(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035670
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20230306BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20230306BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
C02F1/00 W
B01D21/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142691
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古幡 真祐子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 倫子
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB05
4D015BB08
4D015BB09
4D015BB12
4D015BB13
4D015CA14
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4D015DA36
4D015DB01
4D015DB12
4D015DB19
4D015DB31
4D015DB32
4D015DB33
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA07
4D015EA32
4D015FA01
4D015FA02
4D015FA11
4D015FA15
4D015FA16
(57)【要約】
【課題】被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で安全かつ効率良く除去可能なピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置を提供する。
【解決手段】被処理水中のピコプランクトン濃度を測定し、ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が基準値以上となる被処理水に対し、被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を混和させて希釈処理し、希釈処理後の被処理水に被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加し、凝集剤を含む被処理水を固液分離することを含むことを特徴とするピコプランクトンを含む被処理水の処理方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中のピコプランクトン濃度を測定し、
前記ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が所定の基準値以上となる前記被処理水に対し、前記被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を混和させて希釈処理し、
前記希釈処理後の前記被処理水に前記被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加し、
前記凝集剤を含む前記被処理水を固液分離すること
を含むことを特徴とするピコプランクトンを含む被処理水の処理方法。
【請求項2】
前記ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が前記基準値以上となる前記被処理水を、前記被処理水を収容する第1の処理槽から第2の処理槽へ導入し、
前記第2の処理槽で、前記希釈処理及び前記凝集剤の添加を行い、
前記第2の処理槽内の前記被処理水の少なくとも一部を返送水として前記第1の処理槽に返送し、
前記第1の処理槽内の前記返送水を含む前記被処理水を固液分離すること
を含む請求項1に記載のピコプランクトンを含む被処理水の処理方法。
【請求項3】
前記希釈処理後の前記被処理水のピコプランクトン濃度が1×107個/mL以下となるように、前記希釈水を添加することを含む請求項1又は2に記載のピコプランクトンを含む被処理水の処理方法。
【請求項4】
ピコプランクトン濃度が1×105個/mL以下の前記希釈水を用いることを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の被処理水の処理方法。
【請求項5】
前記第1の処理槽に返送される前記返送水のピコプランクトン濃度を測定し、
前記返送水のピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、前記希釈水の希釈倍率を制御すること
を含む請求項2に記載のピコプランクトンを含む被処理水の処理方法。
【請求項6】
被処理水を固液分離可能な第1の処理槽と、
前記被処理水のピコプランクトン濃度を測定する測定手段と、
前記第1の処理槽に接続された第2の処理槽と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記第1の処理槽内の前記被処理水のピコプランクトン濃度が基準値以上となる場合に、前記第1の処理槽内の前記被処理水の少なくとも一部を前記第2の処理槽へ導入する被処理水導入手段と、
前記被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を前記第2の処理槽へ導入する希釈水導入手段と、
前記希釈水が導入された前記第2の処理槽内に、前記被処理水のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加する薬注手段と、
前記第2の処理槽内の前記被処理水を前記第1の処理槽へ返送する返送手段と
を備えるピコプランクトンを含む被処理水の処理装置。
【請求項7】
前記被処理水のピコプランクトン濃度の測定結果が前記基準値以上となる場合に、前記被処理水導入手段による前記被処理水の前記第2の処理槽への導入量、前記希釈水の希釈倍率、前記凝集剤の添加量の少なくともいずれかを制御する制御手段を備える請求項6に記載のピコプランクトンを含む被処理水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置に関し、特に、浄水処理に好適なピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、全国各地の水道水源では、富栄養化に起因する微小プランクトンの大発生が頻発している。微小プランクトンは、急速ろ過池より漏出してろ過水濁度を0.1度以上に上昇させる原因となるため、水道事業体ではその処理対策に苦慮しているところである。厚生労働省は、水道水を介して発生したクリプトスポリジウムによる感染症への対応としてろ過水濁度0.1度以下での管理を指導しており(非特許文献1参照)、各地の水道事業者は、ろ過水濁度を常時0.1度以下に管理することが最も重要な水質管理項目の一つであると位置づけている。
【0003】
ピコプランクトンは、0.2~2.0μmの大きさを持つプランクトンであり、ろ過水の濁度を上昇させる要因となることが報告されている(非特許文献2参照)。ピコプランクトンは、栄養摂取の仕組みから2つのグループに分類される。1つは、有機物を分解して栄養源とする細菌が主体の従属栄養ピコプランクトンであり、もう1つは、光合成を行う植物ピコプランクトンである。このようなピコプランクトンは、クロロフィルaなどの色素を持つ。よって、落射式蛍光顕微鏡にて緑色(G)もしくは青色(B)の励起波長を照射することで、自家蛍光が観察でき、これにより原水または処理水中に存在するピコプランクトンの存在が確認できる。
【0004】
ピコプランクトンは、生物由来の濁質であるため、従来では、塩素注入による除去が有効な手段とされてきた。しかしながら、塩素注入は、副生成物として発生するトリハロメタンが発がん性物質として健康問題となっていることから、より安全な除去方法が求められている。
【0005】
特許第5430788号公報(特許文献1)には、生物粒子計数器に関し、検出(計数)可能な生物粒子は、粒径0.1~数100μmの大きさの生物粒子、藻類、植物プランクトンであることが記載されている。そして、生物粒子計数器の計数結果に応じて、凝集剤や塩素などの薬品を注入制御し、効率的に浄水処理や水質の監視が可能となることが記載されている。
【0006】
特許第5473560号公報(特許文献2)には、浄水処理自動連続式監視装置から得られた沈殿水濁度及びろ過水濁度の情報に基づき、浄水処理不良原因が、微小プランクトンによるろ過障害か否かを判断し、微小プランクトンによるろ過障害と判断された時に、後凝集処理工程において凝集剤の自動注入を行う浄水プロセスの連続制御システムが記載されている。
【0007】
特開2017-6902号公報(特許文献3)には、重金属を含有する原水を、物理処理した処理水もしくは清水で希釈し、希釈する手段での原水のCODを160mg/L以下とする水処理システムの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5430788号公報
【特許文献2】特許第5473560号公報
【特許文献3】特開2017-6902号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】厚生労働省告示、薬生水発0529第1号、「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」、別紙2、第3頁、令和元年5月29日
【非特許文献2】日本水道協会、生物障害を起こさないための浄水処理の手引き、第57頁、平成18年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の従来技術のいずれも、被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で効率良く除去するための対策としてはまだ十分であるとはいえない。例えば、従来の水処理では、後段の処理で得られた処理水を、前段の処理へ返送水として循環させることがある。その際、返送水中にピコプランクトンが高濃度で残存していると、返送水の循環によって、浄水処理系内にピコプランクトンが徐々に蓄積され、濃縮されていく。浄水処理系内の処理水中のピコプランクトン濃度が高濃度になりすぎると、凝集剤を用いたピコプランクトンの除去処理が困難になるため、これによりろ過水の濁度が上昇し、ろ過水の濁度を基準値以下に維持することが難しくなる。
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で安全かつ効率良く除去可能なピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、ピコプランクトン濃度の高い被処理水に対して特定の処理を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0013】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、被処理水中のピコプランクトン濃度を測定し、ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が所定の基準値以上となる被処理水に対し、被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を混和させて希釈処理し、希釈処理後の被処理水に被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加し、凝集剤を含む被処理水を固液分離することを含むピコプランクトンを含む被処理水の処理方法である。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が基準値以上となる被処理水を、被処理水を収容する第1の処理槽から第2の処理槽へ導入し、第2の処理槽で、希釈処理及び凝集剤の添加を行い、第2の処理槽内の被処理水の少なくとも一部を返送水として第1の処理槽に返送し、第1の処理槽内の返送水を含む被処理水を固液分離することを含む。
【0015】
本発明の別の実施態様によれば、希釈処理後の被処理水のピコプランクトン濃度が1×107個/mL以下となるように、希釈水を添加することを含む。
【0016】
本発明の更に別の実施態様によれば、ピコプランクトン濃度が1×105個/mL以下の希釈水を用いることを含む。
【0017】
本発明の更に別の実施態様によれば、第1の処理槽に返送される返送水のピコプランクトン濃度を測定し、返送水のピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、希釈水の希釈倍率を制御することを含む。
【0018】
本発明は別の一側面において、被処理水を固液分離可能な第1の処理槽と、被処理水のピコプランクトン濃度を測定する測定手段と、第1の処理槽に接続された第2の処理槽と、測定手段の測定結果に基づいて、第1の処理槽内の被処理水のピコプランクトン濃度が基準値以上となる場合に、第1の処理槽内の被処理水の少なくとも一部を第2の処理槽へ導入する被処理水導入手段と、被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を第2の処理槽へ導入する希釈水導入手段と、希釈水が導入された第2の処理槽内に、被処理水のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加する薬注手段と、第2の処理槽内の被処理水を第1の処理槽へ返送する返送手段とを備えるピコプランクトンを含む被処理水の処理装置である。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、被処理水のピコプランクトン濃度の測定結果が基準値以上となる場合に、被処理水導入手段による被処理水の第2の処理槽への導入量、希釈水の希釈倍率、凝集剤の添加量の少なくともいずれかを制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で安全かつ効率良く除去可能なピコプランクトンを含む被処理水の処理方法及びピコプランクトンを含む被処理水の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図4】検水1に対して希釈を行った場合と希釈を行わなかった場合におけるPAC注入率とピコプランクトン除去率との関係の示すグラフである。
【
図5】検水1(希釈なし)及び検水5(希釈あり)を、浄水場の着水井に返送した場合のピコプランクトン増加量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想や構成要素の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0023】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理方法は、被処理水中のピコプランクトン濃度を測定し、ピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、ピコプランクトン濃度が所定の基準値以上となる被処理水に対し、被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い希釈水を混和させて希釈処理し、希釈処理後の被処理水に被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加し、凝集剤を含む被処理水を固液分離することを含む。
【0024】
被処理水としては、ピコプランクトンを含む水であれば特に限定されない。例えば、水道原水として利用される河川水、湖沼水、貯留池水、雨水、伏流水、地下水、井戸水が被処理水として利用できる。更には、これら水道原水に対して、沈降分離、凝集沈殿、またはろ過等の所定の浄水処理を行う浄水処理システム系内で発生する処理水等を対象とすることも好ましい。原水の濁度は以下に限定されるものではないが、典型的には100度以下、より典型的には25度以下、より更に典型的には2~10度程度である。原水は、典型的には、沈砂池や着水井を経て、凝集処理される。
【0025】
ピコプランクトンとは、微小プランクトン、植物プランクトン、小型プランクトン、小型藻類、藻類の生物粒子などを含み、典型的には、細胞径が0.2μm~2.0μmのプランクトンを指す。特に、光合成を行う植物ピコプランクトンは、河川水、湖沼水、貯留池水等の水道原水中に存在することが知られている。植物ピコプランクトンの細胞数が高まると、凝集剤の添加によるろ過水の濁度低減効果が限定的となり、浄水障害が起きることがある。
【0026】
特に、被処理水中のピコプランクトン濃度が、概ね1×107個/mL超となると、凝集剤の添加量を増加させて凝集沈殿を行っても被処理水中のピコプランクトンの除去が困難となる。本実施形態では、被処理水中のピコプランクトン濃度を測定し、その測定結果が、ピコプランクトンの大量発生により浄水処理に障害を起こしうる基準値以上となる場合に、被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための処理を行う。
【0027】
被処理水中のピコプランクトン濃度の基準値は、浄水施設の規模、装置構成、装置条件等の種々の要件によって変更され得る。典型的には、基準値は1×107個/mL、更には1×106個/mL、より更には5×106個/mLと設定することができる。
【0028】
ピコプランクトン濃度は、被処理水1mLあたりのピコプランクトンの個数(細胞数)で評価でき、細胞径0.2μm~2.0μmのピコプランクトンの個数を計数する。被処理水に含まれるあらゆるサイズの微粒子の中から0.2μm~2.0μmのピコプランクトンのみを抽出する方法としては、0.2μmの開口サイズを有するフィルター及び2.0μmの開口サイズを有するフィルターを使用し、それらに原水またはろ過水を通すことによって行うことができる。
【0029】
ピコプランクトン濃度の測定方法は特に限定されない。例えば、ピコプランクトン濃度の測定方法としては、蛍光顕微鏡を用いた蛍光測定が利用できる。蛍光測定では、ピコプランクトンに含まれるクロロフィルが発する蛍光を測定することによって、ピコプランクトンの存在数を確認する。更に、蛍光測定によって確認されたピコプランクトンの存在数をカウンタによって計数する。ピコプランクトン濃度の測定は、上述した蛍光顕微鏡による蛍光測定の他にも、一般的に入手可能なピコプランクトン測定器を用いて測定することもできる。
【0030】
ピコプランクトン濃度の測定を行った結果、被処理水中のピコプランクトン濃度が基準値以上である場合には、被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための処理を行う。具体的には、被処理水に希釈水を混和させて希釈処理し、希釈処理後の被処理水に被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加する。更に、凝集剤を含む被処理水を固液分離することで、フロックに取り込まれたピコプランクトンを沈降分離し処理汚泥として系外へ除去することができる。
【0031】
希釈水としては、被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い水が用いられる。このような希釈水としては、被処理水のピコプランクトン濃度よりも1/100以上、更には1/1000以上低い濃度となる水を用いることが好ましい。典型的には、ピコプランクトン濃度が1×105個/mL以下の希釈水が用いられる。例えば、表洗水、逆洗排水、砂ろ過水等の浄水処理で発生する水を希釈水として利用することにより、浄水処理で発生する水を有効利用することができる点で望ましい。ピコプランクトン濃度が比較的低い地下水、井戸水、或いは浄水処理系内で発生する上澄水などの処理水を利用してもよい。
【0032】
被処理水に対する希釈水の希釈倍率が大きすぎると希釈水が多量に必要となり、また希釈処理のために大きな容量の処理槽が必要となる。その結果、装置が大型化し、効率的な処理が行えない場合がある。希釈倍率は20倍以下とすることが好ましく、更には15倍以下とすることが好ましい。希釈倍率は典型的には1~10倍程度、更に典型的には5~10倍程度である。
【0033】
希釈処理により、希釈処理後の被処理水のピコプランクトン濃度が基準値以下となるように、希釈水を被処理水と混和し、希釈処理後の被処理水のピコプランクトン濃度を制御することが好ましい。例えば、希釈処理後の被処理水のピコプランクトン濃度が1×107個/mL以下に低減されるように、希釈水の希釈倍率を制御して、希釈水を添加することにより、後述する凝集剤の添加効果を十分に発揮させることができる。これにより、被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で効率良く除去することが可能となる。
【0034】
被処理水には、被処理水中のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤が添加される。「凝集剤」とは、水中の懸濁粒子やコロイド状物質の荷電を中和し、集塊して、フロックを形成させる架橋能力を有する薬剤のことをいう。このような凝集剤としては、例えば、無機凝集剤などを使用することができる。無機凝集剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸ばん土)、ポリ硫酸鉄等が利用可能である。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
中でも、ピコプランクトン数を低減させるための凝集剤として、塩基度が60%以上のポリ塩化アルミニウム(PAC)溶液が用いられることが好ましい。ピコプランクトンの除去に用いられるPAC溶液の塩基度は、高いほど被処理水中における荷電中和能力を高くすることができ、微粒子の捕捉効果をより向上させることができる。また、同じ処理能力を維持する場合に、PAC溶液の塩基度が高いほど、添加率を低減させることができるため、処理効率が良く、経済的にも利点がある。本実施形態では、塩基度が65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上のPAC溶液を被処理水に添加する凝集剤として利用することが好ましい。
【0036】
凝集剤の添加量は、選択された凝集剤の種類に応じて適宜選択されるが、通常は1~400mg/L、更には50~300mg/L、更に典型的には100~200mg/Lであり、この範囲で凝集剤の添加量及び種類の制御を行うことができる。
【0037】
被処理水中のピコプランクトンをより効率的に除去するために、被処理水に対して凝集助剤(凝集補助剤ともいう)を更に添加してもよい。「凝集助剤」とは、凝集処理におけるフロックの凝集沈降性や急速ろ過池での捕捉性を改善させ、径が大きく緻密で強固なフロックを形成させる目的で凝集剤と併用して添加される薬剤のことをいう。
【0038】
凝集助剤としては、フロック形成助剤、消石灰や水酸化ナトリウム、ソーダ灰などのアルカリ剤、活性ケイ酸やベントナイトなどの無機物、有機凝集助剤、高分子凝集剤、凝集改良剤等の種々の凝集助剤を挙げることができる。特に、ピコプランクトン等の難凝集性の微粒子の凝集沈降性を高めるための凝集助剤としては、フロックの核となるような、粒状物質を含む薬剤を用いることが好ましい。
【0039】
高分子凝集剤は、液中の粒子の表面電荷等を考慮し、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、及びノニオン系高分子凝集剤のいずれか又は複数を適宜選択して使用することが好ましい。
【0040】
有機凝集助剤は、アルギン酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸塩、CMC、ポリグルタミン酸、アラビアゴム、キサンタンガム、グアガム、キトサン、ポリビニルアルコールを用いることができる。アルギン酸塩は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウムなどである。また、アルギン酸エステルも使用できる。ポリ(メタ)アクリル酸塩としてはポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムが挙げられるが、より好ましくはポリアクリル酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0041】
凝集改良剤は、例えば粒径が100μm以上の質量割合が5%以下であり、且つ粒径が10μm以下の質量割合が30%以下である粒度分布を有し、且つ比重が2.0~4.0である微細砂を使用することができる。そのような微細砂は、水に不溶解性で、且つ被処理水に添加した場合のゼータ電位が-30mV~-60mVであることが更に好ましい。
【0042】
凝集助剤として、無機粒子又は粘土粒子等の凝集沈降性の良好な粒子を単体で又は上述の凝集助剤と組み合わせて添加することも好ましい。無機粒子としては、比重が2.0~4.0の範囲で、水に不溶解性の粒状物質であれば良い。具体的な粒状物質の例としては、砂、活性炭、カオリンなどが挙げられ、これらの中でも砂が好ましい。更に、主成分がSiO2である珪砂がより好ましい。更に、この粒子は、105μm以下の重量割合が95%以上となる粒度分布であることが好ましい。
【0043】
無機粒子又は粘土粒子は、浄水処理において発生する汚泥又は洗浄排水等にも含まれる。そのため、凝集助剤として、凝集処理の返送汚泥又はろ過処理の洗浄排水を利用することにより、ピコプランクトンを含む粒子の凝集処理のために別途薬剤を使用することなく、浄水処理で発生する資源を有効に利用できる。無機粒子又は粘土粒子を含み、浄水処理において発生する排水又は洗浄排水の具体例としては、沈殿池の排泥(浄水汚泥)、洗砂排水、洗浄排水、がある。市販の凝集助剤の代わりとして、沈殿池の汚泥又はろ過池の逆洗排水を原水に返送することで、原水中の無機粒子の割合を高め、ピコプランクトンの除去率を更に向上させることができる。
【0044】
凝集助剤の添加量は適宜選択されるが、通常は、原水量に対して4~40mg/Lであり、この範囲で凝集助剤の添加制御を行うことができる。凝集剤及び凝集助剤の添加の順序は、凝集剤及び凝集助剤の種類によって適宜変更される。通常は、凝集剤及び凝集助剤を添加した後、希釈後の被処理水と凝集剤及び凝集助剤とを混和してフロックを形成させ、フロックを沈降分離などによって固液分離する。固液分離で得られた処理水は、ピコプランクトン濃度が十分に低減されているため、浄水処理の任意の処理工程へ返送したとしても、返送水の導入による浄水処理系内のピコプランクトン濃度の上昇を抑制することができる。
【0045】
本発明の第1の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理方法によれば、ピコプランクトン濃度が高い高濃度被処理水に対し、凝集剤によるピコプランクトンの凝集処理効果が有効に発揮できる程度のピコプランクトン濃度になるまで希釈水で希釈し、ピコプランクトン濃度を低減させることで、少ない凝集剤で凝集剤の凝集処理効果を効率良く発揮させることができ、これにより、ピコプランクトンの除去率を向上させることができる。
【0046】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理方法を適用可能な被処理水の処理装置の一例を表している。被処理水の処理装置は、被処理水を固液分離可能な第1の処理槽1と、被処理水のピコプランクトン濃度を測定する測定手段2と、第1の処理槽1に接続された第2の処理槽3と、測定手段2の測定結果に基づいて、第1の処理槽1内の被処理水のピコプランクトン濃度が基準値以上となる場合に、第1の処理槽1内の被処理水の少なくとも一部を第2の処理槽3へ導入する被処理水導入手段4と、希釈水を第2の処理槽3へ導入する希釈水導入手段5と、希釈水が導入された第2の処理槽3内に、被処理水のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加する薬注手段6と、第2の処理槽3内の被処理水を第1の処理槽1へ返送する返送手段7とを備える。
【0047】
第1の処理槽1は被処理水を一定期間収容できるものであれば特に限定されない。例えば、原水槽、濃縮槽、沈降池等の他に、ピコプランクトン濃度の高い被処理水を長期間貯留し得るような、堀、ため池、水路等の構造物、水たまり等も第1の処理槽1として包含することができる。測定手段2としては、細胞径0.2μm~2.0μmのピコプランクトンの個数を測定可能な蛍光顕微鏡、ピコプランクトン測定器等が利用できる。
【0048】
第2の処理槽3としては、第1の処理槽1から導入される被処理水を、希釈水と混和させ、凝集剤を添加するための凝集槽が利用できる。被処理水導入手段4は、第1の処理槽1と第2の処理槽3とを接続する導入配管41と、導入ポンプ42を備えることができる。導入ポンプ42は、被処理水の導入量を制御するための制御手段8に接続されている。制御手段8からの制御信号に基づいて、導入ポンプ42の駆動及び停止、及び被処理水の流量等が制御される。
【0049】
希釈水導入手段5は、希釈水を貯留する希釈水槽50と、希釈水槽50から第2の処理槽3へ希釈水を導入する導入配管51と、希釈水槽50から希釈水を抜いて第2の処理槽3へ導入する導入ポンプ52を備える。導入ポンプ52は、希釈水の第2の処理槽3への導入量を制御するための制御手段8に接続されている。制御手段8からの制御信号に基づいて、導入ポンプ52の駆動、停止及び希釈水の流量等が制御される。希釈水槽50には、第2の処理槽3へ導入される被処理水よりもピコプランクトン濃度が低い水、典型的には、ピコプランクトン濃度が1×105個/mL以下の水が貯留されている。
【0050】
薬注手段6は、凝集剤及び凝集助剤を供給するための供給配管61を備える。返送手段7は、第2の処理槽3内の被処理水(又は処理汚泥)を第2の処理槽3から第1の処理槽1へ返送する。返送手段7には、返送水のピコプランクトン濃度を測定するための測定手段2が接続されていてもよい。測定手段2は、第1の処理槽1に返送される返送水のピコプランクトン濃度を測定し、返送水のピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、希釈水の希釈倍率を制御することができる。これにより、第2の処理槽3内の被処理水を、凝集剤及び凝集助剤の添加に適したピコプランクトン濃度に調整することができるため、凝集剤及び凝集助剤の添加効果をより高くすることができる。
【0051】
制御手段8は、測定手段2による被処理水のピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、測定結果が基準値以上となる場合に、被処理水導入手段4による被処理水の第2の処理槽3への導入量、希釈水槽50から第2の処理槽3へ導入される希釈水の希釈倍率、凝集剤の添加量の少なくともいずれかを制御するための制御信号を出力する。
【0052】
第1の処理槽1及び第2の処理槽3としては固液分離槽を用いることが好ましい。第1の処理槽1及び第2の処理槽3での固液分離処理は連続式でも回分式でもいずれでもよい。例えば、第1の処理槽1内の被処理水のピコプランクトン濃度が非常に高く、希釈倍率を高くしても、被処理水のピコプランクトン濃度を基準値よりも低くすることが難しい場合等には、第2の処理槽3において回分式処理を行う。そして、第2の処理槽3内に沈降したフロック(処理汚泥)を原水槽に返送し、上澄水を希釈水槽50へ送る。このような操作を行うことにより、装置の大型化を防ぐことが可能となるとともに、より効率的なピコプランクトン濃度の低減処理を行うことができる。
【0053】
第1の処理槽1に収容された被処理水のピコプランクトン濃度は、測定手段2によって測定される。そして、第1の処理槽1内の被処理水のピコプランクトン濃度の測定結果が、予め設定された基準値以上となる場合に、被処理水導入手段4が、被処理水の少なくとも一部を第1の処理槽1から分離し、分離水として第2の処理槽3へ導入する。第2の処理槽3では、希釈水導入手段5による希釈処理及び薬注手段6による凝集剤の添加を行う。そして、第2の処理槽3内の被処理水の少なくとも一部を、返送水として、返送手段7を介して第1の処理槽1に返送し、第1の処理槽1において、返送水を含む被処理水を固液分離する。
【0054】
本発明の第1の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理装置によれば、ピコプランクトン濃度の高い被処理水を、第2の処理槽3において希釈水と混和させることにより、凝集剤の添加効果が十分に得られる程度にピコプランクトン濃度が低減される。これにより、凝集剤の添加効果を最大限に発揮させることができるため、被処理水中のピコプランクトンを高い除去率で安全かつ効率良く除去することが可能となる。
【0055】
第1の処理槽1内の被処理水は、第2の処理槽3側に導入されて第2の処理槽3で希釈され、希釈処理済の被処理水が返送水として返送手段7から返送されることにより、徐々にピコプランクトン濃度が低減される。そのため、第1の処理槽1の固液分離によって得られる清澄水を、第1の処理槽1よりも上流の処理に返送したとしても、返送水の循環によって浄水処理系内にピコプランクトンが徐々に蓄積されて濃縮されていくことを抑制することができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の実施の形態に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理方法を典型的な浄水装置に適用した例を示す。浄水装置は、原水を導入する着水井101と、着水井101から導入された原水に凝集剤及び凝集助剤を添加する凝集槽102と、凝集槽102の凝集処理水を沈降分離する沈殿池103と、沈殿池103の上澄水をろ過処理するろ過池104と、沈殿池103及びろ過池104で発生した汚泥を濃縮する一次濃縮槽1aとを基本的な構成として備えることができる。第2の実施の形態では、
図2の一次濃縮槽1aが
図1の第1の処理槽1に対応し、
図2の一次濃縮槽1aに隣接する
図2の第2の処理槽3aが、
図1の第2の処理槽3に対応している。
【0057】
着水井101には、水源から取水された原水が導入され、原水の水量の調節及び水質把握が行われる。
図2の例では、凝集槽102及び沈殿池103を備える例を示しているがこの例には限定されない。例えば、凝集槽102として、原水と凝集剤及び凝集助剤を混和するための混和槽と、フロックが十分形成されるためのフロック形成槽と、フロックを沈殿させて取り除くための沈殿池103とを備えていても良い。或いは、凝集槽102として、凝集処理と沈殿処理とを一槽の装置で行う凝集沈殿装置が配置されていてもよい。ろ過池104としては、典型的には、砂ろ過装置を用いることができるが、膜ろ過装置等の公知の他のろ過装置を利用できる。
【0058】
一次濃縮槽1aは、被処理水を固液分離可能な処理槽であり、一次濃縮槽1a内の被処理水のピコプランクトン濃度を測定する測定手段2aに接続されている。一次濃縮槽1aは、測定手段2aの測定結果に基づいて、一次濃縮槽1a内の被処理水の少なくとも一部を一次濃縮槽1aから抜いて、一次濃縮槽1aに接続された第2の処理槽3aへと導入するための被処理水導入手段4aに接続されている。
【0059】
第2の処理槽3aは、希釈水を第2の処理槽3aへ導入する希釈水導入手段5aと、希釈水が導入された第2の処理槽3a内に被処理水のピコプランクトン濃度を低減させるための凝集剤を添加する薬注手段6aが接続されている。第2の処理槽3aと一次濃縮槽1aの間には、第2の処理槽3a内の被処理水を第2の処理槽3aから一次濃縮槽1aへ返送するための返送手段7aが接続されている。
【0060】
制御手段8aは、希釈水導入手段5a及び薬注手段6a及び測定手段2a(図示省略)に接続され、測定手段2aによる被処理水のピコプランクトン濃度の測定結果に基づいて、測定結果が基準値以上となる場合に、被処理水導入手段4aによる被処理水の導入量、希釈水導入手段5aから第2の処理槽3aへ導入される希釈水の希釈倍率、薬注手段6aから供給される凝集剤の添加量の少なくともいずれかを制御するための制御信号を出力することができる。
【0061】
図2では、一次濃縮槽1a内の被処理水の少なくとも一部を抜いて第2の処理槽3aへ導入し、ピコプランクトン濃度の低減処理を行う例を示している。しかしながら、被処理水を取り出す処理槽は一次濃縮槽1aに限られず、ピコプランクトン濃度の上昇が見込まれる処理槽であれば、浄水処理系内の任意の処理槽に適用することができる。その場合、被処理水の一部を取り出す処理槽の近傍に、希釈のための小型の凝集槽を新たに設け、凝集槽内で希釈処理と凝集剤の添加処理を行う。既存の設備に対して、小型の凝集槽の設置という改良を加えることにより、より簡易な設備でピコプランクトン濃度の低減をより効率良く行うことができる。
【0062】
高濃度に発生したピコプランクトンを含む被処理水を返送水として利用することにより、浄水処理系内のピコプランクトン濃度が上昇し、ろ過水濁度の基準値を達成できない場合がある。本発明の第2の実施の形態に係る被処理水の処理装置及び処理方法によれば、浄水処理系内の一次濃縮槽1a内の被処理水のピコプランクトン濃度を高い除去率で低減させることができる。その結果、一次濃縮槽1aよりも前段の処理槽、例えば、着水井101に一次濃縮槽1a内の被処理水(汚泥)を返送したとしても、着水井101への多量のピコプランクトンの流入を抑制しながら、より効率的に浄水処理を行うことができる。
【0063】
(変形例)
図3は、
図2の沈殿池103内の被処理水のピコプランクトン濃度を低減させるための処理方法及び処理装置の例を示している。
図3に示すように、本発明の第2の実施の形態の変形例に係るピコプランクトンを含む被処理水の処理装置は、沈殿池103で得られる処理水を濃縮する濃縮槽1bと、濃縮槽1bで得られる濃縮処理水に希釈水を混和し、希釈後の濃縮処理水に凝集剤及び凝集助剤を添加する凝集槽3bと、凝集槽3bの凝集処理水を固液分離する沈殿池3cを備える。
【0064】
図3の濃縮槽1bは、
図1の第1の処理槽1に対応し、
図3の凝集槽3bは、
図1の第2の処理槽3に対応する。凝集槽3bで得られる凝集汚泥は返送手段7bを介して濃縮槽1b内に返送される。沈殿池3cで得られる処理汚泥は返送手段7cを介して濃縮槽1bに返送される。沈殿池3cで得られる上澄水は返送手段9を介して、凝集槽3bの希釈水として再利用することができる。
【0065】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【実施例0066】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0067】
ピコプランクトンが高濃度に発生したと疑われる試水を入手し、処理方法を検討した。以下の検水1~5を用意した。
検水1:浄水場の一次濃縮槽内の上澄水
検水2:浄水場原水
検水3:検水1に対して、希釈を行わずに、凝集剤としてPACを注入率200mg/Lで注入し、5Aろ紙でろ過して調製した水
検水4:検水1を検水2で10倍希釈して調製した水
検水5:検水1を検水2で10倍希釈して、凝集剤としてPACを注入率200mg/Lで注入し、5Aろ紙でろ過して調製した水
【0068】
表1に、希釈処理前と希釈処理後のピコプランクトン濃度の変化を示す。ピコプランクトン濃度はピコプランクトン計測器を使用し、検水1、3、4、5に含まれる粒径0.5~2.0μmの粒子数を測定した。
【0069】
【0070】
表1に示すように、検水1のピコプランクトン濃度は4.2×107個/mLであり、検水1に対して凝集剤を加えて凝集処理を行い、検水3を得た際のピコプランクトン濃度は1.2×107個/mL程度であった。その結果、ピコプランクトンの除去率は70%程度であった。一方、検水1を検水2(浄水場原水)で10倍希釈した検水4は、ピコプランクトン濃度を1×107個/mL以下に低減することができ、更に、この検水4に対して凝集剤を加えて凝集処理を行った検水5では、ピコプランクトン濃度を5×105個/mL以下に低減することができた。希釈を行った場合のピコプランクトンの除去率は92%であり、ピコプランクトンの除去率を90%以上とすることができた。
【0071】
図4に検水1に対して希釈を行った場合と希釈を行わなかった場合におけるPAC注入率とピコプランクトン除去率との関係のグラフを示す。
図4に示すように、希釈を行うことにより、PAC注入率が100mg/L程度であっても、70%程度のピコプランクトンの除去率が達成できた。PAC注入率を200mg/Lとすることにより、90%程度のピコプランクトンの除去率が達成できた。また、検水1に対して希釈を行わない場合と比べて、検水1に対して希釈を行った方が、ピコプランクトン除去率を高くできることが分かる。
【0072】
検水1(希釈なし)及び検水5(希釈あり)を、浄水場の着水井に返送した場合のピコプランクトン増加量の関係を
図5に示す。
図5の「返送無し原水」は、検水1又は5を浄水場の着水井に返送する前の着水井に貯留された原水のピコプランクトン濃度を示す。一次濃縮槽の上澄水を希釈なしで返送した場合、ピコプランクトン数は原水に対して1200%増加した。一方、一次濃縮槽の上澄水を希釈し、凝集処理を行った後の検水5を着水井に返送した場合には、45%程度の増加でとどめることができている。