(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035933
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】非水系二次電池用添加剤、非水系二次電池用非水電解液、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230306BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230306BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230306BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230306BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132726
(22)【出願日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021140459
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】小島 豊
(72)【発明者】
【氏名】江田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】桂 静郁
(72)【発明者】
【氏名】峰 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良憲
(72)【発明者】
【氏名】坂口 紀敬
(72)【発明者】
【氏名】近 壮二郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 類
(72)【発明者】
【氏名】二井 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ03
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA22
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の容量維持率を良好に維持し、サイクル特性に優れた非水系二次電池用添加剤、非水系二次電池用非水電解液、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池を提供する。
【解決手段】本発明に係る非水系二次電池用添加剤は、化学式(1)で表される、少なくとも一種の成分(A)と、化学式(2)で表されるリン酸エステル塩、化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩、リン酸塩及びハロゲン化金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、を含有することを特徴とし、非水系二次電池用非水電解液及び非水系二次電池用電極に含有させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(1)で表される、少なくとも一種の成分(A)と、
以下の化学式(2)で表されるリン酸エステル塩、以下の化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩、リン酸塩及びハロゲン化金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、
を含有する非水系二次電池用添加剤。
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立してハロゲン原子を表す。R
1~R
3は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;炭素数が1~20のアルコキシ基;炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。あるいは、R
1~R
3は、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のアルコキシ基;前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基、の何れかが相互に結合して環状構造を形成する。)
【化2】
(式中、M
n+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。あるいは、R
4及びR
5は、炭素数が1~20の炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基、の何れかが相互に結合した環状構造を形成する。nは価数を表す。)
【化3】
(式中、M
n+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。X
3は、ハロゲン原子を表す。R
6は、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。nは価数を表す。)
【請求項2】
前記成分(A)が、トリメチルシリルジフルオロホスファート、ジメチルビニルシリルジフルオロホスファート及びジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系二次電池用添加剤。
【請求項3】
前記成分(B)に於ける前記化学式(2)で表されるリン酸エステル塩が、ジエチルリン酸リチウム、ジエチルリン酸ナトリウム及びジエチルリン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系二次電池用添加剤。
【請求項4】
前記成分(B)に於ける前記化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩が、モノフルオロリン酸メチルリチウム、モノフルオロリン酸エチルリチウム、モノフルオロリン酸プロピルリチウム、モノフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)リチウム、及びモノフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系二次電池用添加剤。
【請求項5】
前記成分(B)に於ける前記リン酸塩が、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系二次電池用添加剤。
【請求項6】
前記成分(B)に於ける前記ハロゲン化金属塩が、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化金属塩である請求項1に記載の非水系二次電池用添加剤。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の非水系二次電池用添加剤と、非水溶媒と、電解質とを含み、
前記非水系二次電池用添加剤は前記電解質とは異なるものである非水系二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記電解質が、BF4
-、PF6
-、BF3CF3
-、BF3C2F5
-、CF3SO3
-、C2F5SO3
-、C3F7SO3
-、C4F9SO3
-、N(SO2F)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-、N(CF3SO2)(CF3CO)-、N(CF3SO2)(C2F5SO2)-又はC(CF3SO2)3
-の何れかのアニオン種を有する少なくとも1種の化合物である請求項7に記載の非水系二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)の含有量が、前記非水系二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であり、
前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(B)の含有量が、前記非水系二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%である請求項7に記載の非水系二次電池用非水電解液。
【請求項10】
電極活物質、導電助剤及び結着剤を含む電極活物質層を集電体上に備える非水系二次電池用電極であって、
前記電極活物質層は、さらに請求項1~6の何れか1項に記載の前記非水系二次電池用添加剤を含む非水系二次電池用電極。
【請求項11】
前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)の含有量が、前記電極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であり、
前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(B)の含有量が、前記電極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%である請求項10に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項12】
非水電解液、正極及び負極を少なくとも備える非水系二次電池であって、
前記非水電解液は、非水溶媒及び電解質を少なくとも含むものであり、
前記正極は正極活物質層を正極集電体上に備え、前記負極は負極活物質層を負極集電体上に備えるものであり、
請求項1~6の何れか1項に記載の前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)及び成分(B)はそれぞれ独立して、前記非水電解液、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の何れかに含有されている非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後に於いても優れたサイクル特性を示す非水系二次電池用添加剤、非水系二次電池用非水電解液、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の発展及び環境技術への関心の高まりに伴い、様々な電気化学デバイスが開発されている。特に、省エネルギー化に貢献できる電気化学デバイスに対する期待はますます高くなっている。このような電気化学デバイスとしては、例えば、発電デバイスとして燃料電池や太陽電池が挙げられ、蓄電デバイスとして二次電池、キャパシタ及びコンデンサ等が挙げられる。蓄電デバイスの代表例であるリチウムイオン二次電池の応用分野は、携帯電話やパソコン、デジタルカメラ等の電子機器から車載への用途拡大に伴い、出力密度やエネルギー密度の向上ならびに容量損失の抑制等、さらなる高性能化が求められている。
【0003】
従来の一般的なリチウムイオン二次電池には、正極活物質及び負極活物質にLiイオンを可逆的に挿入できる材料が用いられている。例えば、正極活物質には、LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4、又はLiFePO4等の化合物が使用されている。また、負極活物質には、リチウム金属、その合金、炭素材料、又は黒鉛材料等が使用されている。さらに、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液には、エチレンカルボナート、ジエチルカルボナート、プロピレンカルボナート等の混合溶媒にLiPF6、LiBF4等の電解質を溶解させたものが使用されている。
【0004】
電極活物質(すなわち、正極活物質及び負極活物質)と電解液の界面では、リチウムイオン伝導性はあるが電子導電性のない安定な被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)が形成されるという解釈が一般的になされている。電極活物質へのリチウムイオンの挿入脱離過程は可逆性に優れているが、充放電を繰り返すと、その安定界面に亀裂や溶解・分解が生じ、充放電特性が低下したり、電気抵抗が増加したりする傾向がある。
【0005】
この様な問題に対し、例えば、特許文献1では、非水系電解液にモノフルオロリン酸リチウムやジフルオロリン酸リチウムを含有させた非水系電解液二次電池が提案されている。この特許文献1によれば、電極界面に良質な被膜が形成されることにより電解液の分解が抑制され、充電後の保存特性が向上するとされている。
【0006】
また、特許文献2には、非水系電解液に特定のケイ素化合物を含有させた非水電解液二次電池が提案されている。この特許文献2によれば、高い入出力特性と良好な高温サイクル特性とを満足する非水電解液二次電池を提供することができるとされている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の非水系電解液二次電池では、正極での出力特性及びサイクル特性が良好であるものの、負極に於いては十分ではない。また、特許文献2に記載の非水系電解液二次電池でも、入出力特性及び高温サイクル特性の改善が十分ではない。しかも、これらの非水系電解液二次電池では、充放電を繰り返した後の容量維持率が小さいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-67270号公報
【特許文献2】特開2004-87459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の容量維持率を良好に維持し、サイクル特性に優れた非水系二次電池用添加剤、非水系二次電池用非水電解液、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る非水系二次電池用添加剤は、前記の課題を解決するために、以下の化学式(1)で表される、少なくとも一種の成分(A)と、以下の化学式(2)で表されるリン酸エステル塩、以下の化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩、リン酸塩及びハロゲン化金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、を含有することを特徴とする。
【0011】
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立してハロゲン原子を表す。R
1~R
3は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;炭素数が1~20のアルコキシ基;炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。あるいは、R
1~R
3は、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のアルコキシ基;前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基、の何れかが相互に結合して環状構造を形成する。)
【0012】
【化2】
(式中、M
n+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。あるいは、R
4及びR
5は、炭素数が1~20の炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基、の何れかが相互に結合した環状構造を形成する。nは価数を表す。)
【0013】
【化3】
(式中、M
n+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。X
3は、ハロゲン原子を表す。R
6は、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。nは価数を表す。)
【0014】
前記の構成に於いては、前記成分(A)が、トリメチルシリルジフルオロホスファート、ジメチルビニルシリルジフルオロホスファート及びジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
前記の構成に於いては、前記成分(B)に於ける前記化学式(2)で表されるリン酸エステル塩が、ジエチルリン酸リチウム、ジエチルリン酸ナトリウム及びジエチルリン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
前記の構成に於いては、前記成分(B)に於ける前記化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩が、モノフルオロリン酸メチルリチウム、モノフルオロリン酸エチルリチウム、モノフルオロリン酸プロピルリチウム、モノフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)リチウム、及びモノフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
前記の構成に於いては、前記成分(B)に於ける前記リン酸塩が、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
前記の構成に於いては、前記成分(B)に於ける前記ハロゲン化金属塩が、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化金属塩であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る非水系二次電池用非水電解液は、前記の課題を解決するために、非水系二次電池用添加剤と、非水溶媒と、電解質とを含み、前記非水系二次電池用添加剤は前記電解質とは異なるものであることを特徴とする。
【0020】
前記の構成に於いては、前記電解質が、BF4
-、PF6
-、BF3CF3
-、BF3C2F5
-、CF3SO3
-、C2F5SO3
-、C3F7SO3
-、C4F9SO3
-、N(SO2F)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-、N(CF3SO2)(CF3CO)-、N(CF3SO2)(C2F5SO2)-又はC(CF3SO2)3
-の何れかのアニオン種を有する少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0021】
前記の構成に於いては、前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)の含有量が、前記非水系二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であり、前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(B)の含有量が、前記非水系二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明に係る非水系二次電池用電極は、前記の課題を解決するために、電極活物質、導電助剤及び結着剤を含む電極活物質層を集電体上に備える非水系二次電池用電極であって、前記電極活物質層は、さらに前述の非水系二次電池用添加剤を含むことを特徴とする。
【0023】
前記の構成に於いては、前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)の含有量が、前記電極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であり、前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(B)の含有量が、前記電極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る非水系二次電池は、前記の課題を解決するために、非水電解液、正極及び負極を少なくとも備える非水系二次電池であって、前記非水電解液は、非水溶媒及び電解質を少なくとも含むものであり、前記正極は正極活物質層を正極集電体上に備え、前記負極は負極活物質層を負極集電体上に備えるものであり、前記非水系二次電池用添加剤に於ける前記成分(A)及び成分(B)はそれぞれ独立して、前記非水電解液、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の何れかに含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、充放電を繰り返した後の電極(正極及び負極)に於ける電気抵抗の増大を抑制し、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後に於いても良好な容量維持率を維持し、サイクル特性に優れた非水系二次電池用添加剤、非水系二次電池用非水電解液、非水系二次電池用電極及び非水系二次電池を提供することができる。そのメカニズムについては明らかではないが、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の成分(A)と、前記化学式(2)で表されるリン酸エステル塩、前記化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩、リン酸塩及びハロゲン化金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(B)とを、非水電解液や電極活物質層に含有させることにより、電極(電極活物質層)表面に良質な被膜を形成させることができる。これにより、電極活物質と非水電解液との接触に起因する両者の副反応を抑制することができ、その結果、電気抵抗の増大を抑制し、容量維持率を長期サイクルにわたって維持することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る非水系二次電池の概略を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(非水系二次電池用添加剤)
本実施の形態に係る非水系二次電池用添加剤(以下、「添加剤」という。)は、主として、電極(電極活物質層)表面に被膜を形成し得る被膜形成添加剤として機能する。本実施の形態の添加剤は、非水系二次電池用非水電解液(以下、「電解液」という。)や、非水系二次電池用電極(以下、「電極」という。)の電極活物質層に含有させて用いることができる。
【0028】
本実施の形態に係る添加剤は、少なくとも1種の成分(A)と、少なくとも1種の成分(B)とを含む。また、本実施の形態の添加剤は、少なくとも1種の成分(A)と、少なくとも1種の成分(B)とのみからなることが好ましい。
【0029】
<成分(A)>
成分(A)は、以下の化学式(1)で表される、少なくとも1種の化合物である。成分(A)には、化学式(1)で表される化合物であって、異なる種類のものを複数種含むことができる。
【0030】
【0031】
化学式(1)に於いて、前記X1又はX2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、化学式(1)で表される化合物の加水分解及び熱安定性の観点からは、フッ素が好ましい。
【0032】
化学式(1)に於いて、前記R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;炭素数が1~20のアルコキシ基;炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という場合がある。);又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という場合がある。)の何れかを表す。あるいは、前記R1~R3は、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のアルコキシ基;前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基;又は、前記ハロゲン原子等を有するアルコキシ基、の何れかが相互に結合して環状構造を形成する。尚、本明細書において炭素数の範囲を表す場合、その範囲は当該範囲に含まれる全ての整数の炭素数を含むことを意味する。従って、例えば「炭素数1~3」の炭化水素基とは、炭素数が1、2及び3の全ての炭化水素基を意味する。
【0033】
前記R1~R3における炭素数が1~20の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。さらに、炭素数1~20のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記炭素数が1~20の炭化水素基に於いては、炭素数が1~6の炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基がより好ましい。
【0034】
前記R1~R3における炭素数が1~20のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基及びヘキソキシ基、オクトキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基及びシクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基等が挙げられる。炭素数が1~20のアルコキシ基に於いては、炭素数が1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数が1~3のアルコキシ基がより好ましい。
【0035】
前記R1~R3における炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。前記炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0036】
前記R1~R3における炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0037】
前記R1~R3における不飽和結合とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を意味する。不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0038】
前記R1~R3におけるハロゲン原子等を有する炭化水素基としては特に限定されず、例えば、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲン化アルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲン化アルキル基;ビニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基及び3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;エチニル基、フェニルエチニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基、2-エチニルフェニル基、3-エチニルフェニル基、4-エチニルフェニル基、2-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基及び2,6-ジニトロフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,6-ジヨードフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタヨードフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタクロロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基等の含ハロゲン化アリール基;1-ナフチル基、2-ナフチル基及び3-アミノ-2-ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0039】
前記R1~R3における、炭素数が1~20のハロゲン原子を有するアルコキシ基とは、当該アルコキシ基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。ここで、ハロゲン原子とは、前述の場合と同様、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を意味する。炭素数が1~20のハロゲン原子を有するアルコキシ基に於いては、炭素数が1~6のハロゲン原子を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数が1~3のハロゲン原子を有するアルコキシ基がより好ましい。
【0040】
前記R1~R3における、炭素数が1~20のヘテロ原子を有するアルコキシ基とは、当該アルコキシ基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。ここで、ヘテロ原子とは、前述の場合と同様、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を意味する。炭素数が1~20のヘテロ原子を有するアルコキシ基に於いては、炭素数が1~6のヘテロ原子を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数が1~3のヘテロ原子を有するアルコキシ基がより好ましい。
【0041】
前記R1~R3におけるハロゲン原子等を有するアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基及び3-ブテノキシ基等の鎖状アルケノキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基及び3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケノキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基及び4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキノキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基及び3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロフェノキシ基等が挙げられる。
【0042】
また、前記R1~R3は、前記炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基、又は、前記ハロゲン原子等を有するアルコキシ基の何れかが、相互に結合して環状構造を形成するものであってもよい。この場合、前記R1~R3に於ける炭化水素基、又はハロゲン原子等を有する炭化水素基の何れかにより環状構造を形成するものとしては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基及びノニレン基等の直鎖アルキレン基;ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1-ジヨードエチレン基、1,2-ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1-ジクロロエチレン基、1,2-ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1-ジフルオロエチレン基、1,2-ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基及びテトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基;シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基及びペンタシレン基等の環状炭化水素基等が挙げられる。また、前記R1~R3が前記アルコキシ基、又は前記ハロゲン原子等を有するアルコキシ基の何れかにより環状構造を形成するものとしては特に限定されず、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、ブチレンジオキシ基、ペンチレンジオキシ基、ヘキシレンジオキシ基、ヘプチレンジオキシ基、オクチレンジオキシ基及びノニレンジオキシ基等の直鎖アルキレンジオキシ基;シクロヘキシレンジオキシ基等の環状アルキレンジオキシ基;ヨードメチレンジオキシ基、ジヨードメチレンジオキシ基、ブロモメチレンジオキシ基、ジブロモメチレンジオキシ基、フルオロメチレンジオキシ基、ジフルオロメチレンジオキシ基、ヨードエチレンジオキシ基、1,1-ジヨードエチレンジオキシ基、1,2-ジヨードエチレンジオキシ基、トリヨードエチレンジオキシ基、テトラヨードエチレンジオキシ基、クロロエチレンジオキシ基、1,1-ジクロロエチレンジオキシ基、1,2-ジクロロエチレンジオキシ基、トリクロロエチレンジオキシ基、テトラクロロエチレンジオキシ基、フルオロエチレンジオキシ基、1,1-ジフルオロエチレンジオキシ基、1,2-ジフルオロエチレンジオキシ基、トリフルオロエチレンジオキシ基及びテトラフルオロエチレンジオキシ基等の含ハロゲン直鎖アルキレンジオキシ基;フェニレンジオキシ基、ベンジレンジオキシ基、ナフチレンジオキシ基、アントラシレンジオキシ基、ナフタシレンジオキシ基及びペンタシレンジオキシ基等のアリーレンジオキシ基;前記アリーレンジオキシ基に於ける水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はヘテロ原子に置換されたもの等が挙げられる。
【0043】
前記R1~R3は、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また、前記R1~R3として前記に挙げた官能基は単なる例示に過ぎず、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0044】
成分(A)は、電池特性の観点からは、トリメチルシリルジフルオロホスファート、ジメチルビニルシリルジフルオロホスファート、ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート等が好ましい。
【0045】
また成分(A)の製造方法については特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0046】
<成分(B)>
前記成分(B)は、リン酸エステル塩、ハロリン酸エステル塩、リン酸塩、ハロゲン化金属塩、ホウ酸塩、リン錯体塩及びホウ素錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらの成分(B)は任意に組み合わせて用いることができる他、前述の成分(A)とも任意に組み合わせて用いることができる。
【0047】
[リン酸エステル塩]
前記リン酸エステル塩は、以下の化学式(2)で表される化合物である。成分(B)には、化学式(2)で表される化合物であって、異なる種類のリン酸エステルを複数種含むことができる。
【0048】
【0049】
前記化学式(2)において、前記Mn+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン、又はオニウムイオンを表す。
【0050】
前記アルカリ金属イオンとしては特に限定されず、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0051】
前記アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0052】
前記遷移金属イオンとしては、スカンジウムイオン、チタンイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、イットリウムイオン、ジルコニウムイオン、ニオブイオン、モリブデンイオン、テクネチウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオンが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0053】
前記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン(NH4+)、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0054】
前記第1級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0055】
前記第2級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、エチルメチルアンモニウムイオン、メチルプロピルアンモニウムイオン、メチルブチルアンモニウムイオン、プロピルブチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0056】
前記第3級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、エチルジメチルアンモニウムイオン、ジエチルメチルアンモニウムイオン、トリイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジエチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルプロピルアンモニウムイオン、ブチルジメチルアンモニウムイオン、1-メチルピロリジニウムイオン、1-エチルピロリジニウムイオン、1-プロピルピロリジニウムイオン、1-ブチルプロピルピロリジニウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチルイミダゾリウムイオン、1-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチルイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、1-メチルピラゾリウムイオン、1-エチルピラゾリウムイオン、1-プロピルピラゾリウムイオン、1-ブチルピラゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0057】
前記第4級アンモニウムイオンをなす第4級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、脂肪族第4級アンモニウム類、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ピラゾリウム類、ピリダジニウム類等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0058】
さらに、前記脂肪族第4級アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、1-エチル-1-メチル-ピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチル-ピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0059】
前記イミダゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1.3ジメチル-イミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0060】
前記ピリジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-n-プロピルピリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0061】
前記ピラゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1,2-ジメチルピラゾリウム、1-メチル-2-エチルピラゾリウム、1-プロピル-2-メチルピラゾリウム、1-メチル-2-ブチルピラゾリウム、1-メチルピラゾリウム、3-メチルピラゾリウム、4-メチルピラゾリウム、4-ヨードピラゾリウム、4-ブロモピラゾリウム、4-ヨードー3-メチルピラゾリウム、4-ブロモー3-メチルピラゾリウム、3-トリフルオロメチルピラゾリウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0062】
前記ピリダジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリダジニウム、1-エチルピリダジニウム、1-プロピルピリダジニウム、1-ブチルピリダジニウム、3-メチルピリダジニウム、4-メチルピリダジニウム、3-メトキシピリダジニウム、3,6-ジクロロピリダジニウム、3,6-ジクロ-4-メチルピリダジニウム、3-クロロ-6-メチルピリダジニウム、3-クロロー6-メトキシピリダジニウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0063】
前記第4級ホスホニウムイオンをなす第4級ホスホニウムとしては特に限定されず、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0064】
前記スルホニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、トリメチルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0065】
前記Mn+の例示として列挙したもののうち、入手容易性の観点からは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルイミダゾリウムイオン、アルキルピロリジニウムイオン、アルキルピリジニウムイオンが好ましい。
【0066】
尚、前記化学式(2)に於いて、前記nは価数を表す。例えば、前記Mが1価のカチオンである場合はn=1であり、2価のカチオンである場合はn=2であり、3価のカチオンである場合はn=3である。
【0067】
前記化学式(2)に於いて、前記R4及びR5は、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という。)を表す。あるいは、前記R4及びR5は、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基、の何れかが相互に結合した環状構造を形成する。
【0068】
前記R4及びR5に於ける炭素数が1~20の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。さらに、炭素数1~20のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記炭素数が1~20の炭化水素基に於いては、炭素数が1~6の炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基がより好ましい。
【0069】
前記R4及びR5に於ける炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。前記炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0070】
前記R4及びR5に於ける炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0071】
前記R4及びR5に於ける不飽和結合とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を意味する。不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0072】
前記R4及びR5に於けるハロゲン原子等を有する炭化水素基としては特に限定されず、例えば、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基及び3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基等のアリール基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基及び4-フェノキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基及び3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;1-ナフチル基、2-ナフチル基及び3-アミノ-2-ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0073】
また、前記R4とR5は、前記炭化水素基、又は、前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基の何れかが、相互に結合して環状構造を形成するものであってもよい。この場合、環状構造を形成するR4及びR5としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基及びノニレン基等の直鎖アルキレン基;ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1-ジヨードエチレン基、1,2-ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1-ジクロロエチレン基、1,2-ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1-ジフルオロエチレン基、1,2-ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基及びテトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基;シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基及びペンタシレン基等の環状炭化水素基;前記環状炭化水素基に於いて、水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はヘテロ原子に置換されたもの等が挙げられる。
【0074】
前記R4及びR5は、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また、前記R4及びR5として前記に挙げた官能基は単なる例示に過ぎず、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0075】
化学式(2)で表されるリン酸エステル塩は、電池特性の観点からは、ジメチルリン酸リチウム、ジエチルリン酸リチウム、ジプロピルリン酸リチウム、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸リチウム、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)リン酸リチウムが好ましい。
【0076】
[ハロリン酸エステル塩]
前記ハロリン酸エステル塩は、以下の化学式(3)で表される化合物である。
【0077】
【0078】
化学式(3)中のMn+及び価数nは、前記化学式(2)で述べたのと同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0079】
化学式(3)に於いて、前記X3はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、化学式(3)で表される化合物の加水分解及び熱安定性の観点からは、フッ素が好ましい。
【0080】
化学式(3)に於いて、前記R6は、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。
【0081】
前記R6に於ける炭素数が1~20の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。さらに、炭素数1~20のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。前記炭素数が1~20の炭化水素基に於いては、炭素数が1~6の炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3の炭化水素基がより好ましい。
【0082】
前記R6における炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子を表す。前記炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0083】
前記R6における炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~6のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~3のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0084】
前記R6における不飽和結合とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を意味する。不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0085】
前記R6におけるハロゲン原子等を有する炭化水素基としては特に限定されず、例えば、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基及び3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基等のアリール基;3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、及び4-フェノキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、及び3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;1-ナフチル基、2-ナフチル基、及び3-アミノ-2-ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0086】
前記化学式(3)で表されるハロリン酸エステル塩は、電池特性の向上の観点からは、モノフルオロリン酸メチルリチウム、モノフルオロリン酸エチルリチウム、モノフルオロリン酸プロピルリチウム、モノフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)リチウム、モノフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)リチウムが好ましい。
【0087】
[リン酸塩]
前記リン酸塩としては特に限定されず、例えば、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム,リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、ピロリン酸リチウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等が挙げられる。これらのリン酸塩のうち、電池特性の向上の観点からは、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムが好ましい。
【0088】
[ハロゲン化金属塩]
前記ハロゲン化金属塩としては特に限定されず、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等のフッ化金属塩が挙げられる。これらのハロゲン化金属塩のうち、電池特性の向上の観点からは、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムが好ましい。
【0089】
[ホウ酸塩]
前記ホウ酸塩としては特に限定されず、例えば、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0090】
[リン錯体塩]
前記リン錯体塩としては特に限定されず、例えば、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、ナトリウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、ナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェート等が挙げられる。
【0091】
[ホウ素錯体塩]
前記ホウ素錯体塩としては特に限定されず、例えば、リチウムジフルオロオキサラトボレート、ナトリウムジフルオロオキサラトボレート、カリウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビスオキサラトボレート、ナトリウムビスオキサラトボレート、カリウムビスオキサラトボレート、リチウムビスサリチラートボレート、ナトリウムビスサリチラートボレート、カリウムビスサリチラートボレート、リチウムビス[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ナトリウムビス[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、カリウムビス[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート等が挙げられる。
【0092】
[その他]
成分(B)の製造方法については特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0093】
(非水系二次電池用非水電解液)
次に、本実施の形態に係る非水系二次電池用非水電解液(以下、「非水電解液」という。)について以下に説明する。
本実施の形態に係る非水電解液は、非水溶媒と、電解質と、添加剤とを少なくとも含む。ここで添加剤は、前述の通り、少なくとも一種の成分(A)と、少なくとも1種の成分(B)とを含む。また、添加剤は、非水電界液中に添加される場合、主として電解液添加剤として機能し、電解質や非水溶媒とは異なる。
【0094】
初期の充電の際に非水電解液の分解という不可逆反応が、電極と非水電解液の界面で生じる。電極活物質、非水電解液中の非水溶媒や電解質及び添加剤の種類、充放電条件に応じて形成される皮膜の性質、例えば熱安定性やイオン伝導性、モフォロジー、緻密さなどの性質は大きく変化すると考えられる。本実施の形態に於いても、非水電解液に成分(A)及び成分(B)を添加することで、電極活物質の表面に皮膜が形成され、この皮膜の性質、すなわち、熱安定性や膜質等の効能に起因して、非水系二次電池のサイクル特性の改善が図られると考えられる。
【0095】
尚、本実施の形態に係る非水電解液に於いては、本発明の要旨を損なわない範囲で、従来公知のその他の添加剤をさらに添加してもよい。この場合、その他の添加剤の添加量は、適宜必要に応じて設定することができる。
【0096】
<電解質>
前記電解質としては、従来公知のものを採用することができ、前記電解質の塩を構成するカチオンは、非水系二次電池の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、リチウムイオン二次電池の場合はリチウムイオンが用いられ、ナトリウムイオン二次電池の場合はナトリウムイオンが用いられ、カリウムイオン二次電池の場合はカリウムイオンが用いられ、マグネシウムイオン二次電池の場合はマグネシウムイオンが用いられ、カルシウムイオン二次電池の場合はカルシウムイオンが用いられる。
【0097】
前記電解質の塩を構成するアニオンとしては、フッ素含有アニオンを含有するものが好ましい。フッ素含有アニオンとしては特に限定されず、例えばBF4
-、PF6
-、BF3CF3
-、BF3C2F5
-、CF3SO3
-、C2F5SO3
-、C3F7SO3
-、C4F9SO3
-、N(SO2F)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-、N(CF3SO2)(CF3CO)-、N(CF3SO2)(C2F5SO2)-、C(CF3SO2)3
-等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。例示したフッ素含有アニオンのうち、非水電解液の安全性・安定性、電気伝導率やサイクル特性の向上の観点からは、BF4
-、PF6
-、N(SO2F)2
-、N(CF3SO2)2
-が好ましく、BF4
-、PF6
-、N(SO2F)2
-が特に好ましい。
【0098】
前記電解質の前記非水溶媒に対する濃度は、0.1M~4Mの範囲が好ましく、0.2M~2Mの範囲がより好ましく、0.2M~1.5Mの範囲がさらに好ましく、0.3M~1.2Mの範囲が特に好ましい。電解質の濃度を0.1M以上にすることにより、非水電解液の電気伝導率が不十分となるのを防止することができる。その一方、電解質の濃度を4M以下にすることにより、非水電解液の粘度上昇により電気伝導率が低下するのを抑制し、非水系二次電池の性能が低下するのを防止することができる。
【0099】
<非水溶媒>
前記非水電解液に用いられる非水溶媒(有機溶媒)としては特に限定されず、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、リン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、フッ素化エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物等が挙げられる。これらの非水溶媒は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。また、これらの非水溶媒のうち、二次電池用非水溶媒として一般的な使用を可能にするとの観点からは、炭酸エステルが好ましい。
【0100】
前記環状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、ブチレンカルボナート等が挙げられる。これらの環状炭酸エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。また、これらの環状炭酸エステルのうち、非水系二次電池の充電効率を向上させるとの観点からは、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート等の環状カルボナートが好ましい。
【0101】
前記鎖状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ジメチルカルボナート、エチルメチルカルボナート、ジエチルカルボナート等が挙げられる。これらの鎖状炭酸エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。また、これらの鎖状炭酸エステルのうち、非水系二次電池の充電効率を向上させる点からは、ジメチルカルボナート、エチルメチルカルボナートが好ましい。
【0102】
前記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、エチルジメチルホスファート、ジエチルメチルホスファート、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスファート、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)ホスファート、ジメチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、メチルビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、ジメチル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスファート、メチルビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスファート、ジエチル(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、エチルビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート、ジエチル(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスファート、エチルビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスファート等が挙げられる。これらのリン酸エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0103】
前記環状エーテルとしては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0104】
前記鎖状エーテルとしては特に限定されず、例えば、ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0105】
前記フッ素化エーテルとしては特に限定されず、例えば、メチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、エチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、メチル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、メチル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、エチル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、2,2-ジフルオロエチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、フルオロメチル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2-ジフルオロエチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ビス(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテル、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)エーテル、ビス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)エーテル等が挙げられる。これらのフッ素化エーテルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0106】
前記ラクトン化合物としては特に限定されず、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0107】
前記鎖状エステルとしては特に限定されず、例えば、メチルプロピオネート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルホルメート等が挙げられる。これらの鎖状エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0108】
前記ニトリル化合物としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0109】
前記アミド化合物としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0110】
前記スルホン化合物としては特に限定されず、例えば、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。これらのスルホン化合物は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0111】
また、フッ素化エーテルを除く非水溶媒に於いては、分子中に含まれる炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたものであってもよい。
【0112】
例示した非水溶媒のうち、入手の容易さ及び非水系二次電池の性能の向上の観点から、炭酸エステルを用いるのが好ましい。
【0113】
<成分(A)及び成分(B)の含有量等>
非水電解液に於ける成分(A)の含有量は、非水電解液の全質量に対し0.001質量%~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%~5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%~2質量%の範囲内であることがさらに好ましい。前記含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、前記含有量を10質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水電解液溶媒に対する溶解性が低下するのを抑制することができる。
【0114】
また、本実施の形態に於いて、成分(A)は、少なくとも1種類が非水電解液中に含まれていればよいが、含有させる成分(A)の種類の数は、好ましくは1~5種類であり、より好ましくは1~3種類であり、特に好ましくは1~2種類である。成分(A)の種類を低減することにより、非水電解液の製造の際における工程の複雑化を抑制することができる。
【0115】
非水電解液に於ける成分(B)の含有量は、非水電解液の全質量に対し0.001質量%~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%~5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%~2質量%の範囲内であることがさらに好ましい。前記含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、前記含有量を10質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水電解液溶媒に対する溶解性が低下するのを抑制することができる。
【0116】
また、本実施の形態に於いて、成分(B)は、少なくとも1種類が非水電解液中に含まれていればよいが、含有させる成分(B)の種類の数は、好ましくは1~5種類であり、より好ましくは1~3種類であり、特に好ましくは1~2種類である。成分(B)の種類を低減することにより、非水電解液の製造の際における工程の複雑化を抑制することができる。
【0117】
<非水電解液の製造>
本実施の形態の非水電解液は、例えば、前記非水溶媒に前記電解質の塩を加えた後に、少なくとも1種の前記成分(A)と、少なくとも1種の前記成分(B)とを添加する。この際、前記有機溶媒、電解質の塩、成分(A)及び成分(B)としては、製造効率を低下させない範囲内で予め精製等して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。尚、前記成分(A)及び成分(B)の添加の順序は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0118】
(非水系二次電池用電極)
次に、本実施の形態に係る非水系二次電池用電極(以下、「電極」という。)について以下に説明する。
本実施の形態に係る電極は、電極活物質層が集電体上に設けられた構造を有している。さらに、電極活物質層は、電極活物質、導電助剤、結着剤及び添加剤を少なくとも含んでなる。本実施の形態の電極は、非水系二次電池に於いて正極及び負極の何れにも適用可能である。尚、電極活物質層の厚さは特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0119】
<正極>
本実施の形態の電極をリチウムイオン二次電池の正極として用いる場合、電極活物質としての正極活物質は特に限定されず、例えば、リチウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とリチウムの複合酸化物が挙げられる。その様な正極活物質としては、例えば、LiCoO2;LiNiO2;LiMn2O4;Li2MnO3とLiMeO2(MeはMn、Co、Ni又はFeの何れかの金属元素を表す。)との固溶体;LiFePO4;LiCoPO4;LiMnPO4;Li3V2(PO4)3;Li2MePO4F(MeはFe又はCoの何れかの金属元素を表す。);LiVPO4F;Li2MeSiO4(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。);FeCoOF;LiCoxMeyO2(0<x<1、0<y<1、x+y=1、MeはSn,Mg、Al、Fe、Zr、V、Ga、Zn、Cu、Ni、Mn、Ti、Zr又はCrの何れかの金属元素を表す。);Li(LiaMeyMnz)O2(0<a≦0.2、0<y≦0.6、0<z≦0.6、a+y+z=1、MeはAl、Ti、Cr、Ni又はCoの何れかの金属元素を表す。);Li(LiaMexMny)OzFb(0<a≦0.2、0<b≦1、0<x≦0.6、0<y≦0.6、0<z<4、a+x+y=2、b+z=4、MeはAl、Ti、Cr、Ni、Co、Fe又はMgの何れかの金属元素を表す。);LiMexMnyO4(0<x<2、0<y<2、x+y=2、MeはCr、Fe、Co、Ni,Mg、Cu、Ti又はAlの何れかの金属元素を表す。);LiNixMnyO2(0<x<1、0<y<1、x+y=1);Li(LiaNixCoyMnz)O2(0≦a≦0.2、0<x<1、0<y<1、0<z<1、a+x+y+z=1);LiNixCoyAlzO2(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1);LiFeF3;LiMeBO3(MeはMn又はFeの何れかの金属元素を表す。);TiO2、V2O5、MoO3、Cr3O8及びWO3等の酸化物;MnS2、TiS2、FeS及びMoS2等の硫化物;ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン及びジメルカプトチアジアゾール等の導電性高分子;有機ジスルフィド、カーボンスルフィド及び活性硫黄等の有機硫黄系;活性炭;ラジカルを発生するポリマー;カーボン材料等が挙げられる。
【0120】
また、本実施の形態の電極をナトリウムイオン二次電池の正極として用いる場合、電極活物質としての正極活物質は特に限定されず、例えば、ナトリウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とナトリウムの複合酸化物が挙げられる。その様な正極活物質としては、例えば、NaFeO2、NaNiO2、NaCoO2、NaMnO2、NaVO2、NaCrO2、Na2MeSiO4(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)、Na2MnO3とNaMeO2(MeはMn、Co、Ni又はFeの何れかの金属元素を表す。)からなる固溶体、Na0.7(MnxNiyCoz)O2(x+y+z=1、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1)、Na2/3(NixMny)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、Na2/3(FexMny)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、Na2/3(NixMnyMgz)O2(x+y+z=1、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1)、Na2/3(NixMnyAlz)O2(x+y+z=1、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1)、Na2Fe2P2O7、Na3V2(PO4)3、Na4Ni3(PO4)2P2O7、Na4Co3(PO4)2P2O7、Na2Fe2(SO4)3等が挙げられる。
【0121】
本実施の形態の電極をカリウムイオン二次電池の正極として用いる場合、電極活物質としての正極活物質は特に限定されず、例えば、カリウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とカリウムの複合酸化物が挙げられる。その様な正極活物質としては、例えば、KFeO2、KNiO2、KCoO2、KMnO2、K2/3MnO2、KMn2O4、KVO2、KCrO2、K2MeSiO4(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)、K2MnO3とKMeO2(MeはMn、Co、Ni又はFeの何れかの金属元素を表す。)とからなる固溶体、K(MnxNiyCoz)O2(x+y+z=1、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1)、K(NixTiy)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、K2/3(NixMny)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、K(NixMny)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、K2/3(FexMny)O2(x+y=1、0<x≦1、0<y≦1)、K3V2(PO4)3、KMePO4(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)、K2MePO4F(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)等が挙げられる。
【0122】
本実施の形態の電極をマグネシウムイオン二次電池の正極として用いる場合、電極活物質としての正極活物質は特に限定されず、例えば、マグネシウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とマグネシウムの複合酸化物が挙げられる。その様な正極活物質としては、例えば、MgNiO2、MgCoO2、MgMnO2、MgMe2O4(MeはFe、Mn、Co、Ni又はCrの何れかの金属元素を表す。)、MgMeSiO4(MeはFe、Mn、Co、Ni、Cu又はVの何れかの金属元素を表す。)、Mg(MnxNiyCoz)O2(x+y+z=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1)、MgMePO4(MeはFe、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)、MgMePO4F(MeはFe、Mn、Co又はVの何れかの金属元素を表す。)、MeBO3(MeはV、Ti、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)Mo6S8、MoS2、MnS2、TiS2、MgMo6S8、TiNb2O7、V2O5、MnO2、Mn3O4、KMnO4、Mg(MnO4)2、FeF3、MnF3等が挙げられる。
【0123】
本実施の形態の電極をカルシウムイオン二次電池の正極として用いる場合、電極活物質としての正極活物質は特に限定されず、例えば、カルシウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とカルシウムの複合酸化物、プルシアンブルー類似体(PBA)が挙げられる。その様な正極活物質としては、例えば、MoO3、Ca1/2CoO2、CaV2O5、MeFe-PBA(MeはNi、Mn又はCoの何れかの金属元素を表す。)等が挙げられる。
【0124】
正極活物質の含有量は、正極活物質層の全質量に対し、50質量%~99.89質量%が好ましく、65質量%~98.9質量%がより好ましく、80質量%~95質量%が特に好ましい。正極活物質の含有量を50質量%以上にすることにより、良好な電池容量を確保することができる。その一方、正極活物質の含有量を99.89質量%以下にすることにより、正極の良好な機械的強度を得ることができる。
【0125】
前記導電助剤としては特に限定されず、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ニードルコークス等が挙げられる。これらの導電助剤は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0126】
前記導電助剤の含有量は、正極活物質層の全質量に対し、0.01質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~15質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が特に好ましい。導電助剤の含有量を0.01質量%以上にすることにより、良好な導電性を維持することができる。その一方、導電助剤の含有量を20質量%以下にすることにより、電池容量を良好に維持することができる。
【0127】
前記結着剤としては、電解液に用いる非水溶媒や、電極の製造の際に用いる溶媒(詳細については、後述する。)に対して安定性を有する材料であれば特に限定されない。結着剤は、より具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アルカリ金属イオン導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着剤は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0128】
前記結着剤の含有量は、正極活物質層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、5質量%~10質量%が特に好ましい。結着剤の含有量を0.1質量%以上にすることにより、正極の機械的強度を良好に維持し、電池性能の低下を防止又は抑制することができる。その一方、結着剤の含有量を30質量%以下にすることにより、電池容量の不足及び電気抵抗の増大を防止又は抑制することができる。
【0129】
前記添加剤に於ける前記成分(A)の含有量は、正極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.5質量%~2質量%がさらに好ましい。成分(A)の含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、成分(A)の含有量を10質量%以下にすることにより、正極に於ける電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
【0130】
前記添加剤に於ける前記成分(B)の含有量は、正極活物質の全質量に対し0.001質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.5質量%~2質量%がさらに好ましい。成分(B)の含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、成分(B)の含有量を10質量%以下にすることにより、正極に於ける電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
【0131】
前記正極集電体としては、電気化学的及び化学的に耐食性を有する導電体であれば特に限定されない。正極集電体としては、より具体的には、ステンレス、アルミニウム、チタン、タンタル等からなる板又は箔等を使用することができる。これらの正極集電体のうち、ステンレス又はアルミニウムからなる板又は箔が、性能と価格の両面で好ましい。
【0132】
<負極>
本実施の形態の電極をリチウムイオン二次電池の負極として用いる場合、電極活物質としての負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能なものであれば特に限定されない。その様な負極活物質としては、例えば、金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素、ケイ素系合金、スズ系合金、金属酸化物、金属硫化物、窒化リチウム、導電性重合体、炭素材料等が挙げられる。
【0133】
前記金属複合酸化物としては特に限定されず、例えば、Li4Ti5O12、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、Li4WO5、SnxMe1
1-xMe2
yOz(Me1はMn、Fe、Pb又はGeの何れかであり、Me2はAl、B、P、Si、周期律表の1~3族の元素又はハロゲンの何れかである。0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)、Sn2B2O5、Sn2P2O7、Sn2BPO6、TiNb2O7、Ti2Nb10O29等が挙げられる。これらの金属複合酸化物は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0134】
前記金属酸化物としては特に限定されず、例えばSnO、SnO2、SiOx(0<x<2)、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5、Li2O、Al2O3、ZnO、In2O3、TiO2、Nb2O5、MoO2、WO2、CuO等が挙げられる。これらの金属酸化物は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0135】
前記金属硫化物としては特に限定されず、例えばSnS、FeS2等が挙げられる。これらの金属硫化物は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0136】
前記窒化リチウムとしては特に限定されず、例えばLi5(Li3N)、Li7MnN4、Li3FeN2、LixCoyN(0<x≦3、0≦y≦1、x+y=3)等が挙げられる。これらの窒化リチウムは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0137】
前記導電性重合体としては特に限定されず、例えば、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリチオフェン等が挙げられる。これらの導電性重合体は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0138】
前記炭素材料としては特に限定されず、例えばカーボンブラック、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、ホウ素化黒鉛、金属被覆黒鉛、フッ化黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化物、有機高分子化合物焼成体、カーボンナノチューブ、ハードカーボン、フラーレン、コークス等が挙げられる。これらの炭素材料は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0139】
また、本実施の形態の電極をナトリウムイオン二次電池の負極として用いる場合、電極活物質としての負極活物質は、ナトリウムイオンが吸蔵及び放出することが可能な材料であれば特に限定されない。その様な負極活物質としては、例えば、ナトリウム金属、Na2Ti6O13等の金属酸化物、炭素材料等が挙げられる。さらに、炭素材料としては特に限定されず、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ホウ素化黒鉛、ハードカーボン、有機高分子化合物焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0140】
本実施の形態の電極をカリウムイオン二次電池の負極として用いる場合、電極活物質としての負極活物質は、カリウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料であれば特に限定されない。その様な負極活物質としては、例えば、K2Ti6O13等の金属複合酸化物、カリウム金属、炭素材料等が挙げられる。さらに、炭素材料としては特に限定されず、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、ホウ素化黒鉛、ハードカーボン、カーボンブラック、有機高分子化合物焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0141】
本実施の形態の電極をマグネシウムイオン二次電池の負極として用いる場合、電極活物質としての負極活物質は、マグネシウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料であれば特に限定されない。その様な負極活物質としては、例えば、マグネシウム金属、マグネシウム合金、ビスマス添加合金、銅添加合金、金属複合酸化物、炭素材料等が挙げられる。さらに、炭素材料としては、本実施の形態の電極をカリウムイオン二次電池の負極として用いる場合と同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0142】
本実施の形態の電極をカルシウムイオン二次電池の負極として用いる場合、電極活物質としての負極活物質は、カルシウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料であれば特に限定されない。その様な負極活物質としては、例えば、カルシウム金属、カルシウム合金、金属複合酸化物、炭素材料等が挙げられる。さらに、炭素材料としては、本実施の形態の電極をカリウムイオン二次電池の負極として用いる場合と同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0143】
負極活物質の含有量は、負極活物質層の全質量に対し、50質量%~99.89質量%が好ましく、65質量%~98.9質量%がより好ましく、80質量%~95質量%が特に好ましい。負極活物質の含有量を50質量%以上にすることにより、良好な電池容量を確保することができる。その一方、負極活物質の含有量を99.89質量%以下にすることにより、負極の良好な機械的強度を得ることができる。
【0144】
導電助剤としては、正極で用いる導電助剤と同様のものを用いることができる。また、負極活物質層に含まれる導電助剤の含有量も、正極で用いる導電助剤の含有量と同様である。従って、これらの詳細な説明は省略する。
【0145】
前記結着剤としては、電解液に用いる非水溶媒や、電極の製造の際に用いる溶媒に対して安定性を有する材料であれば特に限定されない。結着剤は、より具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アルカリ金属イオン導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着剤は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0146】
前記結着剤の含有量は、負極活物質層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、5質量%~10質量%が特に好ましい。結着剤の含有量を0.1質量%以上にすることにより、負極の機械的強度を良好に維持し、電池性能の低下を防止又は抑制することができる。その一方、結着剤の含有量を30質量%以下にすることにより、電池容量の不足及び電気抵抗の増大を防止又は抑制することができる。
【0147】
前記添加剤に於ける前記成分(A)の含有量は、負極活物質層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.5質量%~2質量%がさらに好ましい。成分(A)の含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、成分(A)の含有量を10質量%以下にすることにより、負極に於ける電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
【0148】
前記添加剤に於ける前記成分(B)の含有量は、負極活物質の全質量に対し0.001質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.5質量%~2質量%がさらに好ましい。成分(B)の含有量を0.001質量%以上にすることにより、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後の非水系二次電池のサイクル特性を一層改善することができる。その一方、成分(B)の含有量を10質量%以下にすることにより、負極に於ける電気抵抗が増加するのを抑制することができる。
【0149】
前記負極集電体としては、電気化学的及び化学的に耐食性のある導電体であれば特に限定されない。負極集電体としては、より具体的には、銅、ステンレス、ニッケル等の板や箔等を使用することができる。これらの負極集電体のうち、銅からなる板や箔が、性能と価格の両面で好ましい。
【0150】
<電極の製造方法>
本実施の形態の電極は、次の様にして製造することができる。すなわち、電極活物質、導電助剤、結着剤及び添加剤等を乾式で混合し、その混合物をシート状に成形した後、集電体に圧着し、これにより、集電体上に電極活物質層が形成された電極を製造することができる。
【0151】
あるいは、混合物を溶媒に溶解した溶解液、又は混合物を溶媒中に分散させたスラリーを作製する。次に、この溶解液又はスラリーを集電体上に塗布した後、乾燥させることにより、集電体上に電極活物質層が形成された電極を製造することができる。乾燥させる際の乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0152】
尚、前記混合物を溶解又は分散させてスラリー化させる前記溶媒としては、電極活物質、導電助剤、結着剤及び添加剤を溶解又は分散させることができ、かつ、その後の乾燥で除去しやすいものであれば特に限定されない。その様な溶媒としては、例えば、水、アルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、ヘキサン等が挙げられる。尚、これらの溶媒は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0153】
(非水系二次電池)
次に、本実施の形態に係る非水系二次電池(以下、「二次電池」という。)について、
図1に基づき以下に説明する。
図1は、本実施の形態に係る二次電池の概略を示す断面模式図である。
【0154】
本実施の形態の二次電池は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等に適用可能である。
【0155】
二次電池は、
図1に示すように、正極缶4と負極缶5とで形成される内部空間に、正極缶4側から正極1、セパレータ3、負極2、スペーサー7の順に積層された積層体が収納された構造を有している。負極缶5とスペーサー7との間にスプリング8を介在させることによって、正極1と負極2を適度に圧着固定している。非水電解液は、正極1、セパレータ3及び負極2の間に含浸されている。正極缶4及び負極缶5の間にガスケット6を介在させた状態で、正極缶4及び負極缶5を挟持させることによって両者を結合し、前記積層体を密閉状態にしている。
【0156】
また二次電池には、正極1と負極2の短絡を防止するために、両者の間には通常、前述のセパレータ3が介在される。セパレータ3の材質や形状は特に制限されないが、上述の非水電解液が通過しやすく、絶縁体で、化学的に安定な材質であるものが好ましい。例えば、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート、不織布、それらの表面をガラスコーティングしたもの、ガラス繊維の不織布等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子が用いられる。電気化学的な安定性・化学的安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましい。
【0157】
ここで、本実施の形態の二次電池に於いて、前記添加剤に於ける成分(A)及び成分(B)はそれぞれ、非水電解液、正極1の正極活物質層及び負極2の負極活物質層の何れかに含有されていればよい。例えば、前記添加剤(すなわち、成分(A)及び成分(B)の両方)を、非水電解液、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも何れかに含有させることができる。また、添加剤に於ける成分(A)及び成分(B)をそれぞれ独立して、非水電解液、正極活物質層及び負極活物質層の何れかに含有させることもできる。さらに、成分(A)及び成分(B)を複数種用いる場合には、各種類毎にそれぞれ独立して、非水電解液、正極活物質層及び負極活物質層の何れかに含有させることもできる。
【0158】
本実施の形態の二次電池の最適な使用電圧は、正極活物質と負極活物質の組み合わせによって適宜設定することができる。使用電圧は、通常は1.5V~5Vの範囲内である。
【0159】
本実施の形態の二次電池の形状については特に制限はない。例えば、
図1に示すコイン型セルの他に、円筒型、角型、ラミネート型等が挙げられる。
【0160】
本実施の形態に係る二次電池であると、電気抵抗の増大が抑制され、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後に於いても良好な容量維持率を維持し、優れたサイクル特性を示すことができる。尚、
図1に示す二次電池は、本発明の二次電池の一態様を例示的に示したものであり、本発明の二次電池はこれに限定されるものではない。
【実施例0161】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0162】
(実施例1)
<非水電解液の作製>
露点が-70℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内で、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(体積比率でEC:DMC=1:1、キシダ化学株式会社製、リチウムバッテリーグレード)に対し、LiPF6の濃度が1.0モル/リットルとなる様に調製した。
【0163】
次に、成分(A)としてのジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート(ステラケミファ株式会社製)を、非水電解液の全質量に対し添加濃度が1.0質量%となる様に混合溶媒に添加した。
【0164】
続いて、成分(B)としてのフッ化リチウムを、非水電解液の全質量に対し添加濃度が0.1質量%となる様に混合溶媒に添加し、これにより本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0165】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電助剤としてのカーボンブラック、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量換算で90:5:5の質量比で混合し、この混合物をN-メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製した。続いて、このスラリーを正極集電体としてのアルミ二ウム箔(厚さ15μm)に塗布し、乾燥温度100℃で乾燥させて、正極シートを作製した。さらに、得られた正極シートを直径11.3mmの円形状に切り出し、正極を得た。
【0166】
<負極の作製>
負極活物質としての天然黒鉛と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量換算で95:5の質量比で混合し、この混合物をN-メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製した。続いて、このスラリーを負極集電体としての銅箔(厚さ10μm)に塗布し、乾燥温度100℃で乾燥させて、負極シートを作製した。さらに、得られた負極シートを直径11.3mmの円形状に切り出し、負極を得た。
【0167】
(実施例2)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(A)としてのジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの含有量を、非水電解液の全質量に対し0.5質量%に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0168】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0169】
(実施例3)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(A)としてのジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートの含有量を、非水電解液の全質量に対し2.0質量%に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0170】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0171】
(実施例4)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(A)として、ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートに代えてトリメチルシリルジフルオロホスファートを用いた。また、トリメチルシリルジフルオロホスファートの含有量を、非水電解液の全質量に対し0.8質量%にした。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0172】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0173】
(実施例5)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(A)として、ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートに代えてジメチルビニルシリルジフルオロホスファートを用いた。また、ジメチルビニルシリルジフルオロホスファートの含有量を、非水電解液の全質量に対し0.9質量%にした。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0174】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0175】
(実施例6)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(A)として、ジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートに代えてジメチルシクロヘキシルシリルジフルオロホスファートを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0176】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0177】
(実施例7)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(B)として、フッ化リチウムに代えてフッ化ナトリウムを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0178】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0179】
(実施例8)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(B)として、フッ化リチウムに代えてフッ化カリウムを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0180】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0181】
(実施例9)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(B)として、フッ化リチウムに代えてリン酸三リチウムを用いた。また、リン酸三リチウムの含有量を、非水電解液の全質量に対し0.2質量%に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0182】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0183】
(実施例10)
<非水電解液の作製>
本実施例においては、成分(B)として、フッ化リチウムに代えてジエチルリン酸リチウムを用いた。また、ジエチルリン酸リチウムの含有量を、非水電解液の全質量に対し0.7質量%に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0184】
<正極及び負極の作製>
本実施例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0185】
(実施例11)
<非水電解液の作製>
露点が-70℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内で、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(体積比率でEC:DMC=1:1、キシダ化学株式会社製、リチウムバッテリーグレード)に対し、LiPF6の濃度が1.0モル/リットルとなる様に調製した。
【0186】
次に、成分(A)としてのジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート(ステラケミファ株式会社製)を、非水電解液の全質量に対し添加濃度が1.0質量%となる様に、前記混合溶媒に添加し、これにより本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0187】
<正極の作製>
本実施例の正極については、実施例1と同様にして作製した。
【0188】
<負極の作製>
負極活物質としての天然黒鉛と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量換算で95:5の質量比で混合した。さらに、この混合物に成分(B)としてのフッ化リチウムを添加した後、フッ化リチウムを含む混合物を溶剤としてのN-メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製した。続いて、このスラリーを負極集電体としての銅箔(厚さ10μm)に塗布し、乾燥温度100℃で乾燥させて、銅箔上に負極活物質層が形成された負極シートを作製した。さらに、得られた負極シートを直径11.3mmの円形状に切り出し、負極を得た。尚、成分(B)としてのフッ化リチウムの含有量は、負極活物質層の全質量に対し1.0質量%とした。
【0189】
(比較例1)
<非水電解液の作製>
本比較例においては、成分(A)であるジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート及び成分(B)であるフッ化リチウムを添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0190】
<正極及び負極の作製>
本比較例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0191】
(比較例2)
<非水電解液の作製>
本比較例においては、成分(B)であるフッ化リチウムを添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0192】
<正極及び負極の作製>
本比較例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0193】
(比較例3)
<非水電解液の作製>
本比較例においては、成分(A)であるジメチルフェニルシリルジフルオロホスファートを添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0194】
<正極及び負極の作製>
本比較例の正極及び負極については、実施例1と同様にして作製した。
【0195】
(比較例4)
<非水電解液の作製>
本比較例においては、成分(A)であるジメチルフェニルシリルジフルオロホスファート及び成分(B)であるフッ化リチウムを添加しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0196】
<正極及び負極の作製>
本比較例の正極については、実施例1と同様にして作製した。また、本比較例の負極については、実施例11と同様にして作製した。
【0197】
(サイクル特性の評価)
<コインセルの作製>
各実施例及び各比較例で作製した非水電解液、正極及び負極を用いて、
図1に示す様なコイン型のリチウムイオン二次電池(コインセル)をそれぞれ作製し電気化学特性を評価した。
【0198】
即ち、セパレータにポリエチレン製セパレータを用い、正極、セパレータ、負極の順に積層して積層体とし、非水電解液を含浸させた後、当該積層体を密閉して、コインセルとした。コインセルの組み立ては、全て露点-70℃以下のアルゴングローブボックス内で行った。
【0199】
<慣らし充放電>
作製したコインセルは、25℃の恒温槽内で充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0V、0.2C(定格容量を1時間で充電又は放電する電流値を1Cとする)の定電流定電圧法にて3サイクルの慣らし充放電をした。
【0200】
<サイクル特性の評価>
慣らし充放電が終了したコインセルを、25℃の恒温槽内で充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0V、1Cの定電流定電圧法にて200サイクル充放電し、200サイクル後の放電容量を比較評価した。以下の表1及び表2に、比較例1を100としたときの、実施例1~11及び比較例2~4の放電容量の比率を示す。
【0201】
【0202】
【0203】
表1及び表2から明らかなように、実施例1~11の非水電解液、正極及び負極をそれぞれ用いたコインセルでは、比較例1~4の非水電解液、正極及び負極をそれぞれ用いたコインセルと比べ、200サイクル後の容量維持率が高く、サイクル特性に優れていることが確認された。