(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003580
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】通信システム、光トランシーバ、通信システムの制御方法および光トランシーバの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/564 20130101AFI20230110BHJP
H04B 10/073 20130101ALI20230110BHJP
【FI】
H04B10/564
H04B10/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104741
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小杉 優地
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA51
5K102AD01
5K102AH01
5K102AH21
5K102AH24
5K102AH26
5K102AL13
5K102AL15
5K102LA21
5K102LA31
5K102LA53
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC11
5K102MD01
5K102MD04
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH22
5K102MH32
5K102PB01
5K102PH11
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102RD05
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光信号を相互に送受信する光トランシーバの双方で通信エラーが発生している場合でも、光トランシーバの送受信特性を調整可能にする通信システム、光トランシーバ、及びそれらの制御方法を提供する。
【解決手段】第1光トランシーバは、固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部12と、多値パルス振幅変調信号を光送信信号として送信する第1光送信部と、第2光トランシーバからの光調整信号を受信する第1光受信部と、第1制御部と、を備える。第2光トランシーバは、光送信信号を受信する第2光受信部と、光送信信号に含まれる固定ビットパターンのビット誤り率を測定する受信信号処理部14と、ビット誤り率の情報を含む光調整信号を送信する第2光送信部と、第2制御部と、を備える。第1制御部は、光調整信号に含まれるビット誤り率に基づいて送信信号処理部を制御して光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光トランシーバと、前記第1光トランシーバと対向して通信する第2光トランシーバと、を備える通信システムであって、
前記第1光トランシーバは、
固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部と、
前記多値パルス振幅変調信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を送信する第1光送信部と、
前記第2光トランシーバから送信される光調整信号を受信し、前記光調整信号から調整信号を再生する第1光受信部と、
前記送信信号処理部、前記第1光送信部および前記第1光受信部を制御する第1制御部と、
を備え、
前記第2光トランシーバは、
前記光送信信号を受信し、受信した前記光送信信号を受信信号に変換する第2光受信部と、
前記固定ビットパターンに関する前記受信信号のビット誤り率を測定する受信信号処理部と、
前記ビット誤り率の測定情報を含む前記調整信号を前記光調整信号に変換し、前記光調整信号を送信する第2光送信部と、
前記第2光受信部、前記受信信号処理部および前記第2光送信部を制御する第2制御部と、
を備え、
前記第1制御部は、再生された前記調整信号から前記ビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出した前記ビット誤り率の測定情報に基づいて前記送信信号処理部を制御して前記光送信信号の各レベルの光パワーを調整する、
通信システム。
【請求項2】
対向する光トランシーバと光ファイバを介して通信する光トランシーバであって、
第1光送信信号および前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を含む第1光調整信号を前記対向する光トランシーバから受信し、受信した前記第1光送信信号を第1受信信号に変換し、受信した前記第1光調整信号から第1調整信号を再生する光受信部と、
固定ビットパターンに関する前記第1受信信号のビット誤り率を測定する受信信号処理部と、
前記固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部と、
前記多値パルス振幅変調信号を第2光送信信号に変換し、前記第2光送信信号を前記対向する光トランシーバに送信し、前記受信信号処理部により測定されたビット誤り率の測定情報を含む第2調整信号を第2光調整信号に変換し、前記第2光調整信号を前記対向する光トランシーバに送信する光送信部と、
前記光受信部、前記受信信号処理部、前記送信信号処理部および前記光送信部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記光受信部により再生された前記第1調整信号から前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出したビット誤り率の測定情報に基づいて前記送信信号処理部を制御して前記第2光送信信号の各レベルの光パワーを調整する、
光トランシーバ。
【請求項3】
第1光トランシーバと、前記第1光トランシーバと対向して光ファイバを介して通信する第2光トランシーバと、を備える通信システムの制御方法であって、
前記第1光トランシーバは、
固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成し、
前記多値パルス振幅変調信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を送信し、
前記第2光トランシーバから送信される光調整信号を受信し、前記光調整信号から調整信号を再生し、
前記第2光トランシーバは、
前記光送信信号を受信し、受信した前記光送信信号を受信信号に変換し、
前記固定ビットパターンに関する前記受信信号のビット誤り率を測定し、
前記ビット誤り率の測定情報を含む前記調整信号を前記光調整信号に変換し、前記光調整信号を送信し、
前記第1光トランシーバは、再生された前記調整信号から前記ビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出した前記ビット誤り率の測定情報に基づいて前記第2光トランシーバに送信する前記光送信信号の各レベルの光パワーを調整する、
通信システムの制御方法。
【請求項4】
対向する光トランシーバと通信する光トランシーバの制御方法であって、
第1光送信信号および前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を含む第1光調整信号を前記対向する光トランシーバから受信し、受信した前記第1光送信信号を第1受信信号に変換し、受信した前記第1光調整信号から第1調整信号を再生し、
固定ビットパターンに関する前記第1受信信号のビット誤り率を測定し、
前記固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成し、
前記多値パルス振幅変調信号を第2光送信信号に変換し、前記第2光送信信号を前記対向する光トランシーバに送信し、測定したビット誤り率の測定情報を含む第2調整信号を第2光調整信号に変換し、前記第2光調整信号を前記対向する光トランシーバに送信し、
再生した前記第1調整信号から前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出したビット誤り率の測定情報に基づいて前記第2光送信信号の各レベルの光パワーを調整する、
光トランシーバの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、光トランシーバ、通信システムの制御方法および光トランシーバの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多値光信号を送受信する光伝送システムにおいて、光パワーの最小レベルと最大レベルとの比である消光比を光受信器により検出し、検出結果を光送信器にフィードバックして光パワーを調整する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
多値光信号を送信する光送信装置において、レーザ素子の入力電気信号と発光強度との関係に基づいて、光信号の各レベル間の発光強度差が所定の比率になるように入力電気信号の各レベルの振幅を設定する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-113386号公報
【特許文献2】特開2007-216681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、互いに対向して光信号を相互に送受信する光トランシーバの少なくとも一方で通信エラーが発生し、通信エラーが発生した光トランシーバの光受信器で得られる情報を対向する他方の光トランシーバにフィードバックすることができない場合、多値光信号等の光パワーおよび各レベルの振幅を調整することができない。
【0006】
そこで、本開示は、光信号を相互に送受信する光トランシーバで通信エラーが発生した場合にも、光トランシーバの送受信特性を調整可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の通信システムは、第1光トランシーバと、前記第1光トランシーバと対向して通信する第2光トランシーバと、を備える通信システムであって、前記第1光トランシーバは、固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部と、前記多値パルス振幅変調信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を送信する第1光送信部と、前記第2光トランシーバから送信される光調整信号を受信し、前記光調整信号から調整信号を再生する第1光受信部と、前記送信信号処理部、前記第1光送信部および前記第1光受信部を制御する第1制御部と、を備え、前記第2光トランシーバは、前記光送信信号を受信し、受信した前記光送信信号を受信信号に変換する第2光受信部と、前記固定ビットパターンに関する前記受信信号のビット誤り率を測定する受信信号処理部と、前記ビット誤り率の測定情報を含む前記調整信号を前記光調整信号に変換し、前記光調整信号を送信する第2光送信部と、前記第2光受信部、前記受信信号処理部および前記第2光送信部を制御する第2制御部と、を備え、前記第1制御部は、再生された前記調整信号から前記ビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出した前記ビット誤り率の測定情報に基づいて前記送信信号処理部を制御して前記光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光信号を相互に送受信する光トランシーバで通信エラーが発生した場合にも、光トランシーバの送受信特性を調整可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる光トランシーバを含む通信システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の通信システムの光トランシーバ間で通信する場合の動作の一例を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、PAM4信号のアイパターンとNRZ信号のアイパターンとの例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図2の通信状態Aにおいて、光トランシーバ間で高速PAM光信号を送受信する場合の通信システムの動作の様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、
図3の通信状態Cにおける各種信号の伝送の様子を示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図4の通信状態Dにおける各種信号の伝送の様子を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態において、光トランシーバ間で通信する場合の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
〔1〕本開示の一態様にかかる通信システムは、第1光トランシーバと、前記第1光トランシーバと対向して通信する第2光トランシーバと、を備える通信システムであって、前記第1光トランシーバは、固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部と、前記多値パルス振幅変調信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を送信する第1光送信部と、前記第2光トランシーバから送信される光調整信号を受信し、前記光調整信号から調整信号を再生する第1光受信部と、前記送信信号処理部、前記第1光送信部および前記第1光受信部を制御する第1制御部と、を備え、前記第2光トランシーバは、前記光送信信号を受信し、受信した前記光送信信号を受信信号に変換する第2光受信部と、前記固定ビットパターンに関する前記受信信号のビット誤り率を測定する受信信号処理部と、前記ビット誤り率の測定情報を含む前記調整信号を前記光調整信号に変換し、前記光調整信号を送信する第2光送信部と、前記第2光受信部、前記受信信号処理部および前記第2光送信部を制御する第2制御部と、を備え、前記第1制御部は、再生された前記調整信号から前記ビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出した前記ビット誤り率の測定情報に基づいて前記送信信号処理部を制御して前記光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【0012】
この通信システムでは、光トランシーバ間で通信エラーが発生したときに、固定ビットパターンのビット誤り率を光調整信号として送受信し、光送信信号の各レベルの光パワーを調整することで、通信エラー状態から自動的に復帰させることができる。
【0013】
〔2〕本開示の一態様にかかる光トランシーバは、対向する光トランシーバと光ファイバを介して通信する光トランシーバであって、第1光送信信号および前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を含む第1光調整信号を前記対向する光トランシーバから受信し、受信した前記第1光送信信号を第1受信信号に変換し、受信した前記第1光調整信号から第1調整信号を再生する光受信部と、固定ビットパターンに関する前記第1受信信号のビット誤り率を測定する受信信号処理部と、前記固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成する送信信号処理部と、前記多値パルス振幅変調信号を第2光送信信号に変換し、前記第2光送信信号を前記対向する光トランシーバに送信し、前記受信信号処理部により測定されたビット誤り率の測定情報を含む第2調整信号を第2光調整信号に変換し、前記第2光調整信号を前記対向する光トランシーバに送信する光送信部と、前記光受信部、前記受信信号処理部、前記送信信号処理部および前記光送信部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記光受信部により再生された前記第1調整信号から前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出したビット誤り率の測定情報に基づいて前記送信信号処理部を制御して前記第2光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【0014】
この光トランシーバでは、光トランシーバ間で通信エラーが発生したときに、固定ビットパターンのビット誤り率を光調整信号として送受信し、光送信信号の各レベルの光パワーを調整することで、通信エラー状態から自動的に復帰させることができる。
【0015】
〔3〕本開示の一態様にかかる通信システムの制御方法は、第1光トランシーバと、前記第1光トランシーバと対向して通信する第2光トランシーバと、を備える通信システムの制御方法であって、前記第1光トランシーバは、固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成し、前記多値パルス振幅変調信号を光送信信号に変換し、前記光送信信号を送信し、前記第2光トランシーバから送信される光調整信号を受信し、前記光調整信号から調整信号を再生し、前記第2光トランシーバは、前記光送信信号を受信し、受信した前記光送信信号を受信信号に変換し、前記固定ビットパターンに関する前記受信信号のビット誤り率を測定し、前記ビット誤り率の測定情報を含む前記調整信号を前記光調整信号に変換し、前記光調整信号を送信し、前記第1光トランシーバは、再生された前記調整信号から前記ビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出した前記ビット誤り率の測定情報に基づいて前記第2光トランシーバに送信する前記光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【0016】
この通信システムの制御方法では、光トランシーバ間で通信エラーが発生したときに、固定ビットパターンのビット誤り率を光調整信号として送受信し、光送信信号の各レベルの光パワーを調整することで、通信エラー状態から自動的に復帰させることができる。
【0017】
〔4〕本開示の一態様にかかる光トランシーバの制御方法は、対向する光トランシーバと光ファイバを介して通信する光トランシーバの制御方法であって、第1光送信信号および前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を含む第1光調整信号を前記対向する光トランシーバから受信し、受信した前記第1光送信信号を第1受信信号に変換し、受信した前記第1光調整信号から第1調整信号を再生し、固定ビットパターンに関する前記第1受信信号のビット誤り率を測定し、前記固定ビットパターンを含む多値パルス振幅変調信号を生成し、前記多値パルス振幅変調信号を第2光送信信号に変換し、前記第2光送信信号を前記対向する光トランシーバに送信し、測定したビット誤り率の測定情報を含む第2調整信号を第2光調整信号に変換し、前記第2光調整信号を前記対向する光トランシーバに送信し、再生した前記第1調整信号から前記対向する光トランシーバにより測定されたビット誤り率の測定情報を抽出し、抽出したビット誤り率の測定情報に基づいて前記第2光送信信号の各レベルの光パワーを調整する。
【0018】
この光トランシーバの制御方法では、光トランシーバ間で通信エラーが発生したときに、固定ビットパターンのビット誤り率を光調整信号として送受信し、光送信信号の各レベルの光パワーを調整することで、通信エラー状態から自動的に復帰させることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光トランシーバを含む通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、同一の要素または対応する要素には同一の符号を付し、それらについては説明を省略する場合がある。1本の矢印で示す信号線は、複数本で構成される場合がある。
【0020】
〔第1の実施形態〕
〔通信システムの構成〕
図1は、第1の実施形態にかかる光トランシーバを含む通信システムの一例を示すブロック図である。
図1に示す通信システム1000は、2芯の光ファイバ50a、50bを介して光信号を送受信する一対の光トランシーバ100と、各光トランシーバ100がそれぞれ接続されるホストボード200とを有する。例えば、光ファイバ50aは一対の光トランシーバの一方から他方へ光信号を伝送し、光ファイバ50bは一対の光トランシーバの他方から一方へ光信号を伝送する。
【0021】
図1において、矢印で示す信号線に付した括弧付きの符号の意味は次の通りである。符号HEは、高速電気信号が伝送されることを示し、符号LEは、低速電気信号が伝送されることを示す。例えば、高速電気信号のビットレート(伝送レート)は、低速電気信号のビットレートより大きい。符号HOは、高速光信号が伝送されることを示し、符号LOは、低速光信号が伝送されることを示す。
【0022】
例えば、高速光信号のビットレートは、低速光信号のビットレートより大きい。高速光信号のビットレートは、例えば、単一波長を有する光信号(単一光信号)に相当する1チャンネル当たりで50Gbit/s以上である。光ファイバ50a、50bには、光トランシーバ100の動作状態に応じて高速光信号または低速光信号が伝送される。例えば、通信エラーが起きていない状態では、高速光信号が伝送される。
【0023】
特に限定されないが、例えば、低速電気信号のビットレートは、高速電気信号のビットレートの1/1000以下である。低速光信号のビットレートは、高速光信号のビットレートの1/1000以下である。例えば、高速電気信号のビットレートは、50Gbit/s以上である。光トランシーバ100の動作状態については、
図2から
図9で説明される。
【0024】
以下では、一対の光トランシーバ100の一方および他方を、それぞれ光トランシーバA、Bとも称する。光トランシーバAに接続されるホストボード200をホストボードAとも称し、光トランシーバBに接続されるホストボード200をホストボードBとも称する。光トランシーバA、Bは、例えば、互いに同じ回路構成を有する。なお、光トランシーバA、Bが互いに同等の性能および同等の機能を有する場合は、光トランシーバA、Bの回路構成は互いに相違していてもよい。
【0025】
光トランシーバ100は、電気信号を送受信するホストボード200等の通信装置に接続される。光トランシーバ100は、例えば、プラガブル光トランシーバであって、ホストボード200に実装されたケージ(不図示)に挿入可能な外形形状を有する。光トランシーバ100は、ホストボードから受信した高速電気信号を高速光信号に変換し、例えば光コネクタ(不図示)を介して光ファイバ50a(または50b)に高速光信号を出力する機能を有する。出力された高速光信号は、光ファイバ50a(または50b)を介して対向の光トランシーバ100に伝達される。
【0026】
また、光トランシーバ100は、光ファイバ50b(または50a)から光コネクタ(不図示)を介して受信した高速光信号を高速電気信号に変換し、ホストボード200に送信する機能を有する。光ファイバ50a(または50b)は、必ずしも単一のケーブルでなくてもよい。図示していないが、通信システム1000は、2芯の光ファイバ50a、50bの途中に、例えば光増幅器や光スイッチなどの機器、波長分割多重フィルタ等を含んで構成されていてもよい。
【0027】
光トランシーバ100は、送信信号処理部12、受信信号処理部14、光送信器20、光受信器30および制御部40を有する。例えば、送信信号処理部12および受信信号処理部14は、DSP(Digital Signal Processor)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の半導体集積回路装置10に含まれる。例えば、制御部40は、1チップのCPU(Central Processing Unit)に含まれる。この場合、制御部40の機能は、CPUが実行する制御プログラムにより実現されてもよい。
【0028】
送信信号処理部12は、ホストボード200から受信するデジタルの高速電気信号を、例えば、PAM(Pulse Amplitude Modulation)方式によって高速電気信号に変換する。振幅において4つのレベルを有するPAM4信号は、多値パルス振幅変調信号の一例である。PAM4信号は、例えば、電圧においてレベル0からレベル3の4つのレベル間を遷移する信号である。レベルn(nは1から3までの整数)の電圧は、レベルn-1の電圧より大きい。
【0029】
なお、送信信号処理部12は、ホストボード200から高速電気信号によって受信した符号化されたデータをKP4-FEC(Forward Error Correction)等の手法によりさらに符号化する。送信信号処理部12は、生成した高速電気信号を光送信器20に出力する。なお、送信信号処理部12による高速電気信号の符号化は、ホストボード200により実施されてもよい。
【0030】
光送信器20は、例えば、レーザーダイオードドライバおよびレーザーダイオードを有する。光送信器20は、送信信号処理部12から受信する高速電気信号HEまたは制御部40から受信する低速電気信号LEを光信号に変換する。高速光信号HOは、高速電気信号HEから変換された光信号に相当する。低速光信号LOは、低速電気信号LEから変換された光信号に相当する。光送信器20は高速電気信号HEと低速電気信号LEの一方のみを光信号に変換し、どちらを変換するかは制御部40が決定する。
【0031】
例えば、光送信器20が高速電気信号HEを光信号に変換する場合は、制御部40は低速電気信号LEを光送信器20に送信しない。光送信器20が低速電気信号LEを光信号に変換する場合は、事前に制御部40が送信信号処理部12に対して高速電気信号HEの送信停止を指示し、送信信号処理部12は光送信器20に高速電気信号HEを送信しない。
【0032】
光送信器20は、高速光信号HOまたは低速光信号LOを光ファイバ50a(または50b)に出力する。例えば、光送信器20から出力される高速光信号は、PAM4信号である。なお、光送信器20は、互いに異なる波長を有する複数の光信号(単一光信号)を生成して、複数の光信号を一つのWDM光信号(波長分割多重信号)に多重化して光ファイバ50a(または50b)に出力してもよい。なお、以下の説明では、送信する光信号が単一の波長を有する単一光信号の場合について説明する。
【0033】
例えば、低速光信号LOの変調速度は、1MBaud以下であり、高速光信号HOの変調速度の1/1000以下である。例えば、低速光信号はNRZ(Non-Return-to-Zero)信号である。NRZ信号は、2値振幅変調によって生成することができる。以下では、PAM方式による高速光信号HOは、高速PAM光信号とも称され、NRZによる低速光信号LOは、低速NRZ光信号とも称される。例えば、高速光信号HOの変調速度は、25GBaud以上である。高速電気信号HEの伝送する情報を含む高速光信号HOは、光送信信号の一例である。低速光信号LOは、光調整信号の一例である。
【0034】
低速電気信号LEを低速光信号LOに変換する場合、レーザーダイオードに供給するバイアス電流を低速電気信号LEの電圧に応じて変化させることで行われる。例えば、バイアス電流をレーザーダイオードの閾値電流よりも小さい値に変化させると、低速光信号LOは光パワーの比較的小さい"0"状態になり、バイアス電流を閾値電流よりも大きい値に変化させると、低速光信号LOは光パワーの比較的大きい"1"状態となる。このように、バイアス電流を2つの値の間で変化させることにより2値振幅変調が行われ、低速光信号LOを生成することができる。光送信器20は、第1光送信部および第2光送信部の一例である。
【0035】
光受信器30は、例えば、フォトダイード等の光電変換素子と、トランスインピーダンスアンプ等の増幅器とを有する。光受信器30は、光ファイバ50a(または50b)を介して高速光信号HOまたは低速光信号LOを受信し、受信した高速光信号HOまたは低速光信号LOを電流信号(光電流)に変換する。例えば、光受信器30が受信する高速光信号は、PAM4信号である。
【0036】
なお、光受信器30は、光ファイバ50a(または50b)から受けた一つのWDM光信号(波長分割多重信号)を互いに異なる波長を有する複数の光信号(単一光信号)に分離して、複数の単一光信号のそれぞれを光電変換素子によって電流信号に変換してもよい。以下の説明では、受信した光信号が単一の波長を有する単一光信号の場合について説明する。
【0037】
光受信器30は、変換により得られた微弱な電流信号を増幅し、高速光信号HOから変換された高速電気信号HEを受信信号処理部14に出力し、低速光信号LOから変換された低速電気信号LEを制御部40に出力する。例えば、高速電気信号HEはトランスインピーダンスアンプの出力であり、低速電気信号LEはディスクリート部品で構成された電流モニタ回路の出力である。低速電気信号LEはトランスインピーダンスアンプの電流モニタ機能を使用して生成されてもよい。高速電気信号HEは、受信信号の一例である。高速電気信号HEは、一対の相補信号から成る差動信号であってもよい。
【0038】
光受信器30が低速光信号LOを受信しているとき、制御部40は低速電気信号LEのクロックを認識し、低速電気信号LEを受信する。光受信器30が高速光信号HOを受信しているとき、低速電気信号LEは一定値であり、制御部40は低速電気信号LEを受信しない。したがって、制御部40は、低速電気信号LEを受信していないとき光受信器30が高速光信号HOを受信していると判断し、制御部40が低速電気信号LEを受信しているとき光受信器30が低速光信号LOを受信していると判断することができる。
【0039】
制御部40は、例えば、光受信器30から出力されるアナログの低速電気信号LEをデジタル信号に変換することで低速電気信号LEに含まれる情報を抽出する。抽出された情報は、例えば、デジタルデータとして制御部40内のメモリに格納され、または、制御のために論理回路で使用される。電流信号に含まれる低速電気信号LEは、調整信号の一例である。光受信器30は、第1光受信部および第2光受信部の一例である。
【0040】
なお、光受信器30から出力されるアナログの電気信号の電圧は、例えば、受信した光信号の強度(光パワー)に応じて変化する。光受信器30は、アナログの電気信号の代わりにデジタルの電気信号を出力してもよい。このときには、デジタルの電気信号は、例えば、固定した0レベルと1レベルとの間を電圧が遷移するパルス信号となる。
【0041】
受信信号処理部14は、光受信器30から受信するアナログの高速電気信号HEをデジタルの高速電気信号HEに変換する。受信信号処理部14は、デジタルに変換した高速電気信号HEのFECによる誤り訂正を実施することで復調し、受信データ信号としてホストボード200に出力する。また、受信信号処理部14は、例えば、高速電気信号HEの誤り訂正で通信フレームの受信に異常があった場合にフレームロスの発生を判定する。通信フレームの受信に異常がある場合とは、例えば、通信フレームの同期がとれない場合である。例えば、通信フレームのヘッダを検出できない場合には通信フレームの同期がとれなくなる。また、通信フレームがペイロードに格納されたデータに関するチェックサムを有する場合、チェックサムによってデータの誤りが検出された場合も受信に異常がある場合となり得る。
【0042】
受信信号処理部14は、フレームロスの発生の有無を示す情報を、通信エラーの発生の有無を示す情報として制御部40に出力する。なお、高速電気信号HEの誤り訂正は、ホストボード200により実施されてもよい。この場合、フレームロスの発生の有無を示す情報は、ホストボード200から制御部40に送信される。ホストボード200と制御部40との間の通信は、例えば、シリアル通信バスまたは専用の信号線を介して行われる。
【0043】
制御部40は、通信システム1000が光トランシーバ100間で高速光信号HOを送信する高速通信モード時に、自光トランシーバ100の動作を制御する。また、制御部40は、受信信号処理部14からのフレームロスの発生を示す情報に基づいて、光トランシーバ100間での通信エラーの発生を検出した場合、動作モードを高速通信モードから調整モードに移行する。そして、制御部40は、通信エラーをなくすために、自光トランシーバ100から送信される高速光信号HOの特性を調整する。高速通信モードおよび調整モードでの制御部40の動作の例は、
図2から
図9で説明される。
【0044】
〔光トランシーバA、Bの動作シーケンス〕
図2から
図4は、
図1の通信システム1000の互いに対向する光トランシーバ100間で通信する場合の動作の一例を示すフロー図である。すなわち、
図2から
図4は、通信システム1000の制御方法の一例および光トランシーバ100の制御方法の一例を示す。
図2から
図4において、例えば、左側のフローは、光トランシーバAの動作を示し、右側のフローは、光トランシーバBの動作を示す。各光トランシーバA、Bの動作は、例えば、それぞれの制御部40が制御プログラムを実行することで実施されてもよい。制御部40は、例えば、マイクロコントローラであり、制御プログラムは、例えば、マイクロコントローラのメモリに格納されたファームウエアである。なお、制御部40は、複数のマイクロコントローラや複数のロジックIC等を含んで構成されていてもよい。
【0045】
光トランシーバA、Bは、起動されると通信状態Aに遷移する。光トランシーバAは、例えば、プラガブル光トランシーバである場合、ホストボードAに実装されたケージにそれぞれ挿入されるとホストボードAから電力の供給を受けて起動する。光トランシーバAと同様に、光トランシーバBは、例えば、プラガブル光トランシーバである場合、ホストボードBに実装されたケージにそれぞれ挿入されるとホストボードBから電力の供給を受けて起動する。
【0046】
光トランシーバA、Bの各々は、起動すると、例えば、制御部40が所定のプログラムを実行して初期設定等を行い、光送信器20、光受信器30、送信信号処理部12、および受信信号処理部14がそれぞれの動作を行える状態にする。光トランシーバA、Bが高速光信号HOの送受信が可能な状態になると、制御部40は、ホストボードA、Bと通信可能な状態になる。
【0047】
通信状態Aは、光トランシーバA、Bの起動後、光トランシーバA、B間で高速PAM光信号による通信が実施される状態である。光トランシーバA、Bは、通信状態AのステップS100、S200において、自光送信器20の特性データに基づいて、送信信号処理部12が出力するPAM4信号の各レベルを設定する。各レベルの振幅は、各制御部40が振幅を示す振幅情報を自送信信号処理部12に出力することで設定される。制御部40と送信信号処理部12との間の通信は、例えば、シリアル通信バスを介して行われる。なお、PAM4信号の各レベルの設定は、上述の初期設定において行われてもよい。
【0048】
PAM4信号の各レベルが設定された後、光トランシーバA、Bは、ステップS102、S202において、高速PAM光信号による通信を相互に実施する。高速PAM光信号による通信は、2本の光ファイバ50a、50bを用いて全二重通信で行われる。ステップS102、S202による高速PAM光信号の送受信の制御は、通信エラーが発生していない期間、繰り返し実施される。なお、通信エラーと関係なく、例えば、ホストボードAから高速PAM光信号による通信を停止するよう光トランシーバAに命令が送られて高速PAM光信号の送受信が停止する場合がある。同様に、ホストボードBから高速PAM光信号による通信を停止するよう光トランシーバBに命令が送られて高速PAM光信号の送受信が停止する場合がある。
【0049】
ステップS104またはステップS204により、光トランシーバA、Bのいずれかが通信エラーの発生を検出した場合、処理は、ステップS106、S206にそれぞれ移行される。例えば、PAM4信号の通信エラーの発生は、KP4-FECによるエラー訂正により検出可能である。例えば、制御部40は、受信信号処理部14からフレームロス発生の情報を受信することで通信エラーを検出する。
【0050】
例えば、通信エラーを検出した光トランシーバBは、動作モードを通信状態A(高速通信モード)から通信状態Bに移行する。通信状態Bは、PAM4信号のレベルを調整する調整モードに含まれる。光トランシーバBの送信信号処理部12は、制御部40の指示により、高速電気信号HEの送信を停止する。そして、光トランシーバBは、制御部40により低速電気信号LEを介して光送信器20のレーザ電流を低速で変調することで、低速NRZ光信号を送信し、通信エラーの発生を光トランシーバAに通知する。
【0051】
光トランシーバAは、制御部40が光受信器30からの低速電気信号LEをモニタすることで、光トランシーバBでの通信エラーの発生を検出する。例えば、光トランシーバBから通信エラーの発生を表す特定のバイナリデータを低速NRZ光信号で送信し、光トランシーバAは、受信した低速NRZ光信号に特定のバイナリデータが含まれていることを検出して通信エラーの発生を検出する。すなわち、光トランシーバAは、自送信信号処理部12が生成するPAM4信号の各レベルの調整が必要であることを認識し、動作モードを通信状態Aから通信状態Bに移行する。
【0052】
通信状態Aから通信状態Bへの移行は、例えば、先に通信エラーを検出した光トランシーバA(またはB)が低速NRZ光信号の送信を開始して、低速NRZ光信号を受信した光トランシーバB(またはA)が低速NRZ光信号に含まれている通信エラーの発生を表す情報を検出して自らも低速NRZ光信号の送信を開始することで完了する。
【0053】
通信状態Bは、PAM4信号の各レベルの調整に使用する測定条件等を光トランシーバA、B間で決定する状態である。通信状態Bにおいて、光トランシーバA、Bは低速NRZ光信号によって相互に送受信を行う。低速NRZ信号の変調速度は、高速PAM光信号の変調速度よりも十分に遅いため、高速PAM光信号では通信エラーが生じていた場合でもビットエラーが相対的に十分に小さくなり、光トランシーバA、Bの間で確実に通信を行うことができる。
【0054】
例えば、低速NRZ信号の変調速度は、高速PAM光信号の変調速度の1/1000以下に設定される。また、低速NRZ信号の振幅(レベル1とレベル0との差)が高速PAM光信号の振幅(レベル3とレベル0との差)と同じとき、低速NRZ信号のアイ開口は、高速PAM光信号のアイ開口の約3倍の大きさとなる。このアイ開口の拡大によってもエラーレートが大幅に向上する。これらにより、光トランシーバA、Bが通信状態Bに移行することで、通信エラーの発生状況やPAM4信号の各レベルの調整方法に関する情報を相互に交換可能になる。
【0055】
なお、ホストボードAは、光トランシーバAの通信状態Aから通信状態Bへの移行を望まない場合、光トランシーバAの起動時に通信状態Bへの移行の禁止を光トランシーバAに通知する。この場合、光トランシーバAは、光トランシーバBから通信エラーの発生を示す低速NRZ光信号を受信しても、通信状態Aに留まり続ける。光トランシーバBは、例えば、低速NRZ光信号を送信した後に所定の時間の間に低速NRZ光信号を検出しないことで、光トランシーバAがPAM4信号の振幅の調整に応じないことを確認することができる。
【0056】
同様に、ホストボードBは、光トランシーバBの通信状態Aから通信状態Bへの移行を望まない場合、光トランシーバBの起動時に通信状態Bへの移行の禁止を光トランシーバBに通知する。この場合、光トランシーバBは、光トランシーバAから通信エラーの発生を示す低速NRZ光信号を受信しても、自ら低速NRZ光信号を送信せずに通信状態Aに留まり続ける。光トランシーバAは、低速NRZ光信号を送信した後に所定の時間の間に低速NRZ光信号を検出しないことで、光トランシーバBがPAM4信号の振幅の調整に応じないことを確認することができる。
【0057】
ステップS106、S206において、光トランシーバA、Bは、各制御部40により各光送信器20のレーザ電流を低速で変調することで、低速NRZ光信号を相互に通信する。低速NRZ光信号による通信は、2本の光ファイバ50a、50bを用いて全二重通信で行うことができる。そして、光トランシーバA、Bは、PAM4信号の各レベルを調整する順番を決定する。
【0058】
例えば、調整の順番は、光トランシーバA、Bのシリアル番号(製造番号)等の固有情報の値の大きさに基づいて決定されてもよい。例えば、光トランシーバAのシリアル番号が光トランシーバBのシリアル番号より小さい場合に、光トランシーバAのPAM4信号のレベルの調整を、光トランシーバBのPAM4信号のレベルの調整よりも先に行う。
【0059】
また、光トランシーバA、Bは、調整モードにおいてPAM4信号のレベルの調整を開始する前にビット誤り率(BER:Bit Error Rate)の測定に使用するPRBSQ(Pseudorandom Binary Sequence Quaternary)またはSSPRQ(Short Stress Pattern Random Quaternary)等のパターンの種類およびBERの測定時間等に関する情報を確認する。例えば、パターンとしてPRBS15Qが使用されてもよく、BERの測定時間として5秒が設定されてもよい。なお、PRBSQ等の疑似乱数データではなく、特定のパターンを有するビット列を代わりに用いてもよい。PRBSQのパターンは、固定ビットパターンの一例である。
【0060】
調整モードで使用される情報は、例えば、制御部40のメモリ内に格納される。なお、固定ビットパターンの仕様が予め決められている場合には、例えば、光トランシーバA、Bのそれぞれの制御部40のメモリ内にその仕様に関する情報を格納しておいてもよい。その場合、固定ビットパターンは、光トランシーバA、Bにとって既知の情報となり、通信状態Bにおいて、光トランシーバA、B間での固定ビットパターンの仕様の確認を省略することができる。
【0061】
測定条件等の決定後、光トランシーバA、Bは、通信状態Bから
図3の通信状態Cに移行する。通信状態Cにおいて、光トランシーバAの送信信号処理部12が生成するPAM4信号の各レベルを調整することで、光トランシーバBとのインターオペラビリティを改善させる調整動作が実施される。通信状態Cでは、光トランシーバAは、高速PAM光信号を送信するとともに低速NRZ光信号を受信し、光トランシーバBは、高速PAM光信号を受信するとともに低速NRZ光信号を送信する。
【0062】
なお、光送信器20が、高速PAM4電気信号を高速PAM光信号に変換するときに、変換の特性が非線形である場合には、高速PAM光信号のレベル0/レベル1間振幅、レベル1/レベル2間振幅、レベル2/レベル3間振幅の比率は、高速PAM4電気信号のレベル0/レベル1間振幅、レベル1/レベル2間振幅、レベル2/レベル3間振幅の比率と異なる。
【0063】
まず、光トランシーバAは、ステップS108において、レーザ電流の低速変調を中止し、固定ビットパターンを含む高速PAM光信号の光トランシーバBへの送信を開始する。例えば、このときにトランシーバAは高速PAM光信号の各レベルをステップS106およびステップ206において決めた初期値に設定する。光トランシーバBの制御部40は、例えば、低速電気信号LEを受信しなくなることに基づいて、光トランシーバAが通信状態Bから通信状態Cに移行したことを検出する。あるいは、光トランシーバAが通信状態Bにおいて調整モードにおける高速PAM光信号の送信開始を知らせる特定のバイナリデータを低速NRZ光信号によって送信し、光トランシーバBは、受信した低速NRZ光信号にて特定のバイナリデータを検出することによって通信状態Cへ移行してもよい。
【0064】
光トランシーバBは、光トランシーバAが通信状態Bから通信状態Cに移行したことを検出した場合、例えば、通信状態Cへの移行を知らせる特定のバイナリデータを低速NRZ光信号によって送信する。そして、光トランシーバBは、ステップS208において、光トランシーバAから受信するPRBSQ等の固定ビットパターンを含む高速PAM光信号のビット誤り率の検出を開始する。光トランシーバAの制御部40は、受信した低速NRZ光信号に光トランシーバBの通信状態Cへの移行を知らせる特定のバイナリデータを検出して、光トランシーバBが通信状態Bから通信状態Cに移行したことを確認することができる。
【0065】
固定ビットパターンの仕様は、
図2の通信状態BのステップS106、S206により、光トランシーバA、B間で確認済みである。このため、光トランシーバBは、受信した固定ビットパターンのビット誤り率を正しく算出することができる。
【0066】
例えば、ビット誤り率は、ステップS208によりトランシーバAが高速PAM光信号のレベルを変える毎に検出される。次に、光トランシーバBは、ステップS210において、ビット誤り率を示すBER情報を低速NRZ光信号により光トランシーバAに送信する。ステップS208、S210は、光トランシーバAが高速PAM光信号の各レベルを変えて高速PAM光信号を送信するのに合わせて繰り返される。そして、光トランシーバBは、光トランシーバAから高速PAM光信号を受信しなくなると、動作状態を通信状態Cから通信状態Bに移行する。
【0067】
光トランシーバAは、ステップS110において、光トランシーバBから低速NRZ光信号に含まれるBER情報を受信する。なお、このときに、光トランシーバAは、光トランシーバBから低速NRZ光信号に含まれるBER情報を受信するまでステップS108の高速PAM光信号の送信を継続してもよい。それにより、各レベルを変えて高速PAM光信号を送信したことに対して確実にBER情報を受信することができる。次に、光トランシーバAは、ステップS112において、PAM4信号の調整が完了したか否かを判定する。
【0068】
例えば、光トランシーバAは、BER情報が示すビット誤り率に対応するビットエラーがKP4-FEC等により訂正可能ある場合、調整の完了を判定する。例えば、KP4-FECでは、誤りが統計的にランダムなとき、BERの値が2.4×10-4以下であれば、KP4-FECによって符号化される前のデータをBERの値が1×10-12以下となるように訂正可能である。したがって、例えば、KP4-FECによって符号化したデータを送信する場合、光トランシーバBから受信したBERの値が2.4×10-4以下であれば、光トランシーバAは調整を完了する。
【0069】
調整が完了した場合、光トランシーバAは、動作状態を通信状態Cから通信状態Bに移行する。調整が完了していない場合、光トランシーバAは、ステップS114を実施する。
【0070】
ステップS114において、光トランシーバAは、PAM4信号の各レベルを調整し、処理をステップS108に戻す。そして、光トランシーバAから光トランシーバBへの固定ビットパターンを含む高速PAM光信号の送信、光トランシーバBによるビット誤り率の検出(ステップS208)、ビット誤り率の情報の低速NRZ光信号での送信(ステップS210)および光トランシーバAによる高速PAM光信号の各レベルの調整完了の判定(ステップS110、S112)が再び実施される。各レベルの調整については、
図5を参照しながら後述する。
【0071】
光トランシーバAは、
図3の通信状態BのステップS116において、各レベルの調整の完了を低速NRZ光信号により光トランシーバBに通知し、
図3の通信状態Bから通信状態D(
図4)に移行する。光トランシーバBは、
図3の通信状態BのステップS212において、低速NRZ光信号の受信に基づいて、光トランシーバAによる各レベルの調整が完了したことを確認し、
図3の通信状態Bから通信状態D(
図4)に移行する。
【0072】
図4の通信状態Dでは、光トランシーバBの送信信号処理部12が生成するPAM4信号の各レベルを調整する動作が実施される。このため、通信状態Dにおいて、光トランシーバAの処理フローは、
図3の通信状態Cの光トランシーバBの処理フローと同様であり、光トランシーバBの処理フローは、
図3の通信状態Cの光トランシーバAの処理フローと同様である。
【0073】
光トランシーバBは、ステップS214において、レーザ電流の低速変調を中止し、固定ビットパターンを含む高速PAM光信号の光トランシーバAへの送信を開始する。例えば、このときにトランシーバBは高速PAM光信号の各レベルをステップS106およびステップ206において決めた初期値に設定する。光トランシーバAの制御部40は、例えば、低速電気信号LEを受信しなくなることに基づいて、光トランシーバBが通信状態Bから通信状態Dに移行したことを検出する。あるいは、光トランシーバBが通信状態Bにおいて調整モードにおける高速PAM光信号の送信開始を知らせる特定のバイナリデータを低速NRZ光信号によって送信し、光トランシーバAは、受信した低速NRZ光信号にて特定のバイナリデータを検出することによって通信状態Dへ移行してもよい。
【0074】
光トランシーバAは、ステップS118において、光トランシーバBから受信するPRBSQ等の固定ビットパターンを含む高速PAM光信号のビット誤り率を検出する。ビット誤り率は、例えば、ステップS118によりトランシーバBが高速PAM光信号のレベルを変える毎に検出される。次に、光トランシーバAは、ステップS120において、ビット誤り率を示すBER情報を低速NRZ光信号により光トランシーバBに送信する。ステップS118、S120は、光トランシーバBが高速PAM光信号の各レベルを変えて高速PAM光信号を送信するのに合わせて繰り返される。そして、光トランシーバAは、光トランシーバBから高速PAM光信号を受信しなくなると、動作状態を通信状態Dから通信状態Bに移行する。
【0075】
光トランシーバBは、ステップS216において、光トランシーバAから低速NRZ光信号に含まれるBER情報を受信する。なお、このときに、光トランシーバBは、光トランシーバAから低速NRZ光信号に含まれるBER情報を受信するまでステップS214の高速PAM光信号の送信を継続してもよい。それにより、各レベルを変えて高速PAM光信号を送信したことに対して確実にBER情報を受信することができる。
【0076】
次に、光トランシーバBは、ステップS218において、PAM4信号の各レベルの調整が完了したことを判定した場合、動作状態を通信状態Dから通信状態Bに移行する。この判定は、ステップS112と同様に、光トランシーバAから受信したBERの値が所定の値(例えば、2.4×10-4)以下のときに調整が完了したと行ってもよい。光トランシーバBは、各レベルの調整が完了していない場合、ステップS220を実施する。
【0077】
ステップS220において、光トランシーバBは、PAM4信号の各レベルを調整し、処理をステップS214に戻す。そして、光トランシーバBから光トランシーバAへの固定ビットパターンを含む高速PAM光信号の送信(ステップ214)、光トランシーバAによるビット誤り率の検出(ステップS118)、ビット誤り率の情報の低速NRZ光信号での送信(ステップS120)および光トランシーバBによる高速PAM光信号の各レベルの調整完了の判定(ステップS216、S218)が再び実施される。各レベルの調整については、
図5を参照しながら後述する。
【0078】
光トランシーバBは、
図4の通信状態BのステップS222において、出力振幅の調整の完了を低速NRZ光信号により光トランシーバAに通知し、処理を
図2のステップS202に戻す。光トランシーバAは、
図4の通信状態BのステップS122において、低速NRZ光信号の受信に基づいて、光トランシーバBにより各レベルの調整が完了したことを確認し、処理を
図2のステップS102に戻す。
【0079】
そして、トランシーバA、Bのそれぞれにおける各レベルの調整が完了した後、光トランシーバA、B間での高速PAM光信号による通信が再開される。上述したように、通信状態Aから通信状態Cへの移行は、通信状態Bを介して行われる。また、通信状態Cから通信状態Dへの移行は、通信状態Bを介して行われる。さらに、通信状態Dから通信状態Aへの移行は、通信状態Bを介して行われる。
【0080】
なお、
図3に示した通信状態C、Bの動作と、
図4に示した通信状態D、Bの動作との順序は入れ替えられてもよい。
図3および
図4の動作順は、
図2の通信状態BのステップS106、S206での処理により決定される。
【0081】
〔PAM4信号およびNRZ信号の波形例〕
図5は、PAM4信号のアイパターンとNRZ信号のアイパターンとの例を示す説明図である。PAM4信号は、レベル0からレベル3までの4値を取り得る。例えば、高速光信号HOの場合、PAM4信号は、強度(光パワー)について4つの値を取り得る。また、高速電気信号の場合、PAM4信号は、例えば、電圧について4つの値を取り得る。多値変調においては、光受信器30が出力する高速電気信号HEにおいて、各レベルのノイズ量が同じ場合、各レベル間の振幅が均等になっているときにビット誤り率が最小となる。
【0082】
すなわち、レベル1とレベル0との間の電圧差(振幅)、レベル2とレベル1との間の電圧差(振幅)、およびレベル3とレベル2との間の電圧差(振幅)が互いに同じときにビット誤り率は最小となる。この状態において、
図5のPAM4信号の波形の中心部にて振幅方向に並ぶ3つのアイパターンのそれぞれのアイ開口は互いにほぼ同じ大きさになっている。ただし、各レベルのノイズ量が異なる場合には、各レベル間の振幅が均等とならないときにビット誤り率が最小となる。
【0083】
ところで、例えば、光トランシーバAの送信信号処理部12が出力する高速電気信号HEの各レベル間の振幅が均等の場合にも、光トランシーバBの受信信号処理部14に入力される高速電気信号HEの各レベル間の振幅が均等とはならない場合がある。このような状態は、多値変調の線形性が悪いと称され、光トランシーバAの光送信器20の特性、光ファイバ50aの伝送特性および光トランシーバBの光受信器30の特性の少なくともいずれかに起因して発生する。
【0084】
例えば、PAM4信号のレベル0/レベル3間の振幅がNRZ信号のレベル0/レベル1間の振幅と同じ場合、レベル0からレベル3までの各レベル間のPAM4信号の開口は、NRZ信号の開口に比べて小さい。このため、PAM4信号は、NRZ信号に比べて伝送可能な情報量が多い反面、例えば、光受信器30の光学的特性または電気的特性のばらつきに依存して、受信信号処理部14での線形性の悪化の影響を受けやすい。
【0085】
PAM4信号を処理する受信信号処理部14で算出されるBERは、送信信号処理部12でPAM4信号の各レベルを調整することで改善することが可能である。このため、
図3の通信状態Cおよび
図4の通信状態Dで説明したように、高速電気信号HEとしてPAM4信号を生成する送信信号処理部12において、受信側でのBERが小さくなるようにPAM4信号の各レベルが調整される。
【0086】
例えば、
図3の通信状態Cにおいて、光トランシーバAの制御部40は、レベル0、3を一定にした状態で、光トランシーバBによって検出されたBERをモニタしながら、光トランシーバBで検出するBERが調整前よりも小さくなるように、レベル1を調整する。この後、光トランシーバAの制御部40は、レベル0、3を一定にした状態で、光トランシーバBによって検出されたBERをモニタしながら、光トランシーバBで検出するBERが調整前よりも小さくなるように、レベル2の出力振幅を調整する。
【0087】
同様に、
図4の通信状態Dにおいて、光トランシーバBの制御部40は、光トランシーバAで検出するBERが最小になるように、レベル1、2の振幅を順次調整する。なお、光トランシーバA、Bの制御部40は、BERをモニタしながら、レベル1、2の両方を順次調整してもよい。例えば、BERの真の最小値は、レベル2を固定しておいてレベル1について求めた最小値あるいはレベル1を固定しておいてレベル2について求めた最小値のいずれとも一致しない場合も起こり得る。BERの最小値については、例えば、2つのパラメータに関する最適化問題のアルゴリズム等を用いて求めてもよい。
【0088】
〔各通信状態での動作例〕
図6は、
図2の通信状態Aにおいて、光トランシーバA、B間で高速PAM光信号を送受信する場合の通信システム1000の動作の様子を示す説明図である。太い矢印で示す信号線は、光トランシーバA、B間での高速PAM光信号の送受信において信号が伝送される経路の例を示す。光トランシーバA、Bの動作は互いに同様であるため、以下では、光トランシーバA側の動作について説明される。
【0089】
送信信号処理部12は、ホストボードAから受信した高速電気信号を符号化し、例えば、PAM4信号に変換する。送信信号処理部12は、変換したPAM4信号を高速電気信号HEとして光送信器20に出力する。光送信器20は、送信信号処理部12から受信する高速電気信号HEを高速光信号HOに変換し、変換した高速光信号を光ファイバ50aに出力する。
【0090】
光送信器20は、例えば、レーザーダイオードを有し、高速電気信号HEによってレーザダイオ―ドの駆動電流(変調電流)を変化させて高速光信号HOを生成する。光送信器は、例えば、連続光(CW光)を生成する光源と、光源に接続される光変調器と、を備え、高速電気信号HEによって光変調器を駆動してCW光から高速光信号HOを生成してもよい。
【0091】
一方、光受信器30は、光ファイバ50aを介して高速光信号HOを受信し、受信した高速光信号HOを電流信号(光電流)に変換し、変換した電流信号を増幅してアナログの高速電気信号HEとして受信信号処理部14に出力する。光受信器30から出力される高速電気信号HEは、例えば、電流信号から変換された電気信号である。
【0092】
受信信号処理部14は、光受信器30から受信するアナログの高速電気信号HEをデジタルの高速電気信号に変換し、例えば、誤り訂正を実施した後、ホストボード200に出力する。このようにして、ホストボードAから光トランシーバAに入力された高速電気信号が含む情報は、光トランシーバBにて再生されてホストボードBに伝送される。ホストボードAからホストボードBへ伝送される情報は、バイナリデータの集合であり、伝送中にビットの論理値が反転することでビット誤りが発生する。
【0093】
また、受信信号処理部14は、誤り訂正でのフレームロス発生の有無を判定し、通信エラーの発生の有無を示す情報として制御部40に出力する。誤り訂正はホストボード200で行われてもよく、この場合はホストボード200から制御部40にフレームロスの発生有無を示す情報を送信する。
【0094】
制御部40は、BER情報の受信に基づいて、光トランシーバ100間での通信エラーの発生を検出した場合、
図2に示したように通信状態Aから通信状態Bに移行する。例えば、フレームロスが発生しているときに、制御部40は、調整モードにあることを示す値をメモリ内の特定のアドレスに格納して調整モードに入る。ホストボードBは、特定のアドレスにアクセスして格納されている値をチェックすることで光トランシーバBが調整モードにあることを知ることができる。制御部40は、調整モードにおいて実行する処理プログラムを実行して、光トランシーバBの制御を行う。なお、ここでいう調整モードは、通信状態B、C、Dのいずれかの状態にあることを表す。
【0095】
図7は、
図2、
図3および
図4の通信状態Bにおける各種信号の伝送の様子を示す説明図である。太い矢印で示す信号線は、通信状態Bにおいて信号が伝送される経路の例を示す。光トランシーバA、Bの動作は互いに同様であるため、以下では、光トランシーバA側の動作について説明される。
【0096】
光トランシーバAの制御部40は、光トランシーバBに送信する情報を示す低速電気信号(NRZ信号)を光送信器20に出力する。光送信器20は、制御部40からの低速電気信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号に応じてレーザ電流(駆動電流)を変調する。光送信器20は、変調したレーザ電流により低速光信号を生成し、生成した低速光信号を光トランシーバBに送信する。例えば、レーザ電流をレーザーダイオードの閾値電流に対して大きくしたり小さくしたり変化させることで低速NRZ光信号を生成できる。なお、低速電気信号のアナログ信号への変換は、光送信器20の外部(例えば、制御部40内部)で行われてもよい。例えば、制御部40は、D/A変換器(DAC)を備え、DACによって低速電気信号のアナログ信号を生成してもよい。
【0097】
光トランシーバAの光受信器30は、光トランシーバBから受信した低速NRZ光信号を低速電気信号LEに変換し、変換した低速電気信号LEを制御部40に出力する。
【0098】
図8は、
図3の通信状態Cにおける各種信号の伝送の様子を示す説明図である。太い矢印で示す信号線は、通信状態Cにおいて信号が伝送される経路の例を示す。
【0099】
光トランシーバAにおいて、制御部40は、PRBSQ等の固定ビットパターンを含むPAM4信号を送信信号処理部12に生成させる。例えば、このときに、PAM4信号のレベル0からレベル3は送信前に設定された値となっている。送信信号処理部12は、生成した固定ビットパターンを含むPAM4信号を高速電気信号HEとして光送信器20に出力する。光送信器20は、送信信号処理部12から受信する固定ビットパターンを含む高速電気信号HEを高速光信号HO(高速PAM光信号)に変換し、変換した高速光信号HOを光トランシーバBに送信する。
【0100】
光トランシーバBにおいて、光受信器30は、光トランシーバAからの固定ビットパターンを含む高速PAM光信号を高速光信号HOとして受信する。光受信器30は、受信した固定ビットパターンを高速電気信号HEに変換して受信信号処理部14に出力する。
【0101】
光トランシーバBにおいて、受信信号処理部14は、固定ビットパターンに基づいて高速電気信号HEのBERを算出し、算出したBERを示すBER情報を低速電気信号として制御部40に出力する。なお、このときの受信信号処理部14から制御部40へのBER情報の伝達は、例えば、SPI(Serial Peripheral Interface)またはI2C(Inter-Integrated Circuit)などのシリアル通信バスを介して行われてもよい。
【0102】
制御部40は、受信信号処理部14からのBER情報に基づいて低速電気信号LEを光送信器20に出力する。光送信器20のレーザ電流を低速電気信号LEで変調することで、BER情報を含む低速光信号LOを光トランシーバAに送信する。
【0103】
光トランシーバAにおいて、光受信器30は、光トランシーバBからBER情報を含む低速光信号LOを受信する。光受信器30は、受信した低速光信号LOを低速電気信号LEに変換して制御部40に出力する。制御部40は、低速電気信号LEに含まれるBER情報に基づいて、通信エラーの原因のビットエラーがKP4-FEC等により訂正可能であるか否かを判定する。
【0104】
光トランシーバAにおいて、制御部40は、BERが所定の値(閾値)より小さい場合、通信状態Cによる振幅の調整を完了する。一方、制御部40は、ビットエラーが閾値より大きい場合、例えば、送信信号処理部12から送信されるPAM4信号のレベル1およびレベル2のいずれか一方あるいは両方を調整する。閾値は、例えば、KP4-FEC等により訂正可能なBERの値として設定される。このときの制御部40と送信信号処理部12との間の通信は、例えば、SPIまたはI2Cなどのシリアル通信バスを介して行われてもよい。
【0105】
送信信号処理部12は、PRBSQのパターン等の固定ビットパターンを含み、各レベルが調整されたPAM4信号を高速電気信号HEとして光送信器20に出力する。光送信器20は、高速電気信号HEを高速光信号HOに変換し、固定ビットパターンを含む高速光信号を光トランシーバBに送信する。
【0106】
そして、BERが閾値以下になるまで、光トランシーバAによるPAM4信号の各レベルの調整および固定ビットパターンの送信と、光トランシーバBによるBERの測定およびBER情報の送信とが繰り返し実施される。
【0107】
図9は、
図4の通信状態Dにおける各種信号の伝送の様子を示す説明図である。
図9に示す動作は、
図8の光トランシーバAと光トランシーバBとを入れ替えたときの動作と同じである。すなわち、
図9では、BERが所定の値(閾値)以下になるまで、光トランシーバBによるPAM4信号の各レベルの調整および固定ビットパターンの送信と、光トランシーバAによるBERの測定およびBER情報の送信とが繰り返し実施される。
【0108】
以上、第1の実施形態では、光トランシーバA、B間での高速PAM光信号の通信時に通信エラーが発生したときに、ホストボードA、Bによる制御を介在させることなく、通信エラー状態から所定の値(閾値)以下のBERにて高速通信可能な状態に自動的に復帰させることができる。すなわち、高速PAM光信号を相互に送受信する光トランシーバA、Bで通信エラーが発生した場合にも、調整モードに移行して光トランシーバA、Bの送受信特性を調整可能にすることができる。さらに、BERの値が閾値以下となるようにPAM4信号の各レベルを調整することで、高速通信モードに戻って高速PAM光信号の通信を行うことができる。
【0109】
調整モードにおいて、ホストボードA、Bの介在を必要とせずに、制御部40により生成される通信エラー状態から復帰させるための各種情報を、低速光信号により光トランシーバA、B間で送受信することができる。低速光信号の変調速度が高速光信号の変調速度より遅いため、例えば、高速光信号で通信エラーが発生していた状況であってもBER情報を光トランシーバA、B間で誤りなく送受信することができる。そして、通信システム1000を通信エラー状態から復帰させることができる。
【0110】
〔第2の実施形態〕
〔光トランシーバA、Bの動作シーケンス〕
図10から
図12は、第2の実施形態において、光トランシーバA、B間で通信する場合の動作の一例を示すフロー図である。
図2から
図4と同様の処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。
図10から
図12に示す処理を実施する光トランシーバA、Bの構成および光トランシーバA、Bを含む通信システムの構成は、
図1の光トランシーバA、Bの構成および
図1の通信システム1000の構成と同様である。
【0111】
長距離伝送用の光トランシーバA、Bでは、増幅効果を有するアバランシェフォトダイオードまたは半導体光増幅器等の受光素子を光受信器30に搭載することで、長距離の伝送による受信パワーの低下を補うことができる。一方、長距離伝送用の光トランシーバ100が短距離で使用される場合、受信パワーの低下量が小さい。このため、受信信号を光受信器30で増幅するときに信号対雑音比が悪化しやすく、受信信号処理部14での受信処理において通信エラーが発生するおそれがある。
【0112】
この実施形態では、伝送距離が比較的短く、受信側の光トランシーバ(例えば、光トランシーバB)の受信パワーが大きい場合にも、送信側の光トランシーバ(例えば、光トランシーバA)の送信パワーを適切に調整することで、通信エラーの発生を抑制することができる。したがって、伝送距離が事前に分からない場合にも、通信システム1000の伝送距離に応じて、互いに対向する光トランシーバ間で送信パワーを調整することで受信パワーを調整することができる。
【0113】
図10の通信状態Aでは、
図2のステップS100、S200の代わりに、ステップS100A、S200Aが実施される。ステップS100A、S200Aでは、光トランシーバA、Bは、通信システム1000の最大伝送距離を想定して光送信器20が出力するパワー(送信パワー)を設定する。各光送信器20の送信パワーは、各制御部40により設定される。例えば、最大伝送距離に対する送信パワーの情報は、各制御部内のメモリに予め格納されている。各制御部40は、それぞれのメモリから送信パワーの情報を読み出して設定してもよい。通信状態Aでのその他の動作は、
図2の通信状態Aの動作と同様である。
【0114】
図10の通信状態Bの動作は、PAM4信号の各レベルの調整に必要な情報のやりとりの代わりに、光送信器20のパワーの調整に必要な情報のやりとりが実施されることを除き、
図2の通信状態Bの動作と同様である。低速NRZ信号の変調速度は、高速PAM光信号の変調速度よりも十分に遅い。また、低速NRZ信号の振幅(レベル1とレベル0との差)が高速PAM光信号の振幅(レベル3とレベル0との差)と同じとき、低速NRZ信号のアイ開口は、高速PAM光信号のアイ開口の約3倍の大きさとなる。これらの効果により信号対雑音比が向上する。これにより、光トランシーバA、Bが通信状態Bに移行することで、通信エラーの発生状況やPAM4信号の送信パワーの調整方法に関する情報を相互に交換可能になる。光トランシーバAは、ステップS106の後、処理を
図11のステップS108に移行する。光トランシーバBは、ステップS206の後、処理を
図11のステップS208Aに移行する。
【0115】
図11の通信状態Cでは、
図3のステップS208、S210、S110、S112、S114の代わりに、ステップS208A、S210A、S110A、S112A、S114Aが実施される。通信状態Cでのその他の動作は、
図3の通信状態Cの動作と同様である。
【0116】
ステップS208Aでは、光トランシーバBの制御部40は、光受信器30が光トランシーバAから受信する固定ビットパターンを含む高速PAM光信号の受信パワーを検出する。すなわち、この実施形態では、
図8に示すトランシーバBの制御部40は、受信信号処理部14からBER情報を受信する代わりに、光受信器30の受信パワーを検出する。なお、例えば、制御部40は、受信する高速PAM光信号に応じて光受信器30が出力する光電流から受信パワーを算出することができる。あるいは、光受信器30は、高速PAM光信号の受信パワーを検出し、検出した受信パワーの情報を制御部40に送信してもよい。
【0117】
ステップS210Aでは、光トランシーバBの制御部40は、検出した受信パワーを示す情報を低速NRZ光信号により光トランシーバAに送信する。ステップS208A、S210Aは、光トランシーバAが高速PAM光信号の送信パワーを変えて高速PAM光信号を送信するのに合わせて繰り返される。そして、光トランシーバBは、光トランシーバAから高速PAM光信号を受信しなくなると、動作状態を通信状態Cから通信状態Bに移行する。
【0118】
ステップS110Aでは、光トランシーバAは、光トランシーバBから受信する低速NRZ光信号に含まれる受信パワーを示す情報を受信する。なお、このときに、光トランシーバAは、光トランシーバBから低速NRZ光信号に含まれる受信パワーの情報を受信するまでステップS108の高速PAM光信号の送信を継続してもよい。それにより、各レベルを変えて高速PAM光信号を送信したことに対して確実に受信パワーの情報を受信することができる。
【0119】
次に、光トランシーバAは、ステップS112Aにおいて、光送信器20の送信パワーの調整が完了したか否かを判定する。調整が完了した場合、光トランシーバAは、動作状態を通信状態Cから通信状態B(ステップS116)に移行する。調整が完了していない場合、光トランシーバAは、ステップS114Aを実施する。例えば、光トランシーバAは、光トランシーバBでの受光パワーが所定の範囲内にある場合、調整の完了を判定する。光トランシーバAは、光トランシーバBでの受信パワーが所定の範囲外にある場合、調整を継続する。
【0120】
ステップS114Aでは、光トランシーバAの制御部40は、光送信器20の送信パワーを調整し、処理をステップS108に戻す。例えば、光送信器20の高速光信号HOを生成するレーザダイオ―ドのレーザ電流(駆動電流)を下げることで、光送信器20から送信される高速光信号HOの送信パワーを小さくする。そして、光トランシーバAから光トランシーバBへの固定ビットパターンを含む高速光信号HOの送信、光トランシーバBによる受信パワーの検出および光トランシーバAによる送信パワーの調整完了の判定が再び実施される。
【0121】
図11の通信状態Bの動作は、出力振幅の調整の完了の通知を送受信する代わりに、光送信器20のパワーの調整の完了の通知が送受信されることを除き、
図3の通信状態Bの動作と同様である。光トランシーバAは、ステップS116の後、処理を
図12のステップS118Aに移行する。光トランシーバBは、ステップS212の後、処理を
図12のステップS214に移行する。
【0122】
図12の通信状態Dでは、
図3のステップS118、S120、S216、S218、S220の代わりに、ステップS118A、S120A、S216A、S218A、S220Aが実施される。通信状態Dでのその他の動作は、
図4の通信状態Dの動作と同様である。
【0123】
図12の通信状態Dでは、光トランシーバAの光受信器30が高速PAM光信号を受信する際の受信パワーに基づいて、光トランシーバBの光送信器20の送信パワーを調整する動作が実施される。このため、通信状態Dにおいて、光トランシーバAの処理フローは、
図11の通信状態Cの光トランシーバBの処理フローと同様であり、光トランシーバBの処理フローは、
図11の通信状態Cの光トランシーバAの処理フローと同様である。
【0124】
図12の通信状態Bの動作は、高速PAM4光信号の各レベルの調整の完了の通知を送受信する代わりに、光送信器20の送信パワーの調整の完了の通知が送受信されることを除き、
図4の通信状態Bの動作と同様である。光トランシーバAは、ステップS122の後、処理を
図10のステップS102に戻す。光トランシーバBは、ステップS222の後、処理を
図10のステップS202に戻す。
【0125】
以上、第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、光信号を相互に送受信する光トランシーバA、Bで通信エラーが発生した場合にも、光トランシーバA、Bの送受信特性を調整可能にすることができる。例えば、伝送距離が比較的短く、受光パワーが大きい場合にも、送信側の送信パワーを調整して受信パワーを適切に調整することで、通信エラーの発生を抑制することができる。換言すれば、伝送距離が事前に分からない場合にも、通信システム1000の伝送距離に応じて、受信パワーを調整することができる。
【0126】
以上、本開示の実施形態などについて説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0127】
10 半導体集積回路装置
12 送信信号処理部
14 受信信号処理部
20 光送信器
30 光受信器
40 制御部
50a、50b 光ファイバ
100 光トランシーバ
200 ホストボード
1000 通信システム
HE 高速電気信号
HO 高速光信号
LE 低速電気信号
LO 低速光信号