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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035917
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B43K3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131442
(22)【出願日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2021141590
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特開2013-35223号公報に開示されている筆記具は、溝部が、軸筒の成型上所謂アンダーカットになってしまい、ピンをキャビティから引き抜く際に、溝部を形作るためのピン外壁面の突起が、軸筒内壁面と当接し、軸筒内壁面を削ってしまう恐れがあり、ひいては、所望の寸法で軸筒を成型できず、取付部材を所望の強度で取り付けることができないという問題があった。本発明は、軸筒内部に取付部材を所望の強度で取り付けて配置することができる筆記具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、取付部材の外壁面に、軸筒内壁面に設けられた周状の溝部に挿入可能な周状突起が設けられ、軸筒内壁面のうち、溝部を形成し周状突起と前後方向で当接する側壁面と、溝部を形成する底面との連設部が、曲面である筆記具を要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内部に取付部材が配置される筆記具であって、取付部材の外壁面に、軸筒内壁面に設けられた周状の溝部に挿入可能な周状突起が設けられ、軸筒内壁面のうち、溝部を形成し周状突起と前後方向で当接する側壁面と、溝部を形成する底面との連設部が、曲面である筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の内壁面を形作るピンが引き抜かれる開口部に対して遠い方の前記連接部が曲面である請求項1に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内部に取付部材が配置される筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸筒内部に取付部材が配置された筆記具が開示されている。例えば特許文献1(特開2013-35223号公報)には、軸筒内部に、取付部材としての区画部材が配置された筆記具が開示されている。特許文献1に開示されている筆記具は、区画部材の外壁面に、軸筒内壁面に設けられた周状の溝部に挿入可能な周状突起が設けられている。溝部に周状突起が挿入されることで、軸筒内部において区画部材の前後動が規制された状態で配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-35223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筆記具を構成する軸筒などの部品は、樹脂を金型で成型した樹脂成型品を用いるのが一般的である。軸筒のような筒状の部材であれば円筒状の空洞が設けられたキャビティに、キャビティの空洞より小径の円柱状のピンが、挿入及び/又は配置される。キャビティとピンとの間に材料となる樹脂を流し込み、樹脂が固まりピンを引き抜くと、樹脂が所望の形状の成型品となり筒状の部材とすることができる。
【0005】
特許文献1に開示されている筆記具は、溝部が、軸筒の成型上所謂アンダーカットになってしまう。溝部は径方向に沿った側壁面と底面とが連なっているところ、ピンをキャビティから引き抜く際に、溝部を形作るためのピン外壁面の突起が、軸筒内壁面と当接し、軸筒内壁面を削ってしまう恐れがあり、ひいては、所望の寸法で軸筒を成型できず、取付部材を所望の強度で取り付けることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、軸筒内部に取付部材を所望の強度で取り付けて配置することができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸筒内部に取付部材が配置される筆記具であって、取付部材の外壁面に、軸筒内壁面に設けられた周状の溝部に挿入可能な周状突起が設けられ、軸筒内壁面のうち、溝部を形成し周状突起と前後方向で当接する側壁面と、溝部を形成する底面との連設部が、曲面である筆記具を第1の要旨とする。また、前記軸筒の内壁面を形作るピンが引き抜かれる開口部に対して遠い方の前記連接部が曲面である筆記具を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の筆記具は、溝部を形成する側壁面と底面との連設部に、曲面で連なった曲面部が設けられていることで、内壁面側を形作るピンを引き抜く際に、ピンの外壁面における溝部を形成する部分と軸筒内壁面との接触が和らぎ、軸筒内壁面が削られてしまうのを抑制することができる。よって、軸筒を所望の寸法範囲内で成型しやすくなり、取付部材を所望の強度で取り付けることができるものである。また第2の要旨にあっては、ピンを引き抜く際に、開口部に対して近い方の連接部を形作る突起部分の外壁面が、軸筒内壁面と当接しつつ引き抜かれると、軸筒内壁面は一度径方向外側に広げられ、その後元の寸法に戻ろうとする。この時、開口部に対して遠い方の連接部を形作る突起部分の外壁面が曲面であることで、軸筒が径方向内側に戻る際に角になっている部分と当接せずに済むため、軸筒内壁面が削られてしまうのをより抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ボールペン1の外観図
図2図1のA‐A’線断面矢視図
図3】筆記具本体3の外観図
図4】(a)後軸2bの外観図、(b)図4(a)のB‐B’線断面矢視図
図5】後軸2bの外観斜視図
図6】尾栓7の外観斜視図
図7】尾栓7を後端開口部2bbに取り付けた状態の断面図
図8】緩衝材4の外観斜視図
図9】区画部材5の外観斜視図
図10】区画部材5の縦断面図
図11】後軸2b縦断面の前方拡大図
図12図11のC部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ボールペン、シャープペンシル、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具として実施することができる。以降、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン1の外観図、図2図1のA‐A’線断面矢視図である。ボールペン1は、中空筒状の軸筒2内部に、3本の筆記具本体3、緩衝部材4、区画部材5、弾発部材としてのコイルスプリング6が配置されている。
【0012】
図3は、筆記具本体3の外観図である。ボールペン1は、軸筒2内部に筆記具本体3が3本配置された、多芯の出没式筆記具である。筆記具本体3は、前端に筆記部としてのボールペンチップ3aaが配置されたボールペンリフィル3aの後端に、作動子3ba又はクリップ用作動子3bbが配置され構成されている。3本の筆記具本体3のうち、2本はボールペンリフィル3aに作動子3baが(図3(a))、残り1本はボールペンリフィル3aにクリップ用作動子3bbが配置されている(図3(b))。クリップ用作動子3bbにはクリップ3bcが取り付けられる。
【0013】
軸筒2は、前軸2aと後軸2bとにより構成されている。前軸2aの後方が後軸2bの前端開口端部から挿入される。前軸2aの後方外壁面と後軸2bの前方内壁面には、それぞれ螺子部が設けられており、前軸2aと後軸2bとが螺子螺合により結合可能となっている。当該螺子螺合を解除することで、筆記具本体3を簡単に配置、交換することができる。
【0014】
前軸2aは所謂2色成型品であり、前軸2aの径方向内側に位置する1次側がポリプロピレン樹脂、前軸2aの径方向外側に位置する2次側が熱可塑性エラストマーからなる部材である。前軸2aの外壁面には梨地加工が施されており、使用者が手で把持しやすくなるグリップとして機能する。
【0015】
前軸2aは、本実施形態のように2色成型品以外にも、公知の方法で所望の形状を構成することができる。グリップを別部材とし、前軸2aの外壁面に被覆する構成とすることもできる。
【0016】
前軸2aの材質としては他に、成形性や耐久性などを考慮して、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、成形方法も本実施形態のような2色成形に限られず、公知の様々な方法を適宜選択することができる。
【0017】
図4(a)は後軸2bの外観図、図4(b)は図4(a)のB‐B’線断面矢視図、図5は後軸2bの外観斜視図である。後軸2bの後方側壁には、前後方向に延び、後軸2bの内部と外部とに貫通した窓孔2baが設けられている。窓孔2baは、筆記具本体3と同じ数設けられ、本実施形態においては3箇所に設けられている。窓孔2baを介して、作動子3ba及びクリップ用作動子3bbの一部が、軸筒2の外部に露出している。軸筒2の外部に露出したクリップ用作動子3bbの当該一部に、クリップ3bcを取り付けることができる。軸筒2の外部に露出した作動子3baの当該一部及びクリップ3bcを、窓穴2baに沿って後方から前方へ操作すると、連動して筆記具本体3が軸筒2内部を前進する。
【0018】
筆記具本体3は、コイルスプリング6により後方に付勢されている。コイルスプリング6の前端は、軸筒2内部で前後動不可能に配置された区画部材5の後端面と当接している。コイルスプリング6の後端は、作動子3ba及びクリップ用作動子3bbの前方に設けられて段部と当接している。コイルスプリング6は自然状態から縮んだ状態で区画部材5と、作動子3ba及びクリップ用作動子3bbとにより挟持され、筆記具本体3を常時後方に付勢している。
【0019】
作動子3ba(又はクリップ3bc)を操作して、筆記具本体3を前進させると、作動子3ba(又はクリップ用作動子3bb)の肩部3baa(又は肩部3bba)が、後軸2b内部に設けられた、前後方向に延びる被挟持突起2bdの前端部に係止し、ボールペンチップ3aaが前軸2aの前端開口部からの突出状態となる。肩部3baa及び肩部3bbaは、円筒状の後軸2b内において弦方向に突出しており、1つの筆記具本体3に対して周方向に隣り合う被挟持突起2bdの前端部に係止することとなる。
【0020】
何れかの筆記具本体3の突出状態で、没入状態にある他の作動子3ba(又はクリップ3bc)を操作し前進させると、突出状態にある筆記具本体3の作動子3ba(又はクリップ3bc)と、前進した作動子3ba(又はクリップ3bc)とが当接する。そして、突出状態にある筆記具本体3の作動子3ba(又はクリップ3bc)と、被挟持突起3bdとの係止が解除され、突出状態にあった筆記具本体3のボールペンチップ3aaが軸筒2内部に没入する。以上の一連の操作により、使用者は任意の筆記具本体3を選択し、ボールペン1を筆記可能に使用することができる。
【0021】
図6は尾栓7の外観斜視図である。後軸2bの後端には、軸筒2後端開口部としての後端開口部2bbが設けられている。後端開口部2bbから軸筒2内部に、各筆記具本体3を配置することができる。後端開口部2bbは、尾栓7が取り付けられることで閉塞する。
【0022】
後軸2bには、後端開口部2bbを形成する縁部と、窓孔2baを形成する縁部とが連接して形成された切り欠き部2bcが設けられている。切り欠き部2bcが設けられていることで、クリップ用作動子3bbにクリップ3bcを取り付けた状態の筆記具本体3を後端開口部2bbからスムーズに挿入することができる。
【0023】
尾栓7は有底筒状の部材である。尾栓7の前方には、挿入部7aが設けられている。挿入部7aは、尾栓7のうち、後軸2bの後端開口部2bbから挿入される部分である。挿入部7aの外壁面には窓孔突起7abが2か所に設けられている。挿入部7aが後端開口部2bbに挿入されると、最終的に各窓孔突起7abが各窓孔2baを構成する縁部の後端面に係止し、尾栓7aの後方への脱落が防止されて取り付けられる。
【0024】
挿入部7aには挟持突起7aaが設けられている。挟持突起7aaは、挿入部7aのうち、前後方向前方に延びる突起であり、2本設けられている。
【0025】
図7は、尾栓7を後端開口部2bbに取り付けた状態の断面図である。図面奥側に尾栓7が位置する、前方から見た構図となっている。後軸2b内壁面に、切り欠き部2bcと連接した窓孔2baを形成する縁部を周方向に跨いで、挟持突起7aaにより周方向に挟持される被挟持突起が設けられている。被挟持突起2bdは、後軸2b内壁面から突出した前後方向に延びる突起である。被挟持突起2bdの径方向内側先端部分はそれぞれ二又に分かれている。
【0026】
挿入部7aが後端開口部2bbから挿入されると、挟持突起7aaが被挟持突起2bdを周方向に挟持する。被挟持突起2bdの径方向内側先端部分の二又のうち、切り欠き部2bc及び切り欠き部2bcと連接した窓孔2baを形成する縁部に近い一方が、挟持突起7aaの周方向内側の側壁によって挟持される。切り欠き部2bcを形成する縁部は、後軸2bの成形後に周方向に離間して開口しやすくなるところ、被挟持突起2bdは、切り欠き部2bcと連接した窓孔2ba縁部を周方向に跨いで2本設けられている。これにより、尾栓7を取り付けると、当該窓孔2baを形成する縁部が周方向に開くのを防ぐことができ、尾栓7を後端開口部2bbに安定して取り付けることができ好ましい。当該窓孔2baを形成する縁部が周方向に開こうとすると、挟持突起7aaが被挟持突起2bdを挟持する周方向の力が強くなり好ましい。
【0027】
本実施形態のように、肩部3baを有し円筒状の後軸2bの弦方向に幅広なクリップ用作動子3bbを用いる場合、後軸2b内において、クリップ用作動子3bbが配置された筆記具本体3が収容され、かつ、前後動するための空間としては、周方向及び弦方向に広さを要するため、挟持突起7aaによって窓孔2baを形成する縁部が周方向に開くのを防ぐことができ好ましい。
【0028】
また、挟持突起7aaの前端が、挿入部7aのうち最も前方に位置し、挿入部7aの前端となっている。これにより、尾栓7を後端開口部2bbに取り付ける際に、挿入部7aののうち挟持突起7aaを、軸筒2に最も先に接触させることができ、取り付け作業を開始するのとほぼ同時に被挟持突起2bdを挟持させることができる。よって、取り付け作業の開始直後に取り付けの強度が発生するため、尾栓7を後端開口部2bbに安定して取り付けることができ好ましい。
【0029】
図8は、緩衝部材4の外観斜視図である。緩衝部材4はブチルゴムからなる軟質な部材である。緩衝部材4は、後方に延びる挿入部4aと、前方に位置する緩衝部4bとで構成されている。緩衝部4bの後方端面から挿入部4aが後方に延びている。尾栓7の挿入部7aの径方向内側には、緩衝部材4を取り付ける際に挿入部4aを挿入するための空間が設けられている。挿入部4aの外壁には前後方向に亘って径方向内側に凹んだ溝部4aaが設けられている。挿入部4aが挿入される空間を形成している、尾栓7の挿入部7aの内壁面には、前後方向に延びる内部リブ7acが設けられている。溝部4aaが内部リブ7acに沿うことで、緩衝部材4の周方向の位置決めをすることができ、組み立て性が向上し好ましい。
【0030】
各筆記具本体3を、突出状態から没入状態にする際に、筆記具本体3が軸筒2内部を後方に移動すると、作動子3ba又はクリップ用作動子3bbの後端が、緩衝部材4の前端である緩衝部4bと当接する。緩衝部材4が軟質であるため、作動子3ba又はクリップ用作動子3bbとの衝突音が小さくなり好ましい。
【0031】
図9は区画部材5の外観斜視図、図10は区画部材5の縦断面図、図11は後軸2b縦断面の前方拡大図、図12図11のC部分拡大図である。区画部材5は、軸筒2内部に取り付けられる部材である。本実施形態では後軸2bの内部に取り付けられている。
【0032】
区画部材5は、後方に延びる区画突起5aと、前方に延びる筒部5bとで構成されている。区画突起5aは、筒部5bの後方端面から後方に延び、径方向先端が三又に分かれた突起である。筒部5bには、前後方向に貫通し、ボールペンリフィル3aが挿通するための貫通孔5baが設けられている。本実施形態では、筆記具本体3の数に合わせて3か所に貫通孔5baが設けられている。筒部5bの後方端面であって、各貫通孔5baの開口部近傍に、各コイルスプリング6の前端が当接する。各ボールペンリフィル3aが軸筒2内部を前後動するに際し、貫通孔5baの内壁及び、区画突起5aの側壁によって、径方向に互いに干渉しなくなる。よって、各ボールペンリフィル3aの前後動がよりスムーズになり好ましい。
【0033】
筒部5bの外壁には、前後方向に亘って径方向内側に凹んだ溝部5bbが、周方向等間隔に3か所設けられている。区画部材5を後軸2bの内部に取り付ける際に、溝部5bbが後軸2b内壁面であって前後方向に延びるリブ2beに沿って取り付けられることで、区画部材5の周方向の位置決めをすることができ、組み立て性が向上し好ましい。
【0034】
筒部5bの外壁面には径方向に鍔状に突出した周状突起5bcが設けられている。本実施形態においては、筒部5bの後方端面が周状突起5bcの側壁のうち後方端面を構成する位置に周状突起5bcが設けられている。
【0035】
後軸2bの内壁面には、区画部材5を取り付けた際に、周状突起5bcを挿入可能な周状溝部2bfが設けられている。周状溝部2bfは、側壁面2bfaと、前後方向に沿った底面2bfbと、それらの連接部2bfcとで形成されている。周状溝部2bfに周状突起5beが挿入されると、後軸2b内壁面のうち、周状溝部2bfを形成し、周状突起5bcと前後方向で当接する側壁面2bfaによって、区画部材5が前後動不可能に取り付けられる。
【0036】
側壁面2bfaと底面2bfbとの連接部2bfcは、曲面になっている。両側壁面2bfaの径方向両端部と、底面2bfbの前後方向中央とを直線で結んだ場合、当該直線が径方向外側に突出した形状の曲面となっている。
【0037】
ここで、後軸2bはポリカーボネート樹脂の成形品である。筆記具を構成する各部品は、樹脂を金型で成形した樹脂成形品を用いるのが一般的である。例えば後軸2bのような筒状の部材であれば、円筒状の空洞が設けられたキャビティに、キャビティの空洞より小径の円柱状のピンが、挿入及び/又は配置される。キャビティとピンとの間に材料となる樹脂を流し込み、樹脂が固まりピンを引き抜くと、樹脂が所望の形状の成型品となり筒状の部材とすることができる。
【0038】
周状溝部2bfを形作るには、ピンの外壁面から突出した周状の突起が必要なところ、当該突起部分はピンを引き抜く際に、所謂アンダーカットとなり、後軸2bの螺子部が設けられた前端開口部側内壁面と当接し、削ってしまう恐れがある。
【0039】
本実施形態では、ピンを引き抜く方向である前方と、後方との両方の連設部2bfcを曲面としている。つまり、ピンの外壁面における周状溝部2bfを形作る突起部分の外壁面も対応した形状の曲面となっている。これにより、ピンを引き抜く際に当該突起部分と後軸2b内壁面との当接が滑らかになり、後軸2b内壁面が削られてしまうのを抑制することができる。ひいては、後軸2bを所望の寸法範囲内で成形しやすくなるため、区画部材5を後軸2bに所望の強度で取り付けることができ好ましい。
【0040】
連接部2bfcが1箇所でも曲面になっていればその分だけピンと後軸2b内壁面との当接を滑らかにすることができる。本実施形態では、ピンを後軸2bの前端開口部から引き抜く構成としているが、当該開口部に対して遠い方の連接部2bfc(後軸2b後端開口部側)も曲面としている。ピンを引き抜く際に、前端開口部に対して近い方の連接部2bfcを形作る突起部分の外壁面が、後軸2b内壁面と当節しつつ引き抜かれると、後軸2b内壁面は一度径方向外側に広げられ、その後元の寸法に戻ろうとする。この時、前端開口部に対して遠い方の連接部2bfcを形作る突起部分の外壁面が曲面であるとで、後軸2bが径方向内側に戻る際に角になっている部分と当接せずに済むため、後軸2b内壁面が削られてしまうのをより抑制することができ好ましい。
【0041】
後軸2bの材質としては他に、成形性や耐久性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ボールペン
2 軸筒
2a 前軸
2b 後軸
2ba 窓孔
2bb 後端開口部
2bc 切り欠き部
2bd 被挟持突起
2be リブ
2bf 周状溝部
2bfa 側壁面
2bfb 底面
2bfc 連接部
3 筆記具本体
3a ボールペンリフィル
3aa ボールペンチップ
3ba 作動子
3baa 肩部
3bb クリップ用作動子
3bba 肩部
3bc クリップ
4 緩衝部材
4a 挿入部
4aa 溝部
4b 緩衝部
5 区画部材
5a 区画突起
5b 筒部
5ba 貫通孔
5bb 溝部
5bc 周状突起
6 コイルスプリング
7 尾栓
7a 挿入部
7aa 挟持突起
7ab 窓孔突起
7ac 内部リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12