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  • 特開-内視鏡システム 図1
  • 特開-内視鏡システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035658
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/04 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61B1/04 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142674
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】笹村 大樹
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161FF06
4C161JJ11
4C161JJ12
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】内視鏡の耐圧性を従来よりも高める。
【解決手段】本発明の一態様は、体腔内に挿入され、かつ生体組織の撮像を行う撮像素子が先端部に配置され、導電性の外装を有する内視鏡と、内視鏡と接続され、撮像素子によって取得される画像を処理する回路基板を有するプロセッサと、を含む内視鏡システムである。内視鏡の外装は、第1のキャパシタを介し接地される。上記回路基板は、第2キャパシタを介して接地される。内視鏡の外装と上記回路基板は、第1のキャパシタ及び第2のキャパシタよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子によって接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入され、かつ生体組織の撮像を行う撮像素子が先端部に配置され、導電性の外装を有する内視鏡と、
前記内視鏡と接続され、前記撮像素子によって取得される画像を処理する回路基板を有するプロセッサと、
を含み、
前記外装は、第1のキャパシタを介し接地され、
前記回路基板は、第2キャパシタを介して接地され、
前記外装と前記回路基板は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子によって接続されている、
内視鏡システム。
【請求項2】
前記低インピーダンス素子は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタの容量よりも大きい容量のキャパシタを含む、
請求項1に記載された内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な電子内視鏡システムが知られている。
電子内視鏡は術者によって操作(接触)されるため、一般的な電気機器と同様にESD(静電気放電)対策が施されている。例えば特許文献1には、内視鏡の外壁部の金属部材に対して静電気放電が生じた場合には第1サージアブソーバが導通状態となり、コンデンサを介して放電電流をアースに流すように構成されている内視鏡システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-054318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子内視鏡システムには、さらなる安全性を保証するために、内視鏡の外装とグランドの間に1.5kVの耐電圧試験の規格を満たすことが要求されており、内視鏡の出荷検査において、耐電圧試験を実施することが推奨されている。
しかし、特許文献1に記載された従来の構成では、内視鏡の外装とグランド(保護接地)の間に1.5kVの電圧を印加した場合、その構造上、外装の金属部材と患者回路の間に比較的大きな電位差が生ずる場合がある。特に、近年では、体腔内の挿入部分の細径化の要請から、外装の金属部材と患者回路に十分な距離が無い場合、金属部材と患者回路の間にアーク放電が起きる可能性がある。アーク放電が起きた場合には、患者回路、若しくは光源装置側の回路、又はその両方の回路が破壊される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、内視鏡の耐圧性を従来よりも高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、体腔内に挿入され、かつ生体組織の撮像を行う撮像素子が先端部に配置され、導電性の外装を有する内視鏡と、
前記内視鏡と接続され、前記撮像素子によって取得される画像を処理する回路基板を有するプロセッサと、
を含む内視鏡システムである。
前記外装は、第1のキャパシタを介し接地され、
前記回路基板は、第2キャパシタを介して接地され、
前記外装と前記回路基板は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子によって接続されている。
【0007】
前記低インピーダンス素子は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタの容量よりも大きい容量のキャパシタを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
上述の内視鏡システムによれば、内視鏡の耐圧性を従来よりも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の内視鏡システムの電気的構成の一例を示す図である。
図2】一実施形態の内視鏡システムの電気的構成の一部を示す等価回路図である。
図3図2の低インピーダンス素子の有無における等価回路の波形を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電子内視鏡システムについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
一実施形態の電子内視鏡システムは、体腔内に挿入され、かつ生体組織の撮像を行う撮像素子が先端部に配置され、導電性の外装を有する内視鏡と、当該内視鏡と接続され、内視鏡の撮像素子によって取得される画像を処理する回路基板(例えば後述する患者回路26)を有するプロセッサと、を含む。
【0011】
一実施形態では、内視鏡の外装とグランド(保護接地)の間に、耐圧上要求される高電圧を印加させた場合に、内視鏡の外装の金属部材と、プロセッサの回路基板の間の電位差が十分に小さくなるように構成される。具体的には、内視鏡の外装が、第1のキャパシタを介し接地され、プロセッサの回路基板は、第2キャパシタを介して接地される場合、内視鏡の外装とプロセッサの回路基板は、第1のキャパシタ及び第2のキャパシタよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子によって接続される。それによって、内視鏡の外装とプロセッサの回路基板の間にアーク放電が生じ難くなり、内視鏡及びプロセッサに含まれる回路が保護される。
【0012】
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子内視鏡100、電子内視鏡用プロセッサ200、モニタ300、及び、周辺機器400を備えている。
電子内視鏡100は、導電性の外装を有する内視鏡であり、その先端部には、体腔内に挿入され、かつ生体組織の撮像を行う撮像素子14が配置されている。
電子内視鏡用プロセッサ200は、電子内視鏡100と接続され、撮像素子14によって取得される画像を処理する回路基板(例えば後述する患者回路26)と、を有する。電子内視鏡用プロセッサ200は、電子内視鏡100と内視鏡コネクタ201を介して接続されている。
なお、図1は、システム内の各部の電源ラインやグランドラインGLの接続関係を示すものであり、システム内の信号の送受信のための伝送ラインは省略している。
【0013】
図1に示すように、電子内視鏡用プロセッサ200は、例えば商用の交流電源であるAC電源5に接続されて給電される。また、電子内視鏡用プロセッサ200のグランドラインGLは、電子内視鏡用プロセッサ200の導電性の外装等を介して保護接地に接続されている。
【0014】
電子内視鏡用プロセッサ200は、ラインフィルタ21、1次回路22、ランプ電源23、2次回路24、患者電源25、及び、患者回路26を備える。図1に示す実施形態では、モニタ300が電子内視鏡用プロセッサ200の筐体内に内蔵された例を示しているが、モニタ300は、電子内視鏡用プロセッサ200の外部に設けられてもよい。
【0015】
ラインフィルタ21は、AC電源5に接続された電源ラインのノイズを除去するためのフィルタである。ラインフィルタ21は、図示の構成に限られず、さらにインダクタを含めてもよい。
1次回路22は、トランスTR1及び図示しない整流回路を含み、AC電源5から供給される交流電圧を、2次回路24及びモニタ300が動作するのに適した直流電源に変換する。
【0016】
ランプ電源23は、ラインフィルタ21に対して1次回路22と並列に接続されている。ランプ電源23は、トランスTR2及び図示しない整流回路を含み、AC電源5から供給される交流電圧を、ランプ電源23が動作するのに適した直流電源に変換する。ランプ電源23によって生成された直流電源は、ランプ28に提供される。
【0017】
ランプ28は、所定の色の波長帯域の光を出射する複数のLEDによる光源を備える。LEDに代えてレーザダイオードを光源として用いることもできる。LED及びレーザダイオードは、他の光源と比較して、低消費電力、発熱量が小さい等の特徴があるため、消費電力や発熱量を抑えつつ明るい画像を取得できるというメリットがある。明るい画像が取得できることにより、病変部の病変の程度に関する評価の精度を向上させることができる。
ランプ28による照明光は、図示されない集光レンズにより集光された後、図示されない調光装置を介して電子内視鏡100の光ファイバ素線の束であるLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端に入射される。
入射端よりLCB11内に入射した照明光は、LCB11内を伝播して電子内視鏡100の先端部内に配置されたLCB11の射出端より射出され、配光レンズ(図示せず)を介して被写体に照射される。被写体からの反射光は、対物レンズ(図示せず)を介して撮像素子14の受光面上で光学像を結ぶ。
なお、ランプ28は、電子内視鏡用プロセッサ200に内蔵されていてもよいし、電子内視鏡100の先端部に設けられてもよい。後者の場合、照明光を導光するLCB11は不要である。
【0018】
1次回路22によって生成された直流電源は、患者電源25に対しても供給される。
患者電源25は、スコープ回路12及び撮像素子14を駆動するための電源を生成する。図1に示すように、患者電源25は、トランスTR3を含み、1次回路22によって生成された直流電圧を、スコープ回路12及び撮像素子14が動作するのに適した直流電圧に変換する。
【0019】
電子内視鏡100には、スコープ回路12及び撮像素子14が設けられており、撮像素子14を用いて、体腔内の生体組織を撮像するように構成されている。
撮像素子14は、例えば、IR(Infra Red)カットフィルタ、ベイヤ配列カラーフィルタの各種フィルタが受光面に配置された単板式カラーCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じたR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各原色信号を生成する。単板式カラーCCDイメージセンサの代わりに、単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることもできる。
スコープ回路12は、撮像素子14を駆動する駆動信号(クロック信号等)を生成して撮像素子14に送出する。スコープ回路12はまた、撮像素子14から入力される原色信号に対して色補間、マトリックス演算等の所定の信号処理を施して画像信号を生成し、生成された画像信号を患者回路26に送出する。
【0020】
患者回路26は、スコープ回路12から伝送された画像信号を取得して、その画像信号に対して画質補正ための信号処理を行う後処理回路を有している。後処理回路で行う信号処理として例えば、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、ゲイン補正などがある。この後処理回路によって信号処理が施された画像信号が2次回路24に送られる。
【0021】
2次回路24は、患者回路26から伝送された画像信号を基に、モニタ300に表示させるためのビデオ信号の生成や出力を行う表示制御回路を有している。これによって、撮像部によって撮像された体腔内の被写体の画像がモニタ300に表示されるようになっている。
また、2次回路24は、モニタ300に表示する操作案内画像等を生成する回路や、2次回路24に接続された入力装置(図示せず)からの操作信号等に基づいて患者回路26に対して各種指示を行う制御信号を患者回路26に与える処理回路なども有している。
2次回路24はまた、必要に応じて、生成したビデオ信号等を周辺機器400に送出する処理を行う。
【0022】
なお、スコープ回路12、患者回路26、及び、2次回路24において行われる処理内容についての上記説明は一例に過ぎない。各回路によって行われる処理内容は、当業者であれば適宜変更、改変、集約等させることができる。
【0023】
図1をさらに参照すると、電子内視鏡100の内視鏡外装H100は、好ましくは導電性材料によりシールドされており、キャパシタC11(第1のキャパシタの一例)を介して電子内視鏡用プロセッサ200のグランドラインGLに接続されている。つまり、内視鏡外装H100は、キャパシタC11を介して接地されている。なお、内視鏡外装H100から電子内視鏡用プロセッサ200のグランドラインGLに向かうラインは、図1では内視鏡コネクタ201を通っていないが、その限りではなく、内視鏡コネクタ201を通ってグランドラインGLに接続されてもよい。
電子内視鏡用プロセッサ200において、患者回路26の低圧側の信号ラインL26は、キャパシタC10(第2のキャパシタの一例)を介してグランドラインGLに接続されている。つまり、患者回路26は、キャパシタC10を介して接地されている。
同様に、患者電源25の低圧側の信号ラインL25は、キャパシタC12を介してグランドラインGLに接続されている。つまり、患者電源25は、キャパシタC12を介して接地されている。
キャパシタC11及びキャパシタC10は、それぞれ内視鏡外装H100及び患者回路26を交流的に接地させ、高周波ノイズを除去するために設けられている。
さらに、内視鏡外装H100と患者回路26の低圧側の信号ラインL26は、キャパシタC10及びキャパシタC11のいずれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子LZによって接続されている。例えば、低インピーダンス素子LZをキャパシタによって実現する場合には、その容量をキャパシタC10,C11よりも大きい値とする。
低インピーダンス素子LZは、キャパシタに限られず、抵抗又はインダクタであってもよいし、抵抗、キャパシタ、及び、インダクタのうち一部又はすべてを組み合わせたものであってもよい。
【0024】
電子内視鏡システム1において低インピーダンス素子LZを設けるのは、安全性を向上させるために、内視鏡外装H100と保護接地の間で1.5kVの耐電圧試験の規格(具体的には、IEC60601-1:2012 箇条8.8)を満たすようにするためである。
図1の電子内視鏡システム1において、上述した内視鏡外装H100、患者電源25及び患者回路26の信号ラインL25,L26と、グランドラインGL(つまり、保護接地)との接続関係を示す等価回路が図2に示される。
【0025】
図2に示す等価回路において、内視鏡外装H100と保護接地の間に印加する入力電圧VINと、患者回路26の信号ラインL26と保護接地の間で観測される出力電圧VOUTとの関係を示す信号波形のシミュレーション結果を、低インピーダンス素子LZの有無で示したものが図3である。ここで、入力電圧VINは、実効値が1.5kVrmsとなる交流電圧である。
なお、図3では、低インピーダンス素子LZを容量が5000pFのキャパシタとし、キャパシタC10,C11の容量を共に1000pFとし、電子内視鏡100のケーブルに存在する浮遊容量として700pFを低インピーダンス素子LZと並列に設けた場合のシミュレーション結果を例示的に示している。
図3から、低インピーダンス素子LZを追加したことにより、入力電圧VINと出力電圧VOUTの差が低下することがわかる。低インピーダンス素子LZのインピーダンス値を十分に小さな値とすれば、入力電圧VINと出力電圧VOUTの差をほぼ無視できる程度にまで低下させることができる。
【0026】
以上説明したように、実施形態の電子内視鏡システムによれば、内視鏡外装H100がキャパシタC11を介して接地され、患者回路26がキャパシタC10を介して接地されるとともに、内視鏡外装H100と患者回路26が、キャパシタC10及びキャパシタC11のいずれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス素子LZによって接続される。そのため、内視鏡外装H100と保護接地の間に高電圧(例えば上記1.5kVrms)を印加した場合に、当該高電圧と、患者回路26と保護接地の間に生ずる電圧との差を大きく低減させることができる。それによって、内視鏡外装H100と患者回路26の間でアーク放電が生じることを防止することができ、電子内視鏡100及び電子内視鏡用プロセッサ200内の回路を保護することができる。
特に、電子内視鏡100は、患者負担軽減のために極力細径化することが求められており、内視鏡コネクタ201やスコープ回路12が配置された位置において、内視鏡外装H100と患者回路26は極めて接近し、沿面距離あるいは空間距離が十分にとれない場合がある。その場合でも、実施形態の電子内視鏡システムによれば、アーク放電が起き難くなり、例えば、患者回路26等の電子内視鏡100及び電子内視鏡用プロセッサ200内の回路を保護することができる。
【0027】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0028】
1…電子内視鏡システム
5…AC電源
100…電子内視鏡
200…電子内視鏡用プロセッサ
11…LCB
12…スコープ回路
14…撮像素子
21…ラインフィルタ
22…1次回路
23…ランプ電源
24…2次回路
25…患者電源
26…患者回路
28…ランプ
201…内視鏡コネクタ
300…モニタ
400…周辺機器
C10,C11,C12,C13…キャパシタ
H100…内視鏡外装
LZ…低インピーダンス素子
L25,L26…信号ライン
TR1,TR2,TR3…トランス
GL…グランドライン
図1
図2
図3