(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035856
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】静電チャック、および処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230306BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230306BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114207
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2021141370
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄基
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】河野 玲緒
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA04
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA09
5F131CA15
5F131CA17
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる静電チャック、および処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板とベースプレートとの間に設けられた接合部と、基板に位置する第1孔部と、ベースプレートに位置する第2孔部と、接合部に位置する第3孔部と、を有するガス導入路と、第1孔部および第2孔部の少なくともいずれかに設けられたざぐり部と、第3孔部に露出する露出面を有し、ざぐり部に設けられた多孔質部と、を備え、ベースプレートから基板へ向かう方向を第1方向としたときに、多孔質部は、ガス透過性を有する多孔部と、多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、緻密部は多孔部の外周を覆うように配置されており、緻密部の少なくとも一部が露出面から第1方向に沿って第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成する、静電チャックが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、
前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、
前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、
前記ベースプレートに位置する第2孔部と、
前記接合部に位置する第3孔部と、
を有するガス導入路と、
前記第1孔部および前記第2孔部の少なくともいずれかに設けられたざぐり部と、
前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、を備え、
前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、
前記セラミック多孔質部は、
ガス透過性を有する多孔部と、
前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、
前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、
前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成する、静電チャック。
【請求項2】
前記第1突出部の前記第1方向に沿う前記露出面からの長さは、前記接合部の前記第1方向に沿う長さと略同じである、請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記ざぐり部は前記第1孔部に設けられる、請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1孔部は、
前記第1主面側に開口する第1部分と、
前記第2主面側に開口する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた中間部分と、を有し、
前記ざぐり部は前記第2部分に設けられており、
前記第2方向に沿う前記中間部分の長さは、前記第2方向に沿う前記第1部分の長さよりも大きく、
前記セラミック多孔質部は、前記露出面とは反対側の面を有し、前記面は前記中間部分に露出するよう構成される、請求項3記載の静電チャック。
【請求項5】
前記緻密部は、前記面から前記第1方向に沿って前記第1部分に向けて突出する第2突出部をさらに有する、請求項4記載の静電チャック。
【請求項6】
吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、
前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、
前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、
前記ベースプレートに位置する第2孔部と、
前記接合部に位置する第3孔部と、を有するガス導入路と、
前記第2孔部に設けられたざぐり部と、
前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、を備え、
前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、
前記セラミック多孔質部は、
ガス透過性を有する多孔部と、
前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、
前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、
前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成し、
前記第1孔部は、複数の細孔を含む、静電チャック。
【請求項7】
請求項1、2及び6のいずれか1つに記載の静電チャックと、
前記静電チャックに設けられたガス導入路にガスを供給可能な供給部と、
を備えたことを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、静電チャック、および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ等のセラミック誘電体基板および電極を備えた静電チャックは、該電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。このような静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板の表面と、吸着対象物である基板の裏面と、の間にヘリウム(He)等の不活性ガスを流し、吸着対象物である基板の温度をコントロールしている。
【0003】
例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、スパッタリング装置、イオン注入装置、エッチング装置など、基板に対する処理を行う装置において、処理中に基板の温度上昇を伴うものがある。このような装置に用いられる静電チャックでは、セラミック誘電体基板と吸着対象物である基板との間にHe等の不活性ガスを流し、基板に不活性ガスを接触させることで基板の温度上昇を抑制している。
【0004】
He等の不活性ガスによる基板温度の制御を行う静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板及びセラミック誘電体基板を支持するベースプレートに、He等の不活性ガスを導入するための穴(ガス導入路)が設けられる。また、セラミック誘電体基板には、ベースプレートのガス導入路と連通する貫通孔が設けられる。これにより、ベースプレートのガス導入路から導入された不活性ガスは、セラミック誘電体基板の貫通孔を通って、基板の裏面へ導かれる。
【0005】
ここで、装置内で基板を処理する際、装置内のプラズマから金属製のベースプレートに向かう放電(アーク放電)が発生することがある。ベースプレートのガス導入路やセラミック誘電体基板の貫通孔は、放電の経路となりやすいことがある。そこで、ベースプレートのガス導入路やセラミック誘電体基板の貫通孔に、多孔質部を設けることで、アーク放電に対する耐性(絶縁耐圧等)を向上させる技術がある。例えば、特許文献1には、ガス導入路内にセラミック焼結多孔体を設け、セラミック焼結多孔体の構造及び膜孔をガス流路にすることで、ガス導入路内での絶縁性を向上させた静電チャックが開示されている。また、特許文献2には、ベースプレートのガス導入路およびセラミック誘電体基板の貫通孔にセラミック製の多孔体を配置した静電チャックが開示されている。また、特許文献3には、ベースプレートのガス導入路あるいはセラミック誘電体基板の貫通孔にセラミック製の多孔体を配置するとともに、ベースプレートとセラミック誘電体基板とを接着する接着層のうち、ガス導入路および/または貫通孔に露出する箇所にプロテクト材を配置して接着剤の侵食を抑制することが記載されている。
このような静電チャックにおいて、アーク放電の抑制効果を長時間維持することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-123712号公報
【特許文献2】米国US2017/0352568号公報
【特許文献3】特開2021-057468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる静電チャック、および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、前記ベースプレートに位置する第2孔部と、前記接合部に位置する第3孔部と、を有するガス導入路と、前記第1孔部および前記第2孔部の少なくともいずれかに設けられたざぐり部と、前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、前記セラミック多孔質部は、ガス透過性を有する多孔部と、前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成する、静電チャックである。
【0009】
この静電チャックでは、ガス導入路にセラミック多孔質部を配置し、緻密部の少なくとも一部が露出面から第1方向に沿って第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成している。そのためアーキングを抑制できる。また、静電チャック使用時に、接合部60のうち第3孔部に露出する部分がプラズマによって腐食されてパーティクルが生じる恐れがある。セラミック多孔質部に設けられた第1突出部が物理的な障壁となり、プラズマ腐食によって生じたパーティクルが多孔質部に侵入することを抑制できる。したがって、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1突出部の前記第1方向に沿う前記露出面からの長さは、前記接合部の前記第1方向に沿う長さと略同じである、静電チャックである。
【0011】
この静電チャックによれば、アーキング耐性をより高めることができる。また、パーティクルの侵入をより効果的に抑制することができ、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記ざぐり部は前記第1孔部に設けられる、静電チャックである。
【0013】
この静電チャックによれば、プラズマのより近くに位置する第1孔部にセラミック多孔質部を配置しているため、アーキング耐性をより高めることができる。また第1突出部を設けているので、第1孔部に設けられたセラミック多孔質部がガス流においてパーティクル発生部となりうる第3孔部よりも下流側に位置しているにもかかわらず、パーティクルがセラミック多孔質部に侵入することをより効果的に抑制することができ、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1孔部は、前記第1主面側に開口する第1部分と、前記第2主面側に開口する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた中間部分と、を有し、前記ざぐり部は前記第2部分に設けられており、前記第2方向に沿う前記中間部分の長さは、前記第2方向に沿う前記第1部分の長さよりも大きく、前記セラミック多孔質部は、前記露出面とは反対側の面を有し、前記面は前記中間部分に露出するよう構成される、静電チャックである。
【0015】
この静電チャックによれば、第1孔部に設けられたざぐり部に配置されたセラミック多孔質部の露出面とは反対側の面、すなわち第1主面側の面が、第1孔部の中間部分に露出されている。中間部分の横幅(第2方向に沿う長さ)が第1部分の横幅よりも大きいため、セラミック多孔質部の第1主面側の面と第1部分との間に中間部分に対応する空間が設けられる。そのため、より確実にガス流量を確保することができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記緻密部は、前記面から前記第1方向に沿って前記第1部分に向けて突出する第2突出部をさらに有する、静電チャックである。
【0017】
この静電チャックによれば、アーキング耐性をより高めることができる。
【0018】
第6の発明は、吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、 前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、前記ベースプレートに位置する第2孔部と、前記接合部に位置する第3孔部と、を有するガス導入路と、前記第2孔部に設けられたざぐり部と、前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、を備え、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、前記セラミック多孔質部は、ガス透過性を有する多孔部と、前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成し、前記第1孔部は、複数の細孔により構成される、静電チャックである。
【0019】
この静電チャックでは、ガス導入路のうち第2孔部にセラミック多孔質部を配置し、多孔部の外周を覆うように緻密部を設け、この緻密部の少なくとも一部が、第3孔部に露出する露出面から第1方向に沿って突出する第1突出部を構成している。また、第1孔部を複数の細孔により構成している。そのためアーキングを抑制できる。また、静電チャック使用時に、接合部のうち第3孔部に露出する部分がプラズマによって腐食されてパーティクルが生じる恐れがある。第1突出部が物理的な障壁となり、プラズマ腐食によって生じたパーティクルが、セラミック多孔質部および第3孔部の下流側に位置する複数の細孔(第1孔部)に侵入することを抑制できる。したがって、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0020】
第7の発明は、上記のいずれか1つの静電チャックと、前記静電チャックに設けられたガス導入路にガスを供給可能な供給部と、を備えたことを特徴とする処理装置である。 この処理装置によれば、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる静電チャック、および処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
【
図2】(a)、(b)は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
【
図3】実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
【
図4】他の実施形態に係る静電チャックを例示する模式平面図である。
【
図5】他の実施形態に係る静電チャックを例示する模式平面図である。
【
図6】本実施の形態に係る処理装置を例示する模式図である。
【
図7】実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
【
図8】実施の形態に係る処理装置を例示する模式図である。
【
図9】実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
なお、各図中において、ベースプレート50からセラミック誘電体基板11へ向かう方向をZ方向(第1方向の一例に相当する)、Z方向と略直交する方向の1つをY方向(第2方向の一例に相当する)、Z方向及びY方向に略直交する方向をX方向(第2方向の一例に相当する)としている。
【0024】
(静電チャック)
図1は、本実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る静電チャック110は、セラミック誘電体基板11と、ベースプレート50と、多孔質部90と、を備える。この例では、静電チャック110は、多孔質部70をさらに備えている。
【0025】
セラミック誘電体基板11は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板11は、酸化アルミニウム(Al2O3)を含む。例えば、セラミック誘電体基板11は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板11における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、99原子パーセント(atоmic%)以上100atоmic%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板11の耐プラズマ性を向上させることができる。セラミック誘電体基板11は、対象物W(吸着対象物)が載置される第1主面11aと、第1主面11aとは反対側の第2主面11bと、を有する。対象物Wは、例えばシリコンウェーハなどの半導体基板である。
【0026】
セラミック誘電体基板11には、電極12が設けられる。電極12は、セラミック誘電体基板11の第1主面11aと、第2主面11bと、の間に設けられる。電極12は、セラミック誘電体基板11の中に挿入されるように形成されている。電極12には、接続部20および配線211を介して電源210が電気的に接続される。電源210により、電極12に吸着保持用電圧を印加することによって、電極12の第1主面11a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持することができる。
【0027】
電極12の形状は、セラミック誘電体基板11の第1主面11a及び第2主面11bに沿った薄膜状である。電極12は、対象物Wを吸着保持するための吸着電極である。電極12は、単極型でも双極型でもよい。
図1に例示をした電極12は双極型であり、同一面上に2極の電極12が設けられている。セラミック誘電体基板11には、電極12に加えて、高周波印加用の電極やヒータ電極を設けてもよい。
【0028】
電極12には、セラミック誘電体基板11の第2主面11b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、電極12と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
【0029】
ベースプレート50は、セラミック誘電体基板11を支持する部材である。ベースプレート50は、セラミック誘電体基板11側の上面50uと、上面50uとは反対側の下面50dと、を有する。セラミック誘電体基板11は、
図2(a)に例示をした接合部60によってベースプレート50の上に固定される。接合部60は、例えば、シリコーン接着剤が硬化したものとすることができる。この例では、ベースプレート50の上面50uと、セラミック誘電体基板11の第2主面11bと、が接合部60と接するよう構成されている。
【0030】
ベースプレート50は、例えば金属製である。ベースプレート50は、例えば、アルミニウム製の上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路51に接続され、連通路55の他端側は、出力路52に接続される。ベースプレート50は、第2主面11b側の端部に溶射部(図示しない)を有していてもよい。溶射部は、例えば溶射によって形成される。溶射部は、ベースプレート50の第2主面11b側の端面(上面50u)を構成してもよい。溶射部は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0031】
ベースプレート50は、静電チャック110の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック110を冷却する場合には、入力路51から冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板11を冷却することができる。一方、静電チャック110を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板11やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50やセラミック誘電体基板11の温度を調整することで、静電チャック110によって吸着保持された対象物Wの温度を調整することができる。
【0032】
また、セラミック誘電体基板11の第1主面11a側には、必要に応じてドット13が設けられており、ドット13の間に溝14が設けられている。すなわち、第1主面11aは凹凸面であり、凹部と凸部とを有する。第1主面11aの凸部がドット13に相当し、第1主面11aの凹部が溝14に相当する。溝14は、例えば、XY平面内において連続して延びるものとすることができる。それによって、He等のガスを第1主面11a全体に分配することができる。静電チャック110に載置された対象物Wの裏面と溝14を含む第1主面11aとの間に空間が形成される。
【0033】
ドット13の高さ、溝14の深さ、ドット13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
【0034】
セラミック誘電体基板11、ベースプレート50および接合部60を貫通するように、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、セラミック誘電体基板11に位置する第1孔部53aと、ベースプレート50に位置する第2孔部53bと、接合部60に位置する第3孔部53cと、を有する。第2孔部53bは、ベースプレート50を例えば貫通するように設けられる。第2孔部53bは、ベースプレート50を直線的に貫通してもよいし、途中で分岐してもよい。ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
【0035】
第1孔部53aは、例えば溝14と接続される。第1孔部53aは、第2主面11bから第1主面11aにかけて設けられる。すなわち、第1孔部53aは、第2主面11bから第1主面11aまでZ方向に延び、セラミック誘電体基板11を貫通する。
【0036】
第2孔部53bは、第3孔部53cを介して第1孔部53aと連通する。第2孔部53bに流入したガス(ヘリウム(He)等)は、第2孔部53bを通過した後に、第3孔部53cを通過し、その後、第1孔部53aに流入する。
【0037】
第1孔部53aに流入したガスは、第1孔部53aを通過した後に、対象物Wと溝14を含む第1主面11aとの間に設けられた空間に流入する。これにより、対象物Wをガスによって直接冷却することができる。
【0038】
第1孔部53aおよび第2孔部53bの少なくともいずれかに、ざぐり部53sが設けられる。ざぐり部53sには多孔質部90および/または多孔質部70が配置される。
第1孔部53aは、第1主面11aを包含する第1部分53aaと、第2主面11bを包含する第2部分53abと、を有する。第1部分53aaと第2部分53abとの間に更なる部分(例えば後述の中間部分53ac)を有していてもよい。ざぐり部53sは、例えば第2部分53abに設けられる。
第2孔部53bは、上面50uを包含する第3部分53buと、下面50dを包含する第4部分53bdと、を有する。第3部分53buと第4部分53bdとの間に更なる部分を有していてもよい。ざぐり部53sは、例えば第3部分53buに設けられる。
【0039】
多孔質部90および/または多孔質部70は、ざぐり部53sに設けられる。多孔質部90は、第3孔部53cに露出する露出面である第1面90aと、第1面90aと反対側の第2面90bとを有する。多孔質部70は、第3孔部53cに露出する露出面である第3面70aと、第3面70aと反対側の第4面70bとを有する。本明細書では、多孔質部がセラミック誘電体基板11の内部(第1孔部53a)に配置される場合を多孔質部90、ベースプレート50の内部(第2孔部53b)に配置される場合を多孔質部70とする。
【0040】
ガス導入路53において、ヘリウムなどの冷却ガスは第2孔部53b、第3孔部53c、第1孔部53a、の順に流れ、例えば溝14を介してセラミック誘電体基板11の第1主面11a側に供給される。静電チャック使用時には、第1主面11a側にプラズマが位置することとなる。したがって、セラミック多孔質部90を第1孔部53aに、セラミック多孔質部70を第2孔部53bに、それぞれ配置する場合には、プラズマのより近くに配置されるセラミック多孔質部90のアーキング耐性を、セラミック多孔質部70よりも高めることが望ましい。一例として、多孔質部90の第1多孔部91(詳細は後述)の孔径を多孔質部70の第2多孔部71の孔径よりも小さくする、第1多孔部91の気孔率を第2多孔部71の気孔率よりも小さくする、ことが挙げられる。この場合、ガス流の上流側に位置する多孔質部70のガス透過性を、ガス流の下流側に位置する多孔質部90のガス透過性よりも高くすることができるため、ガス流量制御の観点からも好ましい。
【0041】
図2(a)、(b)および
図3は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
図2および
図3は、多孔質部90および多孔質部70の周辺を例示する模式断面図であり、
図1に示す領域Aの拡大図に相当する。
図2(b)は、
図2(a)に示す領域の拡大図である。
【0042】
なお、煩雑となるのを避けるために、
図2においてはドット13(例えば、
図1を参照)を省いて描いている。
【0043】
図2に示すように、この例では第1孔部53aに設けられたざぐり部53sに多孔質部90が配置され、第2孔部53bに設けられたざぐり部53sに多孔質部70が配置されている。多孔質部90の第1面90aは第3孔部53cに露出する露出面である。第1面90aとセラミック誘電体基板11の第2主面11bとは略同一平面上にある。多孔質部70の第3面70aは第3孔部53cに露出する露出面である。第3面70aとベースプレート50の上面50uとは略同一平面上にある。
【0044】
この例では、第1孔部53aに設けられたざぐり部53sのXまたはY方向に沿う長さtsは、第3孔部53cのXまたはY方向に沿う長さtcと同じかそれよりも小さい。多孔質部90のXまたはY方向に沿う長さt1は長さtsと同じかそれよりも小さい。そのためアーキング抑制効果を高めることができる。
【0045】
多孔質部90の横幅(長さt1)がざぐり部53sの横幅(長さts)と同じであれば、多孔質部90の側面(第1面90aおよび第2面90bのそれぞれに垂直な面)とざぐり部53sとの間における放電を抑制することができる。例えばセラミック誘電体基板11と多孔質部90とを焼結により一体化することで、長さt1と長さtsとを同じにすることができる。
【0046】
図2を参照してさらに説明する。
この例では、第1孔部53aに多孔質部90を、第2孔部53bに多孔質部70をそれぞれ設け、多孔質部90が第1突出部3aを備えている。
【0047】
多孔質部90は、第1多孔部91と、第1緻密部93とを有する。第1多孔部91はガス透過性を有する。第1緻密部93は、第1多孔部91よりも緻密である。第1多孔部91の気孔率は、第1緻密部93の気孔率よりも大きい。第1多孔部91は、複数の孔を有する。複数の孔は所定範囲の孔径を有する直線の孔であることが好ましい。この場合、孔径は、例えば、1um~30umである。複数の孔は互いに連通しつつランダムに配置されていてもよい。第1緻密部93は実質的にガス透過性を有していなくてもよい。第1緻密部93は第1多孔部91の外周を覆うように配置される。第1緻密部93を設けることで多孔質部90の剛性を高めることができる。例えば、多孔質部90の側面(第1面90aおよび第2面90bのそれぞれに垂直な面)とざぐり部53sとの間に接着剤を配置する場合、第1緻密部93を設けることで多孔質部90に接着剤が侵入してガス透過性が悪化することを抑制できる。
この例では同様に、多孔質部70は、第2多孔部71と、第2緻密部73とを有する。第2多孔部71はガス透過性を有する。第2緻密部73は、第2多孔部71よりも緻密である。第2多孔部71の気孔率は、第2緻密部73の気孔率よりも大きい。第2緻密部73は実質的にガス透過性を有していなくてもよい。第2緻密部73は第2多孔部71の外周を覆うように配置される。なお、第2多孔部71において、複数の孔が所定範囲の孔径を有する直線上の孔の場合、孔径は第1多孔部91のそれよりも大きくてもよい。
【0048】
例えば、第1多孔部91の密度は、第1緻密部93の密度よりも低い。例えば、第1多孔部91のガス透過性は、第1緻密部93のガス透過性よりも高い。例えば、第1多孔部91は、円柱状である。第1緻密部93は、第1多孔部91の外周側面に接する。第1緻密部93は、第1多孔部91の外周側面を囲む環状(管状)である。
例えば、第2多孔部71の密度は、第2緻密部73の密度よりも低い。例えば、第2多孔部71のガス透過性は、第2緻密部73のガス透過性よりも高い。例えば、第2多孔部71は、円柱状である。第2緻密部73は、第2多孔部71の外周側面に接する。第2緻密部73は、第2多孔部71の外周側面を囲む環状(管状)である。
【0049】
図2に示すように、多孔質部90において第1緻密部93の少なくとも一部が、露出面である第1面90aからZ方向に沿って第3孔部53cに向けて突出する第1突出部3aを構成している。ここで第1面90aとは、多孔質部90のうち第3孔部53c側の最も大きい面積を構成する面である。この例では第1多孔部91が第1面90aを構成している。
【0050】
すなわち、例えば、第1面90aは、第1多孔部91の下面である。例えば、第1突出部3aは、第1緻密部93のうち、第1面90aから下方(セラミック誘電体基板11からベースプレート50へ向かう方向)に突出した部分である。この場合、第1突出部3aは、第1緻密部93のうち第1面90aよりも下方に位置する部分である。第1突出部3aのXY平面における平面形状は、例えば環状である。
【0051】
静電チャック110は、ガス導入路53の例えば第1孔部53aにセラミック多孔質部90を配置し、多孔質部90の第1緻密部93の少なくとも一部が多孔質部90の第3孔部53c側の露出面(第1面90a)からZ方向に沿って突出する第1突出部3aを構成している。そのためアーキングを抑制できる。また、静電チャック使用時に、接合部60のうち第3孔部53cに露出する端部60eがプラズマによって腐食されてパーティクルが生じる恐れがある。この場合でも、セラミック多孔質部90に設けられた第1突出部3aが物理的な障壁となり、プラズマ腐食によって生じたパーティクルが多孔質部90の第1多孔部91や多孔質部70の第2多孔部71に侵入することを抑制できる。したがって、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0052】
この例では、第1突出部3aは多孔質部70の第3面70aと接している。ざぐり部53sが第2孔部53bに配置されない場合、すなわち多孔質部70を備えない場合には、第1突出部3aはベースプレート50の上面50uと接している。
【0053】
この例では、第1突出部3aのZ方向に沿う露出部(第1面90a)からの長さである突出長h1は、接合部60のZ方向に沿う長さh2と略同じである。そのためアーキング耐性をより高めることができる。また、パーティクルの侵入をより効果的に抑制することができ、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。この例では、第1突出部3aの先端が、多孔質部70の第3面70aと接している。第1突出部3aを環状とし、その先端が第3面70aと接する場合には、ガス流と接合部60の端部60eとを物理的に遮断できるため、パーティクルが多孔質部90および/または多孔質部70に侵入することを効果的に抑制でき、パーティクルによって多孔質部が閉塞して流量が経時的に低下することが抑制される。
【0054】
例えばXまたはY方向視において第1面90aが接合部60と重なる場合、第1突出部3aの突出長h1が接合部60のZ方向に沿う長さh2よりも小さくてもよい。
【0055】
すなわち、第1面90aが、第2方向において、接合部60と並ぶ(重なる)場合、突出長h1は、長さh2よりも短くてもよい。なお、
図2(b)の例において、突出長h1は、第1面90aのZ方向における位置と、第1突出部3aの下端のZ方向における位置と、の間の距離である。
【0056】
この例では、第1孔部53aは、第1主面11a側に開口する第1部分53aaと、第2主面11b側に開口する第2部分53abとに加え、第1部分53aaと第2部分53abとの間に設けられた中間部分53acを有している。ざぐり部53sは第2部分53abに設けられている。この例では第1部分53aaは第1主面11aに設けられた溝14に開口している。多孔質部90の第2面90bと第1部分53aaとの間に中間部分53acが位置している。多孔質部90のうち、露出面(第1面90a)とは反対側の面である第2面90bが中間部分53acに露出している。XまたはY方向に沿う中間部分53acの長さt1cは、XまたはY方向に沿う第1部分53aaの長さt1aよりも大きくなるよう構成されている。
静電チャック使用時には、多孔質部90の第2面90bは第1孔部53aを通じてプラズマに直に晒される。そのため、多孔質部90には多孔質部70よりも高いアーキング耐性が求められ、前述の通りそのガス透過性は多孔質部70のガス透過性よりも低く設定される場合がある。中間部分53acを設けることでガス透過性を高めることができ一定のガス流量を得やすくすることができる。
【0057】
この例では、第1緻密部93は、第2面90bからZ方向に沿って第1部分53aaに向けて突出する第2突出部3bをさらに有している。そのためアーキング耐性をより高めることができる。
【0058】
すなわち、例えば、第2面90bは、第1多孔部91の上面である。例えば、第2突出部3bは、第1緻密部93のうち、第2面90bから上方(ベースプレート50からセラミック誘電体基板11へ向かう方向)に突出した部分である。この場合、第2突出部3bは、第1緻密部93のうち第2面90bよりも上方に位置する部分である。第2突出部3bのXY平面における平面形状は、例えば環状である。
【0059】
次に
図3を参照して説明する。
この例では、第1孔部53aに多孔質部90を、第2孔部53bに多孔質部70をそれぞれ設け、多孔質部70が第1突出部3aを備えている。
【0060】
図3に示すように、この例では多孔質部70において第2緻密部73の少なくとも一部が、露出面である第3面70aからZ方向に沿って第3孔部53cに向けて突出する第1突出部3aを構成している。ここで第3面70aとは、多孔質部70のうち第3孔部53c側の最も大きい面積を構成する面である。この例では第2多孔部71が第3面70aを構成している。
【0061】
すなわち、例えば、第3面70aは、第2多孔部71の上面である。例えば、第1突出部3aは、第2緻密部73のうち、第3面70aから上方に突出した部分である。この場合、第1突出部3aは、第2緻密部73のうち、第3面70aよりも上方に位置する部分である。
【0062】
静電チャック110は、ガス導入路53の例えば第2孔部53bにセラミック多孔質部70を配置し、多孔質部70の第2緻密部73の少なくとも一部が多孔質部70の第3孔部53c側の露出面(第3面70a)からZ方向に沿って突出する第1突出部3aを構成している。そのためアーキングを抑制できる。また、静電チャック使用時に、接合部60のうち第3孔部53cに露出する端部60eがプラズマによって腐食されてパーティクルが生じる恐れがある。この場合でも、セラミック多孔質部70に設けられた第1突出部3aが物理的な障壁となり、プラズマ腐食によって生じたパーティクルが多孔質部90の第1多孔部91や多孔質部70の第2多孔部71に侵入することを抑制できる。したがって、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。
【0063】
この例では、第1突出部3aは多孔質部90の第1面90aおよびセラミック誘電体基板11の第2主面11bと接している。ざぐり部53sが第1孔部53aに配置されない場合、すなわち多孔質部90を備えない場合には、第1突出部3aはセラミック誘電体基板11の第2主面11bと接している。
【0064】
この例では、第1突出部3aのZ方向に沿う露出部(第3面70a)からの長さである突出長h1は、接合部60のZ方向に沿う長さh2と略同じである。そのためアーキング耐性をより高めることができる。また、パーティクルの侵入をより効果的に抑制することができ、アーク放電の抑制効果を長期間維持することができる。この例では、第1突出部3aの先端が、多孔質部90の第1面90aと接している。第1突出部3aを環状とし、その先端が第1面90aと接する場合には、ガス流と接合部60の端部60eとを物理的に遮断できるため、パーティクルが多孔質部90および/または多孔質部70に侵入することを効果的に抑制でき、パーティクルによって多孔質部が閉塞して流量が経時的に低下することが抑制される。
【0065】
例えばXまたはY方向視において第1面90aが接合部60と重なる場合、第1突出部3aの突出長h1が接合部60のZ方向に沿う長さh2よりも小さくてもよい。
【0066】
例えば、第3面70aが、第2方向において、接合部60と並ぶ(重なる)場合、突出長h1は、長さh2よりも短くてもよい。なお、
図3の例において、突出長h1は、第3面70aのZ方向における位置と、第1突出部3aの上端のZ方向における位置と、の間の距離である。
【0067】
第3孔部53cに絶縁性のアーキング抑制部(図示しない)を配置してもよい。アーキング抑制部によって第3孔部53cの空間を略埋めることでアーキング耐性を高めることができる。アーキング抑制部はガスが通過可能に構成される。アーキング抑制部は弾性を有していてもよい。アーキング抑制部はポリイミドやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、エポキシ等の樹脂で構成されてもよい。アーキング抑制部はセラミックで構成されてもよい。アーキング抑制部のガス透過率は、多孔質部90よりも高いことが好ましい。
多孔質部90の気孔率は、多孔質部70の気孔率よりも小さくてもよい。ガス導入路53において、プラズマ雰囲気により近い部分に配置される多孔質部90の気孔率を相対的に小さくすることで、アーキング耐性をより高めることができる。アーキング抑制部の気孔率は多孔質部90の気孔率より大きくすることができる。アーキング抑制部の気孔率は多孔質部70の気孔率より大きくすることができる。
図2および
図3において、2つの多孔質部(多孔質部90、多孔質部70)を備えた静電チャックの例を説明したが、これに限らず目的に応じて変更可能であり、多孔質部は1つ(多孔質部90のみまたは多孔質部70のみ)でもよい。
【0068】
ざぐり部53sの横幅(ts)は、一例として1mm~5mmである。第1孔部53aにおいて、第1部分53aaのXまたはY方向に沿う長さt1aは、例えば0.05ミリメートル(mm)以上0.5mm以下である。
【0069】
なお、第1孔部53aの第1部分53aaが溝14に開口する場合、第1部分53aaの横幅(t1a)は第1部分53aaの溝と接する部分の幅である。多孔質部90の横幅(t1)および多孔質部70横幅(t2)はいずれも、最も大きい部分の寸法である。多孔質部の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上がこの寸法を有することが好ましい。
【0070】
接合部60の高さ(h2)は、例えば100μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmである。なお接合部60のZ方向に沿う長さは、第3孔部53cのZ方向に沿う長さと同じである。
【0071】
この例では、多孔質部90の第2面90bは第1孔部53aの内部に位置している。つまり、第2面90bとセラミック誘電体基板11の第1主面11aとは同一平面を構成しない。多孔質部70の第4面70bは第2孔部53bの内部に位置している。つまり、第4面70bとベースプレート50の下面50dとは同一平面を構成しない。
【0072】
多孔質部90および多孔質部70の材料には、絶縁性を有するセラミックが用いられる。多孔質部90(後述の第1多孔部91及び第1緻密部93のそれぞれ)は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)及び酸化イットリウム(Y2O3)の少なくともいずれかを含む。これにより、多孔質部90の高い絶縁耐圧と高い剛性とを得ることができる。
【0073】
例えば、多孔質部90は、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び酸化イットリウムのいずれかを主成分とする。
この場合、セラミック誘電体基板11の酸化アルミニウムの純度は、多孔質部90の酸化アルミニウムの純度よりも高くすることができる。この様にすれば、静電チャック110の耐プラズマ性等の性能を確保し、かつ、多孔質部90の機械的強度を確保することができる。一例としては、多孔質部90に微量の添加物を含有させることにより、多孔質部90の焼結が促進され、気孔の制御や機械的強度の確保が可能となる。
【0074】
多孔質部90および多孔質部70の詳細について、本明細書の一部を構成するものとして日本特許6489277号公報の内容を援用する。
【0075】
本明細書において、セラミック誘電体基板11の酸化アルミニウムなどのセラミックス純度は、蛍光X線分析、ICP-AES法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry:高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)などにより測定することができる。
【0076】
多孔質部において、例えば、多孔部(第1多孔部91、第2多孔部71)の材料と緻密部(第1緻密部93、第2緻密部73)の材料とは、同じである。ただし、多孔部の材料は緻密部の材料と異なっていてもよい。多孔部の材料の組成は、緻密部の材料の組成と異なっていてもよい。
【0077】
図4は、他の実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
この実施形態では、多孔質部において、Z方向視でガス導入路53(第1孔部53a)と重なる部分に、更なる緻密部を設けた態様について説明する。
図4に示すように、例えば、多孔質部90において、第1多孔部91の外周を覆うように配置される第1緻密部93に加え、第1多孔部91において第1孔部53aの第1部分53aaとZ方向において重なる部分に第1中央緻密部93cを設けることが好ましい。第1中央緻密部93cは、第1多孔部91よりも緻密である。第1多孔部91の気孔率は、第1中央緻密部93cの気孔率よりも大きい。例えば、第1多孔部91の密度は、第1中央緻密部93cの密度よりも低い。第1多孔部91のガス透過性は、第1中央緻密部93cのガス透過性よりも高い。例えば、第1中央緻密部93cは、円柱状である。この場合、第1多孔部91は、第1中央緻密部93cの外周側面に接し、第1中央緻密部93cを囲む環状(管状)である。発生した電流は第1中央緻密部93cを迂回して流れようとするため、電流が流れる経路である導電パスを長くすることができる。そのため電子が加速されにくくなりアーク放電の発生を抑制することができる。
アーク放電抑制の観点より、第1緻密部93および第1中央緻密部93cのうち少なくともいずれかの誘電率を第1多孔部91の誘電率よりも低くすることも好ましい。これら緻密部の誘電率を下げることで、静電チャック使用時に多孔質部90以外に係る電位差を小さくすることで絶縁破壊を抑制することができる。
【0078】
次に、多孔質部70に更なる緻密部を設ける場合について述べる。
例えば、多孔質部70において、第2多孔部71の外周を覆うように配置される第2緻密部73に加え、他の緻密部を設けてもよい。他の緻密部の一例として、第2多孔部71において第1孔部53aの第1部分53aaとZ方向において重なる部分に第2中央緻密部73cを設けてもよい。この場合、例えば、第2中央緻密部73cは、円柱状である。他の例としては、
図4に示すように、第2多孔部71において第1中央緻密部93cを迂回して流れた電流と対向する位置に第2中央緻密部73cを設けてもよい。この場合、例えば、第2中央緻密部73cの内側には、第2多孔部71と同様の円柱状の多孔部(中央多孔部)が配置される。中央多孔部の気孔率、密度及びガス透過性は、第2多孔部71と同様でよい。第2中央緻密部73cは、第2多孔部71よりも緻密である。第2多孔部71の気孔率は、第2中央緻密部73cの気孔率よりも大きい。例えば、第2多孔部71の密度は、第2中央緻密部73cの密度よりも低い。第2多孔部71のガス透過性は、第2中央緻密部73cのガス透過性よりも高い。第2中央緻密部73cは、中央多孔部の外周側面に接し、中央多孔部の外周側面を囲む環状(管状)でもよい。第2中央緻密部73cが設けられる場合には、第2多孔部71は、第2中央緻密部73cの外周側面に接し、第2中央緻密部73cを囲む環状(管状)である。Z方向視において第1中央緻密部93cの一部と第2中央緻密部73cの一部とが重なることも好ましい。第2中央緻密部73cを環状とし、Z方向視において第1中央緻密部93cを覆うように配置することもより好ましい。それによって、電流が流れる経路である導電パスをより長くすることができアーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。例えば、環状の第2中央緻密部73cの内側に設けられた中央多孔部は、Z方向において、第1中央緻密部93cと重なる。第1緻密部93、第1中央緻密部93cと同様に第2緻密部73、第2中央緻密部73cのうち少なくともいずれかの誘電率を第2多孔部71の誘電率よりも低くすることも好ましい。
上記以外の第1中央緻密部93c、第2中央緻密部73cの詳細について、本明細書の一部を構成するものとして日本特開2020-072261号公報および日本特開2020-150257号公報の内容を援用する。
【0079】
図5は、他の実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
この例では、ざぐり部53sは第2孔部53bに設けられており、ざぐり部53sに多孔質部70が配置されている。第1孔部53aは、複数の細孔16により構成されている。この例では、各細孔16のXまたはY方向に沿う長さ(細孔16の径)は、
図2~
図4で例示した第1部分53aaの横幅(t1a)よりも十分に小さい。具体的には細孔16の径は、0.01ミリメートル(mm)~0.2ミリメートル(mm)である。
【0080】
複数の孔16は、セラミック誘電体基板11cに例えば、レーザを照射、あるいは、超音波加工などによって形成することができる。複数の孔16の一端は、溝14に位置してもよい。複数の孔16の他端はセラミック誘電体基板11の第2主面11bに位置する。すなわち、複数の孔16は、セラミック誘電体基板11をZ方向に貫通する。
【0081】
図5に示す例では、第1孔部53aを構成する複数の細孔16はいずれも、Z方向視で環状に設けられた第1突出部3aよりも内側に配置されている。よって、アーキング耐性を高めることができる。また、接合部60の端部60eがプラズマ侵食されてパーティクルが発生した場合でも細孔16にパーティクルが侵入することが抑制される。よってアーキング抑制効果を継続的に維持することができる。本実施形態でも、前述のアーキング抑制部(図示しない)を第3孔部53cに配置することができる。また、多孔質部70において、Z方向視で複数の細孔16と重なる位置に、第2中央緻密部73cを設けてもよい。
【0082】
セラミック誘電体基板11及び多孔質部70における気孔率は、例えば走査型電子顕微鏡により得られた画像を画像解析することで算出される。密度は、JIS C 2141 5.4.3に基づいて測定される。
【0083】
(製造方法)
以上説明した実施形態に係る静電チャックの製造方法を以下に述べる。
第1孔部53aに多孔質部90が配置されたセラミック誘電体基板11と、第2孔部53bに多孔質部70が配置されたベースプレート50とを準備する。第1孔部53aと第2孔部53bとが対向するように接着剤などでベースプレート50とセラミック誘電体基板11とを接合して接合部60を形成する。多孔質部90または多孔質部70として、緻密部が第1突出部を有するものを用いる。そして、第1突出部が接合部60側になるように多孔質部90を第1孔部53aに、または多孔質部70を第2孔部53bに配置する。 第1孔部53aが複数の細孔16によって形成される場合には、第1突出部が接合部60側になるように多孔質部70を第2孔部53bに配置し、かつ、第1孔部53aに多孔質部90が配置されたセラミック誘電体基板11を準備する代わりに、第1孔部53aとして複数の細孔16を形成したセラミック誘電体基板11を準備すればよい。複数の細孔16は前述のとおり、レーザを照射、あるいは、超音波加工などによって形成することができる。そして、細孔16と第2孔部53bが連通するように接合部60を形成する。
【0084】
(処理装置)
図6は、本実施の形態に係る処理装置200を例示する模式図である。
図6に示すように、処理装置200には、静電チャック110、電源210、媒体供給部220、および供給部230を設けることができる。
電源210は、静電チャック110に設けられた電極12と電気的に接続されている。電源210は、例えば、直流電源とすることができる。電源210は、電極12に所定の電圧を印加する。また、電源210には、電圧の印加と、電圧の印加の停止とを切り替えるスイッチを設けることもできる。
【0085】
媒体供給部220は、入力路51および出力路52に接続されている。媒体供給部220は、例えば、冷却媒体または保温媒体となる液体の供給を行うものとすることができる。
媒体供給部220は、例えば、収納部221、制御弁222、および排出部223を有する。
【0086】
収納部221は、例えば、液体を収納するタンクや工場配管などとすることができる。また、収納部221には、液体の温度を制御する冷却装置や加熱装置を設けることができる。収納部221には、液体を送り出すためのポンプなどを備えることもできる。
【0087】
制御弁222は、入力路51と収納部221の間に接続されている。制御弁222は、液体の流量および圧力の少なくともいずれかを制御することができる。また、制御弁222は、液体の供給と供給の停止とを切り替えるものとすることもできる。
【0088】
排出部223は、出力路52に接続されている。排出部223は、出力路52から排出された液体を回収するタンクやドレイン配管などとすることができる。なお、排出部223は必ずしも必要ではなく、出力路52から排出された液体が収納部221に供給されるようにしてもよい。この様にすれば、冷却媒体または保温媒体を循環させることができるので省資源化を図ることができる。
【0089】
供給部230は、ガス供給部231、およびガス制御部232を有する。
ガス供給部231は、ヘリウムなどのガスを収納した高圧ボンベや工場配管などとすることができる。なお、1つのガス供給部231が設けられる場合を例示したが、複数のガス供給部231が設けられるようにしてもよい。
【0090】
ガス制御部232は、複数のガス導入路53とガス供給部231との間に接続されている。ガス制御部232は、ガスの流量および圧力の少なくともいずれかを制御することができる。また、ガス制御部232は、ガスの供給と供給の停止とを切り替える機能をさらに有するものとすることもできる。ガス制御部232は、例えば、マスフローコントローラやマスフローメータなどとすることができる。
【0091】
図5に示すように、ガス制御部232は、複数設けることができる。例えば、ガス制御部232は、第1主面11aの複数の領域毎に設けることができる。この様にすれば、供給するガスの制御を複数の領域毎に行うことができる。この場合、複数のガス導入路53毎にガス制御部232を設けることもできる。この様にすれば、複数の領域におけるガスの制御をより精密に行うことができる。なお、複数のガス制御部232が設けられる場合を例示したが、ガス制御部232が複数の供給系におけるガスの供給を独立に制御可能であれば1台であってもよい。
【0092】
ここで、対象物Wを保持する手段には、バキュームチャックやメカニカルチャックなどがある。しかしながら、バキュームチャックは大気圧よりも減圧された環境においては用いることができない。また、メカニカルチャックを用いると対象物Wが損傷したり、パーティクルが発生したりするおそれがある。そのため、例えば、半導体製造プロセスなどに用いられる処理装置には静電チャックが用いられている。
【0093】
この様な処理装置においては、処理空間を外部の環境から隔離する必要がある。そのため、処理装置200は、チャンバ240をさらに備えることができる。チャンバ240は、例えば、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有するものとすることができる。
また、処理装置200は、複数のリフトピンと、複数のリフトピンを昇降させる駆動装置を備えることができる。対象物Wを搬送装置から受け取ったり、対象物Wを搬送装置に受け渡したりする際には、リフトピンが駆動装置により上昇し第1主面11aから突出する。搬送装置から受け取った対象物Wを第1主面11aに載置する際には、リフトピンが駆動装置により下降しセラミック誘電体基板11の内部に収納される。
【0094】
また、処理装置200には、処理の内容に応じて各種の装置を設けることができる。例えば、チャンバ240の内部を排気する真空ポンプなどを設けることができる。チャンバ240の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を設けることができる。チャンバ240の内部にプロセスガスを供給するプロセスガス供給部を設けることができる。チャンバ240の内部において対象物Wやプロセスガスを加熱するヒータを設けることもできる。なお、処理装置200に設けられる装置は例示をしたものに限定されるわけではない。処理装置200に設けられる装置には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0095】
図7は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
図8は、実施の形態に係る処理装置を例示する模式図である。
図7は、
図1に示した静電チャックに対応する。
図8は、
図6に示した処理装置に対応する。
図8に表したように、この例では、静電チャック110a(静電チャック110の一例)と、セラミック誘電体基板11c(セラミック誘電体基板11の一例)が設けられている。
【0096】
図9は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式断面図である。
図9は、多孔質部90および多孔質部70の周辺を例示する模式断面図であり、
図2(a)に対応する。なお、実施形態の説明において、ベースプレート50からセラミック誘電体基板11へ向かう方向を「上」といい、セラミック誘電体基板11からベースプレート50へ向かう方向を「下」という場合がある。また、セラミック多孔質部90を、多孔質部90と呼び、セラミック多孔質部70を、多孔質部70と呼ぶ場合がある。
【0097】
第1孔部53aは、第2方向(XY平面内の1つの方向)において、セラミック誘電体基板11と並ぶ。XY平面は、Z方向に対して垂直な平面である。例えば、第1孔部53aは、セラミック誘電体基板11に設けられた孔の少なくとも一部によって形成される。第2孔部53bは、第2方向において、ベースプレート50と並ぶ。例えば、第2孔部53bは、ベースプレート50に設けられた孔の少なくとも一部によって形成される。第3孔部53cは、接合部60を貫通し、第2方向において、接合部60と並ぶ。例えば、第3孔部53cは、接合部60に囲まれた空間(孔)の少なくとも一部によって形成される。
【0098】
例えば、第1孔部53a、第2孔部53b及び第3孔部53cのそれぞれの外周のXY平面における形状は、円状である。なお、円状という範囲は、完全な円(真円)のみならず、真円が歪んだ形状を含んでもよく、例えば、楕円や扁平円を含んでもよい。円柱状は、円状の断面形状を有する柱状である。
【0099】
第1孔部53aは、第1部分53aaと、第2部分53abと、中間部分53ac(第3部分)とを含む。中間部分53acは、第1部分53aaと第2部分53abとの間に位置する。中間部分53acは、例えば、多孔質部90の第2面90bと、セラミック誘電体基板11との間の空間である。
【0100】
第2部分53abは、ざぐり部53sを含む。例えば、第1部分53aa、第2部分53ab、中間部分53ac、及び、ざぐり部53sのそれぞれの外周のXY平面における形状は、円状である。第1孔部53aに設けられたざぐり部53sの第2方向に沿う長さts(長さtsa)は、第1部分53aaの当該第2方向に沿う長さt1a(
図2(b)参照)よりも長い。なお、長さtsは、例えば、ざぐり部53sの直径であり、ざぐり部53sの平面形状の最大幅である。平面形状の最大幅は、XY平面内の方向に沿った長さのうちの最大値である。長さt1aは、例えば、第1部分53aaの直径であり、第1部分53aaの平面形状の最大幅である。例えば、第1孔部53aに設けられたざぐり部53sは、第1孔部53aのうち、第1部分53aaから径が拡大した部分の少なくとも一部である。例えば、XY平面内において、ざぐり部53sの中心の位置は、第1部分53aaの中心の位置と略同じである。
【0101】
例えば、ざぐり部53sの第2方向に沿う長さtsは、第3孔部53cの当該第2方向に沿う長さtc(
図2(b)参照)以下である。なお、長さtcは、例えば、第3孔部53cの直径であり、第3孔部53cの平面形状の最大幅である。
例えば、多孔質部90の第2方向に沿う長さt1(
図2(b)参照)は、ざぐり部53sの長さts(長さtsa)以下である。なお、長さt1は、例えば、多孔質部90の直径であり、多孔質部90の平面形状の最大幅である。
【0102】
第1部分53aaの上端は、セラミック誘電体基板11の第1主面11aに設けられ、第1主面11aの溝14と連続する。第1部分53aaは、第1主面11aの溝14に直接接続される。第2部分53abの下端は、セラミック誘電体基板11の第2主面11bに設けられる。ざぐり部53sの下端は、セラミック誘電体基板11の第2主面11bに設けられる。
【0103】
セラミック誘電体基板11は、第1孔部53aの内周側面53asと交差する座ぐり面53ahを有する。座ぐり面53ahは、例えば第2方向に延在し、下方を向く。第1部分53aaの下端は、座ぐり面53ahに設けられている。
【0104】
多孔質部90の第1面90aは、ベースプレート50側の下面であり、第2面90bは、上面である。第1面90aは、第3孔部53cに面し、第3孔部53cと接する。第1面90a及び第2面90bのそれぞれは、例えばXY平面に沿って延び、実質的に平面である。第1面90aと多孔質部70(又はベースプレート50)との間には、空間が形成されている。
【0105】
第1突出部3aは、第2方向において、接合部60と並ぶ。これにより、接合部60がプラズマやガスに曝されることが抑制され、保護される。
図9の例においては、接合部60は、多孔質部90に設けられた第1突出部3aによって、第1面90aと多孔質部70(又はベースプレート50)との間の空間と隔離されている。例えば、ガス導入路53のうちのガスが通過可能な空間に、接合部60が例えば直接接しないように、第1突出部3aが配置されている。
【0106】
例えば、
図9の例において、第1突出部3aの下端は、XY平面において環状形状を有し、該環状形状の全周に亘って、多孔質部70及びベースプレート50の少なくともいずれかに接する。例えば、第1突出部3aの下端は、多孔質部70の第2緻密部73と接する。第1突出部3aの下端は、多孔質部70の第2多孔部71と接してもよい。
【0107】
この例では、第1突出部3aは、接合部60の端部60eから離れている。第1突出部3aと接合部60との間に空間(第3孔部53cの一部)が配置されている。ただし、第1突出部3aは、端部60eと接していてもよい。
【0108】
また、第2突出部3bの上端は、座ぐり面53ahに接してもよい。例えば、第2突出部3bの上端は、XY平面において環状形状を有し、該環状形状の全周に亘って、座ぐり面53ahに接する。この場合、中間部分53acは、座ぐり面53ahと、多孔質部90の第2面90bと、第2突出部3bと、によって区画された空間を含む。
【0109】
また、
図9に表したように、第2孔部53bは、第3部分53buと、第4部分53bdと、を有する。第3部分53buは、ざぐり部53sを含む。すなわち、この例において、ざぐり部53sは、第1孔部53a及び第2孔部53bのそれぞれに設けられている。第3部分53buの上端は、ベースプレート50の上面50uに設けられる。第2孔部53bのざぐり部53sの上端は、上面50uに設けられる。例えば、第4部分53bdは、第2孔部53bのざぐり部53sの下端に接続される。第4部分53bdの下端は、ベースプレート50の下面50dに設けられる。
【0110】
例えば、第3部分53bu、第4部分53bd、及び、ざぐり部53sのそれぞれの外周のXY平面における形状は、円状である。
図9に表したように、第2孔部53bのざぐり部53sの第2方向に沿う長さts(長さtsb)は、第4部分53bdの当該第2方向に沿う長さt4aよりも長い。長さt4aは、例えば、第4部分53bdの直径であり、第4部分53bdの平面形状の最大幅である。例えば、第2孔部53bのざぐり部53sは、第2孔部53bのうち、第4部分53bdから径が拡大した部分の少なくとも一部である。例えば、XY平面内において、ざぐり部53sの中心の位置は、第4部分53bdの中心の位置と略同じである。
【0111】
例えば、多孔質部70の第2方向に沿う長さt2(
図2(b)参照)は、第2孔部53bのざぐり部53sの長さtsb以下である。なお、長さt2は、例えば、多孔質部70の直径であり、多孔質部70の平面形状の最大幅である。また、多孔質部70の第2方向に沿う長さt2は、第3部分53buの当該第2方向に沿う長さt2b(
図2(b)参照)と略同じである。なお、長さt2bは、例えば、第3部分53buの直径であり、第3部分53buの平面形状の最大幅である。
【0112】
例えば、長さtsbは、長さtsaよりも長く、長さt2は、長さt1よりも長い。ただし、これに限らず、長さtsbは、長さtsaと同じ、または、長さtsaよりも短くてもよい。長さt2は、長さt1と同じ、または、長さt1よりも短くてもよい。
【0113】
多孔質部70の第3面70aは、セラミック誘電体基板11側の上面であり、第4面70bは、下面である。第3面70aは、第3孔部53cに面し、第3孔部53cと接する。第3面70aは、第3孔部53cの一部を介して、第1面90aと対向する。第3面70a及び第4面70bのそれぞれは、例えばXY平面に沿って延び、実質的に平面である。第3面70aと多孔質部90(又はセラミック誘電体基板11)との間には、空間が形成されている。
【0114】
例えば、
図3又は
図5の例においては、接合部60は、多孔質部70に設けられた第1突出部3aによって、第3面70aと多孔質部90(又はセラミック誘電体基板11)との間の空間と隔離されている。これにより、接合部60がプラズマやガスに曝されることが抑制され、保護される。
【0115】
例えば、
図3及び
図5の例において、第1突出部3aの上端は、XY平面において環状形状を有し、該環状形状の全周に亘って、多孔質部90及びセラミック誘電体基板11の少なくともいずれかに接する。例えば、
図3の例では、第1突出部3aの上端は、多孔質部90の第1緻密部93、及びセラミック誘電体基板11と接する。第1突出部3aの上端は、多孔質部90の第1多孔部91と接してもよい。
【0116】
また、
図3の例では、第1突出部3aは、接合部60の端部60eと接している。ただし、多孔質部70の第1突出部3aは、接合部60の端部60eから離れてもよい。すなわち、多孔質部70の第1突出部3aと接合部60との間に空間(第3孔部53cの一部)が配置されてもよい。
【0117】
なお、「略同じ」又は「同じ」とは、厳密に同じであることのみに限らず、例えば製造ばらつきに起因する程度の範囲、又は、製造上の遊び(例えばざぐり部内に多孔質部を配置するため等の、僅かな隙間)の範囲において異なることを含んでもよい。
【0118】
実施形態は、以下の構成を含んでもよい。
(構成1)
吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、
前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、
前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、
前記ベースプレートに位置する第2孔部と、
前記接合部に位置する第3孔部と、
を有するガス導入路と、
前記第1孔部および前記第2孔部の少なくともいずれかに設けられたざぐり部と、
前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、を備え、
前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、
前記セラミック多孔質部は、
ガス透過性を有する多孔部と、
前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、
前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、
前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成する、静電チャック。
(構成2)
前記第1突出部の前記第1方向に沿う前記露出面からの長さは、前記接合部の前記第1方向に沿う長さと略同じである、構成1記載の静電チャック。
(構成3)
前記ざぐり部は前記第1孔部に設けられる、構成1または2に記載の静電チャック。
(構成4)
前記第1孔部は、
前記第1主面側に開口する第1部分と、
前記第2主面側に開口する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた中間部分と、を有し、
前記ざぐり部は前記第2部分に設けられており、
前記第2方向に沿う前記中間部分の長さは、前記第2方向に沿う前記第1部分の長さよりも大きく、
前記セラミック多孔質部は、前記露出面とは反対側の面を有し、前記面は前記中間部分に露出するよう構成される、構成3記載の静電チャック。
(構成5)
前記緻密部は、前記面から前記第1方向に沿って前記第1部分に向けて突出する第2突出部をさらに有する、構成4記載の静電チャック。
(構成6)
吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持し、前記セラミック誘電体基板側の上面と、前記表面と反対側の下面と、を有するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板と、前記ベースプレートとの間に設けられた接合部と、
前記セラミック誘電体基板、前記ベースプレートおよび前記接合部を貫通するガス導入路であって、
前記セラミック誘電体基板に位置する第1孔部と、
前記ベースプレートに位置する第2孔部と、
前記接合部に位置する第3孔部と、を有するガス導入路と、
前記第2孔部に設けられたざぐり部と、
前記第3孔部に露出する露出面を有し、前記ざぐり部に設けられたセラミック多孔質部と、を備え、
前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう方向を第1方向とし、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、
前記セラミック多孔質部は、
ガス透過性を有する多孔部と、
前記多孔部よりも緻密な緻密部と、を有し、
前記緻密部は前記多孔部の外周を覆うように配置されており、
前記緻密部の少なくとも一部が前記露出面から前記第1方向に沿って前記第3孔部に向けて突出する第1突出部を構成し、
前記第1孔部は、複数の細孔を含む、静電チャック。
(構成7)
構成1~6のいずれか1つに記載の静電チャックと、
前記静電チャックに設けられたガス導入路にガスを供給可能な供給部と、
を備えたことを特徴とする処理装置。
【0119】
本願明細書において、「垂直」、「平行」及び「直交」は、厳密な垂直、厳密な平行及び厳密な直交だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直、実質的に平行、及び実質的に直交であれば良い。
【0120】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。例えば、静電チャック110として、クーロン力を用いる構成を例示したが、ジョンソン・ラーベック力を用いる構成であっても適用可能である。また、前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0121】
11 セラミック誘電体基板、 11a 第1主面、 11b 第2主面、 12 電極、 13 ドット、 14 溝、 16 細孔、 20 接続部、 3a 第1突出部、 h1 突出長(高さ)、 3b 第2突出部、 50 ベースプレート、 50a 上部、 50b 下部、 50u 上面、 50d 下面、 51 入力路、 52 出力路、 53 ガス導入路、 53a 第1孔部、 53aa 第1部分、 t1a 長さ(横幅)、 53ab 第2部分、 53ac 中間部分、 53ah 座ぐり面、 53as 内周側面、 t1c 長さ(横幅)、 t4a 長さ、 53b 第2孔部、 53bu 第3部分、 53bd 第4部分、 t2b 長さ(横幅)、 53c 第3孔部、 tc 長さ(横幅)、 53s ざぐり部、 ts、tsa、tsb 長さ(横幅)、 55 連通路、 60 接合部、 60e 端部、 h2 長さ(高さ)、 70 セラミック多孔質部(多孔質部)、 70a 第3面、 70b 第4面、 71 第2多孔部、 73 第2緻密部、 73c 第2中央緻密部、 t2 長さ(横幅)、 90 セラミック多孔質部(多孔質部)、 90a 第1面、 90b 第2面、 91 第1多孔部、 93 第1緻密部、 93c 第1中央緻密部、 t1 長さ(横幅)、 110 静電チャック、 200 処理装置、 210 電源、 211 配線、 220 媒体供給部、 221 収納部、 222 制御弁、 223 排出部、 230 供給部、 231 ガス供給部、 232 ガス制御部、 240 チャンバ、 W 対象物