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  • 特開-殺菌装置 図1
  • 特開-殺菌装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035680
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230306BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20230306BHJP
【FI】
A61L9/20
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142708
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】506160215
【氏名又は名称】マイクロコーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 壮介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 暢之
【テーマコード(参考)】
4C180
4D037
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH19
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
4D037BB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成でありながら、エネルギー効率の高い殺菌装置を提供する。
【解決手段】殺菌装置100は、複数のUV-LED111を備えた光源部110と、光源部110を内壁に配設した流路管120と、光源部110に駆動電力を供給する電源部130と、光源部110への駆動電力の供給を制御する制御部140とを備える。制御部140は、光源部110の駆動に伴い、光源部110から排出される熱を利用して流路管120の中の殺菌対象流体を流動させる。このため、ファンやポンプといった駆動源を利用せずとも、流路管120の中の殺菌対象流体を効率的に殺菌することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紫外光LEDを備えた光源部と、
前記光源部を内壁に配設した流路管と、
前記光源部に駆動電力を供給する電源部と、
前記光源部への駆動電力の供給を制御する制御部と、を備えた殺菌装置であって、
前記制御部は、前記光源部の駆動に伴い、前記光源部から排出される熱を利用して前記流路管の中の殺菌対象流体を流動させる、殺菌装置。
【請求項2】
前記流路管の外壁には、断熱部材が設けられれている、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記光源部には、熱伝導体が設けられている、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記光源部が配設された部分以外の前記流路管の内壁には、光反射材が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌対象流体の流動を補助するための補助駆動源をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記殺菌対象流体は、空気または水である、請求項1から5のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、殺菌用の新たな光源として紫外線を出射する紫外光LED(以下、UV-LE
D)が注目されている。UV-LEDは、発光効率が低いものの、単波長化や高出力化
が図られており、将来更なる発光効率の向上も期待できる。
例えば、下記特許文献1には、水などの流体にUV-LEDから紫外線を照射するこ
とで、流体を連続的に殺菌する殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-87544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の殺菌装置は、殺菌対象である水などの流体を、ファンやポンプなどの駆動源を利用して強制的に流動させていたため、装置が大型化するとともに、エネルギー効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら
、エネルギー効率の高い殺菌装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態に係る殺菌装置は、複数の紫外光LEDを備えた光源部と、光源部を内壁に配設した流路管と、光源部に駆動電力を供給する電源部と、光源部への駆動電力の供給を制御する制御部と、を備えた殺菌装置であって、制御部は、光源部の駆動に伴い、光源部から排出される熱を利用して流路管の中の殺菌対象流体を流動させることを要旨とする。
【0007】
かかる構成によれば、光源部の駆動に伴い、紫外光LEDから発生する熱を利用して
流路管の中の殺菌対象流体を流動(自然対流)させるため、系全体のエネルギー効率を
高めることが可能となる。また、自然対流により殺菌対象流体を移動させているため、
静音性が求められる場所(例えばホテルなど)でも利用することができる。さらに、殺
菌対象流体を流動させるために、ファンやポンプなどの駆動源を必要としないため、殺
菌装置を簡易に構成することができ、省エネ性にも優れている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、エネルギー効率の高い殺菌装置を提供す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る殺菌装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示す殺菌装置のA-A断面図である。
図3】殺菌対象流体の流動を確認したときの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明
において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
A.本実施形態
図1は、本実施形態に係る殺菌装置100の概略構成を示す図であり、図2は、図1
に示す殺菌装置100のA-A断面図である。
殺菌装置100は、紫外線を発する光源部110と、水や空気などの殺菌対象流体の
流路を形成するとともに光源部110を収容する流路管120と、光源部110に電力
を供給する電源部130と、光源部110への電力の供給を制御する制御部140とを
備えている。
【0012】
本実施形態に係る殺菌装置100は、紫外線照射時に光源部110から排出される熱
を利用して流路管120の中の殺菌対象流体を流動させる。このため、ファンやポンプ
といった駆動源を利用せずとも、効率的な殺菌処理が可能となる。
【0013】
光源部110は、例えば複数のUV-LED111によって構成されている。各UV
-LED111は、紫外光を発光するLED素子、電極、ボンディングワイヤ、封止樹
脂、LED基板などによって構成されている。LED基板は、例えばアルミニウムや銅
などによって形成されている。本実施形態では、UV-LED111から排出される熱
を効率的に利用するために、UV-LED111の基部に熱伝導体112を設けている
。熱伝導体112は、例えばグラファイトやアルミニウム、銅などの伝熱性の高い材料
によって形成されている。もっとも、UV-LED自体の伝熱性が高い場合には、熱伝
導体112の形成を省略してもよい。
【0014】
UV-LED111のピーク波長は、例えば220nm~300nmの紫外領域、特
に殺菌効率の高い260nm~280nm程度に設定されているものが好ましい。この
ようなUV-LED111として、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を
用いたものが知られている。
【0015】
流路管120は、断面が略円形状の管によって構成され、その内壁には、長手方向に
一定の間隔D1をおいて複数のUV-LED111が配置されている。流路管120は
、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)などによって形成されている。なお、本実
施形態では、流路管120の内壁の円周に沿って、120度の間隔でUV-LED11
1を設置する態様を例示しているが(図2参照)、これに限る趣旨ではない。例えば、
必要な殺菌条件などに応じて、流路管120の長さや、UV-LED111の設置個数
、さらには、UV-LED111を長手方向に配置する間隔D1や、円周に沿って配置
する間隔などを適宜設定すればよい。
【0016】
また、流路管120の内壁の一部には、光反射材121が設けられている。具体的に
は、光源部110が配設された領域以外の内壁に光反射材121が設けられている(図
2参照)。光反射材121は、例えば流路管120の内壁に水銀(Hg)の薄膜を蒸着
することで形成される。このような光反射材121を形成することで、光源部110か
ら発せられた紫外線は、光反射材121において効率的に反射され、流路管内での紫外
線の殺菌効果を高めることが可能となる。
【0017】
一方、流路管120の外壁には、流路管120の内部(具体的には、光源部110)
で発生した熱が外部に逃げないように、断熱部材122が設けられている。断熱部材1
22は、例えば発泡スチロールなどの断熱性の高い材料によって形成されている。
【0018】
電源部130は、例えばバッテリなどにより構成され、制御部140による制御の下
、光源部110に駆動電力を供給する。電源部130は、ケーブル(図示略)等を介し
て光源部110と接続されている。
【0019】
制御部140は、例えばMPU(Micro Processing Unit)などにより構成され、殺菌
装置100の各部を中枢的に制御する。また、制御部140は、光源部110への駆動
電力の供給を制御することで、UV-LED111による殺菌対象流体への紫外線の照
射を制御する。
【0020】
制御部140は、殺菌処理を開始すべき旨の指示を受け取ると、光源部110に対す
る駆動電力の供給を開始する。光源部110は、供給される駆動電力に応じて、流路管
120の中の殺菌対象流体に紫外線を照射し、殺菌処理を開始する。光源部110の駆
動に伴い、UV-LED111から熱が発生する。UV-LED111から発生(排出
)された熱により、流路管120の中の殺菌対象流体の流動(すなわち自然対流)が生
じる。この結果、ファンやポンプといった駆動源を利用せずとも、流路管120の中の
殺菌対象流体を効率的に殺菌することが可能となる。
【0021】
ここで、各種条件下で殺菌対象流体(空気)の流動を確認したときの結果を図3に示
す。実験では、管の傾斜角度やUV-LEDの点灯管数を変え、入口温度、出口温度(
管上部温度)、風速、風温度などを測定した。なお、実験条件の概要を示せば以下のと
おりである。
<実験条件>
管径;0.1(m), 管長;1(m), 管の断面積;0.008(m2), 管の体
積;0.008(m3), 管内時間;10(s), 1時間当たりの管の体積;2.8
26(m3/h), 風速;0.1(m/s), 置換効率; 0.7, 駆動電力;1
6.8(W)
【0022】
実験の結果、流路管内に10秒程度空気を滞留させるためには、流路管を水平(傾斜
角度=0度)にし、1本のUV-LEDに17W程度の電力を供給して出口温度が入口
温度(周囲温度)よりも3℃程度高いことが目安になることがわかった。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係る殺菌装置100によれば、光源部110の駆
動に伴い、UV-LED111から発生する熱を利用して流路管120の中の殺菌対象
流体を流動(自然対流)させるため、系全体のエネルギー効率を高めることが可能とな
る。
また、自然対流により殺菌対象流体を移動させているため、静音性が求められる場所
(例えばホテルなど)でも利用することができる。
さらに、殺菌対象流体を流動させるために、ファンやポンプなどの駆動源を必要とし
ないため、殺菌装置100を簡易に構成することができ、省エネ性にも優れている。
【0024】
B.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない
範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあ
らゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0025】
上記実施形態では、ファンやポンプの駆動源を一切利用しなかったが、例えば殺菌対
象流体の種類などに応じて、ファンやポンプなどの駆動源を補助的に利用してもよい。
例えば、殺菌対象流体が気体(空気など)である場合には、補助的にファンを利用し、
殺菌対象が液体(水など)である場合には、補助的にポンプを利用してもよい。ファン
やポンプなどの代わりに(あるいは加えて)、ヒータを駆動源として用いてもよい。こ
れにより、殺菌装置100の処理容量を大きくすることが可能となる。
【0026】
また、流路管120については、断面が略円形状のものに限る趣旨ではなく、略楕円
形状や略多角形状のものを採用してもよい。
【0027】
なお、殺菌装置100は、業務用・家庭用問わず、あらゆる施設に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
100…殺菌装置、110…光源部、111…UV-LED、112…熱伝導体、12
0…流路管、121…光反射材、122…断熱部材、130…電源部、140…制御部



図1
図2
図3