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▶ 小野谷機工株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035728
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】車両用作業装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/00 20060101AFI20230306BHJP
   B66F 19/00 20060101ALI20230306BHJP
   B60S 5/04 20060101ALI20230306BHJP
   B60B 29/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60S5/00
B66F19/00 C
B60S5/04
B60B29/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142785
(22)【出願日】2021-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
(71)【出願人】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智將
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026BA04
3D026BA24
3D026BA43
(57)【要約】
【課題】 タイヤ交換時の作業者の作業負担を軽減することができる車両用作業装置を提供する。
【解決手段】 建物内で車両が位置する作業空間の上部に水平に延びて配設された走行レール5と、走行レール5に移動自在に設けられる移動体6と、移動体6に、上下方向に延びる第1軸線L1まわりに角変位自在に連結される基端部を有するアーム9と、アーム9の遊端部に設けられ、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール10、および巻取リール10に巻回される索条11を有するバランサ装置12と、索条11が掛止められ、圧縮空気によって駆動する作動部を有する作業工具13と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で車両が位置する作業空間の上部に水平に延びて配設された走行レールと、
前記走行レールに移動自在に設けられる移動体と、
前記移動体に連結される基端部、および前記基端部とは反対側の遊端部を有し、前記基端部が上下方向に延びる第1軸線まわりに角変位自在なアームと、
前記遊端部に設けられ、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール、および前記巻取リールに巻回される索条を有するバランサ装置と、
前記索条が掛止められ、圧縮空気によって駆動される作動部を有する作業工具と、を備えることを特徴とする車両用作業装置。
【請求項2】
前記移動体に上端部が固定され、前記上下方向に延びる長尺の柱状体を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用作業装置。
【請求項3】
前記柱状体の下部に設けられ、前記作業工具および複数の物体を載置するための載置台を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用作業装置。
【請求項4】
前記移動体から前記索条に沿って垂下し、前記作業工具に前記圧縮空気を供給する可撓性の圧縮空気供給管を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項5】
前記索条および前記圧縮空気供給管を覆うカバーシートを含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用作業装置。
【請求項6】
前記アームは、前記第1軸線に平行な第2軸線まわりに角変位自在に連結される複数のアーム部材と、
互いに連結された2つのアーム部材を、前記2つのアーム部材が重なる方向にばね付勢するばねと、を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項7】
前記作業工具の排気口部に一端部が接続され、前記索条に沿って配設される可撓性の排気管と、
前記排気管の他端部に接続される消音器と、を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項8】
前記柱状体に設けられ、タイヤに圧縮空気を充填するための空気充填装置を含むことを特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項9】
前記圧縮空気供給管に接続され、前記作業工具に供給される圧縮空気の圧力を所定圧力に設定するための圧力設定装置を含むことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項10】
前記柱状体に設けられ、電源電力が供給される給電用接続端子を含むことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3~9のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項11】
前記柱状体に設けられ、圧縮空気が供給される給気用管継ぎ手を含むことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3~10のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項12】
前記作業工具は、インパクトレンチであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスおよびトラックなどの大型車両のタイヤ交換作業等に用いられ、インパクトレンチ(impact wrench)等の作業工具を吊下げて保持することができる車両用作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型車両のタイヤ交換作業では、大径のホイールボルトおよびホイールナットを緩めまたは締め付けるため、重量が例えば12kg~22kg程度の大型インパクトレンチが用いられている。大型車両のタイヤ交換作業は、乗用車のタイヤ交換作業に比べてホイールボルトおよびホイールナットの本数、タイヤ本数も多く、作業者は大型車両のタイヤ交換に重労働を強いられる。このような作業者の労働負担を軽減するために、例えば特許文献1に記載される車両用作業工具移動装置が用いられている。
【0003】
この従来技術の車両用作業工具移動装置は、天井に配設されるガイドレールに沿って移動する移動体と、該移動体に水平面内の旋回を可能としてその基端部側が枢着されるスウィングアームと、該スウィングアームの先端部から垂下されてその先端に作業工具が連結される線状の工具保持部材と、を備える。この従来技術では、移動体は基板を有し、スウィングアームは、その先端部から該工具保持部材が垂下される第1部と、第1部と180°反対方向に突設される第2部とを具備し、第2部には、基板の下面を転動するボールを備えるガイド材が付設された構成が提案されている。
【0004】
他の従来技術は、例えば特許文献2にインパクト装置として記載されている。この従来技術のインパクト装置は、旋回可能として天井に配設されるアームを備え、該アームの先端部に付設の弾発部材を有するバランサを介して該先端部から線状体が垂下され、該線状体の先端にレンチ部が連結されて、アームの先端部からレンチ部が吊り下げられ、天井に配設されるアームに消音器を取付け、線状体の先端に連結されたレンチ部の排気口に排気ダクトを接続すると共に、排気ダクトはアームに取付けられた消音器に接続され、線状体と排気ダクトとは外装材にて被覆された構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3621807号公報
【特許文献2】特許第3571495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1,2に記載される各従来技術では、バランサから延びる線状体の先端部にインパクトレンチ等の作業工具だけが連結された構成であるので、タイヤ交換作業に必要なタイヤレバーや清掃機器、グリース等の小物類等の他の物品を作業場所とは異なる保管場所まで作業者が取りに行く必要があり、このような作業者の移動に大きな労力および手間を要し、タイヤ交換作業の作業効率が低いという問題がある。また、タイヤ交換作業以外に、例えば車両の修理およびメンテナンスなどの各種の作業を実施するに際して、インパクトレンチ等の一つの作業工具以外の工具および部品を作業場所から離れた場所まで取りに行き、または返却する必要があり、そのために作業者は作業を中断することになり、作業効率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、作業者の作業負担を軽減し、作業効率を向上することができる車両用作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建物内で車両が位置する作業空間の上部に水平に延びて配設された走行レールと、
前記走行レールに移動自在に設けられる移動体と、
前記移動体に連結される基端部、および前記基端部とは反対側の遊端部を有し、前記基端部が上下方向に延びる第1軸線まわりに角変位自在なアームと、
前記遊端部に設けられ、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール、および前記巻取リールに巻回される索条を有するバランサ装置と、
前記索条が掛止められ、圧縮空気によって駆動される作動部を有する作業工具と、を備えることを特徴とする車両用作業装置である。
【0009】
また本発明は、前記移動体に上端部が固定され、前記上下方向に延びる長尺の柱状体を含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記柱状体の下部に設けられ、前記作業工具および複数の物体を載置するための載置台を含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記移動体から前記索条に沿って垂下し、前記作業工具に前記圧縮空気を供給する可撓性の圧縮空気供給管を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記索条および前記圧縮空気供給管を覆うカバーシートを含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記アームが、前記第1軸線に平行な第2軸線まわりに回動自在に連結される複数のアーム部材と、
互いに連結された2つのアーム部材を重なる方向にばね付勢するばねと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記作業工具が、前記圧縮空気の排気を排出する排気口部を有し、
前記排気口部に一端部が接続され、前記索条に沿って配設される可撓性の排気管と、
前記排気管の他端部に接続される消音器と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記柱状体に設けられ、タイヤに圧縮空気を充填するための空気充填装置を含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記圧縮空気供給管に接続され、前記作業工具に供給される圧縮空気の圧力を所定圧力に設定するための圧力設定装置を含むことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記柱状体に設けられ、電源電力が供給されている給電用接続端子を含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記柱状体に設けられ、圧縮空気が供給される給気用管継ぎ手を含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記作業工具が、インパクトレンチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建物内で車両が位置する作業空間の上部に水平に延びて走行レールが配設される。走行レールには、移動体が移動自在に支持され、移動体には、アームの基端部が上下方向に延びる第1軸線まわりに角変位自在に設けられる。アームの遊端部には、バランサ装置が設けられる。バランサ装置は、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リールと、巻取リールに巻回される索条とを有する。索条は、例えばねじ締め作業およびねじ緩め作業などの車両に対して作業を行うための作動部を有する作業工具に掛止められる。作業工具に圧縮空気が供給されると作動部が駆動し、前述のねじ締め作業およびねじ緩め作業などの作業を行うことができる。したがって、作業者が例えば作業工具を押す、または引くなどの操作を行うと、移動体は操作した方向に走行レールに沿って移動し、アームおよびバランサ装置も操作方向に追従して移動するので、作業者は作業途中で作業工具の例えば作業位置を変えるために、作業を中断してアームおよびバランサ装置を作業工具とは別に移動させる必要がなく、移動体とともに作業工具、アームおよびバランサ装置を同じ方向へ同時に移動させることができ、これによって作業者の作業負担が軽減され、作業効率を向上することができる。
【0021】
本発明によれば、移動体には柱状体の上端部が固定される。る。したがって、作業者が例えば柱状体を押す、または引くなどして操作すると、移動体は操作した方向に走行レールに沿って移動し、作業工具を同じ方向へ移動させることができる。これによって、作業者は、作業途中に作業位置から離れた場所にある作業工具を取りに行く必要が無くなり、作業の中断時間および中断回数を低減し、作業効率をより向上することができる。
【0022】
本発明によれば、柱状体の下部には、載置台が備えられる。載置台には、物体である例えば作業に用いるレンチなどの工具およびボルトおよびナットなどの部品を乗載することができる。したがって、作業者が例えば柱状体を押す、または引くなどして操作すると、移動体は操作した方向に走行レールに沿って移動し、作業工具および載置台を同じ方向へ移動させることができる。これによって、作業者は、作業途中に作業位置から離れた場所にある工具、部品を取りに行く必要が無くなり、作業の中断時間および中断回数を低減し、作業効率をより向上することができる。
【0023】
本発明によれば、移動体から索条に沿って圧縮空気供給管が垂下するので、前記従来技術のように、床面上に圧縮空気供給管が直接配置されることをなくし、圧縮空気供給管が他の機器に繋がるホースおよび配線等と絡みつくという不具合の発生を回避することができる。これによって、圧縮空気供給管、他のホースおよび配線等の取り回しに手間を要することが無くなり、作業者の作業負担を軽減し、作業効率を向上することができる。
【0024】
本発明によれば、索条と圧縮空気供給管とがカバーシートによって覆われているので、索条と圧縮空気供給管とを作業工具に追従してまとめで移動させることができる。これによって移動時に慣性力によって索条と圧縮空気供給管とが個別に移動して、車両およびその他の箇所に当接しないように作業者が移動時に注意しなければならないなどの労力を要せず、車両への作業の邪魔にならず、作業に集中することができ、作業効率を向上することができる。
【0025】
本発明によれば、アームは、複数のアーム部材とばねとを含んで構成されるので、作業によって伸長されても、ばねのばね力によって、互いに連結される2つの前記アーム部材は重なるように角変位し、これによって伸長されたアームは、外力を作用させない状態となると、遊端部が柱状体に近づく方向に屈曲した状態に戻り、初期位置に復帰させることができる。
【0026】
本発明によれば、作業工具は排気口部を有し、この排気部には、排気管の一端部が接続され、排気管の他端部には消音器が接続されるので、作業工具の作動時に大きな排気音を発生することを抑制し、騒音の発生を防止することができる。
【0027】
本発明によれば、柱状体に空気充填装置が設けられるので、作業者は作業工具を用いる作業中に離れた場所まで移動することなく、タイヤへ圧縮空気の供給作業を行うことができ、これによって作業の中断時間または中断回数を低減し、作業効率を向上することができる。
【0028】
本発明によれば、圧縮空気供給管に圧力設定装置が設けられるので、作業工具に供給される圧縮空気の圧力を設定するために、離れた場所まで移動することなく、圧縮空気の圧力を希望する所定設定に設定することができる。これによって作業効率を向上することができる。
【0029】
本発明によれば、柱状体に給電用端子が設けられるので、作業中の作業工具以外の例えば研磨装置等の電機工具を用いる必要が生じても、給電用端子から電機工具の電源電力を得ることができ、これによって簡便に別途の機器の使用が可能となり、利便性が向上され、作業効率を向上することができる。
【0030】
本発明によれば、柱状体に給気用管継ぎ手が設けられるので、作業工具以外の例えばエアガンなどの空気噴射装置を用いる必要が生じても、給気用管継ぎ手から圧縮空気を空気圧源として得ることができ、これによって簡便に別途の機器の使用が可能となり、利便性が向上され、作業効率を向上することができる。
【0031】
本発明によれば、作業工具がインパクトレンチであるので、車両のタイヤ交換作業であっても、インパクトレンチを用いてホイールボルトおよびホイールナット等の締付作業および緩め作業を行うことができ、作業者は、工具および部品などを離れた場所まで取りに行く必要がなくなり、作業者の作業負担を軽減して、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態の車両用作業装置1の全体構造を示す斜視図である。
図2】車両用作業装置1の外観を示す斜視図である。
図3】車両用作業装置1を側方から見た断面図である。
図4】車両用作業装置1を背後から見た断面図である。
図5】車両用作業装置1を上方から見た平面図である。
図6】走行レール5および移動体6の断面図である。
図7】移動体6を斜め上方から見た斜視図である。
図8】移動体6の構成を簡素化した断面図である。
図9】走行レール5に案内レール86を連結する固定具84および連結具87の構成を示す斜視図である。
図10】案内レール86の連結具87への取付け状態を示す分解斜視図である。
図11】柱状体7を一側方から見た正面図である。
図12】アーム9への作業工具13等の取付け状態を示す斜視図である。
図13】アーム9の伸縮動作を示す平面図である。
図14】アーム9の移動範囲を説明するための平面図である。
図15A】アーム9の伸長状態を示す側面図である。
図15B】アーム9の収縮状態を示す側面図である。
図16】バランサ装置12の内部構造を示す断面図である。
図17】消音器19の外観を示す斜視図である。
図18】コードリール140の外観を示す側面図である。
図19】空気充填装置150を示す正面図である。
図20】ホースリール260の外観を示す側面図である。
図21】レギュレータ装置170を示す側面図である。
図22】柱状体7のエアカプラ180およびコンセント181が設けられる部位を拡大した正面図である。
図23】載置台200の柱状体7への取付け状態を示す側面図である。
図24】載置台200の側面図である。
図25】載置台200を斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の車両用作業装置の実施形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態の車両用作業装置1の全体構造を示す斜視図である。図2は、車両用作業装置1の外観を示す斜視図である。図3は、車両用作業装置1を側方から見た断面図である。図4は、車両用作業装置1を図3の左側から見た断面図である。図5は、車両用作業装置1を上方から見た平面図である。本実施形態において、説明の便宜上、直交3軸X,Y,Z座標系を想定し、2台の車両V1,V2(総称する場合には、「車両V」と略記する)は、それらの長手方向が、X軸と平行となるように工場などの建物内でほぼ水平な床3上に停車しているものとする。本実施形態において、車両Vの長手方向は、車軸に平行な方向である。
【0035】
本実施形態において、各車両Vは2つ前輪と、8つの後輪とを備え、X方向の車長Lが12m、Z方向の車幅Bが2.5m、Y方向の車高H1が3.5mの大型トラックである。本発明の他の実施形態では、大型トラックに代えて、大型バスまたは大型作業車両等であってもよく、これらの大型トラック、大型バスおよび大型作業車両を含めて、大型車両と総称する。大型車両は、乗用普通自動車等の普通車両に比べてタイヤ本数が多く(例えば10本)、ホイールナット、ホイールボルトも普通車両に比べて大径であり、タイヤ交換に大きな回転トルクを発生する大型インパクトレンチが作業工具13として用いられる。このインパクトレンチの重量は、12kg~22kg程度と大きく、本実施形態では、作業工具13の持ち運びおよび保持等の作業者の作業負担を軽減するため、車両用作業装置1に垂下された状態で用いることができるように構成されている。
【0036】
車両用作業装置1は、図5に示されるように、例えば車両修理工場等の建物の四方の壁3a,3b,3c,3dと、各壁3a,3b,3c,3dのうち、Z方向に対向する2つの壁3a,3c間にわたって平行に架設された複数(本実施形態では4)の梁4と、各梁4の下部に平行に固定され、タイヤ交換等のために搬入された2台の車両V1,V2が位置する作業空間の上部に位置し、各車両Vの長手方向に沿って延びる複数(本実施形態では4)の走行レール5と、各走行レール5に移動自在に支持される複数(本実施形態では4)のタイヤ交換設備2と、を含む。
【0037】
対向する2つの壁3a,3cの両端部間に位置する壁3b,3dのうちの一方の壁3dには、各車両Vの出入り口6aが開口して設けられる。各梁4は、例えばI型鋼等の構造用鋼材から成る。各走行レール5から受ける荷重は、各梁4を経て各壁3a,3cに伝達され、支承される。各車両Vは、Z方向に第1距離L101をあけて停車している。この第1距離L101は、例えば6.5mである。各走行レール5は、各車両Vの中心軸線を平面視においてZ方向の間隔に相当し、対を成す各2本の走行レール5のZ方向の間隔は、第2距離L102に設定され、この第2距離L102は、例えば4.90mである。図5において、各車両V間で略長円状または閉ループ状をなす内側の仮想線m1は、各走行レール5毎に装備されるアーム9の遊端部の実稼動範囲を示し、外側の仮想線m2は、アーム9の遊端部の最大移動範囲を示し、各車両Vのすべての車輪のタイヤ交換作業を行うためにタイヤ交換設備2を適切な位置まで十分に移動させることができるように構成されている。
【0038】
車両用作業装置1は、図2に示されるように、前述の複数の走行レール5と、各走行レール5に該走行レール5に沿って移動自在に支持される複数の移動体6と、移動体6に、基端部が上下方向に延びる第1軸線L11まわりに角変位自在に連結される一対のアーム9と、各アーム9の遊端部にそれぞれ設けられ、第1軸線L11に垂直な軸線L22まわりの巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール10、および巻取リール10に巻回される索条11を有するバランサ装置12と、索条11が掛止められ、圧縮空気によって駆動する作動部を有する作業工具13と、走行レール5から延びて作業工具13に接続され、作業工具13に圧縮空気を供給する可撓性を有する圧縮空気供給管15と、を備える。
【0039】
本発明の他の実施形態では、車両用作業装置1は、移動体6に上端部が固定され、下方に延びる長尺の柱状体7と、柱状体7の下部に設けられ、作業工具13および複数の物体を載置するための載置台200と、を含む。各アーム9のそれぞれは、後述の図12に示されるように、第1軸線L11に平行な第2軸線L2,L3,L4まわりに回動自在に連結される複数のアーム部材9a,9b,9c,9dを有する。アーム9の基端部は、柱状体7に連結しない場合には、移動体6に直接連結されてもよい。柱状体7は、移動体6と連動し、より多くの機材を安定に移動させる場合に用いられる。
【0040】
図6は走行レール5および移動体6の断面図であり、図7は、移動体6を斜め上から見た斜視図であり、図8は、移動体6の構成を簡素化して示す断面図である。走行レール5は、I型鋼等の構造用鋼材から成り、上フランジ51と、下フランジ52と、上フランジ51および下フランジ52を連結するウエブ53とを有する。上フランジ51は、ボルトおよびナット等の接合部材によって梁4に固定され、下フランジ52によって移動体6が移動自在に支持される。このような走行レール5は、床3から鉛直方向に図3に示されるように高さH2の位置に水平に延びて配設される。高さH2は、例えば5.2mである。移動体6は、図7に示されるように、断面形状が四角形の筒状の鋼材から成る基体61と、基体61の長手方向両端部の上フランジ62上にそれぞれ固定される一対のローラユニット63,64と、基体61の長手方向中央部で上フランジ62上に固定される振れ止めユニット65とを有する。
【0041】
各ローラユニット63,64は、上フランジ62に溶接等によって固定される板状の基体66と、基体66上に設けられるZ方向に平行な軸線L13を有するピン67と、ピン67に連結されるブラケット68と、ブラケット68に軸線L13に平行な軸線まわりに回転自在に設けられる各一対の走行ローラ69とを有する。各走行ローラ69は、走行レール5の下フランジ52のウエブ53の両側に対称に配置される。
【0042】
このようなローラユニット63,64は、走行レール5の図6の断面視において左右に二等分する鉛直な仮想一平面に関して面対称に上フランジ62上に設けられ、同様に構成される。揺れ止めユニット65は、上フランジ62に溶接またはボルトおよびナット等のねじ部材によって固定される板状の基体70と、基体70に垂直に立ち上がって設けられ、Z方向の軸線を有する円柱状の一対の案内突起71が設けられる案内板72と、各案内突起71が移動自在に嵌まり込み、Y方向に平行に延びる一対の案内長孔73を有する板状のブラケット74と、ブラケット74にZ方向の軸線まわりに回転自在に設けられる押し上げローラ75と、ブラケット74に垂直に固定される断面L字状の取付け板76と、取付け板76のX方向両端部にそれぞれ螺着される一対の調整ボルト77と、を有する。調整ボルト77を螺進または螺退させることによって、ブラケット74を案内長孔73によって案内されながら上下方向(Y方向)に移動させて、各押し上げローラ75による下フランジ52への押し上げ力を調整することができる。このような押し上げローラ75による押し上げ力によって、移動体6のZ方向へのずれ量を調整し、移動体6を走行レール5に沿って直線移動するように調整することができる。
【0043】
基体61は、上フランジ62と、下フランジ79と、上フランジ62の幅方向両端部と下フランジ79の幅方向両端部とに垂直に連なる一対の側壁80,81とを有する。下フランジ79には、信号線、電力線および圧縮空気供給管などを柱状体7内へ挿入するために、透孔82が形成される。この透孔82を囲むように柱状体7の上端部が基体61に連結される。柱状体7の上端部には、例えば大略的に逆台形状の形鋼材から成るブラケット83が溶接等によって接合され、基体61の下フランジ79に固定されている。基体61の一方の側壁81には、配管184の貫通孔が形成されるため、補強板85が溶接またはねじ止め等によって接合されて補強されている。
【0044】
バランサ装置12から引き出されている索条11の引出部分と、圧縮空気供給管15とは、横並びに配置された状態で、図21に示されるように、帯状のカバーシート17aによって覆われる。カバーシート17aは、合成樹脂製シートから成り、好ましくは面状ファスナから成る。面状ファスナを用いることによって、長手方向の任意の位置で幅方向両端部を分離して開放することができ、管および電線等の出し入れが可能となり、使用上の利便性が向上される。
【0045】
図9は、走行レール5に案内レール86を連結する固定具84および連結具87の構成を示す斜視図であり、図10は、案内レール86の連結具87への取付け状態を示す分解斜視図である。走行レール5には固定具84および連結具87によって、信号線、電力線、圧縮空気供給管15等を、ケーブルベアとも称されるチェーン状の保持具90(図6参照)に収容された状態で支持する案内レール86が取付けられる。
【0046】
走行レール5には、柱状体7の移動に追従して安定に信号線、電力線、圧縮空気供給管15等を保持するため、案内レール86が連結具87によって連結される。連結具87は、図9の上方から見た平面視において、略T字状の天板88と、案内レール86の長手方向(X方向)に垂直な断面が略L字状の支持板89と、天板88を走行レール5の上フランジ51に固定する一対の固定具84とを有する。
【0047】
天板88は、平面視形状が長方形の基部88aと、基部88aの長手方向一端部から該長手方向に垂直な幅方向両側方へ突出した一対の突部88bとを有する。支持板89は、側方から見た形状が長方形の壁部89aと、壁部89aの長手方向一端部に直角に屈曲して連なる屈曲部89bと、壁部89aの長手方向他端部に直角に屈曲して連なる底板部89cとを有する。これらの天板88および支持板89は、例えば構造用鋼板から成る。底板部89c上には、案内レール86が乗載される。屈曲部89bと天板88とはボルト193およびナット192によって締結される。
【0048】
案内レール86は、ボルトおよびナット等のねじ部材によって底板部89cに走行レール5の一側方に一定の間隔をあけて平行に固定される。
【0049】
案内レール86は、図6に示されるように、帯状の底板91と、底板91の両側部上に垂直に固定される一対の側板92a,92bと、底板91の長手方向に間隔をあけて固定され、各側板92a,92bと底板91とを接合する複数のリブ93とを有する。案内レール86から離れた保持具90が底板91上へ戻ろうとするとき、保持具90が案内レール86の延びる方向(X方向)に対して垂直な方向(Z方向)に多少ずれが生じたとしても、各案内部96a,96bによって各側板92a,92b間へ案内され、確実に底板91上へ復帰させることができる。
【0050】
固定具84は、一対の嵌合片84a,84bと、各嵌合片84a,84bを貫通する連結ボルト84cと、連結ボルト84cの両端部に螺着される締め付けナット84d,84eとを有する。各嵌合片84a,84bは、走行レール5の上フランジ51と天板88の突部88bとが厚み方向に重なった状態で嵌合する嵌合溝84a1,84b1を有する。
【0051】
各嵌合片84a,84bは、嵌合溝84a1,84b1を挟んで対向する各2つの内面84a2,84a3;84b2,84b3を有し、一方の内面84a2,84b2は、嵌合溝84a1,84b1の開口から溝底部に向かって他方の内面84b3,84b3に近接する方向に傾斜している。各嵌合溝84a1,84b1に上フランジ51および突部88bが嵌まり込んだ状態では、内面84a2,84a3;84b2,84b3間に上フランジ51および突部88bが当接し、締め付けナット84d,84eが締め込まれるにつれて、各嵌合片84a,84bが互いに近づく方向へ移動し、上フランジ51および突部88bが各内面84a2,84a3;84b2,84b3によって挟着され、上フランジ51と各突部88bとが固定され、こうして上フランジ51に天板88が固定される。
【0052】
天板88の基部88aの長手方向他端部には、複数のボルト193および複数のナット192によって支持板89の屈曲部89bが固定され、こうして天板88に支持板89が連結される。支持板89の底板部89cには、複数のボルト92によって案内レール86が連結される。各案内板94a,94bは、帯状の基部94a1,94b1と、基部94a1,94b1の遊端部に屈曲して連なる案内部94a2,94b2とを有する。各基部94a1は、長手方向に一定の間隔を開けて底板91にボルト等のねじ部材によって固定される。各案内板94a,94bは、各基部94a1,94b1の対向する内面を含む各仮想平面に対して各基部94a1,94b1から底板91に垂直な方向に離反するにつれて、例えば5°以上30°以下で傾斜している。
【0053】
このような案内板94a,94bによって各案内板94a,94bよりも外方(上方)へ持ち出された信号線、電力線、圧縮空気供給管等の部分を、各基部94a1,94b1間に案内して復帰させることができる。これらの信号線、電力線、圧縮空気供給管等は、例えば、ケーブルベアとも称される合成樹脂製のチェーン状保護具90に収容され、絡み等の発生が防止されている。
【0054】
図11は、柱状体7を一側方から見た正面図であり、図12はアーム9への作業工具13等の取付け状態を示す斜視図であり、図13は、アーム9の伸縮動作を示す平面図であり、図14は、アーム9の移動範囲を説明するための平面図であり、図15Aはアーム9の伸長状態を示す側面図であり、図15Bはアーム9の収縮状態を示す側面図である。アーム9の遊端部は、図14に示されるように、最大旋回半径R2の旋回軌跡を示し、符号R1は、実使用時の遊端部の第1軸線L11を中心とする旋回半径を示す、最大旋回半径R2は例えば1080mmであり、実使用旋回半径R1は例えば960mmである。前述の実可動範囲m1は、実使用旋回半径R1まで、アーム9を伸長させた状態で移動体6が走行レール5に沿って移動したときの作業可能範囲であり、前述の最大稼動範囲m2は、最大旋回半径R2までアーム9を伸長させた状態で移動体6が走行レール5に沿って移動したときの作業可能範囲である。
【0055】
柱状体7の一側部には、アーム9の基端部、したがって第1アーム部材9aの基端部を第1軸線L1まわりに角変位自在に支持する第1軸継ぎ手J1が設けられ、第1アーム部材9aの遊端部には第2軸継ぎ手J2が設けられ、第2軸継ぎ手J2によって第2アーム部材9bの一端部が第1軸線L1に平行な第2軸線L2まわり角変位自在に連結される。
【0056】
第2アーム部材9bの他端部には、第3軸継ぎ手J3が設けられ、第3軸継ぎ手J3によって第3アーム部材9cの他端部が第1軸線L11に平行な第3軸線L3まわりの角変位自在に連結される。第3アーム部材9cの一端部には第4軸継ぎ手J4が設けられ、第4軸継ぎ手J4によって第1軸線L11に平行な第4軸線L4まわり角変位自在に第4アーム部材9dの他端部が連結される。第4アーム部材9dの一端部は、アーム9の遊端部に相当し、係止リング部材100が固定され、係止リング部材100にはこの遊端部にはバランサ装置12が掛止められ、バランサ装置12には索条101を介して作業工具13が掛止められる。第3アーム部材9cの下面には、給気ホース103を掛け止める吊り具130が設けられる。
【0057】
第2アーム部材9bの第3軸継ぎ手J3寄りの部位には、ばねである第1引張りばね121の一端部が係止され、第3アーム部材9cの第3軸継ぎ手J3寄りの部位には、第1引張りばね121の他端部が係止される。第3アーム部材9cの第4軸継ぎ手J4寄りの部位には、ばねである第2引張りばね122の一端部が係止され、第4アーム部材9dの第4軸継ぎ手J4寄りの部位には第2引張りばね122の他端部が係止される。第1引張りばね121および第2引張りばね122によって、図13に仮想線で示されるように柱状体7から引き出されたアーム9は、図13に実線で示されるように所定の柱状体7に遊端部が近接した縮退位置に引き戻され、未使用状態では、仮想線で示されるように、伸長したままとなることが防がれる。
【0058】
作業工具13に作動用圧縮空気を供給するために、柱状体7の一側部には図示しない圧縮空気圧源から圧縮空気が導かれる急速管継ぎ手であるカップリング102が設けられ、カップリング102には給気ホース103の一端部に設けられるプラグ104が着脱自在に接続され、作業工具13の給気プラグ(図示せず)108には給気ホース103の他端部に設けられるカップリング105が着脱自在に接続される。
【0059】
作業工具13は、排気口106と、把持部107と、前述の給気プラグ108と、出力軸109と、アイボルト210とを有し、出力軸109の先端部に適切なツールを接続して、ボルトおよびナットなどの緩めまたは締め付け作業を行うことができる。アイボルト210には、スナップフック211が掛止められ、スナップフック211には索条201の一端側のフック部212が掛止められる。索条201は、他端側に第2のフック部112を有し、第2のフック部112はバランサ装置12の索条11の先端部に設けられるフック部に掛止められ、作業工具13がバランサ装置12に吊下げられる。
【0060】
図16は、バランサ装置12の内部構造を示す断面図である。バランサ装置12は、螺旋状の溝131にワイヤロープ等の索条11を収容し、スピンドル軸132を中心として回転可能な円錐状の回転ドラム133と、該回転ドラム133に、索条11を巻き取る力(巻取りトルク)を付与する巻回ばね134と、回転ドラム133、スピンドル軸132、巻回ばね134および索条11を巻回ばね134とともに収容するケーシング135と、を含む。ケーシング135は、本体部135aと、本体部135aに着脱可能に装着されるカバー部135bとを有する。カバー部135bは、ボルト136によって本体部135aに着脱可能に固定される。
【0061】
このようなバランサ装置12は、索条11のストロークが1.3m~1.5mの範囲で、9.0kg~22.0kgの負荷軽減容量を有し、このようなバランサ装置12の索条11に作業工具13を掛け止めることによって、作業工具13の自重を相殺することができるので、作業者が作業工具を支持する必要がなくなり、作業者への負担を軽減することができる。
【0062】
図17は、消音器19の外観を示す斜視図である。作業工具13は、排気口108を有し、排気口108には可撓性の排気管110の一端部が接続され、排気管110の端部に消音器19が接続される。この消音器19によって作業工具13の作動時に発生するインパクト騒音を抑制することができる。消音器19は、例えばSMC株式会社製、商品名「高消音サイレンサ ANA1-06」として商業的に入手可能である。このような消音器19を排気管110の一端部に接続することによって、作業工具13の作動時の排気音を、消音器19を設けない場合の排気音が99dBである場合、85dB以下に減衰させ、音圧を約1/5に減少させ、騒音の発生を抑制することができる。
【0063】
図18は、コードリール140の外観を示す側面図である。柱状体7の一側面には、ブラケット111によってコードリール140が設けられる。このようなコードリール140には、AC100Vの電源電力が供給される電力ケーブル141が巻回され、電力ケーブル141の先端部には、コネクタ142が接続される。コネクタ142を作業工具13以外の電動工具に接続することによって、電動工具に電源電力を供給することができる。これによって離れた場所に作業者が作業を中断して移動しなくても、容易に電動工具を用いることができる。
【0064】
図19は、空気充填装置150を示す正面図である。柱状体7の一側面には、空気充填装置150が設けられる。空気充填装置150は、圧力表示部151、第1圧力単位表示ランプ152、第2圧力単位表示ランプ153、タイマモード表示ランプ154、パンクモード表示ランプ155、偏平タイヤ充填モード表示ランプ156、大容積充填モード166、モード切換えボタン157、排気ボタン158、加算(+)ボタン159、スタートボタン160a、スキップボタン161、停止ボタン162、減算(-)ボタン163、チェックボタン164、およびレギュレータ165を有する。
【0065】
圧力表示部151は、例えば液晶表示素子から成り、タイヤ内の充填空気の圧力が数値で表示される。この数値の単位は、第1圧力単位表示ランプ152に表示される「kPa」であるか、または第2圧力単位表示ランプ153に表示される「HPa」であるかを、点灯しているランプ152または153によって明瞭に認識することができる。空気充填装置150には、前述のとおり、タイヤへの空気の充填モードが、タイマモード、パンクモード、偏平タイヤ充填(LT-Hi)モード、大容積充填モードの4種類が設定されており、これらの各モードを切り換えるためのモード切換えボタン157が設けられる。このモード切換えボタン157の押下によって、各モードをタイマモード、パンクモード、LT-Hiモード、高圧充填モードのいずれか1つを順次的に切り換えて選択することができる。切り換えられたモードは、タイマモード表示ランプ154、パンクモード表示ランプ155、LT-Hiモード表示ランプ156、ORモード選択ランプ166のいずれか1つの点灯によって、明瞭に認識することができる。
【0066】
タイマモード表示ランプ154が点灯されているときは、タイマモードに設定されており、パンク修理したタイヤ等に空気充填する場合に、一定時間そのままの状態で待機する際に使用するモードである。このモードでは、充填の終了と同時にタイマーが起動し、計時時間の表示と終了時のブザーの連続音とが発生する。経過時間は、初期設定で例えば5分間に設定されるが、任意時間を設定可能である。パンクモード表示ランプ155が点灯しているときは、パンクモードに設定されており、パンク箇所の確認を行う際に使用することができる。このモードの設定圧力は100kPaに初期設定され、それ以外の設定圧力に容易に変更することはできないように構成される。
【0067】
LT-Hiモード表示ランプ156が点灯しているときは、LT-Hiモードに設定されていることを示し、偏平タイヤに800kPa以上の高圧充填を行う際に使用することができる。通常モードでエラーが発生する場合には、このLT-Hiモードに切り換えることによって、円滑な空気充填を行うことができる。大容量充填モード表示ランプ161bが点灯しているときは、大容量充填モードに設定されており、大容量充填タイヤ等の内容量が大きいタイヤに空気充填する際に使用される。通常モードでエラーが発生し、充填できない場合にこのモードを選択することによって、円滑な空気充填が可能となる。
【0068】
空気充填装置150は、CPU(Central Processing Unit)およびRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の記憶装置を内蔵し、ROMに記憶されたプログラムを実行することによって、上記のように各運転モードを選択してタイヤに空気を充填することができるように構成される。
【0069】
図20は、ホースリール260の外観を示す側面図である。柱状体7にはホースリール260が設けられる。ホースリール260には、作業工具13以外に圧縮空気圧で駆動する作業工具、例えばドリル、研磨機等を使用するために、例えば150kPa~1200kPaの圧縮空気が供給される。ホースリール260は、リール本体201と、リール本体201に巻回されるホース202と、ホース202の先端部に接続されるコネクタ203と、把持具204とを有する。このようなホースリール260が柱状体7に設けられることによって、前述の圧縮空気で駆動する他の作業工具にコネクタ203を接続して、即座に使用することができる。
【0070】
図21は、レギュレータ装置170を示す側面図である。レギュレータ装置170は、圧縮空気供給管15に介在される開閉弁171と、レギュレータ本体172とを有する、レギュレータ本体172は、操作ツマミ173と、圧力メータ174とを有し、操作ツマミ173の回転操作によって、圧縮空気の供給圧力を調整し、希望する圧力に設定することができる。設定された圧力は、圧力メータ174に表示される。緊急時等には、開閉弁171の操作グリップ175を角変位させることによって、圧縮空気の供給を遮断することができる。このようなレギュレータ装置170によって、作業者は、離れた場所まで移動せずに圧縮空気の設定圧力を調整することができる。
【0071】
図22は、柱状体7のエアカプラ180およびコンセント181が設けられる部位を拡大した正面図である。柱状体7には、150kPa~1200kPaの圧縮空気が供給される管継ぎ手である2つのエアカプラ180と、例えばAC100Vの電源電力が供給されている給電用端子であるコンセント181と、操作グリップ182a,182bとが設けられる。エアカプラ180は、急速管継ぎ手からなり、作業工具13以外の他の空気圧駆動の作業機器に圧縮空気を供給するために用いることができる。またコンセント181は、作業工具13以外の他の電力駆動の作業機器の電源に用いることができる。これらのエアカプラ180およびコンセント181によって、作業者は他の機器を容易に使用することができ、利便性が向上される。
【0072】
図23は、載置台200の柱状体7への取付け状態を示す側面図であり、図24は載置台200の側面図であり、図25は載置台200を斜め上方から見た斜視図である。柱状体7の下部には、ホイールボルト、ホイールナット、グリース容器等の物品を載置するための載置面200aを有する載置台200が設けられる。載置台200は、タイヤ交換作業に用いられるレバー等の工具を差し込んで収容するための2本のレバーケース213,214と、載置台200の下面に設けられる2つのライト205,206とを有する。載置台200の平面視における中央部には、柱状体7が挿通される案内パイプ207と、案内パイプ207に軸直角方向に差し込まれた棒状材208とが設けられる。柱状体7の下部には、例えば5~10個の貫通孔が柱状体7の軸線と平行な方向に互いに20mm~30mm程度の間隔をあけて形成される。作業者は、載置台200を希望する高さ位置に配置し、棒状材208を希望する高さ位置にある貫通孔に差し込むことによって、載置台200を希望する高さ位置に保持することができるように構成される。
【0073】
本実施形態によれば、建物内で車両V1,V2が位置する作業空間の上部に水平に延びて走行レール5が配設される。走行レール5には、移動体6が移動自在に支持され、移動体6には柱状体7の上端部が固定される。柱状体7の上端部近傍には、アーム9の基端部が上下方向に延びる第1軸線L11まわりに角変位自在に設けられる。アーム9の遊端部には、バランサ装置12が設けられる。バランサ装置12は、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール10と、巻取リール10に巻回される索条11とを有する。索条11は、例えばねじ締め作業およびねじ緩め作業などの車両Vに対して作業を行うための作動部を有する作業工具13に掛止められる。作業工具13に圧縮空気が供給されると作動部が駆動し、前述のねじ締め作業およびねじ緩め作業などの作業を行うことができる。柱状体7の下部には、載置台200が備えられ、載置台200には作業工具13が載置されるとともに、物体である例えば作業に用いるレンチなどの工具およびボルトおよびナットなどの部品を乗載することができる。したがって、作業者が例えば柱状体7を押す、または引くなどして操作すると、移動体6は操作した方向に走行レール5に沿って移動し、作業工具13および載置台200も操作方向に追従して移動するので、作業者は作業途中で作業位置から離れた場所にある工具、部品を取りに行く回数を少なくし、作業の中断時間または中断回数を低減することができる。これによって作業者の作業負担が軽減され、タイヤ交換作業の作業効率を向上することができる。本発明の他の実施形態では、アーム9は柱状体7の上端部近傍に設ける構成に限定されるものではなく、ブラケット等の連結部材によって移動体6に直接設けるように構成されてもよい。
【0074】
本実施形態によれば、移動体6から索条11に沿って圧縮空気供給管15が垂下するので、前記従来技術のように、床面上に圧縮空気供給管が直接配置されることをなくし、圧縮空気供給管15が他の機器に繋がるホースおよび配線等と絡みつくという不具合の発生を回避することができる。これによって、圧縮空気供給管15、他のホースおよび配線等の取り回しに手間を要することが無くなり、作業者の作業負担を軽減し、作業効率を向上することができる。
【0075】
本実施形態によれば、索条11と圧縮空気供給管15とがカバーシート17aによって覆われているので、索条11と圧縮空気供給管15とを作業工具13に追従してまとめで移動させることができる。これによって移動時に慣性力の相違によって索条11と圧縮空気供給管15とが個別に移動して、車両Vおよびその他の箇所に当接するなどの不具合を懸念して作業者が移動時に注意しなければならないなどの労力を要することなく、作業の邪魔にならず、作業に集中することができ、作業効率を向上することができる。
【0076】
本実施形態によれば、アーム9は、複数のアーム部材9a,9b,9c,9dと引張ばね121,122とを含んで構成されるので、作業によって伸長されても、引張ばね121,122のばね力によって、互いに連結される2つの前記アーム部材9a,9b,9c,9dは重なるように角変位し、これによって伸長されたアーム9は、伸長方向への外力を作用させない状態となると、遊端部が柱状体7に近づく方向に屈曲した状態に戻り、初期位置に復帰させることができる。
【0077】
本実施形態によれば、作業工具13は排気口部17を有し、この排気口部17には、排気管18の一端部が接続され、排気管18の他端部には消音器19が接続されるので、作業工具13の作動時の大きな排気音を発生することを抑制し、騒音の発生を防止することができる。
【0078】
本実施形態によれば、柱状体7に空気充填装置150が設けられるので、作業者は作業工具13を用いる作業中に移動することなく、タイヤへ圧縮空気の供給作業を行うことができ、これによって作業の中断時間または中断回数を低減し、作業効率を向上することができる。
【0079】
本実施形態によれば、圧縮空気供給管15に圧力設定装置21が設けられるので、作業工具13に供給される圧縮空気の圧力を設定するために、離れた場所まで移動することなく、圧縮空気の圧力を希望する所定設定に設定することができる。これによって作業効率を向上することができる。
【0080】
本実施形態によれば、柱状体7にコンセント181が設けられるので、作業中の作業工具13以外の例えば研磨装置等の電機工具を用いる必要が生じても、コンセント181から電動工具の電源電力を得ることができ、これによって簡便に別途の機器の使用が可能となり、利便性が向上され、作業効率を向上することができる。
【0081】
本実施形態によれば、柱状体7にエアカプラ180が設けられるので、作業工具13以外の例えば研磨装置などの圧縮空気によって駆動される機器を用いる必要が生じても、エアカプラ180から圧縮空気を空気圧源として得ることができ、これによって簡便に別途の機器の使用が可能となり、利便性が向上され、作業効率を向上することができる。
【0082】
本実施形態によれば、作業工具13がインパクトレンチであるので、車両Vのタイヤ交換作業であっても、インパクトレンチを用いてホイールボルトおよびホイールナット等の締付作業および緩め作業を行うことができ、作業者は、工具および部品などを離れた場所まで取りに行く必要がなくなり、作業者の作業負担を軽減して、作業効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 車両用作業装置
2 タイヤ交換設備
V1,V2 車両
3a,3b,3c,3d 壁
4 梁
5 走行レール
6 移動体
7 柱状体
8 アーム
L1 第1軸線
L2 第2軸線
9a,9b,9c,9d アーム部材
L3 第3軸線
10 巻取リール
11索条
12 バランサ装置
13 作業工具
15 圧縮空気供給管
16 面状ファスナ部材
17 排気部
18 排気管
19 消音器
20 充填装置
21 圧力設定装置
22 給電用端子
23 管継ぎ手
16 回転ドラム
17 トルクばね
【0084】
18a,18b ケーシング
51 上フランジ
52 下フランジ
53 ウエブ
61 基体
62 上フランジ
63,64 ローラユニット
65 振れ止めユニット
67 ピン
70 基体
71 案内突起
72 案内板
73 案内長孔
74 ブラケット
75 押し上げローラ
76 取付け板
77 調整ボルト77
79 下フランジ
80,81 側壁
82 透孔
83 取付け板
84 固定具
85 補強板
86 案内レール
87 連結具
88 天板
89 支持板
90 挟着具
L3 軸線
68 ブラケット
69 走行ローラ
L101 第1距離
L102 第2距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で車両が位置する作業空間の上部に配設された走行レールと、
前記走行レールに移動自在に設けられる移動体と、
前記移動体に連結される基端部、および前記基端部とは反対側の遊端部を有し、前記基端部が上下方向に平行な第1軸線まわりに角変位自在なアームと、
前記遊端部に設けられ、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール、および前記巻取リールに巻回される索条を有するバランサ装置と、
前記索条が掛止められ、圧縮空気によって駆動される作動部を有する作業工具と、を備え
前記走行レールは、上フランジと、下フランジと、前記上フランジおよび前記下フランジを連結するウエブとを有し、
前記移動体は、前記下フランジに支持される走行ローラを有する一対のローラユニットと、前記一対のローラユニット間に配置され、前記下フランジに下方から押し上げるように接触する押し上げローラを有する振れ止めユニットとを備えることを特徴とする車両用作業装置。
【請求項2】
前記移動体に上端部が固定され、前記上下方向に配設された長尺の柱状体を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用作業装置。
【請求項3】
前記柱状体の下部に設けられ、前記作業工具および複数の物体を載置するための載置台を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用作業装置。
【請求項4】
前記移動体から前記索条に沿って垂下し、前記作業工具に前記圧縮空気を供給する可撓性の圧縮空気供給管を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項5】
前記索条および前記圧縮空気供給管を覆うカバーシートを含むことを特徴とする請求項4に記載の車両用作業装置。
【請求項6】
前記アームは、前記第1軸線に平行な第2軸線まわりに角変位自在に連結される複数のアーム部材と、
互いに連結された2つのアーム部材を、前記2つのアーム部材が重なる方向にばね付勢するばねと、を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項7】
前記作業工具の排気口部に一端部が接続され、前記索条に沿って配設される可撓性の排気管と、
前記排気管の他端部に接続される消音器と、を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項8】
前記柱状体に設けられ、タイヤに圧縮空気を充填するための空気充填装置を含むことを特徴とする請求項に記載の車両用作業装置。
【請求項9】
前記圧縮空気供給管に接続され、前記作業工具に供給される圧縮空気の圧力を所定圧力に設定するための圧力設定装置を含むことを特徴とする請求項に記載の車両用作業装置。
【請求項10】
前記柱状体に設けられ、電源電力が供給される給電用接続端子を含むことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3~9のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項11】
前記柱状体に設けられ、圧縮空気が供給される給気用管継ぎ手を含むことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3~10のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【請求項12】
前記作業工具は、インパクトレンチであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の車両用作業装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は建物内で車両が位置する作業空間の上部に配設された走行レールと、
前記走行レールに移動自在に設けられる移動体と、
前記移動体に連結される基端部、および前記基端部とは反対側の遊端部を有し、前記基端部が上下方向に平行な第1軸線まわりに角変位自在なアームと、
前記遊端部に設けられ、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リール、および前記巻取リールに巻回される索条を有するバランサ装置と、
前記索条が掛止められ、圧縮空気によって駆動される作動部を有する作業工具と、を備え
前記走行レールは、上フランジと、下フランジと、前記上フランジおよび前記下フランジを連結するウエブとを有し、
前記移動体は、前記下フランジに支持される走行ローラを有する一対のローラユニットと、前記一対のローラユニット間に配置され、前記下フランジに下方から押し上げるように接触する押し上げローラを有する振れ止めユニットとを備えることを特徴とする車両用作業装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また本発明は、前記移動体に上端部が固定され、前記上下方向に配設された長尺の柱状体を含むことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明によれば、建物内で車両が位置する作業空間の上部に水平方向となるように走行レールが配設される。走行レールには、移動体が移動自在に支持され、移動体には、アームの基端部が上下方向に平行な第1軸線まわりに角変位自在に設けられる。アームの遊端部には、バランサ装置が設けられる。バランサ装置は、巻取り方向に回転トルクが付与された巻取リールと、巻取リールに巻回される索条とを有する。索条は、例えばねじ締め作業およびねじ緩め作業などの車両に対して作業を行うための作動部を有する作業工具に掛止められる。走行レールは、上フランジと、下フランジと、前記上フランジおよび前記下フランジを連結するウエブとを有し、移動体は、下フランジに支持される走行ローラを有する一対のローラユニットと、一対のローラユニット間に配置され、下フランジに下方から押し上げるように接触する押し上げローラを有する振れ止めユニットとを備える。作業工具に圧縮空気が供給されると作動部が駆動し、前述のねじ締め作業およびねじ緩め作業などの作業を行うことができる。したがって、作業者が例えば作業工具を押す、または引くなどの操作を行うと、移動体は操作した方向に走行レールに沿って移動し、アームおよびバランサ装置も操作方向に追従して移動するので、作業者は作業途中で作業工具の例えば作業位置を変えるために、作業を中断してアームおよびバランサ装置を作業工具とは別に移動させる必要がなく、移動体とともに作業工具、アームおよびバランサ装置を同じ方向へ同時に移動させることができ、これによって作業者の作業負担が軽減され、作業効率を向上することができる。