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  • 特開-トラッキング検出構造 図1
  • 特開-トラッキング検出構造 図2
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  • 特開-トラッキング検出構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035688
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】トラッキング検出構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20230306BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20230306BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20230306BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20230306BHJP
【FI】
H05K3/00 V
H01R12/71
G01R31/52
G01R31/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142722
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】平井 孝資
(72)【発明者】
【氏名】寺本 真也
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
5E223
【Fターム(参考)】
2G014AA16
2G014AB59
2G015AA28
2G015CA12
5E223AB51
(57)【要約】
【課題】 誤動作を削減してトラッキング放電を検知でき、しかも板状部材であっても簡易な構造でトラッキング放電の検知が可能なトラッキング検知構造を提供する。
【解決手段】 基板1上でコネクタ2の端子2aが接続されて、トラッキング放電が発生する可能性のある対を成す露出電路3がパターン形成され、その間にトラッキング放電で発生した電流を検出するセンサ導体4がパターン形成されて配置されている。このセンサ導体4は、トラッキング放電により飛散するレジスト6で覆われている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路接続部で発生するトラッキング放電を検出するためのトラッキング検出構造であって、
トラッキング放電が発生する可能性のある部位の前記電路接続部の極間に、トラッキング放電で発生した電流を検出するセンサ導体を配置すると共に、
前記センサ導体の検出部は、発生したトラッキング放電により炭化或いは飛散する膜状絶縁体で覆われていることを特徴とするトラッキング検出構造。
【請求項2】
前記センサ導体は、前記電路接続部を構成する一対の接続端子を備えた合成樹脂製のハウジングの内部であって、前記接続端子の極間に先端を外方に向けて配置され、
前記センサ導体の先端が配置された前記ハウジングの極間は、膜状に薄く形成されて成ることを特徴とする請求項1記載のトラッキング検出構造。
【請求項3】
プリント基板に、電線を接続するコネクタを接続する一対の露出電路が前記電路接続部としてパターン形成され、
前記センサ導体は、前記一対の露出電路の間にパターン形成されて成り、且つその上部はレジストで覆われていることを特徴とする請求項1記載のトラッキング検出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンセントやコネクタ等の電路接続部において発生するトラッキング放電を検出するためのトラッキング検出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンセントやコネクタ等の電路接続部は、トラッキング放電が発生する可能性があり、その対策を施したコンセント等がある。
例えば、特許文献1のコンセントでは、コンセントケース前面の受刃間にトラッキング放電を検知するための孔を設け、その中にトラッキング放電を検知させるセンサを配置した。そして、センサにトラッキング放電判定回路を接続してトラッキング放電の有無を判定させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-57524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記孔の中にセンサを配置してトラッキング放電を検出する構成は、センサは孔に配置されるが先端が露出する構造であるため、塵の付着や静電気で誤動作する問題があった。
また、コンセントのようなハウジングを備えている場合は、孔を形成し易いためトラッキング構造を容易に形成できたが、基板等の板状の部材に形成された電路の場合、従来のトラッキング検知構造を採用するのが難しかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、誤動作を削減してトラッキング放電を検知でき、しかも板状部材であっても簡易な構造でトラッキング放電の検知が可能なトラッキング検知構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電路接続部で発生するトラッキング放電を検出するためのトラッキング検出構造であって、トラッキング放電が発生する可能性のある部位の電路接続部の極間に、トラッキング放電で発生した電流を検出するセンサ導体を配置すると共に、センサ導体の検出部は、発生したトラッキング放電により炭化或いは飛散する膜状絶縁体で覆われていることを特徴とする。
この構成によれば、発生したトラッキング放電の熱により膜状絶縁体は炭化或いは飛散する。結果、トラッキング放電の放電電流がやがてセンサ導体に流れ込み、トラッキング放電の発生を検知できる。よって、極間にセンサ導体を配置する簡易な構成でトラッキング放電の検知が可能となる。
そして、通常状態では、センサ導体は膜状絶縁体に覆われているため、塵等の付着や静電気によりセンサ導体に電流が流れ込むようなことが無く、誤動作を防止できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、センサ導体は、電路接続部を構成する一対の接続端子を備えた合成樹脂製のハウジングの内部であって、接続端子の極間に先端を外方に向けて配置され、センサ導体の先端が配置されたハウジングの極間は、膜状に薄く形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、センサ導体はハウジングの内部に配置されているが、トラッキング放電によりハウジングが炭化されることで、センサ導体にトラッキング放電の電流が流れ込むようになり、トラッキング放電を検出可能となる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、プリント基板に、電線を接続するコネクタを接続する一対の露出電路が電路接続部としてパターン形成され、センサ導体は、一対の露出電路の間にパターン形成されて成り、且つその上部はレジストで覆われていることを特徴とする。
この構成によれば、センサ導体はレジストで覆われているが、トラッキング放電によりレジストが飛散してセンサ導体にトラッキング放電の電流が流れ込むようになり、トラッキング放電を検出可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発生したトラッキング放電の熱により膜状絶縁体は炭化或いは飛散する。結果、放電電流がやがてセンサ導体に流れ込み、トラッキング放電の発生を検知できる。よって、極間にセンサ導体を配置する簡易な構成でトラッキング放電の検知が可能となる。
そして、通常状態では、センサ導体は膜状絶縁体に覆われているため、塵等の付着や静電気によりセンサ導体に電流が流れ込むようなことが無く、誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るトラッキング検出構造の一例を示し、基板にコネクタを接続した部位の説明図である。
図2図1のトラッキング検出構造において、(a)はトラッキング放電が発生した初期の状態、(b)はトラッキング放電が進み、基板が劣化してトラッキング放電を検知する状態を示している。
図3】コンセントに設けたトラッキング検出構造を示す説明図であり、(a)は一部を拡大した外観図、(b)はA-A線断面を示し、センサ導体を設けた部位の断面説明図である。
図4】回路遮断器に設けたトラッキング検出構造を示す説明図であり、(a)は一部を拡大した外観図、(b)はB-B線断面を示し、センサ導体を設けた部位の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るトラッキング検出構造の一例を示し、プリント基板(基板)にコネクタを接続した部位の説明図である。
図1において、1は基板、2は電源線Lを接続するためのコネクタ、3はコネクタ2を接続するための基板1上にパターン形成された電路接続部としての露出電路、4は露出電路3の間に同様にパターン形成されたセンサ導体である。コネクタ2は端子2aが基板1上の露出電路3に半田付けされて接続される。尚、5が半田付け部位を示している。
【0012】
基板1に形成された露出電路3はコネクタ2の接続部が露出しているが、センサ導体4は絶縁体であるレジスト6が塗布されて、レジスト6の膜で覆われて保護されている。
尚、図1等ではレジスト6をハッチングで示している。また、センサ導体4は、その先がトラッキング検出部(図示せず)に接続されており、トラッキング放電電流がセンサ導体4に流れ込むと、それを検知して報知動作等するよう構成されている。
【0013】
図2は、このように形成された基板1に、トラッキング放電が発生した状態を示している。図2(a)は初期の状態、図2(b)はトラッキング放電が進み、基板1が劣化してトラッキング放電電流がセンサ導体4に流れる状態を示している。図2において、矢印Sはトラッキング放電を示している。トラッキング放電は、極間である端子2aの間で発生するが、半田付け部位5の間が最も接近しているため、露出電路3の間であっても図2に示すように半田付け部位の間で発生する場合が多い。
尚、トラッキング放電は、基板1上に付着した塵や埃に水分が付着し、極間の絶縁抵抗が下がることで発生することが知られている。
【0014】
このトラッキング放電が何度か発生すると、やがて表面を覆っているレジスト6が飛散し、センサ導体4が露出する。図2(b)はこの状態を示し、Pがレジストが飛散した部位を示している。こうなると、発生したトラッキング放電Pは、矢印Tで示すようにセンサ導体4に流れ込み、トラッキング放電の発生がセンサ導体4に接続されているトラッキング検出部により検出される。但し、図2(b)では、特定の一方の端子2aからセンサ導体4へ放電電流が流れる状態を示しているが、極性により対を成す他方の端子2aとセンサ導体4との間でも放電電流は流れる。
【0015】
このように、発生したトラッキング放電の熱により膜状絶縁体であるレジストが飛散すると、トラッキング放電の電流がやがてセンサ導体4に流れ込む。結果、トラッキング放電の発生が検知される。よって、極間である端子2a間にセンサ導体4を配置する簡易な構成でトラッキング放電の検知が可能となる。
そして、通常状態では、センサ導体4はレジスト6に覆われているため、塵等の付着や静電気によりセンサ導体4に電流が流れ込むようなことが無く、誤動作を防止できる。加えて、センサ導体4は、基板1にパターン形成されるため、別途基板上にセンサ導体を組み付ける必要がない。
【0016】
尚、レジスト6の上に更にシリコン被膜を設けて耐久性を持たせた構成であっても良く、トラッキング放電により飛散してやがて露出する。
【0017】
図3は、トラッキング検出構造の他の形態を示し、コンセントに設けた説明図である。図3(a)は一部を拡大したコンセントの外観図、図3(b)はA-A線断面説明図で、コンセント孔の中間部位M1の縦断面を示している。図3において、11はコンセント10のハウジング、12はプラグを接続するコンセント孔、13はセンサ導体である。尚、コンセント孔12の内部には、挿入されたプラグと電気的に接続するための受刃(図示せず)が配置され、コンセント孔12が電路接続部を構成してている。
【0018】
図3(a)に示すように外観上はセンサ導体13は見えないが、図3(b)に示すように、左右に設けたコンセント孔12の間の中間部位M1に、センサ導体13が配置されている。具体的に、センサ導体13は、被覆されて先端部のみ露出した棒状導体であり、ハウジング11の前後方向に配置されている。先端がハウジング11の前面の背部に密着するように配置されている。一方、センサ導体13が密着するハウジング11の中間部位M1は、周囲に比べて例えば0.5mm厚と膜状に薄く形成されている。
【0019】
このように2つのコンセント孔12の間に薄肉部を設けてセンサ導体13を配置することで、接続したプラグの栓刃間でトラッキング放電が発生すると、その熱によりハウジング11のコンセント孔12の間の炭化が発生し、やがてセンサ導体13が密着している部位が炭化する。この炭化により、絶縁体であったはずの中間部位M1が導体に変化し、トラッキング放電の電流が炭化した部位を介してセンサ導体13に流れ込むようになる。この結果、センサ導体13に接続されているトラッキング検出部がトラッキングを検出してトラッキング発生と判断する。
【0020】
このように、センサ導体13はハウジング11の内部に配置されているが、トラッキング放電によりハウジング11のセンサ導体13を配置した部位が炭化されることで、センサ導体13にトラッキング放電の電流が流れ込むようになり、トラッキング放電が検出される。
【0021】
図4はトラッキング検出構造の更に他の形態を示し、回路遮断器に設けた説明図である。図4(a)は端子部を拡大した回路遮断器の外観図、図4(b)はB-B線断面説明図であり、端子部の中間部位M2の縦断面を示している。
図4において、21は回路遮断器20のハウジング、22は端子部を構成する端子座であり対を成して形成され、端子座22に螺入する端子ネジは省略してある。ハウジング21は合成樹脂製であり、2つの端子座22が電路接続部であり、その間には絶縁壁23が形成されている。
【0022】
センサ導体13は、この絶縁壁23の内部に配置されており、図4(a)に示すように外観上はセンサ導体13は見えない。センサ導体13は、図4(b)に示すように、端子座22の間の絶縁壁23の中間部位M2に配置され、この中間部位M2は膜状に薄く形成されている。そして、この中間部位M2の背部にセンサ導体13が配置されている。センサ導体13は、先端を絶縁壁23に密着するように配置されている。
【0023】
このように端子座22の間の絶縁壁23に薄肉部を設けてセンサ導体13を配置することで、次のようにトラッキング放電が検知される。
端子座22に接続された電線の間で発生するトラッキング放電は、絶縁壁23に接触するように発生する。そのため、その熱により絶縁壁23が炭化し、やがてセンサ導体13の前方の薄肉部が炭化して、絶縁体であったはずの部位が導電性を有するようになり、トラッキング放電電流が炭化した部位を介してセンサ導体13に流れ込むようになる。この結果、センサ導体13に接続されているトラッキング検出部がトラッキングを検出してトラッキング発生と判断する。
【0024】
このように、センサ導体13はハウジング21の内部に配置されているが、トラッキング放電によりハウジング21が炭化されることで、センサ導体13にトラッキング放電の電流が流れ込むようになり、トラッキング放電を検出可能となる。
【0025】
尚、上記実施形態は、基板1、コンセントのハウジング11、回路遮断器のハウジング21にトラッキング検出構造を設けた場合を説明したが、上記トラッキング検出構造は他の接続部、例えば端子台においても適用でき、端子間の絶縁壁にセンサ導体を埋設することで回路遮断器のハウジング21と同様にトラッキング検出構造を設けることができる。
【符号の説明】
【0026】
1・・プリント基板、2・・コネクタ、3・・露出電路、4・・センサ導体、5・・半田付け部位(電路接続部)、6・・レジスト、10・・コンセント、11・・ハウジング、12・・コンセント孔(電路接続部)、13・・センサ導体、20・・回路遮断器、21・・ハウジング、22・・端子座(電路接続部)、23・・絶縁壁、M1,M2・・中間部位、L・・電線、S・・放電電流。
図1
図2
図3
図4