(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035723
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】移送装置及び移送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 65/46 20060101AFI20230306BHJP
C10L 5/00 20060101ALI20230306BHJP
C10G 1/04 20060101ALI20230306BHJP
B65G 53/30 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B65G65/46 Z
C10L5/00
C10G1/04
B65G53/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142774
(22)【出願日】2021-09-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発(フェーズII-STEP1)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】堺 康爾
(72)【発明者】
【氏名】奥山 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】菊池 直樹
【テーマコード(参考)】
3F075
4H015
4H129
【Fターム(参考)】
3F075AA10
3F075CC03
3F075CC05
3F075CC20
4H015AA10
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA07
4H015BA11
4H015BB12
4H015CB01
4H129AA01
4H129BA02
4H129BB01
4H129BC02
4H129BC06
4H129BC07
4H129BC08
4H129HB03
4H129NA09
4H129NA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶液の移送量を制御しやすく、かつ溶剤の回収率を高めやすい移送装置を提供する
【解決手段】石炭成分を含む溶液の移送装置であって、溶液を軸方向に移送する2軸スクリュー1と、2軸スクリュー1を溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体2と、溶液を加熱する加熱部3とを備え、筐体2が、溶液が流入する流入口22と、溶液が流出する流出口23と、溶液から揮発する溶剤を排出する排出口24とを有する。排出口24から排出された溶剤を液化する液化部4と、液化部4によって液化された溶剤を貯留する貯留タンク5とをさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭成分を含む溶液の移送装置であって、
上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリューと、
上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体と、
上記溶液を加熱する加熱部と
を備え、
上記筐体が、上記溶液が流入する流入口と、上記溶液が流出する流出口と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口とを有する移送装置。
【請求項2】
上記排出口から排出された上記溶剤を液化する液化部と、
上記液化部によって液化された上記溶剤を貯留する貯留タンクと
をさらに備える請求項1に記載の移送装置。
【請求項3】
上記加熱部が上記溶液を上記移送方向に沿って均一に加熱する請求項1又は請求項2に記載の移送装置。
【請求項4】
上記2軸スクリューによる上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記加熱部から上記溶液への伝熱面積の比が、4.5×10-3m2/(kg/時間)以上7.0×10-3m2/(kg/時間)以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の移送装置。
【請求項5】
上記加熱部の加熱手段が熱媒又は電力である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移送装置。
【請求項6】
上記2軸スクリューによる上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記2軸スクリューのトルクと上記2軸スクリューの回転数との積の比が、1.2×103N・m・rpm/(kg/時間)以上1.8×103N・m・rpm/(kg/時間)以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の移送装置。
【請求項7】
石炭成分を含む溶液の移送方法であって、
上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリューと、上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体と、上記溶液を加熱する加熱部とを備える移送装置を用いて上記溶液を移送する移送工程を備え、
上記筐体が、上記溶液が流入する流入口と、上記溶液が流出する流出口と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口とを有する移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送装置及び移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無灰炭は、例えば石炭及び溶剤を混合したスラリーを、溶剤可溶成分を含む溶液と灰分を含む濃縮液とに分離した後、この溶液から溶剤を分離することで製造される。また、分離された溶剤は回収され、無灰炭の製造のためにリサイクルされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上述の溶液から溶剤を分離する方法として、薄膜蒸留法及びフラッシュ蒸留法が挙げられている。上記薄膜蒸留法及び上記フラッシュ蒸留法では、重力方向への流下によって溶液を移送しつつ、この溶液から溶剤を分離する。そのため、これらの方法によると、溶剤の分離が進行するのに伴って溶液の粘度が高くなり、溶液の移送量を制御し難くなる場合がある。また、溶液の粘度が高くなると、溶液に熱移動し難くなる場合がある。その結果、溶剤の揮発が促進され難くなり、溶剤の回収率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、溶液の移送量を制御しやすく、かつ溶剤の回収率を高めやすい移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る移送装置は、石炭成分を含む溶液の移送装置であって、上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリューと、上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体と、上記溶液を加熱する加熱部とを備え、上記筐体が、上記溶液が流入する流入口と、上記溶液が流出する流出口と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る移送装置は、溶液の移送量を制御しやすく、かつ溶剤の回収率を高めやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移送装置を示す模式的部分縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の移送装置の筐体及びその内部を示す模式的II-II線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る移送方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本発明の一態様に係る移送装置は、石炭成分を含む溶液の移送装置であって、上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリューと、上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体と、上記溶液を加熱する加熱部とを備え、上記筐体が、上記溶液が流入する流入口と、上記溶液が流出する流出口と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口とを有する。
【0011】
当該移送装置は、上記2軸スクリューによって上記溶液を移送するため、上記溶液の移送量を制御しやすい。また、上記2軸スクリューはその表面に付着した上記溶液との共回りを抑制しつつ、上記筐体の内面に付着した上記溶液を取り込むことができる。このため、当該移送装置は、上記溶液の粘度が高い場合であっても、上記溶液を確実に移送することができ、かつ上記溶液を上記筐体内で均一に拡散させやすい。上記溶液が上記筐体内で均一に拡散すると、上記溶剤の揮発が促進されるため、当該移送装置は上記溶剤の回収率を高めやすい。
【0012】
当該移送装置は、上記排出口から排出された上記溶剤を液化する液化部と、上記液化部によって液化された上記溶剤を貯留する貯留タンクとをさらに備えるとよい。このように上記液化部と上記貯留タンクとをさらに備えることによって、上記溶剤を確実に回収できる。
【0013】
上記加熱部が上記溶液を上記移送方向に沿って均一に加熱することが好ましい。このように、上記加熱部が上記溶液を上記移送方向に沿って均一に加熱することによって、上記溶剤の回収率をさらに高めやすい。
【0014】
上記2軸スクリューによる上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記加熱部から上記溶液への伝熱面積の比としては、4.5×10-3m2/(kg/時間)以上7.0×10-3m2/(kg/時間)以下が好ましい。このように、上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記加熱部から上記溶液への伝熱面積の比が上記範囲内であることによって、上記溶剤の回収率をさらに高めやすい。
【0015】
上記加熱部の加熱手段(加熱源)が熱媒又は電力であるとよい。このように、上記加熱部の加熱手段が熱媒又は電力であることで、上記加熱部によって効果的に上記溶液を加熱できる。
【0016】
上記2軸スクリューによる上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記2軸スクリューのトルクと上記2軸スクリューの回転数との積の比としては、1.2×103N・m・rpm/(kg/時間)以上1.8×103N・m・rpm/(kg/時間)以下が好ましい。このように、上記2軸スクリューによる上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する上記2軸スクリューのトルクと上記2軸スクリューの回転数との積の比が上記範囲内であることによって、確実に上記溶液を移送できる。
【0017】
本発明の他の一態様に係る移送方法は、石炭成分を含む溶液の移送方法であって、上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリューと、上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体と、上記溶液を加熱する加熱部とを備える移送装置を用いて上記溶液を移送する移送工程を備え、上記筐体が、上記溶液が流入する流入口と、上記溶液が流出する流出口と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口とを有する。
【0018】
当該移送方法は、上記移送工程で当該移送装置を用いて上記溶液を移送するため、上記溶液の移送量を制御しやすい。また、当該移送方法は、上記移送工程で当該移送装置を用いて上記溶液を移送するため、上記溶剤の回収率を高めやすい。
【0019】
本発明において、「2軸スクリューによる溶液の単位時間当たりの移送量に対する加熱部から溶液への伝熱面積の比」とは、2軸スクリューによる溶液の単位時間当たりの移送量をV[kg/時間]、加熱部から溶液への伝熱面積をA[m2]とした場合に、A/Vで算出される値をいう。また、「2軸スクリューによる溶液の単位時間当たりの移送量に対する2軸スクリューのトルクと2軸スクリューの回転数との積の比」とは、2軸スクリューのトルクをT[N・m]、2軸スクリューの回転数をN[rpm]とした場合に、TN/Vで算出される値をいう。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。
【0021】
[移送装置]
図1の移送装置は、石炭成分を含む溶液の移送装置である。当該移送装置は、上記溶液を軸方向に移送する2軸スクリュー1と、2軸スクリュー1を上記溶液の移送方向に沿って取り囲む筐体2と、上記溶液を加熱する加熱部3とを備える。筐体2は、上記溶液が流入する流入口22と、上記溶液が流出する流出口23と、上記溶液から揮発する溶剤を排出する排出口24とを有する。
【0022】
<溶液>
上記溶液は、例えば石炭の溶剤可溶成分と溶剤とを含む。上記溶液は、例えば無灰炭を製造する過程で、石炭と上記溶剤とを混合したスラリーから灰分を含む濃縮液を分離することで得られる。上記溶剤としては、特に限定されないが、例えば芳香族溶剤が挙げられる。上記芳香族溶剤としては、非水素供与性の芳香族溶剤が好ましい。上記非水素供与性の芳香族溶剤の主成分としては、特に限定されないが、例えば2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、又はトリメチルナフタレン等が挙げられる。上記非水素供与性の芳香族溶剤は、上記主成分以外に、例えば脂肪族側鎖を有するナフタレン類、アントラセン類、又はフルオレン類等を含んでいてもよい。上記溶剤は、例えば石炭液化油等の非水素供与性の芳香族溶剤であってもよい。上記溶液は不溶性の固形分を含んでいてもよい。
【0023】
筐体2内に流入する際における上記溶液に占める上記溶剤の含有量は、特に限定されるものではない。上記含有量は、効果的に上記溶剤を揮発させる観点から、10質量%以上20質量%以下とすることも可能である。上記含有量を上記範囲内に制御するために、筐体2に流入する前に、フラッシュ蒸留法等によって上記溶剤の含有量を調整してもよい。
【0024】
<2軸スクリュー>
2軸スクリュー1は、流入口22から筐体2内に流入した上記溶液を取り込むと共に、筐体2に付着した上記溶液を回転によって取り込みつつ、上記溶液を軸方向に移送する。
【0025】
2軸スクリュー1の軸方向は、水平方向であることが好ましい。このように2軸スクリュー1を構成することによって、重力方向の流下に依存せずに上記溶液を移送できるため、上記溶液の移送量を制御しやすい。
【0026】
2軸スクリュー1は、並行に配置される一対のスクリューを有する。上記スクリューは、それぞれ軸部11の外周面に羽根部12を有する。軸部11は、上記溶液の移送方向に筐体2を貫通している。羽根部12は、特に限定されないが、例えば軸部11の外周面にらせん状に設けられるとよい。このように上記スクリューが羽根部12を有することによって、2軸スクリュー1は筐体2の内面に付着した上記溶液を取り込みやすい。また、上記スクリューがそれぞれ羽根部12を有し、一方の上記スクリューの羽根部12が、他方の上記スクリューの羽根部12と噛合するように設けられると好ましい。例えばらせん状の羽根部12を有する2軸スクリュー1においては、一方の上記スクリューの羽根部12が、他方の上記スクリューの羽根部12の間に突出するように設けられると好ましい。一方の上記スクリューの羽根部12と他方の上記スクリューの羽根部12とは接触しなくてもよい。このように羽根部12を設けることによって、一方の上記スクリューの羽根部12が他方の上記スクリューの表面に付着した上記溶液を掻き取ることで、2軸スクリュー1はその表面に付着した上記溶液との共回りを抑制できる。
【0027】
2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する2軸スクリュー1のトルクと2軸スクリュー1の回転数との積の比の下限としては、1.2×103N・m・rpm/(kg/時間)が好ましく、1.3×103N・m・rpm/(kg/時間)がより好ましく、1.4×103N・m・rpm/(kg/時間)がさらに好ましい。一方、2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する2軸スクリュー1のトルクと2軸スクリュー1の回転数との積の比の上限としては、1.8×103N・m・rpm/(kg/時間)が好ましく、1.7×103N・m・rpm/(kg/時間)がより好ましく、1.6×103N・m・rpm/(kg/時間)がさらに好ましい。上記比が上記下限に満たないと、2軸スクリュー1の回転が不十分となり、筐体2の内面に付着した上記溶液を十分に取り込み難くなるおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、上記溶液の移送量を制御し難くなるおそれがある。
【0028】
<筐体>
筐体2は、上記溶液の移送方向を軸方向とする筒状の周壁を有する。この周壁には、上記移送方向の上流側から下流側に向けて、流入口22、排出口24及び流出口23がこの順で設けられている。流入口22は上記周壁の最上流側に設けられ、流出口23は上記周壁の最下流側に設けられていることが好ましい。
【0029】
上記周壁は、2軸スクリュー1を上記溶液の移送方向に沿って取り囲む内面21を有する。内面21は、筐体2内に上記移送方向を軸方向とする円柱状の移送空間を画定することが好ましい。なお、「円柱」とは、断面が真円のものに限定されず、断面が楕円形の楕円柱、又は断面が長円形の長円柱等を含む。上記移送空間の断面形状としては、2軸スクリュー1の一対の軸部11同士の対向方向を長軸方向とする楕円形又は長円形が好ましい。上記移送空間をこのように形成することによって、2軸スクリュー1が内面21に付着した上記溶液を取り込むことが容易となり、かつ2軸スクリュー1が内面21に上記溶液を均一に拡散することが容易となる。
【0030】
内面21は、2軸スクリュー1と離間して配置されることが好ましい。このように内面21が2軸スクリュー1と離間していることで、上記溶液が不溶性の固形分を含む場合であっても、2軸スクリュー1と内面21との間の摩耗を抑制できる。その結果、2軸スクリュー1及び内面21の破損を抑制できる。
【0031】
<加熱部>
加熱部3は、例えば上記周壁に配置されている。加熱部3は、内面21を介して2軸スクリュー1を上記溶液の移送方向に沿って取り囲むように配置されていると好ましい。換言すると、加熱部3は、内面21全体を伝熱面として上記溶液を加熱するように設けられていること好ましい。加熱部3がこのように配置されていることによって、例えば2軸スクリュー1に拡散されて内面21に付着した上記溶液の揮発を効果的に促進できる。
【0032】
加熱部3の加熱手段(加熱源)としては、特に限定されないが、例えば熱媒、電力等が挙げられる。上記熱媒としては、特に限定されないが、例えば合成系有機熱媒体油等が挙げられる。上記電力による加熱方法としては、特に限定されないが、例えば伝熱線、又は誘導加熱方式等が挙げられる。
【0033】
加熱部3は上記溶液をその移送方向に沿って均一に加熱することが好ましい。例えば、当該移送装置は、内面21全体が伝熱面となるように加熱部3を配置し、この加熱部3を均一に加熱することで、内面21を伝熱面として上記溶液を上記移送方向に沿って均一に加熱することができる。このように、加熱部3が上記溶液を上記移送方向に沿って均一に加熱することによって、上記溶液をその移送方向に沿って伝熱面を更新しつつ連続的に加熱できる。その結果、上記溶液の揮発を効果的に促進できる。
【0034】
2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する加熱部3から上記溶液への伝熱面積の比の下限としては、4.5×10-3m2/(kg/時間)が好ましく、4.8×10-3m2/(kg/時間)がより好ましく、5.0×10-3m2/(kg/時間)がさらに好ましい。一方、2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する加熱部3から上記溶液への伝熱面積の比の上限としては、7.0×10-3m2/(kg/時間)が好ましく、6.7×10-3m2/(kg/時間)がより好ましく、6.4×10-3m2/(kg/時間)がさらに好ましい。上記比が上記下限に満たないと、上記溶剤の揮発を十分に促進できないおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、上記溶液内の石炭成分が熱分解するおそれがある。
【0035】
<液化部>
当該移送装置は、排出口24から排出された上記溶剤を液化する液化部4をさらに備えるとよい。液化部4は、特に限定されないが、例えば排出口24に接続された移送路41と上記溶剤を凝縮液化するためのコンデンサー42とを有する構成とすることができる。
【0036】
<貯留タンク>
当該移送装置は、液化部4によって液化された上記溶剤を貯留する貯留タンク5をさらに備えるとよい。当該移送装置が貯留タンク5を備えることによって、液化部4で液化された上記溶剤を確実に回収できる。
【0037】
<利点>
当該移送装置は、2軸スクリュー1によって上記溶液を移送するため、上記溶液の移送量を制御しやすい。また、2軸スクリュー1はその表面に付着した上記溶液との共回りを抑制しつつ、筐体2の内面21に付着した上記溶液を取り込むことができる。このため、当該移送装置は、上記溶液の粘度が高い場合であっても、上記溶液を確実に移送することができ、かつ上記溶液を筐体2内で均一に拡散させやすい。上記溶液が筐体2内で均一に拡散すると、上記溶剤の揮発が促進されるため、当該移送装置は上記溶剤の回収率を高めやすい。
【0038】
[移送方法]
図3の移送方法は、石炭成分を含む溶液の移送方法であって、
図1の移送装置を用いて上記溶液を移送する移送工程S1を備える。
【0039】
<移送工程>
移送工程S1では、2軸スクリュー1によって上記溶液を移送する。移送工程S1では、流入口22から筐体2内に流入した上記溶液及び筐体2に付着した上記溶液を取り込みつつ、上記溶液を軸方向に移送する。
【0040】
移送工程S1では、筐体2内の温度(上述の移送空間の温度)を200℃以上450℃以内に制御することが好ましい。また、移送工程S1では、筐体2の内面21の温度を200℃以上450℃以内に制御してもよい。このように筐体2内の温度を制御することによって、上記溶液から上記溶剤可溶成分が析出することを抑制しつつ、上記溶剤の揮発を促進できる。
【0041】
移送工程S1では、上記溶剤の揮発を促進する観点から、筐体2内の圧力を0.5MPa以下に制御することが好ましい。
【0042】
移送工程S1における、2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する2軸スクリュー1のトルクと2軸スクリュー1の回転数との積の比の下限としては、1.2×103N・m・rpm/(kg/時間)が好ましく、1.3×103N・m・rpm/(kg/時間)がより好ましく、1.4×103N・m・rpm/(kg/時間)がさらに好ましい。一方、上記比の上限としては、1.8×103N・m・rpm/(kg/時間)が好ましく、1.7×103N・m・rpm/(kg/時間)がより好ましく、1.6×103N・m・rpm/(kg/時間)がさらに好ましい。上記比が上記下限に満たないと、2軸スクリュー1の回転が不十分となり、筐体2の内面に付着した上記溶液を十分に取り込み難くなるおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、上記溶液の移送量を制御し難くなるおそれがある。
【0043】
移送工程S1における、2軸スクリュー1による上記溶液の単位時間当たりの移送量に対する加熱部3から上記溶液への伝熱面積の比の下限としては、4.5×10-3m2/(kg/時間)が好ましく、4.8×10-3m2/(kg/時間)がより好ましく、5.0×10-3m2/(kg/時間)がさらに好ましい。一方、上記比の上限としては、7.0×10-3m2/(kg/時間)が好ましく、6.7×10-3m2/(kg/時間)がより好ましく、6.4×10-3m2/(kg/時間)がさらに好ましい。上記比が上記下限に満たないと、上記溶剤の揮発を十分に促進できないおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、上記溶液内の石炭成分が熱分解するおそれがある。
【0044】
<利点>
当該移送方法は、移送工程S1で2軸スクリュー1によって上記溶液を移送するため、上記溶液の移送量を制御しやすい。また、当該移送方法は、移送工程S1で2軸スクリュー1を用いることで、2軸スクリュー1とその表面に付着した上記溶液との共回りを抑制しつつ、筐体2の内面21に付着した上記溶液を取り込むことができる。このため、当該移送方法は、上記溶液の粘度が高い場合であっても、移送工程S1によって、上記溶液を確実に移送することができ、かつ上記溶液を筐体2内で均一に拡散させやすい。その結果、当該移送方法は、上記溶剤の回収率を高めやすい。
【0045】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。したがって、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0046】
例えば、上記2軸スクリューは、軸部の外周面にパドルを有する構成とすることもできる。この場合、上記2軸スクリューの一方のスクリューのパドルが、他方のスクリューのパドルと噛合するように設けられるとよい。また、上記2軸スクリューが、軸部の外周面にらせん状の羽根部及びパドルの両方を有する構成とすることもできる。
【0047】
上記加熱部の配置は、上記実施形態の構成に限定されない。例えば上記加熱部は、上記筐体の内面を介して上記2軸スクリューに対向する一部分にのみ配置されていてもよい。また、上記加熱部を上記2軸スクリューの内部に配置することも可能である。この場合、上記加熱部は、上記2軸スクリューの軸部内に、この軸部の軸方向に沿って延在するように配置されてもよい。この場合、上記加熱部からの上記溶液への伝熱面積は、上記2軸スクリューの上記筐体内に位置する全表面面積と定義することができる。なお、この際、上記2軸スクリューの羽根部等にも上記加熱部を配置することも可能である。さらに、上記加熱部を、上記筐体と上記2軸スクリューとの両方に配置することも可能である。
【実施例0048】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0049】
本実施例では、石炭成分を含む溶液を
図1及び
図2で示される移送装置に流入させることによって、溶液の移送量及びこの溶液から回収される溶剤の回収率を確認した。
【0050】
(溶液)
上記溶液としては、無灰炭を製造する過程で、一般炭と溶剤(メチルナフタレン)とを混合したスラリーから灰分を含む濃縮液を分離したものを用いた。上記溶液は、上記移送装置に流入させる前に、フラッシュ蒸留法で溶剤の含有量が15質量%となるように調整した。本実施例では異なる石炭を用いて別々に精製された溶液をNo.1、No.2及びNo.3として、それぞれ別個に上記移送装置に流入させた。
【0051】
(移送装置)
上記移送装置は、直径120mmの内面を有する円筒状の筐体内に、長さ1008mmの2軸スクリューを水平に配置することによって構成した。
【0052】
(稼働条件)
上記移送装置においては、加熱部が上記筐体の内面を介して上記2軸スクリューを上記溶液の移送方向に沿って取り囲むように配置した。また、上記内面全体が伝熱面となるように上記加熱部を配置し、上記加熱部を300℃で均一に加熱した。このとき加熱された上記内面の表面積は0.28m2である。また、上記筐体内の圧力を-5kPa以上0kPa以下に制御し、上記溶剤が流出口から脱揮しやすい条件とした。上記筐体に、250℃に加熱したNo.1、No.2及びNo.3の溶液を、それぞれ上記筐体の流入口から40kg/時間で流入させた。流入した上記溶液は、上記2軸スクリューを回転数200rpm、トルク360.0N・mで回転させることで、移送した。
【0053】
(確認)
上記筐体の流出口から、上記溶液が脈動なく安定して流出することを確認した。単位時間当たりの上記溶液の流出量が一定であったことから、上記溶液の移送量は一定であった。また、上記流出口から流出したNo.1、No.2及びNo.3について、(株)島津製作所製の熱重量測定装置(「TGA51」)を用いて熱重量測定(TG)を行った。この測定結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1から分かるように、No.1、No.2及びNo.3のいずれも、溶剤の沸点である245℃にまで加熱したときの重量減少率が1質量%未満であった。このため、上記移送装置において、溶剤の大部分が回収されたことがわかる。