(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035899
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】堆積方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20230306BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20230306BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L21/318 B
C23C16/50
C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129217
(22)【出願日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】2112421.9
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン ハーパー
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン クルック
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA29
4K030BA41
4K030BB05
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA09
4K030FA01
4K030FA03
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA15
5F058BC08
5F058BC10
5F058BC20
5F058BF07
5F058BF23
5F058BF26
5F058BF36
5F058BF37
5F058BF39
5F058BH01
5F058BH20
(57)【要約】
【課題】秀逸なデバイス性能を保ちつつ、ウェハウェハ接合に係る誘電体障壁及び接着層を顕著に低い温度で堆積できる方法を提供する。
【解決手段】プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)により基板上に水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)膜を堆積させる方法であって、チャンバ内にその基板を準備する工程と、シラン(SiH
4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N
2)及び水素ガス(H
2)をそのチャンバ内に導入する工程と、約200℃未満のプロセス温度にてPECVDによりその基板上にSiCN:Hが堆積されるようそのチャンバ内でプラズマを維持する工程と、を有する方法が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)により基板上に水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)膜を堆積させる方法であって、
チャンバ内に前記基板を準備する工程と、
シラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)を前記チャンバ内に導入する工程と、
約200℃未満のプロセス温度にてPECVDにより前記基板上にSiCN:Hが堆積されるよう前記チャンバ内でプラズマを維持する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記炭化水素ガス又は蒸気がアルキン、アルカン又はアルケンであり、オプション的には無分岐アルキン、無分岐アルカン又は無分岐アルケンである方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記炭化水素ガス又は蒸気がC2-C6アルキンである方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記C2-C6アルキンがアセチレン(C2H2)である方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記炭化水素ガス又は蒸気がC1-C6アルカンであり、オプション的にはメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、ペンタン(C5H12)又はヘキサン(C6H14)である方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に記載の方法であって、前記シラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)が、関連付けられているsccm単位流量にて前記チャンバ内にそれぞれ導入され、且つそれらの流量の降順が窒素ガス(N2)、水素ガス(H2)、シラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、の順である方法。
【請求項7】
請求項1~6のうち何れか一項に記載の方法であって、シラン(SiH4)が10~800sccm、オプション的には20~500sccm、オプション的には100~300sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約200sccmなる流量で前記チャンバ内に導入される方法。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガス又は蒸気が10~500sccm、オプション的には20~300sccm、オプション的には100~200sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約150sccmなる流量で前記チャンバ内に導入される方法。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一項に記載の方法であって、窒素ガス(N2)が500~5000sccm、オプション的には1000~3000sccm、オプション的には1000~2000sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約1500sccmなる流量で前記チャンバ内に導入される方法。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れか一項に記載の方法であって、水素ガス(H2)が50~1000sccm、オプション的には100~800sccm、オプション的には200~700sccm、オプション的には300~700sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約550sccmなる流量で前記チャンバ内に導入される方法。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れか一項に記載の方法であって、前記プロセス温度が190℃未満であり、オプション的には約175℃である方法。
【請求項12】
請求項1~11のうち何れか一項に記載の方法であって、前記プラズマが前記チャンバ内で維持されている間、前記チャンバの圧力が1~5Torr、オプション的には1~3Torr、オプション的には1.4~2.0Torrの範囲内、又はオプション的には約1.75Torrとされる方法。
【請求項13】
請求項1~12のうち何れか一項に記載の方法であって、前記諸工程が容量結合型PECVD反応炉内で実行される方法。
【請求項14】
請求項1~13のうち何れか一項に記載の方法であって、前記水素添加窒化シリコン炭素膜がアモルファス水素添加窒化シリコン炭素膜(a-SiCN:H)である方法。
【請求項15】
請求項1~14のうち何れか一項に記載の方法であって、前記基板が半導体基板である方法。
【請求項16】
請求項1~15のうち何れか一項に記載の方法を用いSiCN:H膜がその上に堆積された基板。
【請求項17】
2枚の基板を接合する方法であって、
請求項16に係りSiCN:H膜を伴う第1基板を準備する工程と、
請求項16に係りSiCN:H膜を伴う第2基板を準備する工程と、
前記第1基板のSiCN:H膜を前記第2基板のSiCN:H膜に約250℃未満の温度で接合する工程と、
を有する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法を用い生産された基板複数枚の積層体を備えるデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は堆積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムーアの法則に基づく電子デバイスの二次元(2D)スケーリングが近い将来に亘り続く見込みである。とはいえ、デバイスの三次元(3D)集積には、ホモジニアスなものであれヘテロジニアスなものであれ、先進システム開発に向けた多大な可能性が見込まれる。思うに、3D「積層」デバイスとすることでより多大な集積を達成できるであろうし、ひいてはデバイス性能改善、機能改善、更には2Dスケーリング手法に比したコスト低減がもたらされよう。デバイスの効率的3D集積を達成するためには、2枚の基板例えばデバイスウェハを一体に接合することで、多数のダイを同時に積層しうるようにするのが望ましい。表面活性化接合技術は、デバイスの好適な3D積層を達成する見込みのある候補である。通常、表面活性化接合プロセスにおいては、2枚の基板表面を処置することで、例えば窒化シリコン炭素(SiCN)層(例えば水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)層)等の誘電体接合/接着層が設けられる。その上で、それら2個の処置済面を化学機械平坦化(CMP)により平坦化し、精密に配列し、高温で一緒に加圧し、そしてアニーリングすることで、それらの基板を一体に接合することができる。
【0003】
既知の表面活性化接合技術では、高温(約340~370℃)で堆積された誘電体接合層及び接着層、例えばSiCN及びSiCN:Hが用いられており、更には接合に先立ち約420℃での高密度化工程が必要とされることがある。通常は、オルガノシランプレカーサ(前駆体)例えばトリメチルシラン(3MS)又はテトラメチルシラン(4MS)がSi及びCの源泉として用いられる一方、アンモニアがNの源泉としてよく用いられている。プロセス圧は1~5Torrの範囲内とされる。高温が必要であるため、これらの既知プロセスは、低サーマルバジェット制約を有する基板(即ち温度感受性基板)を接合するのに適していない。例えば、デバイス層及び/又は相互接続配線が備わる基板、例えば誘電体内に埋め込まれた銅層を有するそれらでは、低いサーマルバジェットを保ちデバイスの損傷を避けることが肝要である。
【0004】
とはいえ、接合及び接着層の堆積温度を単純に下げると、接合強度が貧弱で、銅障壁層特性が貧弱で、湿気に対する感度が高い接着層になってしまう。非特許文献1には、NH
3/SiH
x(CH
3)
yプレカーサを用い370℃及び200℃なるプロセス温度で堆積されたPECVD SiCN膜に係るFTIRスペクトルが示されている。そのFTIRスペクトルを
図2に示す。200℃で堆積された膜に関しては、堆積直後の膜とその後3か月に亘り空気に露出された膜の双方により、1025cm
-1在のSi-OピークがSi-Cピーク(830cm
-1)及びSi-Nピーク(940cm
-1)に対し相対的に高まる一方、Si-CH
3ピーク(1260cm
-1)が僅かに低くなることが示されている。その堆積プロセス内に酸化剤が存在しないため、その低温膜が大気から酸素を吸い込んでいるのである。これに対し370℃膜は変化していない。Si-CH
3ピークの低下は、Si-CH
3が室温でさえ安定でないことを示唆しており、他方で弾性反跳検出(ERD)計測が示すところによれば、200℃膜は約12.7at%のOを含有している。膜内にOが存在する結果として、その膜の接合品質が劣化する。安定な370℃膜でもたらされる接合強度が2.3Jm
-2であるのに対し、200℃膜でもたらされる接合強度は1.4Jm
-2となる。お判りいただける通り、既知堆積プロセスの温度を単純に低下させるのでは、許容できない結果がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/235171号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/222741号
【特許文献3】米国特許第9691733号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nagano et al (ECS J. Solid State Sci. Technol. 9 123011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、秀逸なデバイス性能を保ちつつ、ウェハウェハ接合に係る誘電体障壁及び接着層を顕著に低い温度で堆積できる方法には、需要がある。表面活性化接合技術を用いより広範な基板(とりわけ低サーマルバジェット制約を有する基板)を接合することが可能となるので、これは望ましいことである。こうした方法を提供することにより、デバイスの3D集積の改善を達成することができ、見込みとしてはデバイス性能を改善することができる。また、有意な量のOを含有又は吸収せず(1at%未満)且つFTIRスペクトルの経時変化から判断して化学量論的に安定なSiCN:H膜を生産しうる低温SiCN:H堆積プロセスにも、需要がある。そのSiCN:H膜を、ウェハウェハ接合の他の諸条件、例えば表面粗さ及びコストとも両立可能なものとすべきである。
【0008】
本発明、少なくともその実施形態のうち幾つかでは、上述の問題及び需要に対処している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、プラズマ増強化学気相堆積(PECVD)により基板上に水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)膜を堆積させる方法であって、
チャンバ内にその基板を準備する工程と、
シラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)をそのチャンバ内に導入する工程と、
約200℃未満のプロセス温度にてPECVDによりその基板上にSiCN:Hが堆積されるようそのチャンバ内でプラズマを維持する工程と、
を有する方法が提供される。
【0010】
炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)の組合せを反応性プレカーサとして含む堆積レシピを用いることで、知見によれば、良好な障壁層及び接着層特性を有する安定なSiCN:H膜を、低サーマルバジェット制約の枠内に保ちつつ生産することができる。このSiCN:H膜は、表面活性化接合プロセスにおける接着層としての使用に適している。従って、本方法は、デバイスウェハを初め、温度感受性デバイス層及びそれらの相互接続配線を内包しており例えばそれらがその基板内に埋め込まれている広範な基板の3D集積に、適している。用いる反応性プレカーサは、本質的に、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)の組合せにより構成することができる。好ましくは、用いる反応性プレカーサを、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)の組合せで構成する。オプション的には、一種類又は複数種類の非反応性キャリアガス例えばヘリウム又はアルゴンも、そのチャンバ内に導入することができる。
【0011】
その炭化水素ガス又は蒸気をアルキン、アルカン又はアルケン、オプション的には無分岐アルキン、無分岐アルカン又は無分岐アルケンとすることができる。
【0012】
その炭化水素ガス又は蒸気をC2-C6アルキン、例えば分岐付又は無分岐のそれとすることができる。そのC2-C6アルキンをアセチレン(C2H2)とすることができる。シラン(SiH4)、アセチレン、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)の組合せを含む堆積レシピを用いることで、知見によれば、ひときわ望ましい特性、例えば良好な銅障壁層としてのそれを有するSiCN:H膜を、生産することができる。
【0013】
これに代え、その炭化水素ガス又は蒸気をC1-C6アルカン、例えば分岐付又は無分岐のそれとすることができる。そのC1-C6アルカンをメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、ペンタン(C5H12)又はヘキサン(C6H14)とすることができる。
【0014】
そのシラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)を、関連付けられているsccm(標準立方センチメートル毎分)単位流量にて、それぞれチャンバ内に導入することができる。それらの流量の降順を、窒素ガス(N2)、水素ガス(H2)、シラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、の順とすることができる。
【0015】
シラン(SiH4)はシリコン供与プレカーサである。シラン(SiH4)は10~800sccm、オプション的には20~500sccm、オプション的には100~300sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約200sccmなる流量でチャンバ内に導入することができる。
【0016】
炭化水素ガス又は蒸気は10~500sccm、オプション的には20~300sccm、オプション的には100~200sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約150sccmなる流量でチャンバ内に導入することができる。
【0017】
窒素ガス(N2)は窒素供与プレカーサである。窒素ガス(N2)は500~5000sccm、オプション的には1000~3000sccm、オプション的には1000~2000sccmの範囲内の流量、又はオプション的には約1500sccmなる流量でチャンバ内に導入することができる。オプション的には、窒素供与プレカーサとしてのアンモニア(NH3)が不在とされる。上首尾なことに、N2が、用いられる唯一の窒素供与プレカーサとなる。
【0018】
水素ガス(H2)は50~1000sccm、オプション的には100~800sccm、オプション的には200~700sccm、オプション的には300~700sccmの流量、又はオプション的には約550sccmの範囲内なる流量でチャンバ内に導入することができる。驚異的なことに、知見によれば、プレカーサとしてH2を用いることで、その膜におけるH含有量が減る結果、より密で安定な膜が生産される。
【0019】
そのPECVD工程におけるプロセス温度を190℃未満、又はオプション的には約175℃とすることができる。そのプロセス温度を100℃超、オプション的には125℃超、オプション的には150℃超とすることができる。基板をこうした温度に保つことにより、その基板を低サーマルバジェット制約の枠内に保てることで、本方法が、温度感受性基板上へのSiCN:H膜の体積に適したものとなっている。例えば、本方法を用い、SiCN:H(接着)層を、デバイス層及び/又は相互接続配線を備える温度感受性基板上、例えば誘電体内に埋め込まれた銅層を有するものの上に、堆積させることができる。
【0020】
プラズマがチャンバ内で維持されている間、そのチャンバの圧力を1~5Torr、オプション的には1~3Torr、オプション的には1.4~2.0Torrの範囲内、又はオプション的には約1.75Torrとすることができる。
【0021】
本発明の第1態様の諸工程を、容量結合型PECVD反応炉内で実行することができる。
【0022】
そのプラズマの維持には高周波RFパワーを用いることができる。これに代え、そのプラズマの維持に、高周波RFパワー及び低周波RFパワーを用いることもできる。
【0023】
その高周波RFパワーの周波数を10~15MHzの範囲内、好ましくは13.56MHzとすることができる。その高周波RFパワーのパワーを300~2000W、オプション的には800~1200Wの範囲内、又はオプション的には約1000Wとすることができる。
【0024】
その低周波RFパワーの周波数を100~500kHz、オプション的には約200~450kHz、オプション的には約300~400kHzの範囲内、又はオプション的には約380kHzとすることができる。その低周波RFパワーのパワーを0~200W、オプション的には0~50Wの範囲内、又はオプション的には約0Wとすることができる。
【0025】
その水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)膜をアモルファス膜(例.a-SiCN:H)とすることができる。
【0026】
その基板を半導体基板とすることができる。
【0027】
本発明の第2態様によれば、第1態様に係る方法を用いSiCN:H膜がその上に堆積された基板が提供される。
【0028】
その基板を半導体基板とすることができる。その基板をシリコン基板又はシリコンウェハとすることができる。その基板を、複数個のダイを含むものとすることができる。その基板を諸フィーチャ(外形特徴)、例えば1個又は複数個のデバイス層及び/又は相互接続配線を有するものとすることができる。それらフィーチャを温度感受性のものとすることができる。それらフィーチャを銅層、例えば誘電体素材内に埋め込まれた銅層を有するものとすることができる。
【0029】
本発明の第3態様によれば、2枚の基板を接合する方法であって、
第2態様に係りSiCN:H膜を伴う第1基板を準備する工程と、
第2態様に係りSiCN:H膜を伴う第2基板を準備する工程と、
第1基板のSiCN:H膜を第2基板のSiCN:H膜に約250℃未満の温度で接触させることでその第1基板のSiCN:H膜をその第2基板のSiCN:H膜と接合する工程と、
を有する方法が提供される。
【0030】
第1基板のSiCN:H膜を第2基板のSiCN:H膜に接触させる際の温度を100~250℃、オプション的には125~225℃、オプション的には150~200℃の範囲内、又はオプション的には約175℃とすることができる。
【0031】
この2枚基板接合方法は、更に、第1及び/又は第2基板のSiCN:H膜を平滑化する平滑化工程、例えば化学機械平坦化(CMP)工程を有するものと、することができる。この2枚基板接合方法は、更に、第1及び第2基板のSiCN:H膜を接触させるのに先立ちそれら第1及び第2基板を整列させる工程を有するものと、することができる。
【0032】
本発明の第4態様によれば、第3態様の方法を用い生産された基板複数枚の積層体を備えるデバイスが提供される。
【0033】
本発明について上述したが、これは、先に説明されており又は後掲の記述、図面又は特許請求の範囲中にある諸特徴のあらゆる独創的組合せに敷衍される。例えば、本発明のある態様との関連で開示されている何らかの特徴を、本発明の他の諸態様のうち何れかとの関連で開示されている何らかの特徴と、組み合わせることができる。
【0034】
以下、添付図面を参照し、専ら例示の手段によって、本発明の諸実施形態について記述する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】表面活性化基板接合プロセスを受ける準備が整った2枚の基板の模式的側面図である。
【
図2】NH
3/SiH
x(CH
3)
yプレカーサを用い370℃及び200℃なるプロセス温度にて堆積された非特許文献1記載のPECVD SiCN膜に係る従来のFTIRスペクトルを示す図である。
【
図3】本発明の方法を用い堆積されたSiCN:H膜のFTIRスペクトルであり、堆積直後及び7日間大気露出後の膜につき得られたスペクトルを示す図である。
【
図4】本発明の方法を用い175℃にてH
2有り/無しで堆積された二種類のSiCN:H膜に係る屈折率(RI)であり、7日間に亘り空気に露出された際のものを示す図である。
【
図5】本発明の方法を用い175℃にてH
2有り/無しで堆積されたそれら二種類のSiCN:H膜に係る応力であり、7日間に亘り空気に露出された際のものを示す図である。
【
図6】本発明の方法を用い175℃にてH
2有り/無しで堆積されたそれら二種類のSiCN:H膜に係るFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に、2枚の基板を一体接合するのに用いられる表面活性化接合プロセスの概要を示す。基板10a,10bは温度感受性フィーチャ、例えばデバイス層12a,12bを備えるものとすることができる。接着層14a,14b、例えば窒化シリコン炭素(SiCN)層、例えば水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)層が、各基板10a,10bの表面上に堆積されている。それら2個の接着層14a,14bを、例えば化学機械平坦化(CMP)により平滑化し、精密に配列し、高温にて一緒に加圧し、そしてアニーリングすることで、それら接着層14a,14bを介しそれら2枚の基板を一体接合することができる。
【0037】
本発明の例示的方法(及び比較例)に従い窒化シリコン炭素(SiCN)膜例えばSiCN:H膜を堆積させるのに適した装置には、英国サウスウェールズ州ニューポート所在のSPTS Technologies Limitedから商業的に入手可能なSPTS Delta(商標)パラレルプレートPECVD装置がある。以下記述される実施例及び比較例は皆、この装置を用い実行されたものである。
【実施例0038】
本発明では、表面活性化接合プロセスにおける接着層としての使用向けに許容しうる水素添加窒化シリコン炭素(SiCN:H)膜を堆積させる方法が、提供される。具体期には、許容しうるSiCN:H膜を、基板上に、約200℃未満、オプション的には190℃未満、又はオプション的には約175℃の温度で堆積させることができる。その基板を半導体基板、例えばシリコン基板又はシリコンウェハとすることができる。その基板を、複数個のダイを含むものとすることができる。その基板を、温度感受性フィーチャ例えばデバイス層及び相互接続配線を備え、それらが例えば誘電体内に埋め込まれた銅層を有するものと、することができる。
【0039】
本発明の諸実施例ではシラン(SiH4)、炭化水素ガス又は蒸気、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)がPECVDチャンバ内に導入される。オプション的には、一種類又は複数種類の非反応性キャリアガスも、そのチャンバ内に導入することができる。そのチャンバ内でプラズマを維持することでPECVDプロセスを生起させ、それによりSiCN:Hをその基板上に堆積させることができる。その炭化水素ガス又は蒸気をアルキン、アルカン又はアルケンとすることができる。
【0040】
その膜におけるH含有量を制御するため及びSi-N接合の成長を促進するため、アンモニアを主たる窒素供与プレカーサとして用いる従来手法を、その膜におけるNの源泉としてN2を用いるものに置き換えた。その膜におけるCHx入り込みの低減が、シランを炭化水素炭素供与プレカーサ例えばC2H2と共に用いることにより達成された。本件技術分野における標準慣行に従いオルガノシランを用いるのではなくC2H2をドーパントとして用いることによって、低温における膜特性の微調整を達成できた。驚異的なことに、見いだされたところによれば、その膜の堆積後安定性がH2添加により改善された。
【0041】
表1に、100~250℃の範囲内の堆積温度で安定なSiCN:H膜を実現するのに適するPECVDプロセスパラメタの例を示す。これらのパラメタは300mm直径のウェハに係るものであり、200mm以下の直径を有するウェハで同様のパワー密度を保つには、恐らくはHFパワーレベルを下げればよかろう。全体的傾向としては、N2>H2>SiH4>炭化水素の順序である場合に、最適なガス流が見出された。
【0042】
【0043】
諸実施例では、SiCN:H膜を、PECVDにより175℃で300mmシリコンウェハ上に堆積させた。反応性プレカーサはシラン(SiH4)、アセチレン、窒素ガス(N2)及び水素ガス(H2)とした。
【0044】
チャンバ圧は1.75Torr付近とした。プラズマの維持には13.56Hz及び1000WのRFパワーを用いた。反応性プレカーサの流量は、シランが200sccm、アセチレンが150sccm、窒素が1450sccm、水素が550sccmであった。
【0045】
図3中に見出せるのは、連続7日分の日別の吸光率(任意単位)対波数(cm
-1)FTIRスペクトルであり、SiH/N
2/C
2H
2/H
2を源泉ガスとして用い堆積されたSiCN:H膜(LDR A)に係るものである。注記されることに、別個なSi-CH
3ピークがないこと、並びに1260cm
-1及び1025cm
-1に明瞭なSi-Oピークがないことは、それぞれ、その膜内へのメチル基入り込みのレベルが低いことと、酸素が欠如していることとを示している。また、2100cm
-1にSi-H、約2900cm
-1にC-H、約3380cm
-1にSi-NH
2が現れている。大気中及び室温での7日間に亘り、スペクトルが何ら有意な変化を示さなかったことは、これらの膜が安定であることを示唆している。ERD計測が示すところによればそれらの膜内に存するOが1at%未満であり、FTIRスペクトルが経時変化していないので、約3380cm
-1のピークはO-HではなくSi-NH
2が原因である。
【0046】
図4,
図5には、順に、H
2有り無しなる二種類のSiCN:H膜につき、RI(屈折率)安定性,応力安定性が示されている。それら二種類の膜に係るプロセスパラメタでは、堆積時にH
2が存在していない膜に係るH
2含有量を除き、表1記載の条件を用いた。見受けられる通り、H
2によりその膜の安定性が顕著に改善されている。これらの膜に係るFTIRスペクトルを
図6中に見出すことができる。
【0047】
望外なことに、プラズマへのH
2の添加によって、
図6に示す如く堆積直後の膜におけるH含有量の減少がもたらされている。表2に示すように、Si-H接合に係る膜のH含有量を、Si-Hピーク及びSiNピークのエリアの比から求めたものが、H
2希釈不使用時の値の約半分まで減少している。これは、
図4中のRI値が、プレカーサとしてのH
2無しで堆積されたSiCN:H膜での方がH
2有りで堆積されたそれらよりも低いことと、合致している。堆積直後の膜のRI値が低めであることは、膜密度が低めであること、ひいてはその膜のH含有量を増やせそうであることを示している。推測によれば、堆積工程におけるH
2の使用によって、より高エネルギなプラズマが発生することにより、形成されるH対Si接合の量が減少している。更に、推測によれば、それによりその膜のインサイチュー(その場的)な高密度化が強まっている。
【0048】
【0049】
看取できる通り、H2をプレカーサとして用いている二種類の膜に係るFTIRスペクトルは、非常に似たスペクトルを有している。それに対し、H2無しで堆積された膜には、より高い波数へのSi-Nピークの移動に結び付いた、全主要ピークでの吸光率の上昇が現れている。Si-NH2を原因とする安定なピークが約3380cm-1に存在していることは、この新規種類の低温SiCN:H膜の特徴であると見られる。
【0050】
H2有りで堆積された直後の膜の表面粗さを原子間力顕微鏡により計測したところ、これら二種類の膜LDR A,LDR Bで1.67nm,1.89nmとなった。広範な堆積パラメタに亘り、安定膜に関し、90~520nm/分なる堆積速度を達成することができる。
【0051】
N2/H2/SiH4流を固定しC2H2流を変化させることで、その膜のC含有量を調整することができた。この手法によれば、ERD、EDAX及びFTIRをもとに判別したところ、NH3/SiHx(CH3)yプレカーサを用いる370℃での高温プロセスにより達成されるそれに似た化学量論的組成を、175℃にて達成することができよう。
【0052】
アセチレンを炭素源として用いることにより、その膜へのCH3入り込みが減少する。CH3の存在により不安定な膜がもたらされると考えられるので、これは上首尾なことである。アセチレンは比較的低コストな炭素源でもある。これはオルガノシランよりも安価であり、より一層の炭素含有量制御を行える見込みがある。とはいえ、その代わりに他の炭化水素プレカーサ、例えばメタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びヘキサンを炭素源として用いることもできよう。