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  • 特開-表面材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035645
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20230306BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B32B5/24
B32B27/00 E
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142660
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 貫
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AK71
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA18
4F100CA18B
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG15
4F100DG15A
4F100EC09
4F100GB07
4F100HB31
4F100HB31B
4F100JB09
4F100JB09B
4F100JK04
4F100JK14
4F100JM01
4F100JM01B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、加熱成形して各種内装材や各種外装材を調製可能な、表面材に関する。
【解決手段】本発明にかかる測定方法によって、表面材が表裏で曲がり易さに大きな違いを有するか否かを評価できる。当該測定方法により算出される(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値が、0.74より大きく1.26未満の範囲にある表面材は、全体にわたり表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材であることによって、皺の発生を防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材である。特に、触感に優れる内外装材を提供し易いように、表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を低くした場合であっても、皺の発生を防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材を実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布とプリント層を有しており、前記不織布の一方の主面上に前記プリント層を備える、表面材であって、
表面材は、前記プリント層を備える主面ともう一方の主面を有しており、
前記プリント層を備える主面は、表面試験機(KES-FB4)で測定した表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、
純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて下記のようにして測定した、単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とA-およびB+とB-について、(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値が0.74より大きく1.26未満の範囲にある、
表面材。

1.一方の主面上にプリント層を備える表面材を用意する。このとき、当該表面材の前記プリント層を備える主面上における、当該主面と平行を成す一方向をC方向とし当該C方向と直行する方向をD方向とする。
2.前記表面材から試料Aおよび試料B(一辺10cmの正方形形状)を採取する。
3.採取した試料Aを純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。
4.設置された試料Aに対し、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec)の曲げ試験を、当該試料Aにおける一方の主面からもう一方の主面へ向かう方向および前記もう一方の主面から前記一方の主面へ向かう方向に対し、連続して実施する。
5.X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A-とする。
6.採取した試料Bを、前記試料AにおけるC方向と当該試料BのD方向が平行を成すようにして、純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。
7.前記試料Bに対し項目4~5で説明した測定を行い、X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B-とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱成形して各種内装材や各種外装材を調製可能な、表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面材を加熱成形して各種内装材や各種外装材(以降、併せて内外装材と称する)を調製することが行われている。具体的には、例えば金型などの加熱板や加熱ローラなどの加熱手段によって熱及び圧力を表面材へ作用させる加熱成形工程へ供することで、表面材を曲げて所望の立体的な形状に変形させることが行われている。そのため、インジェクション成形により内装部品を成形する際に、特許文献1に開示のプリント不織布と一体化して、プリント不織布で装飾した内装部品(例えば、ピラー)を成形することを試みた。ところが、インジェクション成形した際に、溶融樹脂がプリント不織布のプリント面まで透過してしまい、内装部品の意匠性を損なう場合があった。また、インジェクション成形した際に、溶融樹脂がプリント不織布のプリント面まで透過しない場合であっても、プリント不織布に凹凸が発生し、内装部品の意匠性を損なう場合があった。なお、プリント不織布のプリント面とは反対面に、フィルムをラミネートすることによって、溶融樹脂の透過や凹凸の発生による意匠性の低下を防止することができると考えられたが、プリント不織布にフィルムをラミネートすることは、製造工程の追加に繋がるため、得策ではない。また、意匠性に富む内外装材を提供できるよう、前述の表面材として、不織布の一方の主面上にプリント層を備える表面材を採用することが検討されている。このような表面材の具体例として、例えば、特開2018-40089(特許文献1)には、ニードルによって絡合した繊維ウェブからなる不織布の表面に、プリント樹脂を有する表面材が開示されている。なお、特許文献1には、ニードルの針密度は100~1000本/cmが好ましいことが開示されている。
【0003】
加えて、近年では触感に富む内外装材の実現が求められており、例えば、特開2018-39432(特許文献2)に開示されているように、表面試験機(KES-FB4)で測定した表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有する表面材によって、触感に富む内外装材を提供できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-40089(特許請求の範囲、0021など)
【特許文献2】特開2018-39432(特許請求の範囲、0016など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような従来技術にかかる表面材を加熱成形工程へ供した場合、調製した内外装材の表面に、加熱成形時の変形に表面材が追従できなかったことにより発生したと思われる皺が存在するという問題が発生することがあった。特にこの問題は、特許文献2に開示されているような表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有する表面材を提供するため、当該表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を低くした場合に顕著に発生した。
【0006】
一方、本願出願人は後述する比較例として挙げた検討を通し、不織布を構成する繊維の繊度を高くすることで、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供できることを見出した。しかし、当該表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を高くしたことによって、触感に富む各種内外装材を提供できなかった。
本発明は、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有することで触感に優れる内外装材を提供可能であると共に、加熱成形性に富む表面材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は「不織布とプリント層を有しており、前記不織布の一方の主面上に前記プリント層を備える、表面材であって、
表面材は、前記プリント層を備える主面ともう一方の主面を有しており、
前記プリント層を備える主面は、表面試験機(KES-FB4)で測定した表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、
純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて下記のようにして測定した、単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とA-およびB+とB-について、(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値が0.74より大きく1.26未満の範囲にある、
表面材。

1.一方の主面上にプリント層を備える表面材を用意する。このとき、当該表面材の前記プリント層を備える主面上における、当該主面と平行を成す一方向をC方向とし当該C方向と直行する方向をD方向とする。
2.前記表面材から試料Aおよび試料B(一辺10cmの正方形形状)を採取する。
3.採取した試料Aを純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。
4.設置された試料Aに対し、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec)の曲げ試験を、当該試料Aにおける一方の主面からもう一方の主面へ向かう方向および前記もう一方の主面から前記一方の主面へ向かう方向に対し、連続して実施する。
5.X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A-とする。
6.採取した試料Bを、前記試料AにおけるC方向と当該試料BのD方向が平行を成すようにして、純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。
7.前記試料Bに対し項目4~5で説明した測定を行い、X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B-とする。」である。
【発明の効果】
【0008】
本願出願人は検討の結果、不織布の一方の主面上にプリント層を備える表面材を加熱成形工程へ供した際に、以下に述べる理由から、当該表面材の表面に皺が発生すると考えられた。
【0009】
表面材を一方の主面(例えば、プリント層が存在する側の主面)からもう一方の主面へ向かう方向へ曲げる際に当該表面材が示す応力などの反応と、当該表面材をもう一方の主面から一方の主面(例えば、プリント層が存在する側の主面)へ向かう方向へ曲げる際に当該表面材が示す反応が大きく異なる表面材は、表裏で曲がり易さに大きな違いを有するといえる。そして、このような表面材を加熱成形工程へ供し所望の形状に変形させた場合、その表面に皺が発生し易くなると考えられた。
【0010】
それに対し、本願出願人は上述した測定方法によって、表面材が表裏で曲がり易さに大きな違いを有するか否かを評価できることを見出した。そして、当該測定方法により算出される(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値が、0.74より大きく1.26未満の範囲にある表面材は、表面材の全体にわたり、表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材であることを見出した。そして、本構成を有する表面材は、皺の発生を防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材であることを見出した。特に、表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を低くした場合であっても、皺の発生を防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材を実現できることを見出した。
【0011】
以上から、本願発明によって、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有することで触感に優れる内外装材を提供可能であると共に、加熱成形性に富む表面材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】表面材から採取した試料を純曲げ試験機へ供し得られた測定結果を、X軸に曲率KをとりY軸に応力をとった平面座標図上に連続的にプロットした結果を示した、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。また、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0014】
本発明にかかる表面材は不織布を備えている。本発明でいう不織布とは、構成繊維同士が織物や編物よりもランダムに絡み合い形成された、シート状の繊維集合体である。本発明の表面材は不織布を含んでいるため、柔軟性に富み加熱成形性に富む表面材を実現し易い。
【0015】
不織布の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0016】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0017】
表面材に難燃性が求められる場合には、不織布の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持してもよい。
【0018】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0019】
不織布が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、不織布に強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
【0020】
不織布が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
【0021】
これらの構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0022】
構成繊維の繊度は適宜調整するが、触感に優れる内外装材を提供できるよう、2.0dtex以下であるのが好ましく、1.5dtex以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、0.1dtex以上であるのが現実的である。
【0023】
また、構成繊維の繊維長も適宜調整するが、触感に優れる内外装材を提供可能であると共に加熱成形性に富む表面材を提供できるよう、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、不織布の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、触感に優れる内外装材を提供し難くなるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0024】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0025】
不織布は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などへ供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0026】
また、上述の方法を用いて調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0027】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0028】
不織布を構成する繊維同士を接着するため、接着繊維による構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法以外にも、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。
【0029】
バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる表面材を提供でき好ましい。
【0030】
不織布に含まれるバインダの目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど触感に優れる内外装材を提供し難くなる恐れがある。そのため、バインダの目付は、50g/m以下であるのが好ましく、30g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下(理想的には0g/m)であるのが好ましい。一方、バインダを含んでいない不織布は耐摩耗性が低下する恐れがあることから、この観点においては、目付10g/m以上のバインダを含んだ不織布を採用するのが好ましい。
【0031】
また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0032】
不織布の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。不織布の厚みは、0.1~5mmであることができ、0.5~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。また、不織布の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。なお、本発明において厚みとは主面と垂直方向へ20g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0033】
本発明にかかる表面材は、前述した不織布の一方の主面上における全面あるいは部分的にプリント層を備えている。本発明でいうプリント層とは、不織布の少なくとも一方の主面上に存在し、主として表面材の触感を向上させる役割や意匠性を向上する役割を担う層を指す。また、耐摩耗性の向上や構成繊維の脱落を防止する効果に寄与することが可能な層である。
【0034】
後述するようにプリント層は樹脂を含んでいるのが好ましい。樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、加熱成形性に優れる表面材を提供できることから、プリント層を構成する樹脂がアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。なお、プリント層は樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0035】
なお、プリント層がシリコーンを含有していると、触感に優れる主面(表面材における、プリント層が露出している側の主面)を備える表面材を提供でき好ましい。また、プリント層が中空粒子を含有していると、触感に優れる主面(表面材における、プリント層が露出している側の主面)を備える表面材を提供でき好ましい。当該中空粒子の平均粒子径は適宜調整できるが、より触感に優れる主面を備える表面材を提供できる傾向があることから、その平均粒子径は35μmよりも大きく106μm以下であるのが好ましい。このような中空粒子の具体例として、松本油脂製薬株式会社のMFL-81GTA、MFL-81GCA、MFL-SEVEN、MFL-HD30CA、MFL-HD60CA、MFL-100MCA、MFL-110CALなどを挙げることができる。また、加熱を受けることによって熱膨張する粒子を採用してもよい。このような粒子として、熱膨張して中空粒子となる、日本フィライト株式会社の920DU40、909DU80、930DU120などを挙げることができる。
【0036】
本発明にかかる表面材における、プリント層が露出している側の主面は、表面試験機(KES-FB4)で測定した表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であることを特徴としている。この表面粗さは文字通り、主面における凹凸、つまり平滑性を示す指標であり、表面材の少なくとも一方の主面の表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であれば、表面材におけるプリント層が露出している側の主面が優れた触感であることに寄与できる。表面粗さ(SMD)の値が小さい方が、平滑で、より優れた触感となる傾向があるため、表面粗さ(SMD)は2.2μm以下であるのが好ましく、2.0μm以下であるのがより好ましい。なお、表面粗さ(SMD)の下限は特に限定するものではないが、理想的には、全く凹凸のない表面粗さを示す0μmである。この表面粗さ(SMD)は表面試験機(KES-FB4、カトーテック(株)製)を用いて測定される値であり、表面材のから採取した試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、粗さ接触子(0.5mmワイヤー、接触面幅:5mm)に10.0gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定した平均偏差を意味し、単位はμmである。
【0037】
また、平均動摩擦係数(MIU)は、摩擦子を表面材におけるプリント層が露出している側の主面と当接させ、表面材を移動させることにより、摩擦子が表面材を擦るような状態で測定するため、表面材の当該主面を擦った際の摩擦抵抗を示す指標である。この平均動摩擦係数(MIU)の値が大きいほど、表面材におけるプリント層が露出している側の主面を擦った際により優れた触感となる傾向があるため、本発明にかかる表面材における、プリント層が露出している側の主面の平均動摩擦係数(MIU)は、0.45以上であるのがより好ましく、0.50以上であるのが更に好ましい。一方で、平均動摩擦係数(MIU)の値が大きすぎると、摩擦抵抗が強すぎて、指に引っかかるような触感となり、逆に触感を損なう場合があるため、2.0以下であるのが好ましい。この平均動摩擦係数(MIU)は、表面試験機(KES-FB4)を用いて測定される値であり、表面材の試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、摩擦子(10mm×10mm)に50gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定した平均値を意味する。
【0038】
平均摩擦係数の変動(MMD)は、表面材におけるプリント層が露出している側の主面の均一性を示す指標である。なお、平均摩擦係数の変動(MMD)は、平均摩擦係数(MIU)の測定時に求められる平均偏差を意味する。本発明にかかる表面材における、プリント層が露出している側の主面の平均摩擦係数の変動(MMD)の上限値は、0.01以下であることができ、下限値は0.005以上であることができ、0.008以上であることができる。
【0039】
本発明にかかる表面材は、純曲げ試験機(KES-FB2、カトーテック(株)製)を用いて下記のようにして測定した、単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とA-およびB+とB-について、(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値が0.74より大きく1.26未満の範囲にあることを特徴とする。
【0040】
1.一方の主面上にプリント層を備える表面材を用意する。このとき、当該表面材の前記プリント層を備える主面上における、当該主面と平行を成す一方向をC方向とし当該C方向と直行する方向をD方向とする。
【0041】
2.前記表面材から試料Aおよび試料B(一辺10cmの正方形形状)を採取する。
【0042】
3.採取した試料Aを純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。なお、純曲げ試験機(KES-FB2)において、試料はチャック間の距離が1cmの間隔をなし、幅10cmにわたって二つのチャックに把持される。
【0043】
4.設置された試料Aに対し、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/sec)の曲げ試験を、当該試料Aにおける一方の主面からもう一方の主面へ向かう方向および前記もう一方の主面から前記一方の主面へ向かう方向に対し、連続して実施する。この時、チャック間に保持されている試料は、等速度(変形速度0.5cm-1/sec)でチャック間の距離を半径とした円弧上に曲げられる。このときの、試料の曲がり具合は曲率Kで示される。
【0044】
5.X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値A-とする。
【0045】
6.採取した試料Bを、前記試料AにおけるC方向と当該試料BのD方向が平行を成すようにして、純曲げ試験機(KES-FB2)に設置する。
【0046】
7.前記試料Bに対し項目4~5で説明した測定を行い、X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に、曲率K=+0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=+1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B+とする。同様に、曲率K=-0.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を始点とし、曲率K=-1.5cm-1のときに測定された応力(gf・cm/cm)の値を終点とする線分を引き、当該線分の傾きを単位長さ当たりの曲げ剛性値B-とする。
【0047】
なお、理解を容易にできるよう、項目5および項目7において作図される、表面材から採取した試料を純曲げ試験機へ供し得られた測定結果を、X軸に曲率KをとりY軸に応力をとった平面座標図上に連続的にプロットした結果を、模式図として図1に図示する。
【0048】
本測定によって求められる、表面材から採取した試料を一方の主面からもう一方の主面へ向かう方向へ等速度で曲げた際に測定された、ある曲率K(例えば、+0.5cm-1)の時の応力の値は、表面材を当該方向へ曲率Kとなるように曲げた際に表面材が示した応力を意味する。また、当該曲率K時に測定された応力の値と、前記試料を同じ方向へ更に曲げた際(例えば、曲率Kが+1.5cm-1)に表面材が示した応力の値とを、X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に各々プロットし、当該両プロットされた点を結ぶ線分の傾き(例えばA+)を求めることができる。このようにして算出された傾きの値(単位長さ当たりの曲げ剛性値)は、表面材を一方の方向からもう一方の方向へ曲げた際の、表面材の曲がり易さを表したものとなる。
【0049】
そして、同試料を上述した方法と同様にして、もう一方の主面から一方の主面へ向かう方向へ等速度で曲げ、表面材を当該方向へ曲率K(例えば、-0.5cm-1)となるように曲げた際に表面材が示した応力と、前記試料を同じ方向へ更に曲げた際(例えば、曲率Kが-1.5cm-1)に表面材が示した応力の値とを、X軸が曲率Kの値でありY軸が応力の値を示す二次元の直交座標上に各々プロットし、当該両プロットされた点を結ぶ線分の傾き(例えばA-)を求めることができる。このようにして算出された傾きの値(単位長さ当たりの曲げ剛性値)は、表面材をもう一方の方向から一方の方向へ曲げた際の、表面材の曲がり易さを表したものとなる。
【0050】
上述のようにして算出された、表面材をもう一方の方向から一方の方向へ曲げた際の表面材の曲がり易さを表した単位長さ当たりの曲げ剛性値(例えばA-)の絶対値に占める、表面材を一方の方向からもう一方の方向へ曲げた際の表面材の曲がり易さを表した単位長さ当たりの曲げ剛性値(例えばA+)の絶対値の割合(例えば|A+|/|A-|)は、表面材を一方の方向からもう一方の方向へ曲げた際の変形し易さと、表面材をもう一方の方向から一方の方向へ曲げた際の変形し易さとの相違の程度を意味する。つまり、当該割合が1.00に近い表面材であるほど、表面材の主面と平行を成す一方向(例えばC方向)において、表裏で曲がり易さに違いが少ない表面材であると言える。
【0051】
更に、同じ表面材から採取した別の試料について、先に測定した試料の主面と平行を成す一方向と直行する方向(例えばD方向)について、上述した方法と同様にして、表面材をもう一方の方向から一方の方向へ曲げた際の表面材の曲がり易さを表した単位長さ当たりの曲げ剛性値(例えばB-)の絶対値に占める、表面材を一方の方向からもう一方の方向へ曲げた際の表面材の曲がり易さを表した単位長さ当たりの曲げ剛性値(例えばB+)の絶対値の割合(例えば|B+|/|B-|)を算出する。このようにして算出された割合は、表面材を一方の方向からもう一方の方向へ曲げた際の変形し易さと、表面材をもう一方の方向から一方の方向へ曲げた際の変形し易さとの相違の程度を意味する。つまり、当該割合が1.00に近い表面材であるほど、表面材の主面と平行を成す一方向(例えばD方向)において、表裏で曲がり易さに違いが少ない表面材であると言える。
【0052】
以上のようにして測定し算出された二つの割合(例えば、(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|))の平均値を算出することで、表面材の一方向(例えばC方向)へ向かい表面材を曲げる際の表裏での曲がり易さが相違する程度と、表面材の当該一方向に対し垂直を成す方向(例えばD方向)へ向かい表面材を曲げる際の表裏での曲がり易さが相違する程度との平均値を算出できる。つまり、当該平均値が1.00に近い表面材であるほど、一方向(例えばC方向)と当該一方向に対し垂直を成す方向(例えばD方向)における変形し易さが均質な表面材であって、表面材の全体にわたり、表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材であると考えられる。
【0053】
そして、本願出願人は上述した観点から、(|A+|/|A-|と|B+|/|B-|)の平均値が0.74より大きく1.26未満の範囲にある表面材は、加熱成形時に受けるような表面材を形状変形させる外力を受けた際でも、皺の発生を防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材であることを見出した。
【0054】
特に、従来技術において、表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を低くした場合、加熱成形工程へ供すると表面材の表面に顕著に皺が発生し易いものであった。しかし、本発明にかかる構成を備える表面材であることによって、表面材を構成する不織布の構成繊維の繊度を低くした場合であっても、表面に皺が発生するのを防止して内外装材を調製可能な、加熱成形性に富む表面材を実現できることを見出した。
【0055】
そのため、加熱成形性に富む表面材を実現できるよう、(|A+|/|A-|と|B+|/|B-|)の平均値は0.74より大きく1.26未満であって、0.82~1.18であるのが好ましく、0.84~1.16であるのがより好ましく、1.00であるのが理想的である。
【0056】
更に、より変形し易さが均質な表面材であることで、表面に皺が発生するのが防止された表面材を実現できるよう、(|A+|/|A-|と|B+|/|B-|)もまた1.00に近い表面材であるのが好ましい。具体的に各算出値は、1.00と0.39未満で相違する範囲にある(つまり、0.61より大きく1.39未満の範囲にある)のが好ましく、1.00と0.32以下で相違する範囲にある(つまり、0.68以上1.32以下の範囲にある)のがより好ましく、1.00と0.21以下で相違する範囲にある(つまり、0.79以上1.21以下の範囲にある)のが最も好ましい。
【0057】
表面材に、別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層してもよい。これらの構成部材は表面材における、プリントが存在している側の主面とは異なる主面側に積層して設けるのが好ましい。
【0058】
また、表面材はそのまま熱成形工程へ供することができるが、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程や、リライアントプレス処理などの厚さや表面の平滑性といった諸物性を調整する工程などの、各種二次工程へ供してから熱成形工程へ供してもよい。
【0059】
次に、本発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。本発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択できるが、一例として、
(1)表面材が有する不織布の構成繊維を含んだ、繊維ウェブを用意する工程、
(2)前記繊維ウェブを繊維絡合装置へ供し、前記繊維ウェブの構成繊維同士を絡合させて不織布を調製する工程、
(3)表面材が備えるプリント層を構成可能な樹脂などの構成成分を、分散媒に分散させてなるプリント液および/または溶媒に溶解させてなるプリント液を用意する工程、
(4)不織布における主面上に、プリント液を付与する工程、
(5)プリント液を付与した不織布から、前記分散媒および/または前記溶媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法であることができる。
【0060】
工程(1)について説明する。繊維ウェブは、本発明にかかる表面材が有する不織布の構成繊維を含んでいればよく、その種類、構成繊維の繊度や繊維長は適宜選択できる。特に、本発明では、表面材の有する不織布が繊度の小さい繊維で構成されている場合には、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有すると共に、全体にわたり表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材を実現して、加熱成形性に富む表面材を提供できる傾向がある。
【0061】
そのため、繊維ウェブが含む前記構成繊維の繊度は、10dtex以下であるのが好ましく、5dtex以下であるのがより好ましく、3dtex以下であるのがより好ましく、2dtex以下であるのがより好ましい。下限値は適宜調整できるが、剛性に優れる表面材を提供できるように、0.1dtex以上であるのが好ましく、0.5dtex以上であるのがより好ましく、1dtex以上であるのがより好ましい。また、より表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有すると共に、全体にわたり表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材を実現して、加熱成形性に富む表面材を提供できるよう、繊維ウェブの構成繊維は上述した繊度を有する繊維のみであるのが好ましい。
【0062】
なお、繊維ウェブの厚さや目付は求める表面材や内外装材を提供できるよう、適宜調整できる。
【0063】
工程(2)について説明する。繊維ウェブの構成繊維同士を絡合させて不織布を調製するため使用する、繊維絡合装置の種類は適宜選択でき、水流絡合装置やニードルパンチ装置などを採用できる。
【0064】
繊維絡合装置としてニードルパンチ装置を採用する場合、そのニードルパンチの処理条件を調整する。具体的には、繊維ウェブへニードルパンチを処理する際、針密度を通常よりも高くすることで、より表面粗さ(SMD)が2.5μm以下のプリント層を備える主面を有すると共に、表面材の全体にわたり、表裏で曲がり易さの違いが少ない表面材を実現して、加熱成形性に富む表面材を提供し易い傾向がある。具体的には、針密度は、従来技術として特許文献1が開示しているニードルパンチの針密度の上限値である1000本/cmよりも高密度であるのが好ましく、1100本/cm以上であるのが好ましく、1200本/cm以上であるのが好ましい。針密度の上限値は適宜調整できるが、過剰に高い針密度で繊維ウェブの構成繊維同士を絡合させると、繊維の破断などが発生して意図せず表面材の触感が低下する恐れがある。そのため、針密度の上限値は2000本/cm以下が現実的である。
【0065】
なお、本製造方法の例示では、構成繊維同士をただ絡合してなる不織布を例示したが、当該不織布の構成繊維同士を接着できるよう繊維ウェブあるいは不織布へバインダ液を付与し、バインダ液中に含まれるバインダ成分によって、繊維ウェブあるいは不織布の構成繊維同士を接着させもよい。
【0066】
工程(3)について説明する。プリント液に含まれる樹脂などの構成成分とその組成は、求めるプリント層を形成できるよう適宜調整できる。不織布の主面から脱落し難い態様で、当該主面上にプリント層を形成できるよう、プリント液には樹脂が含まれているのが好ましい。また、プリント液には樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。特に、プリント液が顔料を含んでいると、意匠性に優れる表面材を提供でき好ましい。
【0067】
分散媒や溶媒の種類は適宜選択できるが、不織布の主面上へ求める態様でプリント液を付与できるよう、プリント層を構成可能な樹脂粒子および顔料など他の成分が溶解せず分散可能な分散媒を採用する、あるいは、プリント層を構成可能な樹脂が溶解すると共に顔料など他の成分が溶解せず分散可能な分散媒を採用するのが好ましい。
【0068】
工程(4)について説明する。不織布における主面上に、プリント液を付与する方法は適宜選択できる。不織布における一方の主面上の全面にプリント液を付与しても、不織布における一方の主面上の一部分に柄を形成するようにプリント液を付与してもよい。また、同様に不織布の両主面にプリント液を付与してもよい。
【0069】
プリント液の付与方法は適宜選択でき、不織布の主面にプリント液をそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーやグラビアロールなどを用いプリント層や捺染して付与する方法などを選択できる。なお、一種類のプリント液を付与する以外にも、複数種類のプリント液を付与しても良い。また、複数種類のプリント液を付与する場合には、各プリント液の付与態様(組成、柄、プリント液の組成)は異なっていても良い。
【0070】
工程(5)について説明する。不織布の主面上に付与されたプリント液から、分散媒や溶媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。分散媒を除去する際の加熱温度は分散媒が揮発可能な温度であると共に、不織布やプリント層など表面材を構成する部材の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。なお、本工程によって不織布の構成繊維同士を接着する(溶融したバインダで接着する、あるいは、構成繊維に含まれる熱可塑性成分を溶融させ接着する)、プリント層に含まれる樹脂を架橋してもよい。
【0071】
上述の表面材の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えた表面材の製造方法であってもよい。なお、これらの構成部材は表面材における、プリント層側の主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。また、表面材をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程へ供してもよい。
【0072】
そして、表面材を加熱された金型へ供するなどの加熱成形手段へ供することで、内外装材を調製できる。
【実施例0073】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0074】
(プリント液の用意)
以下に記載の割合で配合したプリント液を用意した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):20質量部
・増粘剤(固形分質量:1.5質量%):25質量部
・消泡剤(固形分質量:14質量%):0.5質量部
・シリコーン系樹脂エマルジョン(固形分質量:33.8質量%):3質量部
・顔料(固形分質量:3.8質量%):0.1質量部
・25%アンモニア水:1質量部
・水:50.4質量部
【0075】
(比較例1)
原着ポリエステル繊維A(繊度:3.3dtex、繊維長:38mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した。次いで、繊維ウェブの一方の主面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行った後、熱ロール間(ギャップ間隔:0.4mm、ロール加熱温度:165℃)へ供することで、不織布(目付:150g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0076】
そして、不織布におけるニードルパンチを施した側の主面に対して、シリンダを用いてプリント液を当該主面上の全面に付与した。その後、加熱温度を160℃に調整したドライヤーを用いて乾燥することでプリント液中に含まれていた水を除去し、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:160g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0077】
(比較例2)
原着ポリエステル繊維Aの代わりに、原着ポリエステル繊維B(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、不織布(目付:150g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0078】
そして、比較例1と同様にして、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:160g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0079】
(比較例3)
原着ポリエステル繊維Aの代わりに、原着ポリエステル繊維C(繊度:1.3dtex、繊維長:38mm)を用いたこと、そして、ニードルパンチ処理における針密度を300本/mに変更したこと以外は比較例1と同様にして、不織布(目付:150g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0080】
そして、比較例1と同様にして、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:160g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.4mm)を調製した。
【0081】
(比較例4)
ニードルパンチ処理における針密度を600本/mに変更したこと以外は比較例3と同様にして、不織布(目付:150g/m、厚み:1.3mm)を調製した。
【0082】
そして、比較例1と同様にして、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:160g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.3mm)を調製した。
【0083】
(実施例1)
ニードルパンチ処理における針密度を1200本/mに変更したこと以外は比較例3と同様にして、不織布(目付:150g/m、厚み:1.3mm)を調製した。
【0084】
そして、比較例1と同様にして、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:160g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.3mm)を調製した。
【0085】
(実施例2)
使用する繊維ウェブの目付を軽くしたこと以外は実施例1と同様にして、不織布(目付:110g/m、厚み:1.1mm)を調製した。
【0086】
そして、比較例1と同様にして、不織布における一方の主面上の全面にわたって、プリント液由来のプリント層を備えた表面材(目付:120g/m、うちプリント層の目付:10g/m、厚み:1.1mm)を調製した。
【0087】
上述のようにして調製した、比較例と実施例の表面材を以下の測定方法へ供することで、加熱成形工程において表面に皺が発生し難い表面材であるか否かを判断した。
【0088】
(皺発生の評価)
1.表面材から試料(短辺:25cm、長辺:25cmの正方形形状)を採取する。
2.プリント層を備えた主面が露出するようにして、試料を平滑な板の上に乗せる。
3.試料の四辺における、一辺Aとそれに平行をなす別の一辺Bとの間に谷部分が形成されるように、試料の一辺B側が平滑な板と接した状態のまま、一辺A側の主面と別の一辺B側の主面とが垂直を成すまで、試料の一辺A側を平滑な板から持ち上げて試料を折り曲げる。このとき、折り曲げた試料は“」”の字状の態様となる。
4.工程3時において、試料のプリント層を備えた主面における谷部分の態様を目視で確認する。
【0089】
比較例2の表面材から採取した試料を上述した評価へ供した結果における、前記谷部分に発生している皺の態様を基準として「△」と評価した。そして、それよりも皺の発生が少なかった試料を採取した表面材を「○」と評価した。一方、それよりも皺の発生が多かった試料を採取した表面材を「×」と評価した。
【0090】
比較例ならびに実施例で製造した表面材における、製造条件とその構成ならびに物性の評価結果を表1および表2にまとめた。なお、表中の「MIU」「MMD」「SMD」「皺発生の評価」は、表面材におけるプリント層が露出している側の主面に対し評価した結果である。また、表2では理解を容易にするため「皺発生の評価」結果を併記している。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
以上の結果から、実施例の表面材は、
・特許文献2に開示されているように、SMDが2.5μm以下のプリント層を備える主面を有しており、触感に富む内外装材を提供できる表面材であったこと、
・表面材を曲げ変形させても皺が発生し難い表面材であったことから、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供できること、
が判明した。
【0094】
また、曲げ剛性値の割合の平均値が1.26であり1.00と0.26相違する比較例4の表面材と比較し、それよりも1.00と相違する値の小さかった比較例1~2および実施例1~2の表面材は、表面材を曲げ変形させても皺が発生し難い表面材であった。そのため、本発明において挙げる(|A+|/|A-|)と(|B+|/|B-|)の平均値について、1.00と0.26未満で相違する範囲にある場合、つまり、当該平均値が0.74より大きく1.26未満の範囲にある表面材は、表面材を曲げ変形させても皺が発生し難い表面材であるため、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供できることが判明した。特に、当該平均値について、1.00と相違する値がより小さい(例えば、比較例2と実施例2を比較した結果から、当該平均値が0.84以上1.16以下にある)ことによって、更に表面材を曲げ変形させても皺が発生し難い表面材であるため、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供できることが判明した。
【0095】
なお、比較例1と比較例2を比較した結果から、表面材が備える不織布の構成繊維の繊度が小さいほどSMDが小さくなり触感が向上してゆくものの皺発生の評価が悪化すること、そして、表面材が備える不織布の構成繊維の繊度が大きいほど皺発生の評価は良くなるもののSMDが大きくなり触感が低下してゆくことが判明した。そのため、表面材が備える不織布の構成繊維の繊度を調整するだけでは、触感に優れる内外装材を提供可能であると共に、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供することは困難であると考えられた。
【0096】
しかし、比較例3~4と実施例1を比較した結果から、表面材が備える不織布の構成繊維の繊度を小さいものにすると共にニードルパンチ処理の針密度をより高密度にすることで、表面材を曲げ変形させても皺が発生し難い表面材であるため、加熱成形工程へ供しても皺が発生し難い加熱成形性に富む表面材を提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の表面材は、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど自動車用;パーティションなどのインテリア用;壁装材などの建材用に、好適に使用することができる。
図1