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特開2023-35998小便器用薬液供給装置、小便器洗浄システム、小便器用薬液供給方法及びポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035998
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】小便器用薬液供給装置、小便器洗浄システム、小便器用薬液供給方法及びポンプ
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
E03D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136366
(22)【出願日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2021140418
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591047970
【氏名又は名称】共立製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 大
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038AA03
2D038BA11
2D038GA00
(57)【要約】
【課題】洗浄水供給経路を流れる洗浄水が極少量であっても、確実に、所定量の薬液を小便器に供給する。
【解決手段】小便器30a~30dに供給される薬液を収容する薬液タンク111と、前記薬液タンク111から前記薬液を送り出すポンプ112と、前記ポンプ112から送り出された薬液を前記二次側配管21に吐出する薬液吐出管113a~113dと、前記ポンプ112の駆動を制御する駆動制御部114とを有する薬液吐出機構110を備え、前記ポンプ112が、小便器30a~30dの使用頻度が低い所定期間に薬液を送り出すよう前記駆動制御部114によって制御される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管を備えた小便器に薬液を供給する小便器用薬液供給装置であって、
前記薬液を収容する薬液タンクと、前記薬液タンクから前記薬液を送り出すポンプと、前記ポンプから送り出された薬液を前記二次側配管に吐出する薬液吐出管と、前記ポンプの駆動を制御する駆動制御部とを有する薬液吐出機構を備え、
前記ポンプは、前記駆動制御部により、小便器の使用頻度が低い所定期間に駆動するように制御され、前記ポンプの駆動により、前記薬液が、前記薬液吐出管を介して前記二次側配管に供給される
ことを特徴とする小便器用薬液供給装置。
【請求項2】
前記ポンプが、前記使用頻度の低い所定期間に所定間隔で薬液を送り出すよう前記駆動制御部によって制御される請求項1記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、小便器の使用頻度が所定の閾値以上である場合、前記使用頻度の低い所定期間以外でも、薬液を送り出すようポンプを制御する機能を有する請求項2記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項4】
前記ポンプが、
吸引管部及び吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、
前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、
前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、
前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、
駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記薬液を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記薬液を吐出させるダイヤフラムと
を有し、
前記吸引管部が前記薬液タンク側に接続され、前記吐出管部が前記薬液吐出管に接続されて配設される
請求項1記載の小便機用薬液供給装置。
【請求項5】
前記吸引側逆止弁及び前記吐出側逆止弁は、いずれも軸部及び傘状の弁体部を備えており、軸部を前記逆止弁用台座部に形成した軸挿通孔に支持させ、前記各弁体部を前記吸引側液体通過孔の開口端又は前記吐出側液体通過孔の開口端に密接させて配設され、吸引時には、前記吸引側逆止弁の弁体部が捲られ、吐出時には、前記吐出側逆止弁の弁体部が捲られることで、前記薬液が流通する請求項4記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項6】
前記逆止弁用台座部と前記ダイヤフラムとの間に配設され、前記ダイヤフラムの湾曲部に対応する位置に、厚み方向中途が細径となっている細径部と、前記細径部を挟んだ両側に厚み方向端部に向かうほど拡径するテーパ部とを有する誘導孔が形成された流体誘導板が設けられている請求項4記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項7】
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔の間に山型の流動分岐部が形成され、
前記流体誘導板は、前記流動分岐部の位置に前記誘導孔が対応するように設けられている請求項6記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項8】
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔が、それぞれ、前記薬液の流れ方向に沿って直径が狭くなるテーパ状に形成されている請求項4記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項9】
小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管と、
前記二次側配管に薬液を供給する請求項1~8のいずれか1に記載の小便器用薬液供給装置と、
を備えることを特徴とする小便器洗浄システム。
【請求項10】
前記小便器用薬液供給装置の動作状態を表示するモニターが、小便器が設置されているトイレに設けられている
請求項9記載の小便器洗浄システム。
【請求項11】
小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管と薬液タンクとを薬液吐出管を介して接続すると共に、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送り出すポンプを設け、
前記ポンプが、前記ポンプの駆動制御部によって制御されることで、小便器の使用頻度が低い所定期間に薬液を送り出し、前記薬液吐出管を介して前記薬液を前記二次側配管に供給する
ことを特徴とする小便器用薬液供給方法。
【請求項12】
前記駆動制御部は、小便器の使用頻度が所定の閾値以上である場合、前記使用頻度の低い所定期間以外でも、薬液を送り出すようポンプを制御する
請求項11記載の小便器用薬液供給方法。
【請求項13】
前記ポンプが、
吸引管部及び吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、
前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、
前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、
前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、
駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記薬液を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記薬液を吐出させるダイヤフラムと
を有し、
前記吸引管部が前記薬液タンク側に接続され、前記吐出管部が前記薬液吐出管に接続されて配設される
請求項11載の小便機用薬液供給方法。
【請求項14】
液体の供給源に接続される吸引管部及び前記液体の供給先に接続される吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、
前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、
前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、
前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、
駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記液体を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記液体を吐出させるダイヤフラムと
を有することを特徴とするポンプ。
【請求項15】
前記吸引側逆止弁及び前記吐出側逆止弁は、いずれも軸部及び傘状の弁体部を備えており、軸部を前記逆止弁用台座部に形成した軸挿通孔に支持させ、前記各弁体部を前記吸引側液体通過孔の開口端又は前記吐出側液体通過孔の開口端に密接させて配設され、吸引時には、前記吸引側逆止弁の弁体部が捲られ、吐出時には、前記吐出側逆止弁の弁体部が捲られることで、前記液体が流通する請求項14記載のポンプ。
【請求項16】
前記逆止弁用台座部と前記ダイヤフラムとの間に配設され、前記ダイヤフラムの湾曲部に対応する位置に、厚み方向中途が細径となっている細径部と、前記細径部を挟んだ両側に厚み方向端部に向かうほど拡径するテーパ部とを有する誘導孔が形成された流体誘導板が設けられている請求項14記載のポンプ。
【請求項17】
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔の間に山型の流動分岐部が形成され、
前記流体誘導板は、前記流動分岐部の位置に前記誘導孔が対応するように設けられている請求項16記載のポンプ。
【請求項18】
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔が、それぞれ、前記液体の流れ方向に沿って直径が狭くなるテーパ状に形成されている請求項14記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器用薬液供給装置、小便器用薬液供給装置を用いた小便器洗浄システム、及び小便器用薬液供給方法、並びに、小便器用薬液供給装置で用いるのに適するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水洗便器に対して、洗浄、消臭、殺菌等の目的で薬液処理が行われている。この薬液処理の方法として種々のものが実施されているところ、水洗便器に供給される薬液の交換頻度や消費量を低減可能な下記特許文献1、2の装置が知られている。
【0003】
特許文献1、2に示される装置は、水洗便器(特に、小便器)に洗浄水が流れる度に小便器に洗浄、消臭、殺菌等を目的とした薬液を自動的に供給する装置に関する。より詳しくは、特許文献1、2に示される装置は、小便器内に洗浄水を吐出する吐出口に至るまでの洗浄水供給経路に接続された洗浄水通過部と、この洗浄水通過部に臨む取り込み口を介して、薬液を保持した容器内に洗浄水を取り込み、薬液と混合させる。その後、洗浄水供給経路に流れる洗浄水の供給が終了すると、洗浄水供給経路の圧力が低下し、薬液と混合された洗浄水が洗浄水供給経路に送り出される(薬液が混合された洗浄水が洗浄水供給経路に戻される)。
ところで、一次側配管へ薬液を供給する場合には、複数の小便器のうち一つの小便器で水漏れが生じた場合でも薬液が消費されてしまう点、飲料水用配管とつながっているため、途中経路に逆流防止弁を設けなければならない点、一次側配管は常時所定の高圧下で保たれているため、そこに薬液を供給する薬液供給機構もそれに応じた高い耐圧性を備えさせる必要がある点などの課題がある。
二次側配管に薬液を供給する特許文献1,2に開示の技術はこのような一次側配管へ薬液を供給する構造の課題を解決するものではあるが、特許文献1、2に示された装置は、二次側配管において、洗浄水供給経路を流れる洗浄水の流れの開始時と終了時との流量変化に伴う圧力変化を利用するものである。ところが、近年、洗浄水の流量を極力減らした節水型のトイレ設備が普及してきている。そのため、洗浄水の流れの開始時と終了時との間で、十分な圧力差を確保できない場合があり、このような設備では、特許文献1、2に示されるような圧力差を利用する装置では、薬液の混合量を適切に保つことが困難になるとった懸念がある。
本出願人は、この点に鑑み、二次側配管に洗浄水センサーを設け、洗浄水センサーにより二次側配管内を流れる洗浄水の流れを検出すると薬液吐出機構のポンプが駆動し、二次側配管内に薬液を供給する小便器用薬液供給装置を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭49-21541号公報
【特許文献2】特開2003-96873号公報
【特許文献3】特開2019-157343号公報
【特許文献4】特開2010-48077号公報
【特許文献5】特開2018-155022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の技術によれば、洗浄水センサーにより二次側配管内に洗浄水が流れたことを検出すれば薬液が供給されるため、節水型のトイレ設備であっても、薬液を必要量供給することができる。
しかしながら、特許文献1~3の技術はいずれも、小便器を使用するたびに、洗浄水が流れ、当該小便器に対して薬液が供給される。従って、使用頻度が多い場合には、薬液を供給しても、洗浄水により押し流されてしまい、薬液の洗浄、消臭、殺菌等の作用が十分には働かない場合がある。
一方、近年の小便器設備の場合、従来の洗浄水量が1回あたり約3リットルであったのに対し、1.4リットル、1.2リットル、0.8リットルと節水の程度はますます上がっている。小便器は、トラップ内に尿が残存していると悪臭につながることから、トラップ内に尿が残存しない程度の量を洗浄水として流す必要がある。そのため、小便器は節水型のものほど少ない洗浄水量でトラップ内に尿が残存しないよう、トラップ形状の工夫がなされている。
これに対し、小便器のトラップ部分には下方に延びる排水管が連結され、この排水管には横方向に所定の勾配で延びる横引き管に接続されている。横引き管は、整列された複数の小便器に共通して接続され、勾配は1/50~1/100の範囲となっている。小便器が節水型となり、それに伴ってトラップ形状の工夫がなされたりしているものの、排水管や横引き管自体は従来と大差ない。洗浄水量が少ないと、横引き管を通過して縦管に到る汚水量も少なくなる。建物のデザインや利便性に重点をおいた設計では、横引き管が従来より長くなったり、異物による詰まりを防止することを目的として太い管径のものを用いることにより排水流速が遅くなってしまったりしている場合もあり、洗浄水の使用量が少なくなるにつれ、横引き管内に残存する汚水量が増加している現状があり、トイレ施設内での異臭の原因にもなっている。
また、小便器に供給される殺菌効果の高い薬液は、大量に供給されるのではなく、特許文献4,5に示されているように、0.1cc以下と極めて微量である。特許文献4では、数十μm程度の内径のノズルを用いることで吐出量の制御を行っているが、ノズル内に常に薬液が残存する。薬液使用量は微量でよいため、ノズル内に薬液が残存すると、残存量の僅かな差により薬液濃度にばらつきが生じる場合がある。特許文献5のものは、薬液を保持する溝部を外周に備えたシャトル部と呼ばれる部材を、洗浄水の流入によって往復動させると共に、洗浄水の流入圧でシャトル部を押圧して所定量の薬液を吐出する構成であり、構造が複雑である。また、いずれの場合も、洗浄水の流量変化に伴う圧力差を利用して所定の粘度の薬液を吐出させる構成であるため、圧力差の小さい節水型の小便器には適さない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、節水型の小便器のように、洗浄水供給経路を流れる洗浄水が少量であっても、確実に、所定量の薬液を小便器に供給することができる一方で、横引き管内に薬液をより確実に留まらせ、横引き管内に残存する汚水による悪臭を抑制できる小便器用薬液供給装置、小便器用薬液供給装置を用いた小便器洗浄システム及び小便器用薬液供給方法、並びに、小便器用薬液供給装置に用いるのに適するポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の小便器用薬液供給装置は、
小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管を備えた小便器に薬液を供給する小便器用薬液供給装置であって、
前記薬液を収容する薬液タンクと、前記薬液タンクから前記薬液を送り出すポンプと、前記ポンプから送り出された薬液を前記二次側配管に吐出する薬液吐出管と、前記ポンプの駆動を制御する駆動制御部とを有する薬液吐出機構を備え、
前記ポンプは、前記駆動制御部により、小便器の使用頻度が低い所定期間に駆動するように制御され、前記ポンプの駆動により、前記薬液が、前記薬液吐出管を介して前記二次側配管に供給される
ことを特徴とする。
【0008】
前記ポンプが、前記使用頻度の低い所定期間に所定間隔で薬液を送り出すよう前記駆動制御部によって制御される構成とすることもできる。
前記駆動制御部は、小便器の使用頻度が所定の閾値以上である場合、前記使用頻度の低い所定期間以外でも、薬液を送り出すようポンプを制御する機能を有する構成とすることもできる。
【0009】
前記ポンプが、
吸引管部及び吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、
前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、
前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、
前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、
駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記薬液を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記薬液を吐出させるダイヤフラムと
を有し、
前記吸引管部が前記薬液タンク側に接続され、前記吐出管部が前記薬液吐出管に接続されて配設される構成であることが好ましい。
【0010】
前記吸引側逆止弁及び前記吐出側逆止弁は、いずれも軸部及び傘状の弁体部を備えており、軸部を前記逆止弁用台座部に形成した軸挿通孔に支持させ、前記各弁体部を前記吸引側液体通過孔の開口端又は前記吐出側液体通過孔の開口端に密接させて配設され、吸引時には、前記吸引側逆止弁の弁体部が捲られ、吐出時には、前記吐出側逆止弁の弁体部が捲られることで、前記薬液が流通する構成であることが好ましい。
【0011】
前記逆止弁用台座部と前記ダイヤフラムとの間に配設され、前記ダイヤフラムの湾曲部に対応する位置に、厚み方向中途が細径となっている細径部と、前記細径部を挟んだ両側に厚み方向端部に向かうほど拡径するテーパ部とを有する誘導孔が形成された流体誘導板が設けられていることが好ましい。
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔の間に山型の流動分岐部が形成され、
前記流体誘導板は、前記流動分岐部の位置に前記誘導孔が対応するように設けられていることが好ましい。
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔が、それぞれ、前記薬液の流れ方向に沿って直径が狭くなるテーパ状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管と、
前記二次側配管に薬液を供給する前記小便器用薬液供給装置とを備えることを特徴とする小便器洗浄システムを提供する。
前記小便器用薬液供給装置の動作状態を表示するモニターが、小便器が設置されているトイレに設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、小便器側に位置し、一次側配管からの洗浄水が通過する二次側配管と薬液タンクとを薬液吐出管を介して接続すると共に、前記薬液タンク内の薬液を前記薬液吐出管に送り出すポンプを設け、
前記ポンプが、前記ポンプの駆動制御部によって制御されることで、小便器の使用頻度が低い所定期間に薬液を送り出し、前記薬液吐出管を介して前記薬液を前記二次側配管に供給することを特徴とする小便器用薬液供給方法を提供する。
【0014】
前記駆動制御部は、小便器の使用頻度が所定の閾値以上である場合、前記使用頻度の低い所定期間以外でも、薬液を送り出すようポンプを制御することができる。
前記ポンプとしては、吸引管部及び吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記薬液を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記薬液を吐出させるダイヤフラムとを有し、前記吸引管部が前記薬液タンク側に接続され、前記吐出管部が前記薬液吐出管に接続されて配設されるものを採用することが好ましい。
【0015】
また、本発明では、
液体の供給源に接続される吸引管部及び前記液体の供給先に接続される吐出管部を備えた液体吸引吐出部と、
前記液体吸引吐出部に積層され、前記吸引管部に連通する吸引側液体通過孔と前記吐出管部に連通する吐出側液体通過孔とを備える逆止弁用台座部と、
前記吸引側液体通過孔を開閉する吸引側逆止弁と、
前記吐出側液体通過孔を開閉する吐出側逆止弁と、
駆動部の動作に伴って変形する湾曲部を備え、前記湾曲部の内側の容積が拡張方向に変形することにより前記液体を吸引し、前記湾曲部の内側の容積が縮小方向に変形することにより前記液体を吐出させるダイヤフラムと
を有することを特徴とするポンプを提供する。
【0016】
前記吸引側逆止弁及び前記吐出側逆止弁は、いずれも軸部及び傘状の弁体部を備えており、軸部を前記逆止弁用台座部に形成した軸挿通孔に支持させ、前記各弁体部を前記吸引側液体通過孔の開口端又は前記吐出側液体通過孔の開口端に密接させて配設され、吸引時には、前記吸引側逆止弁の弁体部が捲られ、吐出時には、前記吐出側逆止弁の弁体部が捲られることで、前記液体が流通する構成であることが好ましい。
【0017】
前記逆止弁用台座部と前記ダイヤフラムとの間に配設され、前記ダイヤフラムの湾曲部に対応する位置に、厚み方向中途が細径となっている細径部と、前記細径部を挟んだ両側に厚み方向端部に向かうほど拡径するテーパ部とを有する誘導孔が形成された流体誘導板が設けられていることが好ましい。
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔の間に山型の流動分岐部が形成され、
前記流体誘導板は、前記流動分岐部の位置に前記誘導孔が対応するように設けられていることが好ましい。
前記逆止弁用台座部における、前記吸引側液体通過孔及び吐出側液体通過孔が、それぞれ、前記液体の流れ方向に沿って直径が狭くなるテーパ状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、薬液タンクから薬液吐出管に薬液を送り出すポンプによって、前記薬液が、薬液吐出管を介して小便器側に位置する二次側配管に供給される。そのため、洗浄水供給経路の洗浄水によらず、二次側配管に薬液を供給できることから、節水型の小便器であっても、確実に、所定量の薬液を小便器(小便器排水管系)に供給することができる。
【0019】
本発明によれば、小便器の使用頻度が低い所定期間に薬液を送り出すよう、ポンプの駆動が制御される。そのため、二次側配管を介して小便器に供給された薬液を、小便器に接続される小便器排水管系(特に、横引き管内)に長期間滞留させることができる。その結果、洗浄水が少ない節水型の小便器に用いられても、横引き管を含む小便器排水管系の洗浄、消臭、殺菌(例えば、尿石付着の防止)を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る小便器洗浄システムを示す概略図である。
図2図2は、本実施形態の小便器洗浄システムが複数の小便器に接続された状態を示した図である。
図3図3は、点検用扉を設けた態様を説明するための図である。
図4図4は、小便器用薬液供給装置に好適に使用可能なポンプの構成を説明するための正面図である。
図5図5は、図4に示した構成のうち、駆動部以外の構成を示したもので、(a)は液体吸引吐出部側から見た斜視図であり、(b)は作動シャフト側から見た斜視図である。
図6図6は、図5に示したポンプの分解斜視図である。
図7図7は、図5に示したポンプの断面図である。
図8図8(a)は、液体吸引吐出部を逆止弁用台座部側から見た斜視図であり、図8(b)は、液体吸引吐出部を吸引管部及び吐出管部側から見た斜視図である。
図9図9(a)は、逆止弁用台座部をダイヤフラム側から見た斜視図であり、図9(b)は、逆止弁用台座部を液体吸引吐出部側からみた斜視図である。
図10図10は、吸引側逆止弁及び吐出側逆止弁の配置構造を説明するための図である。
図11図11(a)は、ダイヤフラムを作動シャフト側から見た斜視図であり、図11(b)は、ダイヤフラムを逆止弁用台座部側から見た斜視図である。
図12図12(a)は、流体誘導板を作動シャフト側から見た斜視図であり、図12(b)は、流体誘導板を逆止弁用台座部側から見た斜視図である。
図13図13(a)は、ダイヤフラム台座部を作動シャフト側から見た斜視図であり、図13(b)は、ダイヤフラム台座部を逆止弁用台座部側から見た斜視図である。
図14図14(a)は、作動シャフトをダイヤフラム台座部側から見た斜視図であり、図14(b)は、その反対面側から見た斜視図である。
図15図15は、実施形態の作用を説明するための図であって、(a)は吸引時の薬液の流れを説明するための図であり、(b)は吐出時の薬液の流れを説明するための図である。
図16図16は、実施形態で採用したにテーパ部や流体誘導板を設けない構成とした場合の作用を説明するための図であって、(a)は吸引時の薬液の流れを説明するための図であり、(b)は吐出時の薬液の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る小便器洗浄システム1の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る小便器洗浄システム1を示す概略図(小便器30a(30b,30c,30d)の上部に設けられる機構部配置室31を含む斜視図)である。また、図2は、本実施形態の小便器洗浄システム1が複数の小便器30a~30dに接続された状態を示した図である。
【0022】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る小便器洗浄システム1は、小便器用薬液供給装置10と、洗浄水供給経路20の二次側配管21とを有して構成される。また、小便器用薬液供給装置10は、薬液吐出機構110を備える。
【0023】
薬液吐出機構110は、小便器30a~30dの洗浄、消臭、殺菌等(以下、「洗浄等」)の機能を有する薬液を収容する薬液タンク111と、薬液タンク111から薬液を送り出すポンプ112と、ポンプ112から送り出された薬液を二次側配管21に薬液吐出管連結部21aを介して吐出する薬液吐出管113a~113dと、ポンプ112の駆動を制御する駆動制御部114等を有する。ポンプ112(駆動制御部114)の動力は、ポンプ112の近傍に配設されるバッテリ115から供給される。なお、ポンプ112の好ましい態様の詳細については後述する。
【0024】
小便機用薬液供給装置10は、例えば、「洗浄中」、「殺菌中」、「ON/OFF(作動中)」等の各種動作状態を表示するモニター116を更に備えていることが好ましい。モニター116は、トイレの壁面における使用者の目にとまる範囲に設けることが好ましい。これにより、使用者は、小便器の清潔状態が保たれていることを視覚的に容易に把握でき、安心して使用することができる。
【0025】
図1及び図2に示されるように、薬液タンク111とポンプ112とは、ポンプ112の動作に応じて薬液を送液するチューブ117を介して接続される。また、薬液タンク111とポンプ112は、小便器(図2に示される例では、トイレ壁面に4つ並設される小便器30a~30dのうち、最も右側に位置する小便器30a)の側方の壁の裏側に配設される。ただし、薬液タンク111とポンプ112の位置は、これに限定されない。
【0026】
薬液吐出管113a~113dは、ポンプ112から延び、小便器30a~30dの各上方に設けられる機構部配置室31に臨む。最終的に、薬液吐出管113a~113dは、同じく小便器30a~30dの機構部配置室31に配設される二次側配管21に薬液吐出管連結部21aを介して接続される。なお、本実施形態の場合、小便器30a~30dのそれぞれに至るよう、4本の薬液吐出管113a~113dがポンプ112から延びている。
【0027】
駆動制御部114は、ポンプ112の駆動部(例えば、モータ、ソレノイド等)を制御する。また、駆動制御部114は、所定のプログラムによって、小便器30a~30dの使用頻度が低い所定期間(例えば、商業ビルやオフィスビルに設置されるトイレであれば、営業時間外である夜間等の時間帯(例えば、0時から5時の間に1回若しくは複数回)に薬液を送り出すよう、ポンプ112の駆動部を制御する。
【0028】
なお、前記所定期間(時間帯)に薬液を送り出す制御の例として、駆動制御部114に内蔵されるタイマーによって、駆動制御部114が薬液の吐出タイミングを判定し、ポンプ112の駆動部に駆動信号を送信する等の態様が挙げられる。例えば、毎日午前1時にポンプ112を1回動作させるように設定したり、午前1時になったらポンプ112を複数回動作させるように設定したりすることができる。また、オフィスビルのように、週末にトイレの利用がほとんどない場合、例えば、金曜日の深夜にポンプ112を複数回動作させてより多くの薬液を供給する設定とすることができる。これにより、小便器排水管系40内の薬液濃度が高くなり、土曜日、日曜日に使用されなくても、小便器排水管系40内の雑菌の繁殖を抑制できる。もちろん、土曜日や日曜日に、さらにポンプ112が動作するように設定して薬液を追加する設定とすることも可能である。
【0029】
ポンプ112によって送り出された薬液は、薬液吐出管113a~113dを通り、二次側配管21に、薬液吐出管連結部21aを介して供給される。二次側配管21の先端は、小便器30a~30dの内側(例えば、便器ボウル部)に臨んでいる。これにより、二次側配管21に供給された薬液は、小便器30a~30dに送られ、更に、小便器排水管系40(例えば、図2に示される排水管41a~41dや、排水管41a~41dに接続する横引き管42等)に至る。
【0030】
このように、薬液が小便器30a~30dに供給される期間が、小便器30a~30dの使用頻度の低い期間であるため、小便器排水管系40に至った薬液が洗浄水によって流される可能性が減る。そのため、ポンプ112から送り出される薬液が少量であっても、小便器排水管系40に薬液を長期間滞留させることができる結果、薬液の使用量を抑えつつ、小便器排水管系40を十分に洗浄等することができる。
【0031】
また、本実施形態の薬液の供給は、従来のように、洗浄水供給経路20から小便器30a~30dに洗浄水が流れるか否かに依存しない。そのため、節水型の小便器30a~30dであっても、確実に、所定量の薬液を小便器排水管系40に供給することができる。
【0032】
また、駆動制御部114は、所定間隔(例えば、5分間隔や10分間隔等)で所定量(少量)の薬液を複数回送り出すよう、ポンプ112の駆動部を制御してもよい。このような構成とすることで、薬液が小便器30a~30dに供給されている途中で、小便器30a~30dが使用されても、改めて小便器30a~30dに薬液を供給できる。その結果、小便器排水管系40に至った薬液が流されて、洗浄等の機能が低減される事態を防ぐことができる。
【0033】
なお、二次側配管21は、バルブ22を介して、洗浄水供給経路20の上流側に設けられる一次側配管23と接続する。ここで、小便器30a~30dの上部に位置する人感センサ32が、利用者の離接を検出すると、バルブ22が開弁する。これにより、洗浄水が、一次側配管23から二次側配管21を通過し、小便器30a~30dに流される。
【0034】
また、駆動制御部114は、例えば、人感センサ32からの信号に基づき、人感センサ32により検知されてカウントされる小便器30a~30dの使用頻度が所定の閾値以上であると判定する場合、上記の所定期間(使用頻度が低い期間)以外でも、薬液吐出管113a~113dに薬液を送り出すようポンプ112を制御してもよい。その際、薬液を送り出す薬液吐出管113a~113dは、使用頻度の高い小便器30a~30dに対応するもののみ選択して供給する構成とすることもできる。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、ポンプ112の駆動制御部114が、小便器30a~30dの使用頻度が低い所定期間として予め定められた時間帯(例えば、夜間等)に至ったことを判定すると、ポンプ112の駆動部に駆動信号を送信する。
【0036】
続いて、駆動制御部114からの駆動信号を受信したポンプ112が駆動し、薬液タンク111に収容される薬液が、薬液吐出管113a~113dに向けて送り出される。また、薬液吐出管113a~113dに送り出された薬液は、薬液吐出管連結部21aを介して二次側配管21に吐出される。
【0037】
更に、二次側配管21に至った薬液は、小便器30a~30d内に供給された後、小便器排水管系40(例えば、小便器30a~30dの下部から延びる排水管41a~41dや、排水管41a~41dに接続する横引き管42等)に滞留する。これにより、小便器排水管系40が洗浄等される。
【0038】
なお、所定間隔でポンプ112を駆動させる場合には、タイマーの設定に従って、駆動制御部114から、ポンプ112の駆動部に所定間隔で駆動信号を送信する。それに応じて、ポンプ112が薬液タンク111に収容される薬液を送り出すよう動作する。予め定められた前記所定期間が経過すると、駆動制御部114からの駆動信号が止まり、ポンプ112の駆動が停止する。
【0039】
また、複数の小便器30a~30dのうち、隣接する少なくとも一組の小便器(例えば、小便器30aと小便器30bの間の壁部50には、図3に示したように、開閉可能な点検用扉51を設けた構成とすることが好ましい。本実施形態では、図2に示したように、例えば、壁部50内に、薬液吐出管113a~113d等が配設されているため、そのいずれかにおいて詰まり等の不具合が生じたりする場合もある。点検用扉51を備えておけば、定期点検や故障時等において容易にメンテナンス作業を行うことができる。点検用扉51は、隣接する一組の小便器間に限らず、隣接する他の組の小便器間に設けてもよく、もちろん、隣接する全ての小便器間に設けてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態で使用するのに適するポンプ112の構成を説明する。ポンプ112は、上記のように、駆動制御部114からの信号に基づいて、薬液タンク111から薬液を吸引して、薬液吐出管113a~113dに薬液を送り出すことができるものであればよいが、薬液としては、上記のように粘度の高いものが使用され、しかも1回あたりの吐出量は0.1cc以下とごく少量である。少量の流体を吐出させるポンプとして、例えば、チューブポンプを用いることが考えられるが、チューブの硬度やチューブを押しつぶす圧搾ローラの動き具合等によって吐出量にばらつきが生じやすく、特に粘度があり、少量と言っても0.1cc以下という微量な薬液の吐出制御には向かない。また、特許文献4,5に示したものも、上記のとおり節水型の小便器での使用にはあまり適さない。そこで、本実施形態では、ダイヤフラム1126を用いたポンプ112を用いている。
【0041】
図4図14は、このポンプ112を説明するための図である。これらの図に示したように、ポンプ112は、液体吸引吐出部1121、逆止弁用台座部1122、吸引側逆止弁1123、吐出側逆止弁1124、流体誘導板1125、ダイヤフラム1126、ダイヤフラム台座部1127、作動シャフト1128、駆動部1129を有して構成されている。
【0042】
液体吸引吐出部1121は、図6図8に示したように、平面視で略長方形の所定の厚みを有するベース板1121aと、このベース板1121aから一方向に突出する吸引管部1121b及び吐出管部1121cとが一体に形成されている。ベース板1121aには、吸引管部1121b及び吐出管部1121cに連通する連通孔1121d,1121eが開口されているが、この連通孔1121d,1121eは、吸引管部1121b及び吐出管部1121c側が狭く、その反対側である逆止弁用台座部1122に向かうほど広くなるテーパ状に形成されている。後述のようにダイヤフラム1126の湾曲部1126bを吸引管部1121bと吐出管部1121cとの中間部に対応する位置に設けると、薬液の流れに偏りが生じやすいが、連通孔1121d,1121eをテーパ状に形成することにより、抵抗が生じにくくなり、均等に流れ易くなる。
【0043】
液体吸引吐出部1121のベース板1121aには、シートパッキン1121a1を介して、逆止弁用台座部1122が積層される(図6及び図7参照)。逆止弁用台座部1122は、図6図7及び図9に示したように、所定の厚さを有する略直方体形状で形成されており、一面1122aに、液体吸引吐出部1121に形成された2つの連通孔1121d,1121eに連通する連通溝1122b,1122cを有していると共に、この連通溝1122b,1122cの溝底面の各中央部に、吸引側逆止弁1123の軸部1123a及び吐出側逆止弁1124の軸部1124aが挿通される軸挿通孔1122d,1122eが、一面1122aの反対面である他面1122fに至るまで貫通されている(図9(a),(b)参照)。軸挿通孔1122d,1122eの周囲には適宜数の流体通過孔1122g,1122hが同じく厚み方向に貫通されている。本実施形態では、吸引管部1121bに連通する一方の軸挿通孔1122dの周囲に円周方向に等間隔で4箇所に液体通過孔(以下、「吸引側液体通過孔」)1122gが貫通され、他方の軸挿通孔1122eの周囲に円周方向に等間隔で4箇所に液体通過孔(以下、「吐出側液体通過孔」1122hが貫通されている。なお、これらの液体通過孔1122g,1122hの形成数は限定されるものではない。
【0044】
図7に示したように、各吸引側液体通過孔1122gは、薬液の流入側である吸引管部1121bに連通する逆止弁用台座部1122の一面1122a側からその反対面である他面1122f側に向かって直径が狭くなるテーパ状に形成され、各吐出側液体通過孔1122fは、その逆に、他面1122fから一面1122a側に向かって直径が狭くなるテーパ状に形成されている。
【0045】
吸引側逆止弁1123は、図7及び図10に示したように、軸部1123aと傘状の弁体部1123bとを備えた断面略T字状に形成され、軸部1123aが、吸引管部1121bに連通する一方の軸挿通孔1122dに挿通され、弁体部1123bが逆止弁用台座部1122の他面1122fに接している。弁体部1123bは、4つの吸引側液体通過孔1122gの他面1122f側の開口端を覆って閉塞できる直径を有している。軸部1123aの端部には、軸挿通孔1122dより直径の大きい大径部1123cが形成されている。軸部1123aは、軸挿通孔1122dに挿入された状態で、大径部1123cが逆止弁用台座部1122の一面1122aに密接し、弁体部1123bが他面1122fに密接する長さとなっている。
【0046】
吐出側逆止弁1124は、図7及び図10に示したように、吸引側逆止弁1123と同形状に形成され、軸部1124aと傘状の弁体部1124bとを備えた断面略T字状をなし、軸部1124aの端部に大径部1124cを備えている。大径部1124cを除いた長さは、他方の軸挿通孔1122eの長さとほぼ同じであり、この点も上記の吸引側逆止弁1123と全く同様である。但し、吐出側逆止弁1124は、吐出管部1121cに連通する他方の軸挿通孔1122eに挿通されるが、この際、吸引側逆止弁1123とは逆に、弁体部1124aが逆止弁用台座部1122の一面1122aに密接し、大径部1124cが他面1122fに密接する向きで配設される。なお、弁体部1124bは、4つの吐出側液体通過孔1122hの一面1122a側の開口端を覆って閉塞できる直径を有している。
【0047】
吸引側逆止弁1123及び吐出側逆止弁1124は、上記のように軸部1123a,1124aが軸挿通孔1122d,1122eに挿通されると共に、大径部1123c,1124cに軸挿通孔1122d,1122eから抜けないように支持され、弁体部1123a,1124aがそれぞれ吸引側液体通過孔1122gの開口端及び吐出側液体通過孔1122hの開口端を覆うように密接して配設されている。そのため、各弁体部1123b,1124bは、ダイヤフラム1126の動きに伴う圧力変化による薬液の吸引時及び吐出時に、それに応じて周縁部から捲られることにより隙間が生じ、薬液が通過できる構成である。このため、吸引側逆止弁1123及び吐出側逆止弁1124は、上下左右どのような向きであっても逆止弁用台座部1122から外れてしまうことがなく、ポンプ112を配置する際の向きや姿勢が制限されず、設置環境を選ばない。
【0048】
ここで、逆止弁用台座部1122の他面1122fは、吸引側液体通過孔1122gと吐出側液体通過孔1122hの略中間部に、両者間を2分割するように、後述するダイヤフラム1126側に山型に突出する流動分岐部1122kが形成されている(図7及び図9参照)。これにより、吸引時には薬液がダイヤフラム1126側に向かう流れが強くなる一方で、流動分岐部1122kを乗り越えて吐出側液体通過孔1122h側に向かう流れが弱くなる。吐出時には、逆に、ダイヤフラム1126側からの流れが流動分岐部1122kによって吐出側液体通過孔1122hに向かいやすくなる。
【0049】
ダイヤフラム1126は、シリコーンゴム等の合成ゴムから形成され、図7及び図11に示したように、ベース部1126aと、このベース部1126aの略中央部から一方側に膨出する湾曲部1126bを有している。ダイヤフラム1126は、湾曲部1126bが液体吸引吐出部1121とは反対方向に膨出する姿勢で、逆止弁用台座部1122とダイヤフラム台座部1127との間に、ベース部1126aをサンドイッチさせて配設される。
【0050】
ダイヤフラム1126と逆止弁用台座部1122との間には、図7に示したように、ベース部1126aの略中央部に設けられた湾曲部1126bに誘導しやすくするため、流体誘導板1125を設けることが好ましい。流体誘導板1125は、図7及び図12に示したように、板状体1125aと、板状体1125aの略中央部に厚み方向に貫通された誘導孔1125bとを有し、板状体1125aの周縁部がダイヤフラム1126のベース部1126aと逆止弁用台座部1122との間にサンドイッチされて配設される。
【0051】
誘導孔1125bは、板状体1125aの厚み方向中途に最も細くなる細径部1125b1が形成され、この細径部1125b1を挟んだ両側に、厚み方向端部に向かうに従って拡径するテーパ部1125b2,1125b3が形成されている。ダイヤフラム1126の湾曲部1126bがベース部1126aの略中央部に設けられていることから、湾曲部1126bの内側の容積(湾曲部1126bの内面と内面の端縁を通過するベース部1126aに沿った平面とで形成される空間の容積)の変化に伴って、薬液は、吸引時には中央側に流動していき、吐出時には中央側から流出する。よって、流動誘導板1125を配設することにより、吸引時には、上記の流動分岐部1122kとこの流動誘導板1125との間に流れ込む薬液が、一方のテーパ部1125b2に流れ易くなり、吐出時には、湾曲部1126b内の薬液が、他方のテーパ部1125b3に容易に流れ込むと共に、細径部1125b1を通過した後は、流動分岐部1122kに一方のテーパ部1125b2が対応しているため、両者間を流れる際の抵抗が小さくなる。
【0052】
ダイヤフラム台座部1127は、上記のように、逆止弁用台座部1122との間でダイヤフラム1126のベース部1126aをサンドイッチしてダイヤフラム1126を支持するが、逆止弁用台座部1122とは反対方向に突出する筒状のシャフト連結部1127aを備えている(図7及び図13参照)。このシャフト連結部1127aに作動シャフト1128が挿入されて配設される。図14に示したように、作動シャフト1128には略中央部にダイヤフラム連結部1128aが形成されており、ダイヤフラム1126の湾曲部1126bの後面に突出させた連結突起1126cがこのダイヤフラム連結部1128aに連結される。これにより、作動シャフト1128が筒状のシャフト連結部1127内を往復動すると、湾曲部1126bが押しつぶされる方向に変形したり、その状態から湾曲状に復元する方向に変形したりして湾曲部1126bの内側の容積が変化する。
【0053】
作動シャフト1128には、図4において想像線で示したように、駆動部1129が接続される。駆動部1129は限定されるものではないが、低電力で駆動できる構成とすれば、バッテリ115として乾電池等の電池を用いることができ、交流電源を使用する必要がなくなり、本実施形態の小便器用薬液供給装置10の設置場所の自由度が広がるため好ましい。駆動部1129としては、電池駆動の小型モータでを用いることも可能であるが、より低電力で駆動可能なソレノイドを用いることが好ましい。ソレノイドの可動鉄心1129aを作動シャフト1128に連結させれば、作動シャフト1128を往復動させることができる。
【0054】
次に、本実施形態で用いたポンプ112の作用を説明する。なお、ポンプ112は、小便器30a~30dの設置数に対応して、本実施形態では4つ設けられる。各ポンプ112における吸引管部1122bには、薬液タンク111に接続されるチューブ117が中途で4つに分岐され、その分岐管のそれぞれが連結される。吐出管部112cには、各小便器30a~30dのそれぞれの二次側配管21に接続される4つの薬液吐出管113a~113dがそれぞれ接続される。
【0055】
この状態において、駆動制御部114のタイマーにより所定の設定時間に至った旨の信号が送信されると、各ポンプ112の駆動部1129が駆動する。本実施形態ではソレノイドを用いているためソレノイドの可動鉄心1129aが往復動し、可動鉄心1129aに連結された作動シャフト1128も往復動する。作動シャフト1128がダイヤフラム1126の湾曲部1126bを押しつぶした状態から湾曲状に復元させる方向に、すなわち該作動シャフト1128が後退する方向に動作すると、図15(a)に示したように、湾曲部1126bの内側が負圧になり、吐出側逆止弁1124の傘状の弁体部1124bが逆止弁用台座部1122の一面1122aに開口するに吐出側液体通過孔1122hに密着して閉塞する。同時に、逆止弁用台座部1122の他面1122f側に開口する吸引側液体通過孔1122gを閉塞している吐出側逆止弁1123の傘状の弁体部1123bが捲られる。これにより、吸引管部1121bから薬液が吸引され、吸引された薬液は、一方の連通孔1121dを経て、4つの吸引側液体通過孔1122gを通り、捲られた吸引側逆止弁1123の弁体部1123bと逆止弁用台座部1122の他面1122fとの隙間から、該他面1122fと流体誘導板1125とのスペースに流れ込む。流れ込んだ薬液は、山型に突出する流動分岐部1122kに規制され、流体誘導板1125の一方のテーパ部1125b2から細径部1125b1へ向かう流れが主流となり、他方のテーパ部1125b3から、容積が拡大したダイヤフラム1126の湾曲部1126bの内側に流入する。
【0056】
次いで、駆動部1129を構成するソレノイドの可動鉄心1129aが逆方向に動くと、作動シャフト1128が前進し、図15(b)に示したように、ダイヤフラム1126を押圧する。これにより、湾曲部1126bの内側の容積が小さくなり、湾曲部1126b内から薬液が押し出される。このとき、流体誘導板1125に他方のテーパ部1125b3が形成されるため、薬液が該テーパ部1125b3方向に集まっていき、細径部1125b1を経て、一方のテーパ部1125b2側に至る。その際の圧力により、吸引側逆止弁1123の弁体部1123bが押圧され、4つの吸引側液体通過孔1122gを塞ぎ、吸引管部1122b側への逆流が阻止される。同時に、4つの吐出側液体通過孔1122hに流入し、逆止弁用台座部1122の一面1122a側に位置する吐出側逆止弁1124の弁体部1124bを押圧してその周縁を捲れ上がらせる。流動分岐部1122kにより、薬液は、吐出管部1121c方向への流れが主流となり、捲れ上がった弁体部1124bと一面1124aの隙間から、他方の連通孔1121eを経由して、吐出管部1121cから吐出される。薬液は、各吐出管部1121cが接続されている各薬液吐出管113a~113dに流れ込み、二次側配管21に供給される。
【0057】
本実施形態のポンプ112によれば、ダイヤフラム1126を用いているため、湾曲部1126bの内側の容積を所定の大きさとすることにより、0.1cc以下の微量な薬液を正確に吐出することができる。また、逆止弁用台座部1122に設けられる吸引側液体通過孔1122g及び吐出側液体通過孔1122hが、薬液の流れ方向に沿って直径が狭くなるテーパ状に形成されている。また、吸引側液体通過孔1122g及び吐出側液体通過孔1122hの間に山型の流動分岐部1122kを有し、その位置に対応して流体誘導板1125の誘導孔1125bが形成され、さらに、この誘導孔1125bの一面側及び他面側のそれぞれに該誘導孔1125bの中途に形成された細径部1125b1から次第に拡大するテーパ部1125b2,1125b3を備えている。また、液体吸引吐出部1121のベース板1121aに形成された、吸引側液体通過孔1122gに連通する一方の連通孔1121d及び吐出側液体通過孔1122hに連通する他方の連通孔1121eのいずれも、吸引側液体通過孔1122g又は吐出側液体通過孔1122hに臨む側ほど直径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0058】
このため、ダイヤフラム1126の湾曲部1126bの容積が拡大する際、吸引管部1121bから流入する薬液は、吐出側液体通過孔1122gを通過する際に、孔径の広い側から進入するため、4個の吐出側液体通過孔1122gのいずれにも進入しやすく、偏りが少ない。そのため、吸引側逆止弁1123の弁体部1123bも円周方向に比較的均等に捲れ上がり、湾曲部1126bが配置されている中央寄りほど大きく捲れ上がるような偏りを抑制できる(図16(a)参照)。また、流体誘導板1125に形成された誘導孔1125bは、厚み方向中途の細径部1125b1を挟んで、その両側に厚み方向端部に向かって拡径するテーパ部1125b2,1125b3を有する。また、流動分岐部1122kも有する。そのため、誘導孔1125b内に薬液が流入しやすいと共に、湾曲部1126bの内側に流入する際も流れの偏りが少なくなる。
【0059】
ダイヤフラム1126の湾曲部1126bの容積が縮小する際も同様であり、流体誘導板1125bの誘導孔1125b内を、比較的偏りなく流れ、吐出側液体通過孔1122g内に直径の大きい側から進入する。これにより、吐出側逆止弁1124の弁体部1124bを押圧する際の偏りも小さくなる。
【0060】
図16(a),(b)は、上記のテーパ部を形成した箇所を全て直管状に形成すると共に、流動分岐部1122k及び流体誘導板1125を設けない構成とした場合の薬液の流れを示している。この図に示したように、液体吸引吐出部1121に形成された吸引管部1121b及び吐出管部1121c、逆止弁用台座部1122に形成された吸引側液体通過孔1122g及び吐出側液体通過孔1122hのそれぞれの境界付近において、薬液が正面から衝突する壁部分がより多く形成されることになる。このため、それらが薬液通過時の抵抗となり、その結果、薬液の流れに偏りが生じ、吸引側逆止弁1123の弁体部1123b及び吐出側逆止弁1124の弁体部1124bの動きにも偏りが生じる。このように抵抗が大きくなって流れに偏りが生じる場合には、粘度の高い薬液の場合、図15(a),(b)に示した本実施形態と比較して、ダイヤフラム1126の湾曲部1126bを押圧するためにより大きな動力が必要となり、駆動部1129の負荷も大きくなる。よって、粘度の高い薬液をできるだけ抵抗や偏りなく流通させるため、上記のように流体の通過する部分の各所にテーパ部を設けることが好ましく、さらには流動分岐部1122k及び流体誘導板1125を設けた構成とすることがより好ましい。特に、各逆止弁用台座部1122に形成される吸引側液体通過孔1122g及び吐出側液体通過孔1122hは、基本的に直径が小さく細い孔であることから、抵抗が高くならないよう、薬液の流れ方向に沿って直径が次第に狭くなるテーパ状に形成することが好ましい。
【0061】
本実施形態で用いたポンプ112は、上記のように、小便器用薬液供給装置10に好適に使用できるが、少量の流体を一定量ずつ正確に供給でき、しかも、小さな動力で動かすことができる。よって、そのような目的で使用するものであれば、液体の種類を問わず、また小便器用薬液供給装置以外の種々の用途に使用できる。特に、粘度のある液体の少量供給に適している。具体的には、供給対象の液体の供給源(液体を貯留したタンクなど)にチューブ等を介して吸引管部側を接続し、吐出管部側を同じくチューブ等を介して供給先の配管系や装置に接続するなどして用いることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 小便器洗浄システム
10 小便器用薬液供給装置
110 薬液吐出機構
111 薬液タンク
112 ポンプ
1121 液体吸引吐出部
1121b 吸引管部
1121c 吐出管部
1122 逆止弁用台座部
1122g 吸引側液体通過孔
1122h 吐出側液体通過孔
1123 吸引側逆止弁
1123a 軸部
1123b 弁体部
1124 吐出側逆止弁
1124a 軸部
1124b 弁体部
1125 流体誘導板
1126 ダイヤフラム
1126b 湾曲部
1127 ダイヤフラム台座部
1128 作動シャフト
1129 駆動部1129
113a~113d 薬液吐出管
114 駆動制御部
116 モニター
20 洗浄水供給経路
21 二次側配管
22 バルブ
23 一次側配管
30a~30d 小便器
40 小便器排水管系
41 排水管
42 横引き管
51 点検用扉
図1
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