(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035718
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】キックセンサー性能評価治具
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20230306BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20230306BHJP
【FI】
G01V3/08 D
E05F15/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142769
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(71)【出願人】
【識別番号】521387523
【氏名又は名称】有限会社フィットサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】竜口 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 尚
(72)【発明者】
【氏名】荒川 慎一
【テーマコード(参考)】
2E052
2G105
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA07
2E052GA07
2E052GB01
2G105AA01
2G105BB04
2G105EE01
2G105HH02
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されるキックセンサーの性能評価において、人が実際にキック動作を行う場合と同様の結果が得られると共に、キック動作の振り上げ角度及び動作の速度を制御することで精度の高い評価結果が得られるキックセンサーの性能評価治具を提供する。
【解決手段】支持機枠と、支持機枠に支持される駆動源と、駆動源の動力により前後揺動可能な状態で設けられる脚本体部と、脚本体部の下部に回動可能に設けられた足部と、脚本体部と共にリンク機構を構成する連結アームと、脚本体部の揺動に伴って脚本体部に対する足部の角度を変化させる連動機構と、から構成されることにより課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化を検知し人のキック動作を検出するキックセンサーの性能を評価するためのキックセンサー性能評価治具であって、
支持機枠と、
前記支持機枠に支持される駆動源と、
前記駆動源の動力により前後揺動可能な状態で設けられる脚本体部と、
前記脚本体部の下部に回動可能に設けられた足部と、
前記脚本体部と共にリンク機構を構成する連結アームと、
前記脚本体部の揺動に伴って前記脚本体部に対する前記足部の角度を変化させる連動機構と、から構成されることを特徴とするキックセンサー性能評価治具。
【請求項2】
前記連動機構は、前記脚本体部と前記連結アームとの連結部分に設けた枢軸により回動する第一回転体と、
前記脚本体部と前記足部との連結部分に設けた枢軸により回動する第二回転体と、
前記第一回転体と前記第二回転体との間に懸架される無端状の連動帯体と、からなることを特徴とする請求項1に記載のキックセンサー性能評価治具。
【請求項3】
前記脚本体部及び前記足部の少なくともどちらか一方には、人の足を模した疑似足カバーが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキックセンサー性能評価治具。
【請求項4】
前記キックセンサーにより検出される静電容量を補正するために、地面に対する人の静電容量を再現したコンデンサを備えたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のキックセンサー性能評価治具。
【請求項5】
前記駆動源の動作を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のキックセンサー性能評価治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式キックセンサーの性能評価を行うキックセンサー性能評価治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式キックセンサーの性能評価を行うに際して、実際に作業員がキック動作をして性能評価を行っていた。
しかしながら、実際に作業員がキック動作を行うには多大な労力と時間を有し、さらに必ずしも一定の動作を行うことができないため評価結果にバラつきが生じることがあった。
【0003】
そこで、近年人の足を模した治具を振り子式に前後方向へ揺動することで、作業員がキック動作を行わずともキックセンサーの性能を評価できる評価治具が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の評価治具は、振り子式の動作でキックセンサーの物体検出を可能としているが、人の足の動きまでは模しておらず、実際に人が使用する場合の反応と異なる評価をしてしまう虞があった。
【0005】
また、評価対象であるキックセンサーは静電容量の変化を検知する静電容量式のものであり、治具を振り子式に動作させた場合の静電容量の変化は、実際に人がキック動作を行った場合の静電容量の変化と異なるため、評価の精度が十分ではなかった。
【0006】
また、従来の評価治具は、作業員が手動で上方へ回動させ振り子動作の初動としていたため、治具の軌跡は一定となるものの速度を毎回一定とすることが困難でありセンサーの反応にバラつきが生じる虞があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、正確なキックセンサーの性能評価を行うことができるキックセンサー性能評価治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、支持機枠と、支持機枠に支持される駆動源と、駆動源の動力により前後揺動可能な状態で設けられる脚本体部と、脚本体部の下部に回動可能に設けられた足部と、脚本体部と共にリンク機構を構成する連結アームと、脚本体部の揺動に伴って脚本体部に対する足部の角度を変化させる連動機構と、から構成したことに特徴を有する。
【0009】
また、連動機構は、脚本体部と連結アームとの連結部分に設けた枢軸により回動する第一回転体と、脚本体部と足部との連結部分に設けた枢軸により回動する第二回転体と、第一回転体と第二回転体との間に懸架される無端状の連動帯体と、からなることにも特徴を有する。
【0010】
また、脚本体部及び足部の少なくともどちらか一方には、人の足を模した疑似足カバーを被覆していることにも特徴を有する。
【0011】
また、キックセンサーにより検出される静電容量を補正するために、地面に対する人の静電容量を再現したコンデンサを備えたことにも特徴を有する。
【0012】
また、駆動源の動力を電気的に制御することができる制御装置を備えたことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、駆動源からの動力により脚本体部を前後に揺らしキック動作を再現することで、従来の性能評価時に行っていた人手による治具の揺動作業が不要となると共に、一定の速度でのキック動作の再現が可能となりより正確なキックセンサーの性能評価を行うことができる。
【0014】
また、請求項1及び請求項2の発明によれば、連動機構により脚本体部の揺動に連動し脚本体部に対する足部の角度を変化させることで、実際に人がキック動作を行った際に生じる足首の回動、すなわち足先の伸び動作の再現が可能となり、より正確なキックセンサーの性能評価を行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、人の足を模した疑似足カバーを脚本体部及び足部の少なくともどちらか一方に被覆して、キックセンサーに検知されるキックセンサー性能評価治具の面積を人の足の面積に近似させることにより、実際に人がキック動作を行った場合の静電容量の変化を再現することができ、同等の結果を得ることが可能となる。
【0016】
キックセンサーが検知する静電容量は、実際に人がキック動作を行う際にキックセンサーと足との間で変化する静電容量とは別に地面に対する人の静電容量も含まれており、請求項4に記載の発明によれば、キックセンサー性能評価治具に上記した地面に対する人の静電容量を再現したコンデンサを備え補正を行うことで、実際に人がキック動作を行った場合と同等の状態を再現し、より正確なキックセンサーの性能評価を行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、キックセンサー性能評価治具の動作を電気的に制御し、キック動作における振り上げ角度や振り上げ速度の変更を自在とすることができ、センサーの感度調整(キック動作か否かの判定)が正確であるかの評価を行うことを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキックセンサー性能評価治具の使用状態を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るキックセンサー性能評価治具の構成を説明するための右側面図及び斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るキックセンサー性能評価治具の構成を説明するための模式的分解図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る平行リンク機構の動きを説明するための模式的説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る疑似足カバーを示す模式的斜視図である。
【
図6】人がキック動作を行った際に生じる静電容量を示す模式的回路図及び本発明の一実施形態に係るキックセンサー性能評価治具がキック動作を行った際に生じる静電容量を示す模式的回路図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る静電容量と時間の関係を示す模式的グラフ図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る静電容量と時間の関係を示す模式的グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、静電容量の変化を検知する静電容量式キックセンサーの性能評価を行うにあたり、実際に人がキック動作を行った場合の動作である脚の振り上げ振り下ろしや脚の振り上げ時の足先の伸び(足首の回動動作)を再現することで、従来の単なる振り子式の治具に比してより正確な性能評価を行えるようにしたことにある。
【0020】
また、キックセンサーにより検知される静電容量の変化は、センサーに物体が近づくほどに大きい値となる。すなわち、検知される静電容量はキックセンサーの検知範囲に侵入した物体の面積により変化する。そのため、キックセンサー性能評価治具は人の足を模した疑似足カバーを被覆したことにより、キックセンサーに向かって人が実際にキック動作を行った場合のキックセンサーと人の足との間に生じる静電容量の変化を再現できることにも特徴を有する。
【0021】
また、実際に人がキック動作を行った場合には、上述したキックセンサーと足との間に生じる静電容量とは別に地面に対する人の静電容量の値もキックセンサーの反応に大きく影響を及ぼす。そのため、地面に対する人の静電容量を再現したコンデンサを備え、キックセンサー性能評価治具に生じる静電容量を補正することにより、実際に人がキック動作を行った場合との誤差を少なくしたことにも特徴を有する。
【0022】
また、キックセンサーの性能評価を実際に行う際に、脚の振り上げ角度や一連のキック動作による所要時間などの様々な条件を変えることにより、キックセンサーそのものの性能評価及び扉の開閉指示が正しく設定されているか否かの判定を行う。そのため、駆動源の動力を電気的に制御することにより、振り上げ角度及び振り上げ速度を機械的に変化可能にすると共に全く同じ条件を繰り返すことを可能にしていることにも特徴を有する。
【0023】
[1.キックセンサー性能評価治具の構成について]
本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具の構成について図面を用いて説明していく。本発明の実施の形態では、本発明に係るキックセンサー性能評価治具を、自動車の後部バンパー下に設けられるキックセンサーの性能評価に用いる場合を例にとって説明する。ただし、本発明に係るキックセンサー性能評価治具による評価対象は、自動車の後部バンパー下に設けられるキックセンサーに限らず、例えば自動車の側方下に設けられサイドドアの開閉を行うキックセンサー等、静電容量式のセンサーを用いるものでキック動作を検知するものであればどのようなものであってもよい。
【0024】
図1に示す符号Sはキックセンサーを示し、符号VはキックセンサーSを搭載した車両を示している。
本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mは、
図1~
図3に示すように、主に地面G上に設置される支持機枠100と、支持機枠100に支持される駆動源210と、駆動源210の動力により前後揺動可能な状態で設けられる脚本体部310と、脚本体部310の下部に回動可能に設けられた足部320と、脚本体部310と共にリンク機構Lを構成する連結アームと、脚本体部310の揺動に伴って脚本体部310に対する足部320の角度を変化させる連動機構500と、から構成される
以下、キック動作の方向、すなわち足部320のつま先側(
図1及び
図2(a)は左側面図を示す)を正面として説明する。
【0025】
支持機枠100は、
図2及び
図3に示すように、地面Gに載置され角材状のフレーム部材を平面視略コの字状に形成した土台フレーム110と、土台フレーム110に立設され角材状のフレーム部材を正面視門型に形成した支持フレーム120と、支持フレーム120の両側面に上下所定間隔に設けた取付け金具130と、取付け金具130に着脱自在とすると共に、後述する駆動源210を備えた駆動ユニット200との組付けを可能とした組付け具140と、より構成される。
【0026】
組付け具140は、左右外側に位置する側面部と上下の面部とを有し、これらの面部により正面視略コ字状をなし、開口部141側を支持フレーム120の内側(左右内側)とする向きで、取付け金具130にボルトナット等を用いて固定される。左右の組付け具140は、支持フレーム120を構成する各支柱部に対して、互いに同じ高さ位置において開口部141側を対向させた状態で設けられている。また、本実施形態では、支持フレーム120の両側面に所定間隔で上下に三つずつの取付け金具130を設け、組付け具140は一番高い位置の取付け金具130に固定されている(
図1~3参照)。ただし、後述する組み換え可能な脚ユニット300の種類によって適宜組付け具140の取付け位置を変更することができる。
また、取付け金具130は支持機枠100の左右両側面に三つずつ設けた構成としているが、必ずしもこれに限られるものではなく、両側面に少なくとも一つずつ以上設けられるとよい。
【0027】
駆動源210は、
図2及び
図3に示すように、主に略L字状の駆動源取付け具220と、駆動源210からの動力を伝達する動力伝達部230と、動力伝達部230を支持すると共に支持機枠100への取り付けを可能とした伝達部支持体240とともに、駆動ユニット200を構成している。
駆動ユニット200は、後述する脚ユニット300の取付けを受け、脚ユニット300が行うキック動作のための動力を生成する。
【0028】
駆動源取付け具220は、略L字状の屈曲形状を有する屈曲板状の部材であり、駆動源210の直方体状の外形にL字を沿わせ、モータ等からなる駆動源210の取付けを受ける。駆動源取付け具220は、L字状をなす一方の板面部を駆動源210の下側に位置させるとともに他方の板面部を駆動源210の左側に位置させ、駆動源210を支持している。また、駆動源取付け具220の他方の板面部には、図示しない挿通孔が設けられている。この挿通孔は、駆動源210の動力を出力するための出力軸211を挿通するための開口である。駆動源210は、出力軸211の突出方向を左方とする向きで設けられている。
【0029】
上述した駆動源210から延出された出力軸211の端部側には、出力軸211と一体に回転する出力プーリ231が設けられている。
【0030】
伝達部支持体240は、左右の側壁と上面部とを有し、これらにより正面視略コ字状をなし、開口側を下側へ向けて設けられている。伝達部支持体240は、左右の側壁を後方(
図1及び
図2(a)における右方向)へ延伸させ、支持機枠100に設けられた組付け具140の開口部141へ差込み取り付け可能とした機枠取付け部241(
図3を参照)を形成している。具体的には、機枠取付け部241は、上下方向の寸法を、組付け具140における上下の面部間の間隔と略同じとし、組付け具140をガイドレールとした態様で、前側から組付け具140に挿嵌された状態で取り付けられる。
【0031】
伝達部支持体240は、上面部の上部に、駆動源210を取付けた駆動源取付け具220を取付け支持している。伝達部支持体240のコ字状の内部には、脚ユニット300を取付ける脚ユニット取付け部251を備えた駆動軸250が横架するように設けられている。
【0032】
駆動軸250は、駆動源210から延出された出力軸211と同一方向へ延出し、伝達部支持体240の図示しない挿通孔より外側へ挿通される。駆動軸250の端部側には駆動軸250と一体に回転する駆動プーリ232が設けられている。
【0033】
動力伝達部230は、上述した出力プーリ231と駆動プーリ232と二つのプーリ231、232との間に懸架される無端状の連動帯体である伝達ベルト233とからなる。動力伝達部230は、駆動源210から延出された出力軸211の回転動力を駆動軸250へ伝達させる。具体的には、出力軸211と一体に出力プーリ231は回転し、伝達ベルト233を介してその回転動力を駆動プーリ232へ伝えることで駆動プーリ232と一体となっている駆動軸250を回転させる。
【0034】
本実施形態において動力伝達部230は、駆動源210からの動力を駆動軸250へ伝達させるために、二つのプーリ231、232とそれぞれに懸架される無端状ベルト(伝達ベルト233)により構成しているが、これに限定されるものではなく、例えばスプロケットとチェーンから構成されるものであってもよい。
また、上述したように、駆動ユニット200は、伝達部支持体240に形成した機枠取付け部241を支持機枠100に設けられた組付け具140に差込む取付け方法とすることにより、比較的重量物となりやすい駆動ユニット200を持ち上げた状態でボルトナット等を締め付けるような煩雑な作業を必要とせず、容易に取付けることができる。
【0035】
脚本体部310は、
図2及び
図3に示すように、駆動ユニット200の脚ユニット取付け部251に対応し駆動軸250への取付けを可能とした駆動ユニット取付け部312を上部に備えた縦長板状の上腿部311と、上腿部311の下部に一体に設けられる縦長板状の下腿部313と、からなる。また、上腿部311及び下腿部313の接合部分には、後述する連結アーム400に設けられた第一枢軸421を挿通するための挿通孔(図示略)を、下腿部313の下部には、後述する第二枢軸321を挿通するための挿通孔(図示略)を、それぞれ穿設している。
【0036】
足部320は、側面視において人の足を模した形状を有する板状の部材により形成されると共に、下腿部313の下部に穿設された挿通孔に挿通する第二枢軸321を上部に備えている。すなわち、足部320は第二枢軸321を下腿部313の挿通孔に挿通することで取り付けることができる。足部320は、第二枢軸321により、下腿部313に対して回動可能に支持されている。
【0037】
上述した、脚本体部310と、足部320と、を合わせて脚ユニット300としている。脚ユニット300は、脚本体部310の上部に設けた駆動ユニット取付け部312により駆動軸250に取付けることで駆動軸250の回動に伴って、脚ユニット300全体を前後方向に振り子のように揺動させることができる。この駆動ユニット200への脚ユニット取り付けには、例えばボルトナットやビス等による方法が考えられる。また、本実施形態では、駆動ユニット200の下部に脚ユニット300を取付ける構成としているが、脚ユニット300が揺動可能に支持され、且つ駆動源210による動力を脚ユニット300へ伝達可能であれば、それぞれの取付け位置や形状等は限定されるものではない。
また、脚ユニット300は、上腿部311及び下腿部313の長さを変更した複数の種類を用意することが好ましい。これは実際にキック動作を行う人には体格差があり、体格差によりキックセンサーSの検知結果が異なるからである。したがって、脚ユニット300の長さは、日本人男性の平均の長さ、日本人女性の平均の長さ、アメリカ人男性の平均の長さ及びアメリカ人女性の平均の長さ等の使用者を想定した複数の種類を用意し、実際にはそれらの脚ユニット300を適宜交換しながらキックセンサーSの性能評価を行う。
【0038】
連結アーム400は、駆動ユニット200の後方側(
図1及び
図2における右側)に回動可能に設けられた縦アーム410と、縦アーム410の下部に回動可能、且つ地面Gと水平に設けられた横アーム420と、からなる。縦アーム410は、駆動ユニット200の左右の機枠取付け部241の後端部間に架設されたアーム支持板234に対して回動支持部235により回動可能に支持された状態で設けられる。回動支持235は、左右方向を軸方向として、縦アーム410の上端部を支承している。また、縦アーム410の下部には横アーム420を回動可能に枢支する枢支コマ411を備えている。横アーム420は、一端を縦アーム410の枢支コマ411により縦アーム410に回動可能に連結させている。横アーム420は、他端側に第一枢軸421を備え、脚本体部310の上腿部311と下腿部313との接合部分に穿設した挿通孔に第一枢軸421を挿通させた状態で、脚本体部310に対して支承されている。
したがって、連結アーム400を形成する縦アーム410は脚本体部310の上腿部311と平行に、横アーム420は駆動ユニット200の駆動軸250から駆動ユニット200に設けられる縦アーム410までを一直線で引いた地面Gと水平の線と平行にそれぞれ連結される。すなわち、脚本体部310と連結アーム400は、向かい合った辺同士を平行の関係としてそれぞれの辺の連結部を回動可能としたリンク機構Lを形成することとなる。リンク機構Lは、上下に対向する第1辺および第2辺をそれぞれ機枠取付け部241および横アーム420とし、前後に対向する第3辺および第4辺をそれぞれ上腿部311および縦アーム410とし、これらの第1~4辺により平行リンクをなすように構成されている。そして、上腿部311による第3辺を下方に延長させた態様で、上腿部311とともに直線状をなすように構成された下腿部313が設けられている。
【0039】
連動機構500は、連結アーム400に設けられた第一枢軸421と一体に回動する第一回転体510と、足部320に備えた第二枢軸321と一体に回動する第二回転体520と、二つの回転体510、520の間に懸架される無端状の連動帯体530と、から形成される。本実施形態を示す図において、連動機構500を構成する二つの回転体510、520と連動帯体530とは、それぞれプーリと無端状ベルトとして図示しているが、これに限定されるものではなく、例えばスプロケットとチェーンとで構成されたものであってもよい。
この連動機構500は、第一枢軸421と一体に回動する第一回転体510と、第一回転体510下方に設けられた第二回転体520との間に連動帯体530を懸架した構成を有する。このような構成においては、第二回転体520が、第一回転体510の回動に従動して回動する。また、第二回転体520は足部320に備えられた第二枢軸321と一体に設けられていることにより、上述した連結アーム400の横アーム420に設けられた第一枢軸421の回動により、第二枢軸321を回動させることができる。
【0040】
上述したリンク機構Lと連動機構500とは、脚ユニット300の脚本体部310のキック動作に伴い、足部320を回動させるように構成されている。すなわち、実際に人が脚を振り上げたときにおこる足首の伸び動作を再現することができる。ここで、脚本体部310のキック動作は、駆動軸250を回動中心として一体的に回動する上腿部311および下腿部313の前側への回動動作である。
具体的には、
図4(a)に示すように、脚本体部310がキック動作を行う前の状態から、駆動源210からの動力により、脚本体部310がキック動作を行うと、
図4(b)に示すように、脚本体部310と共にリンク機構Lを形成する連結アーム400の横アーム420が動作前と平行を保つように従動することとなる。この時、第一枢軸421は、実際に回転しないものの、脚本体部310との相対的な動きとして左側面視で反時計回りに回転した状態となる。すなわち、脚本体部310がキック動作を行う際には、駆動源210が左側面視で時計回りに動力を伝達させることとなるが、脚本体部310の時計回りの回動動作とリンク機構Lの横アーム420を動作前と平行に維持する動きとが第一枢軸421における相対変位を生起させ、結果として第一回転体510に懸けられた連動帯体530を反時計回りに回転させることとなる。そして、第一回転体510と共に連動帯体530を懸架する第二回転体520を反時計回りに回転させ、第二回転体520と一体とした第二枢軸321を回転させることで足首の伸び動作を再現することができる。
このようなリンク機構Lと連動機構500を用いることにより、キック動作に伴う足首の伸び動作を再現するにあたって、一つの駆動源210のみで行うことができる。
【0041】
本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mは、
図1~
図3に示すように、上述してきた構成に加え、人の足を模した疑似足カバー600と、地面Gに対する人の静電容量を再現するためのコンデンサ700と、駆動源210の動力を制御する制御装置800と、を備えている。
【0042】
ところで、キックセンサーSが検知する静電容量の変化は、物体がセンサーに近づいたり遠ざかったりすることで起こる。換言するならば、センサーの検知範囲に侵入した物体の面積によって静電容量の値は変化する。
そこで、キックセンサー性能評価治具Mは、キック動作を行う脚ユニット300に人の足を模した疑似足カバー600を取り付けることで、人がキック動作を行った場合のキックセンサーSとキックセンサー性能評価治具Mとの間に生じる静電容量の変化を再現することができる。
【0043】
疑似足カバー600は、
図1及び
図2に示すように、下腿部313の一部と足部320全体を被覆することで、人の足の面積や形状を再現することができる。
疑似足カバー600は、
図5に示すように、下腿部313を被覆する下腿カバー610と、足部320を被覆する足カバー620と、からなる。下腿カバー610と足カバー620とは、それぞれ人体の対応箇所に模した形状であり全体を非電気伝導性の樹脂素材で形成されるカバー本体601と、カバー本体601の正面側には電気伝導性フィルム602を貼着している。
【0044】
下腿カバー610は、後側および上下両側を開放側とした脛当状の形状を有する略半円筒状のカバー部材である。下腿カバー610は、下腿部313に対して、下腿部313の前側および左右両側を被覆するように取り付けられる。足カバー620は、後側および上側を開放側とした靴状の形状を有するカバー部材である。足カバー620は、足部320に対して、足部320の前側、上側および左右両側を被覆するように取り付けられる。下腿カバー610および足カバー620は、接着テープによる貼付けやボルト等の固定具による固定等の適宜の方法により、下腿部313または足部320に対して固定状態で取り付けられる。
【0045】
疑似足カバー600は、脚ユニット300に取り付けることにより、キックセンサーSに検知されることとなる足部320と下腿部313の下半部、すなわち人のつま先から脛あたりに対応する箇所を実際の人の足を模した形状とすることでキック動作時のキックセンサーSと足との間に生じる静電容量の変化を再現することができる。
【0046】
本実施形態において疑似足カバー600は、下腿部313の下半部と足部320の全体を覆うような構成としているが、脚ユニット全体を覆うような構成や、キックセンサーSの検知範囲に対応する箇所のみを覆うような構成であってもよい。また、下腿カバー610と足カバー620は、互いに一体的なカバー体として疑似足カバー600を構成するものであってもよい。また、脚ユニット300と疑似足カバー600を一体としたものも考えられる。
【0047】
上述したように疑似足カバー600を脚ユニット300に被覆することにより、キックセンサーSとキックセンサー性能評価治具Mとの間に生じる静電容量を再現することができるものの、実際に人がキックセンサーSに向けてキック動作を行う際には、地面Gに対する人の静電容量もキックセンサーSの検知に影響する。すなわち、脚ユニット300に疑似足カバー600を被覆したことで再現されたキックセンサーSと人の足との間で生じる静電容量の変化だけでは、実際に人がキック動作を行った場合にキックセンサーSが検知する静電容量に差異が生じる場合がある。
そこで、本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mは、地面Gに対する人の静電容量を再現したコンデンサ700を備えることで、キックセンサーSに検知される静電容量を補正し、より確実にキックセンサーSの性能評価を行うことができる。具体的には、
図6(a)に示すように、地面G上に立った状態の人PキックセンサーSへ向けてキック動作を行った場合には、静電容量として、キックセンサーSとの間に生じる静電容量Caとは別に、地面Gに対する人の静電容量Cbがある。そこで本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mは、
図6(b)に示すように、上述した人のキック動作を再現する構成と人の足を模した疑似足カバー600とにより、人の足とキックセンサーSとの間に生じる静電容量Caを再現している。さらに、地面Gに対する人Pの静電容量Cbに対しては、コンデンサ700をキックセンサー性能評価治具Mに設けることにより静電容量Cbを再現させている。このように、キックセンサー性能評価治具Mは、キックセンサーSにより検出される静電容量を補正するためのコンデンサ700を備えている。
【0048】
コンデンサ700は、
図1~
図3に示すように、支持機枠100に取付けられると共に、図示しない電気配線により疑似足カバー600の電気伝導性フィルム602に接続されている。また、このとき上述した疑似足カバー600は非電気伝導性の樹脂で形成されているため脚本体部310と電気的に切り離すことができ、駆動源210や後述する制御装置800などの影響を受けず、確実に地面Gに対する人の静電容量を疑似足カバー600前面に貼着した電気伝導性フィルム602に流すことができる。
すなわち、疑似足カバー600によりコンデンサ700とキックセンサー性能評価治具Mとを電気的に切り離すことができ、
図6(b)に示すように、キックセンサーSに検出される静電容量を、キックセンサーSとキックセンサー性能評価治具Mとの間に生じる静電容量Caと、コンデンサ700で再現した地面に対する人の静電容量Cbのみとすることができる。これにより、キックセンサー性能評価治具MによるキックセンサーSの評価精度を向上させることができる。
【0049】
本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mにおいて、コンデンサ700は支持機枠100の支持フレーム120(正面視において右側)に設けられているが、コンデンサ700が設けられる場所はこれに限定されず、キック動作の妨げとならない場所であればどこに設けられてもよい。
【0050】
キックセンサーSの性能評価を正しく行うためには、キックセンサー性能評価治具Mが繰り返し同じキック動作を行う必要がある。さらに、キック動作に係る時間や脚本体部310の振り上げ角度を制御することで、より確実な性能評価が行うことができる。
そこで、本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mは、
図1及び
図2に示すように、駆動ユニット200の上部に制御装置800を設けている。
【0051】
制御装置800は、キックセンサー性能評価治具Mの電源のОN/ОFFを行ったり角度や速度の変更操作を行ったりする複数の操作部810と、操作部810による設定状態を確認する表示部820と、を備えている。制御装置800は、例えば、各種演算処理や制御を実行する演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置、データ入出力用の入出力インターフェイス等の入出力装置、クロック回路等の周辺回路等をバス等により接続した構成を備える。制御装置800のCPUは、ROM等に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。
キックセンサー性能評価治具Mは、制御装置800を備えることで、駆動源210の動力を制御し一定のキック動作を繰り返し行うよう制御すると共に、キックセンサー性能評価治具Mが行うキック動作の振り上げ角度や一連のキック動作に係る速度の制御を行うことができる。
【0052】
本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具Mにおいて、制御装置800は駆動ユニット200の上部に設けられているがこれに限定されず、例えば支持フレーム120に設けてもよい。また、制御装置800はキックセンサー性能評価治具Mの動作制御を行い、その制御状態を確認できるものであればよく、操作部810と表示部820とは必ずしも同じ場所に設けられる必要はない。例えば、操作部810を支持フレーム120に設け、表示部820は性能評価の結果を表示させるコンピュータ内にソフトウェアとして設けられてもよい。
【0053】
[2.キックセンサーの性能評価方法について]
次に、本実施形態に係るキックセンサー性能評価治具を用いたキックセンサーの性能評価方法について図面を用いて説明していく。以下に説明するキックセンサーの性能評価方法は、制御装置800のCPUがRAM等の記憶装置に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0054】
図7及び
図8に示すグラフの縦軸は静電容量Cを、横軸は時間Tをそれぞれ表している。C1はキックセンサーSに予め設定された静電容量Cのしきい値を表し、T1はキックセンサーSに予め設定された時間Tのしきい値を表している。また、C2はキックセンサーSに検知された物体が人の足であると仮定した場合に反応する上限値を表し、T2はキックセンサーSに検出された動作がキック動作と仮定した場合の足の振り上げから振り下ろすまでの最速の時間よりも速い動作を除外するために設けられる第二のしきい値を表している。
【0055】
静電容量Cのしきい値C1は、予め設定したある一定の値である。制御装置800は、検知した静電容量Cが静電容量Cのしきい値C1を超えたか否かにより、接近する物体が人の足であるか否かの判定を行う。具体的には、キックセンサーSが検出する静電容量Cの値は物体の面積により変位し、物体がキックセンサーSに接近することでセンサーが検知する面積は相対的に大きくなり、それに応じて静電容量Cの値は大きくなる。
そのため、
図7(b)に示すように、静電容量Cのしきい値C1の値を下回る物体は、人の足の面積よりも小さいものと判断でき、例えば猫や小型犬等の動物やボール等が接近したと判断がされ人の足ではない、すなわち人のキック動作でないことを判定することができる。
【0056】
また、静電容量Cの値がしきい値C1を下回る場合には、キックセンサーSと物体との距離が遠い場合も考えられる。この場合キックセンサーSとの距離が遠いと上述したようにセンサーが検知する面積は相対的に小さくなってしまい、たとえ人の足と同等の面積を有した物体であっても人のキック動作であると検出されない。
これは、単にある程度の距離感でキック動作を行ったときにのみ扉の開閉の指示を出すというものではなく、キックセンサーSの検知範囲を評価することが可能となる効果がある。具体的には、通常扉の開閉を行うためにキック動作を行うであろう位置で検出が正常に行われた物体とその動作を、徐々にキックセンサーSから離して行うことでどの距離までを正確に検出することが可能であるかの判定が行える。すなわち、キックセンサーSの検出範囲が予め決められた範囲で正確に行われるか否かの判定を行うことを可能としている。
【0057】
時間Tのしきい値T1は、静電容量Cのしきい値C1の値を越えて検出された検出開始時間Taからある一定の時間である基準時間Tbまでの範囲として設定される。キックセンサーSが静電容量Cのしきい値C1を超える値を検知したのち、時間Tのしきい値T1以内に今度は静電容量Cのしきい値C1を下回ったか否かを判断することにより、一連の動作がキック動作であるか否かの判定を行うことができる。
具体的は、時間Tのしきい値T1を設定することで、
図7(a)に示すように、制御装置800は、静電容量Cのしきい値C1を上回った時点である検出開始時間Taから静電容量Cのしきい値C1を下回った検出終了時間Tcが基準時間Tb、すなわち時間Tのしきい値T1以内の時間であった場合には検知した動作をキック動作として判定し、扉の開閉指示を行う。
また、時間Tのしきい値T1を設定することで、荷台の荷物の積み卸しを行っているときに足がキックセンサーSの検出範囲内にある時や、センサーの下に障害物がある場合等の誤検知を防ぐことができる。
具体的には、
図7(c)に示すように、静電容量Cのしきい値C1を上回った時点である検出開始時間Taから静電容量Cのしきい値C1を下回った検出終了時間Tcが基準時間Tbよりも長く検知されると、時間Tのしきい値T1以内に動作が完了していないことが判断でき、検出した動作がキック動作でないことを判定し扉の開閉を行わないようにすることができる。
【0058】
また、この静電容量Cの値にはしきい値C1とは別に上限値C2を予め設定することもできる。
この上限値C2は、キックセンサーSが検出した物体が人の足であるか否かの判定をより高い精度で行うための値である。すなわち、
図8(a)に示すように、上限値C2を上回った静電容量Cを検出した際には、人の足よりも大きい面積の物体が検出されたと判断し扉の開閉指示を出さないようにすることで誤検知を防ぐことができる。また、上限値C2を設定することで、キック動作の足の振り上げが大きすぎて実際に車体を蹴ってしまうことを防ぐことにもつながる。すなわち、人の足と同等の面積の物体がキックセンサーSに接近した場合に物体とセンサーとの距離を予め上限値C2として設定することで、物体が接触する虞のある距離を除外することができ、実際にキック動作を行う際に誤って車体を蹴ってしまう虞を最小限に抑えることができる。
【0059】
また、この時間Tのしきい値T1とは別に最速時間Tdまでの経過時間を第二のしきい値T2として予め設定することもできる。
この第二のしきい値T2は、検出終了時間Tcが最速時間Tdよりも長く検知されているかを判断するためのものであり、静電容量Cのしきい値C1を上回る値を検出している時間がT2以内に収まる動作は、動きが速すぎるためキック動作ではないとの判定を行う。
具体的には、
図8(b)に示すように、制御装置800は、静電容量Cのしきい値C1を上回った時点である検出開始時間Taから静電容量Cのしきい値C1を下回った検出終了時間Tcが、第二のしきい値T2よりも短いとき、すなわち検出終了時間Tcが最速時間Tdよりも短い場合にはキック動作でないと判定を行う。このように第二のしきい値T2を設定することで、予期せぬ障害物がキックセンサーSの検出範囲内を通過していった場合に誤って扉の開閉を行うことを防ぐことができる。
【0060】
キックセンサー性能評価治具Mは、上述してきたキックセンサーSの検出範囲が正しく設定されているかを評価すると共に、静電容量Cのしきい値C1及び時間Tのしきい値T1(静電容量Cの上限値C2及び時間Tの第二のしきい値T2を設定している場合はこの値も含む)の設定が正しく行われているかを確認し性能評価を行うものである。
【0061】
キックセンサー性能評価治具Mは上述したように、人の足を模した疑似足カバー600を脚ユニット300に装着していることにより、実際の人の足の面積を再現している。また、地面Gに直立した人がキック動作を行う時に生じている地面Gに対する人の静電容量をコンデンサ700により再現し疑似足カバー600に設けた電気伝導性フィルム602に伝達することでより確実に人のキック動作時の静電容量の変化を再現できるように構成されている。また、リンク機構L及び連動機構500により人の足首の伸びまでのキック動作を再現したキックセンサー性能評価治具Mは、制御装置800によりその動作における振り上げ角度及び振り上げから振り下ろすまでに速度を制御可能としている。
これらの構成により、人のキック動作の高い再現性が得られると共に、機械制御による一定の繰り返し動作を行えることで、キックセンサーSの性能評価を確実に行うことが可能となる。
【0062】
キックセンサーSの具体的な検知範囲の評価方法としては、
図1に示すように、評価対象であるキックセンサーSを搭載した車両Vの後方にキックセンサー性能評価治具Mを設置する。そして、キックセンサー性能評価治具Mのキック動作の速度は一定速度で固定した状態で、振り上げの角度と車両Vに対する前後位置とを変化させることで行う。
このように、キックセンサー性能評価治具MからキックセンサーSまでの設置位置と振り上げ角度を変化させることで、キックセンサー性能評価治具Mのキック動作の軌跡からキックセンサーSの検知範囲を評価することができる。
また、検出を確認した範囲から、静電容量Cのしきい値C1が正しく設定されているかを評価することができる。
【0063】
次に、キックセンサーSが感知した動作をキック動作か否かを判定するために設けたキック動作に係る時間Tのしきい値T1が正しく設定されているか否かの評価方法としては、キックセンサー性能評価治具Mの位置と振り上げ角度を一定に固定し、振り上げ速度を変化させることで行うことができる。すなわち、上述した評価方法により静電容量Cのしきい値C1を超える角度とある一定速度でキックセンサーSが反応する距離及び最大振り上げ角度が判明している状態で位置と振り上げ角度を一定に固定し、変数を振り上げ速度のみとして評価を行う。
キックセンサー性能評価治具Mの振り上げ速度を徐々に速くしてセンサーが反応しなくなる速さ、その反対に振り上げ速度を徐々に遅くしてセンサーが反応しなくなる速さを確認することで、時間Tのしきい値T1が予め決められた設定の通りとなっているか否かにより評価を行うことができる。
【0064】
すなわち、キックセンサー性能評価治具Mは、車両Vに対する位置の変化とキック動作の振り上げ角度の変化により、キックセンサーSの検知範囲の評価と静電容量Cのしきい値C1が予め決められた値となっているかを評価することができる。この静電容量Cのしきい値C1の値により、人の足であるか否かの判定が正しく行われているかの評価を行うことができる。
また、キックセンサー性能評価治具Mは、振り上げ速度の変化により、時間Tのしきい値T1が予め決められた値となっているかを評価することができる。この時間Tのしきい値T1により、検知した動作がキック動作であるか否かの判定が正しく行われているかの評価を行うことができる。
【0065】
上述してきたキックセンサーSの性能評価方法は、一例であり実際の評価方法はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明に係るキックセンサー性能評価治具Mは、上述してきた特徴を備えることにより、キックセンサーSの性能評価を従来までの性能評価方法に比して、より正確且つ、速やかに行えるものであり、キックセンサー性能評価治具Mを用いた具体的な性能評価方法は上述した内容に限定されるものではない。
【0066】
以上、上述した各種効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
M キックセンサー性能評価治具
G 地面
V 車両
S キックセンサー
100 支持機枠
110 土台フレーム
120 支持フレーム
130 取付け金具
140 組付け具
141 開口部
200 駆動ユニット
210 駆動源
211 出力軸
220 駆動源取付け具
230 動力伝達部
231 出力プーリ
232 駆動プーリ
233 伝達ベルト
240 伝達部支持体
241 機枠取付け部
250 駆動軸
251 脚ユニット取付け部
300 脚ユニット
310 脚本体部
311 上腿部
312 駆動ユニット取付け部
313 下腿部
320 足部
321 第二枢軸
400 連結アーム
410 縦アーム
411 枢支コマ
420 横アーム
421 第一枢軸
L リンク機構
500 連動機構
510 第一回転体
520 第二回転体
530 連動帯体
600 疑似足カバー
601 カバー本体
602 電気伝導性フィルム
610 下腿カバー
620 足カバー
700 コンデンサ
800 制御装置
810 操作部
820 表示部