(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035724
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及び測定プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/00 20150101AFI20230306BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20230306BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H04B17/00 Z
H01Q1/12 Z
G01R29/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142775
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 大史
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA05
5J047BG10
(57)【要約】
【課題】測定機構の歪みを算出し通信システムの通信性能を高精度な測定を行う。
【解決手段】測定装置は、対象電波を受信するアンテナ、及びアンテナを支える支持部を備える測定機構において受信された対象電波に対して支持部に生じる歪みに基づいて補正した補正結果を出力する。測定装置は、第1の取得部、算出部、第2の取得部、及び補正部を備える。第1の取得部は、アンテナ及び対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて対象電波をアンテナで受信した第1の受信電波位相を取得する。算出部は、第1の受信電波位相に基づいてアンテナの位置毎に対象電波をアンテナで受信した受信理想電波位相を算出する。第2の取得部は、アンテナの位置毎に対象電波をアンテナで受信した第2の受信電波位相を取得する。補正部は、受信理想電波位相と第2の受信電波位相との差を示す位相差から算出される支持部の歪みに基づいて補正する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象電波を受信するアンテナと、前記アンテナを支える支持部と、を備える測定機構において、受信された前記対象電波に対して、当該支持部において生じる歪みに基づいて、補正した補正結果を出力する測定装置であって、
前記アンテナ、及び前記対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する第1の取得部と、
前記第1の受信電波位相に基づいて、前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する算出部と、
前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する第2の取得部と、
前記算出部により算出された前記受信理想電波位相と第2の取得部により取得された前記第2の受信電波位相との差を示す位相差から算出される前記支持部の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する補正部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記対象から発信する測定対象電波を前記アンテナで受信した測定電波を示す受信測定電波を取得する第3の取得部と、
前記歪み情報は、前記アンテナと前記対象との距離を示す距離情報が含まれ、
前記補正部は、前記距離情報に基づいて、前記第3の取得部により取得された前記受信測定電波を補正する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記受信測定電波の振幅、及び前記受信測定電波の位相のうち、少なくとも1つを補正する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記アンテナを駆動制御する駆動制御部と、
前記歪み情報は、前記支持部の歪みの位置を示す位置情報が含まれ、
前記補正部は、前記位置情報に基づいて、前記駆動制御部により駆動制御された前記アンテナの駆動制御に関する制御内容を補正する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記制御内容に対応する前記アンテナの支持部材の歪みの座標を示す座標情報を補正する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
対象電波を受信するアンテナと、前記アンテナを支える支持部と、を備える測定機構において、受信された前記対象電波に対して、当該支持部において生じる歪みに基づいて、補正した補正結果を出力する測定装置において実行される測定方法であって、
前記アンテナ及び前記対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する第1の取得ステップと、
前記第1の受信電波位相に基づいて、前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する算出ステップと、
前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナの位置毎に前記アンテナで受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する第2の取得ステップと、
前記算出ステップにより算出された前記受信理想電波位相と前記第2の取得ステップにより取得された前記第2の受信電波位相との差を示す位相差から算出される前記支持部の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する補正ステップと、
を含む、測定方法。
【請求項7】
対象電波を受信するアンテナと、前記アンテナを支える支持部と、を備える測定機構において、受信された前記対象電波に対して、当該支持部において生じる歪みに基づいて、補正した補正結果を出力する測定装置のコンピュータに、
前記アンテナ及び前記対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する第1の取得ステップと、
前記第1の受信電波位相に基づいて、前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する算出ステップと、
前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナの位置毎に前記アンテナで受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する第2の取得ステップと、
前記算出ステップにより算出された前記受信理想電波位相と前記第2の取得ステップにより取得された前記第2の受信電波位相との差を示す位相差から算出される前記支持部の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する補正ステップと、
を実行させる、測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定方法、及び測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や車両等の対象に搭載された通信システムから発せられる電波をアンテナで受信し、受信した受信電波に基づいて通信システムの通信性能を測定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。測定対象が大きい場合、測定システムを大型化し、測定システムが備える可動部によってアンテナを移動させながら電波を受信することが行われている。また、機構の歪みを検出する歪み検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-505768号公報
【特許文献2】特開平5-302817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば非金属素材からなる測定機構を備える大型の測定システムの場合、測定機構に歪みが生じてしまう場合がある。検出装置は、歪みを検出するためにレーザ光を照射し歪みを検出するが、これまでの測定システムに歪み検出装置を適用すると、レーザ光による歪み検出装置は測定対象である電波の反射物となるため、レーザ光による歪み検出装置は測定の妨げになってしまい、通信システムの通信性能を高精度に測定することは困難であった。すなわち、電波を測定する測定装置が大型の測定機構を備える場合、機構の歪みを検出することについて改善の余地がある。
【0005】
本開示は、測定機構の歪みを算出し、通信システムの通信性能を高精度な測定を行うことができる測定装置、測定方法、及び測定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る測定装置は、対象電波を受信するアンテナと、前記アンテナを支える支持部と、を備える測定機構において、受信された前記対象電波に対して、当該支持部において生じる歪みに基づいて、補正した補正結果を出力する。測定装置は、第1の取得部と、算出部と、第2の取得部と、補正部と、を備える。第1の取得部は、前記アンテナ、及び前記対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する。算出部は、前記第1の受信電波位相に基づいて、前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する。第2の取得部は、前記アンテナの位置毎に、前記対象から発信する前記対象電波を前記アンテナで受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する。補正部は、前記算出部により算出された前記受信理想電波位相と第2の取得部により取得された前記第2の受信電波位相との差を示す位相差から算出される前記支持部の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る測定装置、測定方法、及び測定プログラムによれば、測定機構の歪みを算出し、通信システムの通信性能を高精度な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る測定システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る測定装置の一例を示すハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る測定装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るアンテナと対象との距離情報の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る測定装置で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る測定装置で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るアンテナと対象との位置座標の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る測定装置で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る測定装置で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る測定装置、測定方法、及び測定プログラムの実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の測定システム1の一例を示す模式図である。測定システム1は、測定装置10と、測定機構20と、基準波源40と、を備える。
【0011】
測定システム1は、対象に搭載された通信システム30の通信性能を測定するためのシステムである。
【0012】
対象とは、対象電波を発信するものである。対象は、通信システム30を搭載可能な物であればよい。対象は、例えば、車両T、飛行機等の飛翔体、船舶、建物等の建造物、携帯端末、パーソナルコンピュータ等の電子機器等である。本実施形態では、対象が車両Tである形態を一例として説明する。
【0013】
通信システム30は、無線により測定対象電波52を発信する電波発信機である。言い換えると、通信システム30は、空中に測定対象電波52を発信する電波発信機である。通信システム30は、例えば、コードレスの電話機器、Wi-Fi(Wireless Fidelity)ルータ等の無線通信機、レーダ発信機等である。また、通信システム30は、例えば、追跡、検出、または通信等に用いられる各種の発信機である。
【0014】
測定対象電波52は、通信システム30から無線により発信される電波である。測定対象電波52は、本実施形態の測定システム1における測定対象となる電波である。測定対象電波52は、ミリ波、マイクロ波、極超電波、超電波、短波、中波、及び長波、の何れであってもよい。ミリ波は、26GHz以上の周波数帯のミリ波周波数帯域の電波である。ミリ波は、5G(第5世代移動通信システム)等の移動通信システム、車両Tの自動運転技術、ADAS(Advanced Driver Assistance System)技術等に用いられる。ADAS技術で用いられる電波には、例えば、レーダ波等が含まれる。
【0015】
本実施形態では、通信システム30は、対象の一例である車両Tに搭載されている。本実施形態では、通信システム30が、車両T内に搭載された形態を一例として説明する。
【0016】
測定機構20は、車両Tに搭載された通信システム30から発信された測定対象電波52を受信するための機構である。測定機構20は、少なくとも一部が可動することで、車両Tの全方位の位置の各々で測定対象電波52を受信可能に構成されている。
【0017】
詳細には、測定機構20は、アンテナ21と、支持部22と、支持部23と、支持部24と、を備える。
【0018】
アンテナ21は、無線による電波の受信及び無線による電波の発信を行う装置である。言い換えると、アンテナ21は、電波を空中に放射し、また、空中を伝搬した電波を受信する。
【0019】
アンテナ21は、支持部24によって支持されている。支持部24は、棒状の部材である。支持部24は、長手方向の一端部にアンテナ21を支持し、他端部を支持部23によって支持されている。本実施形態では、支持部24が、支持部24の長手方向と鉛直方向に対して交差する方向とが略一致するように配置されている形態を一例として説明する。
【0020】
支持部23は、棒状の部材である。本実施形態では、支持部23は、支持部23の長手方向と鉛直方向とが略一致するように配置されている形態を一例として説明する。支持部23の長手方向の一端部は支持部22によって支持されている。支持部22は、地面等に配置された棒状の部材である。本実施形態では、支持部22の長手方向は水平方向に略一致する形態を一例として説明する。
【0021】
支持部25は、車両Tを支持する部材である。本実施形態では、支持部25は、円盤状の部材である。本実施形態では、支持部25の円盤状の盤面は、水平方向に沿った方向となるように配置されている。支持部25の円中心には、駆動部25Aが設けられている。駆動部25Aは、後述する測定装置10の制御によって駆動する。駆動部25Aの駆動によって、支持部25が円中心を回転中心として所定角度ごとに回転する(矢印Q方向)。支持部25の回転に伴って、支持部25上に載置された車両Tが回転する(矢印Q方向)。なお、支持部25が回転する
図1記載の矢印Qは矢印Qとは反対の方向でも良い。
【0022】
支持部23には、駆動部23Aが設けられている。支持部24には、駆動部24Aが設けられている。駆動部23A及び駆動部24Aは、後述する測定装置10の制御によって駆動する。駆動部23Aの駆動によって、支持部23は支持部22の長手方向(矢印X方向)に沿って移動する。駆動部24Aの駆動によって、支持部24は支持部23の長手方向(矢印Z方向)に沿って移動する。
【0023】
支持部24によって支持されたアンテナ21は、駆動部23A及び駆動部24Aの駆動によって、車両Tに対して、鉛直方向に近づく方向または離れる方向、及び鉛直方向に対して交差する方向に近づく方向または離れる方向に、移動可能に支持されている。言い換えると、アンテナ21は、駆動部23A及び駆動部24Aの駆動によって、車両Tを球中心とする半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間を移動可能に支持されている。
【0024】
基準波源40は、測定機構20の歪みを算出するために用いる電波発信源である。基準波源40は、支持部25の中心に設置する。基準波源40から発信される電波は、波長、周期、及び振幅が既知である電波である。基準波源40は、例えば、ダイポールアンテナである。本実施形態では、測定機構20の歪みを支持部23について説明するが、これに限定されない。また、本実施形態では、対象が上述した車両Tに加え、基準波源40である形態を一例として説明する。
【0025】
基準波源40から発信される発信電波50は、波長、周期、及び振幅が経時変化しない一定の電波である。周期は、振動数または周波数を意味する。
【0026】
次に、測定装置10について説明する。測定装置10は、アンテナ21で受信した通信システム30の測定対象電波52に基づいて、通信システム30の通信性能を測定する装置である。測定装置10は、対象電波を受信するアンテナ21と、アンテナ21を支える支持部24と、を備える測定機構20において受信された対象電波に対して当該支持部24において生じる歪みに基づいて補正した補正結果を出力する。測定装置10の詳細については後述する。
【0027】
(測定装置のハードウェア構成例)
図2は、本実施形態に係る測定装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、測定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、補助記憶装置14、外部I/F(インタフェース)15がバス16により相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0028】
CPU11は、測定装置10を制御する演算装置である。なお、CPU11は、本実施形態の測定装置10におけるプロセッサの一例であり、他のプロセッサまたは処理回路がCPU11の代わりに設けられても良い。ROM12は、不揮発性のメモリであり、測定装置10を起動させるためのプログラムを含む各種データ(測定装置10の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。
【0029】
RAM13は、例えば測定装置10の主記憶装置であり、CPU11による各種処理に必要なデータを記憶する。補助記憶装置14は、例えばCPU11が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成される。外部I/F15は、データを送受信するためのインタフェースである。また、外部I/F15は、アンテナ21と、駆動部23Aと、駆動部24Aと、駆動部25Aと、通信システム30と、基準波源40等の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。
【0030】
(測定装置の機能例)
図3は、本実施形態に係る測定装置10が備える機能の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の測定装置10は、測定部101、発信制御部102、第1の取得部103、駆動制御部104、第2の取得部105、算出部106、第3の取得部107、及び補正部108を備える。測定装置10が備える機能はこれに限定されない。
【0031】
測定部101は、アンテナ21及び通信システム30の基準の位置関係を測定する。詳細には、アンテナ21を支持部24に配置し、通信システム30を支持部25に配置し、配置されたアンテナ21及び通信システム30の位置を測定する。例えば、基準の位置関係は、アンテナ21及び通信システム30の位置を示す座標、アンテナ21と通信システム30を結ぶ距離が含まれる。測定部101は、測定した基準の位置関係を補助記憶装置14に記憶する。
【0032】
また、測定部101は、アンテナ21及び基準波源40の基準の位置関係を測定する。詳細には、アンテナ21を支持部24に配置し、基準波源40を支持部25の中心に基準配置し、配置されたアンテナ21及び基準波源40の位置を測定する。例えば、基準の位置関係は、アンテナ21及び基準波源40の位置を示す座標、アンテナ21と基準波源40を結ぶ距離が含まれる。測定部101は、測定した基準位置関係を補助記憶装置14に記憶する。
【0033】
発信制御部102は、通信システム30及び基準波源40の各々の電波の発信開始及び発信停止を制御する。
【0034】
詳細には、発信制御部102は、外部I/F15と協働して通信システム30へ測定対象電波52の発信開始を表す発信開始信号を送信する。測定対象電波52の発信開始信号を受け付けた通信システム30は、無線による測定対象電波52の発信を開始する。また、発信制御部102は、外部I/F15と協働して通信システム30へ、測定対象電波52の発信停止を表す発信停止信号を送信する。測定対象電波52の発信停止信号を受け付けた通信システム30は、測定対象電波52の発信を停止する。
【0035】
また、発信制御部102は、外部I/F15と協働して基準波源40へ発信電波50の発信開始を表す発信開始信号を送信する。発信電波50の発信開始信号を受け付けた基準波源40は、無線による発信電波50の発信を開始する。また、発信制御部102は、外部I/F15と協働して基準波源40へ、発信電波50の発信停止を表す発信停止信号を送信する。発信電波50の発信停止信号を受け付けた基準波源40は、発信電波50の発信を停止する。
【0036】
なお、通信システム30及び基準波源40は、ユーザによる操作指示等によって発信電波50の発信開始及び発信停止、並びに測定対象電波52の発信開始及び発信停止を切り替える構成であってもよい。
【0037】
第1の取得部103は、アンテナ21及び対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、対象から発信する対象電波をアンテナ21で受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する。
【0038】
詳細には、まず、第1の取得部103は、発信制御部102により基準波源40の電波の発信開始がされると、発信電波50をアンテナ21で受信することを開始する。また、第1の取得部103は、アンテナ21及び基準波源40が配置された基準の位置関係に基づいて、発信制御部102により発信される発信電波50の発信開始信号を受け付けた基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信する。
【0039】
さらに、第1の取得部103は、発信制御部102により基準波源40の電波の発信停止がされると、発信電波50をアンテナ21で受信することを停止する。そして、第1の取得部103は、アンテナ21で受信した発信電波50の位相を示す第1の受信電波位相を取得する。また、第1の取得部103は、取得した第1の受信電波位相を補助記憶装置14に記憶する。なお、第1の取得部103は、アンテナ21で受信した第1発信電波を受信するごとに補助記憶装置14に記憶しても良い。
【0040】
駆動制御部104は、駆動部23A、駆動部24A、及び駆動部25Aを駆動制御する。例えば、駆動制御部104は、車両Tを中心とした半球C(
図1参照)の外周を複数領域に分割した各領域に、アンテナ21が順次配置されるように、駆動部23A、駆動部24A、及び駆動部25Aを駆動する。
【0041】
詳細には、駆動制御部104は、駆動部23A及び駆動部24Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動制御されるごとに、駆動部25Aを制御する。駆動部25Aの制御によって、駆動制御部104は、支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動させる。
【0042】
測定装置10では、駆動制御部104の駆動制御によってアンテナ21が次の測定位置に移動され、支持部25上に載置された車両Tが所定の回転角度回転駆動されるごとに、アンテナ21で受信した測定対象電波52の受信測定電波を用いて通信システム30の通信性能を導出する。すなわち、測定装置10は、車両Tを中心とした半球Cの外周に沿って、該外周を複数領域に分割した各領域において受信した受信測定電波を取得可能に構成されている。言い換えると、測定装置10は、車両Tの全方位の各々の位置で受信した受信測定電波を取得可能に構成されている。
【0043】
第2の取得部105は、対象から発信する対象電波をアンテナ21で受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する。
【0044】
詳細には、まず、第2の取得部105は、発信制御部102により基準波源40の電波の発信開始がされると、発信電波50をアンテナ21で受信することを開始する。また、第2の取得部105は、駆動制御部104の駆動制御によって駆動部23A及び駆動部24Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動制御されるごとに、発信制御部102により発信される発信電波50の発信開始信号を受け付けた基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信する。
【0045】
さらに、第2の取得部105は、発信制御部102により基準波源40の電波の発信停止がされると、発信電波50をアンテナ21で受信することを停止する。そして、第2の取得部105は、アンテナ21で受信した発信電波50の位相を示す第2の受信電波位相を取得する。また、第2の取得部105は、取得した第2の受信電波位相を補助記憶装置14に記憶する。なお、第2の取得部105は、アンテナ21で受信した第2発信電波を受信するごとに補助記憶装置14に記憶しても良い。
【0046】
算出部106は、第1の取得部103により取得された第1の受信電波位相に基づいて、アンテナ21の位置毎に、対象から発信する対象電波をアンテナ21で受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する。
【0047】
詳細には、算出部106は、第1の取得部103が取得した第1の受信電波位相を取得すると、アンテナ21の位置毎に対象との送受信間距離を算出する。算出部106は、測定部101が測定したアンテナ21と基準波源40を結ぶ距離(以下、基準位置の基準距離ともいう)と、算出した送受信間距離に基づいて、アンテナ21の位置毎に、対象から発信する対象電波をアンテナ21で受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する。
【0048】
ここで、受信理想電波位相について
図4を用いて説明する。また、以下に説明する図面において、便宜上、互いに直交するX軸、Z軸を示しており、実施形態の測定機構20における左右方向(X方向)、上下方向(Z方向)をX軸、Z軸を用いて説明する。なお、以下の説明において、単に、X方向、またはZ方向と記載した場合には、それぞれの軸方向であり、逆向きの2方向を含む。また、X軸の正方向と特定した場合には右側から左側への一方向であり、Z軸の正方向と特定した場合には下側から上側への一方向である。
【0049】
支持部23に歪みがない場合、基準の位置座標を示すアンテナ21(X0,Z0)と、基準波源40(Xr,Zr)から導かれるアンテナ21と基準波源40との測定距離は変化しない。アンテナ21と基準波源40からの測定距離が変化しなければ、アンテナ21が受信する受信電波の位相特性に変化は生じない。変化が生じない受信電波の位相を受信理想電波位相という。なお、受信理想電波位相を理論位相ともいう。理論位相は以下の数1式で導出される。なお、R0[m]はアンテナ21と基準波源40の基準位置の基準距離を示す。R[m]は歪みが生じない場合のアンテナ21と基準波源40の送受信間距離を示す。S0[deg]は、アンテナ21と基準波源40の基準位置の位相を示す。λ[m]は波長を示す。
【0050】
【0051】
また、算出部106は、算出した受信理想電波位相と第2の取得部105により取得された第2の受信電波位相との差を示す位相差から支持部23の歪みを示す歪み情報を算出する。歪み情報は、アンテナ21と対象との距離を示す距離情報が含まれる。
【0052】
支持部23が大型の場合、支持部23の一部に歪みが生じる場合がある。ここで、
図4を用いて支持部23の歪みを示す歪み情報に含まれる距離情報について説明する。
【0053】
まず、支持部23に歪みが生じていない場合のアンテナ21の位置座標(Xt、Zt)と示す。また、支持部23に歪みが生じている状態を示す支持部231のアンテナ21の位置座標(Xα,Zα)と示す。支持部23に歪みが生じている場合、基準の位置座標から導かれるアンテナ21と基準波源40との測定距離は変化する。測定距離に変化が生じると、アンテナ21が受信する受信電波の位相特性に変化が生じる。すなわち、受信電波の位相を示す測定位相と、理論位相は異なる。
【0054】
算出部106は、測定位相と理論位相の差を示す位相差S=(測定位相)―(理論位相)を算出することで、以下の歪み情報に含まれる距離情報L1を算出することができる。また、距離情報L1は以下の数2式で示すことができる。
【0055】
【0056】
これにより、算出部106が位相差Sを算出することで、支持部23の歪み情報を算出することができる。
【0057】
図3に戻る。第3の取得部107は、対象から発信する測定対象電波52をアンテナ21で受信した測定電波を示す受信測定電波を取得する。
【0058】
詳細には、まず、第3の取得部107は、発信制御部102により通信システム30の電波の発信開始がされると、測定電波をアンテナ21で受信することを開始する。また、第3の取得部107は、駆動制御部104の駆動制御によって駆動部23A及び駆動部24Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動制御されるごとに、駆動制御部104により所定の回転角度ごとに回転駆動させる支持部25上に載置された車両Tに搭載される通信システム30から発信する測定対象電波52をアンテナ21で受信する。
【0059】
さらに、第3の取得部107は、発信制御部102により通信システム30の電波の発信停止がされると、測定電波をアンテナ21で受信することを停止する。そして、第3の取得部107は、アンテナ21で受信した受信測定電波を取得する。また、第3の取得部107は、取得した受信測定電波を補助記憶装置14に記憶する。
【0060】
補正部108は、算出部106により算出された受信理想電波位相と第2の取得部105により取得された第2の受信電波位相との差を示す位相差Sから算出される支持部23の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する。
【0061】
詳細には、補正部108は、算出部106により算出された歪み情報に含まれる距離情報L1に基づいて、第3の取得部107により取得された受信測定電波を補正する。例えば、補正部108は、受信測定電波の振幅、及び受信測定電波の位相のうち、少なくとも1つを補正する。
【0062】
ここで、受信測定電波の振幅、及び受信測定電波の位相を補正する内容について説明する。
【0063】
受信測定電波の振幅は、受信測定電波の電力の振幅である。補正部108は、算出部106により算出された支持部23の歪みの距離情報L1と、歪みが生じない場合のアンテナ21と基準波源40の送受信間距離Rと、自由空間伝搬損失と、を用いて示す以下の数3式で導出した補正値を、第3の取得部107により取得された受信測定電波に加算して、受信測定電波の電力の振幅を補正する。補正部108は、補正した受信測定電波の電力の振幅を補助記憶装置14に記憶する。また、補正値は以下の数3式で示すことができる。
【0064】
【0065】
また、補正部108は、算出部106により算出された位相差Sと、基準波源40の周波数f1と、通信システム30の周波数f2から成る位相補正値=S×f2/f1を第3の取得部107により取得された受信測定電波に加算して、受信測定電波の位相を補正する。補正部108は、補正した受信測定電波の位相を補助記憶装置14に記憶する。
【0066】
これにより、算出された位相差Sを用いて、測定結果を補正することで、高精度な測定を行うことができる。
【0067】
次に、第1の実施形態の測定装置10で実行する処理の流れの一例を説明する。
【0068】
図5は、測定装置10で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートが実行される直前の状態では、基準波源40は電波を発信していない状態であるものとして説明する。
【0069】
測定部101は、アンテナ21及び基準波源40の基準の位置関係を測定する(ステップS501)。
【0070】
発信制御部102は、発信電波50の発信開始を表す発信開始信号を基準波源40へ送信する(ステップS502)。発信開始信号を受付けた基準波源40は、発信電波50の発信を開始する。
【0071】
第1の取得部103は、アンテナ21及び対象電波を発信する基準波源40の基準の位置関係に基づいて、基準波源40から発信する発信電波50をアンテナ21で受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する(ステップS503)。
【0072】
駆動制御部104は、駆動部23A及び駆動部24Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の測定位置へと移動する制御を開始する(ステップS504)。
【0073】
第2の取得部105は、アンテナ21の位置が測定位置へと移動制御されるごとに、基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信し、発信電波50の位相を示す第2の受信電波位相を取得する(ステップS505)。
【0074】
算出部106は、測定部101により測定されたアンテナ21及び基準波源40との基準距離と、第1の取得部103により取得された第1の受信電波位相と、アンテナ21と基準波源40の送受信間距離Rと、に基づいて、理論位相を算出する(ステップS506)。
【0075】
また、算出部106は、第2の取得部105により取得された第2の受信電波位相と、理論位相との差分から位相差Sを算出する(ステップS507)。
【0076】
さらに、算出部106は、算出した位相差Sから支持部23の歪み情報を算出する(ステップS508)。ステップS508が終了すると、本処理は終了する。
【0077】
続いて、
図6は、測定装置10で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートが実行される直前の状態では、
図5の処理が終了している状態であるものとして説明する。また、
図6に示すフローチャートが実行される直前の状態では、通信システム30は電波を発信していない状態であるものとして説明する。
【0078】
測定部101は、アンテナ21及び通信システム30の基準の位置関係を測定する(ステップS511)。
【0079】
発信制御部102は、測定対象電波52の発信開始を表す発信開始信号を通信システム30へ送信する(ステップS512)。発信開始信号を受付けた通信システム30は、測定対象電波52の発信を開始する。
【0080】
駆動制御部104は、駆動部23A及び駆動部24Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の測定位置へと移動する制御を開始する(ステップS513)。駆動制御部104は、アンテナ21の位置が移動制御されるごとに、駆動部25Aを制御する。
【0081】
また、駆動制御部104は、駆動部25Aと協働して支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動を制御する(ステップS514)。
【0082】
第3の取得部107は、通信システム30から発信する測定対象電波52をアンテナ21で受信した測定電波を示す受信測定電波を取得する(ステップS515)。
【0083】
補正部108は、算出部106により算出された歪み情報に基づいて、第3の取得部107により取得された受信測定電波を補正する(ステップS516)。補正部108は、補正した受信測定電波を補助記憶装置14に記憶する。補正部108が補助記憶装置14に記憶すると、本処理は終了する。
【0084】
以上説明したように、本開示の一態様に係る測定装置10は、アンテナ21及び対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、アンテナ21で受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する。また、測定装置10は、第1の受信電波位相に基づいて、アンテナ21の位置毎に、対象から発信する対象電波をアンテナ21で受信した理想的な電波の位相を示す受信理想電波位相を算出する。さらに、測定装置10は、アンテナ21の位置毎に、アンテナ21で受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する。そして、測定装置10は、受信理想電波位相と第2の受信電波位相との差を示す位相差Sから算出される支持部23の歪みを示す歪み情報に基づいて補正する。
【0085】
これにより、本実施形態によれば、アンテナ21を支える支持部23に歪みが生じた状態においても、アンテナ21が受信する電波の位相差Sから支持部23の歪みを算出することで、通信システム30の通信性能を高精度な測定を行うことができる。
【0086】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図面を用いて説明する。
【0087】
次に、第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態と共通する部分については説明を適宜に省略する。なお、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付与し適宜説明を省略する。
【0088】
上述の第1の実施形態では、算出部106に算出された位相差Sに基づいて、第3の取得部107により取得された受信測定電波を補正する形態を説明した。第2の実施形態では、算出部106が支持部23の位置座標を算出することで、駆動制御部104のアンテナ21の駆動制御内容を補正する形態について説明する。
【0089】
詳細には、第2の実施形態に係る測定装置10が備える算出部106が算出する歪み情報は、支持部23の歪みの位置を示す位置情報が含まれる。ここで、
図7を用いて位置情報について説明する。
【0090】
図7は、アンテナ21及び基準波源40の位置座標の一例を説明する図である。
【0091】
まず、駆動制御部104は、駆動部23Aと協働してアンテナ21の位置をZ方向へ一定間隔Δhで移動させる制御を行う。ここで、一定間隔Δhは、アンテナ21がZ方向へ移動する距離を示す。なお、一定間隔Δhの値は一定である。また、一定間隔Δhは、n-1回目のアンテナ21の位置座標(Xn-1,Zn-1)と、n回目のアンテナ21の位置座標(Xn,Zn)により、以下の数4式で示すことができる。
【0092】
【0093】
支持部23に歪みがない場合、n回目のアンテナ21の位置座標(Xn,Zn)は、n-1回目のアンテナ21の位置座標と、一定間隔Δhで表すと、位置座標(Xn,Zn)=(Xn-1,Zn-1+Δh)で表すことができる。経路211は、支持部23が歪んでいる状態のアンテナ21の移動軌跡を示す。例えば、支持部23が歪んでいる状態であると、アンテナ21は経路211のように、X方向、Z方向へ移動するため、n回目のアンテナ21の位置座標はn-1回目のアンテナ21の位置座標と、一定間隔Δhで表すことができない。
【0094】
本実施形態では、算出部106は、第1の取得部103が取得する第1の受信電波位相、及び第2の取得部105が取得する第2の受信電波位相との位相差Sに基づいて支持部23の歪み情報を算出する。
【0095】
詳細には、第1の取得部103は、アンテナ21及び基準波源40が配置された基準の位置関係に基づいて、発信制御部102により発信される発信電波50の発信開始信号を受け付けた基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信する。第2の取得部105は、駆動制御部104の駆動制御によって駆動部23Aと協働してアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動制御されるごとに、発信制御部102により発信される発信電波50の発信開始信号を受け付けた基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信する。
【0096】
第2の取得部105は、アンテナ21の位置が測定装置10へ移動制御されるごとに、基準波源40から発信電波50をアンテナ21で受信しているため、第2の取得部105は、n-1回目で受信した第2の受信電波位相とn回目のアンテナ21で受信した第2の受信電波位相を取得することができる。算出部106は、n-1回目で受信した第2の受信電波位相とn回目のアンテナ21で受信した第2の受信電波位相に基づいて、n-1回目とn回目の送受信間距離の差L2を算出することができる。
【0097】
また、送受信間距離の差L2は、n-1回目のアンテナ21の位置座標(Xn-1,Zn-1)と、n回目のアンテナ21の位置座標(Xn,Zn)と、基準波源40の位置座標(Xr,Zr)により、以下の数5式で示すことができる。
【0098】
【0099】
算出部106は、測定部101が測定したアンテナ21及び基準波源40の基準位置の位置座標(X0,Z0)と、算出した位相差Sと、数4式と数5式から成る連立方程式を解くことで、支持部23の歪み座標を算出することができる。
【0100】
補正部108は、算出部106により算出された位置情報に基づいて、駆動制御部104により駆動制御されたアンテナ21に駆動制御に関する制御内容を補正する。詳細には、補正部108は、制御内容に対応するアンテナ21の支持部23の歪みの座標を示す座標情報を補正する。例えば、アンテナ21が+X方向に歪んでいた場合、補正内容は―X方向に移動するように補正する。また、アンテナ21が―Z方向に歪んでいた場合、補正内容は+Z方向に移動するように補正する。
【0101】
これにより、アンテナ21の移動座標を補正することで、アンテナ21で受信した電波を補正することなく、高精度な測定を行うことができる。
【0102】
図8は、測定装置10で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートが実行される直前の状態では、基準波源40は電波を発信していない状態であるものとして説明する。
【0103】
測定部101は、アンテナ21及び基準波源40の基準の位置関係を測定する(ステップS521)。
【0104】
発信制御部102は、発信電波50の発信開始を表す発信開始信号を基準波源40へ送信する(ステップS522)。発信開始信号を受付けた基準波源40は、発信電波50の発信を開始する。
【0105】
第1の取得部103は、アンテナ21及び基準波源40の基準の位置関係に基づいて、基準波源40から発信する発信電波50をアンテナ21で受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する(ステップS523)。
【0106】
駆動制御部104は、駆動部23Aと協働してアンテナ21の位置を+Z方向へ一定間隔Δhで移動させる制御を行う(ステップS524)。
【0107】
第2の取得部105は、アンテナ21の位置が測定位置へと移動制御されるごとに、基準波源40から発信された発信電波50をアンテナ21で受信し、発信電波50の位相を示す第2の受信電波位相を取得する(ステップS525)。
【0108】
また、算出部106は、第2の取得部105により取得された第2の受信電波位相と、直前に取得された第2の受信電波位相の位相との差分から位相差Sを算出する(ステップS526)。
【0109】
さらに、算出部106は、測定部101が測定したアンテナ21及び基準波源40の基準位置の位置座標と、算出した位相差Sから支持部23の歪み情報を算出する(ステップS527)。ステップS527が終了すると、本処理は終了する。
【0110】
続いて、
図9は、測定装置10で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートが実行される直前の状態では、
図8の処理が終了している状態であるものとして説明する。
図9に示すフローチャートが実行される直前の状態では、通信システム30は電波を発信していない状態であるものとして説明する。
【0111】
測定部101は、アンテナ21及び通信システム30の基準の位置関係を測定する(ステップS531)。
【0112】
補正部108は、駆動制御部104が制御する駆動部23Aの内容を補正する(ステップS532)。
【0113】
駆動制御部104は、補正部108により補正された内容に基づいて、アンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の測定位置へと移動する制御を開始し、アンテナ21の位置が移動制御されるごとに、駆動部25Aを制御する(ステップS533)。また、駆動制御部104は、駆動部25Aと協働して支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動を制御する。通信システム30の測定が終了すると、本処理は終了する。
【0114】
以上説明したように、本開示の一態様に係る測定装置10は、アンテナ21及び対象電波を発信する対象の基準の位置関係に基づいて、アンテナ21で受信した電波の位相を示す第1の受信電波位相を取得する。また、測定装置10は、アンテナ21の位置毎にアンテナ21で受信した電波の位相を示す第2の受信電波位相を取得する。さらに、測定装置10は、第1の受信電波位相と第2の受信電波位相の位相差Sに基づいて支持部23の歪みの位置を示す位置情報を算出する。また、測定装置10は、支持部23の歪みの位置を示す位置情報に基づいてアンテナ21の駆動制御に関する制御内容を補正する。
【0115】
これにより、本実施形態によれば、アンテナ21を支える支持部23に歪みが生じた状態においても、アンテナ21が受信する電波の位相差Sから算出する支持部23の歪みの位置座標に基づいてアンテナ21の移動座標を補正することで、通信システム30の通信性能を高精度な測定を行うことができる。
【0116】
上記実施形態の測定装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態の測定装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態の測定装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0117】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
10 測定装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 補助記憶装置
15 外部I/F
21 アンテナ
22、23、24、25 支持部
30 通信システム
40 基準波源
101 測定部
102 発信制御部
103 第1の取得部
104 駆動制御部
105 第2の取得部
106 算出部
107 第3の取得部
108 補正部