(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035874
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】含フッ素重合体及び表面改質剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/24 20060101AFI20230306BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230306BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08F220/24
C09K3/00 112D
C09K3/00 R
C09K3/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123075
(22)【出願日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2021139514
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太
【テーマコード(参考)】
4H020
4J100
【Fターム(参考)】
4H020AA03
4H020BA11
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100BB13P
4J100BB18P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA36
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GA06
4J100JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動的撥水性に優れ、生体蓄積性が低いとされる炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基から構成される含フッ素重合体、並びにこれを含有する表面改質剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位、及び下記一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)に基づく構造単位を有する、含フッ素重合体並びにこれを用いた表面改質剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位及び下記一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)に基づく構造単位を有することを特徴とする、含フッ素重合体。
【化7】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Xは、ジフルオロメチレン基を含まない炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Yは、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数4~6の2価の脂肪族炭化水素基であり、Zは、炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、R
1はメチル基、水素原子またはハロゲン原子である)
【化8】
(式(2)中、R
2はメチル基または水素原子であり、R
3は炭素数14以上の直鎖状アルキル基である)
【請求項2】
Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがジフルオロメチレン基を含まない炭素数1~2の2価の炭化水素基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがビニレン基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがビニレン基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基であり、R1がメチル基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
請求項1に記載の一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)が、下記式のいずれかで示される、請求項1に記載の含フッ素重合体。
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
【請求項7】
R2がメチル基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)が、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコサニル、または(メタ)アクリル酸ベヘニルである、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素重合体と溶媒を含んでなる、表面改質剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素重合体及び表面改質剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、炭素-フッ素結合の性質に基づき、耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低摩擦性、剥離性等の特徴的な機能を示す。これらの性質を利用して、含フッ素化合物は、例えば撥水撥油剤、防汚剤、離型剤、防湿剤等、種々の基材に機能を付与する表面改質剤として用いられている。
【0003】
これまで、含フッ素表面改質剤の原料としては、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを重合単位として含む含フッ素重合体が用いられてきた。特に、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリレートを重合単位として含む含フッ素重合体は、動的撥水性に優れ、表面に付着した水滴等を効果的に滑落させられることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物は、生体蓄積性等、環境及び生体に対して悪影響を与える可能性が問題視されている。
【0004】
このため、生体蓄積性が低いとされる短鎖パーフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを重合単位として含む含フッ素重合体による代替が検討されてきた。しかし、短鎖パーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体からなる表面改質剤は撥水撥油性に劣り、特に付着した液滴等の除去性に関わる動的撥水性が低下することが知られている。
【0005】
特許文献1には、優れた動的撥水性が得られ、環境負荷が低い含フッ素共重合体及び撥水撥油剤組成物が開示されている。しかし、製造方法が煩雑なグラフト重合を用いる必要があった。特許文献2には環境負荷が低く撥水撥水撥油性に優れた含フッ素(メタ)アクリレート重合体を含む表面改質剤が開示されている。しかし、動的撥水性に関する検討は十分になされておらず、さらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/115197号
【特許文献2】国際公開第2017/119371号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Macromoelcules, 2010年, 第43巻, 454-460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生体蓄積性が低いとされる炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基から構成され、動的撥水性に優れた表面改質剤として利用可能な含フッ素重合体及びこれを含有する表面改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する含フッ素(メタ)アクリレートに基づく構造単位と、長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく構造単位を含む含フッ素重合体を用いた表面改質剤が、優れた動的撥水性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下に係る。
[1]下記一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位及び下記一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)に基づく構造単位を有することを特徴とする、含フッ素重合体。
【化1】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Xは、ジフルオロメチレン基を含まない炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Yは、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数4~6の2価の脂肪族炭化水素基であり、Zは、炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、R
1はメチル基、水素原子またはハロゲン原子である)
【化2】
(式(2)中、R
2はメチル基または水素原子であり、R
3は炭素数14以上の直鎖状アルキル基である)
[2]Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
[3]Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがジフルオロメチレン基を含まない炭素数1~2の2価の炭化水素基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基である、項[1]に記載の含フッ素重合体。
[4]Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがビニレン基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基である、項[1]に記載の含フッ素重合体。
[5]Rfが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Xがビニレン基であり、Yが炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、Zが炭素数1~4のアルキレン基であり、R
1がメチル基である、項[1]に記載の含フッ素重合体。
[6]項[1]に記載の一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)が、下記式のいずれかで示される、含フッ素重合体。
C
6F
13-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)C(CH
3)=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
6F
12-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
6F
13-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
C
4F
9-CH=CH-C
4F
8-CH
2CH
2CH
2-OC(=O)CH=CH
2
[7]R
2がメチル基である、項[1]に記載の含フッ素重合体。
[8]請求項1に記載の一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)が、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコサニル、または(メタ)アクリル酸ベヘニルである、項[1]に記載の含フッ素重合体。
[9]項[1]~[8]のいずれかに記載の含フッ素重合体と溶媒を含んでなる、表面改質剤組成物。
【0011】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」および「メタアクリル酸」もしくは「メタクリル酸」のいずれも含む。また「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタアクリレート」もしくは「メタクリレート」のいずれも含む。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素重合体は、一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位及び一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)に基づく構造単位を有する。
【0013】
一般式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である。中でも、直鎖状の炭素数1~6のパーフルオロアルキル基が好ましく、直鎖状の炭素数4~6のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
【0014】
一般式(1)中、Xは、ジフルオロメチレン基を含まない炭素数1~6の2価の炭化水素基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ビニレン基、-CH=CF-基、-CF=CH-基、エチニレン基、フェニレン基等が挙げられ、中でもビニレン基が好ましい。
【0015】
一般式(1)中、Yは、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数4~6の2価の脂肪族炭化水素基である。中でも、炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0016】
一般式(1)中、Zは、炭素数1~6の2価の炭化水素基である。中でも、炭素数1~4のアルキレン基であることが好ましく。具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)中、R1はメチル基、水素原子またはハロゲン原子である。動的撥水性能及び製造の簡便さの観点から、R1がメチル基であることが好ましい。
【0018】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)C(CH3)=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C6F12-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C6F13-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
C4F9-CH=CH-C4F8-CH2CH2CH2-OC(=O)CH=CH2
上記一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
一般式(2)中、R2はメチル基または水素原子である。動的撥水性能の観点から、R2がメチル基であることが好ましい。
【0020】
一般式(2)中、R3は炭素数14以上の直鎖状アルキル基である。中でも、炭素数14~30の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数14~22の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)の具体例としては、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられ、動的撥水性能及び入手性の観点からメタクリル酸ステアリルが特に好ましい。
上記一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明の含フッ素重合体を得るための単量体成分として、一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)及び一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)を用いることが必須であるが、さらに必要に応じて、その他の単量体も用いることができる。一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位及び一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)の合計量は、本発明の含フッ素重合体を得るために用いる単量体成分の総量を基準として、60%以上であればよく、90%以上であることが好ましい。
【0022】
その他の単量体としては、一般式(1)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(A)に基づく構造単位及び一般式(2)で示される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(B)と共重合可能な単量体であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル酸もしくはそのエステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類、ハロゲン化ビニルまたはビニリデン類、脂肪酸アリルエステル類、アクリルアミド類等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、プロピル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、ベヘニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ペンタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロオクチル、ヘプタデカフルオロデシルエステル類、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル、N-メチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。これらのその他の単量体は1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の含フッ素重合体は、一般式(1)で示される含フッ素化合物単独または一般式(1)で示される含フッ素化合物と他の単量体を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により製造できる。これらの重合においては、重合開始剤を用いることにより、重合反応を進行させることができる。
【0024】
本発明の含フッ素重合体の製造に用いられる重合開始剤は、特に限定されないが、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の含フッ素重合体の製造に用いられる重合開始剤の量は、重合反応に具する単量体の総量に対し、好ましくは0.001重量%~10重量%、さらに好ましくは0.005重量%~10重量%、特に好ましくは0.01重量%~5重量%である。
【0025】
本発明の含フッ素重合体の溶液重合による製造に用いられる溶媒は、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7100)、エチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7200)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(HFE7300)等のハイドロフルオロエーテル類等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
溶液重合において用いられる溶媒の量は、重合反応に具する単量体の総量に対し、好ましくは1重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは2重量倍量~10重量倍量である。
【0026】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合反応の温度は、好ましくは40℃~150℃、さらに好ましくは40℃~100℃である。これらの反応温度及び反応時間の条件は、単量体の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量に応じて適宜調整することでよい。
重合反応の終了後、得られた含フッ素重合体を任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から重合体を回収する方法としては、濃縮、再沈殿等公知の方法が利用できる。
得られた含フッ素ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~1,000,000、さらに好ましくは10,000~500,000である。
【0027】
本発明の含フッ素重合体は、溶媒に溶解し、含フッ素重合体及び溶媒を含んでなる表面改質剤組成物として用いることができる。ここで、表面改質剤組成物中の含フッ素重合体は固体となることがあり、溶媒に溶解し溶液状の組成物として、塗布、浸漬等により基材を処理可能な形態とすることができる。
【0028】
本発明の表面改質剤組成物において、含フッ素重合体の濃度としては0.01重量%~30重量%が好ましく、0.05重量%~20重量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明の表面改質剤組成物は、得られた含フッ素重合体と溶媒を混合することにより調製してもよく、溶液重合により得られた含フッ素重合体溶液をそのまま表面改質剤として用いてもよく、溶液重合により得られた含フッ素重合体溶液をさらに溶媒で希釈することにより調製してもよい。
【0030】
本発明の表面改質剤組成物に用いられる溶媒としては、特に限定はされないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7100)、エチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7200)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(HFE7300)等のハイドロフルオロエーテル類等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの溶媒については、使用する目的に応じて適宜選択して用いることでよい。
【0031】
本発明の表面改質剤組成物により処理される基材としては、特に限定されないが、ガラス、セラミックス、プラスチック、金属、繊維、皮革、布製品、紙等が挙げられる。
本発明の表面改質剤において、基材の処理は、刷毛塗り、ワイプ、ウエス、ロールコーター、バーコーター等による塗布、浸漬、霧吹き等による噴射、スプレーガンによる噴射、エアゾール噴射等、通常用いられる任意の方法により行うことができる。
【0032】
本発明の表面改質剤組成物の用途は、特に限定されないが、例えば撥水撥油剤、防錆剤、防汚剤、耐水化剤、防湿コート剤、剥離剤、離型剤、オイルバリア剤、フラックス這い上がり防止剤等として用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の含フッ素重合体を含んでなる表面改質剤組成物を用いることにより、動的撥水性に優れた表面改質剤が提供できる。
【実施例0034】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0035】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
<NMR>
装置:ブルカー製AVANCE II 400
内部標準:テトラメチルシラン、トリフルオロメチルベンゼン
溶媒:クロロホルム-dまたはアセトン-d6
【0036】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)>
装置:東ソー製HLC-8320GPC
カラム:TSKgel G4000H/G3000H/G2500H/G2000H
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1mL/min
【0037】
<接触角の測定>
測定対象試料(以降に示す重合体)について、純水及びジヨードメタンの静的接触角、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
具体的に、測定対象試料である重合体の所定量を、所定の溶媒に溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過して所定濃度の重合体溶液を調製した。この重合体溶液を直径50mmの円形ガラス基板上にスピンコーティングにより製膜した。
スピンコーティングには、アクティブ製マニュアル・スピンコーターACT-300AIIを用い、接触角測定には、協和界面科学製接触角計DMs-401を用いた。
ここで、静的接触角について、ぬれ性の数値化などの測定のために測定する。液滴を固体表面に接触させて着滴したとき,試料面とのなす角度を接触角θとする。本発明では、解析はθ/2法を使用した。静的接触角が大きい方が撥水撥油性に優れる。
また動的接触角について、液除去性の数値化などのために測定する。ぬれ拡がるとき(拡張)の接触角を(動的)前進角、収縮するときの接触角を(動的)後退角とする。本発明では、拡張/収縮法を使用し、解析は真円フィッティング法を使用した。動的接触角測定で得られる後退接触角が大きく、前進接触角と後退接触角の差である接触角ヒステリシスが小さい方が動的撥水性に優れる。
【0038】
合成例1
1-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロ-9-テトラデセン(a)の合成
【化3】
100mLのSUS製オートクレーブに1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘンイコサフルオロ-1-ヨード-7-ドデセン20.03g(東ソー・ファインケム製、29.81mmol)及びジターシャリブチルペルオキシド(Di-tert-butyl Peroxide)90.0mg(日油製、0.615mmol)を仕込んで密閉後、内部を窒素及びエチレンで置換した。その後115℃に昇温し、エチレン0.92g(33mmol)を0.6~1.0MPaの圧力を保ちながら添加した。さらに115℃で1時間反応した後、室温に冷却した。得られた淡黄色の固体をヘプタン40gに溶解後-10℃に冷却して晶析し、上澄み液をデカンテーションで除去した後、真空乾燥し、白色固体の化合物(a)13.53g(19.33mmol)を得た。収率は65%(モル換算)であった。
【0039】
得られた化合物(a)の分析結果は以下の通りであった。
1H-NMR (400MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C4F9
CH=CHC6F12),3.23(m,2H,CH
2
I),2.70(m,2H,CH
2
CF2)
19F-NMR (376MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.54(t,J=11.3Hz,3F,CF3),-114.43(m,2F,CF
2
CH),-114.65(m,2F,CF
2
CH),-115.50(m,2F,CF
2
CH2),-122.05(m,2F,CF2)、 -122.34(m,2F,CF2)、 -123.94(m,4F,CF2CF2),-124.80(m,2F,CF2),-126.33(m,2F,CF2)
【0040】
合成例2
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロ-9-テトラデセン-1-オール(b)の合成
【化4】
窒素雰囲気下において、50mlの四つ口フラスコに化合物(a)7.90g(11.3mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)7.90gを仕込んだ。130℃に昇温し、純水0.40g(22mmol)を添加した後、さらに130℃で20時間反応した。反応液を室温に冷却し、硫酸1.23g(12.5mmol)及びメタノール3.64g(114mmol)の混合溶液を滴下した後、室温下で20時間反応した。得られた茶色の液体を100ml分液漏斗に移し、ジイソプロピルエーテル24.14g(236.2mmol)及び2.5%炭酸ナトリウム水溶液24.68gを加えて水層と有機層に分液した。水層を抜き出した後、有機層に10%塩化アンモニウム水溶液23.69gを加えて振とうし、静定して水層と有機層に分液した。水層を抜き出し、有機層をロータリーエバポレーターで濃縮後真空乾燥し、得られた茶色の油状物をトルエンに60℃で溶解後冷却晶析した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、真空乾燥し、無色油状液体の化合物(b)3.43g(5.81mmol)を得た。収率は51%(モル換算)であった。
【0041】
得られた化合物(b)の分析結果は以下の通りであった。
1H-NMR (400MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C4F9
CH=CHC6F12),3.98(t,J=6.4Hz、2H,CH
2
CH2ОH),2.48(tt,J=6.4,18.8Hz,2H,CH
2
ОH),1.75(s,1H,ОH)
19F-NMR (376MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.57(t,J=11.3Hz、3F,CF3),-114.05(m,2F,CF
2
CH2),-114.46(m,2F,CF
2
CH),-114.67(m,2F,CF
2
CH),-122.08(m,2F,CF2)、 -122.35(m,2F,CF2)、 -123.97(m,2F,CF2),-124.31(m,2F,CF2),-124.85(m,2F,CF2),-126.36(m,2F,CF2)
【0042】
合成例3
メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘンイコサフルオロ-9-テトラデセニル(c)の合成
【化5】
50mlの四つ口フラスコに化合物(b)3.43g(5.81mmol)、トルエン6.95g(75.4mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1895g(0.9962mmol)、ヒドロキノン9.9mg(90μmol)を仕込んだ。110℃に昇温し、メタクリル酸0.70g(7.5mmol)を添加した後、さらに4時間反応した。得られた茶色の液体を50ml分液漏斗に移し、ジイソプロピルエーテル10.34g(101.2mmol)及び10%炭酸ナトリウム水溶液18.03gを加えて振とうし、静定して水層と有機層に分液した。水層抜出後、有機層をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた茶色液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲルC-300、和光純薬工業製、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:9)にて精製分離した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去後、真空乾燥し、無色透明液体の化合物(c)3.02g(4.59mmol)を得た。収率は79%(モル換算)であった。
【0043】
得られた化合物(c)の分析結果は以下の通りであった。
1H-NMR (400MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン)δ(ppm):6.49(m,2H,C4F9
CH=CHC6F12),6.14(m,1H,CH),5.60(m、1H,CH),4.45(t,J=6.4Hz、2H,C6F12-CH2
CH
2
-O-),2.50(tt,J=6.4,18.4Hz,2H,C6F12-CH
2
CH2-O-),1.94(m,3H,CH3)
19F-NMR (376MHz、溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン)δ(ppm):-81.56(t,J=11.3Hz、3F,CF3),-114.18(m,2F,CF
2
CH2),-114.45(m,2F,CF
2
CH),-114.67(m,2F,CF
2
CH),-122.06(m,2F,CF2)、 -122.32(m,2F,CF2)、 -123.97(m,2F,CF2),-124.14(m,2F,CF2),-124.84(m,2F,CF2),-126.36(m,2F,CF2)
【0044】
実施例1
重合体1の合成
【化6】
10mLの試験管に化合物(d)0.80g(東ソー・ファインケム製)、メタクリル酸ステアリル0.20g(富士フイルム和光純薬製)、2-ブタノン4.00g(富士フイルム和光純薬製)、t-ブチルパーオキシオクトエート10.0mg(日油製)を仕込み、窒素置換した後、75℃で12時間撹拌した。
反応終了後、反応液をメタノール20g中に滴下し、沈殿したポリマーを吸引ろ過で回収後、真空乾燥して、0.65gの重合体1を無色固体として得た。収率は65%(重量換算、以下同じ)であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは13,000、分散度Mw/Mnは1.8であった。
1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が38%(重量換算、以下同じ)であった。
【0045】
実施例2
重合体2の合成
実施例1において、化合物(d)の使用量を0.60g、メタクリル酸ステアリルの使用量を0.40gとした以外、同様の操作で0.64gの重合体2を白色固体として得た。収率は64%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは17,000、分散度Mw/Mnは1.8であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が49%であった。
【0046】
実施例3
重合体3の合成
実施例1において、化合物(d)の使用量を0.40g、メタクリル酸ステアリルの使用量を0.60gとした以外、同様の操作で0.71gの重合体3を白色固体として得た。収率は71%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは17,000、分散度Mw/Mnは1.9であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が67%であった。
【0047】
実施例4
重合体4の合成
実施例1において、化合物(d)の使用量を0.20g、メタクリル酸ステアリルの使用量を0.80gとした以外、同様の操作で0.65gの重合体4を白色固体として得た。収率は69%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは15,000、分散度Mw/Mnは2.0であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が84%であった。
【0048】
実施例5
重合体5の合成
実施例1において、化合物(d)に替えて化合物(3)を用いた以外、同様の操作で0.65gの重合体5を白色固体として得た。収率は58%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは23,000、分散度Mw/Mnは1.7であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が19%であった。
【0049】
実施例6
重合体6の合成
実施例1において、化合物(d)0.80gに替えて化合物(3)0.50gを用い、メタクリル酸ステアリルの使用量を0.50gとした以外、同様の操作で0.86gの重合体6を白色固体として得た。収率は86%であった。
【0050】
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは23,000、分散度Mw/Mnは2.6であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が51%であった。
【0051】
実施例7
重合体7の合成
実施例1において、化合物(d)0.80gに替えて化合物(3)0.20gを用い、メタクリル酸ステアリルの使用量を0.80gとした以外、同様の操作で0.90gの重合体7を白色固体として得た。収率は90%であった。
【0052】
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは25,000、分散度Mw/Mnは2.6であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が79%であった。
【0053】
比較例1
重合体8の合成
50mLのフラスコに化合物(d)5.00g(東ソー・ファインケム製)、2-ブタノン15.00g(富士フイルム和光純薬製)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)10.8mg(富士フイルム和光純薬製、1mol%)を仕込み、窒素置換した後、70℃で12時間撹拌した。
反応終了後、2層に分離した反応液の上澄みをデカンテーションした後、メチルノナフルオロブチルエーテル5g(3M製)を加えた。得られた溶液をヘキサン20gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした後、真空乾燥して、4.00gの重合体8を無色固体として得た。収率は80%(重量換算、以下同じ)であった。得られた目的物のGPCによるPMMA換算で測定される数平均分子量Mnは8,100、分散度Mw/Mnは1.8であった。
【0054】
比較例2
重合体9の合成
比較例1において、化合物50mLのフラスコに化合物(c)1.00g、2-ブタノン4.00g(富士フイルム和光純薬製)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)2.5mg(富士フイルム和光純薬製、1mol%)を仕込み、窒素置換した後、70℃で12時間撹拌した。
反応終了後、反応液をヘキサン20g中に滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした後、真空乾燥して、0.55gの重合体9を無色固体として得た。収率は55%であった。得られた目的物のGPCによるPMMA換算で測定される数平均分子量Mnは6,800、分散度Mw/Mnは1.8であった。
【0055】
比較例3
重合体10の合成
実施例1において、メタクリル酸ステアリルに替えてメタクリル酸メチルを用いた以外、同様の操作で0.65gの重合体10を白色固体として得た。収率は65%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは13,000、分散度Mw/Mnは1.8であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸メチルからなる残基単位が38%であった。
【0056】
比較例4
重合体11の合成
実施例1において、化合物(d)に替えてメタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチルを用いた以外、同様の操作で0.56gの重合体11を無色固体として得た。収率は56%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは19,000、分散度Mw/Mnは1.5であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が16%であった。
【0057】
比較例5
重合体12の合成
実施例1において、化合物(d)に替えてメタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-n-ヘキシルを用いた以外、同様の操作で0.91gの重合体12を無色固体として得た。収率は91%であった。
【0058】
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは47,000、分散度Mw/Mnは1.3であった。1H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ステアリルからなる残基単位が19%であった。
【0059】
<重合体の評価>
実施例6
実施例1で得られた重合体1の20mgを、エチルノナフルオロブチルエーテル(3M製)1.98gに溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過して1.0重量%の重合体溶液とし、表面改質剤組成物を調製した。この組成物を直径50mmの円形ガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm10秒間、さらにslope5秒間)により製膜した。得られた薄膜について、前記した方法により純水及びジヨードメタンの静的接触角(液滴量2μL)、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
【0060】
実施例7
実施例6において、エチルノナフルオロブチルエーテルに替えてデカフルオロペンタン(三井・ケマーズフロロプロダクツ製)を用いて、同様の測定を行った。
【0061】
実施例8
実施例2で得られた重合体2の20mgを、テトラヒドロフラン(キシダ化学製)1.98gに溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過して1.0重量%の重合体溶液とし、表面改質剤組成物を調製した。この組成物を直径50mmの円形ガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm10秒間、さらにslope5秒間)により製膜した。その後60℃のオーブンで1時間乾燥し、得られた薄膜について、前記した方法により純水及びジヨードメタンの静的接触角(液滴量2μL)、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
【0062】
実施例9
実施例8において、重合体2に替えて重合体3を用いて、同様の測定を行った。
【0063】
実施例10
実施例8において、重合体2に替えて重合体4を用いて、同様の測定を行った。
【0064】
実施例11
実施例6において、重合体1に替えて重合体5を用いて、同様の測定を行った。
【0065】
実施例12
実施例8において、重合体2に替えて重合体6を用いて、同様の測定を行った。
【0066】
実施例13
実施例8において、重合体2に替えて重合体7を用いて、同様の測定を行った。
【0067】
実施例14
実施例13において、テトラヒドロフランに替えてn-ヘプタンを用いて、同様の測定を行った。
【0068】
比較例5
実施例7において、重合体1に替えて重合体8を用いて、同様の測定を行った。
【0069】
比較例6
実施例6において、重合体1に替えて重合体9を用いて、同様の測定を行った。
【0070】
比較例7
実施例8において、重合体2に替えて重合体10を用いて、同様の測定を行った。
【0071】
比較例8
実施例6において、重合体1に替えて重合体11を用いて、同様の測定を行った。
【0072】
比較例9
実施例6において、重合体1に替えて重合体12を用いて、同様の測定を行った。
【0073】
以上、得られた結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1における共重合比は、共重合体中の単量体(A)からなる残基単位と単量体(B)からなる残基単位の比率(重量換算)である。
表1における単量体(A)及び単量体(B)の略称は以下の通りである。
C6MA:メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル
C4MA:メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-n-ヘキシル
SMA:メタクリル酸ステアリル
MMA:メタクリル酸メチル
-:加えていない
表1における溶媒は以下のとおりである。
1):エチルノナフルオロブチルエーテル
2):デカフルオロペンタン
3):テトラヒドロフラン
4):n-ヘプタン
【0076】
表1の結果について、近似する素材を用いた評価結果を対比すると以下のようになる。
共重合体中の単量体(A)が化合物(d)として共通する実施例6~10と比較例5による結果を対比すると、含フッ素メタクリレート単独重合体よりも、本発明の含フッ素重合体は後退接触角が大きく、接触角ヒステリシスが小さいため、動的撥水性に優れることがわかる。同様に共重合体中の単量体(A)が化合物(c)として共通する実施例11~14と比較例6による結果を対比すると、含フッ素メタクリレート単独重合体よりも、本発明の含フッ素重合体は後退接触角が大きく、接触角ヒステリシスが小さいため、動的撥水性に優れることがわかる。
共重合体中の単量体(B)がSMAである実施例6~14とMMAである比較例7を比べると、メタクリル酸メチルをコモノマーとする含フッ素重合体よりも、本発明の含フッ素重合体は後退接触角が大きく、接触角ヒステリシスが小さいため、動的撥水性に優れることがわかる。
共重合体中の単量体(A)が一般式(1)である化合物(d)又は化合物(c)である実施例6~13と単量体(A)が一般式(1)以外である比較例8、9を比べると、従来の含フッ素メタクリレート共重合体よりも、本発明の含フッ素重合体は後退接触角が大きく、接触角ヒステリシスが小さいため、動的撥水性に優れることがわかる。
すなわち、本発明の含フッ素化合物を重合させて得られる含フッ素重合体を含んでなる表面改質剤が、従来の含フッ素重合体を含んでなる表面改質剤と比較して、動的撥水性(水滴除去性)に優れていることが分かる。