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特開2023-35820薄膜蒸着のためのニオブ前駆体化合物及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法
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  • 特開-薄膜蒸着のためのニオブ前駆体化合物及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035820
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】薄膜蒸着のためのニオブ前駆体化合物及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20230306BHJP
   C07F 9/00 20060101ALI20230306BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230306BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C07F17/00 CSP
C07F9/00 Z
C23C16/455
C23C16/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085765
(22)【出願日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115634
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521283889
【氏名又は名称】イージーティーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テ ヨウン リー
(72)【発明者】
【氏名】スン ジュン ジ
(72)【発明者】
【氏名】シン ボム キム
(72)【発明者】
【氏名】スン ヨウン バイク
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AB99
4H050AC90
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB14
4H050WB21
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA13
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030HA01
4K030JA10
4K030JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄膜蒸着のための新規なニオブ前駆体化合物、及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】薄膜蒸着のための前駆体として使用されるヘテロレプティック(heteroleptic)ニオブ化合物は、熱安定性に優れ、常温において液体状態で存在し、揮発性が高くて薄膜形成工程に適用するに有利な利点がある。また、該ニオブ前駆体化合物を使用して形成されたニオブ薄膜は、残余物の含量が少なく、均一な物性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1または化2で表される、ニオブ前駆体化合物であって、
【化1】
【化2】
前記化1において、
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択され、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択され、
前記化2において、
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択され、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択され、R10は、炭素数1~20の線状アルキレン基及び炭素数3~20の分枝状アルキレン基の中から選択され、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~4の線状アルキル基の中から選択され、
前記化1及び化2において、nは、1~5の整数である。
【請求項2】
前記化1及び化2において、nは、1であり、前記化1においてR及び前記化2においてRは、それぞれメチル基である、請求項1に記載のニオブ前駆体化合物。
【請求項3】
前記ニオブ前駆体化合物は、下記化3で表される、
【化3】
請求項1に記載のニオブ前駆体化合物。
【請求項4】
前記ニオブ前駆体化合物は、下記化4で表される、
【化4】
請求項1に記載のニオブ前駆体化合物。
【請求項5】
前記ニオブ前駆体化合物は、常温で液体である、請求項1に記載のニオブ前駆体化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のニオブ前駆体化合物を含む、ニオブ含有薄膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のニオブ前駆体化合物を利用して、金属有機物化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)工程または原子層蒸着(Atomic layer Deposition、ALD)工程を通して基板上に薄膜を蒸着する、ニオブ含有薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記金属有機物化学気相蒸着工程または前記原子層蒸着工程は、50~700℃の温度範囲で遂行される、請求項7に記載のニオブ含有薄膜の形成方法。
【請求項9】
前記金属有機物化学気相蒸着工程または前記原子層蒸着工程は、バブリング方式、気体相(vapor phase)質量流量制御器(Mass Flow Controller、MFC)方式、直接気体注入(Direct Gas Injection、DGI)方式、直接液体注入(Direct Liquid injection、DLI)方式及び前記ニオブ前駆体化合物を有機溶媒に溶解させて移動させる有機溶液供給方式の中から選択された一つの方式を通して前記ニオブ前駆体化合物を前記基板へ移動させるステップを含む、請求項7に記載のニオブ含有薄膜の形成方法。
【請求項10】
前記ニオブ前駆体化合物は、運搬ガスと共に前記バブリング方式または前記直接気体注入方式により前記基板上へ移動し、
前記運搬ガスは、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)及び水素(H)の中から選択された一つ以上を含む混合物である、請求項9に記載のニオブ含有薄膜の形成方法。
【請求項11】
前記金属有機物化学気相蒸着工程または前記原子層蒸着工程は、前記ニオブ含有薄膜の形成時、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)及び過酸化水素(H)の中から選択された一つ以上の反応ガスを供給するステップを含む、請求項7に記載のニオブ含有薄膜の形成方法。
【請求項12】
前記金属有機物化学気相蒸着工程または前記原子層蒸着工程は、前記ニオブ含有薄膜の形成時、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、亜酸化窒素(NO)及び窒素(N)の中から選択された一つ以上の反応ガスを供給するステップを含む、請求項7に記載のニオブ含有薄膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ前駆体化合物及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法に関し、より詳細には、薄膜蒸着のための前駆体として使用されるヘテロレプティック(heteroleptic)ニオブ化合物及びそれを用いたニオブ含有薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術が発展するにつれ、各種の電子装置に活用される電子素子の微細化、軽量化への要求が急増している。微細な電子素子を形成するために、多様な物理的、化学的蒸着方法が提案されており、このような蒸着方法によって、金属薄膜、金属酸化物薄膜または金属窒化物薄膜等、各種の電子素子を製造するための多様な研究が進行中である。
【0003】
半導体素子の製造において、5族金属化合物を含有した薄膜は、一般に、金属有機物化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)または原子層蒸着(Atomic Layer Deposition、ALD)工程を利用して形成される。
【0004】
MOCVD蒸着工程と比較してALD蒸着工程は、自己制限反応(Selflimiting Reaction)をするため段差被覆性(Step coverage)に優れ、相対的に低温工程であるため熱拡散による素子の特性低下を避けることができるという長所がある。
【0005】
5族金属化合物のうちニオブ(Nb、niobium)を含有した薄膜を蒸着するためには、蒸着工程に適した前駆体化合物を選択することが非常に重要である。現在、半導体産業では、多様な種類のニオブ前駆体が存在する。従来のニオブ前駆体化合物として、ニオブ(V)クロリドのようなニオブハライドやニオブ(V)エトキシドのようなニオブアルコキシド等が知られている。このようなニオブ前駆体化合物は、一つ以上の同じリガンドからなるホモレプティック(homoleptic)系前駆体化合物である。ニオブハライドの場合、高い熱安定性と広い蒸着温度範囲、十分な反応性を有しているが、常温で固体であるため蒸気圧が低い。また、蒸着過程で生じる副産物が薄膜の物性に影響を与えて均一な物性の薄膜を形成しにくい短所がある。また、ニオブアルコキシドの場合、十分な蒸気圧と低い融点を有しており、液状に合成することは容易であるが、低い熱安定性によって薄膜形成工程中に容易に分解されて薄膜内の炭素含量が高い短所がある。
【0006】
そこで、近年は、ホモレプティック系前駆体化合物の短所を補完するためにヘテロレプティック系前駆体化合物が提案されている。ヘテロレプティック系前駆体化合物は、2種以上の異なるリガンドを含む。代表的なヘテロレプティック系前駆体化合物として、トリス(ジエチルアミノ)(tert-ブチルイミド)ニオブ(V)[tris(diethylamido)(tert-butylimido)niobium(V)]のようなアルキルアミド-イミド系前駆体化合物が例に挙げられる。このようなアルキルアミド-イミド系前駆体化合物は、広い温度区間で薄膜成長速度(Growth Per Cycle、GPC)が確保され、ホモレプティック系前駆体物質に比して高品質の薄膜を形成することができる。しかし、低温で薄膜内の炭素含量が高い短所がある。
【0007】
化学構造が異なるリガンドは、同じ条件下に蒸着工程を遂行しても反応ガスとの反応性が異なり、異なる蒸着表面を形成する。特に、ALD蒸着工程でヒドロキシ末端の表面と反応する前駆体化合物のリガンドの数によって電荷捕獲密度に影響があり得、これは薄膜品質に影響を与え得る。これによってサイクル毎に反応するリガンドの数を実質的に同一に制御して初めて電荷捕獲密度の低い理想的な薄膜を得ることができる。しかし、公知になったヘテロレプティックニオブ前駆体化合物は、急速な反応性、高いリガンド交換可能性による問題及び蒸気圧制御に困難があり、工程効率を向上させるのに制限があった。特に、MOCVD蒸着工程時、ニオブ前駆体化合物は、加熱された基板上では分解され、運搬する間には分解されないように熱安定性を有しなければならない。また、ALD蒸着工程時には、熱により分解されないが、相対反応物質に露出時に反応できるように高い熱安定性及び反応性を有しなければならない。
【0008】
従って、MOCVD蒸着工程はもちろんALD蒸着工程にも容易に使用され得るように、常温において液体状態で存在し、熱安定性及び反応性に優れて高品質の均一な薄膜を形成できる前駆体化合物に対する必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、薄膜成長が起こるに適しており、堅固な熱安定性を有し、高い蒸気圧を有しながら常温において液体状態で存在して従来のニオブ前駆体化合物を使用することによる工程上の問題を解消できるニオブ前駆体化合物を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、前記ニオブ前駆体化合物を利用して高品質の均一な薄膜を提供できる薄膜蒸着用ニオブ前駆体化合物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、前記薄膜蒸着用ニオブ前駆体組成物を利用して工程効率に優れながらも高品質の薄膜形成が可能なニオブ含有薄膜の形成方法を提供することである。
【0012】
本発明の課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例は、下記化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
(前記化1において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択され、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択され、前記化2において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択され、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択され、R10は、炭素数1~20の線状アルキレン基及び炭素数3~20の分枝状アルキレン基の中から選択され、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~4の線状アルキル基の中から選択され、前記化1及び化2において、nは、1~5の整数である。)
【0017】
本発明の他の実施例は、ニオブ含有薄膜蒸着用前駆体組成物を提供し、本発明の一実施例に係る薄膜蒸着用前駆体組成物は、前記化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物を含む。
【0018】
本発明のまた他の実施例は、前記化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物を利用して、金属有機物化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)工程または原子層蒸着(Atomic layer Deposition、ALD)工程を通して基板上に薄膜を蒸着するニオブ含有薄膜の形成方法を提供する。
【0019】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例に係るニオブ前駆体化合物は、熱安定性に優れ、常温において液体状態で存在し、揮発性が高くて薄膜形成工程に適用するに有利な利点がある。特に、本発明のニオブ前駆体化合物は、熱安定性に優れながらも反応性が高くてMOCVD蒸着工程またはALD蒸着工程で薄膜形成時に良質なニオブ薄膜を形成することができる。
【0021】
本発明の一実施例に係るニオブ前駆体化合物に含まれた一部のリガンドは、相対的に立体的妨害になる置換基を含む。これによって、ニオブ前駆体化合物の製造時、生成物の精製を容易にして純度向上に寄与できる。
【0022】
また、本発明の一実施例に係るニオブ前駆体化合物を使用してALD蒸着工程を遂行する場合、広い温度区間で一定の薄膜成長速度を有し、薄膜の品質がより向上し得る。
【0023】
また、本発明の一実施例に係るニオブ前駆体化合物で形成されたニオブ薄膜は、熱安定性に優れ、形態学的特徴に優れ、低い拡散性、少ない漏れ及び低い電荷捕獲性を有することで、誘電体、防止膜及び電極等、多様な用途に使用され得る。
【0024】
本発明に係る効果は、以上において例示された内容により制限されず、さらに多様な効果が本発明内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1、実施例2及び比較例1に係るそれぞれのニオブ前駆体化合物の熱重量分析(TGA)結果を示すグラフである。
図2】実施例1、実施例2及び比較例1に係るそれぞれのニオブ前駆体化合物を利用した原子層蒸着工程時の蒸着温度による薄膜の成長速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に制限されるものではなく、互いに異なる多様な形状に具現され、単に、本実施例は、本発明の開示が完全なものとなるようにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。
【0027】
本発明を説明するにあたって、関連した公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。本発明上において言及された「含む」、「有する」、「なされる」等が使用される場合、「~だけ」が使用されない以上、他の部分が加えられ得る。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0028】
構成要素を解釈するにあたって、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0029】
本願明細書の全体において、用語「常温」は、15℃~30℃、または20℃~27℃の温度を意味する。
【0030】
本願の一実施例に係るニオブ前駆体化合物は、下記化1で表され得る。
【0031】
【化1】
【0032】
化1において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択されたいずれか一つであってよい。例えば、Rは、炭素数1~3の線状アルキル基であってよく、Rは、3~6の分枝状アルキル基であってよいが、これに制限されない。
【0033】
化1において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択されたいずれか一つであってよい。具体的に、例えば、R及びRは、それぞれ炭素数1~6の線状アルキル基であり、Rは、炭素数3~6の分枝状アルキル基であってよいが、これに制限されない。
【0034】
化1において、nは、1~5の整数である。
【0035】
例えば、化1において、nは、1であってよく、Rは、炭素数1~6の線状アルキル基であってよい。好ましく、例えば、化1において、Rは、メチル基であってよい。このようなメチルシクロペンタジエン(methylcyclopentadiene)構造を含む場合、メチル基を含まないシクロペンタジエン(cyclopentadiene)構造に対比して金属との結合力が減少し得る。これによって、蒸着工程を通して形成された薄膜内の不要な残余物の含量が遥かに減少し得る。また、メチルシクロペンタジエン構造を含む場合、メチルシクロペンタジエンの遮蔽効果によってヘテロレプティックニオブ前駆体化合物の合成を容易にすることができる。さらに、ニオブ前駆体化合物の精製効率を向上させて純度の高いヘテロレプティックニオブ前駆体化合物を収得できる。
【0036】
より具体的に、ニオブ前駆体化合物は、下記化3で表される化合物であってよい。
【0037】
【化3】
【0038】
化3のような構造のニオブ前駆体化合物は、熱安定性により優れ、薄膜形成時、残余物の含量をさらに減少させることができる。また、蒸着工程で広い温度範囲で一定の薄膜成長速度を示し、MOCVD蒸着工程はもちろんALD蒸着工程にも活用され得る。
【0039】
本発明の他の実施例に係るニオブ前駆体化合物は、下記化2で表され得る。
【0040】
【化2】
【0041】
化2によるニオブ前駆体化合物は、ニオブ原子に結合されたリガンド-OR10N(R11)(R12)のうち窒素原子がニオブ原子と配位結合をなしながら安定した構造を形成する。これによって、化2で表されるニオブ前駆体化合物は、化1のニオブ前駆体化合物より安定した構造を有することで熱安定性にさらに優れた利点がある。これによって、化2で表されるニオブ前駆体化合物を使用して蒸着工程で形成された薄膜は、残余物の含量がさらに低減され、より広い温度範囲で一定の薄膜成長速度を示す。従って、化2で表されるニオブ前駆体化合物を使用して製造された薄膜は、より良質な特性を示す。
【0042】
化2において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6の線状アルキル基及び炭素数3~6の分枝状アルキル基の中から選択されたいずれか一つであってよい。具体的に、例えば、Rは、炭素数1~3の線状アルキル基であってよく、Rは、3~6の分枝状アルキル基であってよいが、これに制限されない。
【0043】
化2において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10の線状アルキル基及び炭素数3~10の分枝状アルキル基の中から選択されたいずれか一つであってよい。具体的に、例えば、R及びRは、それぞれ炭素数1~6の線状アルキル基であってよいが、これに制限されない。
【0044】
化2において、R10は、炭素数1~20の線状アルキレン基及び炭素数3~20の分枝状アルキレン基の中から選択され得る。具体的に、例えば、R10は、炭素数1~6の線状アルキレン基であってよいが、これに制限されない。
【0045】
化2において、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素及び炭素数1~4の線状アルキル基の中から選択されたいずれか一つであってよい。具体的に、例えば、R11及びR12は、それぞれ炭素数1~6の線状アルキル基であってよいが、これに制限されない。
【0046】
化2において、nは、1~5の整数である。
【0047】
例えば、化2において、nは、1であってよく、Rは、炭素数1~6の線状アルキル基であってよい。好ましく、例えば、化2において、Rは、メチル基であってよい。上述したように、メチルシクロペンタジエン(methylcyclopentadiene)構造を含む場合、メチル基を含まないシクロペンタジエン(cyclopentadiene)に比して金属との結合力が減少して薄膜内の不要な残余物の含量が遥かに減少し得る。また、メチルシクロペンタジエンの遮蔽効果によってヘテロレプティックニオブ前駆体化合物の合成及び精製を容易にして高純度及び高品質のニオブ前駆体化合物を収得できる。
【0048】
より具体的に、ニオブ前駆体化合物は、下記化4で表される化合物であってよい。
【0049】
【化4】
【0050】
化4で表されるニオブ前駆体化合物は、熱安定性がさらに向上し、薄膜形成時、残余物の含量がより低減され得る。これによって、化4のニオブ前駆体化合物を使用して蒸着工程で製造された薄膜は、物性にさらに優れる。
【0051】
化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物は、ニオブ含有薄膜蒸着用前駆体組成物として利用され得る。
【0052】
また、本発明の一実施例に係るニオブ前駆体化合物は、常温において液体状態で存在して保管及び取り扱いが容易であり、揮発性が高くて蒸着工程を使用して薄膜を形成するに有利に適用され得る。
【0053】
以下においては、本発明の一実施例に係るニオブ含有薄膜の形成方法を具体的に説明する。ニオブ含有薄膜の形成方法は、上述したニオブ前駆体化合物を使用し、ニオブ前駆体化合物に関連した重複した説明は省略する。
【0054】
本発明の一実施例に係るニオブ含有薄膜の形成方法は、化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物を使用して蒸着工程を通して基板上に薄膜を蒸着する。
【0055】
蒸着工程は、原子層蒸着(ALD)工程または化学蒸着(CVD)工程、例えば、有機金属化学蒸着(MOCVD)工程でなされ得る。前記蒸着工程は、50~700℃で実施され得る。
【0056】
まず、化1または化2で表されるニオブ前駆体化合物を基板上へ移送させる。例えば、ニオブ前駆体化合物は、バブリング方式、ガス相(vapor phase)質量流量制御器(mass flow controller)方式、直接気体注入(Direct Gas Injection、DGI)方式、直接液体注入(Direct Liquid Injection、DLI)方式、有機溶媒に溶解して移送する液体移送方式等により基板上に供給され得るが、これに制限されるものではない。
【0057】
より具体的に、ニオブ前駆体化合物は、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)及び水素(H)の中から選択された一つ以上を含む運搬ガス(carrier gas)または希釈ガスと混合して、バブリング方式または直接気体注入方式で基板上へ移送され得る。
【0058】
一方、蒸着工程は、ニオブ薄膜を形成するとき、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)及び過酸化水素(H)の中から選択された一つ以上の反応ガスを供給するステップを含むことができる。
【0059】
他の例として、蒸着工程は、ニオブ薄膜を形成するとき、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、亜酸化窒素(NO)及び窒素(N)の中から選択された一つ以上の反応ガスを供給するステップを含むことができる。
【0060】
本発明の一実施例に係る薄膜の形成方法で製造されたニオブ薄膜は、残余物の量が効果的に減少して高品質の薄膜を提供できる。また、本発明の一実施例に係る薄膜の形成方法によれば、広い薄膜成長温度範囲内で一定の薄膜成長速度を示し、より均一な物性のニオブ薄膜を提供できる。
【0061】
以下においては、本発明に係るニオブ前駆体化合物について下記実施例を通してさらに詳細に説明する。しかし、これは、本発明の理解を助けるために提示されるものであるだけで、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。
【0062】
[実施例1]
1.中間体化合物の製造
火炎乾燥された500mLシュレンクフラスコで、(tert-ブチルイミド)トリス(ジメチルアミド)ニオブ(tBuN)(NMeNb 32.9g(0.111mol、1当量)とヘキサン(n-hexane)300mLを投入後、室温で撹拌させた。前記フラスコにメチルシクロペンタジエン(CMeH)11g(0.137mol、1.2当量)を-20℃以下で滴下した後、反応溶液を常温で12時間撹拌させた。以後、減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留して(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CHで表される淡黄色液体化合物26.5g(収率72%)を収得した。
【0063】
核磁気共鳴分析(H NMR)を通して下記化Aで表される中間体化合物(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CHの合成を確認した。
【0064】
【化A】
【0065】
2.化合物(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CH)(tBuO)の製造
火炎乾燥された500mLシュレンクフラスコで、前記のように製造した中間体化合物(tert-ブチルイミド)ビス(ジメチルアミド)(メチルシクロペンタジエニル)ニオブ(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CH 26.5g(0.08mol、1当量)とヘキサン(n-hexane)150mLを投入後、常温で撹拌させた。前記フラスコにtert-ブタノール(tBuOH)6.5g(0.088mol、1.1当量)を-20℃以下で滴下した後、反応溶液を常温で12時間撹拌させた。以後、減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留して淡黄色液体化合物16.7g(収率58%)を収得した。
【0066】
核磁気共鳴分析(H NMR)を通して下記化3で表されるニオブ前駆体化合物(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CH)(tBuO)の合成を確認した。
【0067】
【化3】
【0068】
[実施例2]
火炎乾燥された500mLシュレンクフラスコで、前記実施例1の中間体製造ステップで得た(tert-ブチルイミド)ビス(ジメチルアミド)(メチルシクロペンタジエニル)ニオブ(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CH 32.9g(0.099mol、1当量)とヘキサン(n-hexane)300mLを投入後、常温で撹拌させた。前記フラスコにジメチルエタノールアミン((CHNCHCHOH)17.7g(0.199mol、2当量)を-20℃以下で滴下した後、反応溶液を常温で24時間撹拌させた。以後、減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留して淡黄色液体化合物15.7g(収率42%)を収得した。
【0069】
核磁気共鳴分析(H NMR)を通して下記化4で表されるニオブ前駆体化合物(η-CCH)(tBuN)Nb(N(CH)((CHNCHCHO)の合成を確認した。
【0070】
【化4】
【0071】
[比較例1]
火炎乾燥された500mLシュレンクフラスコで、ビス(ジエチルアミド)(tert-ブチルイミド)(シクロペンタジエニル)ニオブ(η-C)(tBuN)Nb(NEt 11g(0.029mol、1当量)とヘキサン(n-hexane)150mLを投入後、常温で撹拌させた。前記フラスコにイソプロピルアルコール[COH]3.8g(0.063mol、2.2当量)を-20℃以下で滴下した後、反応溶液を常温で12時間撹拌させた。反応溶液を減圧下で溶媒を除去し、減圧下で蒸留して淡黄色液体化合物9g(収率90%)を収得した。
【0072】
核磁気共鳴分析(H NMR)を通して下記化5で表されるニオブ前駆体化合物(η-C)(tBuN)Nb(OCHCの合成を確認した。
【0073】
【化5】
【0074】
[実験例]
1.熱重量分析
前記比較例1及び実施例1、実施例2それぞれに係る化合物の熱的特性を検討するために熱重量分析(TGA、thermogravimetic analysis)を遂行した。まず、熱重量分析装備を水分及び酸素含量が1ppm未満に維持される窒素グローブボックスに貯蔵させた。15mgのサンプルを坩堝に入れた後、10℃/分の速度で35℃から350℃まで昇温しながら測定した。サンプルの質量損失分を坩堝温度の関数としてモニタリングした。これによる結果を図1に示した。
【0075】
図1は、比較例1及び実施例1、実施例2に係るそれぞれのニオブ前駆体化合物の熱重量分析(TGA)結果を示すグラフである。
【0076】
図1を参照すると、実施例1及び実施例2それぞれによって製造されたニオブ前駆体化合物は、330℃以上の温度で揮発していない残余物の含量が2重量%未満であることを確認することができる。また、図1のグラフから、実施例1及び実施例2それぞれによって製造されたニオブ前駆体化合物は、揮発時に分解されるか副産物を形成しないことを確認することができる。即ち、実施例1及び実施例2によって製造されたニオブ前駆体化合物は、残余物をほとんど残さずに揮発して熱的に安定していることが分かる。
【0077】
これとは異なり、比較例1に係るニオブ前駆体化合物の場合、実施例1及び2より遥かに低い100℃付近で質量減少が発生し、実施例に対比して半減期が低い。これより、比較例1に係るニオブ前駆体化合物は、熱的特性が実施例に対比して劣ることを確認することができる。
【0078】
まとめると、実施例1及び実施例2に係るニオブ前駆体化合物は、常温では液体状態で存在して取り扱い及び精製が容易であり、加熱時には熱分解が発生せず、残余物をほとんど残さずに揮発して蒸気状態に転換される。従って、実施例1及び実施例2に係るニオブ前駆体化合物は、MOCVDやALD蒸着工程に容易に適用可能であるということが分かる。
【0079】
2.薄膜蒸着性
比較例1、実施例1及び実施例2それぞれに係るニオブ前駆体化合物を利用した原子層蒸着工程時の薄膜の成長速度を分析した。これによる結果は、図2に示した。
【0080】
図2は、比較例1、実施例1及び実施例2に係るそれぞれのニオブ前駆体化合物を利用した原子層蒸着工程時の蒸着温度(Dep.Temp.)による薄膜の成長速度(Growth Per Cycle、GPC)を示すグラフである。
【0081】
蒸着条件は、ニオブ前駆体化合物をキャニスタに充填後、110℃に加熱し、酸化剤としてオゾン(O)を使用した。反応基材は、シリコンウエハを使用し、250℃から340℃まで加熱して蒸着を進行した。前駆体のパルスを10秒間導入した後、アルゴン(Ar)を10秒間パージする。次いで、オゾン(O)のパルスを15秒間反応チャンバに導入した後、10秒間アルゴン(Ar)をパージした。このような方式で80~100サイクルを遂行した。このような方式で各前駆体別に同じ厚さのニオブオキシド薄膜を形成した。
【0082】
図2を参照すると、原子層蒸着工程時、実施例1及び実施例2それぞれに係るニオブ前駆体化合物を使用する場合、比較例1のニオブ前駆体化合物を使用する場合に対比して曲線の傾きが緩やかであることを確認することができる。特に、実施例2に係るニオブ前駆体化合物を使用する場合、薄膜の成長速度が低く、広い温度範囲内で薄膜成長速度が一定に維持されることを確認することができる。
【0083】
原子層蒸着工程で、薄膜成長速度が一定に維持されるということは、不完全な反応が起こるか、化学的反応なしに前駆体状態で蒸着されるか、熱により分解される等の付随的な反応が起こることなく、安定して薄膜が形成されることを意味する。即ち、図2から実施例1及び実施例2に係るニオブ前駆体化合物を使用する場合、比較例1のニオブ前駆体化合物を使用する場合に対比して安定した薄膜蒸着工程が可能であるということが分かる。特に、実施例2に係るニオブ前駆体化合物を使用する場合、蒸着温度範囲内でほとんど一定の薄膜成長速度を示し、より優れた物性の均一なニオブ薄膜を収得できることが分かる。これは、化4で表される実施例2のニオブ前駆体化合物は、一部のリガンドの窒素原子がニオブ原子と配位結合をなしながら安定した構造を形成することによる結果と判断できる。
【0084】
以上、本発明について実施例を通して詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。それゆえ、以下に記載の請求項の技術的思想と範囲は、実施例に限定されない。
図1
図2