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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035947
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】熱暴走抑制要素及び関連する利用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/659 20140101AFI20230306BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230306BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M10/659
H01M10/613
H01M10/653
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134187
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/238,322
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/878,555
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031EE01
5H031EE03
5H031HH06
(57)【要約】
【課題】リチウム電池のための熱暴走抑制要素及び関連する利用を提供すること。
【解決手段】熱暴走抑制要素は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層を含む。複合塩層は、90から150℃の間の溶融点を有する。単一無機塩の少なくとも1つは、両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含む。熱暴走抑制要素は、リチウム電池の内側又は外側に配設される。リチウム電池の温度が90から150℃に達すると、複合塩層は溶融し、電気化学反応システムと反応し、活性材料を不活性化し、イオン及び電子の伝導率を低減させる。したがって、熱暴走事象及びこれに派生する問題は、効率的に解決される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電、放電するように動作可能なリチウム電池に適合される熱暴走抑制要素であって、
前記熱暴走抑制要素は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層を備え、
前記複合塩層は、90から150℃の間の溶融点を有し、
前記単一無機塩の少なくとも1つは、両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含むことを特徴とする、
熱暴走抑制要素。
【請求項2】
前記単一無機塩は、LiNO、AlCl、NaCl、KCl、LiCl、AlBr、Ca(NO、NaNO、KNO、ZnCl、FeCl及びFeBrからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項3】
前記共晶混合物は、テトラブチルアンモニウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドからなる群から選択される有機塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項4】
前記複合塩層は、基体によって支持し、前記基体は、溶融状態の前記複合塩層と反応しない材料から作製されることを特徴とする、請求項1に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項5】
前記基体は、少なくとも1つの穴を含むことを特徴とする、請求項4に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項6】
前記基体は、積層酸化金属粒子又は織ガラス繊維から作製されることを特徴とする、請求項5に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項7】
前記複合塩層は、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー又は液体金属から作製される保護層によって覆われることを特徴とする、請求項1に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項8】
前記複合塩層は、前記複合塩層に対して不活性であるナノメートルサイズのセラミック粒子と共に追加されることを特徴とする、請求項1に記載の熱暴走抑制要素。
【請求項9】
熱暴走抑制要素を有するリチウム電池であって、
前記リチウム電池は、
パッケージ構成要素と、
前記パッケージ構成要素によってパッケージ化される電気化学反応システムと、
熱暴走抑制要素とを備え、
前記熱暴走抑制要素は、前記パッケージ構成要素の内側又は外側に配設され、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層を備え、前記複合塩層は、90から150℃の間の溶融点を有し、前記単一無機塩の少なくとも1つは、両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含むことを特徴とする、
リチウム電池。
【請求項10】
前記単一無機塩は、LiNO、AlCl、NaCl、KCl、LiCl、AlBr、Ca(NO、NaNO、KNO、ZnCl、FeCl及びFeBrからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項11】
前記共晶混合物は、テトラブチルアンモニウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドからなる群から選択される有機塩を含むことを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項12】
前記複合塩層は、基体によって支持し、前記基体は、溶融状態の前記複合塩層と反応しない材料から作製されることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項13】
前記基体は、少なくとも1つの穴を含むことを特徴とする、請求項12に記載のリチウム電池。
【請求項14】
前記基体は、積層酸化金属粒子又は織ガラス繊維から作製されることを特徴とする、請求項13に記載のリチウム電池。
【請求項15】
前記熱暴走抑制要素は、前記パッケージ構成要素の外側に配設された場合、前記パッケージ構成要素は、複数の貫通孔を含み、前記貫通孔の一端は、前記熱暴走抑制要素に接続され、前記貫通孔のもう一端は、前記電気化学反応システムに接続されることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項16】
前記パッケージ構成要素は、
第1の電流収集層と、
前記第1の電流収集層とは反対の第2の電流収集層と、
接着剤枠と
を備え、前記接着剤枠の一端は、前記第1の電流収集層に接着され、前記接着剤枠のもう一端は、前記第2の電流収集層に接着されることを特徴とする、請求項15に記載のリチウム電池。
【請求項17】
前記熱暴走抑制要素は、前記第1の電流収集層の外面に配設され、前記第1の電流収集層は、アルミニウムから構成されることを特徴とする、請求項16に記載のリチウム電池。
【請求項18】
前記電気化学反応システムは、陽極活性材料層と、陰極活性材料層と、前記陽極活性材料層と前記陰極活性材料層との間に配設される隔離体とを含み、前記陽極活性材料層は、前記第1の電流収集層に直接接触し、前記陰極活性材料層は、前記第2の電流収集層に直接接触することを特徴とする、請求項16に記載のリチウム電池。
【請求項19】
前記貫通孔は、前記第1の電流収集層及び/又は前記第2の電流収集層上に形成されることを特徴とする、請求項16に記載のリチウム電池。
【請求項20】
前記貫通孔の少なくとも1つは、除去可能なゲート層によって覆われることを特徴とする、請求項19に記載のリチウム電池。
【請求項21】
前記ゲート層は、シリコーンポリマーから作製されることを特徴とする、請求項20に記載のリチウム電池。
【請求項22】
前記第1の電流収集層及び/又は前記第2の電流収集層は、開放側に複数の凹部を含み、各前記凹部は、前記少なくとも1つの貫通孔に対応し、前記ゲート層は、前記凹部内に配設されることを特徴とする、請求項20に記載のリチウム電池。
【請求項23】
前記複合塩層は、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー又は液体金属から作製される保護層によって覆われることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項24】
制限層は、溶融状態の前記複合塩層の流れの方向を抑えるように、前記熱暴走抑制要素の側壁に囲まれて配設され、前記制限層は、溶融状態で前記複合塩層に対して不活性であることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項25】
前記電気化学反応システムは、O=S=O化学結合を有する電解質塩を含むことを特徴とする、請求項9に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の安全機構に関し、詳細にはリチウム電池のための熱暴走抑制要素及び関連する利用(THERMAL RUNAWAY SUPPRESSION ELEMENT AND THE RELATED APPLICATIONS)に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等のリチウム電池は、車両、民生及び産業用途でのウェアラブル製品、可搬デバイス、及びエネルギー貯蔵デバイス等の様々な製品で広範に使用され、日常生活のほぼ全ての分野で利用されている。
その一方で、携帯電話の電池や電気自動車のリチウム電池に関する火災事故や爆発事故等が発生している。
これらの現象は、全て、リチウム電池が依然として安全性の問題に関して包括的で効果的な解決策がないためである。
【0003】
リチウム電池における火災又は爆発という危険な事象の主な原因は、熱暴走である。
また、リチウム電池の熱暴走の主な原因は、熱分解による発熱反応の結果の熱であり、この熱分解は、電池内のSEI(固体電解質界面)膜、電解質、結合剤、並びに陽極活性材料及び陰極活性材料の昇温によって誘発される。
熱暴走を抑制する現在の対策法は、安全機構のために起動する場所に応じて、2つのタイプ、即ち、電池の外側タイプと電池の内側タイプに分類できる。
電池の外側タイプの場合は、デジタル演算シミュレーションを使用する監視システムを利用する。
電池の内側タイプの場合、物理的又は化学的な方法に更に分割できる。電池の外側のデジタル監視システムにおいて、電池の外側で専用保護回路及び専用管理システムを利用し、使用過程の間、電池の安全性の監視を強化する。
電池セルの昇温における熱遮断隔離体等、電池の内側タイプの物理的な方法の場合、隔離体の穴は、イオンの通過を遮断するように閉鎖される。
【0004】
電池の内側の化学的なタイプの場合、規模制御タイプ又は電気化学反応タイプに大別できる。
規模制御タイプにおいては、熱暴走の規模を制御するため、難燃剤が電解質に添加される。
電気化学反応タイプの例は、以下の通りである:
a.モノマー又はオリゴマーが電解質に添加される。重合は、温度が上昇した際に生じ、イオン移動速度を低減させる。したがって、イオン伝導率は、温度が上昇するにつれて低減し、電池セル内の電気化学反応速度は減速する。
b.陽極温度係数(PTC)抵抗材料は、陽極層又は陰極層と、隣接する電流収集層との間に挟まれる。電池セルの温度が上昇すると、絶縁能力が向上する。陽極層又は陰極層と、隣接する電流収集層との間の電力伝達効率は低減し、電気化学反応速度も低減する。
c.修飾層を陽極活性材料の表面上に形成する。電池の温度が上昇すると、修飾層は、稠密膜に変換され、これにより、電荷移動抵抗を増大させ、電気化学反応速度を低減させる。
【0005】
しかし、上記した方法は、熱暴走を抑制する1つの態様を目的とするにすぎない。
熱暴走を抑制する迅速で複数の態様の高効率の複合的な方法は、依然として提案されていない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、上述した問題を軽減するか、又はなくすための、リチウム電池のための熱暴走抑制要素及び関連する利用を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リチウム電池のための熱暴走抑制要素及び関連する利用を提供することは、本発明の一目的である。
リチウム電池の内側又は外側に配設される熱暴走抑制要素は、90から150℃で溶融し、電気化学反応システムと反応する。
活性材料は、放出される熱エネルギーがより高い状態から、放出される熱エネルギーがより低い状態に熱力学的に安定(即ち、非活性又は不活性)となる。
SOC(充電状態)は、溶融状態の熱暴走抑制要素によるアルミニウム電流収集層のエッチングのおかげで低減する。
また、上述の工程の間、活性材料及び固体電解質の表面は、イオン及び電子の伝導率を低減するように汚染又は不活性化される。
液体、ゲル又はゼリー電解質は重合、炭化され、イオン輸送を遮断する。
したがって、熱暴走事象及びこれに派生する問題は、複数の態様を同時に発生させる本発明によって効率的に解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の事項を実施するため、本発明は、充電及び放電するように動作可能なリチウム電池に適合された熱暴走抑制要素を開示する。熱暴走抑制要素は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層を含む。複合塩層は、90から150℃の間の溶融点を有する。これら単一無機塩の陰イオンは、無機陰イオンであり、単一無機塩の少なくとも1つは、好ましくは両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含む。
【0009】
本発明は、熱暴走抑制要素を有するリチウム電池を更に開示し、熱暴走抑制要素は、パッケージ構成要素と、パッケージ構成要素によってパッケージ化される電気化学反応システムと、パッケージ構成要素の内側又は外側に配設される熱暴走抑制要素とを含む。熱暴走抑制要素は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層を含む。複合塩層は、90から150℃の間の溶融点を有する。単一無機塩は、無機陰イオンを含み、単一無機塩の少なくとも1つは、両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含む。
【0010】
本発明の利用の更なる範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかになるであろう。
詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例として示されるにすぎないことを理解されたい。
【0011】
本発明は以降の詳細な説明からより完全に理解される。以降の詳細な説明は一例にすぎず、本発明は以降の実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の不活性化される陽極活性材料粉体の実施形態の概略図である。
図1B】本発明の不活性化される陽極活性材料粉体の実施形態の概略図である。
図1C】本発明の不活性化される陰極活性材料層が実施形態の概略図である。
図2A】本発明の熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図2B】本発明の熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図2C】本発明の熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図2D】本発明の熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図3】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図4】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図5】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図6】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図7】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図8】本発明の熱暴走抑制要素の別の実施形態の概略図である。
図9】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図10】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図11】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図12】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図13】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図14】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
図15】本発明のリチウム電池内に利用される熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態に関して、特定の図面を参照しながら本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。
特許請求の範囲内のあらゆる参照符号は、範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
説明する図面は、概略にすぎず、非限定的である。図面において、要素の一部のサイズは、説明のために誇張されており、一定の縮尺で描かれていない場合がある。
【0014】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的であり、一般的な発明概念を限定することを意図しない。
本明細書で使用する単数形「1つの(a、an及びthe)」は、文脈が明らかに別段に規定しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
別段に規定しない限り、本明細書で使用される全ての(技術及び科学用語を含む)用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
一般に使用される辞書で規定される用語等の用語は、関連技術の背景における意味に一致する意味を有するものとして解釈すべきであり、別段に明確に規定しない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈すべきではないことを更に理解されたい。
【0015】
本明細書の全体を通じて、「一実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、当該実施形態に関して説明する特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含められることを意味する。
したがって、本明細書全体を通じて様々な場所における句「一実施形態では」又は「ある実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではないが、同じ実施形態を指す場合がある。
更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態では、当業者には明らかであるように、本開示からあらゆる適切な様式で組み合わせ得る。
【0016】
本発明は、複合塩を含むリチウム電池のための熱暴走抑制要素に関する。
複合塩は、90から150℃で液体状態に溶融する。
【0017】
リチウム電池の温度が90から150℃に達すると、リチウム電池のパッケージ構成要素の内側又は外側に配設された固体状態の複合塩は、液体状態に溶融する。
溶融した複合塩は、流動性を有し、リチウム電池のパッケージ構成要素内に配設された電気化学反応システムの一部の組成物と反応し、リチウムイオンを抽出又はリチウムイオンを挿入する。即ち、充電及び放電するように動作可能である。
【0018】
上述のパッケージ構成要素は、電気化学反応システムを外側環境から隔離するために使用される構成要素である。
【0019】
上述の電気化学反応システムは、通常、リチウムイオンを放電可能に充電し得る陽極活性材料層と、リチウム金属、リチウム合金、又はリチウムイオンで遊離可能にドープし得るあらゆる他の材料とし得る陰極活性材料層と、陽極活性材料層と陰極活性材料層との間に挟まれる隔離体と、電解質とを含む。
【0020】
電解質は、陽極活性材料層及び陰極活性材料層、結合剤等の中に含浸又は充填される。
溶融複合塩は、陽極活性材料粉体上に陽極不活性化層を形成する。
例えば、溶融複合塩は、電解質、結合剤等と反応し、不活性化構造51を陽極活性材料粉体52の表面上に形成する。
不活性化構造51は、殻層とみなされ、陽極活性材料粉体52は、核層とみなされる。
【0021】
殻層及び核層は、図1Aに示す不活性化活性材料粉体50を形成する。
この条件において、この核層のサイズは、陽極活性材料粉体50のサイズに等しい。
【0022】
更に、不活性化構造51は、リチウム化合物層53を更に含む。
リチウム化合物層53は、図1Bに示すように、陽極活性材料粉体52の組成物と反応させることによって形成される。
この条件において、未反応の陽極活性材料粉体52は、核層56である。
不活性化構造51は、陽極活性材料粉体52を完全又は部分的に覆い得る。
【0023】
上述のリチウム電池は、非使い捨て電池であり、デバイスに電力を供給するように電子的又は機械的デバイス上に組み付けられる。
【0024】
陰極の場合、溶融複合塩は、陰極活性材料、又は電解質、結合剤等の他の組成物と反応し、安定な化合物を形成させ、陰極活性材料層54を覆う。
安定な化合物は、不活性化層55として働く。
【0025】
図1Cを参照して説明する。陰極活性材料は、リチウム箔若しくは板、リチウム合金板、例えば、リチウム-シリコーン合金、リチウム-スズ合金、リチウム-インジウム合金等の形態のリチウム金属、又は炭素材料等、リチウムイオンで遊離可能にドープし得るあらゆる他の材料から作製し得る。
【0026】
電解質は、非水溶性有機電解質、ゲル電解質、ゼリー電解質、単一固体電解質、少なくとも2つの固体電解質の組合せ、液体電解質、ゲル電解質若しくはゼリー電解質と組み合わせた固体電解質、又はそれらの任意の組合せ等の液体電解質とし得る。
【0027】
固体電解質は、酸化物ベースの固体電解質、硫化物ベースの固体電解質、ポリマー電解質、窒化物ベースの固体電解質、ハロゲン化物ベースの固体電解質、水素化物ベースの固体電解質等のあらゆる他の電解質等とし得る。
【0028】
酸化物ベースの固体電解質は、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)電解質又はオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)固体電解質等のリン酸塩ベースの固体電解質とし得る。
【0029】
本発明の溶融複合塩層は、アルミニウム電流収集層をエッチングし、放電効果を生じさせ、SOC(充電状態)を低減させる。
【0030】
また、活性材料及び/又は固体電解質の表面は、イオン及び電子の伝導率を低減するように汚染又は不活性化される。
液体、ゲル又はゼリー電解質は重合、炭化され、イオン輸送を遮断する。
【0031】
例えば、開環重合が可能な炭酸ベースの液体電解質は、溶融後、本発明の複合塩層のAlCl又はLiCl等の組成物によって開環重合を実施する。
炭酸ベースの液体電解質は、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)又は炭酸エチレン(EC)又は炭酸フルオロエチレン(FEC)等の環式炭酸塩とし得る。
【0032】
更に、リチウム電池の電解質塩のO=S=O化学結合は、破壊され、ポリマーベースの電解質を炭化する。
【0033】
O=S=O化学結合を伴う電解質塩は、CO2n+1 、SOCnF2n+1 、SO(CO)CH 、SO(C、SO(CFSO 2-、SO(C)SO 2-、PO(C2n+12-、PO(C2n+1 、BF(SO2n+1、BF(SO2n+1 、BF(SO2n+1 、B(SO2n+1 、BF(PO、BF(PO 、BF(PO、PF(SO2n+1、PF(SO2n+1 、PF(SO2n+1 、PF(SO2n+1 、PF(SO2n+1 、PF(PO、PF(PO 、PF(PO 、N(COC2n+1 、N(SO2n+1 、N(SO2n+1 、N(COC2n+1)(SO2n+1、N(SO)(SOCF、N(SO 、N(SOSO、N(SOSO、CO(NSOF) 2-、SO(NSO2n+1 2-、(CF(SONSOCF 2-、N(SOO(CO)CH 、N(SOSO 3-、N(SOCHCO 3-、N(SOCHCO(C)SO 3-、(C)(SONSOCF 2-、O((C)SONSOCF 2-、(C)(OCO)(SONSOCF 2-、N(SONSOF2-、N(CONSNSO、N(SONSNSO、C(SO2n+1 、C(SO2n+1 (TriTFSM)、CH(SO2n+1 、SO(NCN) 、N(SO2n+1)(CN)、C(SO2n+1)(CN) 、C(SO2n+1(CN)、SO(C(CN) 、N(COC2n+1)(CnF2n+1、N(SO2n+1)(C2n+1、N(SO2n+1)(C、N(SO(CN)) 、N(PO(CN) 、C(SOS(CF))(CN) 、N(SO2n+1)(SOCN)、N(PO(CnF2n+1)(PO(CN)、S(OCH)(NSOCF 、N(C(CF)NSONC(CF))、Al(N(SOCF(O(CH(HO)CH 、PO(NSOCF -3等を含有する塩とし得る。
【0034】
複合塩層は、90~150℃の間の溶融点を有する。
複合塩は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる。
【0035】
単一無機塩は、無機陰イオンを含む。
単一無機塩の少なくとも1つは、好ましくは、両性金属イオン又はアルカリ金属イオンである陽イオンを含む。
陽イオンが両性金属イオン又はアルカリ金属イオンのみであることの限定はない。
【0036】
例えば、陽イオンは、鉄イオンとし得る。単一無機塩は、LiNO、AlCl、NaCl、KCl、LiCl、AlBr、Ca(NO、NaNO、KNO、ZnCl、FeCl、FeBrとし得る。
【0037】
例えば、共晶混合物は、61:26:13の比率でAlCl、NaCl及びKClを含有するか、59:29:1の比率でAlCl、NaCl及びKClを含有するか、75:16:9の比率でAlCl、NaCl及びKClを含有するか、76:11:5:8の比率でAlCl、NaCl、KCl及びLiClを含有するか、25:45:5:25の比率でNaNO、KNO、LiNO及びCa(NOを含有するか、65:5:5:25の比率でNaNO、KNO、LiNO及びCa(NOを含有するか、又は45:25:5:25の比率でNaNO、KNO、LiNO及びCa(NOを含有する。
【0038】
更に、複合塩層をより迅速に溶融させるため、有機塩を添加する。
有機塩は、テトラブチルアンモニウムクロリド(mp=70℃),1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(mp=41℃)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(mp=84℃)、テトラブチルアンモニウムブロミド(mp=103℃)、テトラヘプチルアンモニウムブロミド(mp=89℃)、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(mp=61℃)とし得る。
【0039】
本発明の熱暴走抑制要素の実施形態の概略図である図2A図2Dを参照して説明する。
熱暴走抑制要素10は、少なくとも2つの単一無機塩を含有する共晶混合物によってもたらされる複合塩層15を含む。
【0040】
図2Aに示すように、共晶混合物は、冷却後に複合塩層15を形成するように、基体13の表面上に被覆される。
【0041】
図2Bに示すように、共晶混合物は、粉体14を形成するように粉砕される。
また、粉体14は、複合塩層15を形成するように、溶媒を必要としない膜形成接着剤16を介して基体13上に被覆される。
代替的に、粉体14は、静電噴霧によって基体13の表面上に取り付けられる。
【0042】
電荷のために、粉体14は互いに引きつけられる。接着剤も静電噴霧において使用し得る。
接着剤は、乾式、溶媒不含であり、高温で接着をもたらすものでなければならない。
【0043】
基体13は、熱暴走抑制要素10が配設されるダミーの基体又は表面とし得る。
上述の膜形成接着剤16は、ポリアクリレートラテックス、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)から作製し得る。
また、膜形成接着剤16は、非液体金属と比較して、比較的低い溶融点を有する熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー又は液体金属から作製し得る。
【0044】
基体13は、銅又はガラス等の材料から作製され、溶融状態の複合塩層15と反応しない。
また、基体13は、少なくとも1つの穴18を含んでも、含まなくてもよい。
【0045】
図2Cに示すように、基体13が1つの穴18を含む場合、基体13は、溶融複合塩層15の流れの方向を案内する案内層として働く。
穴18を有する基体13は、溶融状態の複合塩層15と反応しない積層酸化金属粒子、又は穴18を形成する織ガラス繊維から作製される。
【0046】
更に、図2Dを参照して説明する。共晶混合物は、冷却後に複合塩層15を形成するように、基体13の穴18に充填される。共晶混合物は、基体の穴18内に配設される。代替的に、基体13は、複合塩層15内に埋め込まれる。
【0047】
熱暴走抑制要素10は、リチウム電池の安全機構として働くように、リチウム電池に適合する。
熱暴走抑制要素10は、リチウム電池のパッケージ構成要素の内側又は外側に配設される。
熱暴走抑制要素10がリチウム電池のパッケージ構成要素の外側に配設される場合、パッケージ構成要素は、溶融熱暴走抑制要素10が90から150℃の間の温度でリチウム電池に入る少なくとも1つの貫通孔を有する必要がある。貫通孔の一端は、熱暴走抑制要素10に接続され、もう一端は、リチウム電池の電気化学反応システムに接続される。
【0048】
例えば、貫通孔は、温度により誘発されるリチウム電池の連鎖反応によって生成されるガスを介して、パッケージ構成要素を傷つけるか、パッケージ構成要素上に事前に形成するか、溶融複合塩の組成物によってエッチングするか、又は外からの鋭利物体により穿孔させることによって、形成し得る。
【0049】
以下の好ましい実施形態は、単なる例示であって、この例示に限定されるものではない。
【0050】
図3に示す第1の実施形態の場合、リチウム電池20は、少なくとも1つの貫通孔22を含む。
貫通孔22の一端は、リチウム電池20の外側環境に露出され、もう一端は、電気化学反応システム24に接続される。電気化学反応システム24は、リチウム電池20の陽極活性材料層241と、隔離体242と、陰極活性材料層243とを含む。
暴走抑制要素10は、貫通孔22の一端を覆い、貫通孔22に接続する。
【0051】
リチウム電池20の温度が90から150℃に達すると、複合塩層15は溶融し、貫通孔22を介してリチウム電池20の電気化学反応システム24に入る。
溶融複合塩は、陽極活性材料及び陰極活性材料と反応し、陽極活性材料層241の陽極活性材料粉体、及び陰極活性材料層243の表面を覆い、リチウム電池20の電気化学反応を終結させる。
【0052】
図3に示すように、熱暴走抑制要素10は、リチウム電池20の第1の電流収集層26の外面上に配設される。
第1の電流収集層26は、サイズが1から15マイクロメートルに及ぶ複数の貫通孔22を有する。
【0053】
本実施形態では、熱暴走抑制要素10は、リチウム電池20の外側に配設される。
したがって、リチウム電池20の電気化学反応システムの効率又は組成に影響を及ぼさない。
【0054】
図3を参照して説明する。リチウム電池20は、第1の電流収集層26と、第2の電流収集層28と、接着剤枠(接着フレーム)29と、電気化学反応システム24と、隔離体242と、電解質システムとを含む。
【0055】
接着剤枠29は、第1の電流収集層26と第2の電流収集層28との間に挟まれる。
接着剤枠29の一端は、第1の電流収集層26に接着し、接着剤枠29のもう一端は、第2の電流収集層28に接着する。
第1の電流収集層26、第2の電流収集層28及び接着剤枠29は、囲繞空間を形成する(貫通孔22はここでは考慮しない)。
【0056】
電気化学反応システム24は、囲繞空間内に配置され、電気化学反応システム24は、第1の電流収集層26に隣接する陽極活性材料層241と、第2の電流収集層28に隣接する陰極活性材料層243と、陽極活性材料層241と陰極活性材料層243との間に位置する隔離体242と、電解質システムとを含む。
【0057】
隔離体242は、イオン伝導特性及び絶縁特性を有する。電解質システムは、囲繞空間内に位置し、イオン移動で使用するために陽極活性材料層241及び陰極活性材料層243内に含浸又は混合される。
更に、陽極活性材料層241及び陰極活性材料層243は、導電性材料及び接着剤材料を更に含み得る。
これらの部分は本発明の技術的特徴ではないため、ここでは詳細な説明を省く。
【0058】
更に、隔離体242の材料は、ポリマー固体電解質又は絶縁層から構成され、穴がポリマー材料上に形成され、表面上にセラミック粉体による被覆物を有する。
【0059】
また、隔離体242は、接着剤を使用してセラミック粉体のみを積層することによって形成してもよい。
セラミック粉体は、イオン伝導性を有さなくてよい。即ち、隔離体242は不活性セラミックであってもよく、又はイオン伝導性を有していてもよい。さらに隔離体242は非不活性セラミックであってもよい。
【0060】
図3において、第1の電流収集層26、第2の電流収集層28及び接着剤枠29は、リチウム電池30のパッケージ構成要素として使用される。
したがって、貫通孔22を考慮しない場合、リチウム電池20の電気化学反応システムは、外側環境から隔離するように、パッケージ構成要素によってパッケージ化される。
【0061】
接着剤枠29は、接着剤枠29が第1の電流収集層26及び第2の電流収集層28の表面に接着し、電解質システムに対する耐久性がある限り、特定の要件を伴わずにポリマー材料から作製される。接着剤枠29としては、熱硬化性樹脂、例えばシリコーンが好ましい。
【0062】
更に、熱暴走抑制要素10と電気化学反応システムとの相互作用が、事前形成した貫通孔22を介して生じないようにするため、図4に示すように、除去可能なゲート層31は、貫通孔22を一時的に閉鎖するように、第1の電流収集層26の外面上に配設される。
【0063】
ゲート層31は、電解質システムに対して優れた抵抗を有する材料から作製される。
ゲート層31は、約90~110℃でひびが入り、いくつかの穴を形成する。
【0064】
溶融複合塩層15は、リチウム電池20の電気化学反応システムに入る。
【0065】
ゲート層31は、ゲート層31の温度が上述の温度に達する前に電解質が熱暴走抑制要素10に影響を及ぼさないために使用される。
ゲート層31は、例えば、溶融状態の熱暴走抑制要素10の溶融複合塩層15との脱重合反応を実施し得るシリコーンポリマーから作製し得る。
【0066】
したがって、ゲート層31は、温度によってだけでなく、溶融複合塩層15との脱重合によってもひびが入り、ゲート層31に穴を形成するのを加速する。
【0067】
更に、本発明の熱暴走抑制要素10は、2つのリチウム電池20の間に配設し得る。
図5を参照して説明する。上述の2つの積層リチウム電池30を接続するため、タブが利用される。
【0068】
6を参照して本発明の熱暴走抑制要素を有するリチウム電池の別の実施形態について説明する。
本実施形態では、複数の隆起部32が第1の電流収集層26の開放側に位置する。
隆起部32は、不活性金属、ガラス、又は複合塩層15と反応しないポリマーから作製される。
【0069】
第1の電流収集層26の隆起部32から露出される部分は、凹部を形成し、各凹部は、少なくとも1つの貫通孔22に対応する。
ゲート層31及び熱暴走抑制要素10は、連続的に凹部内に埋められる。
隆起部32は、熱暴走抑制要素10ほど外部環境の変動に反応しない。
【0070】
上述の外部環境の変動とは、温度、pH、又は電解質濃度の変化である。
例えば、外部環境の変動が温度である場合、そのような構造下、隆起部32と比較して、熱暴走抑制要素10は、温度変動によって溶融が最初に生じる。
【0071】
隆起部32は損害を受けないため、遊離したイオンは隆起部32の周囲領域の内側に制限され、稼働方向がゲート層31及び第1の電流収集層26に抑えられ、無効な流れを回避する。
【0072】
ゼリーロール型リチウム電池、正方形型リチウム電池又はアルミニウム・バッグ型リチウム電池内で利用する場合、本発明の熱暴走抑制要素10は、パッケージ・ケースと電気化学反応システムとの間に配設される。
【0073】
例えば、図7に示すように、本発明の熱暴走抑制要素10は、ゼリーロール型リチウム電池30のパッケージ・ケース37と電気化学反応システム35との間に位置する空間内に配設される。
更に、本発明の熱暴走抑制要素10は、電気化学反応システム及び熱暴走抑制要素10が互いに影響を与えないように、保護層33によって完全に覆われる。
保護層33は、熱反応性分解材料又はゲート層31と同じ材料から構成し得る。
【0074】
図2A図2Dに示す上記実施形態におけるシート状熱暴走抑制要素10を除き、共晶混合物は、球形構造17を形成し得る。
【0075】
図8を参照して説明すると、保護層19は、球形構造17上に被覆される。
保護層19は、高温で溶融する熱硬化性ポリマー、高温で脱重合するシリコーン若しくはシリコーンポリマー等の熱可塑性ポリマー、又は比較的低い溶融点を有する液体金属から作製される。
【0076】
本実施形態では、球形構造17を有する熱暴走抑制要素10は、全ての種類のリチウム電池の陽極活性材料、陰極活性材料、又は電解質に添加し得る。
【0077】
リチウム電池は図3に示す電流収集層と接着剤枠とを具備するパッケージ構成要素を含むべきであり、貫通孔22は必ずしも必要ではない。
更に、球形構造17は、ガラス繊維等、溶融複合塩を吸収可能な材料も含み得る。
【0078】
以下の実施形態では、熱暴走抑制要素10の溶融複合塩は、アルミニウム電流収集層をエッチングし、リチウム電池の電気化学反応システムに入ることができる。
したがって、陽極活性材料及び陰極活性材料は不活性化される。
【0079】
図9を参照して説明する。本発明の熱暴走抑制要素10は、リチウム電池20の第1の電流収集層26の外面上に配設される。第1の電流収集層26は、アルミニウムから構成される。
【0080】
電流収集層がパッケージ構成要素として働くリチウム電池20の温度が90から150℃に達すると、熱暴走抑制要素10の複合塩層15は溶融し、第1の電流収集層26をエッチングする。
第1の電流収集層26がエッチングされると、溶融複合塩はリチウム電池20に入る。
【0081】
溶融複合塩は、陽極活性材料粉体及び/又は陰極活性材料層の表面を覆い、不活性化層を形成する。
したがって、イオン及び電気の伝導率は、エッチング、不活性化又は重合等の複数の態様が同時に発生する方法によって低減する。
【0082】
図10を参照して説明する。熱暴走抑制要素10は、2つの積層リチウム電池30の間に配設し得る。
2つの積層リチウム電池30を直列に接続する場合、U字形金属シート34は、積層リチウム電池30を接続するために利用される。
【0083】
U字形金属シート34は、熱暴走抑制要素10によってエッチングし得る材料、又は金属メッシュから作製される。
U字形金属シート34は、2つの平行腕材341と、2つの平行腕材341を接続する横材342とを含む。
2つの平行腕材341及び横材342は、熱暴走抑制要素10を収容する空間323を形成する。
【0084】
平行腕材341の一方は、リチウム電池20の第1の電流収集層26上に配設され、別の平行腕材341は、別のリチウム電池20の第2の電流収集層28上に配設される。
したがって、2つのリチウム電池20は、電気的に接続される。
【0085】
図12を参照して説明する。エッチング方向のための制限層36は、熱暴走抑制要素10の側壁に囲まれて配設される。
制限層36は、熱暴走抑制要素10ほど外部環境の変動に反応しない。
【0086】
制限層36の2つの端面は、電池20の第1の電流収集層26及び第2の電流収集層28に隣接するか又はこれらに対して配設される。
【0087】
上述の外部環境の変動は、温度、pH、又は電解質濃度の変化である。
例えば、外部環境の変動が温度である場合、そのような構造下、制限層36と比較して、熱暴走抑制要素10の複合塩15は、温度変動によって溶融が最初に生じる。
【0088】
したがって、周囲の制限層36は損傷を受けないため、熱暴走抑制要素10の遊離イオンの稼働方向は、制限層36の周囲領域の内側に抑えられる。
上述の制限層36は、溶融複合塩15と反応しない不活性金属、ガラス又はポリマーから作製し得る。
【0089】
図13を参照して説明する。本実施形態では、第1の電流収集層26の開放側面は、開口を有する複数の凹部38を有する。
熱暴走抑制要素10は、凹部38内に充填される。
したがって、凹部38の側壁は、熱暴走抑制要素10のエッチング方向を制限するように使用し得る。エッチングすべき厚さも低減される。
【0090】
また、図14に示すように、複数の隆起部39が第1の電流収集層26に位置する。
隆起部39は、不活性金属、ガラス又はポリマーから作製される。第1の電流収集層26の隆起部39から露出される部分は、熱暴走抑制要素10を保管するための凹部38を形成する。
【0091】
又は第1の電流収集層26の開放側面は、第1の電流収集層26を貫通しない複数の予備細穴41を含む。
予備細穴41は、図15に示すように、エッチングを促進するために使用される。
【0092】
更に、エッチング方法を介する上述の実施形態では、熱暴走抑制要素の基体は、直接的に、リチウム電池の電流収集層とし得る。
複合塩層と電流収集層との間の接触を改善するため、複合塩に、複合塩層に対して不活性であるナノメートルサイズのセラミック粒子が充填される。
溶融複合塩の間隙充填能力は、ナノメートルサイズの不活性セラミック粒子の重量及び表面張力のおかげで改善される。
【0093】
したがって、本発明は、リチウム電池の熱暴走抑制要素及び関連する利用を提供する。
熱暴走抑制要素は、リチウム電池の温度に基づき活性化する。
活性化すると、熱暴走抑制要素は、電気化学反応システムの組成物と反応する。
不活性化層は、陽極活性材料粉体及び/又は陰極活性材料層の表面を覆うように形成される。活性材料は不活性になる。
【0094】
また、SOC(充電状態)は、アルミニウム電流収集層のエッチングのおかげで低減する。
固体電解質と固体電解質との間の界面等、イオン移動のための界面は汚染又は不活性化され、イオン及び電気の伝導率を低減する。
【0095】
液体、ゲル又はゼリーの電解質は、重合、炭化され、ポリマー電解質のための構造を損傷し、イオン移動を遮断又は低減する。
したがって、リチウム電池の温度が所定の温度に達すると、本発明の熱暴走抑制要素は、複数の態様を同時に発生させる上述の方法を実施し、電気化学反応を迅速に終結し、リチウム電池の安全性を改善し、リチウム電池の熱暴走を効果的に迅速に終結し得る。
【0096】
このように説明する発明は、多数の様式で変更し得ることは明らかであろう。
そのような変形形態は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とみなすべきではなく、全てのそのような修正形態は、当業者には明らかであるように、特許請求の範囲に含まれる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15