(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000360
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】衣料
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20221222BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20221222BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20221222BHJP
A41D 31/14 20190101ALI20221222BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20221222BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D31/00 502W
A41D31/02 E
A41D31/14
A41D31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101127
(22)【出願日】2021-06-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り デサントジャパン株式会社は令和2年12月15日~18日に「デサントジャパン21FWスキー内見会」において発表
(71)【出願人】
【識別番号】517170052
【氏名又は名称】デサントジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智香子
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC13
3B011AC18
(57)【要約】
【課題】中材を嵩高い状態で保持することが容易な衣料を提供する。
【解決手段】前側および/または後側の身頃部に、中材12が収容された筒状部11が設けられた衣料であって、身頃部は、第1領域13Aと、該第1領域13Aに隣接している第2領域13Bと、該第2領域13Bに隣接している第3領域13Cとを有する身頃生地13を有し、筒状部11は、身頃生地13が第2領域13Bにおいて筒状に形成され、その内側に中材12が配されることにより形成され、筒状に形成された身頃生地13の第2領域13Bは、第1領域13A側の第1端部13BE1と第3領域13C側の第2端部13BE2とを有し、第1端部13BE1と第2端部13BE2の内側面どうしが対向して固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記身頃部は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有する身頃生地を有し、
前記筒状部は、前記身頃生地が第2領域において筒状に形成され、その内側に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状に形成された前記身頃生地の第2領域は、前記第1領域側の第1端部と前記第3領域側の第2端部とを有し、前記第1端部と前記第2端部の内側面どうしが対向して固定されていることを特徴とする衣料。
【請求項2】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記身頃部は、第1身頃生地と、該第1身頃生地に対向して設けられた第2身頃生地とを有し、
前記第1身頃生地は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有し、
前記第1身頃生地は第1領域と第3領域が前記第2身頃生地に固定され、前記筒状部は、前記第1身頃生地の第2領域と前記第2身頃生地の間に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状部の延在方向に対する垂直断面において、前記筒状部の周長をA1、前記第1領域における第2領域側端と前記第3領域における第2領域側端との距離をA2としたとき、A2/A1が0.2以下であることを特徴とする衣料。
【請求項3】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記身頃部は身頃生地を有し、
前記筒状部は、前記身頃生地とは別の第3生地が筒状に形成され、その内側に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状部の延在方向に対する垂直断面において、前記第3生地の一部区間が前記身頃生地に連続的または断続的に固定されており、前記筒状部の周長をB1、前記一部区間の長さをB2としたとき、B2/B1が0.2以下であることを特徴とする衣料。
【請求項4】
前記筒状部は後側の前記身頃部に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項5】
前記筒状部は、前記衣料の着用者側に面して設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項6】
前記筒状部は、身幅方向に対して±40°以内の角度で傾斜して延在するように設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項7】
前記筒状部は、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項8】
前記筒状部は、後側の身頃部の左右両側に、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられ、身幅方向の中央部には前記筒状部が設けられていない請求項1~7のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項9】
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向に対する垂直方向に間隔を空けて複数設けられている請求項1~8のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項10】
前記垂直方向に隣接する前記筒状部間の離隔距離が一定でない請求項9に記載の衣料。
【請求項11】
前記身頃部には、隣接する前記筒状部の間に通気部が設けられている請求項9または10に記載の衣料。
【請求項12】
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向の端部以外の部分において、前記身頃部の面方向の垂直方向に対向する前記筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合している請求項1~11のいずれか一項に記載の衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣料に関するものであり、詳細には、防寒用の衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表地と裏地との間に中材が収容された衣料が知られており、このような衣料としてダウンジャケットなどが知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-218399号公報
【特許文献2】特開2011-202295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダウンジャケットは一般に、
図7に示すように、表地51と裏地52の間に中材53が収容され、表地51と裏地52が複数の止着線54で互いに止着されることで、中材53が止着線54で区分された複数領域に配されて構成されている。このようなダウンジャケットでは、着用状態で表地51と裏地52が自重によって鉛直下方に引っ張られ、これにより表地51と裏地52の間の中材53が収容された空間が狭まり、中材53が表地51と裏地52によって圧迫を受ける。そのため、中材53を嵩高い状態で保持することが難しくなりやすい。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中材を嵩高い状態で保持することが容易な衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の衣料とは、前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられ;身頃部は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有する身頃生地を有し;筒状部は、身頃生地が第2領域において筒状に形成され、その内側に中材が配されることにより形成され;筒状に形成された身頃生地の第2領域は、第1領域側の第1端部と第3領域側の第2端部とを有し、第1端部と第2端部の内側面どうしが対向して固定されているところに特徴を有する。
【0006】
本発明の衣料は、前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられ;身頃部は、第1身頃生地と、該第1身頃生地に対向して設けられた第2身頃生地とを有し;第1身頃生地は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有し;第1身頃生地は第1領域と第3領域が第2身頃生地に固定され、筒状部は、第1身頃生地の第2領域と第2身頃生地の間に中材が配されることにより形成され;筒状部の延在方向に対する垂直断面において、筒状部の周長をA1、第1領域における第2領域側端と第3領域における第2領域側端との距離をA2としたとき、A2/A1が0.2以下であるものであってもよい。
【0007】
本発明の衣料は、前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられ;身頃部は身頃生地を有し;筒状部は、身頃生地とは別の第3生地が筒状に形成され、その内側に中材が配されることにより形成され;筒状部の延在方向に対する垂直断面において、第3生地の一部区間が身頃生地に連続的または断続的に固定されており、筒状部の周長をB1、一部区間の長さをB2としたとき、B2/B1が0.2以下であるものであってもよい。
【0008】
本発明の衣料は上記のように筒状部が身頃部に設けられており、上記のように形成された筒状部は、内部に収容された中材が、筒状部の外周を構成する生地から圧迫を受けにくく、筒状部の内部で中材を嵩高い状態で保持することが容易になる。そのため、本発明の衣料は、軽量に形成したり保温効果を高めることが容易になる。
【0009】
筒状部は後側の身頃部に設けられていることが好ましい。人体の上半身は背中側で比較的寒さを感じやすいため、筒状部を後側の身頃部に設けることで、衣料の保温効果を高めることができる。
【0010】
筒状部は、衣料の着用者側に面して設けられていることが好ましい。このように筒状部を設けることにより、着用者から発せられた熱が筒状部に効率的に保持され、保温効果を高めることができる。筒状部が身頃部に複数並んで設けられる場合は、隣接する筒状部の間の空間にも保温効果を持たせることができる。
【0011】
筒状部は、身幅方向に対して斜め方向に延びるように設けられることが好ましく、例えば、身幅方向に対して±40°以内の角度で傾斜して延在するように設けられることが好ましい。このように筒状部を設けることで、身体から放出される熱や蒸れが筒状部の傾斜方向に沿って上昇し、スムーズに外部に放出されやすくなる。
【0012】
筒状部は、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられていることが好ましい。このように筒状部を設けることで、着用者が上半身や腕を動かす際に、筒状部が邪魔になりにくくなる。
【0013】
筒状部は、後側の身頃部の左右両側に、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられ、身幅方向の中央部には筒状部が設けられていないことが好ましい。このように後側の身頃部に筒状部を配置することで、発汗によって着用者の背中と衣料の間に過剰な熱や蒸れが溜まっても、熱や蒸れが後側の身頃部の身幅方向の中央部に集まってスムーズに外部に放出されやすくなる。
【0014】
筒状部は、筒状部の延在方向に対する垂直方向に間隔を空けて複数設けられていることが好ましい。これにより、衣料の保温効果を高めることができる。この場合、垂直方向に隣接する筒状部間の離隔距離は一定でなくてもよい。隣接する筒状部間の離隔間隔を適宜設定することにより、保温効果を高めたい箇所を任意に設定したり、場所によっては通気性を高めて熱や蒸れが溜まりにくくすることができる。
【0015】
身頃部には、隣接する筒状部の間に通気部が設けられていることが好ましい。このように通気部を設けることにより、発汗により着用者と衣料の間に蒸れが溜まっても、通気部から蒸れが外部にスムーズに放出されやすくなる。
【0016】
筒状部は、筒状部の延在方向の端部以外の部分において、身頃部の面方向の垂直方向に対向する筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合していることが好ましい。これにより、筒状部内での中材の偏在を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衣料は、筒状部の内部に収容された中材が、筒状部の外周を構成する生地から圧迫を受けにくく、筒状部の内部で中材を嵩高い状態で保持することが容易になる。そのため、本発明の衣料は、軽量に形成したり保温効果を高めることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の衣料の身頃部に設けられる筒状部の一例を表し、
図1(a)は、筒状部を延在方向に対して垂直方向に切断した断面を含む筒状部の斜視図を表し、
図1(b)は、
図1(a)に示した筒状部を構成する生地であって、筒状部の延在方向に対する垂直方向の断面図を表す。
【
図2】本発明の衣料の身頃部に設けられる筒状部の他の一例を表し、
図2(a)は、筒状部を延在方向に対して垂直方向に切断した断面を含む筒状部の斜視図を表し、
図2(b)は、
図2(a)に示した筒状部を構成する生地であって、筒状部の延在方向に対する垂直方向の断面図を表す。
【
図3】本発明の衣料の身頃部に設けられる筒状部の他の一例を表し、
図3(a)は、筒状部を延在方向に対して垂直方向に切断した断面を含む筒状部の斜視図を表し、
図3(b)は、
図3(a)に示した筒状部を構成する生地であって、筒状部の延在方向に対する垂直方向の断面図を表す。
【
図4】本発明の衣料の身頃部および筒状部の断面図を表す。
【
図5】本発明の衣料の身頃部に設けられる筒状部の一例を表し、筒状部の斜視図を表す。
【
図6】本発明の衣料の一例を表し、衣料を着用者側から見た展開図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、身頃部を有する衣料に関するものである。本発明の衣料は、防寒を目的とした衣料に好適に用いることができ、例えば、アウターウェアに適用したり、アウターウェアと併用する衣料に適用することができる。
【0020】
衣料は、少なくとも上半身に着用する身頃部を有する。身頃部は着用者の胴体を覆う部分であり、前側の身頃部と後側の身頃部を含む。身頃部は、着用者の身体に沿って延在する方向として面方向を有する。前側の身頃部と後側の身頃部は身体の真横で区分されるが、衣料を構成するパーツ(縫製前のパーツ)は、前側の身頃部と後側の身頃部の区分と一致するように必ずしも形成されていなくてもよい。衣料は、袖などをさらに有していてもよい。
【0021】
本発明の衣料は、前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられている。前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられることにより、防寒性や保温性を高めることができる。
【0022】
筒状部は、筒状に形成した生地の内側に中材を配することにより形成される。筒状部の外周を構成する生地は、1つの生地から形成されてもよく、複数の生地を繋ぎ合わせて形成されてもよい。また、当該生地は、筒状部の外周のみを形成してもよく、筒状部以外の部分をさらに形成してもよく、例えば、身頃部のうち着用者の身体に沿って面状に延びる部分をさらに形成してもよい。
【0023】
筒状部の外周を構成する生地は、衣料に一般に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、織布、編布、不織布、樹脂フィルム、これらを組み合わせた材料等を用いることができる。なかでも、筒状部の外周を構成する生地は、織布または編布であることが好ましい。この場合の織布の織組織や編布の編組織は特に限定されず、公知の織組織や編組織を採用できる。織布の織組織としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられ、編布の編組織としては、平編、ゴム編、両面編、ハーフ編等が挙げられる。衣料を構成する筒状部の外周以外の生地も、これらの材料から構成することができる。
【0024】
筒状部の内部には中材が収容されている。中材としては、例えば、ダウン(羽毛)、フェザー(羽根)、綿や合成繊維等の繊維塊等を用いることができる。
【0025】
筒状部は、筒状部の延在方向、すなわち筒状部の軸方向の少なくとも一部が、筒状に形成されていればよい。筒状部は、例えば筒状部の延在方向の端部が、身頃部の面方向の垂直方向に潰されて、封止されていてもよい。筒状部はまた、筒状部の延在方向の端部以外の部分において、対向する外周どうしの一部が互いに接合していてもよい。これにより、筒状部内での中材の偏在を抑えることができる。
【0026】
筒状部は、様々な方法で形成することができる。
図1~
図3には、本発明の衣料の身頃部に設けられる筒状部の構成例を示した。
図1(a)、
図2(a)、
図3(a)には、筒状部をその延在方向に対して垂直方向に切断した断面を含む筒状部の斜視図を示し、
図1(b)、
図2(b)、
図3(b)には、筒状部を構成する生地の断面図(筒状部の延在方向に対する垂直方向の断面図)を示した。以下、
図1~
図3を参照して筒状部の構成例を説明するが、
図1~
図3において、矢印Xで表される方向は、筒状部の延在方向を表し、矢印Yで表される方向は、身頃部と同一面状にあり、筒状部の延在方向に対して垂直な方向を表し、矢印Zで表される方向は、身頃部の面方向に対して垂直な方向を表す。また、矢印Xと矢印Yとから形成される面は、身頃部の面方向を表す。
【0027】
図1に示した態様では、身頃部は身頃生地13を含んで構成され、筒状部11は、身頃生地13の一部領域が筒状に形成され、その内側に中材12が配されることにより形成されている。具体的には、身頃生地13は、第1領域13Aと、第1領域13Aに隣接している第2領域13Bと、第2領域13Bに隣接している第3領域13Cとを有し、筒状部11は、身頃生地13が第2領域13Bにおいて筒状に形成され、その内側に中材12が配されることにより形成されている。そして、
図1(b)に示すように、筒状に形成された身頃生地13の第2領域13Bは、第1領域13A側の第1端部13BE1と第3領域13C側の第2端部13BE2とを有し、第1端部13BE1と第2端部13BE2の内側面どうしが対向して固定されている。これにより、身頃部において、筒状部11が身頃部の面方向に対して膨出するように形成される。
【0028】
第1領域13Aと第2領域13Bと第3領域13Cはそれぞれ、筒状部11の延在方向(すなわち方向X)に延びるように設けられる。第1領域13Aと第2領域13Bと第3領域13Cは、身頃生地13を展開した状態、すなわち筒状に形成した第2領域13Bを平面状に展開した状態で、方向Yに並んで配置され、第2領域13Bが第1領域13Aと第3領域13Cの間に位置する。身頃生地13は、この状態から第2領域13Bが方向Zに撓んで形成され、第2領域13Bの方向Yに対する一方端部と他方端部、すなわち第1端部13BE1と第2端部13BE2が止着部14で互いに止着されることにより、第2領域13Bが方向Xに延びる筒状に形成される。そして、筒状に形成された身頃生地13の第2領域13Bの内側に中材12が配されることにより、筒状部11が形成される。
【0029】
第2領域13Bの第1端部13BE1と第2端部13BE2とを固定する止着部14は、方向Xに延びる止着線として形成されることが好ましい。止着部14は、縫合、熱溶着(例えば、ヒートシールや超音波溶着)、接着剤等の公知の接合手段により形成することができる。簡便には、身頃生地13の第2領域13Bの第1端部13BE1と第2端部13BE2は縫合により互いに固定されることが好ましく、
図1ではそのように止着部14が形成されている。
【0030】
なお、身頃生地13の第1領域13Aと第3領域13Cは筒状には形成されず、着用者の身体に沿って面状に延びるように、すなわち身頃部の面方向に延びるように形成される。また、第1領域13Aと第3領域13Cは互いに対向して設けられない。
【0031】
図2に示した態様では、身頃部は第1身頃生地15と第2身頃生地16を含んで構成され、筒状部11は、第1身頃生地15と第2身頃生地16の間に中材12が配されることにより形成される。具体的には、身頃部は、第1身頃生地15と、第1身頃生地15に対向して設けられた第2身頃生地16とを有し、第1身頃生地15は、第1領域15Aと、第1領域15Aに隣接している第2領域15Bと、第2領域15Bに隣接している第3領域15Cとを有し、第1身頃生地15は第1領域15Aと第3領域15Cが第2身頃生地16に固定され、筒状部11は、第1身頃生地15の第2領域15Bと第2身頃生地16の間に中材12が配されることにより形成される。この際、第1身頃生地15の第2領域15Bは、対向する第2身頃生地16に対して、方向Zに撓んで形成される。そして、
図2(b)に示すように、筒状部11の延在方向(すなわち方向X)に対する垂直断面において、筒状部11の周長をA1、第1領域15Aにおける第2領域側端15AEと第3領域15Cにおける第2領域側端15CEとの距離をA2としたとき、A2/A1が0.2以下となっている。
【0032】
第1身頃生地15において、第1領域15Aと第2領域15Bと第3領域15Cはそれぞれ、筒状部11の延在方向(すなわち方向X)に延びるように設けられる。第1領域15Aと第2領域15Bと第3領域15Cは、第1身頃生地15を展開した状態、すなわち方向Zに撓んで形成された第2領域15Bを平面状に展開した状態で、方向Yに並んで配置され、第2領域15Bは第1領域15Aと第3領域15Cの間に位置する。
【0033】
図2に示した態様では、
図1に示した態様のように第1身頃生地15の第2領域15Bが単独で筒状に形成されるのではなく、第1身頃生地15の第2領域15Bとそれに対向する第2身頃生地16とが繋ぎ合わされて筒状に形成される。第1身頃生地15は第1領域15Aと第3領域15Cが第2身頃生地16に固定され、このとき、第1身頃生地15の第1領域15Aが第2身頃生地16に固定される部分を第1止着部17Aとし、第1身頃生地15の第3領域15Cが第2身頃生地16に固定される部分を第2止着部17Bとしたとき、第1止着部17Aと第2止着部17Bの間に位置する第1身頃生地15の第2領域15Bと第2身頃生地16から筒状部11の周面が形成される。そして、第1身頃生地15の第2領域15Bとそれに対向する第2身頃生地16との間に中材12が配されることにより、筒状部11が形成される。
【0034】
第1止着部17Aは第1領域15Aの少なくとも一部に形成されればよく、第2止着部17Bは第3領域15Cの少なくとも一部に形成されればよい。第1領域15Aにおいて、第1止着部17Aは連続的に形成されてもよく、断続的に形成されてもよい。第3領域15Cにおいて、第2止着部17Bは連続的に形成されてもよく、断続的に形成されてもよい。第1止着部17Aと第2止着部17Bは方向Xに延びる止着線として形成されることが好ましく、これにより第1身頃生地15の第1領域15Aと第3領域15Cの柔軟性を高めることができる。第1止着部17Aと第2止着部17Bは、縫合、熱溶着(例えば、ヒートシールや超音波溶着)、接着剤等の公知の接合手段により形成することができる。簡便には、第1止着部17Aと第2止着部17Bは縫合により形成されることが好ましく、
図2ではそのように第1止着部17Aと第2止着部17Bが形成されている。
【0035】
図2に示した態様では、筒状部11の延在方向(すなわち方向X)に対する垂直断面において、第1身頃生地15の第2領域15Bの長さが、対向する第2身頃生地16の長さよりも十分に長く形成される。これにより、身頃部において、筒状部11が身頃部の面方向に対して膨出するように形成される。具体的には、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、筒状部11の周長をA1、第1領域15Aにおける第2領域側端15AEと第3領域15Cにおける第2領域側端15CEとの距離をA2としたとき、A2/A1が0.2以下となっている。ここで、筒状部11の周長A1とは、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、第1止着部17Aと第2止着部17Bの間の範囲における第1身頃生地15と第2身頃生地16の合計長さを意味する。第1領域15Aにおける第2領域側端15AEと第3領域15Cにおける第2領域側端15CEとの距離A2とは、第1止着部17Aと第2止着部17Bの間の範囲における第2身頃生地16の長さを意味する。A2/A1の値は、0.1以下であってもよい。
【0036】
なお、第1身頃生地15の第1領域15Aと第3領域15Cは筒状には形成されず、着用者の身体に沿って面状に延びるように形成されることが好ましい。第2身頃生地16も、着用者の身体に沿って面状に延びるように形成されることが好ましい。
【0037】
第2身頃生地16は、第1領域15Aにおける第2領域側端15AEと第3領域15Cにおける第2領域側端15CEとを繋ぐように設けられればよい。第2身頃生地16は、第1領域15Aの全部と重なって設けられてもよく、第1領域15Aの一部のみと重なって設けられてもよく、また第3領域15Cの全部と重なって設けられてもよく、第3領域15Cの一部のみと重なって設けられてもよい。
【0038】
図3に示した態様では、身頃部は身頃生地18を有し、筒状部11は、身頃生地18とは別の第3生地19が筒状に形成され、その内側に中材12が配されることにより形成されている。そして、筒状部11の延在方向(すなわち方向X)に対する垂直断面において、第3生地19の一部区間が身頃生地18に連続的または断続的に固定されており、筒状部11の周長をB1、一部区間の長さをB2としたとき、B2/B1が0.2以下となっている。
【0039】
図3に示した態様では、
図1および
図2に示した態様とは異なり、身頃生地18は筒状部11の外周を形成せず、身頃生地18とは別の第3生地19から筒状部11の外周が形成される。身頃生地18は着用者の身体に沿って面状に延びるように形成され、一方、第3生地19は筒状に形成され、筒状に形成された第3生地19の内側に中材12が配されることにより筒状部11が形成される。筒状に形成された第3生地19は、止着部20で身頃生地18の表面に固定される。止着部20は方向Yに対して連続的に設けられてもよく、断続的に設けられてもよい。
【0040】
第3生地19は、方向Yの一方端部と他方端部の内側面どうしが接合されて筒状に形成されてもよく、方向Yの一方端部の内側面と他方端部の外側面とが接合されて筒状に形成されてもよい。前者の場合、筒状部11は、第3生地19の一方端部と他方端部の内側面どうしが接合されたマージン部分が、筒状部11の外方または内方に突出するように形成されてもよい。第3生地19は、1つの生地から構成されてもよく、複数の生地が繋ぎ合わされて構成されてもよい。なお、身頃生地18は筒状には形成されず、着用者の身体に沿って面状に延びるように形成されることが好ましい。
【0041】
筒状に形成された第3生地19は、
図3(b)に示すように、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、一部区間のみが身頃生地18に固定されており、筒状部11の周長をB1、一部区間の長さをB2としたとき、B2/B1が0.2以下となっている。このように第3生地19が身頃生地18に取り付けられることにより、身頃部において、筒状部11が身頃部の面方向に対して膨出するように形成される。ここで、筒状部11の周長B1とは、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、第3生地19から形成された筒状部11の外周の長さを意味する。第3生地19が身頃生地18に固定された一部区間の長さB2とは、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、止着部20の方向Yに対する最も一方側の端から最も他方側の端までの長さを意味する。B2/B1の値は、0.1以下であってもよい。筒状部11が身頃生地18に固定された一部区間として、第3生地19は、筒状部11の延在方向に対する垂直断面において、身頃生地18に1点で固定されてもよい。筒状部11は、筒状部11の外周部分が身頃生地18に固定されてもよく、上記に説明したマージン部分が筒状部11の外方に突出し、当該マージン部分が身頃生地18に固定されてもよい。
【0042】
止着部20は方向Xに延びる止着線として形成されることが好ましい。止着部20は、縫合、熱溶着(例えば、ヒートシールや超音波溶着)、接着剤等の公知の接合手段により形成することができる。簡便には、止着部20は縫合により形成されることが好ましく、
図3ではそのように第3生地19が身頃生地18に固定されている。
【0043】
本発明では、筒状部は上記のように形成することができ、いずれの場合も、筒状部が身頃部の表面に配置されるように形成される。筒状部はいわば、身頃部の表面にぶら下がるように、身頃部に設けられる。このように形成された筒状部は、内部に収容された中材が、筒状部の外周を構成する生地から圧迫を受けにくく、筒状部の内部で中材を嵩高い状態で保持することが容易になる。
図4を参照して説明すると、身頃部に鉛直下方に向かう力がかかっても、中材12が筒状部11の外周を構成する生地によって圧迫を受けにいため、中材12を嵩高い状態で保持することが容易になる。そのため、筒状部11を軽量に形成したり、保温効果を高めることが容易になる。また、筒状部11のクッション性を高めることもできる。
【0044】
筒状部の長さ(筒状部の延在方向に対する長さ)は、8cm以上であることが好ましく、10cm以上がより好ましく、12cm以上がさらに好ましい。筒状部の長さの上限は特に限定されず、例えば、筒状部は衣料の身幅方向の全体にわたって設けられてもよく、一部のみに設けられてもよい。筒状部の周長は、4cm以上が好ましく、6cm以上がより好ましく、8cm以上がさらに好ましく、また24cm以下が好ましく、22cm以下がより好ましく、20cm以下がさらに好ましい。
【0045】
筒状部は、身頃部の少なくとも一部に設けられればよいが、首よりも下の部分に設けられることが好ましい。
【0046】
筒状部は、少なくとも後側の身頃部に設けられることが好ましい。人体の上半身は背中側で比較的寒さを感じやすいため、筒状部を後側の身頃部に設けることで、衣料の保温効果を高めることができる。筒状部は前側の身頃部にも設けられてもよく、これにより衣料の保温効果をさらに高めることができる。一方、筒状部は前側の身頃部に設けないようにすることもでき、これにより前側の身頃部が嵩張らず、着用者が腕を胸の前に移動させたりする動作を行いやすくなる。
【0047】
筒状部は、身頃部に複数並んで設けられていることが好ましい。具体的には、筒状部は、筒状部の延在方向に対する垂直方向に間隔を空けて複数設けられていることが好ましい。これにより、衣料の保温効果を高めることができる。この場合、
図1に示した態様では、身頃生地13は、第1領域13Aと第2領域13Bと第3領域13Cを1つのユニットとして、当該ユニットが複数並んで配置されることとなる。
図2に示した態様では、第1身頃生地15は、第1領域15Aと第2領域15Bと第3領域15Cを1つのユニットとして、当該ユニットが複数並んで配置されることとなる。隣接するユニットは、一のユニットの第3領域13C,15Cが、それに隣接するユニットの第1領域13A,15Aと隣接することとなるが、この場合の第3領域13C,15Cと第1領域13A,15Aの境界は、一のユニットの筒状部とそれに隣接するユニットの筒状部の間で任意に設定すればよい。
図3に示した態様では、身頃生地18に、筒状部11が複数並んで設けられればよい。
【0048】
筒状部が複数並んで設けられる場合、隣接する筒状部間の離隔距離は4cm以上が好ましく、5cm以上がより好ましく、6cm以上がさらに好ましく、また20cm以下が好ましく、18cm以下がより好ましく、16cm以下がさらに好ましい。なお、隣接する筒状部間の離隔距離とは、隣接する筒状部の根元間の距離を意味する。筒状部の根元の位置は、
図1に示した態様では、身頃生地13の第1領域13Aと第2領域13Bの境界および第2領域13Bと第3領域13Cの境界に相当し、
図2に示した態様では、第1身頃生地15の第1領域15Aと第2領域15Bの境界および第2領域15Bと第3領域15Cの境界に相当し、
図3に示した態様では、第3生地19が身頃生地18に固定される一部区間の方向Yに対する両端の位置に相当する。
【0049】
筒状部が複数設けられる場合、複数の筒状部の長さ(筒状部の延在方向に対する長さ)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数の筒状部の周長は互いに同一であっても異なっていてもよい。筒状部が、筒状部の延在方向に対する垂直方向に間隔を空けて3つ以上設けられる場合、隣接する筒状部間の離隔距離は一定であってもそうでなくてもよい。筒状部の大きさや配置を適宜設定することにより、保温効果を高めたい箇所を任意に設定したり、場所によっては通気性を高めて熱や蒸れが溜まりにくくすることを容易に実現することができる。
【0050】
筒状部は、身頃部の着用者側に設けられてもよく、その反対側の外側に設けられてもよい。
図1に示した態様では、身頃生地13の第2領域13Bから形成された筒状部11が、身頃生地13の第1領域13Aと第3領域13Bに対して、着用者側に膨出するように設けられてもよく、外側に膨出するように設けられてもよい。
図2に示した態様では、第1身頃生地15が第2身頃生地16に対して着用者側に位置していてもよく、外側に位置していてもよい。前者の場合、第1身頃生地15の第2領域15Bから形成された筒状部11が、第2身頃生地16に対して(あるいは第1身頃生地15の第1領域15Aと第3領域15Cに対して)着用者側に膨出するように設けられ、後者の場合、第1身頃生地15の第2領域15Bから形成された筒状部11が、第2身頃生地16に対して(あるいは第1身頃生地15の第1領域15Aと第3領域15Cに対して)外側に膨出するように設けられる。
図3に示した態様では、第3生地19から形成された筒状部11が、身頃生地18に対して着用者側に膨出するように設けられてもよく、外側に膨出するように設けられてもよい。
【0051】
筒状部は、衣料の着用者側に面して設けられてもよく、衣料の外側に面して設けられてもよい。また、衣料が表地と裏地を有し、表地と裏地の間に筒状部が設けられてもよい。なお、筒状部は、衣料の着用者側に面して設けられることが好ましく、このように筒状部を設けることにより、着用者から発せられた熱が筒状部に効率的に保持され、保温効果を高めることができる。筒状部が身頃部に複数並んで設けられる場合は、隣接する筒状部の間の空間にも保温効果を持たせることができる。
【0052】
筒状部は、身幅方向に延びるように設けられるか、身幅方向に対して斜め方向に延びるように設けられることが好ましい。筒状部が身幅方向に延びるように設けられる場合は、筒状部内で中材が偏在しにくくなり、筒状部による保温効果を高めることができる。一方、筒状部が身幅方向に対して斜め方向に延びるように設けられる場合は、筒状部は、身幅方向に対して±40°以内の角度で傾斜して延在するように設けられることが好ましく、±30°以内の角度がより好ましく、±20°以内の角度がさらに好ましい。このように筒状部を設けることにより、身体から放出される熱や蒸れが筒状部の傾斜方向に沿って上昇して、スムーズに外部に放出されやすくなる。なお、身幅方向とは、衣料を着用した場合の着用者の左右方向に相当し、また衣料を着用した場合の上下方向に相当する方向として、身長方向が定められる。
【0053】
筒状部は、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられていることが好ましい。このように筒状部を設けることで、着用者が上半身や腕を動かす際に、筒状部が邪魔になりにくくなる。
【0054】
後側の身頃部では、筒状部は、身頃部の左右両側に、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられ、身幅方向の中央部(すなわち着用者の背骨に沿った部分)には筒状部が設けられないことが好ましい。このように後側の身頃部の筒状部を配置することで、発汗によって着用者の背中と衣料の間に過剰な熱や蒸れが溜まっても、熱や蒸れが後側の身頃部の身幅方向の中央部に集まってスムーズに外部に放出されやすくなる。この場合、後側の身頃部の身幅方向の中央部には、筒状部が設けられない領域が身長方向の全体にわたって設けられることが好ましく、また当該領域が3cm以上15cm以下の幅で設けられることが好ましい。
【0055】
筒状部内での中材の偏在を抑える観点から、筒状部は、筒状部の延在方向の端部以外の部分において、身頃部の面方向(すなわち、衣料の着用の際に身体に沿って面状に延びる方向)の垂直方向に対向する筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合していてもよい。
図1に示した態様では、筒状部11の外周を構成する身頃生地13の第2領域13Bの内側面どうしが、筒状部11の延在方向の端部以外の部分において、第1領域13Aと第3領域13Cの面方向の垂直方向、すなわち方向Zに対向する部分で互いに接合していてもよい。
図2に示した態様では、筒状部11の外周を構成する第1身頃生地15の第2領域15Bと第2身頃生地16の内側面どうしが、筒状部11の延在方向の端部以外の部分において、第1身頃生地15の第1領域15Aと第3領域15Cの面方向の垂直方向、すなわち方向Zに対向する部分で互いに接合していてもよい。この場合、第1身頃生地15の第2領域15Bと第2身頃生地16は、第1身頃生地15の第1領域15Aにおける第2領域側端15AEと第3領域15Cにおける第2領域側端15CE以外で、方向Zに互いに接合することとなる。
図2に示した態様では、好ましくは、第1身頃生地15の第2領域15Bとそれに対向する第2身頃生地16とが互いに接合される。
図3に示した態様では、筒状部11の外周を構成する第3生地19が、筒状部11の延在方向の端部以外の部分において、身頃生地18の面方向の垂直方向、すなわち方向Zに対向する部分で互いに接合していてもよい。このように、筒状部11の延在方向の端部以外の部分において、筒状部11の外周の内側面どうしを接合することで、筒状部11内での中材12の偏在を抑えることができる。また、衣料を着用した状態で、筒状部11が垂れ下がらずに、所定位置に保持することが容易になる。
【0056】
筒状部の延在方向の端部以外の部分としては、筒状部を延在方向に10等分したときの中央8/10の領域を含む部分であることが好ましい。筒状部は、筒状部の内側面どうしが接合されることにより、筒状部の内部空間が複数に分割されないことが好ましい。従って、筒状部の外周の内側面どうしの接合は、筒状部の延在方向(すなわち方向X)に対して一部区間のみにおいて行われることが好ましく、筒状部の延在方向に対する垂直方向(すなわち方向Y)に対して一部区間のみにおいて行われることが好ましい。このように筒状部の内側面どうしを接合することで、筒状部内で中材を嵩高い状態で保持することができる。同様の観点から、筒状部の外周の内側面どうしを接合する止着部の長さ(最長長さ)は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
【0057】
筒状部の外周の内側面どうしの接合は、縫合、熱溶着(例えば、ヒートシールや超音波溶着)、接着剤等の公知の接合手段により行うことができ、簡便には縫合により行うことが好ましい。
【0058】
一方、筒状部は、筒状部の延在方向の端部が封止されていることが好ましく、より好ましくは、筒状部の延在方向の端部が身頃部の面方向の垂直方向に潰されて、封止されていることが好ましい。このように、筒状部の延在方向の端部が封止されることにより、筒状部から中材が流出するのを防ぐことができ、また筒状部の端部が邪魔にならずにすっきりと形成される。
【0059】
図5には、そのように形成された筒状部の構成例を示した。
図5に示した筒状部11は、方向Xの端部以外の部分が、止着部21で、方向Zに対向する筒状部11の外周の内側面どうしが互いに接合されている。これにより、筒状部11内での中材12の偏在を抑えることができる。一方、筒状部11の方向Xの端部は、押さえ生地22によって方向Zに押さえられて、止着部23で封止されている。
図1に示した態様では、身頃生地13の第1領域13Aと第2領域13Bと第3領域13Cの方向Xの端部が押さえ生地22によって覆われ、押さえ生地22と接合される。
図2に示した態様では、第1身頃生地15の第1領域15Aと第2領域15Bと第3領域15Cの方向Xの端部が押さえ生地22によって覆われ、押さえ生地22と接合される。押さえ生地22は、さらに第2身頃生地16と接合されてもよい。
図3に示した態様では、身頃生地18と第3生地19の方向Xの端部が押さえ生地22によって覆われ、押さえ生地22と接合される。
【0060】
身頃部には、隣接する筒状部の間に通気部が設けられてもよい。
図1に示した態様では、身頃生地13の第1領域13Aまたは第3領域13Cに通気部を設けることができる。
図2に示した態様では、第1身頃生地15の第1領域15Aまたは第3領域15Cに通気部を設けることができる。また、第2身頃生地16にも通気部を設けてもよい。
図3に示した態様では、身頃生地18の隣接する筒状部11の間の部分に通気部を設けることができる。このように通気部を設けることにより、発汗により着用者と衣料の間に蒸れが溜まっても、通気部から蒸れが外部にスムーズに放出されやすくなる。
【0061】
後側の身頃部の身幅方向の中央部に筒状部が設けらない領域が形成される場合は、筒状部が設けられない身幅方向の中央部に通気部が設けられてもよい。このように通気部を設けることにより、後側の身頃部の身幅方向の中央部に着用者からの発汗によって蒸れが溜まっても、通気部から蒸れが外部にスムーズに放出されやすくなる。
【0062】
通気部は通気孔として設けることができ、その形状は特に限定されない。通気部は、例えば、円相当径として1mm~10mm(好ましくは2mm~8mm)で形成されることが好ましい。
【0063】
次に、本発明の衣料の構成例について、
図6を参照して説明する。なお、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図6は、本発明の衣料(上衣)を着用者側から見た展開図を表し、前側の身頃部と後側の身頃部の両肩での接合(縫合)を解いて展開した状態を表している。
【0064】
図6に示した衣料1は、前側の身頃部2と後側の身頃部3を有し、後側の身頃部3に筒状部11が設けられている。筒状部11は、衣料1の着用者側に面して設けられ、筒状部11の延在方向に対する垂直方向に間隔を開けて複数設けられている。衣料1は、このように筒状部11が設けられることにより、後側の身頃部3における保温効果を効果的に高めることができる。
【0065】
図6では、筒状部11は、後側の身頃部3の左右両側に複数並んで、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられている。そして、後側の身頃部3の身幅方向の中央部3Cには、筒状部11が設けられていない。このように筒状部11を配置することにより、発汗によって着用者の背中と衣料1の間に蒸れが溜まっても、蒸れが複数並んだ筒状部11の間を通って身幅方向の中央部3Cに集まってスムーズに外部に放出されやすくなる。
【0066】
身頃部3には、筒状部11の延在方向に対する垂直方向に隣接する筒状部11の間に通気部4が設けられている。このように通気部4を設けることにより、発汗により着用者と衣料1の間に蒸れが溜まっても、通気部4から蒸れが外部にスムーズに放出されやすくなる。身頃部3にはさらに、筒状部11が設けられない身幅方向の中央部3Cに通気部5が設けられてもよい。これにより、後側の身頃部3の身幅方向の中央部3Cに蒸れが溜まっても、通気部5から蒸れが外部にスムーズに放出されやすくなる。
【0067】
筒状部11は、筒状部11の延在方向に対する端部が、身頃部3の面方向の垂直方向に押さえられ、封止されている。これにより、筒状部11の端部がすっきり形成される。筒状部11は、筒状部11の延在方向の端部以外の部分が、止着部21で、身頃部3の面方向の垂直方向に対向する筒状部11の外周の内側面どうしが互いに接合されている。これにより、筒状部11内で中材の偏在を抑えることができる。
【0068】
本発明の衣料は、これをそのままアウターウェアとして着用してもよいが、アウターウェアの内側に着用したり、アウターウェアの裏地として用いることが好ましい。すなわち、本発明の衣料はインナーウェアであることが好ましく、あるいは、アウターウェアとして防寒着の裏地に用いることが好ましい。本発明の衣料をインナーウェアとして用いたり、アウターウェア(防寒着)の裏地として用いることにより、保温効果を効率的に高めることができる。またその結果、本発明の衣料の上に着用するアウターウェアの生地や、本発明の衣料を裏地に用いたアウターウェア(防寒着)の表地を、比較的薄手の材料から構成することができ、身体の運動性を高めることができる。
【0069】
本発明の衣料を、アウターウェアとしての防寒着の裏地に用いる場合、当該防寒着は、表地と裏地を有し、裏地が本発明の衣料を有するものとなる。このように構成された防寒着は、裏地(すなわち本発明の衣料)によって保温性が確保されるため、表地を比較的薄手の材料から構成することができ、運動性に優れたものとなる。もちろん、本発明の衣料をそのままアウターウェアの防寒着として用いることもできる。防寒着としては、ジャケット、コート、ジャンパー、ウィンドブレーカー、レインウェア、スキーウェア等が挙げられる。
【符号の説明】
【0070】
1:衣料
2:前側の身頃部
3:後側の身頃部、3C:身幅方向の中央部
4,5: 通気部
11:筒状部
12:中材
13:身頃生地、13A:第1領域、13B:第2領域、13C:第3領域
15:第1身頃生地、15A:第1領域、15B:第2領域、15C:第3領域
16:第2身頃生地
18:身頃生地
19:第3生地
21,23:止着部
22:押さえ生地
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記筒状部は、前記衣料の着用者側に面して設けられ、
前記身頃部は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有する身頃生地を有し、
前記筒状部は、前記身頃生地が第2領域において筒状に形成され、その内側に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状に形成された前記身頃生地の第2領域は、前記第1領域側の第1端部と前記第3領域側の第2端部とを有し、前記第1端部と前記第2端部の内側面どうしが対向して固定され、
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向の端部以外の部分において、前記身頃部の面方向の垂直方向に対向する前記筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合した止着部を有し、前記止着部は、前記筒状部の延在方向とその垂直方向に対して、一部区間のみに形成されていることを特徴とする衣料。
【請求項2】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記筒状部は、前記衣料の着用者側に面して設けられ、
前記身頃部は、第1身頃生地と、該第1身頃生地に対向して設けられた第2身頃生地とを有し、
前記第1身頃生地は、第1領域と、該第1領域に隣接している第2領域と、該第2領域に隣接している第3領域とを有し、
前記第1身頃生地は第1領域と第3領域が前記第2身頃生地に固定され、前記筒状部は、前記第1身頃生地の第2領域と前記第2身頃生地の間に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状部の延在方向に対する垂直断面において、前記筒状部の周長をA1、前記第1領域における第2領域側端と前記第3領域における第2領域側端との距離をA2としたとき、A2/A1が0.2以下であり、
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向の端部以外の部分において、前記身頃部の面方向の垂直方向に対向する前記筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合した止着部を有し、前記止着部は、前記筒状部の延在方向とその垂直方向に対して、一部区間のみに形成されていることを特徴とする衣料。
【請求項3】
前側および/または後側の身頃部に、中材が収容された筒状部が設けられた衣料であって、
前記筒状部は、前記衣料の着用者側に面して設けられ、
前記身頃部は身頃生地を有し、
前記筒状部は、前記身頃生地とは別の第3生地が筒状に形成され、その内側に前記中材が配されることにより形成され、
前記筒状部の延在方向に対する垂直断面において、前記第3生地の一部区間が前記身頃生地に連続的または断続的に固定されており、前記筒状部の周長をB1、前記一部区間の長さをB2としたとき、B2/B1が0.2以下であり、
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向の端部以外の部分において、前記身頃部の面方向の垂直方向に対向する前記筒状部の外周の内側面どうしが互いに接合した止着部を有し、前記止着部は、前記筒状部の延在方向とその垂直方向に対して、一部区間のみに形成されていることを特徴とする衣料。
【請求項4】
前記筒状部は後側の前記身頃部に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項5】
前記筒状部は、身幅方向に対して±40°以内の角度で傾斜して延在するように設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項6】
前記筒状部は、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項7】
前記筒状部は、後側の身頃部の左右両側に、身幅方向の外側から中心に向かって上方に延びるように設けられ、身幅方向の中央部には前記筒状部が設けられていない請求項1~6のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項8】
前記筒状部は、前記筒状部の延在方向に対する垂直方向に間隔を空けて複数設けられている請求項1~7のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項9】
前記垂直方向に隣接する前記筒状部間の離隔距離が一定でない請求項8に記載の衣料。
【請求項10】
前記身頃部には、隣接する前記筒状部の間に通気部が設けられている請求項8または9に記載の衣料。
【請求項11】
後側の身頃部の身幅方向の中央部には前記筒状部が設けられない領域が形成され、前記筒状部が設けられない前記身幅方向の中央部に通気部が設けられている請求項1~10のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項12】
前記通気部は、円相当径として1mm~10mmの大きさの通気孔として形成されている請求項10または11に記載の衣料。