(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035938
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】区画化されたトレッドを備えた航空機タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133862
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/260754
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/810017
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フランク アンソニー カミチック
(72)【発明者】
【氏名】アレン トッド マティス
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ハーバート マーツ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA04
3D131BB05
3D131BC34
3D131EA04U
(57)【要約】
【課題】技術水準と異なる改良された耐摩耗性トレッドを提供する。
【手段】本発明は、地面に係合する外面を有するタイヤトレッドを有する空気入りタイヤを提供する。トレッドは、トレッドの中央部分またはクラウン部分に配置され、第1のゴムコンパウンドで形成された第1または中央のトレッドゾーンをさらに有する。加えて、トレッドは、トレッドの各横方向端部の第1または中央のトレッドゾーンの軸方向外側に位置する第2またはショルダーのトレッドゾーンを有する。第2またはショルダーのトレッドゾーンは、第2のゴムコンパウンドで形成される。一実施例では、第1のゴムコンパウンドが1.6~1.8MPaの範囲のG’(50%歪み時)を有する。別の実施例では、第2のゴムコンパウンドが800~830KPaの範囲のG’(100%歪み時)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と係合する外面を有するトレッドを有する空気入りタイヤであって、前記トレッドは第1のトレッドゾーンと第2のトレッドゾーンを有し、前記第1のトレッドゾーンは前記トレッドの中央部分を含み、前記第2のトレッドゾーンは前記第1のトレッドゾーンに隣接し、且つ前記トレッドの各横方向端部に位置し、前記第1のトレッドゾーンは第1のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のトレッドゾーンは第2のゴムコンパウンドで形成され、前記第1のゴムコンパウンドは1.6~1.8MPaの範囲のG’(50%歪み時)を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2のゴムコンパウンドが、1.02~1.03MPaの範囲のG’(50%歪み時)を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1のゴムコンパウンドが、前記第2のゴムコンパウンドの前記G’(50%歪み時)よりも少なくとも150%大きいG’(50%歪み時)を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1のゴムコンパウンドが、前記第2のゴムコンパウンドの前記G’(50%歪み時)よりも少なくとも170%大きいG’(50%歪み時)を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1のトレッドゾーンの軸方向幅は、前記トレッドの幅の50~70%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
地面と係合する外面を有するトレッドを有する空気入りタイヤであって、前記トレッドは第1のトレッドゾーンと第2のトレッドゾーンを有し、前記第1のトレッドゾーンは前記トレッドの中央部分を含み、前記第2のトレッドゾーンは前記第1のトレッドゾーンに隣接し、且つ前記トレッドの各横方向端部に位置し、前記第1のトレッドゾーンは第1のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のトレッドゾーンは第2のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のゴムコンパウンドは800~830KPaの範囲のG’(100%歪み時)を有する、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳細には、航空機に使用されるような高速重荷重タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機タイヤのための現在のタイヤ設計ドライバは、高い耐摩耗性のタイヤを設計することを含む。
図2は、タッチダウン、タクシング、旋回などの様々な航空機活動からの量を示す包括的な摩耗モデルのコンピュータシミュレーションを示す。タイヤトレッドの中央部分は、最大の摩耗を有する。また、タイヤトレッドのショルダー付近の外側の横方向端部も、高い摩耗を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高耐摩耗性タイヤトレッドの技術水準は、高剛性または高耐摩耗性を有するトレッドコンパウンドを選択して、耐摩耗性を向上させることである。しかしながら、本発明者らは、技術水準と異なる改良された耐摩耗性トレッドを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は第1の態様において、地面に係合する外面を有するトレッドを有する空気入りタイヤを提供し、前記トレッドは第1のトレッドゾーンと第2のトレッドゾーンを有し、前記第1のトレッドゾーンは前記トレッドの中央部分を含み、前記第2のトレッドゾーンは前記第1のトレッドゾーンに隣接し、且つ前記トレッドの各横方向端部に位置し、前記第1のトレッドゾーンは第1のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のトレッドゾーンは第2のゴムコンパウンドで形成され、前記第1のゴムコンパウンドは1.6~1.8MPaの範囲のG’(50%歪み時)を有する。
【0005】
本発明は第2の態様において、地面に係合する外面を有するトレッドを有する空気入りタイヤを提供し、前記トレッドは第1のトレッドゾーンと第2のトレッドゾーンを有し、前記第1のトレッドゾーンは前記トレッドの中央部分を含み、前記第2のトレッドゾーンは前記第1のトレッドゾーンに隣接し、且つ前記トレッドの各横方向端部に位置し、前記第1のトレッドゾーンは第1のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のトレッドゾーンは第2のゴムコンパウンドで形成され、前記第2のゴムコンパウンドは800~830KPaの範囲のG’(100%歪み時)を有する。
定義
【0006】
「カーカス」とは、ビードを含むタイヤ構造を意味し、プライ上のベルト構造、トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールゴムとは別のタイヤ構造である。
【0007】
「周方向の」とは、軸方向に垂直な環状のトレッドの表面の周囲に沿って延びる線または方向を意味する。
【0008】
「コード」とは、タイヤ内のプライを構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0009】
「赤道面」および「EP」とは、タイヤの回転軸に垂直で、かつ、そのトレッドの中心を通る平面を意味する。
【0010】
「プライ」とは、ゴムで被覆された複数の平行なコードの連続した層を意味する。
【0011】
「半径方向の」および「半径方向に」とは、タイヤの回転軸に対して半径方向に向かう、またはタイヤの回転軸から半径方向に離れる方向を意味する。
【0012】
「ラジアルプライタイヤ」とは、ビードからビードに延びるプライコードが、タイヤの赤道面に対して65°~90°の間のコード角で配置される、ベルト構造の、または周方向に拘束された空気入りタイヤを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、一例として、以下の添付の図面を参照して説明される。
【
図1】本発明による区画化されたタイヤトレッドの半分の第1の実施形態の概略断面図である。
【
図2】タイヤトレッドの摩耗インジケータ対y座標のコンピュータモデルプロットである。
【
図3】相対G’対ショルダー摩耗のコンピュータモデルプロットである。
【
図4】相対G’対中心線トレッド摩耗のコンピュータモデルプロットである。
【
図5】3つの異なる区画化されたトレッド構造を有するトレッドの全体的な摩耗のコンピュータモデルプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の空気入りタイヤトレッド10の半分の断面図を示す。タイヤは、中央の周方向面(mid-circumferential plane)を中心として対称であるので、半分だけが図示されている。図示のように、タイヤトレッド10は航空機タイヤ用であるが、本発明はトラックまたはオフロードタイヤなどの他の用途にも適用可能である。
【0015】
タイヤトレッド10は、トレッドブロックまたはリブによって分離された複数の溝14、16を含む外側走行面12を画定する。タイヤトレッド10は、区画化され、第1のゴムコンパウンドで形成された第1または中央のトレッドゾーン30を有し、タイヤトレッド10の中央またはクラウン部分に配置される。タイヤトレッド10は、第2のゴムコンパウンドで形成された第2またはショルダーのトレッドゾーン40をさらに含む。第2のトレッドゾーン40は、第1または中央のトレッドゾーン30の軸方向外側であって、タイヤトレッド10の各横方向端部に位置する。第2のトレッドゾーン40は、タイヤトレッド境界面50から、サイドウォールで終端するショルダー領域まで延在する。
【0016】
図2は、離陸、着陸(タッチダウン)、タクシング、ターニング、およびブレーキングなどのイベントによって引き起こされる摩耗の量を示す、包括的な摩耗モデルのコンピュータシミュレーションを示す。
図2に示すように、タイヤトレッド10の外側の横方向端部のショルダートレッドゾーン40では、摩耗が大きく増加していることが示されている。
【0017】
図3は、航空機タイヤのショルダー摩耗が、R
2>0.8で、高歪みG’、または(50%~100%歪みで測定された)G’と強く相関することを示す。G’は、動的貯蔵弾性率であり、様々な歪みレベルでのゴムコンパウンドの粘弾性特性の測定値である。G’は、アルファテクノロジーズのRPA 2000(商標)のようなゴムプロセス分析器を使用して得ることができる。そのような測定は、当業者に知られている。これらの測定は、典型的には生ゴムで行われる。例えば、RPA 2000(商標)を使用して、1%~100%の歪みの範囲にわたって1Hzで、100℃で歪み掃引を行うことができる。
【0018】
さらに、
図3は、異なる剛性レベルを有する様々な化合物のショルダー摩耗率を示す。
図3は、ショルダー摩耗率が、より柔らかい化合物、すなわち高い歪みでより低いG’値となる化合物について最も低くなることを示す。一実施形態では、ショルダーまたは第2のトレッドゾーン40のための第2のゴムコンパウンドのG’は、81万から83万MPaまでの範囲、より好ましくは約82万MPaのG’(100%歪み時)となるように選択される。第2の実施形態では、ショルダーまたは第2のトレッドゾーン40のための第2のゴムコンパウンドのG’は、1.024から1.028MPaまでの範囲、より好ましくは約1.026MPaのG’(50%歪み時)となるように選択される。
【0019】
図4は、様々な歪みレベルにおける、タイヤトレッド10の中心線における摩耗率とG’との関係を示す。
図4から、中心線における摩耗は、100%歪み時のG’と強く相関することが判明した。中心線における摩耗は、剛性がより高い、すなわち、G’(100%歪み時)の値がより高いコンパウンドについて低減される。したがって、第1または中央のトレッドゾーン30について、第1のゴムコンパウンドのG’(100%)は、1.2から1.4MPaまでの範囲、より好ましくは約1.3MPaであることが好ましい。さらに、第1または中央のトレッドゾーン30について、第1のゴムコンパウンドの(50%歪み時)G’は、1.6から1.8MPaまでの範囲、より好ましくは約1.7MPaであることが好ましい。
【0020】
図5は、異なるタイプのコンパウンドについて、第1および第2のトレッドゾーン30、40を使用したタイヤトレッド10の全体的な摩耗率を示す。このように、トレッドの区画化は、タイヤトレッド10の摩耗バランスを改善する一方で、中心線におけるトレッド摩耗をわずかに改善する。
【0021】
したがって、タイヤトレッド10の全体的な摩耗率を改善するために、第1または中央のトレッドゾーン30は、第2のゴムコンパウンドのG’(50%歪み時)よりも少なくとも150%大きい、より好ましくは、第2のゴムコンパウンドのG’(50%歪み時)よりも少なくとも170%大きいG’(50%)を有する第1のゴムコンパウンドから形成されることが望まれる。
【0022】
第1のゴムコンパウンドは、第2のゴムコンパウンドよりも高い剛性を有するように選択され、第1または中央のトレッドゾーン30に沿ってより大きな耐摩耗性をトレッドに提供する。第2のゴムコンパウンドは、ショルダー摩耗を低減するより柔らかいコンパウンドをトレッドに提供する。第1のトレッドゾーン30と第2のトレッドゾーン40との間の境界面50または分割線は、
図2に示されるようなモデリング分析から決定される。
図5に示すように、トレッド摩耗は、トレッドの外側の横方向端部で最も高く、トレッドの中央部分でより低い。典型的なタイヤトレッドの場合、第1または中央のトレッドゾーン30は、好ましくは全トレッドアーク幅の少なくとも50~70%であり、結合された外側の横方向端部は、好ましくは全トレッドアーク幅の少なくとも30~50%である。
【0023】
本明細書に提供される説明に照らして本発明の変形が可能である。本発明を例示する目的で、特定の代表的な実施形態および詳細を示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の全範囲内であると説明される特定の実施形態において変更がなされ得ることを理解されたい。
【外国語明細書】