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特開2023-35992ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法、それから製造されたポリイミドフィルム形成用組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035992
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法、それから製造されたポリイミドフィルム形成用組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
C08G73/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136228
(22)【出願日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114438
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043SA06
4J043TA22
4J043TA26
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB012
4J043UB121
4J043XA04
4J043XA16
4J043XA34
4J043ZB11
4J043ZB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】顔料の分散性を著しく向上させることができるポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、ブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップを含む。また、前記顔料分散液中における無機顔料の平均粒度が10~100nmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップを含むポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法であって、
前記顔料分散液中における無機顔料の平均粒度が10~100nmである、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記無機顔料の固体相の平均粒度が10~70nmである、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記無機顔料は、ポリアミック酸の固形分を基準として10~1,500ppmで含まれる、請求項2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項4】
前記顔料分散液は、無機顔料と分散剤を1:0.01~1:1の重量比で含む、請求項2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ブルー系の無機顔料は、天然鉱物;または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属または金属酸化物;を含む、請求項2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記無機顔料の最大吸収波長が520~650nmである、請求項2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ポリアミック酸樹脂は、ジアミンから誘導された構造単位および二無水物から誘導された構造単位を含むものである、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、下記の関係式1を満たすように有機溶媒を追加投入して粘度を調節するステップをさらに含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[関係式1]
5,000≦VPI≦40,000
前記関係式1において、
PIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分の含量が14重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計にて25℃で52Zスピンドルを用いて、Torque 80% 2分を基準として測定された粘度(単位、cp)である。
【請求項9】
前記ポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、添加剤を投入するステップをさらに含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記添加剤は、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項11】
前記無機ナノ粒子の平均直径が5~50nmである、請求項10に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項13】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項10に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の製造方法により製造された、ポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のポリイミドフィルム形成用組成物を硬化して得た、ポリイミドフィルム。
【請求項16】
厚さが20~500μmであり、ASTM D1003によるヘイズが2以下であり、ASTM E131による黄色度(YI)が8以下である、請求項15に記載のポリイミドフィルム。
【請求項17】
ASTM E111によるモジュラスが5GPa以上である、請求項15に記載のポリイミドフィルム。
【請求項18】
請求項15に記載のポリイミドフィルムを含む、画面表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法、およびそれから製造されたポリイミドフィルム形成用組成物、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置の基板およびカバーウィンドウなどの素材であって、強化ガラスに代替できる次世代素材として注目されている。しかし、ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に適用するためには、固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を付与することが必須である。さらに、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能にするためには、機械的な物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリイミドフィルムの要求性能は益々高度化している。
【0003】
そのために、多様な構造の単量体を組み合わせるか変更して、CTC効果を減少させるための研究が続けられているが、依然として残留黄色が現れ、フィルムの厚さが厚くなるほど黄色度が増加するという限界がある。また、ポリイミドフィルムに染料または顔料を添加する方法が提示されているが、このような試みは、フィルムの黄色度特性が改善されても、染料および顔料の分散性などの問題により光透率およびヘイズ特性が低下し得るという限界がある状況である。
【0004】
したがって、ディスプレイ装置の基板は言うまでもなく、カバーウィンドウ代替素材を含む多様なディスプレイ素材分野に適用できるように、黄色度、ヘイズおよび透過度などを同時に満たし、優れた光学的物性を有し、且つ固有の優れた機械的物性が低下しないようにすることで、適用範囲をさらに拡大できるようにするポリイミドフィルムの技術開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0130386号公報(2020.11.18.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、顔料の分散性を著しく向上させることができるポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0007】
また、一実施形態は、低い黄色度および低いヘイズ値の物性を同時に満たし、優れた光学的物性を実現するとともに、優れた機械的強度を実現することができるポリイミドフィルムを提供する。
【0008】
さらに、一実施形態は、強化ガラスなどに代替できるポリイミドフィルムおよびそれを含む画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、ブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップを含み、前記顔料分散液中における無機顔料の平均粒度は10~100nmであることを特徴とする。
【0010】
一実施形態に係る前記無機顔料の固体相の平均粒度は、10~70nmであってもよい。
【0011】
一実施形態に係る前記無機顔料は、ポリアミック酸の固形分を基準として10~1,500ppmで含まれてもよい。
【0012】
一実施形態に係る前記顔料分散液は、無機顔料と分散剤を1:0.01~1:1の重量比で含んでもよい。
【0013】
一実施形態に係る前記ブルー系の無機顔料は、天然鉱物;または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属または金属酸化物;を含むものであってもよい。
【0014】
一実施形態に係る前記無機顔料の最大吸収波長は、520~650nmであってもよい。
【0015】
一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂は、ジアミンから誘導された構造単位および二無水物から誘導された構造単位を含むものであってもよい。
【0016】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、前記顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、下記の関係式1を満たすように有機溶媒を追加投入して粘度を調節するステップ;をさらに含んでもよい。
【0017】
[関係式1]
5,000≦VPI≦40,000
(前記関係式1において、
PIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分の含量が14重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計にて25℃で52Zスピンドルを用いて、Torque 80% 2分を基準として測定された粘度(単位、cp)である。)
【0018】
一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、添加剤を投入するステップをさらに含んでもよい。
【0019】
一実施形態に係る前記添加剤は、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
一実施形態に係る前記無機ナノ粒子の平均直径は、5~50nmであってもよい。
【0021】
一実施形態に係る前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0022】
一実施形態に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0023】
また、一実施形態は、前記製造方法により製造された、ポリイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0024】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を硬化して得た、ポリイミドフィルムを提供する。
【0025】
一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、厚さが20~500μmであり、ASTM D1003によるヘイズが2以下であり、ASTM E131による黄色度(YI)が8以下であってもよい。
【0026】
一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、ASTM E111によるモジュラスが5GPa以上であってもよい。
【0027】
また、一実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含む、画面表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0028】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、組成物中の顔料の分散性を優れるようにすることができる。これにより、光透過率およびヘイズ特性が低下することなく黄色度が著しく改善されたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0029】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、強化ガラスと類似水準の機械的強度を有する厚さ範囲においても無色透明な光学的物性を実現することができ、虹色のムラが発生するレインボー現象などを低減させることができ、視認性を確保することができる。
【0030】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、曲げ特性にも優れて、屈曲による割れやクラックを防止することができる。
【0031】
すなわち、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、優れた光学特性を有するため、表示品質および視認性が著しく向上するだけでなく、柔軟性および機械的物性にも優れて、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置などの光学用途に有用に適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】(a)実施例1、(b)比較例2、および(c)比較例1によるポリイミドフィルム形成用組成物の写真である。
【0033】
図2】実施例および比較例で用いた顔料分散液中の顔料の平均粒度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。ただし、本発明は、様々な異なる形態で実現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものでもない。
【0035】
また、本明細書において用いられる技術用語および科学用語において他の定義がなければ、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明において本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0036】
本明細書の全般にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」ということは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味し得る。
【0037】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「ポリイミド」はイミド構造を含むものであって、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む意味として用いられることができる。
【0038】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイアティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイアティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0039】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体」は、(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物が互いに架橋して形成された架橋重合体を意味し、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、(メタ)アクリル基、例えば、(メタ)アクリレート基を含んでも含まなくてもよい。
【0040】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「球状(spherical)」は、通常の意味で表面が中心から実質的に等距離にある完全な球状だけでなく、角が形成されていない、球状に近い丸い形態も含むものを意味し得る。
【0041】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「角ばった無定形」は、粒子が角ばった形態であれば特に制限されず、例えば、四面体、六面体、および八面体などから選択される多面体状;棒状;および板状;などを含むものを意味し得る。
【0042】
以下、本明細書において別に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」または「上に」あるとするとき、これは他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その間にまた他の部分がある場合も含むものであることができる。
【0043】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
【0044】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AとBを同時に含む様態を意味するものであってもよく、AとBから択一された様態を意味するものであってもよい。
【0045】
以下、本明細書において別に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)と重合体(polymer)を含むものであってもよく、同種重合体と共重合体を含むものであってもよい。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを何れも含むものであってもよい。
【0046】
ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に応用するためには、ポリイミドフィルムの固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を付与することが非常に重要であり得る。これを解決するために、多様な構造の単量体の組み合わせによりCTC効果を低くし、無色透明なポリイミドを製造する研究が続けられてきた。しかし、上記の方法により製造された透明ポリイミドフィルムは、依然として残留黄色が現れることがあり、フィルムの厚さが厚くなるほど黄色度が増加するという限界がある。
【0047】
一方、透明ポリイミドフィルムの黄色度の残留問題を改善するために、ポリイミドフィルムに染料または顔料を含ませることができる。しかし、黄色度が改善されても、染料と顔料の分散性の問題によりポリイミドフィルムの光透過率およびヘイズ特性が低下するため、ポリイミドフィルムの黄色度が改善されてもヘイズおよび透過度特性が低下しないポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法が必要である。
【0048】
一実施形態は、ブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップを含み、前記顔料分散液中における無機顔料の平均粒度は10~100nmである、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0049】
ポリアミック酸および/またはポリイミドの重合が完了した後に顔料を後投入して分散させる場合には、顔料が均一に分散されることができず、ポリイミドフィルムのヘイズ特性が著しく低下する恐れがある。これに対し、ポリアミック酸および/またはポリイミドを重合するステップで顔料とポリアミック酸および/またはポリイミド単量体を共に投入する場合、顔料の安定した分散性を確保することができる。
【0050】
すなわち、ポリアミック酸および/またはポリイミドを重合するステップで顔料と単量体を共に投入することで、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性を著しく向上させることができ、これにより、硬化後にもヘイズおよび光透過率の低下なしに黄色度を改善することができる。また、一様態に係るポリイミドフィルムは、光学的物性だけでなく、機械的物性および柔軟性に優れて、フレキシブルディスプレイ装置に有用に用いられることができる。
【0051】
具体的に、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、ブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液の存在下で、ポリアミック酸樹脂を製造するステップを含んでもよい。
【0052】
すなわち、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、ポリアミック酸を重合するステップで前記顔料分散液と単量体を共に投入することを特徴とする。これにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性を著しく向上させることができ、優れた光学的物性を実現するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0053】
具体的に、一実施形態において、前記顔料分散液中における無機顔料の平均粒度は、30~100nmであってもよく、より具体的に50~100nm、より具体的に70~95nmであってもよい。無機顔料が上述の平均粒度で分散している顔料分散液を用いることにより、組成物中における顔料の分散性をさらに優れるようにし、ポリイミドフィルムのヘイズおよび透過度特性が低下することをさらに効果的に改善することができる。
【0054】
また、一実施形態に係る前記無機顔料の分散前の固体相の平均粒度は、10~70nmであってもよく、具体的には30~70nm、より具体的には50~70nmであってもよい。
【0055】
すなわち、一実施形態は、顔料分散液中における顔料同士の凝集現象を効果的に改善することができ、これをポリアミック酸の製造時に投入することにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性を優れるようにすることができる。無機顔料の平均粒度は、ポリイミドフィルムの光学的物性、例えば、透過度およびヘイズ特性を決定する要因として作用するので、顔料同士の凝集を防いで固体相の平均粒度を維持する場合、目的とする物性を実現することができる。例えば、上記のような固体相の平均粒度を有する無機顔料を用いるとしても、ポリアミック酸および/またはポリイミドの重合が完了した後に顔料を後投入して分散させる場合には、顔料が凝集して平均粒度が急激に増加することになり、ポリイミドフィルムのヘイズおよび透過度特性が著しく低下する恐れがある。
【0056】
一実施形態に係る前記無機顔料は、ポリアミック酸の固形分を基準として10~1,500ppm、具体的に10~1,000ppm、より具体的に10~500ppm、さらに具体的に10~100ppmで含まれてもよい。上述の範囲の無機顔料を含むことにより、ポリイミドフィルム形成用組成物の剤形安定性を損なうことなく、且つ硬化後のフィルムの光学的特性、例えば、黄色度をさらに優れるようにすることができる。ここで、前記ポリアミック酸の固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを意味し得る。
【0057】
一実施形態に係る前記顔料分散液は、無機顔料と分散剤を1:0.01~1:1の重量比、具体的に1:0.05~1:0.5の重量比、より具体的に1:0.05~1:0.2の重量比で含んでもよいが、これに必ずしも限定されるものではない。上述の重量比で混合された顔料分散液を用いることにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性をさらに優れるようにし、フィルムの黄色度およびヘイズなどの光学的物性を改善することができる。
【0058】
一実施形態に係る前記ブルー系の無機顔料は、例えば、天然鉱物;または、亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属または金属酸化物を含むものであってもよい。より具体的に、前記ブルー系の無機顔料は、コバルト、アルミニウムから選択される1つ以上の金属または金属酸化物を含むものであってもよく、さらに具体的に、コバルトとアルミニウムを含む金属酸化物を含むものであってもよい。
【0059】
具体的に、前記ブルー系の無機顔料は、520~650nm、例えば、550~650nm、例えば、550~620nmで最大吸収波長を有するものであってもよい。
【0060】
上述の範囲の最大吸収波長を有する無機顔料を用いることにより、ポリイミドフィルムの青色または紫色波長の光吸収現象を効果的に相殺させ、黄色度をさらに効果的に改善することができる。さらに、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造に用いられる単量体の種類と組成、またはポリイミドフィルムの光学的物性に応じて無機顔料の最大吸収波長の範囲を適宜選択することで、フィルムの黄色度およびヘイズは言うまでもなく、屈折率、厚さ方向の位相差などの光学的物性もさらに優れるようにすることができる。
【0061】
また、一実施形態に係る前記顔料分散液は、有機溶媒と混合して用いられてもよい。具体的に、前記顔料分散液と有機溶媒は、1:99~30:70の重量比、具体的に5:95~10:90の重量比で混合されて用いられてもよいが、これに必ずしも限定されるものではない。上述の重量比で有機溶媒と混合された顔料分散液を用いることにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性をさらに優れるようにすることができる。
【0062】
このとき、分散性をさらに向上させるために、有機溶媒に顔料分散液を投入した後、超音波などの手段が用いられてもよい。前記有機溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、アミド系溶媒を用いてもよい。前記アミド系溶媒は、アミドモイアティを含むものであって、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、ジメチルアセチルアミドを含むものであってもよい。
【0063】
一実施形態に係る前記分散剤は、顔料同士の凝集を防止し、顔料の分散性および分散安定性を向上させることができるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、顔料に吸着する官能基、および分散媒(前記有機溶媒)に対する親和性が高い官能基を有するものであってもよく、前記2つの官能基のバランスにより分散剤の性能が決定されることができる。前記分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に応じて種々のものが用いられることができる。例えば、一実施形態に係る顔料分散剤は酸性官能基を有するものであってもよく、この場合、酸性官能基が顔料に吸着するものであってもよい。前記酸性官能基は、例えば、カルボン酸(carboxylic acid)であってもよい。
【0064】
一実施形態に係る顔料分散液は、上記のような分散剤を用いることにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性をさらに優れるようにすることができるだけでなく、後続の硬化時にコーティング性をさらに向上させ、欠点生成を防止することができる。
【0065】
一実施形態に係る前記ポリアミック酸および/またはポリイミドは、ジアミン化合物から誘導された構造単位および二無水物化合物から誘導された構造単位を含むものであってもよい。
【0066】
一実施形態に係る前記ジアミン化合物は、ポリイミドを形成することができる化合物であれば特に制限されないが、例えば、芳香族ジアミン化合物であってもよい。前記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールから選択される1つまたは2つ以上の混合物が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0067】
具体的に、前記芳香族ジアミン化合物は、フッ素置換基が導入されたフッ素系芳香族ジアミン化合物であってもよく、例えば、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、またはこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。上記のようなフッ素系芳香族ジアミン化合物を用いることで、フッ素置換基の電荷移動効果(Charge Transfer effect)により、フィルムにさらに優れた光学的物性を付与することができる。また、ポリイミドフィルムの機械的強度をさらに優れるようにすることができる。
【0068】
一実施形態に係る前記二無水物は、ポリイミドを形成することができる化合物であれば特に制限されないが、例えば、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0069】
前記芳香族二無水物としては、例えば、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンハイドライド)、6FDA(4, 4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタリックアンハイドライド)、BPDA(ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、ODPA(オキシジフタリックジアンハイドライド)、SODPA(スルホニルジフタリックアンハイドライド)、6HDBA(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタリックアンハイドライド)、TDA(4-(2,5-ジオキソテトラヒドロプラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボキシリックジアンハイドライド)、PMDA(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、およびBTDA(ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)から選択される1つまたは2つ以上の混合物が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0070】
具体的に、前記芳香族二無水物は、BPDA(ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド)を含んでもよい。上記のような芳香族二無水物を用いることにより、ポリイミドフィルムの光学物性の向上だけでなく、機械的強度、特にモジュラスをさらに効果的に改善させることができる。
【0071】
前記脂環族二無水物化合物としては、例えば、CBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、DOCDA(5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボシリックジアンハイドライド)、BTA(ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボキシリックジアンハイドライド)、BODA(ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボキシリックジアンハイドライド)、CPDA(1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、CHDA(1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、TMDA(1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタンジアンハイドライド)、TCDA(1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタンジアンハイドライド)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0072】
より具体的に、一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂は、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、およびBPDA(ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド)から誘導された構造単位を含み、前記単量体の組み合わせと共に、420~580nmの吸収波長を有する無機顔料を用いることにより、ポリイミドフィルムの黄色度をさらに効果的に改善することができる。
【0073】
また、一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂は、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位をさらに含むポリアミドイミドであってもよい。前記芳香族二酸二塩化物は、高分子鎖内にアミド構造を形成するものであって、フィルムの光学特性を低下させない範囲でモジュラスを含む機械的物性をさらに優れるようにすることができる。
【0074】
前記芳香族二酸二塩化物は、例えば、IPC(イソフタロイルジクロライド)、TPC(テレフタロイルジクロライド)、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボシリックジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボシリックジクロライド(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride)、NEC(1,5-ナフタレンジカルボシリックジクロライド(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0075】
以下、一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂の製造方法について具体的に説明する。
【0076】
一実施形態に係る前記ポリアミック酸樹脂の製造方法は、a)有機溶媒にブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液を投入して混合溶液を製造するステップと、b)前記混合溶液にジアミンを溶解させた後、二無水物を反応させてポリアミック酸樹脂を製造するステップと、を含んでもよい。
【0077】
上述のように、ポリアミック酸を重合するステップで単量体化合物と顔料分散液を共に投与することにより、ポリイミドフィルム形成用組成物中における顔料の分散性を著しく向上させることができ、光学的物性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0078】
ここで、前記有機溶媒は、ポリアミック酸の重合で一般に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。具体的に、ジメチルプロピオンアミドを含むものであってもよい。
【0079】
前記ステップb)において、ジアミンと二無水物は1:0.9~1:1.1のモル比で投入されることができる。このとき、重合条件は特に制限されないが、非活性気体の雰囲気下で重合反応を行うことがさらに好ましく、一例として、窒素またはアルゴンガスを反応器内に還流させながら行うことができる。また、反応温度は10℃~50℃、または20℃~40℃で行うことができ、反応時間は10時間~40時間、あるいは15時間~30時間行うことができるが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0080】
また、前記ステップb)において、芳香族二酸二塩化物をさらに投入することができる。この場合、ジアミン、二無水物および芳香族二酸二塩化物を同時に重合してもよく、または、ジアミンと芳香族二酸二塩化物とを反応させてアミン末端を有するオリゴマーを製造した後、前記オリゴマーと追加のジアミンおよび二無水物とを反応させて製造してもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。アミン末端を有するオリゴマーを製造した後、追加のジアミンおよび二無水物を反応させる場合には、ブロック型ポリアミドイミド樹脂が製造されることができ、フィルムの機械的な物性がさらに向上することができる。
【0081】
一実施形態に係る前記ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、特に制限するものではないが、10,000~100,000g/mol、または10,000~70,000g/mol、または10,000~60,000g/molであってもよい。上述の範囲の重量平均分子量を有することで、光学的物性、および機械的強度にさらに優れ、カールがさらに少なく発生するフィルムを提供することができる。
【0082】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、前記顔料分散液の存在下でポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、下記の関係式1を満たすように有機溶媒を追加投入して粘度を調節するステップをさらに含んでもよい。
【0083】
[関係式1]
5,000cp≦VPI≦40,000cp
(前記関係式1において、
PIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分の含量が14重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計にて25℃で52Zスピンドルを用いて、Torque 80% 2分を基準として測定された粘度(単位、cp)である。)
【0084】
ここで、前記固形分は、ポリアミック酸および/またはポリイミドであってもよく、後述の無機ナノ粒子を含む場合、ポリアミック酸および/またはポリイミドと無機ナノ粒子を含むものを意味する。
【0085】
具体的に、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の粘度(VPI)は、40,000~50,000、または30,000~40,000、または10,000~30,000であってもよく、組成物中に無機顔料が安定して分散していることを意味する。また、特定理論に拘束されるのではないが、上述の範囲の粘度値を満たすことにより、フィルムの形成時に薄膜工程に適用することが有利であり、コーティング性をさらに向上させて欠点生成を防止することができる。具体的に、コーティング工程時に発生する不良、例えば、表面バラツキ現象を効果的に防止することができ、ポリイミドフィルムのパッキング密度を阻害し無定形(amorphous)にして光学的物性をさらに向上させることができる。
【0086】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、前記ポリアミック酸樹脂を製造するステップの後に、添加剤を投入するステップをさらに含んでもよい。
【0087】
一実施形態に係る前記添加剤は、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0088】
具体的に、一実施形態において前記添加剤をさらに含む場合、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、a)有機溶媒にブルー系の無機顔料および分散剤を含む顔料分散液を投入して混合溶液を製造するステップと、b)前記混合溶液にジアミンを溶解させた後、二無水物を反応させてポリアミック酸樹脂を製造するステップと、c)前記ポリアミック酸樹脂に無機ナノ粒子および/または多官能性(メタ)アクリル系化合物を投入するステップと、を含んでもよい。
【0089】
一実施形態に係る前記無機ナノ粒子は、分散性を向上させるために、有機溶媒に無機ナノ粒子を投入してから超音波などの手段で分散した有機溶液の状態で投入することがさらに好ましい。また、前記無機ナノ粒子の表面を改質した表面処理された無機ナノ粒子を投入する場合、分散性をさらに向上させることができる。
【0090】
一実施形態に係る前記無機ナノ粒子は、球状の無機ナノ粒子、角ばった無定形の無機ナノ粒子、またはこれらの組み合わせを含み、球状の無機ナノ粒子のみを含む場合に、本発明が目的とする効果をさらに効果的に実現することができるが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0091】
一実施形態において、前記無機ナノ粒子をさらに含む場合、ポリイミドフィルムを形成するとき、加熱などの手段により前記ポリアミック酸樹脂と前記無機ナノ粒子との架橋が誘導されて架橋結合が形成されることができ、前記架橋結合は、前記無機ナノ粒子の全部または一部が架橋されることであってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0092】
前記無機ナノ粒子は、ナノサイズの粒子であって、そのサイズは平均直径が50nm以下であってもよく、例えば、30nm以下、例えば、20nm以下であってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。より具体的に、前記無機ナノ粒子のサイズは平均直径が5~50nm、より具体的には、5~30nm、さらに具体的には、5~20nmであってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0093】
前記無機ナノ粒子は、ポリアミック酸および/またはポリイミドの固形分100重量部に対して20~65重量部、例えば、20~50重量部、例えば、25~50重量部で含まれてもよい。上述の範囲の平均直径と含量を満たすことにより、フィルムの機械的、熱的物性を低下させない範囲内で前記架橋結合がより円滑に実現されることができ、フィルムの視認性および透明性などをさらに向上させることができる。
【0094】
一実施形態に係る前記無機ナノ粒子は、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含み、より具体的にはシリカであってもよいが、これに制限されるものではない。上述の無機ナノ粒子をさらに含むことにより、フィルムの光学的物性、特に、ASTM D1003規格によって400~700nmで測定された全光線透過率がさらに向上し、さらに改善された視野特性を有することができる。また、屈折率をさらに低くしてフィルムの透明性をさらに著しく向上させることができ、モジュラスもさらに向上して優れた機械的物性を有することができる。
【0095】
一実施形態に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物であって、前記(メタ)アクリル基は、例えば、(メタ)アクリレート基であってもよい。また、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0096】
具体的に、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、またはこれらの組み合わせを含み、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、またはこれらの組み合わせを含むが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0097】
一実施形態に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、後で加熱などの手段により多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体を形成することができ、前記架橋重合体は、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物の全部または一部が架橋されるものであってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。また、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、ポリイミドフィルム形成用組成物に分散して複合体(composite)を形成することができる。ただし、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体相互間の結合は化学的結合を含まず、例えば、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体は、互いに共有結合されないことがある。
【0098】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、ポリアミック酸および/またはポリイミドの固形分100重量部に対し、1~50重量部、例えば、1~40重量部、例えば、20~40重量部で含まれてもよい。上述の範囲の多官能性(メタ)アクリル系化合物をさらに含むことにより、フレキシブル特性を実現するとともに、それとtrade-off関係にある表面硬度および耐衝撃性が低下する現象が著しく改善されることができる。また、光学的物性もさらに向上し、フレキシブルディスプレイパネルのカバーウィンドウとして活用されるのに好適である。
【0099】
他の実施形態は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムである。
【0100】
一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、厚さが20~500μm、例えば30~300μm、例えば50~100μmを満たすものであってもよい。また、一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、ASTM D1003によるヘイズが2以下、例えば1以下、例えば0.7以下であってもよい。また、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、上述のヘイズを満たすとともに、ASTM E131による黄色度(YI)が8以下、例えば、7以下、例えば6以下である物性を満たすことができる。すなわち、一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムは、ヘイズが低下せず、且つ黄色度が著しく改善されることができる。
【0101】
また、前記ポリイミドフィルムは、上述のような物性を満たすとともに、ASTM D1003規格によって400~700nmで測定された全光線透過率が80%以上、より具体的には85%以上、さらに具体的には90%以上であってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。上記範囲の高い光透過度を満たすことで、一実施形態に係るポリイミドフィルムは著しく改善された視野特性を有し、ウィンドウカバーフィルムに適用した際に、さらに改善された視野特性を発現することができる。
【0102】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、Instron社のUTM 3365を用いて50mm/minのエクステンション速度で測定されたモジュラスが5.0 GPa以上、例えば、6.0GPa以上、例えば、5.0~10.0GPa、例えば、6.0~10.0GPaであってもよいが、本発明の目的を達成する限り、必ずしもこれに限定するものではない。上記範囲のモジュラス物性を満たすことで、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、光学物性が著しく改善されるとともに、フィルムの機械的物性も従来のポリイミドフィルムに比べて全く低下しないという点で、優れた機械的、熱的、電気的特性を同時に満たし、その活用価値がさらに高いという利点がある。
【0103】
また、前記ポリイミドフィルムは、厚さ50μmで、厚さ方向の位相差(Rth)が3500nm以下であってもよく、例えば、3000nm以下であってもよく、より具体的には、1000~2500nmであってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。上記範囲の位相差を有することで、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、視認性および外観品質が著しく優れるため、ディスプレイを含んで多様な分野に活用されるのに非常に好適な光学物性を提供することができる。このとき、厚さ方向の位相差(Rth)とは、下記の計算式1から導き出される波長550nmにおける厚さ方向の位相差値を意味する。
【0104】
【化1】
ここで、nxはx方向への屈折率であり、nyはy方向への屈折率であり、nzはz方向への屈折率であり、dはポリアミドイミドフィルムの厚さ(μm)である。
【0105】
したがって、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、上記言及したように、優れた光透過度および低い厚さ方向の位相差(Rth)を満たすとともに、従来のポリイミドフィルムに比べて著しく低い黄色度およびヘイズ値を実現することができるため、光学物性が驚くべき改善されるという利点を有することができる。
【0106】
なお、また他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含む画面表示装置である。
【0107】
このとき、前記画面表示装置は、優れた光学物性を要求する分野であれば特に制限されず、具体的な例として、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などから選択される何れか1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0108】
以下、一実施形態に係る前記ポリイミドフィルムの製造方法について具体的に説明する。
【0109】
一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法は、a)上述のポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、b)前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップと、を含んでもよい。
【0110】
具体的に、前記ステップa)は、ガラスなどの基板に前記ポリイミドフィルム形成用組成物を塗布することであって、前記塗布方法としては、該当分野に通常用いられるものであれば制限されずに用いられることができる。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)、およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順次適用できることは言うまでもない。
【0111】
また、前記基板としては、該当分野において通常用いられるものであれば制限されずに用いられることができ、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス鋼;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロパン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などが使用できるが、これに制限されない。
【0112】
一実施形態に係る前記ステップb)において、前記乾燥は、ポリイミドフィルム形成用組成物中に存在する溶媒を除去するためのことであって、30~80℃、または40~80℃、または50~80℃で行われることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0113】
一実施形態に係る前記熱硬化は、80~450℃、または80~400℃、または80~350℃で行われることができる。
【0114】
具体的に、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、または100超~200℃で1分~2時間、または200超~450℃で1分~2時間行われることができ、これらから選択される2つ以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われることもできる。さらに具体的に、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間行われた後に、200超~450℃で1分~2時間、または300超~450℃で行われることもできる。また、熱硬化は、別の真空オーブン、または非活性気体で充填されたオーブンなどで行われることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0115】
また、前記硬化ステップは、化学的硬化によっても行われることができる。
【0116】
前記化学的硬化は、イミド化触媒を用いて行われることであってもよく、前記イミド化触媒の非限定的な一例としては、前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)等から選択される何れか1つまたは2つ以上が使用できるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0117】
一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布した後、常温で放置する放置ステップをさらに含んでもよい。
【0118】
前記放置ステップにより、フィルム表面の光学的物性をさらに安定して維持することができる。特定理論に拘束されるのではないが、従来のポリイミドフィルム形成用組成物は、硬化前にこのような放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部へ水分が拡散してポリアミック酸および/またはポリイミドと衝突し、フィルム表面から白濁が発生し、はじき現象が発生してコーティング不均一性が発生する恐れがある。これに対し、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、空気中に長時間放置されても白濁現象およびはじき現象がなく、向上した光学的物性を有するフィルムを確保することができるという利点を実現することができる。
【0119】
前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われることであってもよい。ここで、前記常温は40℃以下であってもよく、例えば、30℃以下であってもよく、例えば、25℃以下であってもよく、さらに具体的には15~25℃であってもよく、20~25℃であることが特に好ましい。また、前記高湿とは、例えば、50%以上、例えば60%以上、例えば、70%以上、例えば、80%以上の相対湿度であってもよい。前記放置するステップは、1分~3時間、例えば、10分~2時間、例えば、20分~1時間行われてもよい。
【0120】
一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸溶液に難燃剤、接着力向上剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などから選択される1つまたは2つ以上の添加剤を混合してポリイミドフィルムを製造することができる。
【0121】
以下においては、一実施形態の具体的な説明のために一実施例を挙げて説明するところ、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0122】
下記の実験において物性は、次のように測定した。
【0123】
<顔料分散液中における無機顔料の平均粒度>
【0124】
顔料分散液(NV=20wt%)をDMAc溶媒に4倍希釈したものをサンプルとして用い、Microtrac社[nanotrac UPA-EX150]装置を用いて平均粒度(D50値)を測定した。
【0125】
<重量平均分子量>
0.05MのLiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCは、Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用い、Columnは、Olexis、Polyporeおよびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を使用し、35℃、1mL/minのflow rateで分析した。
【0126】
<粘度(VPI)>
粘度は、plate rheometer(Brookfield社、LVDV-1II Ultra)にて、ポリイミドフィルム形成用組成物(固形分の濃度14重量%)0.5μLを容器に入れてスピンドルを下ろし、rpmを調節してTorqueが80%となる時点で2分間待機した後、Torqueの変化がない際の粘度値を測定した。このとき、前記粘度は52Zスピンドルを用いて、25℃の温度条件で測定した。単位はcpである。
【0127】
<ヘイズ>
ASTM D1003規格に基づいて、Spectrophotometer(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて測定した。
【0128】
<黄色度(YI)>
ASTM E313規格に基づいて、Spectrophotometer(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0129】
<全光線透過率(T.T.)>
ASTM D1003規格に基づいて、光透過度測定器(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて400~700nm波長領域の全体で測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0130】
[実施例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌機内に、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)253g、および分散液中における顔料の平均粒度が90nmである顔料分散液(5wt% in DMAc、OP-1803B、Toyoink)1,200ppmを混合した溶媒を満たした。反応器の温度を25℃に維持した状態でTFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)29.79gと6FODA 3.47gを溶解させた。これに、BPDA(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンハイドライド)30gを25℃で添加し、24時間溶解させながら撹拌してポリアミック酸樹脂を製造した。その後、ポリアミック酸の固形分の含量が総重量を基準として14重量%になるようにDMPA溶媒を添加し、ポリイミドフィルム形成用組成物1を製造した。
【0131】
ポリイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、上記で得たポリイミドフィルム形成用組成物1をアプリケータで塗布し、窒素気流下で、80℃で30分間、その後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離することで、厚さ57μmの実施例1のポリイミドフィルムを得た。その物性は、下記の表1に記載した。
【0132】
[実施例2]
前記実施例1において、ポリアミック酸樹脂を製造した後に、ポリアミック酸の固形分100重量部を基準として無機ナノ粒子(SSD 330T、30wt% in DMAc、レンコ、15nm)30重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(M500ミウォン・スペシャルケミカル)10重量部を添加して5時間撹拌し、ポリイミドフィルム形成用組成物2および厚さ57μmの実施例2のポリイミドフィルムを製造した。その物性は、下記の表1に記載した。
【0133】
[比較例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA(ジメチルプロピオンアミド)253gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態でTFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)29.79gと6FODA 3.47gを溶解させた。これに、BPDA(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンハイドライド)30gを添加し、24時間溶解させながら撹拌してポリアミック酸樹脂を製造した。その後、顔料分散液(5wt% in DMAc,OP-1803B、Toyoink)1,200ppmを投入し、ポリアミック酸の固形分の含量が総重量を基準として14重量%となるようにDMPA溶媒を添加し、ポリイミドフィルム形成用組成物Aを製造した。
【0134】
図1-(c)のように、比較例1のポリイミドフィルム形成用組成物は顔料が全く分散されておらず、フィルムの生成が不可であった。
【0135】
[比較例2]
分散液中における顔料の平均粒度が151nmである顔料分散液(5wt% in DMAc、OP-130A、Toyoink)を用いたことを除き、前記実施例1と同様に実施して、ポリイミドフィルム形成用組成物Bおよび57μmの比較例2のポリイミドフィルムを得た。その物性は、下記の表1に記載した。
【0136】
[比較例3]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA(ジメチルプロピオンアミド)253gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態でTFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)29.79gと6FODA 3.47gを溶解させた。これに、BPDA(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンハイドライド)30gを25℃で添加し、24時間溶解させながら撹拌してポリアミック酸樹脂を製造した。その後、ポリアミック酸の固形分の含量が総重量を基準として14重量%となるようにDMPA溶媒を添加し、ポリイミドフィルム形成用組成物Cを製造した。
【0137】
ポリイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、上記で得たポリイミドフィルム形成用組成物Cをアプリケータで塗布し、気流下で、80℃で30分間、その後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離することで、厚さ57μmの比較例3のポリイミドフィルムを得た。
【0138】
【表1】
【0139】
前記表1を参照すると、一実施形態に係るポリイミドフィルム(実施例1)は、ポリアミック酸および/またはポリイミドを重合するステップで、無機顔料の平均粒度が10~100nmである顔料分散液と単量体を共に投入することにより、ヘイズおよび黄色度を同時に向上させることができることを確認した。さらに、実施例2から製造されたポリイミドフィルムは、添加剤として無機ナノ粒子と多官能性(メタ)アクリル系化合物をさらに含むことにより、さらに優れた光学的物性を実現することができることを確認した。
【0140】
これに対し、比較例1から製造されたポリイミドフィルム形成用組成物は、実施例1および2と同様な顔料分散液を用いたにも拘わらず、ポリアミック酸および/またはポリイミド重合後に投入したため、顔料が全く分散されないことを確認した(図1-(c))。
【0141】
また、分散液中における顔料の平均粒度が151nmである顔料分散液を用いた比較例2は、組成物中における顔料分散性が低下し、硬化後に目的とする光学的物性を実現することができなかった。
【0142】
以上のように、一実施形態が限定された実施例により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0143】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に局限されて定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的な変形のある如何なるものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
図1
図2