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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035902
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】磁気歯車を備える計時器機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20230306BHJP
   F16H 35/00 20060101ALI20230306BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20230306BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20230306BHJP
   G04B 35/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F16H49/00 A
F16H35/00 C
G04B13/02 Z
G04B19/02 Z
G04B35/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129538
(22)【出願日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】21193818.8
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・インボーデン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール・ミニョー
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・キャリッチ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(57)【要約】
【課題】磁気歯車を備える計時器機構を提供すること。
【解決手段】機構(1)は、磁気歯車(2)を備え、磁気歯車(2)は、第1の磁気歯部(10)を備える第1の車(6B)と、第2の磁気歯部(12)を備える第2の車(6C)とを含む。第1の磁気歯部及び第2の磁気歯部は、軟強磁性材料から作製される第1の歯及び第2の歯によってそれぞれ形成され、磁気歯車(2)は、第3の車(6A)を更に備え、第3の車(6A)は、第1の車(6B)と第2の車(6C)との間に配置され、永久磁極体、特に二極磁石によって形成される第3の磁気歯部(8)を備える。概して、機能を実行するか又はトルクを伝達するように、第1の車は駆動車である一方で、第2の車は駆動される。第3の中間車は、好ましくは、第3の中間車が自由に回転できるように組み付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車(6B)と第2の車(6C)とを含む磁気歯車(2)を備える機構(1)、特に計時器機構であって、前記第1の車(6B)は、第1の磁気歯部(10)を備え、前記第2の車(6C)は、第2の磁気歯部(12)を備え、前記第1の磁気歯部(10)及び前記第2の磁気歯部(12)は、軟強磁性材料から作製される第1の歯及び第2の歯によってそれぞれ形成し、前記磁気歯車(2)は、第3の車(6A)を更に備え、前記第3の車(6A)は、前記第1の車(6B)と前記第2の車(6C)との間に配置し、第3の磁気歯部(8)の磁化歯を形成する第1の永久磁極体(7、29)を備え、前記第3の磁気歯部(8)は、前記第3の車(6A)内に含まれ、交互の極性をもつ第1の磁束が前記磁化歯からそれぞれ発生するように構成し、前記第3の車(6A)及び前記第1の車(6B)は、前記第3の磁気歯部(8)が、前記第1の磁束によって生成される、前記第1の磁気歯部(10)との第1の磁気結合を有するように構成し、これにより、磁力のために、前記第3の磁気歯部(8)との第1の磁気結合区域内に瞬間的に位置する前記第1の磁気歯部(10)の歯を瞬間的に分極し、したがって、前記第1の磁気歯部(10)を通じて、前記第1の磁束からの第1の磁束がそれぞれ流れ、前記第3の車(6A)及び前記第2の車(6C)は、前記第3の磁気歯部(8)、又は適用可能な場合、前記第3の車によって含まれ、第2の磁束が交互の極性で出現する第2の永久磁極体(31)によって形成される第4の磁気歯部(27)が、前記第1の磁束又は前記第2の磁束によって生成される、前記第2の磁気歯部(12)との第2の磁気結合を有するように構成し、これにより、磁力のために、前記第3の磁気歯部(8)又は適用可能な場合、前記第4の磁気歯部(27)との第2の磁気結合区域内に瞬間的に位置する前記第2の磁気歯部(12)の歯を瞬間的に分極し、したがって、前記第2の磁気歯部(12)を通じて、前記第1の磁束からの第1の磁束、又は前記第2の磁束からの第2の磁束がそれぞれ流れることを特徴とする、機構(1)。
【請求項2】
前記第3の車(6A)は、前記第3の車(6A)が自由に回転できるように組み付け、前記第3の車(6A)は、前記磁気歯車(2)内の駆動車である前記第1の車(6B)から受け取ったトルクを、前記第3の車(6A)を介して前記第1の車(6B)によって駆動される前記第2の車(6C)に伝達し、前記機構の機能を実行するか、又は前記機構(1)内で前記第1の車(6B)から受け取ったトルクを伝達するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項3】
前記第1の磁気歯部(10)は、N1個の歯を備え、前記第2の磁気歯部(12)は、N2個の歯を備え、前記第3の磁気歯部(8)は、N3個の歯を備え、前記数N3は、両端を含む4から10の間の偶数であり、前記数N1と前記数N3との間の比率、及び前記数N2と前記数N3との間の比率は、それぞれ2以上、好ましくは3以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項4】
前記第3の車(6A)は、強磁性材料から作製される中心部(9、28)を有し、前記中心部(9、28)の外周部上に、前記永久磁極体(7)が対で同数の相補的な磁極体と共にそれぞれ配置され、したがって、二極磁石を形成し、前記二極磁石は、それぞれ、径方向の磁化を有し、前記第3の磁気歯部の磁化歯を規定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項5】
前記第1の車(6B)及び/又は前記第2の車(6C)は、それぞれの前記磁気歯部(10、12)のための連続円形基部を形成する縁を備え、前記縁は、前記磁束の磁気経路を閉鎖する閉鎖部を形成するように、軟強磁性材料から作製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項6】
前記機構(1)は、前記第2の車(6C)に機械的に結合される戻止めデバイス(20)を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項7】
少なくとも前記第1の車(6B)及び前記第2の車(6C)は、同一平面上にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項8】
前記第1の車(6B)、前記第2の車(6C)及び前記第3の車(6A)は、同一平面上にあることを特徴とする、請求項7に記載の機構(1)。
【請求項9】
少なくとも前記第1の車(6B)及び前記第2の車(6C)は、個別の平面内に延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項10】
前記第1の車(6B)、前記第2の車(6C)及び前記第3の車(6A)のそれぞれは、個別の平面内に延在することを特徴とする、請求項9に記載の機構(1)。
【請求項11】
前記第3の車(8)は、前記第4の磁気歯部(27)を含み、前記第1の車(6B)及び前記第2の車(6C)は、実質的に直交する平面内に延在し、前記第3の車(6A)は、前記第1の車(6B)が延在する平面及び前記第2の車(6C)が延在する平面に対して実質的に45度で配設された平面内に延在し、前記第1の永久磁極体(29)のそれぞれは、前記第2の永久磁極体(31)からの対応する第2の永久磁極体(31)と共に、軸方向の磁化を有する二極磁石(26)を形成し、前記第1の車(6B)、前記第2の車(6C)及び前記第3の車(6A)は、前記第1の磁気歯部(10)に結合される前記1つ又は複数の二極磁石(26)が前記第2の磁気歯部(12)に同時に結合されるように配置されることを特徴とする、請求項10に記載の機構(1)。
【請求項12】
前記第1の車(6B)及び前記第2の車(6C)はそれぞれ、前記第1の磁気歯部(10)及び前記第2の磁気歯部(12)のためのそれぞれの連続円形基部を形成する縁を備え、前記縁は、前記第1の磁束及び前記第2の磁束の磁気経路のそれぞれを閉鎖する閉鎖部を形成するように、軟強磁性材料から作製されることを特徴とする、請求項11に記載の機構(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに磁気的に噛合する第1の車及び第2の車によって形成される磁気歯車の分野に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、そのような磁気歯車を組み込む機構、特に計時器機構に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気歯車は、2つの部品の間を直接接触させず、したがって、これらの間に摩耗又は摩擦をもたらさずに、2つの部品の間で機械的トルクを伝達するのに使用し得る公知のデバイスである。そのような歯車は、以下の利益をもたらす:
-部品の歯上に機械的な摩耗がないため、油又は潤滑剤を必要としない、
-歯付き部品は、これらの部品が密閉分離されている場合でさえ、相互作用し、トルク及び機械動力を伝達し得る、並びに
-歯付き部品は、最大トルクを制限するように使用でき、したがって、例えば機械的衝撃の際に損傷を回避するのに役立ち得る。
【0004】
そのような磁気歯車は、典型的には、互いに磁気的に噛合する2つの車を含む。第1の車は、第1の永久磁極体を備え、第1の永久磁極体は、典型的には、交互の極性であり、円状に配置され、第1の磁気歯部を規定する。これらの第1の磁極体は、例えば、径方向で交互に磁化される二極磁石によって規定される。第2の車は、強磁性材料から作製される歯又は第2の磁極体を備え、これらの歯又は第2の磁極体は、円状に配置され、第2の磁気歯部を規定する。第1の車及び第2の車は、典型的には、同じ全体平面内に位置する。第1の車の歯部と第2の車の歯部との間の磁気結合は、磁気噛合のために、第1の車及び第2の車の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動されることを意味する。
【0005】
しかし、この種類の磁気歯車の1つの欠点は、(永久磁化によって)典型的には交互のパターンで、第1の車のそれぞれの歯を磁化させる必要があることである。このことは、2つの重要な結果を有する:まず、そのような磁気歯車は、製造が高額であること、次に、2つの車の間に必要な相互作用の量は比較的わずかであるにもかかわらず、回転する磁石は、磁気歯車を収容するシステム(典型的には計時器機構)を通じて著しい磁界線を生成することである。しかし、これらの磁界線によって誘起される影響からシステムの他の構成要素を保護するようにそのような磁界線を含めることはかなり困難である。そのような影響は、特にシステムが計時器機構のムーブメントである場合、システムの正確な動作にとって好ましくない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、磁気歯車を備える機構、特に計時器機構をもたらすことによって従来技術の欠点を克服することを目的とし、磁気歯車は、製造が簡単で安価であり、磁気歯車に必要な永久磁極体の数を低減可能にする一方で、機構を収容するシステムの様々な他の構成要素を保護するように磁界線を含めることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明は、第1の車と第2の車とを含む磁気歯車を備える機構、特に計時器機構に関し、第1の車及び第2の車は、第1の磁気歯部及び第2の磁気歯部をそれぞれ備える。本発明によれば、第1の磁気歯部及び第2の磁気歯部は、軟強磁性材料から作製される第1の歯及び第2の歯によってそれぞれ形成される。磁気歯車は、第3の車を更に備え、第3の車は、第1の車と第2の車との間に配置され、この第3の車内に含められる第3の磁気歯部の磁化歯を形成する第1の永久磁極体を備え、交互の極性をもつ第1の磁束がこれらの磁化歯からそれぞれ発生するように構成される。第3の車及び第1の車は、第3の磁気歯部が、前記第1の磁束によって生成される、第1の磁気歯部との第1の磁気結合を有するように配置され、これにより、磁力のために、第3の磁気歯部との第1の磁気結合区域内に瞬間的に位置する第1の磁気歯部の歯を瞬間的に分極し、したがって、第1の磁気歯部を通じて、前記第1の磁束からの第1の磁束がそれぞれ流れる。第3の車及び第2の車は、第3の磁気歯部、又は適用可能な場合、第3の車によって含まれ、第2の磁束が交互の極性で発生する第2の永久磁極体によって形成される第4の磁気歯部が、第2の磁気歯部との第2の磁気結合を有するように配置され、第2の磁気結合は、前記第1の磁束又は前記第2の磁束によってそれぞれ生成され、これにより、磁力のために、第3の磁気歯部(8)、又は適用可能な場合、第4の磁気歯部との第2の磁気結合区域内に瞬間的に位置する第2の磁気歯部の歯を瞬間的に分極し、したがって、第2の磁気歯部を通じて、第1の磁束からの第1の磁束、又は第2の磁束からの第2の磁束がそれぞれ流れる。軟強磁性材料は、好ましくは、高透磁率、したがって、低磁気抵抗を有する材料である。
【0008】
このように構成されるそのような磁気歯車機構は、それぞれの磁気結合区域に位置し所与の時間の瞬間で活性である第1の歯部及び第2の歯部の軟強磁性材料から作製された歯にのみ、局所的で一次的な磁化をもたらす。したがって、そのような局所的な磁化を生成するのに必要な第3の車の永久磁極体の数は、実質的に低減される。このことにより、費用を低減し、機構の製造を単純化することを可能にし、第1の車と第2の車との間でトルク伝達が生じる場所の近傍に磁界線を局所的に含めることを可能にする。第1の車及び第2の車上に軟強磁性材料から作製される歯が存在することも、第3の車の永久磁極体によって生成される磁界線の閉鎖を可能にする。したがって、例えば、計時器ムーブメント等の機構を収容するシステムの様々な構成要素は、有利には、生成される磁界から保護される。
【0009】
更に、本発明によるそのような機構は、第1の車と第2の車との間で伝達される最大トルクを本質的に制限し、したがって、歯車を機械的衝撃によって生じる損傷から保護する。
【0010】
好ましくは、第3の磁気歯部は、少なくとも4つの磁化歯、特に、両端を含む4から10の磁化歯を含む。同様に、実施形態で規定される場合、第4の磁気歯部は、少なくとも4つの磁化歯、特に、両端を含む4から10の磁化歯を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、第3の車は、第3の車が自由に回転できるように組み付けられ、この第3の車は、磁気歯車内の駆動車である第1の車から受け取ったトルクを、第3の車を介して、第1の車によって駆動される第2の車に伝達し、機構の機能を実行するか又は第1の車から受け取ったトルクを機構内で伝達するように構成される。したがって、第1の車と第2の車との間の磁気結合は、一方で、第1の車と第3の車との間の第1の磁気結合を介し、もう一方で、第2の車と第3の車との間の第2の磁気結合を介する間接結合(中間結合)である。
【0012】
第1の磁気歯部は、N1個の歯を備え、第2の磁気歯部は、N2個の歯を備え、第3の磁気歯部は、N3個の歯を備える。有利には、数N3は、両端を含む4から10の間の偶数であり、数N1と数N3との間の比率、及び数N2と数N3との間の比率はそれぞれ、2以上、好ましくは、3以上である。このことにより、限られた数の磁石で第1の車と第2の車と第3の車との間の磁気結合の効率を改善する。
【0013】
第4の磁気歯部がいくつかの実施形態で提供される場合、この第4の磁気歯部は、N4個の歯を備える。有利な代替実施形態では、数N4は、数N3に等しい。しかし、数N4は、数N3とは意図的に異なってよい。第4の歯部を備える有利な実施形態では、第3の磁気歯部の磁化歯は、複数の二極磁石である第1の磁極体によって形成される一方で、第4の磁気歯部の磁化歯は、複数の二極磁石である第2の磁極体によって形成され、これらの第2の磁極体は、第1の磁極体とは物理的に別個である。特に、第3の車は、N個の二極磁石を備え、数Nは、数N3及び数N4の両方に等しい(N=N3=N4)。N個の二極磁石は、定義上、2N個の磁極体を有することに留意されたい。
【0014】
本発明の特定の実施形態によれば、第3の車は、前記第4の磁気歯部を備え、第1の車及び第2の車は、実質的に直交する平面内に延在する。第3の車は、第1の車が延在する平面及び第2の車が延在する平面に対して実質的に45度(45°)で配設された平面内に延在する。前記第1の磁極体のそれぞれは、前記第2の永久磁極体からの1つの第2の永久磁極体と共に、軸方向の磁化を有する二極磁石を形成する。第1の車、第2の車及び第3の車は、第1の磁気歯部に結合される1つ又は複数の二極磁石が第2の磁気歯部に同時に結合されるように配置される。
【0015】
一般的な代替実施形態では、第1の車及び第2の車のそれぞれは、関係する車の回転軸に対して径方向に延在する少なくとも6個の歯を含む。各歯は、車の環状外周部から突出する突起の形態を取る。特に、第1の車及び第2の車のそれぞれは、車の軸に対して径方向に延在する少なくとも6から30の間の歯を含む。
【0016】
複数の二極磁石がそれぞれ径方向の分極を有する場合、第3の車は、有利には、強磁性材料から作製される中心部を有し、中心部の外周部上に、複数の二極磁石が配置され、二極磁石の外側磁極体は、それぞれ、第3の磁気歯部の磁化歯を規定する。このことにより、第3の車の中心部を介して、複数の二極磁石の内側磁極体側で、特に、隣接する二極磁石の間の磁界線を効果的に閉鎖することを可能にする。
【0017】
有利には、第1の車及び/又は第2の車は、それぞれの磁気歯部のための連続円形基部を形成する縁を備え、この縁は、磁束の磁気経路を閉鎖する閉鎖部を形成するように、軟強磁性材料から作製される。
【0018】
特定の代替実施形態では、機構は、第2の車に機械的に結合される戻止めデバイスを更に含む。このことにより、車が逆方向に滑らないようにする。この逆方向への滑りは、特に高い復元トルクの場合、例えば、駆動ばねを巻き上げる際等に生じ得る。より詳細には、そのような滑りは、第2の車を所望のトルク伝達方向とは反対の方向で自由に回転させるという、機構にとって好ましくない、制御できない影響を生じさせることがある。そのような制御できない影響は、車が逆方向に滑ることにより、例えば、当該機構内の振動、衝撃、又はあらゆる他の機械的な乱れ(例えば、ばねの巻上げ)によって開始され得る。
【0019】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、少なくとも第1の車及び第2の車は、同一平面上にある。特に、第1の車、第2の車及び第3の車は、同一平面上にある。後者の場合、第3の車は、特に、径方向の磁化/分極を有する複数の二極磁石によって形成される。本発明の別の例示的実施形態によれば、少なくとも第1の車及び第2の車は、個別の平面に延在する。特に、第1の車、第2の車及び第3の車は、それぞれ個別の平面に延在し得る。
【0020】
本発明による機構の目的、利点及び特徴は、図示される様々な非限定的実施形態の以下の説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の機構の第1の実施形態の第1の例による、本発明による磁気歯車を組み込む機構の上面図である。
図2】本発明の機構の第1の実施形態の第2の例による、図1と同様の図である。
図3】本発明の機構の第2の実施形態の斜視側面図である。
図4図3の機構の視線A1に沿って見た、斜視上面図である。
図5図3の機構の特徴を示す斜視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図5に示すように、本発明は、磁気歯車2を備える機構1、特に計時器機構内に2つの車6B、6Cを設けることからなる一般的な発明概念から得られ、各車6B、6Cは、好ましくは比較的高い透磁率を有する軟強磁性材料から作製される歯を備え、これら2つの車6B、6Cは、特に小歯車のような、より小さな直径の寸法を有する第3の車6Aに磁気的に結合され、第3の車6Aは、車の回転軸回りに円状に配置された永久磁極体を備える。第1の車6Bと第2の車6Cとの間に配置されるこの第3の車6Aは、第3の車6Aとのそれぞれの磁気結合区域に位置するこれらの車6B、6Cの2つのそれぞれの部分に結合される磁界を生成する。したがって、第1の車6B及び第2の車6Cは、それぞれ、第1の車と第2の車との間の、より小さな直径の中間車である第3の車6Aと磁気的に噛合し、この中間車は、磁束を生成し、第1の歯部及び第2の歯部を局所的に磁化/分極し、これら第1の車及び第2の車を間接的、磁気的に互いに結合することを可能にする。
【0023】
したがって、第3の車6Aによって生成される磁界は、第1の車6B及び第2の車6Cのそれぞれに対して、より詳細には、これらの車6B、6Cの軟強磁性材料製の歯部に局所な磁化をもたらし、これらの歯部の歯は、特に所与の時間の瞬間、即ち、第3の車6Aとの磁気噛合区域に瞬間的に位置する時間で活性である歯の群によって、連続的、一時的に磁化/分極される。したがって、第1の歯部及び第2の歯部に対するそのような一時的で局所的な磁化を生成するのに必要な第3の車6Aの永久磁極体の数は、実質的に低減される。2つの車6B、6Cのうち一方又は第3の車6Aが回転するように駆動されると、他の2つの車も、磁力のために、これらの3つの車6A、6B、6Cのために設けられた2つの磁気噛合区域内のこれら3つの車6A、6B、6Cの歯の間の磁気結合の結果として回転するように駆動される。したがって、3つの車6A、6B、6Cの間の磁気結合によって生成される磁界線11は、トルク伝達が生じる場所の近傍に局所的に含められる。
【0024】
機構1は、第2の車6Cに機械的に結合される戻止めデバイス(図示せず)を更に含み得る。戻止めデバイスは、例えば、爪車と爪とを含む。爪車は、第2の車6Cと共に回転するように第2の車6Cに固定され、爪車の回転軸に対して径方向に延在する歯を備える。爪は、第2の車6Cが、所望のトルク伝達に対応する方向と反対の方向で回転しないように、爪車の歯と協働する。このことにより、計時器の機械的完全性に悪影響を及ぼすおそれがある計時器機構内の振動、衝撃又はあらゆる他の機械的な乱れ(例えば、ばねの巻上げ)の際、第2の車6Cがこの回転方向で自由に回転しないようにする。
【0025】
以下の説明において、同じ参照番号によって示される要素は、同一である。
【0026】
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明による磁気歯車2を備える機構1の第1の実施形態を説明する。機構1のこの第1の実施形態によれば、第1の車6B、第2の車6C及び第3の車6Aは、同じ全体平面に延在する。この第3の車6Aは、第3の車6Aが自由に回転できるように組み付けられる。したがって、第3の車6Aは、第1の車6Bから受け取ったトルクを第2の車6Cに伝達するように構成される。したがって、機構1の機能を実行するように、又は第1の車6Bから受け取ったトルクをこの機構1内で伝達するように、第1の車6Bは、磁気歯車2内の駆動車であり、第2の車6Cは、第3の車6Aを介して第1の車6Bによって駆動される。第1の車6Bは、第1の磁気歯部10を規定する、軟強磁性材料から作製されるN1個の歯を備える。第2の車6Cは、第2の磁気歯部12を規定する、軟強磁性材料から作製されるN2個の歯を備える。第1の車6B及び第2の車6Cの歯は、例えばミューメタル等の、好ましくは高透磁率を有する軟強磁性材料から作製される。他の2つの車6B、6Cの直径よりも小さい第3の車6Aは、径方向の分極を有する同数の二極磁石によって規定される、N3個の外側永久磁極体7を備え、二極磁石は、円状に配置され、第3の磁気歯部8の磁化歯を形成する。
【0027】
第1の磁気歯部10は、第3の磁気歯部8と第1の直接磁気結合を有し、第1の歯部10と第3の歯部8との間の第1の直接磁気結合によって、第1の歯部10及び第3の歯部8によって規定される伝達比で、第1の車6B及び第3の車6Aの一方が回転するように駆動されると、もう一方の車6B、6Aも回転するように駆動される。この第1の直接磁気結合は、第3の歯部8の磁束によって生じ、これにより、磁力のために、第3の磁気歯部8との第1の磁気結合区域に瞬間的に位置する第1の磁気歯部10の歯を瞬間的に分極し、したがって、第1の磁気歯部10を通じて、これらの磁束がそれぞれ流れる。
【0028】
第2の磁気歯部12は、第3の磁気歯部8と第2の直接磁気結合を有し、これら第2の歯部12と第3の歯部8との間の第2の直接磁気結合によって、第2の歯部及び第3の歯部によって規定される伝達比で、第2の車6C及び第3の車6Aの一方が回転するように駆動されると、もう一方の車6C、6Aも回転するように駆動される。この第2の直接磁気結合は、第3の歯部8の磁束によって生じ、これにより、磁力のために、第3の磁気歯部8との第2の磁気結合区域に瞬間的に位置する第2の磁気歯部12の歯を瞬間的に分極し、したがって、第2の磁気歯部12を通じて、これらの磁束がそれぞれ流れる。したがって、第1の車6Bと第2の車6Cとの間の磁気結合は、一方で、第1の車6Bと第3の車6Aとの間の第1の磁気結合を介し、もう一方で、第2の車6Cと第3の車6Aとの間の第2の磁気結合を介する間接結合である。
【0029】
第3の車6AのN3個の永久磁極体7は、第3の磁気歯部8の磁化歯を形成し、第3の磁気歯部8から、交互の極性をもつ磁束が発生する。磁極体7が交互の極性で円形状に配置される場合、偶数の磁極体7がある。好ましくは、数N3は、両端を含む4から10の間の偶数である。外側磁極体7は、典型的には、それぞれ、第3の車6Aの軸を形成する中心部9の周り、又はそのような軸が通過する開口内に、同数の相補的な磁極体と対で配置され、したがって、複数の二極磁石を一緒に形成する。複数の二極磁石が径方向の分極を有する場合、中心部9は、有利には、強磁性材料又はミューメタル材料から作製される。そのような材料は、特に隣接する二極磁石の間で、第3の車6Aの中心部を介する複数の二極磁石の内側磁極体から発生する磁界線を効果的に閉鎖する。
【0030】
第1の車6Bの歯数N1は、好ましくは、第3の車6Aの磁極体7の数N3よりも多い。第1の車6Bの歯数N1と第3の車6Aの磁極体7の数N3との間の比率は、有利には、2以上、好ましくは、3以上である。第2の車6Cの歯数N2は、好ましくは、第3の車6Aの磁極体7の数N3よりも多い。第2の車6Cの歯数N2と第3の車6Aの磁極体7の数N3との間の比率は、有利には、2以上、好ましくは、3以上である。好ましくは、第1の車6B、第2の車6C及び第3の車6Aのそれぞれは、軸受け内の枢動ピン上に組み付けられる。
【0031】
図1に示す機構1の第1の実施形態の第1の例によれば、第1の車6B及び第2の車6Cはそれぞれ、軟強磁性材料から作製される18個の歯を備える。第1の車6B及び第2の車6Cの各歯は、第1の歯部10の歯の間及び第2の歯部12の歯の間に非磁気区域を伴う、非磁気材料から作製されるそれぞれの縁14上に組み付けられる。第3の車6Aは、径方向の磁化を有する6個の二極磁石7を備え、それぞれ、第3の磁気歯部8の磁化歯を形成する。より詳細には、複数の二極磁石の外側磁極体は、第3の磁気歯部の磁化歯を規定する。
【0032】
図2に示す機構1の第1の実施形態の第2の例によれば、第1の車6B及び第2の車6Cのそれぞれは、磁気材料、典型的には軟強磁性材料から作製される環状縁を備え、環状縁の外周部で、同様に軟強磁性材料から作製される18個の歯を規定し、それぞれ、第1の磁気歯部10及び第2の磁気歯部12を形成する。そのような環状縁は、第1の磁気歯部10及び第2の磁気歯部12のそれぞれのための連続円形基部を形成し、この連続円形基部を介して、相互作用する磁束の磁気経路が閉鎖される。第3の車6Aは、径方向の分極/磁化を有する6個の二極磁石を備え、それぞれ、第3の磁気歯部8の6個の磁化歯を形成する。
【0033】
図1及び図2に示す第1の実施形態のこれらの最初の2つの例において、第1の車6B、第2の車6C及び第3の車6Aは、同じ全体平面内で、共線上にある。代替的に、第1の車6B、第2の車6C及び第3の車6Aは、共線上にないが同じ全体平面内に延在し得る。
【0034】
以下、図3から図5を参照して本発明による磁気歯車2を備える機構1の第2の実施形態を説明する。機構1の第2の実施形態によれば、第1の車6B、第2の車6C及び第3の車6Aのそれぞれは、個別の平面内に延在する。図3から図5に示す特定の例示的な実施形態では、この第2の実施形態に限定するものではないが、第1の車6B及び第2の車6Cは、実質的に直交する平面内に延在する。第3の車6Aは、第1の車6Bが延在する平面及び第2の車6Cが延在する平面に対して実質的に45度で配設される平面内に延在する。第3の車6Aは、第3の磁気歯部8及び第4の磁気歯部27を規定する6個の二極磁石26を備える。第3の磁気歯部8は、複数の二極磁石26の中央平面に対して、第1の車6Bの第1の磁気歯部10側に位置する複数の第1の永久磁極体29によって形成される。第4の磁気歯部27は、複数の二極磁石26の中央平面に対して、第2の車6Cの第2の磁気歯部12側に位置する複数の第2の永久磁極体31によって規定される。各第1の永久磁極体29及び対応する第2の永久磁極体31は、二極磁石の1つを一緒に形成する。
【0035】
図5に示すように、第1の車6B及び第2の車6Cは、強磁性材料から作製される同数の歯を備える。これら2つの車6B及び6Cは、図2に示す種類のものである。第3の車6Aの6個の二極磁石26はそれぞれ、第3の車の回転軸28に平行な軸に沿って磁化される。したがって、第3の歯部8の磁化歯29及び第4の歯部27の磁化歯31は、磁束がこれらの磁化歯から、第3の車6Aの回転軸28に対して実質的に平行である主要方向で発生するように配置される。
【0036】
(図示しない)特定の実施形態では、3つの車は、平行な3つの個別の平面に位置し、第3の車は、有利には、中間平面に位置する。この有利な例では、第3の車は、軸方向の磁化/分極を有する複数の二極磁石を含み、第3の車の第3の磁気歯部は、複数の第1の永久磁極体によって規定され、それぞれ、複数の二極磁石を形成し、複数の二極磁石の中央平面に対して、第1の車の第1の磁気歯部側に位置し、第1の永久磁極体は、第1の磁気歯部に少なくとも部分的に重なる。第3の車は、複数の第2の永久磁極体によって規定される第4の磁気歯部を更に備え、それぞれ、複数の二極磁石を形成し、第2の車の第2の磁気歯部側に位置し、第2の永久磁極体は、この第2の磁気歯部に少なくとも部分的に重なる。したがって、第3の磁気歯部の磁化歯の数及び第4の磁気歯部の磁化歯の数は、互いに等しく、第3の車が保持する二極磁石の数に等しい。
【0037】
(図示しない)別の特定の代替実施形態によれば、第1の車6B及び第2の車6Cは、同じ第1の平面内に延在し、第3の車6Aは、第1の平面とは別個の、第1の平面に平行な第2の平面内に延在する。そのようなケースでは、第3の車は、有利には、軸方向の分極を有する複数の二極磁石を保持し、複数の二極磁石は、第1の平面の反対側で、軟強磁性材料から作製される板によって覆われ、これにより、第1の平面の反対側で、これら複数の二極磁石の磁束の経路を閉鎖する。
【符号の説明】
【0038】
1 機構
2 磁気歯車
6A 第3の車
6B 第1の車
6C 第2の車
7 第1の永久磁極体
8 第3の磁気歯部
10 第1の磁気歯部
12 第2の磁気歯部
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】