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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035906
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】保護膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20230306BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230306BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20230306BHJP
【FI】
B29C43/32
G09F9/00 342
H01L33/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129773
(22)【出願日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2021140552
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】西垣 寿
【テーマコード(参考)】
4F204
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AD19
4F204AH37
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ01
4F204FQ40
5F142AA41
5F142BA32
5F142CB23
5F142CD17
5F142CD24
5F142CG03
5F142FA18
5F142GA01
5G435BB04
5G435EE09
5G435GG43
5G435KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、素子に負担を掛けず、表面が平坦な保護膜を形成することができる保護膜形成装置を提供する。
【解決手段】基板の素子が搭載された面に液状の硬化性樹脂Rを供給する樹脂供給部と、硬化性樹脂Rが供給された基板を保持する基板保持部33と、基板保持部33に対向して設けられるバックアップ部34と、基板保持部33とバックアップ部34との間に付着防止テープTを供給するテープ供給部と、バックアップ部34に向けて基板を押圧し、付着防止テープTに基板に供給された硬化性樹脂Rを押し当て、硬化性樹脂Rを基板上に延展させる押圧部36と、基板上に延展した硬化性樹脂Rを硬化させる硬化部37と、バックアップ部34の周囲に設けられ、硬化性樹脂Rを硬化させる硬化部38と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の、素子が搭載された面に液状の硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記硬化性樹脂が供給された前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に対向して設けられるバックアップ部と、
前記基板保持部と前記バックアップ部との間に付着防止テープを供給するテープ供給部と、
前記バックアップ部に向けて前記基板を押圧し、前記付着防止テープに前記基板に供給された前記硬化性樹脂を押し当て、前記硬化性樹脂を前記基板上に延展させる押圧部と、
前記硬化性樹脂を硬化させる第1の硬化部と、
前記バックアップ部の周囲に設けられ、前記硬化性樹脂を硬化させる第2の硬化部と第3の硬化部とのいずれか又は両方を備え、
前記第2の硬化部は前記バックアップ部の周囲に設けられ、
前記第3の硬化部は前記バックアップ部の内部に設けられる、
保護膜形成装置。
【請求項2】
前記押圧部により前記基板を押圧して、前記基板保持部と前記バックアップ部とが当接した際に、前記基板の前記硬化性樹脂が供給された面と、前記付着防止テープの表面との間に、所定の隙間を形成する当接部を備える、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、前記基板の前記硬化性樹脂が供給された面を下方に向けて前記基板を保持し、前記硬化性樹脂を前記基板上に延展させる領域が覗く開口を有する、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項4】
前記樹脂供給部は、前記基板の上方から前記硬化性樹脂を前記基板に供給し、
前記硬化性樹脂が供給された前記基板を反転させ、前記基板の前記硬化性樹脂が供給された面を下方に向けた状態で、前記基板を前記基板保持部に受け渡す反転部を更に備える、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項5】
前記基板保持部は、弾性部材又はエアシリンダにより支持される、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項6】
前記バックアップ部は、前記付着防止テープを保持する保持部材を更に備える、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項7】
前記保持部材は、通気性多孔質である、
請求項6に記載の保護膜形成装置。
【請求項8】
前記テープ供給部には、前記基板保持部を挟む位置に供給リール及び回収リールが配置され、
前記供給リールから送り出された前記付着防止テープが前記回収リールに巻き取られる経路において、前記バックアップ部の両脇にテープ支持部が設けられ、
前記付着防止テープは、前記バックアップ部と僅かに接触する又は隙間が生じる様に送り出される高さに前記テープ支持部で支持される、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項9】
前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記第1の硬化部、前記第2の硬化部及び前記第3の硬化部は、ヒータである、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【請求項10】
前記硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であり、
前記第1の硬化部、前記第2の硬化部及び前記第3の硬化部は、光照射装置である、
請求項1に記載の保護膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のLED素子を配列して搭載したLEDモジュールを、基板上に複数行複数列に敷き詰めて大型化してなる表示装置や照明装置の開発が進められている。また、複数の機能素子をまとめたモジュールなどもさまざま開発されている。このような表示装置や照明装置、モジュールにおいて、素子は、劣化抑制などの保護の観点から、硬化性樹脂などの封止部材により封止される。
【0003】
封止部材としての樹脂は、液体の状態で、基板の素子が搭載されている側の面に塗布された後、熱や光などにより硬化される。この場合、例えば中央部と端部とで、封止部材の厚みが異なりがちである。特に、端部の厚みを制御することは困難であるため、例えば、LEDモジュールを敷き詰めた際、端部の厚みの差が段差となり、表示装置の表示に影響を与えるおそれがあった。また、バックライト等の照明用モジュールでは照度分布のばらつきが生じるおそれがあり、その他のモジュールにおいても薄い外装内に装着することが困難になるおそれがあった。このような課題を解決するために、液状の封止部材に代えて、一定の厚みを有するシート状の封止部材を用いることが試みられている。例えば、特許文献1に開示されている技術においては、各モジュールに対して、一定の厚みを有するシート状の封止部材を用い、モジュール間の継ぎ目を目立たなくしようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-9937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シート状の封止部材を用いる場合には、搭載した素子の凹凸などの隙間にシート状の封止部材を押し込むことになるため、高い圧力が必要となり、素子に負担がかかるだけでなく、素子の位置ずれや横転のおそれがある。一方で、封止部材を押し込む圧力が十分でないと、素子間の隙間に封止部材が十分に入り込まず、素子を保護できなくなるおそれがある。また、シート状の封止部材の厚みが素子の高さに対して薄い場合には、素子の凹凸により封止部材の表面が平坦でなくなるおそれがある。特に、モジュール内に配置される素子の厚さが異なる場合には、これらの影響は大きくなる。
【0006】
本発明は、素子に負担を掛けず、表面が平坦な保護膜を形成することができる保護膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保護膜形成装置は、基板の素子が搭載された面に液状の硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、前記硬化性樹脂が供給された前記基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に対向して設けられるバックアップ部と、前記基板保持部と前記バックアップ部との間に付着防止テープを供給するテープ供給部と、前記バックアップ部に向けて前記基板を押圧し、前記付着防止テープに前記基板に供給された前記硬化性樹脂を押し当て、前記硬化性樹脂を前記基板上に延展させる押圧部と、前記基板上に延展した前記硬化性樹脂を硬化させる第1の硬化部と、前記バックアップ部の周囲に設けられ、前記硬化性樹脂を硬化させる第2の硬化部と第3の硬化部とのいずれか又は両方を備え、前記第2の硬化部は前記バックアップ部の周囲に設けられ、前記第3の硬化部は前記バックアップ部の内部に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保護膜形成装置は、素子に負担を掛けず、表面が平坦な保護膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のワークを示す側面図である。
図2】第1実施形態の保護膜形成装置を示す側面図である。
図3】第1実施形態の保護膜形成装置の硬化部とその周辺を示す正面図である。
図4】第1実施形態の基板保持部を示す斜視図である。
図5】第1実施形態の基板保持部を示す三面図である。
図6】第1実施形態の保護膜形成フローを示す図である。
図7】第1実施形態の制御装置を示すブロック図である。
図8】第1実施形態の保護膜形成手順を示すフローチャートである。
図9】他の実施形態の当接部を示す正面図である。
図10】各実施形態の硬化部を示す正面図である。
図11】各実施形態の硬化部のヒータ又は照射部を示す平面図及び側面図と配置例である。
図12】各実施形態の押圧時のヒータ又は照射部の制御方法を示す図である。
図13】他の実施形態の保護膜形成フローを示す図である。
図14】各実施形態における付着防止テープの剥離動作を示す保護形成装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)第1実施形態
本発明の第1実施形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。まず、保護膜形成対象及び保護膜について説明し、次に、保護膜形成装置について説明する。なお、各図は、本実施形態を模式的に示したものである。
【0011】
[保護膜形成対象]
図1(A)に示すように、本実施形態の保護膜形成対象であるワーク1は、支持基板11と、支持基板11の一面に支持されたフレキシブル基板12と、フレキシブル基板12の表面に配列して搭載された発光素子13と、を備える。ワーク1は、後述の保護膜2の形成後に支持基板11が剥離され、複数行複数列のマトリクス状に敷き詰められて表示装置を構成するモジュール基板である。
【0012】
支持基板11は、例えばガラス基板である。フレキシブル基板12は、例えばポリイミドからなり、支持基板11の一面に支持される。フレキシブル基板12は、発光素子13の搭載後に、保護膜2が形成され、支持基板11が除去されることにより、発光素子13を支持する基板となる。発光素子13は、例えばLED素子であり、フレキシブル基板12の表面に搭載される。本実施形態の発光素子13は、特にマイクロメータオーダーのLED素子であり、その高さは例えば25μmである。
【0013】
[保護膜]
図1(B)に示すように、ワーク1には、発光素子13を封止する保護膜2が形成される。保護膜2は、液状の硬化性樹脂Rが硬化してなる膜である。硬化性樹脂Rは、例えば熱により硬化する熱硬化性樹脂である。硬化性樹脂Rは、初期状態での粘度は例えば4000mPa・sである。硬化性樹脂Rは、ワーク1の発光素子13が設けられている側の面に供給され、後述するようにワーク1上に延展させられる。そして、ワーク1上に延展した硬化性樹脂Rを硬化させることにより、ワーク1上に保護膜2が形成される。なお、保護膜2の厚みは、例えば50~300μmである。保護膜2は、ワーク1の全面には形成されず、ワーク1の外周部分には形成されないよう設定されている。この保護膜2が形成されない外周部分、すなわち、保護膜形成領域外の部分は、後工程で切り落とされてモジュールとして機能しない部分やモジュール外部との接続端子の部分である。この保護膜形成領域外の部分は、保護膜2の形成においては、保護膜を形成する際のはみ出しを許容したり、ワーク1を保持したりするのに利用される。
【0014】
[保護膜形成装置]
[構成]
保護膜形成装置3は、ワーク1に硬化性樹脂Rを供給し、この硬化性樹脂Rをワーク1上に延展させ、硬化させることにより、ワーク1上に保護膜2を形成する。図2及び図3に示すように、保護膜形成装置3は、外部から搬入されたワーク1を保持し、硬化性樹脂Rが供給された後ワーク1を反転させる反転部31と、ワーク1の一面に硬化性樹脂Rを供給する樹脂供給部32と、硬化性樹脂Rが供給されたワーク1を、反転部31から受け取って反転した状態で保持する基板保持部33と、基板保持部33に対向して設けられるバックアップ部34と、硬化性樹脂Rがバックアップ部34に付着するのを防止する付着防止テープTを、基板保持部33とバックアップ部34との間に供給するテープ供給部35と、バックアップ部34に向けてワーク1の他面を押圧し、付着防止テープTを介してバックアップ部34に硬化性樹脂Rを押し付ける押圧部36と、硬化性樹脂Rを硬化させ、ワーク1上に保護膜2を形成する硬化部37、38、39と、を備える。また、保護膜形成装置3には、これらの各構成を制御する制御装置8が設けられる。
【0015】
図3において、押圧部36によるワーク1の押圧方向をZ方向とし、Z方向に直交する平面において、テープ供給部35による付着防止テープTの送り出し方向をX方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向は、図中、紙面を貫く方向である。例えば、Z方向が鉛直方向となるように、保護膜形成装置3が設置された場合、XY平面は水平面となる。この場合、Z方向は高さ方向であり、設置面側を下方、反対側を上方と呼ぶ。すなわち、下方とは重力の向きである。また、XY平面に平行な回転方向をθ方向とし、YZ平面に平行な回転方向をα方向とする。
【0016】
図2に示すように、反転部31は、図示しない搬送手段などにより外部から搬入されたワーク1を、発光素子13が搭載されている側の面、すなわち硬化性樹脂Rが供給される側の面を上方に向けて保持する。さらに、反転部31は、ワーク1に硬化性樹脂Rが供給された後、硬化性樹脂Rが供給された側の面が下方に向くようにワーク1を反転させ、基板保持部33に受け渡す。また、反転部31は、ワーク1上に保護膜2が形成された後、基板保持部33からワーク1を受け取り、反転させて元の位置に戻す。なお、保護膜2が形成され、元の位置に戻されたワーク1は、保護膜形成装置3から外部にワーク1を搬出する図示しない搬送手段などにより、反転部31から回収される。
【0017】
反転部31は、例えば真空吸着などにより、支持基板11側からワーク1を保持するアーム311と、アーム311を支持し、アーム311をXYZ方向に移動させるXYZ移動機構312と、を備える。アーム311は、例えば、XY平面に平行な方向に延びてなる直方体状のアームである。アーム311の一端には、ワーク1を保持するための吸着孔が開口している。吸着孔は、図示しない空気圧回路に接続され、アーム311は、この空気圧回路が生じせしめる負圧によってワーク1を吸着し、保持する。また、アーム311は、負圧を解除することにより、保持したワーク1を解放する。さらに、アーム311は、他端に設けられた駆動機構311aによりα方向に回動可能に設けられ、吸着孔により保持したワーク1を180°反転させる。XYZ移動機構312は、例えばモータ、リニアガイド、ボールねじなどからなり、アーム311をXYZ方向に移動させる。
【0018】
樹脂供給部32は、例えば送液装置、バルブ等からなる図示しない樹脂供給装置に接続され、ノズル32aから液状の硬化性樹脂Rを吐出する。本実施形態のノズル32aは、反転部31の上方に設けられ、反転部31が保持するワーク1の保護膜を形成する面、すなわち、発光素子13が搭載される側の面に対向する。樹脂供給部32は、図示しない駆動機構により、XYZ方向に移動可能で、反転部31が保持するワーク1の発光素子13が搭載される側の面の任意の場所に、液状の硬化性樹脂Rを供給することができる。したがって、ノズル32aから吐出される硬化性樹脂Rは、ワーク1の発光素子13が搭載される側の面に供給される。
【0019】
基板保持部33は、反転部31との間で受け渡しされるワーク1を保持する。図2に示すように、基板保持部33は、反転部31とワーク1を受け渡し可能な位置、例えば、Y方向に反転部31と並ぶ位置に設けられる。基板保持部33は、図示しないガイドに支持されて、バックアップ部34の上方に、平行を保って上下移動可能に配置される。また、基板保持部33は、弾性を有する弾性部材であるばね部332aによって、バックアップ部34から離間する方向に付勢される。つまり、基板保持部33は、ばね部332aに支持されてバックアップ部34から離間して配置される。
【0020】
基板保持部33は、一対の脚部332を備える。脚部332は、基板保持部33の下面から下方に突出する部材である。つまり、バックアップ部34に向けて延びている。脚部332は、その下端が、ばね部332aを介して、後述するバックアップ部34の基台341の上面341aに接続される。
【0021】
図4及び図5に示すように、基板保持部33は、枠体である。すなわち、基板保持部33は、枠体の中心部がワーク1の大きさに対応した大きさに開口した板状部材であって、この開口に設けられた段差部331により、ワーク1を保持する。段差部331は、この開口の下側を狭めるように、開口の内面から迫り出すように設けられ、この迫り出した部分の上面が、ワーク1の外周部分に当接することにより、ワーク1を保持する。したがって、段差部331の上面を、以下では基板保持面331aともいう。上述のように、保護膜2は、ワーク1の全面には形成されず所定の領域に形成される。すなわち、保護膜2を形成すべき領域である保護膜形成領域が存在する。したがって、保護膜2は保護膜形成領域に延展した硬化性樹脂Rを硬化させることによりワーク1上に形成される。この保護膜形成領域は、ワーク1の大きさに応じて設定される。基板保持部33におけるワーク1の大きさに対応した大きさの開口とは、少なくとも保護膜形成領域を含む大きさの開口である。つまり、硬化性樹脂Rをワーク1上に延展させる領域が覗く開口である。
【0022】
基板保持部33の一対の脚部332をつなぐ部分の下面が、後述するバックアップ部34に保持された付着防止テープTに当接する当接部333となっている。基板保持部33とバックアップ部34の間、一対の脚部332及びその下端に設けられたばね部332aの間には、後述するように付着防止テープTが供給される。したがって、当接部333は、基板保持部33がバックアップ部34に向かって、ばね部332aによる付勢に抗して押し下げられた時に、付着防止テープTを介してバックアップ部34に当接して、基板保持部33を停止させるストッパとなる部分である。当接部333の当接面は、基板保持面331aより低くなっている。すなわち、当接部333の当接面より基板保持面331aの方がバックアップ部34に対する距離が大きくなっている。当接部333と基板保持面331aとの高さ方向(Z方向)の距離は、必要とする保護膜2の厚さとなるように設けられる。これにより、基板保持面331aと付着防止テープTの表面との間に所定の隙間が形成されるため、ワーク1が基板保持面331aに保持された状態においては、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面と付着防止テープTの表面との間に所定の隙間が形成される。
【0023】
バックアップ部34は、基板保持部33に対向して設けられ、押圧部36により押圧されるワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面の側を、付着防止テープTを介して受ける部材である。バックアップ部34は、基台341と、基台341の上面341aに設けられ、付着防止テープTを保持する保持部材342と、を備える。基台341は、バックアップ部34の基台であり、保持部材342を支持する台である。保持部材342は、基台341に、着脱可能に支持される。保持部材342は、付着防止テープTを介して硬化性樹脂Rと接する平坦面を有する。なお、付着防止テープTは、保持部材342に硬化性樹脂Rが直接接触して貼り付いてしまうのを防止するテープである。
【0024】
保持部材342は、例えば、全体として連通する微細な空間が緻密にほぼ均一に形成されている通気性多孔質の板状部材であり、焼結したセラミックスや焼結した金属からなる。そのため、本実施形態の保持部材342は、表面の全面にほぼ均等に微細な孔が開口する。また、保持部材342は、図示しない空気圧回路に接続されており、通気性多孔質からなる保持部材342は、この空気圧回路が生じせしめる負圧によって、その表面に負圧を作用させることができる。これにより、保持部材342は、付着防止テープTを吸着し保持する。また、保持部材342は、この負圧が解除されることによって保持した付着防止テープTを解放する。本実施形態の保持部材342は、上述のように通気性多孔質であるので、表面の全面にほぼ均等に微細な孔が開口しており、保持部材342は、その裏面から負圧をかけると、この微細な開口全てに負圧が生じるので、面全体で付着防止テープTを吸着保持することができる。
【0025】
図3に示すように、テープ供給部35は、基板保持部33をX方向に挟む位置に設けられる供給リール351及び回収リール352が配置されるようになっており、基板保持部33に保持されたワーク1とバックアップ部34の保持部材342との間に付着防止テープTを供給する。供給リール351は、着脱自在、自由に回転できるようになっており、図示しないテンション機構でその回転に制動力が掛けられている。回収リール352は、着脱自在、自由に回転できるようになっており、図示しないモータによって回転駆動される。付着防止テープTは、供給リール351に巻装され、回収リール352の回転駆動により引き出されて、回収リール352に巻き取られて回収される。すなわち、付着防止テープTは、供給リール351及び回収リール352の協働により、バックアップ部34の保持部材342上に送り出される。また、供給リール351から送り出された付着防止テープTが回収リール352に巻き取られる経路において、バックアップ部34の両脇にテープ支持部TSが設けられている。テープ支持部TSは、バックアップ部34の保持部材342に送り出される付着防止テープTが、保持部材342の上面342aと僅かに接触する又は隙間が生じる様に送り出される高さに付着防止テープTを支持する。
【0026】
付着防止テープTは、ワーク1の発光素子13が搭載される側に供給された硬化性樹脂Rが、押圧部36によりバックアップ部34に押し当てられる際に、バックアップ部34の保持部材342に付着することを防止する。付着防止テープTは、硬化性樹脂Rに対して撥液性を有するテープであり、例えばPET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)からなる基材の表面にシリコーンコーティングを施したテープである。これにより、保護膜形成後、硬化性樹脂Rが硬化することによって生じる接着力が付着防止テープTに作用することを弱め、付着防止テープTのワーク1からの剥離を容易にしている。
【0027】
なお、硬化性樹脂Rが付着防止テープTを回り込んで保持部材342への付着を防止するため、付着防止テープTの幅は、保持部材342の幅よりも広いことが好ましい。また、発明者の研究によれば、付着防止テープTが薄すぎると、硬化性樹脂Rが押し当てられた際や加熱された際に、付着防止テープTに反りやシワが寄ってしまい、この反りやシワの状態が硬化性樹脂Rに転写されることにより、硬化性樹脂Rが硬化してなる保護膜2の表面に歪みや凹凸が生じた。さらに、バックアップ部34の表面の凹凸が転写されてしまう場合もあった。したがって、付着防止テープTの厚みは、厚い方が良く、例えば190μm以上であることが好ましい。
【0028】
しかし、付着防止テープTの厚さが厚すぎると、供給リール351や回収リール352に巻装できる長さが短くなってしまい、頻繁に供給リール351や回収リール352を交換する必要が生じる。また、付着防止テープの柔軟性が失われて、保持部材342に付着防止テープTを平行に供給することが困難となったり、付着防止テープTを保持部材342に密着させることができないことが起きる虞がある。したがって、付着防止テープTは、耐熱性、柔軟性、表面の硬度を考慮しつつ、硬化性樹脂Rが押し当てられた際や加熱された際に、付着防止テープTに反りやシワが寄ったり、バックアップ部34の表面の凹凸転写されないような厚さを選定する。
【0029】
押圧部36は、基板保持部33に保持されたワーク1を押圧し、基板保持部33を付着防止テープTに押し当てる板状部材である。押圧部36は、基板保持部33に対向して、バックアップ部34の反対側に設けられている。押圧部36は、ワーク1に対向する平坦な押圧面を備える。また、押圧部36は、例えばシリンダなどにより構成される図示しない駆動機構により下降又は上昇する。これにより、押圧部36は、基板保持部33に保持されたワーク1を押し下げ、バックアップ部34に保持された付着防止テープTの表面に、ワーク1に供給された硬化性樹脂Rを押し当てる。この時、ワーク1に供給された硬化性樹脂Rは、付着防止テープTの表面との間で押し広げられ、ワーク1の表面に延展する。
【0030】
より詳細には、図6(C)に示すように、押圧部36の押圧により、ワーク1を介して基板保持部33が押し下げられ、基板保持部33のバックアップ部34に接続された脚部332のばね部332aが収縮する。脚部332は、ばね部332aを収縮させることにより、基板保持部33の基板保持面331aから付着防止テープTまでの距離を縮める。押圧部36により押し下げられる基板保持部33は、当接部333がバックアップ部34の保持部材342に保持された付着防止テープTの表面に当接して止まる。この時、保持部材342に保持された付着防止テープTの表面からワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面(基板保持面331a)までの距離は、例えば50~300μmであり、硬化性樹脂Rは、この隙間に延展する。したがって、この距離は、硬化性樹脂Rが硬化して形成される保護膜2の高さとなる。そして、この距離は、必要な保護膜2の高さ(厚さ)に応じて決定される。つまり、この距離が、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面と、付着防止テープTの表面との間の所定の隙間となる。この距離はまた、基板保持部33がバックアップ部34に付着防止テープTを介して当接することで設定される。前述のように、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給された側の面の外周部分が、基板保持面331aに当接する。当接部333は、基板保持部33の一対の脚部332をつなぐ部分の下面であり、そのバックアップ部34と当接する面(接触面)から基板保持面331aまでの距離が当接部333の高さとなる(図5に、Lで示す)。したがって、この当接部333の高さが、保持部材342に保持された付着防止テープTの表面からワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面(基板保持面331a)までの距離となり、保護膜2の高さとなる。このため、必要とする保護膜2の高さ(厚さ)に応じて、この当接部333の高さが設定される。
【0031】
このように、基板保持部33は、押圧部36により押圧された際、当接部333の当接により、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給された面と、付着防止テープTの表面との間に所定の隙間を確保することができる。なお、当接部333は、基板保持部33のバックアップ部34にまたがる部分の裏面(バックアップ側の面、下面)である。当接部333の接触面は、バックアップ部34をまたがる部分全体でもよいし、その一部にだけ設けられていてもよい。
【0032】
硬化部37、38、39は、押圧部36によりワーク1上に延展した硬化性樹脂Rを硬化させ、ワーク1上に保護膜2を形成する。本実施形態において、硬化性樹脂Rが熱硬化性樹脂であることに対応して、硬化部37、38、39は、例えば電圧を印加することにより発熱するヒータである。また、硬化部37(第1の硬化部)は、押圧部36の内部に設けられる。これにより、硬化部37の熱が押圧部36及びワーク1の支持基板11及びフレキシブル基板12を介して硬化性樹脂Rに伝熱し、硬化性樹脂Rを硬化させる。硬化部38(第2の硬化部)は、例えば保持部材342をY方向に挟む位置に、一対設けられる。すなわち、硬化部38は、ワーク1の外周から硬化性樹脂Rを加熱する。硬化部39(第3の硬化部)は、バックアップ部34の基台341の内部に設けられ、保持部材342及び付着防止テープTを介して、下方から硬化性樹脂Rを加熱する。
【0033】
制御装置8は、保護膜形成装置3を制御する装置である。この制御装置8は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成される。すなわち、制御装置8は、反転部31、樹脂供給部32、バックアップ部34、テープ供給部35、押圧部36、硬化部37、38、39などの動作を制御することにより、保護膜形成装置3の動作を制御する。
【0034】
図7に示すように、制御装置8は、反転部制御部81、樹脂供給制御部82、テープ吸着制御部83、テープ供給量制御部84、押圧制御部85、硬化制御部86、記憶部87、設定部88、入出力制御部89を備える。
【0035】
反転部制御部81は、反転部31のアーム311の吸着動作、反転動作、及びXYZ移動機構312の移動動作を制御する。樹脂供給制御部82は、ワーク1の発光素子13が設けられている側の面に供給する硬化性樹脂Rの量、及び供給タイミング、供給する位置を制御する。供給する硬化性樹脂Rの量は、ワーク1の大きさ、つまり保護膜を形成する領域(保護膜形成領域)の大きさと保護膜の厚さによって決定される。また、硬化性樹脂Rの供給は、点状や線状に行うことができる。この点や線は、単数でも複数でもよく、その数によって各点、各線の供給量が決定される。また、この時、硬化性樹脂Rの延展状態を予め観察し、気泡の巻き込みや保護膜形成領域からのはみだしが許容内であるように、各点、各線の位置や各供給量を決定する。このように決定された供給状態に応じた制御を行う。
【0036】
テープ吸着制御部83は、バックアップ部34が接続された空気圧回路を制御することにより、保持部材342による付着防止テープTの吸着動作を制御する。例えば、ワーク1に供給された硬化性樹脂Rが保持部材342に押し当てられる前に、保持部材342に付着防止テープTを吸着させる。これにより、付着防止テープTは保持部材342全面に密着し、基板保持部33の当接部333が接触する際や、硬化性樹脂Rを硬化するための加熱をされた際に、付着防止テープTにシワが寄ることが防止され、保護膜2にシワが転写されることが防止される。テープ吸着制御部83は、ワーク1の硬化性樹脂Rの硬化が終わった後、ワーク1がバックアップ部34より離れる前に付着防止テープTの吸着を解除して、付着防止テープTを保持部材342から解放する。テープ供給量制御部84は、付着防止テープTの送り出しを制御する。例えば、一つのワーク1の保護膜の形成が終了した後、付着防止テープTを送り出し、硬化性樹脂Rが押し当てられる部分を未使用の部分に置き換える。このように、テープ供給量制御部84は、テープ吸着制御部83と協調して制御される。
【0037】
押圧制御部85は、押圧部36に設けられた図示しない駆動機構を制御する。例えば、押圧部36を所定の速度で下降させ、これにより、押圧部36にワーク1の硬化性樹脂Rが供給されていない側の面を押圧させ、ばね部322aの付勢に抗して基板保持部33に保持されたワーク1をバックアップ部34に所定の間隔で対峙させる。同様に、保護膜2が形成された後は、ワーク1から離間するように押圧部36を上昇させる。
【0038】
この制御において、硬化性樹脂Rの硬化速度すなわち硬化性樹脂Rを硬化させる速度を制御する。本実施形態の硬化制御部86は、硬化性樹脂Rが熱硬化性樹脂であることに対応して、硬化性樹脂Rを熱硬化させるために必要な硬化温度となるように、硬化部37の温度を制御する。硬化制御部86は、硬化性樹脂Rを硬化させるために、硬化部37、38、39を制御する。この制御において、硬化性樹脂Rの硬化速度すなわち硬化性樹脂Rを硬化させる速度を制御する。本実施形態の硬化制御部86は、硬化性樹脂Rが熱硬化性樹脂であることに対応して、硬化性樹脂Rを熱硬化させるために必要な硬化温度となるように、硬化部37の温度を制御する。また、硬化部37を補助する温度となるように、硬化部38、39の温度を制御する。
【0039】
熱硬化性樹脂の場合、初期状態すなわち室温にある状態から加熱され、硬化が開始する温度(硬化開始温度)になるまでは、粘度が低下し流動性が高まる。硬化開始温度ではゲル化が始まり、粘度が高まり流動性が低下する。硬化温度に近づくにつれゲル化が進み、粘度は上昇し最終的に硬化(固体化)する。したがって、硬化開始温度以下で加熱することで硬化性樹脂Rの流動性を高めることができる。この硬化開始温度以下で加熱する制御を行っている時は、硬化性樹脂Rは硬化しない。すなわち、硬化させる速度はゼロと言える。硬化開始温度以上、硬化温度で硬化性樹脂Rを加熱することで硬化性樹脂Rの流動性を低下させることができる。また、硬化性樹脂Rを硬化させることができる。そして、硬化開始温度以上、硬化温度で加熱する制御を行っている時は、硬化性樹脂Rの硬化が進むので、硬化させる速度を速める。このようにして、硬化性樹脂Rを硬化させる速度を制御する。
【0040】
本実施形態において、硬化制御部86は、予め硬化部37、38、39を、硬化性樹脂Rが硬化する温度より低い温度(第1の温度)で加熱させる。これにより押圧部36、保持部材342の温度も昇温する。この状態で、ワーク1は、押圧部36とバックアップ部34との間に挟まれる。これにより、ワーク1に供給された硬化性樹脂Rは、加熱されると共に延展する。そして、ワーク1上に硬化性樹脂Rが延展している間に、硬化制御部86は、硬化性樹脂Rが硬化する温度(第2の温度)まで昇温するように、硬化部37、38、39の温度を制御する。このようにして、硬化性樹脂Rを硬化させる速度を上げる制御を行う。なお、硬化部37、38、39は、それぞれ個別に温度が設定されるようにすることができる。また、個別なタイミングで温度を変化させるようにすることができる。
【0041】
記憶部87は、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する。記憶部87に記憶される情報としては、各構成の位置などの位置座標、硬化部37、38、39の加熱温度、付着防止テープTの送り出し量などを含む。設定部88は、入力に従って情報を記憶部87に設定する処理部である。入出力制御部89は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
【0042】
制御装置8には、入力装置91、出力装置92が接続されている。入力装置91は、オペレータが、制御装置8を介して保護膜形成装置3を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。オペレータは、入力装置91によって、記憶部87に設定される各種の情報を入力することができる。出力装置92は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。例えば、出力装置92は、入力装置91からの情報の入力画面を表示することができる。
【0043】
[作用]
次に、本実施形態の動作例を、図6及び図8を参照して説明する。図8は、保護膜2の形成手順を示すフローチャートである。前提として、図示しない搬送手段から硬化性樹脂Rが供給されていない状態のワーク1が保護膜形成装置3に搬入され、保護膜形成装置3の反転部31は、アーム311により支持基板11側からワーク1を吸着し、保持しているものとする。また、テープ供給量制御部84により、付着防止テープTは、バックアップ部34上に供給されているものとする。さらに、硬化制御部86により、硬化部37は、第1の温度である待機温度として、例えば120℃まで昇温されているものとする。硬化部38、39は、例えば100℃まで昇温されているものとする。第1の温度は、硬化性樹脂Rの硬化温度より低い温度が好ましい。より好ましくは、硬化性樹脂Rの硬化開始温度(ゲル化開始温度)より低い温度がよい。
【0044】
樹脂供給制御部82の制御により、樹脂供給部32のノズル32aは、ワーク1の発光素子13が設けられている側の面に、硬化性樹脂Rを供給する(ステップS01)。ワーク1への硬化性樹脂Rの供給は、例えば点状や線状に、1箇所あるいは複数箇所に供給される。これによって、押圧部36によって押し広げる際、所定の領域である保護膜形成領域に保護膜2が形成される。なお、硬化性樹脂Rは、ワーク1の外周部分よりも内側に供給される。硬化性樹脂Rが供給された後、反転部制御部81の制御により、反転部31は、アーム311によりワーク1を180°反転させ、硬化性樹脂Rが供給された面を下方に向け、XYZ移動機構312により、ワーク1を基板保持部33の上方に移動させる。なお、予めXYZ移動機構312により、反転させた位置が基板保持部33の上方となるような位置までアーム311を移動させておき、この位置で反転部31がアーム311を移動させてもよい。
【0045】
続いて、ワーク1が基板保持部33の上方にある状態で、図6(A)に示すように、アーム311を下降させてワーク1を基板保持部33の開口内の段差部331の基板保持面331aに当接させ、ワーク1の吸着を解除することにより、ワーク1を基板保持部33に受け渡す(ステップS02)。ワーク1は、硬化性樹脂Rが供給された面を下方に向けて、その外周部分が段差部331の基板保持面331aに当接することにより、基板保持部33に保持される。また、硬化性樹脂Rは、基板保持部33の開口を介して、バックアップ部34に保持された付着防止テープTの表面に対向している。硬化性樹脂Rは、ワーク1の外周部分よりも内側に供給されるので、基板保持面331aには付着せず、基板保持部33の開口を介して後述の付着防止テープTを臨む。なお、反転部31は、ワーク1を受け渡した後、XYZ移動機構312により、基板保持部33の上方からアーム311を退避させる。
【0046】
次に、図6(B)に点線矢印で示すように、テープ吸着制御部83により、図示しない空気圧回路を制御することにより、保持部材342に付着防止テープTを吸着保持させる(ステップS03)。続いて、図6(C)に示すように、押圧制御部85により、基板保持部33の上方から押圧部36を降下させ、押圧部36の平坦な押圧面に、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給されていない側の面を押圧させる。押圧されたワーク1が、当接する基板保持面331aを押圧することにより、基板保持部33もワーク1と共に下降する。押圧部36は、基板保持部33ごとワーク1を押圧し続け、バックアップ部34の保持部材342との間で、ワーク1を挟む(ステップS04)。この時、ワーク1に供給された硬化性樹脂Rは、保持部材342に保持された付着防止テープTの表面に押し当てられ、ワーク1と付着防止テープTとの間でXY方向に延展する。また、脚部332のばね部332aが収縮し、基板保持部33の当接部333がバックアップ部34の保持部材342に保持された付着防止テープTに当接して、ワーク1の硬化性樹脂Rが供給された側の面と付着防止テープTの表面との間には、所定の距離が確保される。すなわち、硬化性樹脂Rは、この距離の間で延展する。
【0047】
上述のように、押圧部36の内部に設けられた硬化部37は、予め第1の温度である120℃まで昇温されている。したがって、押圧部36も120℃に加熱されているので、この熱が、押圧部36が接触して押圧しているワーク1の支持基板11及びフレキシブル基板12を介して硬化性樹脂Rに伝熱する。また、硬化部39も、予め第1の温度である100℃まで昇温されている。したがって、バックアップ部34である基台341及び保持部材342も100℃に加熱されているので、この熱が付着防止テープTを介して硬化性樹脂Rに伝熱する。硬化性樹脂Rは、加熱されつつも硬化は進まず、流動性が高まった状態でワーク1上に延展する。なお、このとき、さらに硬化部38も100℃まで加熱されており、硬化部37、39を補助して硬化性樹脂Rの硬化の速度を調整する。
【0048】
さらに、硬化制御部86により、硬化部37、38、39は、本実施形態の硬化性樹脂Rが熱硬化する第2の温度である170℃まで昇温するように制御される。これにより、図6(D)に示すように、ワーク1上に延展した硬化性樹脂Rの硬化が完了し、保護膜2が形成される(ステップS05)。このように、100℃での加熱は、硬化性樹脂Rの延展を補助するように硬化し、硬化部38、39、特に硬化部38は、樹脂側面の硬化を促進するように硬化してはみ出しを防止するものである。そのため、各硬化部は硬化性樹脂Rの昇温に合わせて昇温する必要があり、又はじめから硬化温度としておくのが有利である。ただし、硬化部37、39は、始めから硬化温度である170℃であると硬化性樹脂Rが延展しきる前に硬化してしまうので、そこまで昇温することは好ましくない。また、硬化部39は100℃に固定する必要はなく、硬化性樹脂Rの特性に合わせて適宜の固定温度としたり、昇温することができる。さらに、硬化部38は離間した側面からの加熱なので、始めから170℃の設定とすることが可能である。また、硬化部38、39はいずれか又は両方が硬化部37と組み合わせて使用できる。
【0049】
保護膜2が形成された後、押圧制御部85により、押圧部36を上昇させると共に、テープ吸着制御部83により、保持部材342による付着防止テープTの吸着保持を解除する(ステップS06)。押圧部36の上昇に伴い、押圧部36にワーク1ごと押圧されていた基板保持部33は、ばね部332aの付勢力により上昇する。また、基板保持部33の段差部331は、ワーク1を上方へと押し上げる。この時、ワーク1に形成された保護膜2には、付着防止テープTが密着しているので、付着防止テープTも上方へと引き上げられようとする。これは、付着防止テープTが、保護膜2に対して大気圧で押し付けられているために、保護膜2に貼り付いた状態となることによる。
【0050】
一方で、付着防止テープTには供給リール351のテンション機構によりテンションが作用しており、さらに、バックアップ部34の両脇にはテープ支持部TSが設けられているため、ワーク1に伴って付着防止テープTが引き上げられることが抑制されている。このため、図14に示すように、付着防止テープTには、テープ支持部TSを支点として上方に引き上げる力が加わるが、自身に掛かるテンション及びテープ支持部TSによりこの力に抗うため、ワーク1の上昇に伴い、付着防止テープTに貼り付いた保護膜2がその縁から剥がされることとなる。最終的には、図6(E)に示すように、付着防止テープTから保護膜2が完全に剥離される(ステップS07)。付着防止テープTは、保護膜2が剥離した後、回収リール352が回転駆動されて保持部材342分の長さが巻き取られ、保持部材342に新たな付着防止テープTが供給される(ステップS08)。
【0051】
最後に、図6(F)に示すように、反転部制御部81の制御により、XYZ移動機構312が、反転部31のアーム311を基板保持部33の上方に移動させ、保護膜2が形成されたワーク1を、支持基板11の側から保持する(ステップS09)。続いて、反転部31は、XYZ移動機構312により、ワーク1を基板保持部33からピックアップし、その上方から退避させ、アーム311を反転させる(ステップS10)。これにより、保護膜2が形成されたワーク1を得ることができる。なお、この後、図示しない搬送手段により、保護膜2が形成されたワーク1は、保護膜形成装置3から搬出される。
【0052】
[効果]
上記のような構成を有する第1実施形態の効果は、以下のとおりである。
(1)本実施形態の保護膜形成装置3は、基板の素子が搭載された面に液状の硬化性樹脂Rを供給する樹脂供給部32と、硬化性樹脂Rが供給された基板を保持する基板保持部33と、基板保持部33に対向して設けられるバックアップ部34と、基板保持部33とバックアップ部34との間に付着防止テープTを供給するテープ供給部35と、バックアップ部34に向けて基板を押圧し、付着防止テープTに基板に供給された硬化性樹脂Rを押し当て、硬化性樹脂Rを基板上に延展させる押圧部36と、基板上に延展した硬化性樹脂Rを硬化させる硬化部37と、バックアップ部34の周囲に設けられ、硬化性樹脂Rを硬化させる硬化部38と、を備える。
【0053】
これにより、素子に負担を掛けず、表面が平坦な保護膜を形成することができる。すなわち、ワーク1に搭載された素子には液状の硬化性樹脂Rが押し当てられるので、素子に加わる圧力が比較的低く、素子を損傷するおそれを少なくすることができる。また、素子の位置ずれや横転が生じるおそれを少なくできる。さらに、素子間の隙間に封止部材である硬化性樹脂Rが容易に充填できるので、封止が十分になされなくなるおそれを低減することができる。そして、液状の硬化性樹脂Rが、平坦なバックアップ部34の保持部材342に押し当てられて硬化されるので、ワーク1に搭載された素子の凹凸に影響されることなく、表面が平坦な保護膜2を形成することができる。
【0054】
(2)本実施形態では、バックアップ部34を挟む位置に、一対の硬化部38が設けられる。硬化部38は、ワーク1上に延展する硬化性樹脂Rが、保護膜2の形成領域や、ワーク1又は付着防止テープTの縁からはみ出すことを防止する。すなわち、硬化部38は、ワーク1の側面から硬化性樹脂Rを加熱することで、硬化性樹脂Rがはみ出す前に硬化させる。
【0055】
特に、保護膜形成領域に硬化性樹脂Rを延展させるとき、第1の温度で硬化性樹脂Rを加熱し、粘度を下げると、流動性が高まり延展の速度は速くなる。これによって、硬化性樹脂Rが保護膜形成領域の境界に到達するのも速くなる。つまり、保護膜2を形成する領域に硬化性樹脂Rを素早く延展させることができる。ただし、保護膜形成領域の外に硬化性樹脂Rがはみ出すはみだし量が多くなる虞も高まってしまう。しかし、硬化部38で、この保護膜形成領域の外側の温度を第2の温度へ高めることで、硬化性樹脂Rの硬化が進み、今度は粘度が高まる。これによって硬化性樹脂Rが保護膜形成領域からはみ出すことを抑制する。特に、保護膜形成領域の外側に近い部分の硬化性樹脂Rの流動性を下げるので、より確実にはみ出しを抑制できる。このような硬化部38の昇温は、硬化部38単独で、あるいは硬化部37や硬化部39と協働して行うことができる。これによって、さらに効果的にはみ出しを防止できる。また、硬化時間を短縮することができる。
【0056】
(3)バックアップ部34の内部には、硬化性樹脂Rを硬化させる硬化部39が設けられる。これにより、硬化性樹脂Rを上方からだけでなく下方からも加熱することができるので、硬化性樹脂Rの硬化時間を短縮させることができる。特に、保護膜形成領域に硬化性樹脂Rが延展し、その後硬化させる場合、硬化部39単独で、あるいは硬化部37や硬化部38と協働して、硬化部39の温度を上昇させて硬化性樹脂Rの硬化を促進させることができる。また、保護膜2の形成を繰り返すうちに、バックアップ部34は、硬化部37からの加熱により次第に昇温される。これにより、硬化性樹脂Rの硬化状態が不安定になるおそれがある。本実施形態においては、バックアップ部34の内部に設けられた硬化部39により、バックアップ部34を一定の温度に制御するようにできるので、硬化性樹脂Rの硬化状態を安定させることができる。また、基板保持部33が当接した際に、バックアップ部34の温度が下がることも防止できる。これによって、硬化性樹脂Rの硬化状態を安定させることができる。
【0057】
(4)基板保持面331aの高さから所定の間隔(所定の距離L離間した高さ)に位置する当接部333がバックアップ部34に当接することにより、基板保持面331aの高さを基準にして硬化性樹脂Rが延展する隙間を確保することができる。すなわち、ワーク1の素子が搭載された面と付着防止テープTの表面との間で、ワーク1の素子が搭載された面の高さを基準にして硬化性樹脂Rが延展する隙間を確保することができる。これにより、ワーク1の厚み(支持基板11の厚み+フレキシブル基板12の厚み)のばらつきに影響されず、保護膜2の膜厚を一定にすることができる。加えて、保護膜2の厚みとなる所定の隙間は、基板保持面331aの高さから当接部333の高さとして形成される。つまり、基板保持部33の形状によって保護膜2の厚みとなる所定の隙間は決まる。したがって、例えば押圧の程度により保護膜2の厚みとなる隙間の間隔を調整する場合と異なり、押圧力を精密に制御する必要が無いため、制御が容易である。また、
所定の間隔の隙間に硬化性樹脂Rを延展させて充填させたのちに硬化できるので、開放された状態で硬化性樹脂Rを塗布して硬化させる場合に比べて、保護膜2を形成すべき領域において膜厚のばらつきのない保護膜の形成を行うことができる。
【0058】
(5)本実施形態では、付着防止テープTがバックアップ部34とワーク1の間に介在するので、バックアップ部34に硬化性樹脂Rが直接付着することを防止することができる。これにより、保護膜2を引き剥がす際にその一部がバックアップ部34に残り、次回以降に保護膜2を形成する際の支障となることを防止することができる。さらに、バックアップ部34の保持部材342の表面に多少の凹凸が有ったとしても、付着防止テープTに吸収されて、硬化性樹脂Rの面に影響することも防止することができる。つまり、仮に保持部材342の表面に異物が付着したとしても、異物によって生じる凹凸を付着防止テープTによって吸収し、保護膜表面に転写されてしまうことを抑制できる。さらには、保持部材342の表面粗さを極端に小さくする必要もないので、保持部材342を安価に準備することができる。保持部材342の付着防止テープTを吸引保持するための開口を設けた場合でも、開口が転写されることを防止することができる。このことは、保持部材342を多孔質部材とした場合の表面に生じる微細な開口の影響を抑制するのも同じである。
【0059】
(6)硬化制御部86は、硬化性樹脂Rを硬化させるために、硬化部37を制御する。特に、硬化性樹脂Rを硬化させる速度を制御する。より具体的には、硬化性樹脂Rが基板上に延展する間に、硬化部37が硬化性樹脂Rを硬化させる速度を上げるように制御する。本実施形態においては、予め第1の温度まで昇温しておいた硬化部37を、第1の温度よりも高い第2の温度になるように制御して、硬化性樹脂Rを硬化させる速度(硬化速度)を2段階で制御することで、硬化性樹脂Rをワーク1上に十分に延展させた後に硬化させて、保護膜2を形成することができる。このように、硬化制御部86が硬化性樹脂Rの硬化速度を2段階で制御するので、当接部333によって形成されたワーク1と付着防止テープTとの隙間に硬化性樹脂Rが素早くかつ確実に延展すると共に、硬化性樹脂Rの硬化が完了するまでの時間を短縮することができる。なお、硬化性樹脂Rの硬化速度の制御について、上記の2段階制御に限られず、細かく回数を分けたり、連続的に変化させてもよく、保護膜形成領域を内部や外縁など複数のエリアに分けて制御をしてもよい。さらに、これらを組み合わせてより精密な硬化速度の制御を行ってもよい。
【0060】
(7)硬化制御部86により、硬化部37は、第1の温度である待機温度として、例えば120℃まで昇温され、硬化部38、39は、例えば100℃まで昇温されているように、予め硬化部37を昇温することで、押圧部36を予熱しておくことができ、硬化性樹脂Rを押圧する際に、あらためて加熱することなく、硬化性樹脂Rの延展を促進させる温度にできる。
【0061】
(8)基板保持部33は、基板の硬化性樹脂Rが供給された面を下方に向けて基板を保持する。これにより、ワーク1に供給された液状の硬化性樹脂Rは、重力により下方に伸び、押圧の初期段階で付着防止テープTと接触する面積が小さくなり、徐々に所定の間隔になるように押し広げられて延展するので、硬化性樹脂Rがワーク1上に延展する際に気泡が混入するおそれを低減することができる。また、このような気泡が混入することを防ぐために、減圧空間内での硬化性樹脂Rの延展を行うことも考えられるが、その必要もなく、真空チャンバや排気可能なキャビティなどの大掛かりな装置を必要としないので、その分のコストの上昇を抑えることができる。なお、本実施形態のワーク1は、押圧の際、周囲を部材に囲われて密閉されることはなく、大気中に解放された状態で上方から押圧される。これにより、ワーク1と付着防止テープTとの間に存在する気体は、硬化性樹脂Rが延展するのに伴い容易に外側へ押し出されるので、硬化性樹脂Rが延展する際に気泡を巻き込むおそれを低減することができる。
【0062】
(9)樹脂供給部32は、基板の上方から硬化性樹脂Rを基板に供給し、硬化性樹脂Rが供給された基板を反転させ、基板の硬化性樹脂Rが供給された面を下方に向けた状態で、基板を基板保持部33に受け渡す反転部31を更に備える。これにより、硬化性樹脂Rの供給を上方から行うことができるので、下方から行う場合に比較して、供給量の調整が容易である。例えば、下方から供給する場合には、硬化性樹脂Rの粘度によっては重力により樹脂供給部32のノズル32a側に硬化性樹脂Rが引っ張られ、供給量が意図せず少なくなるおそれがある。
【0063】
(10)バックアップ部34は、テンションが掛けられた付着防止テープTを吸着保持する保持部材342を更に備える。これにより、付着防止テープTがシワのない状態で全面に渡って吸着保持されるので、硬化性樹脂Rが押し広げられた際や硬化する際に付着防止テープTが収縮してしまうような状況であっても、付着防止テープTにシワが入ることを低減することができる。したがって、保護膜2にこのシワが転写されることを低減することができる。
【0064】
(11)保持部材342は、通気性多孔質である。そのため、吸引のための表面の開口は微小であり、開口による表面の凹凸が付着防止テープTを介して保護膜2に転写されるおそれが少ない。さらに、保持部材342全面で均等に付着防止テープTを吸着保持できるので、よりシワのない状態を維持することができる。
【0065】
(12)バックアップ部34のX方向両脇において、付着防止テープTの上方にはテープ支持部TSが設けられている。これにより、ワーク1に形成された保護膜2に密着した付着防止テープTを保護膜2から引き剥がすことが容易とできる。これは、テープ支持部TSにより付着防止テープTが押さえられるので、保護膜2の外周側から付着防止テープTを引き剥がす様になるからである。
【0066】
(13)硬化性樹脂Rは、熱硬化性樹脂であり、硬化部37は、ヒータである。これにより、硬化性樹脂Rを加熱する温度を調節することによって、硬化状態を容易に調整することができる。
【0067】
(14)硬化部37は、押圧部36の内部に設けられる。これにより、装置の小型化が可能となる。
【0068】
(B)第2実施形態
以下、本件発明の第2実施形態について、説明する。
第1実施形態において、硬化性樹脂Rを熱により硬化する熱硬化性樹脂としたが、第2実施形態においては、硬化性樹脂Rを光により硬化する光硬化性樹脂とする。これに対応して、硬化部37は、ヒータでなく、光照射装置となる。例えば、光硬化性樹脂は、紫外線硬化樹脂とすることができ、光は紫外光とすることができる。この場合、光照射装置は紫外線光源である。紫外線光源は、紫外光を照射することのできるLEDやランプを用いることができる。光硬化性樹脂は、樹脂が硬化する波長の光を受けると硬化を開始する。光硬化性樹脂の硬化は徐々に進行する。つまり、光硬化性樹脂の粘度が変化する。そして、照射される光の強度、時間によって硬化の進行速度が変化する。硬化制御部86は、硬化部37が照射する光の強度や照射時間を制御するものとし、硬化性樹脂Rが延展する際に光の強度や照射時間を変えることにより照射する光のエネルギ量を変え、硬化性樹脂Rが保護膜形成領域に延展するのに最適となる粘度となるようにする。
【0069】
より具体的には、硬化性樹脂Rの粘度が、初期状態において延展するのに適したものである場合には、所定の領域である保護膜形成領域全体に硬化性樹脂Rが延展した後で光の照射を開始して、硬化性樹脂Rを硬化させる。硬化性樹脂Rの粘度が小さく、初期状態において延展するのに適したものでない場合には、延展を開始する状態で、弱い強度の光の照射を行ったり、短い時間の光の照射を行ったり、遠くから光の照射を行ったりして、して、硬化性樹脂Rの硬化を進行させることで、必要な粘度に調整する。この時に硬化性樹脂Rに照射する光のエネルギ量を第1のエネルギ量とする。そして、硬化性樹脂Rの延展が保護膜形成領域の外縁あるいはその近傍に到達したら硬化性樹脂Rが更に硬化するように、必要な強度と時間の光の照射を行う。硬化性樹脂Rが保護膜形成領域に行きわたり、延展が終了したら硬化性樹脂Rが完全に硬化する強度、時間の光照射を行って、硬化性樹脂Rの硬化を完了させる。この硬化性樹脂Rを完全に硬化させる時に照射する光のエネルギ量を第2のエネルギ量とする。この第2のエネルギ量は第1のエネルギ量よりも大きい。このようにすることで、延展時間を短くしたり、保護膜形成領域からのはみ出しを抑制したり、硬化時間を短縮したりすることができる。また、光照射装置を硬化部38、39として設けてもよい。上述の硬化部38、39と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、硬化部37からの光の照射は、押圧部36、ワーク1の基板を介して硬化性樹脂Rに対して行われる。したがって、硬化部37、押圧部36、基板の光の経路は、少なくとも光硬化性樹脂Rを硬化させる波長の光を透過する素材である。
【0071】
遠く離間している状態から基板保持部33に向かって光の照射をすれば、樹脂の押圧を開始する際に延展するに適切な粘度に硬化性樹脂Rの粘度を調整することができる。この時、光の強度、時間に加えて、距離によって到達する強度は変わるので、硬化部の高さ位置によっても粘度は調整できる。これにより、延展時間を短くしたり、保護膜形成領域からのはみ出しを抑制できる。
【0072】
第2実施形態において、硬化部37は、光照射を照射するUV光源などの照射部を複数有することができる。その場合、第1実施形態のヒータ同様に、照射部を、図11の411に示すようなマトリクス状(行列、千鳥)、あるいは枠状に同心に設けることが好ましい。複数の照射部を設けた場合、個々の照射部を必要に応じて個別に、あるいはグループとして照射の制御を行うとよい。例えば、硬化性樹脂Rの延展時に、部分的に照射するようにし、粘度が高まった部分と元の粘度の部分とが混在するようにして、延展の速度や広がりを制御する。この時、所定時間経過後に、先の照射とは違う照射部による照射を行い、先に光照射されなかった部分の粘度を時間差で高めるようにしてもよい。例えば、複数の照射部を全照射し、封止すべき保護膜形成領域全体に延展しつつある硬化性樹脂Rの粘度を全体的に高めるようにしてもよい。また、この時、部分的に照射強度を変えてもよい。例えば、ワーク1の保護膜形成領域の外縁に硬化性樹脂Rが延展して到達した時やその直前に、保護膜形成領域の外縁にのみ照射を行い、あるいは照射強度を強くして(エネルギ量(照度×時間)を多くする)、はみ出しを防止する。このような照射の制御は、第1実施形態のヒータ同様に行うことができる(図12参照)。照射のタイミングは画像センサ、レーザセンサ等で樹脂を検出してもよいし、予め実験等で求めてもよい。このように複数の照射部を制御することで、ボイドの排出を阻害せず、はみ出しを抑制できる。
なお、UV光源などの照射部に導光レンズや光源を円筒状の反射板を設けることで、光強度や照射範囲をコントロールしてもよい。
【0073】
(C)他の実施形態
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0074】
(1)上記実施形態において、樹脂供給部32は、ワーク1の上方から硬化性樹脂Rを供給するものとしたが、これに限られない。例えば、硬化性樹脂Rが重力により垂れない程度の粘度である場合などで、ノズル32aから吐出した硬化性樹脂Rが垂れてノズル32aに付着するなどして供給する硬化性樹脂Rの量が少なくなるなどの影響がない場合に、ワーク1の下方から硬化性樹脂Rを供給してもよい。この場合、反転部31は、初めからワーク1の発光素子13が搭載される側の面が下方を向くように、ワーク1を保持する。反転部31は、下方を向く面に硬化性樹脂Rが供給されたワーク1をそのままの状態で基板保持部33に受け渡すことができる。したがって、反転する機構を設ける必要がなく、反転部31を簡素化できる。さらに、硬化性樹脂Rが供給されたワーク1を反転することがないので、遠心力により供給された硬化性樹脂Rの状態が影響を受けることがない。また、反転のための時間が不要なため、タクトタイムを短くできる。また、反転のためのスペースが不要なため、基板保持部33と押圧部36との間隔を狭くすることができる。これにより、装置を小型化できる上、押圧部36の移動時間を短くでき、タクトタイムを短くできる。また、反転部31のアーム311は、α回転する代わりにθ回転を行うことにより、硬化性樹脂Rが供給された面を下方に向けた状態で、ワーク1を基板保持部33に受け渡すこともできる。この場合には、θ回転で受け渡しのための水平移動を行うことができるので、移動機構を簡素化できる。
【0075】
(2)上記実施形態において、保持部材342を無数の孔がランダムに配置される多孔質の部材としたが、これに限られない。付着防止テープTを保持できる通気性があれば良く、また、通気性を確保するための開口が付着防止テープTを超えて硬化性樹脂Rに影響しないような大きさ、形状であればよい。例えば、保持部材342を無数の孔が設けられた金属板としてもよい。
【0076】
(3)上記実施形態において、保持部材342を介して付着防止テープTを吸着保持するようにしているが、硬化性樹脂Rが押し広げられた際や硬化する際に付着防止テープTが収縮してしまうような状況でない場合には、付着防止テープTを吸着保持しなくてもよい。例えば、付着防止テープの厚さが厚く変形や収縮しにくい場合や付着防止テープの素材によって変形や収縮がしにくい場合、硬化のための加熱温度が低く付着防止テープの変形や収縮がしにくい場合には、付着防止テープTを吸着保持しなくてもよい。
【0077】
(4)上記実施形態において、バックアップ部34をY方向に挟む位置に一対の硬化部38を設けたが、これに限られない。ワーク1上に延展する硬化性樹脂Rを側面から加熱し、硬化性樹脂Rを硬化させてワーク1からはみ出すことを防止できる位置であれば、バックアップ部34の周囲など、どこに設けられてもよい。また、硬化部38の数も特に限定されない。さらに、第3の硬化部である硬化部39は、本発明において必須のものではなく、硬化部39を具備しない態様も、本発明に包含される。
【0078】
(5)上記実施形態において、脚部332は、基板保持部33の下面から延びてなる部材であり、下端にばね部332aを備えるものとしたが、これに限られない。基板保持部33がバックアップ部34に対して離間して支持され、バックアップ部34に対して接離可能に設けられるのであればよく、ばね部332aは脚部332以外の基板保持部33のどの場所でも設けることができる。また、ばね部332aは、ゴム等の弾性部材でも構わない。また、基板保持部33を支持して上下動するエアシリンダでも構わない。基板保持部33が、押圧部36によって押されて、バックアップ部34に近づくように移動する時はその移動を妨げないようにエア圧を制御する。このエアシリンダは、ばね部332aに代わって、保護膜2を付着防止テープTから剥離するために、基板保持部33を上昇させる駆動部として機能する。
【0079】
(6)上記実施形態では、基板保持部33の下面の当接部333が保持部材342上にかけ渡されて保持された付着防止テープTに当接して、必要な隙間を形成した。しかし、図9に示すように、基台341の上面341aに立設される脚部343を設け、その上部が押圧部36により押圧された基板保持部33の脚部332に当接することにより、上記実施形態と同様の所定の隙間を確保するものであってもよい。また、脚部332の代わりに、当接部333に当接してもよい。このように基板保持部33とバックアップ部34が当接し、基板保持部33の下降が止められる。保護膜2の高さとなるワーク1と付着防止テープTとの隙間の距離を、立設される脚部343とこの脚部343に当接する基板保持部33とで設定する。したがって、基板保持部33とバックアップ部34の当接が行われる部分が、当接部に含まれる。すなわち、この実施形態では、脚部332と基台341に立設される脚部343との組み合わせや、当接部333と基台341に立設される脚部343との組み合わせを当接部と考える。したがって、基板保持部33の一部である脚部332又は当接部333とバックアップ部34の一部である脚部343とが当接した際に、これらの組み合わせである当接部により、所定の隙間が形成される。この場合、基台341に立設される脚部343が基板保持部33に当接する位置で保護膜2の厚みを決定できる。つまり、立設される脚部343の基台341からこれに当接する基板保持部33までの距離で決定できるので、保護膜2の厚みを必要に応じたものにするのに基台341に立設される脚部343を交換するだけで済み、保護膜2の厚みの変更を容易とできる。
【0080】
(7)上記実施形態において、必ずしも当接部333の当接により必要な隙間を形成する必要はない。押圧部36の移動を制御して、保護膜2の高さとなるワーク1と付着防止テープTとの隙間の距離を設定することができる。この場合、当接部333や脚部343を準備する必要がない。よって、モジュールによって保護膜2の厚さを設定することが容易となる。
【0081】
(8)上記実施形態において、ワーク1のフレキシブル基板12に搭載される素子を発光素子13としたが、これに限らず、どのような素子であってもよい。例えば、演算素子、記憶素子、撮像素子、抵抗やキャパシタなどの電子部品であってもよい。モジュールとしては、これらの素子を組み合わせたものとすることもできる。また、支持基板11とフレキシブル基板12とを一体の基板としてもよい。
【0082】
(9)上記実施形態において、押圧部36は、ワーク1に当接する側の面の中央部分に、図示しない空気圧回路に接続される吸着孔を備えてもよい。この空気圧回路が生じせしめる負圧によってワーク1を押圧部36の平坦面に吸着することにより、加熱によるワーク1の熱変形を抑制することができる。ワーク1は、その材質にかかわらず、加熱されると熱変形する。特に、ワーク1の厚みが薄い場合にはそれが顕著になる。例えば、ワーク1の外周部分が挟持されていたとしても、中央部分が何ら支持されずフリーな状態であると、熱変形しやすい。一方で、この実施形態においては、ワーク1の中央部分を押圧部36で吸引し保持することで変形を抑えることができる。
【0083】
(10)上記実施形態において、硬化部37は、押圧部36の内部に設けられるものとしたが、これに限られない。硬化部37を押圧部36とは別体として昇降可能に設けてもよい。例えば、図10に示すように、押圧部36の上方に硬化部37を設けて、硬化部37を押圧部36に接離させることで、上記実施形態と同様に、押圧部36越しにワーク1を加熱したり光を照射したりして、硬化性樹脂Rを硬化させることができる。また、図13に示すように、押圧部36をワーク1の外周部分を押圧する一対のレール状あるいは四角い枠状の部材として、その内部を硬化部37がスライドするように昇降可能としてワーク1を直接加熱し、硬化性樹脂Rを硬化させることができる。
【0084】
(11)硬化部37を押圧部36とは別体とした場合、硬化部37が押圧部36に接触した時、接触中、又は接触するまでの間に硬化部37の温度を変化させるように制御してもよい。このように加熱する温度を変化させることで硬化性樹脂Rを硬化させる速度を変化させ、硬化性樹脂Rの延展と硬化を最適化することができる。
例えば、硬化制御部86は、予め硬化部37を熱硬化性の硬化性樹脂Rの硬化温度に制御しておき、押圧部36がワーク1を押圧した状態で、硬化部37を次第にワーク1に近づけていくことで、ワーク1が加熱される温度を徐々に変化するように制御してもよい。つまり、硬化部37を次第にワーク1に近づけることになり、徐々にワーク1を加熱することができる。また、硬化部37を押圧部36に近づける移動の動作を間欠的に行うことで、段階的にワーク1を加熱することができる。このようにすることで、硬化性樹脂Rの延展時の流動性を制御し、保護膜形成領域外にはみ出そうとする場合にはそのはみ出しを抑制するように硬化性樹脂Rを硬化することができる。また、延展と硬化を同時に行うことができるので、硬化性樹脂Rの完全硬化までの時間を短縮できる。このような制御は、上述の加熱を、光の照射によるものに置き換えても適用できる。
【0085】
(11)上記実施形態において、押圧部36は、ワーク1全体を押圧する平坦面を有するものとした。しかし、押圧部36の形状はこれに限られず、ワーク1を押圧して基板保持部33と挟持できればよい。例えば、図13に示すように、押圧部36をワーク1の外周部分を押圧する一対のレール状あるいは四角い枠状の部材として、その内部の開口部を硬化部37がスライドするように昇降可能としてもよい。この場合、硬化部37は押圧部36を介さずに、ワーク1に硬化するための熱や光を直接与えることができる。これにより、より効率よく硬化することができる。したがって、硬化性樹脂Rの完全硬化までの時間を短縮できる。また、より精度良く硬化性樹脂Rの延展時の流動性を制御し、保護膜形成領域外にはみ出そうとする場合にはそのはみ出しをより抑制するように硬化性樹脂Rを硬化することができる。さらに、第2実施形態に記載した硬化に光を用いる場合、押圧部36を透光性部材とする必要がない。
【0086】
(12)上記実施形態において、下方に設けられたバックアップ部34に対して、上方に設けられた押圧部36により、基板保持部33に保持されたワーク1を押圧するようにしたが、これに限られない。例えば、上方に設けられたバックアップ部34に対して、下方に設けられた押圧部36により、基板保持部33に保持されたワーク1を押圧するようにしてもよい。この場合、バックアップ部34は、直接的にワーク1を押圧するのではなく、基板保持部33を下方から押圧すればよい。また、側方に設けられたバックアップ部34に対して、側方に設けられた押圧部36により、基板保持部33に保持されたワーク1を押圧するようにしてもよい。
【0087】
(13)第2実施形態における硬化部37を含む押圧部36が遠く離間している状態から基板保持部33に向かって押圧部36が移動するときに光の照射を開始することを、加熱に置き換えることもできる。いずれも第2実施形態同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ワーク
11 支持基板
12 フレキシブル基板
13 発光素子
2 保護膜
3 保護膜形成装置
31 反転部
311 アーム
312 XYZ移動機構
32 樹脂供給部
33 基板保持部
331 段差部
331a 基板保持面
332 脚部
332a ばね部
333 当接部
34 バックアップ部
341 基台
341a 基台341の上面
342 保持部材
342a 保持部材342の上面
343 脚部
35 テープ供給部
351 供給リール
352 回収リール
36 押圧部
37、38、39 硬化部
401 ベース
402 接触板
411 ヒータ又はUV光源
412 ヒータ又はUV光源OFF
413 ヒータ又はUV光源ON
8 制御装置
81 反転部制御部
82 樹脂供給制御部
83 テープ吸着制御部
84 テープ供給量制御部
85 押圧制御部
86 硬化制御部
87 記憶部
88 設定部
89 入出力制御部
R 硬化性樹脂
T 付着防止テープ
TS テープ支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14