(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035692
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/12 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
D06F37/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142729
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝之
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA15
3B165AE01
3B165AE02
3B165BA08
3B165BA24
3B165BA33
3B165BA83
3B165CA01
3B165CA11
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3B165CB44
3B165CB55
3B165CB57
3B165CB59
3B165CE01
3B165DW03
3B165DW04
3B165DW05
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA25
3B165JM02
3B165JM03
(57)【要約】
【課題】脱水槽のアンバランス状態を解消するために調整水が注水される注水部が脱水槽の内周面に設けられることにより発生する問題を解消する。
【解決手段】本発明の洗濯機は、外槽内に配置された脱水槽と、脱水槽の外周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部と、注水部の各々に調整水を注水可能な注水装置とを備える。脱水槽は、その外周面に対して取り付けられるカバー部材を有しており、注水部が、カバー部材と脱水槽の外周面との間に設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽内に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の外周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部と、
前記注水部の各々に調整水を注水可能な注水装置とを備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記脱水槽は、その外周面に対して取り付けられるカバー部材を有しており、
前記注水部が、前記カバー部材と前記脱水槽の外周面との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記脱水槽は、その外周面に対して取り付けられる箱状のカバー部材を有しており、
前記注水部が、前記カバー部材の内部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記脱水槽の外周面と前記カバー部材との間に、隙間が形成されることを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記カバー部材は、ガラス入り樹脂で形成されることを特徴とする請求項2~4の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における脱水槽の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
従来より、洗濯脱水槽の内周面において周方向に等間隔に配置されたバッフルを有する洗濯機がある(例えば、特許文献1参照)。各バッフルは、洗濯脱水槽の底部から上端部に亘って上下方向に延びるように形成される。バッフルの下端部に、洗濯脱水槽の底部近傍で開口する開口部が形成され、バッフルの上端部に、循環水口が形成される。そのため、洗い工程では、パルセータの下羽根部で撹拌された洗濯水が開口部より浸入してバッフル内をかけあがり、循環水口より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。
【0003】
洗濯機では、洗い工程の後で脱水工程が行われるのが一般的であるが、脱水時に洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の洗濯脱水槽の偏心が大きくなり、回転に大きなトルクが必要となるので脱水運転を開始することができない。そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯脱水槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、洗濯脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより洗濯脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機において、バッフルは、脱水槽の内周面から内側に向かって突出するように形成され、洗濯脱水槽のアンバランス状態を解消するために調整水が注水される注水管としての役割も有している。このように、バッフルが脱水槽の内周面から突出している場合、脱水槽内の容積が小さくなるとともに、洗い工程で洗濯物が脱水槽内を回転する際に、脱水槽内のバッフルに引っ掛かって洗濯物が傷みやすい問題がある。
【0006】
また、特許文献1のような洗濯機において、耐久性と清潔性を高めたステンレス脱水槽が採用される場合があるが、バッフルが脱水槽の内周面に設けられる場合、脱水槽の内周面の大部分がバッフルにより隠れてしまうため、ステンレス脱水槽の有効性が低下してしまう問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、脱水槽のアンバランス状態を解消するために調整水が注水される注水部が脱水槽の内周面に設けられることにより発生する問題を解消する洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る洗濯機は、外槽内に配置された脱水槽と、前記脱水槽の外周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部と、前記注水部の各々に調整水を注水可能な注水装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽は、その外周面に対して取り付けられるカバー部材を有しており、前記注水部が、前記カバー部材と前記脱水槽の外周面との間に設けられることが好適である。
【0010】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽は、その外周面に対して取り付けられる箱状のカバー部材を有しており、前記注水部が、前記カバー部材の内部に設けられることが好適である。
【0011】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽の外周面と前記カバー部材との間に、隙間が形成されることが好適である。
【0012】
本発明に係る洗濯機において、前記カバー部材は、ガラス入り樹脂で形成されることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調整水が注水される注水部が脱水槽の外側に配置されるため、注水部が脱水槽の内側に形成される場合と比べて、脱水槽の投入口が大きくなり且つ脱水槽内の容積が大きくなるとともに、洗い工程で洗濯物が脱水槽内を回転する際に、脱水槽内の注水部に引っ掛かって洗濯物が傷むのを防止できる。また、耐久性と清潔性を高めたステンレス脱水槽を採用した場合でも、注水部が脱水槽の内側に形成される場合のように脱水槽の内周面の大部分が注水部により隠れることがないため、脱水槽の内周面の全体を清潔に維持することができる。また、調整水が各注水部に注水された際に、注水部が脱水槽の内側に形成される場合と比べて、注水部と脱水槽の回転軸との距離が大きくなる。そのため、注水部内の調整水に作用する遠心力が大きくなり、偏芯荷重を効果的に打ち消すことができる。
【0014】
本発明によれば、カバー部材を脱水槽の外周面に対して取り付けることで注水部が設けられるため、注水部が脱水槽の内側に形成される場合のように2つの樹脂部材を箱状に溶着して注水部を形成する必要がない。そのため、洗濯機の製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明によれば、箱状のカバー部材を脱水槽の外周面に対して取り付けることで注水部が設けられるため、注水部内の調整水が漏れるのを確実に防止することができる。
【0016】
本発明によれば、脱水槽の通水孔から外側に向かって流出した水が、脱水槽の外周面とカバー部材との間に形成される隙間を流れるため、脱水槽の外周面を洗浄でき、脱水槽の外周面をきれいな状態で維持できる。
【0017】
本発明によれば、注水部が脱水槽の内側に形成する場合、注水部に作用する遠心力を脱水槽で受けることができるが、注水部が脱水槽の外側に形成する場合、注水部に作用する遠心力を脱水槽内側からのネジによって受けるため、注水部(カバー部材)をネジ留めするためのボスの強度が必要となるが、カバー部材が脱水槽内の洗濯物に触れることがないため、ガラス強化樹脂を使用することでカバー部材の強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
【
図6】
図1の洗濯機1と従来の洗濯機501とを比較した図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る洗濯機101の内部の上面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7の洗濯機101の内部の縦断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)の部分拡大図である。
【
図9】カバー部材110の外観を示す斜視図である。
【
図10】
図10(a)は、カバー部材110を構成する開放部材10の外観を示す斜視図であり、
図10(b)は、カバー部材110を構成する閉塞部材110aの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態の洗濯機1の内部の上面図であり、
図4は、洗濯機1の内部の縦断面図である。
【0021】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、脱水槽2と、外槽3と、注水装置30と、駆動部50とを備える。
【0022】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0023】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。外槽3の底面には、排水配管3nが接続される。
図2に示すように、外槽3の外周面3aには、水平と垂直の2方向の加速度を検出可能な加速度センサ58が取り付けられる。本実施形態では、加速度センサ58により外槽3の加速度が検出されるが、脱水槽2の加速度は、外槽3の加速度と略同一であるとする。
【0024】
脱水槽2は、洗濯槽を兼ねるものであり、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その内周面2aに多数の通水孔2t(
図4参照)を有する。
【0025】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。
図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0026】
注水装置30は、後述する3つの注水部8に個別に調整水を注水するものである。注水装置30は、3つの注水部8にそれぞれ接続された3本の注水ホース30aを有し、注水ホース30aには、給水バルブ31aがそれぞれ配置される。注水ホース30aは、3つの注水部10と同数だけ設けられ、3つの注水部10と連通する受水リングユニット5の上方に配置される。本実施形態では、調整水として水道水が用いられる。
【0027】
受水リングユニット5は、
図2に示すように、上方に向けて開放された環状の導水樋5a,5b,5cを有しており、脱水槽2の上端部に固定される。導水樋5a,5b,5cは、径方向に三層重層されて構成されており、単独で何れかの注水部8に調整水を流せるように形成される。
【0028】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0029】
図3及び
図4に示すように、脱水槽2の内周面2aには、周方向に等間隔(等角度)でバッフル6が3つ設けられる。各バッフル6は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。各バッフル6は、
図2に示すように脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2aから脱水槽2の回転軸S1に向けて突出して形成される。バッフル6の上端部には、横長の循環水口6aが形成される。
【0030】
また、バッフル6の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部6cが形成される。各バッフル6は、洗い工程においてパルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水を脱水槽2の上端部に向かって通過させて循環水口6aから吐出する。
【0031】
そのため、排水配管3nに取り付けられた排水バルブ3n
a(
図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、
図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部6cより浸入してバッフル6内をかけあがり、循環水口6aより吐出され、衣類がシャワー洗いされる。この動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。
【0032】
また、脱水槽2の外周面2bには、
図3に示すように、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するために調整水が注水される注水部8が3つ設けられる。注水部8は、脱水槽2の外周面2bに周方向に等間隔(等角度)で設けられる。各注水部8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。注水部8の周方向中央部は、バッフル6の周方向中央部の径方向外側に配置される。各注水部8と各バッフル6とは、別々の空間として形成される。
【0033】
具体的には、脱水槽2の外周面2bには、3つのカバー部材10が取り付けられる。3つのカバー部材10は、脱水槽2と一体となって回転する。カバー部材10は、
図5に示すように、脱水槽2の外周面2bと略同一の曲率を有するように円弧状に湾曲した部材である。カバー部材10は、例えばガラス入り樹脂で形成される。カバー部材10は、その内側面が開放された部材であり、略矩形状の外壁部11と、外壁部11と一体に外壁部11の下端部から下方に延びるように形成される排水部12とを有している。排水部12の左右方向に延びる幅は、外壁部11の左右方向に延びる幅よりも小さい。排水部12左右方向中央部は、外壁部11の下端部の左右方向中央部と一致するように配置される。なお、カバー部材10は、脱水槽2の内周面2aに形成された取付穴に径方向内側から径方向外側に向かって挿入されたボルトにより、脱水槽2の外周面2bに対して取り付けられる。
【0034】
カバー部材10の内周面(カバー部材10が脱水槽2の外周面2bに取り付けられた際に脱水槽2の外周面2bと対向する面)には、凹部13が形成される。そのため、カバー部材10を脱水槽2の外周面2bに取り付けると、カバー部材10の内周面と脱水槽2の外周面2bとの間に、調整水が注水される空間である注水部8が形成される。注水部8は、脱水槽2の外周面2bに沿うように形成される。なお、
図4に示すように、脱水槽2の外周面2bにおいて、カバー部材10が取り付けられる部分(
図4で点線で囲まれた範囲)には、通水孔2tが形成されていない。
【0035】
各カバー部材10の上端には、調整水を注水するための注水管16が取り付けられており、注水管16は、受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5cの何れかに接続される。そのため、カバー部材10が脱水槽2の外周面2bに取り付けられた状態で、調整水が注水部8内に注水されると、調整水は、外壁部11の内部を通過した後で、排水部12の内部を通過して、排水部12の下端から排水される。
【0036】
カバー部材10の内周面において、外壁部11の下端部には、円弧状に湾曲した水受け板18が設けられる。水受け板18は、板状であり、外周壁11の内周面から突出するように形成される。水受け板16は、その上面が略水平となるように形成される。
【0037】
このように、カバー部材10が脱水槽2の外周面2bに取り付けられた状態において、水受け板18は、注水部8の内部において外周壁11から内側に向かって突出するが、水受け板18の突出量は、凹部13の深さよりも小さい。そのため、外壁部11の下端部(排水部12の上端部)において、水受け板18の先端(径方向内側端部)と脱水槽2の外周面2bとの間には、空隙が形成されており、外壁部11の内部にある調整水は、その空隙を介して水受け板18より下方に流れる。
【0038】
なお、脱水工程において脱水槽2が回転した状態で注水部8に調整水が注水されると、調整水は遠心力によりカバー部材10の外周壁11の内周面に貼りつくため、調整水が注水部8内の水受け板18より上方に保持される。
【0039】
これに対して、脱水工程において脱水槽2の回転数が小さくなると遠心力が小さくなり、水受け板18の上方に保持されていた調整水は、カバー部材10の外周壁11の内周面に貼り付かなくなり、水受け板18の先端と脱水槽2の外周面2bとの間の隙間を介して排水される。
【0040】
図6(a)は、本実施形態の洗濯機1の内部の部分的な断面を示す模式図を示し、
図6(b)は、従来の洗濯機501の内部の部分的な断面を示す模式図を示している。
【0041】
本実施形態の洗濯機1では、
図6(a)に示すように、注水部8が、脱水槽2の外周面2bと外槽3の内周面との間に設けられる。そのため、
図6(b)に示すように、注水部8が、脱水槽2の内周面2aの内側に設けられる場合と比べて、脱水槽2の上端部に設けられた受水リングユニット5の位置が、径方向外側に配置される。よって、本実施形態の洗濯機1では、受水リングユニット5の内側に形成される投入口の大きさ(面積)が、脱水槽2の内周面2aの内側に設けられる場合よりも大きくなる。
【0042】
本実施形態の洗濯機1では、近接スイッチ55がマーカー52a(
図2参照)を検知すると、加速度センサ58からの水平方向と垂直方向の加速度の大きさからアンバランス量が算出されるとともに、加速度センサ58からの水平方向と垂直方向の加速度を示す信号と近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出する。
【0043】
アンバランス量とアンバランス位置を示す信号に基づいて、脱水槽2内の何れの注水部8に給水を行うかおよびその給水量を予め格納される制御プログラムに基づいて判断する。なお、脱水槽2内の何れの注水部8に給水を行うかについては、脱水槽2内においてアンバランスの要因となっている洗濯物の塊がある位置と対向する位置にある注水部8が選定される。そして選定した注水部8に接続された給水バルブ31aを開き、調整水の注水を行い、注水部8によりアンバランスが解消されたとき、調整水の注水を停止する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の洗濯機1は、外槽3内に配置された脱水槽2と、脱水槽2の外周面2bに対して周方向に等間隔で配置される3つ以上の注水部8と、注水部8の各々に調整水を注水可能な注水装置30とを備える。
【0045】
このような構成であると、調整水が注水される注水部8が脱水槽2の外側に配置されるため、注水部8が脱水槽2の内側に形成される場合と比べて、脱水槽2の投入口が大きくなり且つ脱水槽2内の容積が大きくなるとともに、洗い工程で洗濯物が脱水槽2内を回転する際に、脱水槽2内の注水部8に引っ掛かって洗濯物が傷むのを防止できる。また、耐久性と清潔性を高めたステンレス脱水槽を採用した場合でも、注水部8が脱水槽2の内側に形成される場合のように脱水槽2の内周面2aの大部分が注水部8により隠れることがないため、脱水槽2の内周面2aの全体を清潔に維持することができる。また、調整水が各注水部8に注水された際に、注水部8が脱水槽2の内側に形成される場合と比べて、注水部8と脱水槽2の回転軸S1との距離が大きくなる。そのため、注水部2内の調整水に作用する遠心力が大きくなり、偏芯荷重を効果的に打ち消すことができる。
【0046】
本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2は、その外周面2bに対して取り付けられるカバー部材10を有しており、注水部8が、カバー部材10と脱水槽2の外周面2bとの間に設けられる。
【0047】
このような構成であると、カバー部材10を脱水槽2の外周面2bに対して取り付けることで注水部8が形成されるため、注水部8が脱水槽2の内側に形成される場合のように2つの樹脂部材を箱状に溶着して注水部8を形成する必要がない。そのため、洗濯機1の製造コストを低減することができる。
【0048】
本実施形態の洗濯機1において、カバー部材10は、ガラス入り樹脂で形成される。
【0049】
このような構成であると、注水部8が脱水槽2の内側に形成する場合、注水部8に作用する遠心力を脱水槽2で受けることができるが、注水部8が脱水2槽の外側に形成する場合、注水部8に作用する遠心力を脱水槽2内側からのネジによって受けるため、注水部8(カバー部材10)をネジ留めするためのボスの強度が必要となるが、カバー部材10が脱水槽2内の洗濯物に触れることがないため、ガラス強化樹脂を使用することでカバー部材10の強度を高くすることができる。
【0050】
(第2実施形態)
本実施形態の洗濯機101が、第1実施形態の洗濯機1と異なる点は、第1実施形態では、注水部8がカバー部材10と脱水槽2の外周面2bとの間に設けられるのに対して、本実施形態では、注水部108が脱水槽2の外周面2bよりも外側に配置された箱状のカバー部材110の内部に設けられる点である。なお、本実施形態の洗濯機101の構成で、第1実施形態の洗濯機1の構成と同様である部分については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図7は、本発明の第2実施形態に係る縦型の洗濯機101の内部の上面図であり、
図8は、洗濯機101の内部の縦断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)の実線で囲まれた部分の拡大図である。
【0052】
本実施形態の洗濯機101の脱水槽2の外周面2bには、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するための調整水が注水される注水部108が3つ設けられる。注水部108は、脱水槽2の外周面2bに周方向に等間隔(等角度)で設けられる。各注水部108は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。注水部108の周方向中央部は、バッフル6の周方向中央部の径方向外側に配置される。各注水部8と各バッフル6とは、別々の空間として形成される。
【0053】
具体的には、脱水槽2の外周面2bには、3つのカバー部材110が取り付けられる。3つのカバー部材110は、脱水槽2と一体となって回転する。カバー部材110は、
図9に示すように、脱水槽2の外周面2bと略同一の曲率を有するように円弧状に湾曲した部材である。カバー部材110は、例えばガラス入り樹脂で形成される。カバー部材110は、その内側面が開放された開放部材10と、開放部材10の内側に溶着された閉塞部材110aとを有している。開放部材10は、第1実施形態のカバー部材10と略同一形状であるため、詳細な説明は省略する。なお、カバー部材110は、閉塞部材110aに形成されたボスに対して脱水槽内側からネジ留めすることにより、脱水槽2の外周面2bに対して取り付けられる。
【0054】
閉塞部材110aは、略矩形状の内壁部113と、内壁部113と一体に内壁部113の下端部から下方に延びるように形成される排水部114とを有している。内壁部113は、外壁部11と略同一の大きさであり、排水部114は、排水部12と略同一形状の大きさである。そのため、閉塞部材110aを、その内壁部113が外壁部11と対向し且つ排水部114が排水部12と対向するように開放部材10の内周面に溶着することにより、開放部材10と閉塞部材110aとの間に調整水が注水される空間である注水部108が形成される。このように、カバー部材110は箱状に形成される。
【0055】
また、閉塞部材110aの内周面には、5つの突起部113aが形成される。カバー部材110が脱水槽2の外周面2bに取り付けられた状態において、突起部113aは、閉塞部材110aの内周面から脱水槽2の外周面2bに向かって突出するように形成される。5つの突起部113aは、円弧状に湾曲しており、上下方向に離れて配置される。カバー部材110を脱水槽2の外周面2bに取り付けると、閉塞部材110aの内周面に形成された5つの突起部113aの先端が脱水槽2の外周面2bに当接することにより、カバー部材110の内周面(閉塞部材110aの内周面)と脱水槽2の外周面2bとの間に、突起部113aの高さと略同一の幅を有する隙間Tが形成される。
【0056】
なお、
図8に示すように、脱水槽2の外周面2bにおいて、カバー部材110が取り付けられる部分(
図8で点線で囲まれた範囲)には、通水孔2tが形成されている。そのため、脱水工程において脱水槽2が回転している際、脱水槽2内の水が通水孔2tを介して隙間Tに流出し、その水は円周方向に広がるように流れる。
【0057】
本実施形態の洗濯機101では、第1実施形態の洗濯機1と同様の効果が得られる。
【0058】
本実施形態の洗濯機101において、脱水槽2は、その外周面2bに対して取り付けられる箱状のカバー部材110を有しており、注水部108が、カバー部材110の内部に設けられる。
【0059】
本発明によれば、箱状のカバー部材110を脱水槽2の外周面2bに対して取り付けることで注水部108が設けられるため、注水部108内の調整水が漏れるのを確実に防止することができる。
【0060】
本実施形態の洗濯機101において、脱水槽2の外周面2bとカバー部材110との間に、隙間Tが形成される。
【0061】
本発明によれば、脱水槽2の通水孔2tから外側に向かって流出した水が、脱水槽2の外周面2bとカバー部材110との間に形成される隙間Tを流れるため、脱水槽2の外周面2bを洗浄でき、脱水槽2の外周面2bをきれいな状態で維持できる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0063】
例えば上記第1実施形態では、脱水槽2の外側に、脱水槽2の内側に設けられた3つのバッフル6と同数の3つの注水部8が設けられているが、それに限られない。脱水槽2の外側に設けられる注水部8の数は任意である。また、注水部8は、その左右方向中央部がバッフル6の左右方向中央部の径方向外側に配置されているが、注水部8及びバッフル6の位置は任意である。注水部8の数とバッフル6の数とは異なってもよい。また、バッフル6が設けられてない脱水槽2の外側に、注水部8が設けられてもよい。その点は、上記第2実施形態についても同様である。
【0064】
上記第1実施形態では、その内側面が開放されたカバー部材10が脱水槽2の外周面に取り付けられることにより注水部8が脱水槽2の外側に設けられ、上記第2実施形態では、箱状のカバー部材110が脱水槽2の外周面に取り付けられることにより注水部108が脱水槽2の外側に設けられるが、それらに限られない。上記第1及び第2実施形態において、注水部8,108が脱水槽2の外側に設けられ且つ脱水槽2と一体となって回転するように構成されていれば、注水部8,108を設けるためのカバー部材10,110の構成(例えば形状や大きさなど)に任意である。
【0065】
上記第2実施形態では、脱水槽2の外周面2bとカバー部材110との間に隙間Tが形成されるが、それに限られない。例えば、カバー部材110の閉塞部材110aの内周面に突起部113aが形成されてなく、カバー部材110が、脱水槽2の外周面2bとの間に隙間Tが形成されないように取り付けられてもよい。
【0066】
上記第1及び第2実施形態では、カバー部材10,110がガラス入り樹脂で形成される場合を説明したが、カバー部材10,110の材質は任意である。
【0067】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 洗濯機
2 脱水槽
2a 脱水槽の内周面
2c 脱水槽の外周面
3 外槽
4 パルセータ
6 バッフル
8 注水部
10 カバー部材
30 注水装置
101 洗濯機
108 注水部
110 カバー部材
T 隙間