(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035872
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】分岐管形成装置および既設管の穿孔方法
(51)【国際特許分類】
F16L 41/16 20060101AFI20230306BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20230306BHJP
F16L 55/115 20060101ALI20230306BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F16L41/16
F16L55/00 C
F16L55/115
F16L1/028 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122928
(22)【出願日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021140879
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 大介
【テーマコード(参考)】
3H019
3H025
【Fターム(参考)】
3H019AA01
3H019BA01
3H019BB01
3H019BC05
3H019CB01
3H019DA01
3H019DA03
3H019DA19
3H025DA03
3H025DB12
3H025DD04
(57)【要約】
【課題】カッターの大径を抑制しつつ必要とする開口面積の穿孔口を既設管に形成し得る分岐管形成装置を構成する。
【解決手段】既設管Wに装着されるケース部Cと、既設管Wに穿孔口Waを形成する穿孔機Eとを備え、ケース部Cが分岐部3を有している分岐管形成装置100であって、穿孔機Eが、カッター軸芯Zを中心に駆動回転する円筒状のカッター32と、カッター32が既設管Wに穿孔口Waを形成する穿孔作動によって切断部分Wbをカッター32の内部空間に収容し、切断部分Wbをカッター32の戻り作動とともにカッター32に収容した状態で取り出す取出機構40とを有し、カッター軸芯Zに沿う方向視において、カッター軸芯Zが、既設管Wの管軸芯Xから外れた位置で既設管Wと重複する位置に配置されている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不断流状態の既設管の外面に装着されるケース部と、前記既設管の一部に穿孔口を形成する穿孔機とを備え、前記ケース部が前記穿孔口に連通可能な分岐部を有している分岐管形成装置であって、
前記穿孔機が、カッター軸芯を中心に駆動回転する状態で往復作動自在に前記ケース部に支持された円筒状のカッターを有し、
前記ケース部は、前記カッターが前記既設管に接触して前記穿孔口を形成する穿孔作動によって前記既設管から分離した切断部分を前記カッターの内部空間に収容し、前記切断部分を前記カッターの戻り作動とともに前記カッターに収容した状態で取り出す取出機構を有し、
前記カッター軸芯に沿う方向視において、前記カッター軸芯が、前記既設管の管軸芯から外れた位置で、前記既設管と重複する位置に配置されている分岐管形成装置。
【請求項2】
前記取出機構が、前記カッターの内面に接触する円盤状のガイドディスクと、前記ガイドディスクに連結し、前記カッター軸芯に沿う方向で、前記穿孔作動の方向の上流側に配置され前記既設管に接触可能な第一支持体と、前記穿孔作動の方向の下流側に配置され前記既設管に接触可能な第二支持体と、前記第一支持体と前記第二支持体とを連結する連結体とを備えると共に、
前記カッターが前記穿孔作動の終端に達した時点で、前記ガイドディスクと、前記第一支持体と、前記第二支持体と、前記連結体と、前記切断部分とが前記カッターの前記内部空間に収容される請求項1に記載の分岐管形成装置。
【請求項3】
前記カッターが、前記カッター軸芯に沿う方向での一方の端部に刃部を形成し、他方の端部に駆動ディスクを連結固定した構造であり、
前記カッターが前記穿孔作動の終端に達した時点で前記駆動ディスクと前記ガイドディスクとを係合させる係合機構を更に備えている請求項2に記載の分岐管形成装置。
【請求項4】
前記係合機構が、前記駆動ディスクにおいて前記カッター軸芯と同軸芯に配置され、前記ガイドディスクの方向に突出する軸状で突出方向での中間部の全周に小径部を形成した軸状体と、前記ガイドディスクの側において前記カッター軸芯と同軸芯で配置され、前記軸状体が挿入される連結筒と、当該連結筒に挿入された前記軸状体の前記小径部に径方向の外方から弾性係合する係合体とを備えている請求項3に記載の分岐管形成装置。
【請求項5】
前記ケース部は、互いに連結される複数の分割部材と、前記分割部材の1つに対し前記カッター軸芯と同軸芯で形成された開口部に嵌め込まれる筒状部とを有し、
前記筒状部に形成されたフランジ部に連結するカッターケースに前記カッターが収容されている請求項1~4のいずれか一項に記載の分岐管形成装置。
【請求項6】
前記取出機構が、前記第一支持体において、前記カッター軸芯と同軸芯で形成された貫通孔と、前記カッターが穿孔作動の終端位置に到達する以前に前記貫通孔に入り込むように前記カッター軸芯と同軸芯で該カッターの内部空間に備えたセンタ支軸と、前記穿孔作動の後に前記戻り作動を行う際に、前記貫通孔から前記センタ支軸の抜け出しを阻止する係合機構とを備えている請求項2に記載の分岐管形成装置。
【請求項7】
前記取出機構の前記第一支持体と前記第二支持体との少なくとも一方が、前記既設管の外面に対して面で接触可能な接触面を有する、あるいは、複数の位置で接触する複数の接触点を有している請求項2に記載の分岐管形成装置。
【請求項8】
不断流状態の既設管の外面に、分岐部を有するケース部を備えた分岐管形成装置が装着され、穿孔機によって前記分岐部に連通する穿孔口を前記既設管に形成する既設管の穿孔方法であって、
前記分岐管形成装置は、前記既設管の外面のうち、前記穿孔口が形成される領域の外面と、前記ケース部の内面との間に間隙が形成され、前記間隙において、前記穿孔口が形成される領域の覆う閉位置、および、前記穿孔口が形成される領域を開放する開位置に移動自在な弁体を有する開閉弁ユニットを備え、
前記穿孔機は、カッター軸芯を中心に駆動回転する状態で往復作動自在に前記ケース部に支持された円筒状のカッターを有し、前記カッター軸芯に沿う方向視において、前記カッター軸芯が、前記既設管の管軸芯から外れた位置で、前記既設管と重複する位置に配置され、前記ケース部は、前記カッターの穿孔作動によって前記既設管から分離した切断部分を、前記カッターの戻り作動とともに取り出す取出機構を有し、
前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記開位置にセットした状態で、前記穿孔機の前記カッターの前記穿孔作動によって前記既設管に前記穿孔口を形成し、前記カッターの前記戻り作動により前記切断部分を取り出し、
次に、前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記閉位置にセットした状態で、前記穿孔機を前記ケース部から取り外し、前記ケース部のうち前記穿孔機を取り外した部位を閉塞部材で閉塞し、
この後に、前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記開位置にセットすることで前記穿孔口を前記分岐部に連通させる既設管の穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐管形成装置および既設管の穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不断流状態の既設管の外面に装着した状態で既設管に穿孔口を形成し、このように形成された穿孔口からの流体を分岐管に送り出すことが可能な分岐管形成装置の技術が特許文献1及び特許文献2に示されている。
【0003】
特許文献1には、既設管(文献では、流体輸送管)の外周に、分岐部(文献では、接続口部)を有する接続ケースに装着し、この接続ケースに備えた作業ケースに収容した円筒状の回転カッターで既設管に穿孔口を形成する技術が示されている。この特許文献1では、接続ケースと作業ケースとを合わせて分岐管形成装置が構成され、この分岐管形成装置を用いて既設管に穿孔口を形成する手順が穿孔方法に相当する。
【0004】
特許文献1の分岐管形成装置は、カッターの回転軸芯が既設管の外面より外側に設定され、カッターが駆動回転する状態で回転軸芯に沿う方向に移動させ、既設管の一部を切り取るように穿孔が行われる。また、カッターは回転軸芯と同軸芯でセンタードリルを備えており、接続ケースの内部には、穿孔が行われる以前に、回転軸芯と同軸芯でセンタードリルの挿入が可能な筒状部材が配置されている。
【0005】
この筒状部材には、既設管の外面が入り込む凹部が形成されており、穿孔のためにカッターが移動する際に、センタードリルが筒状部材に挿入され、係合手段によりセンタードリルと筒状部材とを係合させる。そして、カッターによる穿孔が終了した後に、カッターを戻す作動を行うことにより、円筒状のカッターの内部に既設管から切り取られた切断部分が収容され、カッターと共に取り出せるように構成されている。
【0006】
特許文献2の分岐管形成装置は、特許文献1と同様の構造を有するカッターの構造、カッターによって既設管から切り取られた切断部分とを取り出せる構成であるが、取り出しの構成が特許文献1と一部異なっている。
【0007】
特許文献2の分岐管形成装置は、円筒状カッターの回転軸芯と同軸芯でセンタードリルを備え、ケース(第一分割部材と第二分割部材)の内部には、回転軸芯と同軸芯で案内筒と、この下端部に平板部材とが、カッターにより穿孔が行われる以前に配置される。
【0008】
案内筒は既設管の外面に近接する位置に配置され、平板部材は、カッターの穿孔作動の終端位置に配置され、一部が既設管と接近した位置に配置され、案内筒には既設管の下方向から当接する軸芯保持ボルトが螺合されている。このような構成から、穿孔のためにカッターが移動する際に、センタードリルが案内筒に挿入され、係合を可能にする構造によりセンタードリルと案内筒とが係合状態に達し、平板部材までカッターの先端が到達する。そして、カッターによる穿孔が終了した後にカッターを戻す作動を行うことにより、軸芯保持ボルトまで保持された切断部分を円筒状のカッターの内部に収容された状態で、カッターと共に取り出せるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60-201808号公報
【特許文献2】特許第6755573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1,2の分岐管形成装置では、夫々ともカッター軸芯を既設管の外面より外側に配置しているため、必要とする流量を得る開口面積の穿孔口を形成する場合には大きい半径のカッターを用いなければならず、結果として、カッターの大型化を招き、分岐管形成装置の大型化を招くことが懸念されている。
【0011】
このような理由から、カッターの大径を抑制しつつ必要とする開口面積の穿孔口を既設管に形成し得る分岐管形成装置および既設管の穿孔方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る分岐管形成装置の特徴構成は、不断流状態の既設管の外面に装着されるケース部と、前記既設管の一部に穿孔口を形成する穿孔機とを備え、前記ケース部が前記穿孔口に連通可能な分岐部を有している分岐管形成装置であって、前記穿孔機が、カッター軸芯を中心に駆動回転する状態で往復作動自在に前記ケース部に支持された円筒状のカッターを有し、前記ケース部は、前記カッターが前記既設管に接触して前記穿孔口を形成する穿孔作動によって前記既設管から分離した切断部分を前記カッターの内部空間に収容し、前記切断部分を前記カッターの戻り作動とともに前記カッターに収容した状態で取り出す取出機構を有し、前記カッター軸芯に沿う方向視において、前記カッター軸芯が、前記既設管の管軸芯から外れた位置で、前記既設管と重複する位置に配置されている点にある。
【0013】
この特徴構成によると、カッターで穿孔作動を行うことにより、既設管から分離した切断部分がカッターの内部空間に収容され、カッターの戻り作動に伴い、カッターの内部空間に収容された切断部分が取出機構によって取り出される。この穿孔作動に際し、カッター軸芯に沿う方向視において、カッター軸芯が既設管の軸芯から外れた位置で、既設管と重複する位置に配置されているため、カッター軸芯に沿う方向視において、カッターの軸芯を既設管の外面より外側に配置したものと比較してカッターの半径を小さくすることが可能となる。これにより、ケース部においてカッターを収容する空間を小さくし、結果として、ケース部の小型化に繋がる。この小径のカッターを用いて、必要とする流量を得る開口面積の穿孔口を容易に形成することができる。従って、カッターの大径を抑制しつつ必要とする開口面積の穿孔口を既設管に形成し得る分岐管形成装置が構成された。
【0014】
上記構成に加えた構成として、前記取出機構が、前記カッターの内面に接触する円盤状のガイドディスクと、前記ガイドディスクに連結し、前記カッター軸芯に沿う方向で、前記穿孔作動の方向の上流側に配置され前記既設管に接触可能な第一支持体と、前記穿孔作動の方向の下流側に配置され前記既設管に接触可能な第二支持体と、前記第一支持体と前記第二支持体とを連結する連結体とを備えると共に、前記カッターが前記穿孔作動の終端に達した時点で、前記ガイドディスクと、前記第一支持体と、前記第二支持体と、前記連結体と、前記切断部分とが前記カッターの前記内部空間に収容されても良い。
【0015】
これによると、カッターを穿孔作動させた場合には、穿孔作動に伴いガイドディスクがカッターの内面に接触することにより案内された状態で、第一支持体と第二支持体とがカッターの内部空間に入り込む状態に移行する。このガイドディスクにより、穿孔作動に伴うカッターの軸芯ずれを防止しながら、既設管の切断部分を適正な位置とすることができる。また、連結体が第一支持体と第二支持体との位置関係を維持すると共に、ガイドディスクがカッター軸芯を安定させた状態でカッターが穿孔作動を継続することにより、ガイドディスクと、第一支持体と、第二支持体と、連結体と、切断部分とがカッターの内部空間に確実に収容されるため、取出機構によって切断部分の取出を可能にする。
【0016】
上記構成に加えた構成として、前記カッターが、前記カッター軸芯に沿う方向での一方の端部に刃部を形成し、他方の端部に駆動ディスクを連結固定した構造であり、前記カッターが前記穿孔作動の終端に達した時点で前記駆動ディスクと前記ガイドディスクとを係合させる係合機構を更に備えても良い。
【0017】
これによると、カッターが穿孔作動の終端位置に達した時点で、駆動ディスクとガイドディスクとが係合機構によって係合する状態に達し、この後に、カッターの戻り作動に伴い切断部分が取り出される。この係合機構により、カッターの軸芯を既設管の外面より内側に配置した場合でも、切断部分を取り出すことができる。
【0018】
上記構成に加えた構成として、前記係合機構が、前記駆動ディスクにおいて前記カッター軸芯と同軸芯に配置され、前記ガイドディスクの方向に突出する軸状で突出方向での中間部の全周に小径部を形成した軸状体と、前記ガイドディスクの側において前記カッター軸芯と同軸芯で配置され、前記軸状体が挿入される連結筒と、当該連結筒に挿入された前記軸状体の前記小径部に径方向の外方から弾性係合する係合体とを備えても良い。
【0019】
これによると、カッターが穿孔作動の終端位置に達した時点で、軸状体が連結筒に挿入される状態に達し、この挿入状態に達した軸状体(駆動ディスク)の小径部に対して連結筒の係合体が外方から弾性係合することで、ガイドディスクと軸状体とが一体的に移動できる状態となる。この後に、カッターの戻り作動に伴い、カッターの内部空間に切断部分を収容した形態で取り出すことが可能となる。このように、係合機構を軸状態と連結筒と係合体とで構成するといった簡便な構成により、駆動ディスクとガイドディスクとを確実に連結することができる。
【0020】
上記構成に加えた構成として、前記ケース部は、互いに連結される複数の分割部材と、前記分割部材の1つに対し前記カッター軸芯と同軸芯で形成された開口部に嵌め込まれる筒状部とを有し、前記筒状部に形成されたフランジ部に連結するカッターケースに前記カッターが収容されても良い。
【0021】
これによると、フランジ部を開口部に形成しておき、この開口部に筒状部を嵌め込むことで、ケース部にフランジ部を形成することが可能となる。このように形成したフランジ部にカッターケースを連結することにより、ケース部に対して、予めフランジを形成しなくとも良い。その結果、ケース部の鋳造コストを低減することが可能となり、カッターケースの寸法が異なっていても、分割部材の共通化を図ることができる。
【0022】
上記構成に加えた構成として、前記取出機構が、前記第一支持体において、前記カッター軸芯と同軸芯で形成された貫通孔と、前記カッターが穿孔作動の終端位置に到達する以前に前記貫通孔に入り込むように前記カッター軸芯と同軸芯で該カッターの内部空間に備えたセンタ支軸と、前記穿孔作動の後に前記戻り作動を行う際に、前記貫通孔から前記センタ支軸の抜け出しを阻止する係合機構とを備えても良い。
【0023】
これによると、カッターで穿孔作動を行うことにより、既設管から分離した切断部分が少なくとも2つの支持体とともにカッターの内部空間に収容され、カッターが穿孔作動の終端に到達した時点で第一支持体の貫通孔にセンタ支軸が入り込む状態にある。この後に、カッターが戻り作動を行う際には係合機構が貫通孔からセンタ支軸の抜け出しを阻止するため、切断部分をカッターの内部空間に収容した状態で取り出せる。
【0024】
上記構成に加えた構成として、前記取出機構の前記第一支持体と前記第二支持体との少なくとも一方が、前記既設管の外面に対して面で接触可能な接触面を有する、あるいは、複数の位置で接触する複数の接触点を有しても良い。
【0025】
これによると、第一支持体と第二支持体との少なくとも一方が何れかが接触面を介して既設管の外面に接触する、あるいは、複数の接触点を介して接触することにより、既設管に対する第一支持体あるいは第二支持体の姿勢が安定し、これらがカッターの内面に接触する不都合を招くことがなく、既設管から分離した切断部分の取り出しも確実に行える。
【0026】
本発明に係る既設管の穿孔方法の特徴構成は、不断流状態の既設管の外面に、分岐部を有するケース部を備えた分岐管形成装置が装着され、穿孔機によって前記分岐部に連通する穿孔口を前記既設管に形成する既設管の穿孔方法であって、前記分岐管形成装置は、前記既設管の外面のうち、前記穿孔口が形成される領域の外面と、前記ケース部の内面との間に間隙が形成され、前記間隙において、前記穿孔口が形成される領域の覆う閉位置、および、前記穿孔口が形成される領域を開放する開位置に移動自在な弁体を有する開閉弁ユニットを備え、前記穿孔機は、カッター軸芯を中心に駆動回転する状態で往復作動自在に前記ケース部に支持された円筒状のカッターを有し、前記カッター軸芯に沿う方向視において、前記カッター軸芯が、前記既設管の管軸芯から外れた位置で、前記既設管と重複する位置に配置され、前記ケース部は、前記カッターの穿孔作動によって前記既設管から分離した切断部分を、前記カッターの戻り作動とともに取り出す取出機構を有し、前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記開位置にセットした状態で、前記穿孔機の前記カッターの前記穿孔作動によって前記既設管に前記穿孔口を形成し、前記カッターの前記戻り作動により前記切断部分を取り出し、次に、前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記閉位置にセットした状態で、前記穿孔機を前記ケース部から取り外し、前記ケース部のうち前記穿孔機を取り外した部位を閉塞部材で閉塞し、この後に、前記開閉弁ユニットの前記弁体を前記開位置にセットすることで前記穿孔口を前記分岐部に連通させる点にある。
【0027】
特許文献1,2を例に挙げると、これらの特許文献には、穿孔機とケース部との間にスライド式に開閉する仕切弁や、蓋体を備えており、穿孔機で既設管に穿孔口を形成する場合には、仕切弁や蓋体を開放位置にセットし、穿孔口を形成した後には、仕切弁や蓋体を閉じ位置にセットし、この後に穿孔機を取り外す作業を行うことになり、ケース部の外部にシャッター類を備えるための構成を備える等、ケースの大型化を招くものであった。
【0028】
これに対し、本穿孔方法では、カッターによって既設管に穿孔口を形成する場合には、開閉弁ユニットの弁体を、開位置にセットしてカッターを穿孔作動させて穿孔口を形成することが可能となり、この後にカッターを戻り作動させることにより、既設管から分離した切断部分を取出機構によって取り出せる。また、カッター軸芯に沿う方向視において、カッター軸芯が既設管の管軸芯から外れた位置で、既設管と重複する位置に配置されているため、カッター軸芯に沿う方向視において、カッター軸芯を既設管の外部に配置したものと比較してカッターの半径を小さくすることが可能となる。
【0029】
また、カッターの穿孔作動によって既設管に穿孔口を形成し、既設管から分離した切断部分を取出機構によって取り出した後に、開閉弁ユニットの弁体を閉位置にセットすることにより、既設管に形成された穿孔口からの流体の流出を阻止する状態で穿孔機を取り外し、このように取り外した部位を閉塞部材で閉塞することが可能となる。このように、カッターを小径に構成して必要とする流量を得る開口面積の穿孔口を容易に形成するだけでなく、穿孔口が形成される領域の外面とケース部の内面との間隙に弁体を設けることにより、装置の更なるコンパクト化が図られる。従って、カッターの大径を抑制しつつ必要とする面積の穿孔口を既設管に形成し得る既設管の穿孔方法が構成された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】一部を分解した状態の分岐管形成装置を示す正面図である
【
図3】水道管に穿孔口が形成され、弁体が閉位置にある分岐管形成装置の断面図である。
【
図4】弁体と弁座と外面シール体との位置関係を示す断面図である。
【
図5】装着初期のフランジユニットの断面図である。
【
図6】固定ボルトの操作を開始した状態でのフランジユニットの断面図である。
【
図7】装着を完了したフランジユニットの断面図である。
【
図9】水道管にカッターが初期位置にある分岐管形成装置の断面図である。
【
図10】カッターが穿孔作動の終端位置に達した分岐管形成装置の断面図である。
【
図11】カッターが戻り作動した状態の分岐管形成装置の断面図である。
【
図12】係合体が係合した状態での係合機構の断面図である。
【
図13】カッターが戻り作動した後に弁体を閉位置にセットした状態の分岐管形成装置の断面図である。
【
図14】フランジユニットに止水プレートを固定した状態の分岐管形成装置の断面図である。
【
図15】分岐管形成装置の制御構成を示すブロック回路図である。
【
図16】別実施形態(a)のフランジユニットの側面図である。
【
図17】別実施形態(a)の装着初期のフランジユニットの断面図である。
【
図18】別実施形態(a)の装着を完了したフランジユニットの断面図である。
【
図19】別実施形態(h)の支持体、位置保持体等を示す側面図である。
【
図20】別実施形態(h)の支持体、位置保持体等を示す正面図である。
【
図21】別実施形態(h)の貫通孔、センタ支軸、係止体を示す断面図である。
【
図22】別実施形態(h)の貫通孔にセンタ支軸が入り込んだ後の係止体を示す断面図である。
【
図23】別実施形態(h)の分岐管形成装置を示す縦断面図である。
【
図24】別実施形態(h)のカッターが穿孔作動の終端位置にある分岐管形成装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1~
図3に示すように、既設管としての水道管Wの外面に装着され、挿口管3(分岐部の一例)から水を送り出すことが可能なT字管として構成されたケース部Cと、水道管Wの外周とケース部Cの内周との間の間隙において弁体21(
図3、
図4、
図8を参照)を作動させる開閉弁ユニットDとを備え、水道管Wに穿孔口Wa(
図3、
図11を参照)を形成する穿孔機Eをケース部Cに接続して分岐管形成装置100が構成されている。
【0032】
この分岐管形成装置100は、水道管W(既設管)に水が流れる不断流状態において、穿孔機Eにより水道管Wの一部に穿孔口Waを形成し、水道管Wに流れる水を挿口管3に送り出すための施工を可能にする。また、穿孔機Eは、
図9に示す円筒状のカッター32を備えている。また、カッター32の穿孔作動により
図10に示すように水道管Wに穿孔口Waを形成した後に、カッター32が戻り作動した場合には、
図11に示すように水道管Wの切断部分Wbをカッター32の内部空間32Sに収容した状態で取り出す取出機構40をケース部Cに備えている。
図2に示すように、カッター32は円筒状部分に多数の貫通孔が形成されている。
【0033】
分岐管形成装置100は、開閉弁ユニットDの弁体21を、水道管Wの外面のうち、穿孔口Waが形成される領域を覆う閉位置P1(
図13を参照)と、穿孔口Waが形成される領域を開放する開位置P2(
図9、
図10を参照)とに切り換え自在に構成されている。この開閉弁ユニットDを備えることにより、施工時には、弁体21を開位置P2にセットした状態で穿孔機Eにより水道管Wに穿孔口Waを形成し、穿孔口Waが形成された後には弁体21を閉位置P1にセットすることにより止水状態でケース部Cから穿孔機Eの取り外しを可能にしている。この開閉弁ユニットDの制御形態は〔穿孔作動〕の項で説明する。
【0034】
図1及び
図3には、水道管Wに装着した状態の分岐管形成装置100の斜視図、及び、断面図を示している。これらの図に示すように、水道管Wの中心を管軸芯Xと称し、挿口管3の中心を分岐軸芯Yと称している。また、
図9~
図11に示すように、水道管Wに穿孔口Waを形成するカッター32の回転中心をカッター軸芯Zと称している。分岐軸芯Yは、管軸芯Xに対して直交し、カッター軸芯Zは管軸芯Xと分岐軸芯Yとの夫々に直交している。
【0035】
カッター32は、円筒状でホールソーとして機能するものであり、水道管Wに対向する端部に超硬チップを備えた刃部32aが形成されている。この穿孔機Eとカッター32の詳細は後述する。
【0036】
この分岐管形成装置100は、任意の姿勢で使用することが可能であるが、
図1に示すように水道管Wが水平姿勢にあり、カッター軸芯Zが上下方向に沿う姿勢にある状態で上下関係を説明する。
【0037】
〔ケース部〕
図1~
図3、
図9~
図11に示すようにケース部Cは、水道管Wの上側に配置される第一分割部材1(分割部材の一例)と、水道管Wの下側に配置される第二分割部材2(分割部材)とを有すると共に、第一分割部材1と第二分割部材2とに挟み込まれる形態で保持される挿口管3を有している。これら第一分割部材1と、第二分割部材2と、挿口管3とは、ダクタイル鋳鉄等による鋳造物である。挿口管3は全体的に筒状であり、筒状本体3aの分岐軸芯Yに沿う中間部位に分岐フランジ3bが一体形成されている。本実施形態では、フランジ付き挿口管3を示しているが、挿口管3として、押輪により外周にフランジ部を、管の外周に固定する構成のものを用いても良い。
【0038】
第一分割部材1及び第二分割部材2は、水道管Wの管軸芯X及び挿口管3の分岐軸芯Yが含まれる平面に沿った割面を有し、互いに密封状態で連結されている。ここで、「水道管Wの管軸芯X及び挿口管3の分岐軸芯Yが含まれる平面に沿った割面」とは、水道管Wの管軸芯Xと挿口管3の分岐軸芯Yが含まれる平面上又は該平面と略平行な面上に割面があることを意味する。本実施形態における水道管W,第一分割部材1及び第二分割部材2、挿口管3は、鋳鉄等で構成される同種の材料を用いて成形されている。なお、水道管W,第一分割部材1及び第二分割部材2、挿口管3を異なる材料を用いて成形しても良い。
【0039】
第一分割部材1は、水道管Wの外周の上部を覆う半円状に形成されると共に、管軸芯Xに沿う方向での端部に水道管Wの上部を覆う半円状の第一端部開口部1aが形成され、挿口管3の上部を覆う半円状の第一分岐開口部1bが形成されている。また、この第一分割部材1の上面には、カッター軸芯Zと同軸芯で筒状突起部4が形成されている。
【0040】
これと同様に第二分割部材2は、水道管Wの外周の下部を覆う半円状に形成されると共に、管軸芯Xに沿う方向での端部に水道管Wの下部を覆う半円状の第二端部開口部2aが形成され、挿口管3の下部を覆う半円状の第二分岐開口部2bが形成されている。
【0041】
これら第一分割部材1と第二分割部材2とは、夫々の割面を合わせる形態で、水道管Wの全周を覆う状態で一体化できるように構成され、第一分割部材1は割面に沿って第一フランジ部1fを形成し、第二分割部材2は割面に沿って第二フランジ部2fを形成している。
【0042】
また、分岐管形成装置100を水道管Wに装着する施工時には、水道管Wの外周に開閉弁ユニットDを装着した後に、水道管Wを挟み込む位置に第一分割部材1と、第二分割部材2とを配置し、第一分岐開口部1bと第二分岐開口部2bとに挟み込まれる位置に挿口管3の筒状本体3aを配置し、夫々の割面を合わせ、第一フランジ部1fと第二フランジ部2fとを複数の締結具Bで締結する。尚、開閉弁ユニットDは、水道管Wの外面と、ケース部Cの内面(第一分割部材1及び第二分割部材2の内面)との間の間隙に配置されることになる。
【0043】
これにより、ケース部Cが水道管Wの外面に装着固定されると共に、このケース部Cに挿口管3が挟持状態で固定される。特に、分岐管形成装置100を水道管Wに装着する際には、分岐フランジ3bに連結するように、挿口管3に分岐流路管7が接続する施工が予め行われても良い。尚、分岐流路管7には開閉弁を備えておくことも可能である。
【0044】
図3に示すように、分岐管形成装置100は、第一分割部材1の第一端部開口部1aの内周と、第二分割部材2の第二端部開口部2aの内周と、これらに対向する水道管Wの外面全周との間に挟み込まれる位置に止水シールSが形成される。これと同様に、第一分岐開口部1bの内周と、第二分岐開口部2bの内周と、挿口管3の筒状本体3aの外周との間に止水シールSが配置される。
【0045】
〔ケース部:フランジユニット〕
図5~
図7、
図9~
図11に示すように、筒状突起部4は、第一分割部材1の上面において上方に突出しており、この筒状突起部4の開口部4Hの内面に嵌め込む形態でフランジユニット10が備えられている。フランジユニット10は、穿孔機Eのカッターケース31をケース部Cに支持するものであり、平面視において開口部4Hの中心とフランジユニット10の中心とを一致させており、この中心がカッター軸芯Zとなる。
【0046】
フランジユニット10は、ダクタイル鋳鉄による鋳造物であり、筒状突起部4の開口部4Hに挿入される筒状部11と、この筒状部11の外端位置に一体的に形成されるフランジ部12とを有している。筒状部11は、外面(外周面)の半径が筒状突起部4の開口部4Hの内面(内周面)の半径に対して僅かに小さい値に設定されている。筒状部11の外面には規制溝11aと、シール溝11bと、上側ほど大径化する傾斜当接面11cとが、内端位置から外端側に順次形成されている。
【0047】
また、規制溝11aには規制リング13が嵌め込まれ、シール溝11bにはシールリング14が嵌め込まれる。規制リング13は金属材や硬質の樹脂材の割リング型に構成される。シールリング14はゴム材や樹脂材で成るOリングが用いられる。
【0048】
筒状突起部4の内面には、規制溝11aに嵌め込まれた規制リング13が当接する規制面4aと、シール溝11bに嵌め込まれたシールリング14が接触するシール面4bとが形成されている。
【0049】
更に、筒状突起部4の外端近傍の内周には複数のナット材15を回転不能に備えており、これらのナット材15に螺合する固定ボルト16の先端のテーパ部16aを、フランジユニットの筒状部11の傾斜当接面11cに接触させる状態で螺進させることで、フランジユニット10の全体を上方にシフトさせる。
【0050】
図5~
図7には、フランジユニット10を適正な位置に固定する際の位置変化を示しており、
図5に示す位置において、筒状部11にシールリング14と規制リング13とを装着し、ユニット全体を手動操作等によって上側に引き上げた状態で、複数のナット材15の夫々に固定ボルト16を螺合させる。
【0051】
図5に示すようにナット材15に固定ボルト16が螺合する状態で夫々の固定ボルト16を回転操作することで固定ボルト16を筒状突起部4の中心方向(カッター軸芯Zに近接する方向)に螺進させ、
図6に示すようにテーパ部16aが傾斜当接面11cに接触することにより、フランジユニット10の全体を上側にシフトさせ、
図7に示すように規制リング13が規制面4aに当接する状態に達することによりフランジユニット10が適正な位置に達し、フランジユニット10装着が完了する。
【0052】
例えば、第一分割部材1を製造する際に、この第一分割部材1にフランジ構造を一体的に鋳造することも考えられる。しかしながら、フランジ構造を一体的に形成するものでは、鋳造金型やフランジ面の仕上げ加工が複雑化しやすくコスト上昇を招くものであった。
これに対して、前述したようにケース部Cに対してフランジユニット10を備える構成では、フランジユニット10が比較的小型であるため、フランジ部12の鋳造やフランジ面の仕上げ加工を容易に高い精度で行え、ケース部Cの重量増大の抑制も可能にする。また、フランジユニット10を第一分割部材1に固定する際には、複数の固定ボルト16を操作することによりフランジユニット10の全体を上側にシフトさせ、規制リング13を規制面4aに当接させて固定するため、突出量を高い精度で設定し、良好なシール性能も得る。
【0053】
〔フランジユニットの別実施形態〕
(第1の別実施形態)
上述した実施形態では、筒状突起部4の中心とフランジユニット10の中心は一致するように構成していたが、夫々の中心は必ずしも一致させる必要はなく、中心位置を設定量だけ異ならせることが考えられる。
【0054】
この第1の別実施形態では、フランジユニット10の筒状部11の外周面の中心と、筒状部11の内周面の中心とを異ならせることになり、筒状部11の内周面の中心がカッター軸芯Zとなる。
【0055】
この第1の別実施形態の構成では、筒状突起部4に対するフランジユニット10の回転姿勢の設定により、平面視において水道管Wの管軸芯Xに対するカッター軸芯Zの位置を任意に設定することが可能となる。
【0056】
(第2の別実施形態)
実施形態では、フランジユニット10の装着が完了した場合には、フランジユニット10の筒状部11と筒状突起部4の内面との摩擦により、フランジユニット10の回転を規制している。このように回転を規制するものでは、固定ボルト16の螺進量が不充分である場合には、カッター32での穿孔時に、穿孔に伴う反力によってフランジユニット10が全体的に回転することも想像できた。
【0057】
このような理由から摩擦力によってフランジユニット10の回転を規制する構成に代えて、例えば、テーパ部16aと同様に傾斜する溝部を、ナット材15に対応する位置で、ナット材15が配置された間隔(周方向での間隔)と等しい間隔で、カッター軸芯Zに沿う姿勢でフランジユニット10の筒状部11の外面に対して独立した凹状や、溝状に形成することが考えられる。
【0058】
この第2の別実施形態のように構成することにより、複数の溝部に固定ボルト16の先端のテーパ部16aを接触させ、固定ボルト16の螺進により形成することによりフランジユニット10が適正な位置に装着すると同時に、固定ボルト16によってフランジユニット10の回転の規制が実現する。
【0059】
〔開閉弁ユニット〕
図8,
図9に示すように、開閉弁ユニットDは、ケース部Cの内周(第一分割部材1と第二分割部材2との内周)に沿う環状の間隙に配置され、管軸芯Xを中心に回動自在な湾曲板状の弁体21と、弁体21の幅方向(管軸芯Xに沿う方向)での両端部に連結する一対の環状フレーム22とを有し、弁体21の外周面にループ状となる外面シール体24を有している。図面には示していないが、一対の環状フレーム22の外周とケース部Cとの間に環状のシールが設けられる。
【0060】
特に、
図8には、既に穿孔口Waが形成された水道管Wを示しているが、開閉弁ユニットDを取り付ける時点では、水道管Wは、穿孔口Waが形成されない状態にある。
【0061】
一対の環状フレーム22は、夫々とも周方向で2分割された円弧状部材22aを連結ボルト25で連結することで円環状に形成されるものであり、
図3に示すように第一分割部材1の第一端部開口部1aの管軸芯Xに沿う方向での端面と、第二分割部材2の第二端部開口部2aの管軸芯Xに沿う方向での端面とに当接するように位置関係を設定することにより一対の環状フレーム22の管軸芯Xに沿う方向での位置を決めている。
【0062】
図3、
図8に示すように、一対の環状フレーム22の一方の外端に円弧状のラックギヤ部26を備えており、このラックギヤ部26に咬み合うピニオンギヤ27を有し、このピニオンギヤ27を人為操作によって回転させる減速部28をケース部Cの外部に備えている。これにより、弁体21は、人為操作によって
図13に示す閉位置P1と、
図9、
図10に示す開位置P2との間で移動自在となる。
【0063】
外面シール体24は、弁体21が閉位置P1にセットされた際に、
図3、
図4、
図13に示すように、ケース部Cに形成された弁座6に密着して止水を可能にするように弁体21の外面から僅かに突出するようにゴムや樹脂でループ状に形成されている。弁座6は、水道管Wの外周のうち穿孔口Waが形成される領域から挿口管3に対向する領域に形成された隔壁部5に対し孔状部5aを取り囲む領域に形成されている。
【0064】
ケース部C(第一分割部材1と第二分割部材2)のうち、カッター32がカッター軸芯Zに沿って移動する空間の近傍において、水道管Wを抱き込む円筒状の領域が形成されている。この領域に対して、カッター32の通過が可能で、平面視で円形となる開口部が形成されている。この開口部の内周を取り囲むように弁座6が形成され、この弁座6は、管軸芯Xの方向に突出する形態で形成されている。
【0065】
このように開閉弁ユニットDが構成されることにより、後述するようにカッター32で水道管Wに穿孔口Waが形成された後に、弁体21を閉位置P1にセットすることで、穿孔口Waからの水を止め(止水し)、挿口管3への水の流れを遮断すると同時に、カッターケース31への水の流れを遮断することにより、穿孔機Eの撤去を可能にする。
【0066】
〔穿孔機〕
図9~
図11、
図13に示すように、フランジユニット10のフランジ部12に対し、筒状のカッターケース31の下端のフランジ体31aを複数の締結ボルト35と、これに螺合するナット35bとで連結している。このカッターケース31は、カッター軸芯Zを中心とする円柱状のカッター収容空間31Sが内部に形成されている。
【0067】
穿孔機Eは、カッター軸芯Zと同軸芯に配置される円筒状でホールソーとして機能するカッター32と、カッター32に連結固定されカッター軸芯Zと同軸芯の円盤状の駆動ディスク33と、カッター軸芯Zと同軸芯に配置され駆動ディスク33に連結する駆動シャフト34とを備えている。
【0068】
カッター収容空間31Sには、カッター32と、駆動ディスク33と、駆動シャフト34とが配置される。
【0069】
この穿孔機Eは、駆動ユニット36(
図1、
図15を参照)を備えており、この駆動ユニット36は、駆動シャフト34に駆動回転する状態で、駆動シャフト34を長手方向に作動させることが可能である。図面には示していないが、穿孔機Eは、カッター32が
図9に示す初期位置あることを検知し、カッター32が
図10に示す穿孔作動の終端位置に達したことを検知する位置センサを備えている。前述したように弁体21は人為操作によって開閉操作するものであるが、例えば、電動モータを減速部28一体的に備え、この電動モータの駆動力で弁体21を開閉作動させるように構成することも可能である。このような構成では、
図15に示すように、穿孔制御部100Cが駆動ユニット36と、開閉弁ユニットDの電動モータとを制御するように構成される。
【0070】
穿孔制御部100Cは、マイクロプロセッサや、DSP(digital signal processor)等のように予め設定されたプログラムに従って制御を行う処理部を有している。この処理部は、駆動ユニット36によって駆動シャフト34を駆動回転すると共に、この駆動シャフト34をカッター軸芯Zに沿う方向に作動させ、カッター32の刃部32aを水道管Wに接触させて穿孔口Waを形成する穿孔作動と、穿孔作動の後に、カッター32をカッターケース31のカッター収容空間31Sまで戻す戻り作動とを実現する。
【0071】
前述したように、カッター32は、カッター軸芯Zに沿う方向での一端側(
図9では下端)に刃部32aを形成しており、他端側(
図9では上端)に前述した駆動ディスク33を連結固定している。
【0072】
特に、カッター軸芯Zに沿う方向視において、このカッター軸芯Zが、水道管Wの管軸芯Xから外れた位置で、水道管Wに重複する位置に設定されている(
図9、
図10を参照)。つまり、カッター軸芯Zに沿う方向視において、カッター軸芯Zは水道管Wの外面よりも内側に位置している。また、カッター軸芯Zに沿う方向視において、カッター32による切断領域が、水道管Wの外周(カッター軸芯Zが管軸芯Xから外れる方向の外周)を超えるように、このカッター32の穿孔半径が設定されている。
【0073】
このように軸芯の位置関係が設定され、カッター32の穿孔半径が設定されることにより、カッター32によって切断された切断部分Wb(
図10、
図11を参照)が単一の部材となる。
【0074】
〔取出機構〕
図9~
図11に示すように、ケース部Cは、カッター32の穿孔作動によって水道管Wから分離した切断部分Wbをカッター32の内部空間32Sに収容し、カッター32の戻り作動とともにカッター32の内部空間32Sに収容した状態で切断部分Wbを取り出す取出機構40を備えている。
【0075】
取出機構40は、ガイドディスク41と、ガイドディスク41の中心に連結する連結筒42と、連結筒42の下端に連結する上部支持体43(第一支持体の一例)と、下部支持体44(第二支持体の一例)と、上部支持体43および下部支持体44を連結する棒状の連結体45と、連結体45の上下方向の中央より下側位置において水道管Wの外面に接触する固定板46と、ガイドディスク41を駆動ディスク33に係合させる係合機構Fとを備えている。この取出機構40では、カッター32の作動方向での上流側(穿孔のための移動を開始する側)に上部支持体43(第一支持体)を配置し、カッター32の作動方向での上流側(穿孔のための移動を終了する側)に下部支持体44(第二支持体)を配置している。
【0076】
ガイドディスク41は、カッター軸芯Zと同軸芯の円盤状であり、その外周面がカッター32の内面に対して接触可能となる位置関係で配置されている。連結筒42はカッター軸芯Zと同軸芯で配置され、上端部がガイドディスク41に貫通状態で連結し、下端が上部支持体43(第一支持体)に貫通状態で連結している。
【0077】
上部支持体43は、カッター軸芯Zに沿う方向で水道管Wの外周のうちカッターケース31に対向する面(
図9では上面)に接触する位置に配置され、接触状態を維持するように外周に永久磁石Mを備えている。この上部支持体43はカッター軸芯Zを中心とする円盤状であり、カッター32の内部空間に収容可能な外径に成形されている。
【0078】
下部支持体44は、カッター軸芯Zに沿う方向で水道管Wの外周のうち第二分割部材2の底壁に対向する面(
図9では下面)に接触する位置に配置され、接触状態を維持するように外周に永久磁石Mを備えている。この下部支持体44はカッター軸芯Zを中心とする円盤状であり、カッター32の内部空間に収容可能な外径に成形されている。
【0079】
また、第二分割部材2の底部には下部支持体44を支持する支持面2dが形成されている 連結体45は、カッター軸芯Zと平行な姿勢で水道管Wの外面に接触する位置に配置され、上端を上部支持体43に連結し、下端を下部支持体44に連結している。
【0080】
図12に示すように、係合機構Fは、駆動ディスク33の中央でカッター軸芯Zと同軸芯に配置され、上部支持体43の方向に突出する軸状体48と、軸状体48の全周に形成された小径部48aに径方向の外方から弾性係合するように連結筒42に支持された複数の係合体49とを備えている。
【0081】
軸状体48は、連結筒42に挿通可能な外径突出端部(
図9で下端部)が突出側ほど小径化するテーパ状のガイド面48bが形成されている。小径部48aは、カッター軸芯Zに直交する姿勢の係合面と、この係合面を基準に駆動ディスク33に近接する位置ほど大径化する傾斜面とを有している。
【0082】
係合体49は、連結筒42に対して径方向に貫通する貫通孔部に対して出退自在に支持されたロッド材が用いられ、コイルスプリング(図示せず)により連結筒42の中心側(カッター軸芯Zに近接する側)に突出付勢されている。尚、複数の係合体49は、例えば、カッター軸芯Zを挟んで対向する2箇所に配置することが可能である。
【0083】
この係合機構Fは、
図10に示すように、カッター32が穿孔作動の終端に達した(カッター32による水道管Wに対する穿孔口Waの形成が完了した)時点で複数の係合体49が、軸状体48の小径部48aに係合する状態に達するように、軸状体48と、複数の係合体49との位置関係が決められている。
【0084】
〔分岐管形成装置の装着〕
図9に示すように、分岐管形成装置100を水道管Wに装着する場合には、水道管Wの外周に開閉弁ユニットDを装着し、水道管Wの外周の下部の第二分割部材2を配置し、水道管Wに近接する位置に取出機構40を配置し、所定位置に挿口管3を配置し、水道管Wの外周の上部を覆う位置に第一分割部材1を配置し、これらが複数の締結具Bで連結される。締結具Bは、ボルトBaとナットBbとで構成されている。
【0085】
また、複数の締結具Bで連結される際には、上下の分割面の間に止水シールSが挟み込まれる。また、第一分割部材1の第一端部開口部1aの内周と、第二分割部材2の第二端部開口部2aの内周と、これらに対向する水道管Wの外面全周との間に挟み込まれる位置に止水シールSが形成される。これと同様に、第一分岐開口部1bの内周と、第二分岐開口部2bの内周と、挿口管3の筒状本体3aの外周との間に止水シールSが形成される。
【0086】
この装着が行われる以前に、筒状突起部4の内面に嵌め込む形態でフランジユニット10が第一分割部材1に装着される。更に、このように装着されたフランジユニット10に対し、カッター32が収容されるカッターケース31が連結される。
【0087】
尚、フランジユニット10に対し、カッター32が収容されるカッターケース31が連結する工程は、第一分割部材1と第二分割部材2とが複数の締結具Bで締結した後であっても良い。
【0088】
図8に示すように、開閉弁ユニットDを装着する場合には、2分割された円弧状部材を連結ボルト25で連結することで水道管Wを抱き込むように一対の環状フレーム22が配置され、この環状フレーム22に一体的に形成された弁体21が水道管Wの外周面に近接する領域に沿う領域に配置される。
【0089】
尚、一方の環状フレーム22の外側面には、環状フレーム22を水道管Wに装着する以前に、ラックギヤ部26が取り付けられ、弁体21の外面には、外面シール体24が予め形成される。更に、ラックギヤ部26にピニオンギヤ27を咬合させるように、減速部28をケース部C(第一分割部材1と第二分割部材2との何れか一方)の外部に備えることで弁体21の開閉を可能にする。
【0090】
図3に示すように、弁体21と一対の環状フレーム22とが水道管Wの外面に装着された後に、第一分割部材1の割面と、第二分割部材2の割面とを合わせるように各々が締結される。これにより、管軸芯Xに沿う方向でのケース部Cの両端の内周に形成された内面に一対の環状フレーム22の外側面が近接する位置関係となり、管軸芯Xに沿う方向での弁体21の位置が決まる。
【0091】
図9に示すように、前述したように取出機構40は、ガイドディスク41と、連結筒42と、上部支持体43と、下部支持体44と、連結体45と、固定板46とを備えており、これらは一体化したユニットとして構成されている。
【0092】
このように取出機構40が構成されているため、取出機構40を分岐管形成装置100の内部に配置する場合には、第二分割部材2の支持面2dに下部支持体44を載置する状態で、この下部支持体44の上面の外周の一部を水道管Wの下面側に接触状態で配置することにより、上部支持体43の下面の外周の一部が水道管Wの上面側に接触し、連結体45の外周の一部が水道管Wの外面に接触し、固定板46の一部が水道管Wに接触する状態に達する。
【0093】
このように取出機構40を配置した場合には、上部支持体43の外周の永久磁石Mの吸着力により、この上部支持体43が水道管に接触する状態を維持し、これと同様に下部支持体44の外周の永久磁石Mの吸着力により、この下部支持体44が水道管に接触する状態を維持する。
【0094】
前述したように、ガイドディスク41と、上部支持体43と、下部支持体44とは、カッター軸芯Zと同軸芯で配置され、カッター軸芯Zを中心に等しい外径となる円盤状であり、カッター32の内部空間に収容可能な外径に成形されている。
【0095】
このように、水道管W(既設管)に対し、開閉弁ユニットDを装着し、挿口管3(分岐部)を有するケース部Cを装着し、ケース部Cにカッターケース31を有する穿孔機Eを装着し、ケース部Cが取出機構40を備えることで分岐管形成装置100を適正な位置にセットアップする工程の後に「既設管の穿孔方法」による穿孔が可能となる。
【0096】
〔穿孔作動〕(第1ステップ)
水道管Wに対し分岐管形成装置100を適正な位置にセットアップした状態で、
図9に示すように、減速部28からの駆動力によって弁体21を開位置P2にセットし、カッター32を駆動回転する状態で、同図に示す初期位置から、カッター32を水道管Wに接触する方向に作動させる穿孔作動を開始し、
図10に示す穿孔作動の終端に達することで水道管Wに穿孔口Waが形成される。
【0097】
この穿孔作動は、人為操作により予め弁体21を開位置P2にセットした状態において、
図15に示す穿孔スイッチSW1を人為操作することで開始され、穿孔制御部100Cが駆動ユニット36を制御することで駆動シャフト34を駆動回転させ、駆動シャフト34をカッター軸芯Zに沿ってシフトさせる穿孔作動が行われる。
【0098】
これにより、カッター32の刃部32aによる切削によって穿孔が進み、上部支持体43と、下部支持体44と、連結体45と、固定板46とが、水道管Wから分離した切断部分Wbと共にカッター32の内部空間32Sに収容される。また、カッター32が
図10に示すように穿孔作動の終端に達した時点で、穿孔制御部100Cが穿孔作動を停止する。
【0099】
また、この穿孔作動では、作動の初期にガイドディスク41が、カッター32の内部空間32Sに入り込むため、上部支持体43のカッター32の内部空間32Sへの入り込みを容易に行わせる。しかも、ガイドディスク41がカッター32の内周面に接触するため、カッター32の軸芯ずれが防止される。そして、カッター32が終端位置に達した状態では、
図12に示すように係合機構Fの軸状体48の小径部48aに係合体49が係合する状態に達する。
【0100】
このようにカッター32が、
図9に示す初期位置から、
図10に示す穿孔作動の終端に達し、水道管W(既設管)に穿孔口Waを形成する工程が、「既設管の穿孔方法」の第1ステップとなる。
【0101】
前述したように、カッター軸芯Zに沿う方向視において、このカッター軸芯Zが、水道管Wの管軸芯Xから外れた位置で、水道管Wに重複する位置に設定されている。また、カッター軸芯Zに沿う方向視において、カッター32の穿孔領域が、水道管Wの外周(カッター軸芯Zが管軸芯Xから外れる方向の外周)を超えるように、このカッター32の穿孔半径が設定されている。
【0102】
このように軸芯の位置関係が設定され、カッター32の穿孔半径が設定されているため、例えば、カッター軸芯Zに沿う方向視において、カッター軸芯Zが水道管Wに外部に設定された構成と比較して、カッター32の小径化を可能にし、結果として、分岐管形成装置100の小型化を実現している。しかも、カッター32の穿孔作動により形成された穿孔口Waの開口面積は、挿口管3の流路断面積と同等に形成されるため、流路抵抗なく分岐流路を形成することができる。
【0103】
(第2ステップ)
穿孔制御部100Cは、カッター32が穿孔作動の終端に達したことを検知した場合には、カッター32を初期位置に戻すための戻り作動を自動的に開始し、カッター32が
図11に示す初期位置に達することで、取出機構40がカッター32と共に切断部分Wbを取り出す形態となり穿孔作動が終了する。
【0104】
つまり、穿孔制御部100Cは、駆動シャフト34の回転を停止する状態で、駆動シャフト34をカッター軸芯Zに沿って逆方向にシフトさせる戻り作動を行うものであり、カッター32が初期位置に戻ったことを検知した後にシフト作動を停止する。
【0105】
これに続いて、人為操作によって弁体21を閉位置P1にセットする。この閉位置P1では、
図4、
図13に示すように、ケース部Cに形成された弁座6に弁体21の外面シール体24が密着することにより、弁体21が穿孔口Waからの水を封止(止水)する制御が行われる。
【0106】
このように、穿孔制御部100Cが駆動ユニット36を制御することにより、駆動シャフト34をカッター軸芯Zに沿ってシフトさせる戻り作動を行い、人為操作によって弁体21を閉位置P1にセットする制御が、「既設管の穿孔方法」の第2ステップとなる。
【0107】
(第3ステップ)
このように、弁体21が閉位置P1にセットされた状態では、水道管Wの穿孔口Waから挿口管3と、カッターケース31との何れにも水が流れない状態に達する。これにより、カッターケース31をフランジユニット10のフランジ部12から取り外すことが可能となり、人為的な作業により、カッターケース31と共に、カッター32と、取出機構40とを撤去し、フランジユニット10のフランジ部12に
図14に示す止水プレート17(閉塞部材の一例)を締結固定することになる。尚、
図14では、止水プレート17(閉塞部材)を締結固定した後に、弁体21を開位置P2にセットした状態(後述する第4ステップの状態)を示している。
【0108】
このように、カッター32による穿孔作動と、この穿孔作動に続いてカッター32が初期位置に戻される作動が穿孔制御部100Cによって自動的に行われた後に、人為的な作業によってカッターケース31と共に、カッター32と、取出機構40とを撤去し、フランジ部12に止水プレート17(閉塞部材)を締結固定する工程が、「既設管の穿孔方法」の第3ステップとなる。
【0109】
(第4ステップ)
前述したように、止水プレート17を連結した後には(第3ステップの後には)、人為操作により
図14に示すように弁体21を開位置P2にセットし、穿孔口Waを挿口管3に連通させ、水道管Wに流れる水の一部を、挿口管3に送り出す状態に移行する。
【0110】
このように、フランジ部12に止水プレート17(閉塞部材)を連結した後に、開閉弁ユニットDの弁体21を開位置P2にセットし、水道管Wに流れる水の一部を挿口管3に送り出す操作が、「既設管の穿孔方法」の第4ステップとなる。
【0111】
図15に示すように、分岐管形成装置100は、電動モータの駆動力で弁体21を開閉するように構成し、穿孔制御部100Cが電動モータを制御して弁体21の開閉を制御するように構成することも可能であり、このように構成したものでは、
図15に示す開度制御スイッチSW2を人為操作することにより弁体21の開閉を制御するだけでなく、挿口管3に供給する水量の制御も可能であり、分岐管形成装置100は、開度制御スイッチSW2の人為操作によって水道管Wから挿口管3(分岐流路管7)に供給する水量を制御することも可能となる。
【0112】
〔実施形態の作用効果〕
この分岐管形成装置100では、カッター軸芯Zが、水道管Wの管軸芯Xから外れた位置で、水道管W(既設管)に重複する位置に配置されているため、特許文献1,2に示された従来技術より小さい半径のカッター32の使用を可能にしており、必要とする流路断面となる穿孔口Waを形成するために用いられる、カッター32を小径化して、分岐管形成装置100の全体の小型化を可能にする。
【0113】
また、取出機構40が、上部支持体43と、下部支持体44とを備え、これら上部支持体43と下部支持体44とを連結する連結体45を備え、この連結体45をカッター軸芯Zから離間する位置で、水道管Wの外面に接触させる位置に配置している。これにより、カッター軸芯Zが管軸芯Xから外れた位置に設定されるものの、上部支持体43と下部支持体44との位置関係を維持したまま、カッター32での穿孔作動を可能にする。
【0114】
特に、上部支持体43と下部支持体44との外周に永久磁石Mを備えているため、切断部分Wbと上部支持体43と下部支持体44との位置関係を安定的に保持し、上部支持体43と、下部支持体44と、連結体45と、切断部分Wbとをカッター32の内部空間32Sに収容することが可能となる。
【0115】
更に、カッター32が穿孔作動の終端に達した際に、係合機構Fが係合することでガイドディスク41と駆動ディスク33を一体化させ、カッター32の戻り作動によってカッター32の内部空間32Sに収容した切断部分Wbを確実に取り出せる。
【0116】
水道管Wの穿孔方法において説明したように、カッター32による穿孔作動の後に、弁体21を閉位置P1にセットすることにより、穿孔口Waからの水を遮断することが可能となる。これにより、穿孔機Eの分離を可能にする弁体をケース部Cの外部に備えなくとも、カッターケース31と共に、カッター32と、取出機構40とを撤去し、フランジユニット10のフランジ部12に
図14に示す止水プレート17(閉塞部材)を締結固定できる。
【0117】
開閉弁ユニットDを備えているため、弁体21の位置の設定により、水道管Wの穿孔口Waから送り出される水量の制御が可能となり、挿口管3から送り出す水量の制御も可能となる。
【0118】
筒状部11とフランジ部12とを形成したフランジユニット10を用い、このフランジユニット10の筒状部11を筒状突起部4の開口部4Hに挿入する形態でケース部Cに備えている。このため、例えば、分割体を製造する際にフランジ部を一体形成する構成と比較して、高い精度で形成したフランジ部12を用いることが可能となり、例えば、ケース部Cの鋳造時に形成したフランジ部を機械加工して精度を高める場合よりコストの低減が可能となる。また、穿孔機Eのサイズに合わせて、フランジ部12を設定することがあるが、筒状部11の形状を変更するだけで良く、第一分割部材1及び第二分割部材2は共通化することができるため、製造コストを低減できる。
【0119】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0120】
(a)
図16~
図18に示すようにフランジユニット10を構成しても良い。つまり、上述した実施形態と同様に、フランジユニット10が、筒状部11と、この筒状部11の外端位置に一体的に形成されるフランジ部12とを有している。筒状部11の外面には規制溝11aとシール溝11bとが形成され、筒状突起部4の内面には、規制溝11aに嵌め込まれた規制リング13が当接する規制面4aと、シール溝11bに嵌め込まれたシールリング14が接触するシール面4bとが形成されている。
【0121】
この別実施形態(a)では、筒状突起部4の開口縁の上面に当接凹部4gが形成され、フランジユニット10のフランジ部12に対しカッター軸芯Zと平行姿勢の複数の雌ネジ部12sが形成され、この雌ネジ部12sに螺合する固定ネジ18を備えている。この固定ネジ18は、先端(
図17、
図18では下端)が当接凹部4gに当接可能な位置に配置されている。
【0122】
この構成から、筒状部11にシールリング14と規制リング13とを装着し、固定ネジ18を雌ネジ部12sに螺合させ、手動操作によって固定ネジ18を螺進させ、先端を当接凹部4gに当接させる。その結果、固定ネジ18の螺進に伴いフランジユニット10が上側に引き上げられ、
図18に示すように規制リング13が規制面4aに当接するためフランジユニット10が適正な位置に達し、フランジユニット10装着が完了する。
【0123】
この別実施形態(a)の変形例として、上述した実施形態において「フランジユニットの別実施形態」として記載したものと同様に、筒状突起部4の中心とフランジユニット10の中心とを異ならせる構成や、フランジユニット10の回転を規制する構成を備えた構成も考えられる。
【0124】
(b)上述した実施形態ではガイドディスク41と上部支持体43(第一支持体)とを連結筒42で連結した構成であったが、上部支持体43の厚み(カッター軸芯Zに沿う方向での寸法)を拡大することで、ガイドディスク41を用いないで上部支持体43だけを用いて取出機構40を構成しても良い。このように構成することにより、部品点数を低減し、分岐管形成装置100のコスト低減に繋がる。
【0125】
(c)係合機構Fの構成として、ガイドディスク41の上面に上方に突出する軸状部材をカッター軸芯Zと同軸芯で形成し、この軸状部材の突出方向での中間に小径部を形成し、これに対向する位置となる駆動ディスク33に開口を形成し、この開口に挿通する軸状部材の小径部に弾性係合するように係合体を備えても良い。このように係合機構Fを構成しても、上述した実施形態に記載した係合機構Fと同様のタイミングで係合させることが可能となる。
【0126】
(d)フランジユニット10をケース部Cに備えるための構成として、フランジユニット10の一部に貫通するボルトを、ケース部C(第一分割部材1)に形成した雌ネジ部に螺合させて固定する単純な構成を採用しても良い。このような単純な構成では、上述した実施形態に示した傾斜当接面11cを形成する加工を行わずに済み、加工コストの低減を可能にする。
【0127】
(e)取出機構40は、上部支持体43(第一支持体)と下部支持体44(第二支持体)とを必ずしも円盤状に成形されるものに限らず、円周状の形状が一部に形成されるものや、多角形であっても良い。また、連結体45は棒状に限らず、水道管Wの外周に沿う形状の湾曲面を有する板状の素材を用いたものであっても良い。
【0128】
(f)第一分割部材1と第二分割部材2とを同じ鋳型を用いて製造しても良い。このように製造する場合には、筒状突起部4が同様に形成されることになるが、例えば、製造直後には筒状突起部4に対応する部位の突出端に壁状部が形成することで開口部4Hが閉じられるように構成しておき、開口部4Hを必要とする側(第一分割部材1)の壁状部分を加工によって取り除けるように構成する。
【0129】
このように鋳型を兼用することにより第一分割部材1と第二分割部材2とを製造する際の工程の一部を共通化し、コストの低減に繋がる。
【0130】
(g)上述した実施形態では、「既設管の穿孔方法」として、第1ステップと、第2ステップとを、穿孔制御部100Cによる自動的な制御として記載していたが、これらの制御に代えて人為的な操作により穿孔を行うように工程を設定することも可能である。
【0131】
また、実施形態では、既設管の穿孔方法として、第1~第4の4つのステップで「既設管の穿孔方法」の工程の順序を説明していたが、ステップの数は、これに限るものではなく、任意の数のステップで既設管の穿孔方法を実現しても良い。
【0132】
(h)
図19~
図24に示すように、取出機構40は、ケース部Cの内部において、穿孔作動の方向の上流位置に配置される第一支持プレート51(第一支持体の一例)と、穿孔作動の方向の下流位置に配置される第二支持プレート52(第二支持体の一例)との2つの支持体と、これらの上下方向の位置関係を保持する複数(3つ)の棒状の位置保持体53と、第二支持プレート52より下側に配置される底部プレート54とを備えている。これらは、カッター軸芯Zに沿う方向視で円筒状のカッター32の内部に収容可能な位置に配置される。
【0133】
第一支持プレート51は、水道管Wの外面に対しプレートの端部のエッジの部位で接触し、第二支持プレート52は、水道管Wの外面に対しプレートの端部に斜め姿勢の所定面積の接触面52Sで接触する。3つの位置保持体53は、外面の一部が水道管Wの外面に近接または接触するように位置関係が設定される。尚、第一支持プレート51のうち、水道管Wの外面に所定の面積で接触する領域を形成しても良い。また、接触面52Sに代えて、複数の位置で水道管Wの外面に接触する複数の接触点を形成することも可能である。
【0134】
底部プレート54は、第二支持プレート52と平行となる姿勢でケース部Cの底部(第二分割部材2の内面)の凹部に嵌め込む状態で配置されている。この底部プレート54に縦向き姿勢のガイド軸55を備え、このガイド軸55に対して上下方向に移動自在に第二支持プレート52が支持されている。また、底部プレート54は、ケース部Cの底部の凹部に嵌め込む状態で配置される。このため、第一支持プレート51、第二支持プレート52、3つの位置保持体53等の姿勢が安定する。
【0135】
第一支持プレート51と、第二支持プレート52とにおいて水道管Wと接触しない領域は、カッター軸芯Zを中心とする円形で、カッター32の内周に近接可能な外径に成形されている。また、底部プレート54は、カッター軸芯Zを中心とする円板状であり、外周部分がカッター32の内周に近接可能な外径に成形されている。
【0136】
これにより、カッター32が穿孔作動する際に、第一支持プレート51と、第二支持プレート52との外周がカッター32の内周に近接し、カッター32が、
図24に示す位置を通過した後に、穿孔作動の終端位置に達した時点で、底部プレート54がカッター32の内部に嵌まり込む。また、
図20、
図21、
図23に示すように、第一支持プレート51は、カッター軸芯Zと同軸芯の貫通孔51aが形成され、この第一支持プレート51の上面に貫通孔51aと等しい内径の筒状部材51bが固設されている。
【0137】
図19に示すように、3つの位置保持体53は、夫々の長手方向がカッター軸芯Zと平行する姿勢で、夫々が管軸芯Xに沿う方向で設定間隔で配置されている。3つの位置保持体53の中央の主位置保持体53aは、第二支持プレート52のネジ孔に螺合するネジ部が下端に形成されている。また、主位置保持体53aは、上端のネジ部が第一支持プレート51に貫通すると共に、このネジ部に保持用ナット56が螺合する。
【0138】
3つの位置保持体53のうち、主位置保持体53aを挟む位置の2つの副位置保持体53bは、上端が第一支持プレート51に固定され、下端が第二支持プレート52の貫通孔に挿通する状態で備えられ、ガイド体として機能する。尚、位置保持体53は単一であっても良く、3つ以上の数を備えることも可能である。
【0139】
取出機構40をケース部Cの内部に備える際には、筒状突起部4の開口部4Hから第二支持プレート52と底部プレート54とガイド軸55とを仮に組み立てた状態で、水道管Wに一部が接触する位置でケース部Cの内部にセットする。そして、2つの副位置保持体53bの下端が第二支持プレート52の貫通孔に挿通するように第一支持プレート51をセットし、主位置保持体53aを第二支持プレート52のネジ孔に螺合させる。このセット状態では、底部プレート54がケース部Cの底部(第二分割部材2)の凹部に嵌め込まれることにより、第一支持プレート51と、複数の位置保持体53と、第二支持プレート52とが水道管Wに近接する位置に配置される。
【0140】
この後に、主位置保持体53aを回転操作することにより、第一支持プレート51と第二支持プレート52との上下方向の間隔が調整され、第一支持プレート51の外周近傍を水道管Wの外面の下側に接触させ、第二支持プレート52の接触面52Sを水道管Wの外面に接触させる。このように間隔を調整した後に保持用ナット56の操作により間隔を固定することになる。
【0141】
カッター32は、カッター32が穿孔作動により
図24に示すように穿孔作動の終端位置に到達する以前に貫通孔51aに入り込むセンタ支軸57を備えている。このセンタ支軸57は、
図21、
図22に示すように、カッター軸芯Zと同軸芯でカッター32の内部空間32Sに備えられ、このセンタ支軸57は、穿孔作動の後に戻り作動を行う際に、貫通孔51aからセンタ支軸57の抜け出しを阻止する係合機構Fを備えている。
【0142】
この別実施形態(h)では、係合機構Fが、センタ支軸57に対し切換支軸59aを中心として揺動自在に支持されて複数の係止体59を備えている。係止体59は、揺動により、センタ支軸57の外周面より内方に格納される格納姿勢と、センタ支軸57の外周面から径方向外方に張り出す係止姿勢とに切り換え自在に構成されている。
【0143】
センタ支軸57には、係止体59を格納姿勢に拘束する拘束位置と、係止体の係止姿勢への移行を許す解除位置とにスライド移動自在なスリーブ58を外周に備えている。スリーブ58は、穿孔作動の開始時に
図21、
図23に示す拘束位置にセットされる。
【0144】
センタ支軸57は、カッター32の移動に伴い第一支持プレート51の貫通孔51aに挿入される。この後、カッター32が
図24に示すように穿孔作動の終端位置に到達する以前に、
図22に示すように、第一支持プレート51の筒状部材51bがスリーブ58に接触し、このスリーブ58を解除位置に移動させる。
【0145】
これにより、係止体59の係止姿勢への切り換えが許され、カッター32の戻り作動時に複数の係止体59が第一支持プレート51の下面に係合可能となる。この後、カッター32の戻り作動に伴い、水道管Wの切断部分Wbと、センタ支軸57と、第一支持プレート51と、第二支持プレート52と、位置保持体53が、カッター32の内部空間32Sに収容した状態で底部プレート54と共に取り出される。
【0146】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、分岐管形成装置および既設管の穿孔方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 第一分割部材(分割部材)
2 第二分割部材(分割部材)
3 挿口管(分岐部)
4H 開口部
11 筒状部
12 フランジ部
17 止水プレート(閉塞部材)
21 弁体
31 カッターケース
32 カッター
32a 刃部
32S 内部空間
33 駆動ディスク
40 取出機構
41 ガイドディスク
42 連結筒
43 上部支持体(第一支持体)
44 下部支持体(第二支持体)
45 連結体
48 軸状体
48a 小径部
49 係合体
51 第一支持プレート(第一支持体)
51a 貫通孔
52 第二支持プレート(第二支持体)
52S 接触面
57 センタ支軸
100 分岐管形成装置
C ケース部
D 開閉弁ユニット
E 穿孔機
F 係合機構
P1 閉位置
P2 開位置
W 水道管(既設管)
Wa 穿孔口
Wb 切断部分
X 管軸芯
Z カッター軸芯