼出信号の通信に使用される呼出ラインと、上記接続機器が備えるLEDの発光制御に使用されるLEDラインとを含み、
上記呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記コネクタを介して直接または間接的に接続されている複数の接続機器のうち一部の接続機器の操作状態および接続状態と、上記一部の接続機器以外の他の接続機器の操作状態とを判定する第1の判定部と、
上記LEDが点灯しない程度の弱電流を上記LEDラインに供給し、当該弱電流の供給に応じて上記LEDラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記他の接続機器の接続状態を判定する第2の判定部とを備えた
ことを特徴とする壁埋込形子機。
【請求項2】
上記第2の判定部は、上記LEDが点灯中か否かを判定し、上記LEDが点灯中であると判定された場合は、上記LEDを消灯させた後に上記弱電流を供給することによって上記他の接続機器の接続状態を判定し、当該判定の後に上記LEDを再点灯させることを特徴とする請求項1に記載の壁埋込形子機。
【請求項3】
上記第1の判定部は、上記接続機器の操作状態に関して、上記呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記一部の接続機器の操作であるか上記他の接続機器の操作であるかを識別することを特徴とする請求項1または2に記載の壁埋込形子機。
【請求項4】
上記第1の判定部は、上記接続機器の操作状態に関して、上記呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記一部の接続機器の操作である場合にその操作の種類を更に識別することを特徴とする請求項3に記載の壁埋込形子機。
【請求項5】
上記第1の判定部は、上記他の接続機器が複数接続されている場合に、上記接続機器の操作状態に関して、上記呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、複数の上記他の接続機器のうちどれの操作であるかを更に識別することを特徴とする請求項3または4に記載の壁埋込形子機。
【請求項6】
上記第2の判定部は、上記他の接続機器が複数接続されている場合に、上記LEDラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、複数の上記他の接続機器のうちどれが脱落状態であるかを識別することを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の壁埋込形子機。
【請求項7】
壁埋込形子機のコネクタに接続される複数の信号ラインのうち、呼出信号の通信に使用される呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記コネクタを介して直接または間接的に接続されている複数の接続機器のうち一部の接続機器の操作状態および接続状態と、上記一部の接続機器以外の他の接続機器の操作状態とを判定する第1の判定部と、
上記複数の信号ラインのうち、上記接続機器が備えるLEDの発光制御に使用されるLEDラインに対して、上記LEDが点灯しない程度の弱電流を供給し、当該弱電流の供給に応じて上記LEDラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、上記他の接続機器の接続状態を判定する第2の判定部とを備えた
ことを特徴とする機器状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁埋込形子機および機器状態判定装置に関し、特に、患者が呼出ボタンの押下によって看護師を呼び出すことができるように成されたナースコールシステムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の接続機器が壁埋込形子機(プレート子機)に接続された場合でも接続機器の種類(ボタン型呼出器、特殊呼出器、外部機器など)を判別でき、接続機器が脱落した場合はその種類毎に脱落状況を検出できるようにしたナースコールシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のナースコールシステムでは、接続機器が脱落した場合に、接続機器が有する固有の抵抗値からどの接続機器が脱落したかを検出する。
【0003】
一方、壁埋込子機とボタン型呼出器とを接続するコネクタ(接続端子)が有する複数の信号ラインのうち、呼出ボタンが押下されたときに発信される呼出信号の通信に使用される呼出ラインを用いて、当該呼出ラインに生じる電圧と閾値とをコンパレータにて比較することで、呼出操作の有無および脱落の有無を検出するようにしたナースコールシステムも存在する。この種の検出機能を有するナースコールシステムでは、ボタン型呼出器の呼出/待機/脱落の3種類の状態を、呼出ラインに生じる電圧と閾値との比較によって判定することになる。
【0004】
しかしながら、複数のコネクタを有する壁埋込形子機に対して複数の接続機器を接続した場合や、壁埋込形子機に分配器を接続して複数の接続機器を接続した場合に、接続機器ごとに呼出/待機/脱落の3種類の状態を電圧によって閾値判定しようとすると、判定に用いるべき閾値の数が多数となり、接続機器ごとの各状態を正確に識別することが難しくなるという問題があった。
【0005】
例えば、2種類の接続機器を壁埋込形子機に接続した場合、第1の接続機器の呼出/待機/脱落の3種類の状態と、第2の接続機器の呼出/待機/脱落の3種類の状態との組み合わせで合計9種類の状態を8個の閾値によって識別することが必要となる。3種類の接続機器を壁埋込形子機に接続した場合には、合計27種類の状態を26個の閾値によって識別することが必要となる。呼出ラインに生じる電圧と閾値との比較によってこれら多数の状態を正確に識別することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-168570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、壁埋込形子機のコネクタを介して複数の接続機器が接続された場合でも、接続機器ごとの操作状態および接続状態を、電圧と閾値との比較によって正確に判定しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、壁埋込形子機のコネクタに接続される複数の信号ラインのうち、呼出信号の通信に使用される呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、コネクタを介して接続されている複数の接続機器のうち一部の接続機器の操作状態および接続状態と、当該一部の接続機器以外の他の接続機器の操作状態とを判定する。また、複数の信号ラインのうち、接続機器が備えるLEDの発光制御に使用されるLEDラインに対して、LEDが点灯しない程度の弱電流を供給し、当該弱電流の供給に応じてLEDラインに生じる電圧と閾値とを比較することにより、他の接続機器の接続状態を判定する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することによって複数の接続機器の全てに関する操作状態および接続状態を検出する従来技術とは異なり、一部の接続機器以外の他の接続機器の接続状態については、呼出ラインとは異なるLEDラインに生じる電圧を用いて判定が行われるので、呼出ラインおよびLEDラインのそれぞれで判定のために使用する閾値の数を減らすことが可能となる。これにより、壁埋込形子機のコネクタを介して複数の接続機器が接続された場合でも、接続機器ごとの操作状態および接続状態を、電圧と閾値との比較によって正確に判定しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による壁埋込形子機を含むナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による壁埋込形子機のコネクタが有する接続ピンの構成例を示す図である。
図3】本実施形態による壁埋込形子機の構成例を、分配コンセント、ハンド形子機およびセンサ子機の構成と共に示す図である。
図4】第1の判定部および第2の判定部による判定内容の一例を示す図である。
図5】発光制御部がLEDの発光制御を行う際にLEDラインに出力する電圧を模式的に示す図である。
図6】第2の判定部がセンサ子機の脱落の有無を判定する際にLEDラインELに現れる電圧を模式的に示す図である。
図7】第1の判定部および第2の判定部による判定内容の他の例を示す図である。
図8】2つのセンサ子機が接続される構成例を示す図である。
図9】第1の判定部および第2の判定部による判定内容の他の例を示す図である。
図10】第1の判定部および第2の判定部による判定内容の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による壁埋込形子機を含むナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4、分配コンセント5、ハンド形子機6およびセンサ子機7を備えて構成される。なお、以下の説明において、ハンド形子機6およびセンサ子機7を合わせてナースコール子機6,7という。
【0013】
ナースコール親機1は、ナースコール子機6,7からの呼び出しを受けて所定の報知処理を行うものである。本実施形態において、ナースコール親機1は、ナースセンタに設置される据置型のナースコール親機と、看護師に携帯される可搬型のナースコール親機とを含む。所定の報知処理は、呼び出しを行った患者に関する患者情報(例えば、氏名、部屋番号、ベッド番号など)をディスプレイに表示する処理およびスピーカから呼出音を出力する処理を含む。ハンド形子機6からの呼び出しに対してナースコール親機1で看護師が応答の操作を行うことにより、ハンド形子機6とナースコール親機1との間に通話路が形成され、患者と看護師とが会話を行うことができるようになっている。
【0014】
制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間に配置され、通話や呼出信号を含む各種データの送受信に関する制御を行う。廊下灯3は、病院の各病室の入口付近外部に設置され、病室内の患者名を表示装置に表示するとともに、ナースコール子機6,7を用いて呼び出しが行われたときに、呼び出しが行われたことを表示装置に表示する。また、廊下灯3は、ナースコール子機6,7から送信された呼出信号を、制御機2を介してナースコール親機1に転送する。
【0015】
壁埋込形子機4は、病室の各ベッドサイドの壁に埋め込み設置され、廊下灯3とナースコール子機6,7との間で通話や呼出信号を含む各種データの通信を行う。また、壁埋込形子機4は、ハンド形子機6が備えるLEDが呼出確認灯または常夜灯として機能するように、LEDの発光制御を行う。すなわち、壁埋込形子機4は、ハンド形子機6から呼出信号を受信したときに、呼び出しが行われていることを患者に知らせるためにLEDを高輝度で点灯させる。また、壁埋込形子機4は、時計(図示せず)が夜間の時間帯となったときに、ハンド形子機6の位置を患者に知らせるためにLEDを低輝度で点灯させる。なお、壁埋込形子機4は、病室内の照度が一定レベル以下となったときに、ハンド形子機6の位置を患者に知らせるためにLEDを低輝度で点灯させるようにしても良い。
【0016】
壁埋込形子機4は、複数の信号ラインに接続されるコネクタ40を備え、当該コネクタ40を介して接続機器を接続可能に構成されている。壁埋込形子機4のコネクタ40に接続可能な接続機器は、例えばハンド形子機6である。また、コネクタ40には分配コンセント5を接続することも可能であり、分配コンセント5を介して複数の接続機器を壁埋込形子機4に間接的に接続することも可能である。図1では、壁埋込形子機4のコネクタ40に分配コンセント5を接続し、分配コンセント5にハンド形子機6およびセンサ子機7を接続した状態を示している。
【0017】
分配コンセント5は、2つのコネクタ51,52を備え、当該コネクタ51,52を介して1つまたは2つの接続機器を接続可能に構成されている。分配コンセント5に接続可能な接続機器は、例えばハンド形子機6およびセンサ子機7である。第1のコネクタ51は、ハンド形子機6を接続するためのピン構造を有するコネクタであり、壁埋込形子機4のコネクタ40が有するピン構造と同じである。第2のコネクタ52は、センサ子機7を接続するためのピン構造を有するコネクタである。
【0018】
このように、本実施形態の壁埋込形子機4は、コネクタ40を介して分配コンセント5を接続可能になされ、さらに当該分配コンセント5を介して複数の接続機器を接続可能になされている。ハンド形子機6およびセンサ子機7は、壁埋込形子機4のコネクタ40を介して間接的に接続される複数の接続機器の一例である。
【0019】
壁埋込形子機4のコネクタ40(分配コンセント5の第1のコネクタ51も同様)は、上述したように複数の信号ラインに接続されている。例えば、図2に示すように、コネクタ40は6個の接続ピンP1~P6を備え、これら6個の接続ピンP1~P6に対して6本の信号ラインが接続されている。
【0020】
第1の信号ラインは、ハンド形子機6に音声を出力するための通信に使用されるスピーカラインである。第2の信号ラインは、ハンド形子機6からの音声を入力するための通信に使用されるマイクラインである。第3の信号ラインは接地ライン、第6の信号ラインは電源ラインである。第4の信号ラインは、呼出信号の通信に使用される呼出ラインであり、ナースコール子機6,7からの呼出信号が入力される。第5の信号ラインは、ハンド形子機6が備えるLEDの発光制御に使用されるLEDラインである。
【0021】
ハンド形子機6は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカを備えている。ハンド形子機6は、呼出ボタンの押下に応じて呼出信号を出力する。また、ハンド形子機6は、上述したように呼出確認灯および常夜灯として機能するLED(図示せず)を備えており、壁埋込形子機4から供給される制御信号に応じて、LEDを点灯/消灯する。なお、ハンド形子機6の構成はこれに限定されない。例えば、マイクおよびスピーカを備えないもの(例えば、握り押しボタン)であってもよい。
【0022】
センサ子機7は、例えば、ベッド上に設置される離床センサ、ベッド下に設置されるマットセンサ、ベッドサイドに設置されるブレスセンサや音声センサ、接触センサなどの各種センサの何れかである。センサ子機7は、センサによって所定の状態を検出すると、呼出信号を出力する。例えば、離床センサは、患者がベッドから離れたことを検出すると呼出信号を出力する。また、マットセンサは、患者がベッド下のマットを踏んだことを検出すると呼出信号を出力する。また、ブレスセンサ、音声センサは、患者が発する息または声を検出すると呼出信号を出力する。また、接触センサは、患者が所定位置に触れたことを検出すると呼出信号を出力する。
【0023】
本実施形態において、壁埋込形子機4は、機器状態判定装置としての機能を有し、ナースコール子機6,7の操作状態(呼出操作の有無)および接続状態(脱落の有無)を判定する。例えば、壁埋込形子機4は、ハンド形子機6の呼出/待機/脱落の3種類の状態と、センサ子機7の呼出/待機/脱落の3種類の状態とを判定する。壁埋込形子機4は、この判定を、呼出ラインに生じる電圧と閾値との比較およびLEDラインに生じる電圧と閾値との比較によって行う。
【0024】
図3は、この判定の実行に関する壁埋込形子機4の構成例を、分配コンセント5、ハンド形子機6およびセンサ子機7の構成と共に示す図である。図3に示すように、本実施形態の壁埋込形子機4は、CPU、RAM、ROM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータなどを含むマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)41を備えている。マイコン41とコネクタ40の4番ピンP4との間は呼出ラインNC4で接続され、マイコン41とコネクタ40の5番ピンP5との間はLEDラインEL4で接続されている。なお、マイコン41とその他の接続ピンP1~P3,P6との接続については図示を省略している。
【0025】
分配コンセント5は、ハンド形子機6およびセンサ子機7を接続する2つのコネクタ51,52の他に、壁埋込形子機4のコネクタ40に接続するプラグ53を備えている。プラグ53の4番ピンP4’と第1のコネクタ51の4番ピンP4との間は呼出ラインNC5で接続され、プラグ53の5番ピンP5’と第1のコネクタ51の5番ピンP5との間はLEDラインEL5で接続されている。呼出ラインNC5およびLEDラインEL5は何れも途中で分岐を有し、分岐先に第2のコネクタ52が接続されている。呼出ラインNC5およびLEDラインEL5と第2のコネクタ52との間には、それぞれ抵抗R1,R2が存在する。
【0026】
ハンド形子機6は、分配コンセント5の第1のコネクタ51に接続するプラグ61を備えている。プラグ61の4番ピンP4’には呼出ラインNC6が接続され、プラグ61の5番ピンP5’にはLEDラインEL6が接続されている。呼出ラインNC6には、抵抗R3とスイッチSW1とが並列に接続されている。ハンド形子機6の呼出ボタンが押下されるとスイッチSW1がオンとなり、呼出信号が発行される。発行された呼出信号は、呼出ラインNC6,NC5,NC4を介してマイコン41に送られる。LEDラインEL6には、抵抗R4とLED62とが直接に接続されている。
【0027】
センサ子機7は、分配コンセント5の第2のコネクタ52に接続するプラグ71を備えている。プラグ71が有する複数の接続ピンの1つには、スイッチSW2が接続されている。センサ子機7のセンサにおいて所定の状態が検出されるとスイッチSW2がオンとなり、呼出信号が発行される。発行された呼出信号は、呼出ラインNC5,NC4を介してマイコン41に送られる。
【0028】
以上のような構成により、壁埋込形子機4の呼出ラインNC4およびLEDラインEL4には、分配コンセント5を介してハンド形子機6が接続されているか否か、分配コンセント5を介してセンサ子機7が接続されているか否か、ハンド形子機6のスイッチSW1がオンとなって呼び出しが行われているか否か、センサ子機7のスイッチSW2がオンとなって呼び出しが行われているか否かといった状態の組み合わせに応じて、異なる値の電圧が現れる。マイコン41は、この呼出ラインNC4およびLEDラインEL4に現れる電圧値に基づいて、ナースコール子機6,7の操作状態および接続状態を判定する。
【0029】
マイコン41は、機能構成として、第1の判定部41A、第2の判定部41B、呼出制御部41Cおよび発光制御部41Dを備えている。第1の判定部41Aは、呼出ラインNC4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、コネクタ40を介して接続されているハンド形子機6(複数の接続機器のうち一部の接続機器に相当)の操作状態および接続状態と、センサ子機7(一部の接続機器以外の他の接続機器に相当)の操作状態とを判定する。ハンド形子機6の接続状態に関しては、所定の大きさの電流を呼出ラインNC4に供給し、呼出ラインNC4に生じる電圧と閾値とを所定の周期で比較することにより、ハンド形子機6の脱落の有無を判定する。
【0030】
また、第2の判定部41Bは、ハンド形子機6のLED62が点灯しない程度の弱電流をLEDラインEL4に所定の周期で繰り返し供給し、当該弱電流の供給に応じてLEDラインEL4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、センサ子機7の接続状態を判定する。
【0031】
例えば、第1の判定部41Aは、図4に示すように、呼出ラインNC4に生じる電圧と5つの閾値Th11~Th15とを比較することにより、ハンド形子機6の操作状態(待機または呼出)および接続状態(脱落)と、センサ子機7の操作状態(待機または呼出)との組み合わせに関して6つの状態のうち何れであるかを判定する。この例では、第1の判定部41Aは、接続機器の操作状態に関して、ハンド形子機6の呼出操作であるかセンサ子機7の呼出操作であるかを識別している。また、第2の判定部41Bは、LEDラインEL4に生じる電圧と1つの閾値Th21とを比較することにより、センサ子機7の接続状態(脱落の有無)を判定する。
【0032】
ハンド形子機6が脱落せずに、コネクタ40および分配コンセント5を介して壁埋込形子機4に接続されている場合、呼出ラインNC4に生じる電圧は、ハンド形子機6が備える抵抗R3およびスイッチSW1のオン/オフの影響を受けて変動する。また、ハンド形子機6が脱落すると、抵抗R3の影響を受けなくなって呼出ラインNC4に生じる電圧が変動する。同様に、センサ子機7が脱落せずに、コネクタ40および分配コンセント5を介して壁埋込形子機4に接続されている場合、呼出ラインNC4に生じる電圧は、分配コンセント5が備える抵抗R1およびセンサ子機7が備えるスイッチSW2のオン/オフの影響を受けて変動する。第1の判定部41Aは、このように変動する呼出ラインNC4の電圧値と5つの閾値Th11~Th15とを比較することにより、図4に示す6つの状態の何れであるかを判定することが可能である。
【0033】
また、センサ子機7が脱落せずに、コネクタ40および分配コンセント5を介して壁埋込形子機4に接続されている場合と、センサ子機7が脱落している場合とを比較すると、LEDラインEL4に弱電流を流したときにLEDラインEL4に生じる電圧は、分配コンセント5が備える抵抗R2の影響を受けるか否かに応じて変動する。なお、第2の判定部41BからLEDラインEL4に出力される弱電流は、LED62が発光しない程度の弱い電流であるため、ハンド形子機6が接続されている場合であっても、ハンド形子機6の抵抗R4およびLED62の部分は回路がオープンになっているのと同義となる。そのため、抵抗R4の影響は殆ど無視できる。第2の判定部41Bは、このように抵抗R2の影響を受けて変動するLEDラインEL4の電圧値と1つの閾値Th21とを比較することにより、図4に示す2つの状態の何れであるかを判定することが可能である。
【0034】
呼出ラインNC4に生じる電圧と閾値との比較のみで判定を行う従来技術の場合は、ハンド形子機6の呼出/待機/脱落の3種類の状態と、センサ子機7の呼出/待機/脱落の3種類の状態との組み合わせで合計9種類の状態を8個の閾値によって識別することが必要であった。これに対し、本実施形態によれば、多い方の第1の判定部41Aでも5個の閾値Th11~Th15を用いるだけで、ハンド形子機6およびセンサ子機7のそれぞれの操作状態および接続状態を判定することが可能である。
【0035】
呼出制御部41Cは、第1の判定部41Aおよび第2の判定部41Bの判定の結果に基づいて、種類の異なる呼出信号を廊下灯3に送信する。すなわち、呼出制御部41Cは、ハンド形子機6で呼び出しが行われたと判定された場合(センサ子機7は待機中)、センサ子機7で呼び出しが行われたと判定された場合(ハンド形子機6は待機中)、ハンド形子機6の脱落が発生したと判定された場合、センサ子機7の脱落が発生したと判定された場合のそれぞれで異なる種類の呼出信号を廊下灯3に送信する。
【0036】
なお、ハンド形子機6およびセンサ子機7の両方で呼び出しが行われたと判定された場合の動作は任意に設定してよい。例えば、先に呼び出しが行われた方を優先して処理し、後から呼び出しが行われた方は先の処理が終了するまで待機するようにするようにしてもよい。同様に、ハンド形子機6が脱落しているときにセンサ子機7から呼び出しが行われたと判定された場合の動作についても、任意に設定可能である。例えば、ハンド形子機6の脱落呼出またはセンサ子機7のセンサ呼出の何れを優先して処理するかを任意に設定するようにしてもよい。
【0037】
発光制御部41Dは、第1の判定部41Aの判定の結果に基づいて、ハンド形子機6のLED62が呼出確認灯として機能するように、LED62の発光制御を行う。すなわち、発光制御部41Dは、ハンド形子機6で呼び出しが行われたと判定された場合(センサ子機7は待機中)、呼び出しが行われていることを患者に知らせるためにLEDを高輝度で点灯させる。また、発光制御部41Dは、第1の判定部41Aの判定の結果にかかわらず、時計(図示せず)が夜間の時間帯となったことを検知したときに、LED62が常夜灯として機能するように、LED62を低輝度で点灯させる。
【0038】
図5は、発光制御部41DがLED62の発光制御のためにLEDラインEL4に出力する電圧を模式的に示す図である。図5(a)は、ハンド形子機6のLED62を呼出確認灯として発光させる際に発光制御部41Dが出力する電圧を示す。図5(a)に示すように、LED62を呼出確認灯として発光させる際に発光制御部41Dは、LED62が発光するのに十分な電流が流れるような大きさの電圧V1を一定期間T1続けてLEDラインEL4に印加する。
【0039】
図5(b)は、ハンド形子機6のLED62を常夜灯として発光させる際に発光制御部41Dが出力する電圧を示す。図5(b)に示すように、LED62を常夜灯として発光させる際に発光制御部41Dは、LED62が発光するのに十分な電流が流れるような大きさの電圧V1を、一定期間T1より短い期間T2のパルスで間欠的にLEDラインEL4に印加する。
【0040】
図6は、第2の判定部41Bがセンサ子機7の脱落の有無を判定する際にLEDラインEL4に現れる電圧を模式的に示す図である。図6(a)は、第2の判定部41BがLEDラインEL4に出力する電圧を示す。図6(a)に示すように、第2の判定部41Bは、LED62が発光しない程度に弱い電流が流れるような大きさの電圧V2(V2<V1)を一定期間T3(T3<T1)続けてLEDラインEL4に印加する。
【0041】
図6(b)は、第2の判定部41Bが図6(a)のような電圧をLEDラインEL4に印加したときに実際にLEDラインEL4に生じる電圧の変化の様子を示したものである。図6(b)に示すように、第2の判定部41BがLEDラインEL4に電圧を印加した直後は電圧値が安定していない。そこで、第2の判定部41Bは、LEDラインEL4に電圧を出力してから一定の出力安定時間T4が経過した後に、LEDラインEL4に生じている電圧値を検出し、閾値Th21と比較する。
【0042】
第2の判定部41Bは、LEDラインEL4に対する弱電流の出力処理を所定の周期で繰り返し実行してLEDラインEL4に生じる電圧を検出することにより、センサ子機7の接続状態を常時監視する。第1の判定部41Aも、呼出ラインNC4に生じる電圧を所定の周期で繰り返し検出することにより、ハンド形子機6の操作状態および接続状態とセンサ子機7の操作状態とを常時監視する。
【0043】
ところで、以上のように所定の周期で第2の判定部41BがLEDラインEL4に弱電流を出力する場合、その出力するタイミングで発光制御部41DによりLED62の発光制御が行われていることがあり得る。そこで、第2の判定部41Bは、発光制御部41Dの制御によりLED62が点灯中か否かを判定し、LED62が点灯中であると判定された場合は、発光制御部41Dに指示を出してLED62を消灯させた後、LEDラインEL4に弱電流を供給することによってセンサ子機7の接続状態を判定する。そして、当該判定の後に、発光制御部41Dに指示を出してLED62を再点灯させる。
【0044】
このようにすれば、発光制御部41DによってLED62が点灯されているときであっても、LEDラインEL4を利用してセンサ子機7の接続状態を判定することが可能である。この処理によってLED62が一瞬消灯状態となるが、第2の判定部41Bが弱電流を流している期間T3(つまり、LED62が消灯している期間)はわずかとすることが可能であり、LED62が一瞬消灯したことが患者に気づかれることは殆どないと言える。
【0045】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、壁埋込形子機4のコネクタ40に接続される複数の信号ラインのうち、呼出ラインNC4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、ハンド形子機6の操作状態および接続状態とセンサ子機7の操作状態とを判定するようにしている。また、LEDラインEL4に対して、ハンド形子機6のLED62が点灯しない程度の弱電流を供給し、当該弱電流の供給に応じてLEDラインEL4に生じる電圧と閾値とを比較することにより、センサ子機7の接続状態を判定するようにしている。
【0046】
このように構成した本実施形態によれば、呼出ラインに生じる電圧と閾値とを比較することによってハンド形子機6およびセンサ子機7に関する操作状態および接続状態の全てを検出する従来技術とは異なり、センサ子機7の接続状態については、呼出ラインNC4とは異なるLEDラインEL4に生じる電圧を用いて判定が行われるので、呼出ラインNC4およびLEDラインEL4のそれぞれで判定のために使用する閾値の数を減らすことが可能となる。これにより、壁埋込形子機4のコネクタ40を介して複数の接続機器が接続された場合でも、接続機器ごとの操作状態および接続状態を、電圧と閾値との比較によって正確に判定しやすくすることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、第1の判定部41Aおよび第2の判定部41Bによって図4のような8つの状態を判定する例ついて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示すような8つの状態を判定するようにしてもよい。この図7に示す例において、ハンド形子機6は3つの呼出ボタンを備え、どの呼出ボタンを押下するかによって、一般呼出、トイレ介助呼出または点滴終了呼出の何れかを行うことができるようになっている。この図7に示す例において、第1の判定部41Aは、呼出ラインNC4に生じる電圧と2つの閾値Th11~Th12とを比較することにより、ハンド形子機6の接続状態を判定する。また、第1の判定部41Aは、接続機器の操作状態に関して、呼出ラインNC4に生じる電圧と3つの閾値Th13~Th15とを比較することにより、ハンド形子機6の呼出操作であるかセンサ子機7の呼出操作であるかを判定するとともに、ハンド形子機6の呼出操操作である場合にはその呼出操作の種類を更に識別する。
【0048】
また、上記実施形態では、分配コンセント5に対してセンサ子機7を1つ接続可能な構成について説明したが、分配コンセント5に対して2つ以上のセンサ子機を接続可能な構成としてもよい。図8は、分配コンセント5に対して2つのセンサ子機7A,7Bを接続可能な構成を示したものであり、実際に2つのセンサ子機7A,7Bが接続された状態を示している。この場合、コネクタ40を介して接続されている複数の接続機器のうち一部の接続機器がハンド形子機6であり、他の接続機器が2つのセンサ子機7A,7Bである。
【0049】
この場合、例えば図9に示すように、第1の判定部41Aは、呼出ラインNC4に生じる電圧と11個の閾値Th11~Th111とを比較することにより、ハンド形子機6の操作状態(待機または呼出)および接続状態(脱落)と、第1のセンサ子機7Aの操作状態(待機または呼出)と、第2のセンサ子機7Bの操作状態(待機または呼出)との組み合わせに関して12個の状態のうち何れであるかを判定する。この例において、第1の判定部41Aは、接続機器の操作状態に関して、ハンド形子機6、第1のセンサ子機7A、第2のセンサ子機7Bのうちどれの呼出操作であるかを識別している。
【0050】
また、第2の判定部41Bは、LEDラインEL4に生じる電圧と3つの閾値Th21~Th23とを比較することにより、第1のセンサ子機7Aの接続状態(脱落の有無)と第2のセンサ子機7Bの接続状態(脱落の有無)との組み合わせに関して4個の状態のうち何れであるかを判定する。この例において、第2の判定部41Bは、2つのセンサ子機7A,7Bのうちどちらが脱落状態であるかを識別している。
【0051】
なお、複数のセンサ子機7A,7Bを接続可能に構成した場合も、例えば図10に示すように、ハンド形子機6の呼出操作の種類を更に識別するようにしてもよい。図10に示す例の場合、第1の判定部41Aは、呼出ラインNC4に生じる電圧と6個の閾値Th11~Th16とを比較することにより、ハンド形子機6の操作状態(待機または3種類の呼出)および接続状態(脱落)と、第1のセンサ子機7Aの操作状態(待機または呼出)と、第2のセンサ子機7Bの操作状態(待機または呼出)との組み合わせに関して7個の状態のうち何れであるかを判定する。
【0052】
また、上記実施形態では、壁埋込形子機4のコネクタ40に対して分配コンセント5を介して複数の接続機器を間接的に接続する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、壁埋込形子機4が複数のコネクタ40を備え、その複数のコネクタ40に対して複数の接続機器を直接接続する構成としてもよい。このような構成において、マイコン41から複数のコネクタ40に対して呼出ラインおよびLEDラインをそれぞれ分岐させて接続する場合、マイコン41は、上記実施形態と同様に、呼出ラインに生じる合成電圧およびLEDラインに生じる合成電圧に基づいて閾値との比較を行う。
【0053】
また、上記実施形態では、コネクタ40を介して接続されている複数の接続機器のうち一部の接続機器がハンド形子機6の1個であり、他の接続機器が1個のセンサ子機7または2個のセンサ子機7A,7Bである構成例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一部の接続機器が複数であってもよい。一例として、一部の接続機器として、ハンド形子機6および握り押しボタンを壁埋込形子機4に対して直接または間接的に接続可能な構成であってもよい。
【0054】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
4 壁埋込形子機
5 分配コンセント
6 ハンド形子機(接続機器)
7,7A,7B センサ子機(接続機器)
40 コネクタ
41 マイコン
41A 第1の判定部
41B 第2の判定部
41C 呼出制御部
41D 発光制御部
62 LED
NC4 呼出ライン
EL4 LEDライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10