(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036000
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】組み合わせ決定支援システム、組み合わせ決定支援方法、組み合わせ決定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20230306BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136404
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021141483
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521385024
【氏名又は名称】合同会社バビエカ
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】枚田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上山 大介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の選択肢で構成される組み合わせをユーザー単位で集約し、組み合わせに対して所定のユーザーの制約を含む希望を反映して最適な組み合わせを決定する。
【解決手段】サーバ装置Sは、組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得する取得部と、組み合わせ情報を記憶する記憶部と、記憶された組み合わせ情報に基づいて組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定する設定部と、記憶された組み合わせ情報並びに設定された制約情報及び目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出する算出部と、を備える。組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は可変情報に関連する変異情報を含む。可変情報の各々、変異情報の各々及び可変情報及び変異情報の少なくとも何れかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴う。可変情報及び/又は変異情報は、各々に関連する属性値情報を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の選択肢で構成される組み合わせの決定を支援するコンピュータシステムであって、
前記組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得する取得部と、
取得された前記組み合わせ情報を記憶する記憶部と、
記憶された前記組み合わせ情報に基づいて前記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定する設定部と、
記憶された前記組み合わせ情報並びに設定された前記制約情報及び前記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出する算出部と、を備え、
前記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は前記可変情報に関連する変異情報を含み、
前記可変情報の各々、前記変異情報の各々、及び前記可変情報及び前記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、
前記可変情報及び/又は前記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含む
ことを特徴とする組み合わせ決定支援システム。
【請求項2】
前記制約情報は、前記属性値情報又は前記属性値情報の計算値を閾値として設定され、
前記目的関数は、前記属性値情報の計算値の最大、最小、又は極値として設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の組み合わせ決定支援システム。
【請求項3】
記憶された前記組み合わせ情報に対するユーザーからのアクセスの可否を判定する判定部をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組み合わせ決定支援システム。
【請求項4】
前記記憶部は、単一又は規定のユーザーからのアクセスのみを受け付ける第1組み合わせ情報を記憶する第1記憶部と、全てのユーザーからのアクセスを受け付ける第2組み合わせ情報を記憶する第2記憶部とを有し、
前記設定部は、前記制約情報及び前記目的関数を暗号化して設定し、前記算出部に算出された所望の組み合わせ情報を復号化する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の組み合わせ決定支援システム。
【請求項5】
算出された所望の組み合わせ情報を画像として認識する認識部と、
前記画像として認識された組み合わせ画像情報を教師データとして機械学習させた学習済み第1モデルを用いて、前記組み合わせ画像情報から特徴量を分析する分析部と、をさらに備え、
前記制約情報は、分析された上記特徴量を加味して設定される
ことを特徴とする請求項1乃至の4のいずれかに記載の組み合わせ決定支援システム。
【請求項6】
前記算出部は、過去に記憶された前記組み合わせ情報並びに設定された前記制約情報及び前記目的関数と、過去に算出された所望の組み合わせ情報とを教師データとして機械学習させた学習済み第2モデルを用いて、新たに記憶された前記組み合わせ情報から推定される新たな所望の組み合わせ情報を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至の5のいずれかに記載の組み合わせ決定支援システム。
【請求項7】
複数の選択肢で構成される組み合わせの決定を支援するコンピュータシステムが実行する組み合わせ決定支援方法であって、
前記組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得し、
取得した前記組み合わせ情報を記憶し、
前記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定し、
記憶した前記組み合わせ情報並びに設定した前記制約情報及び前記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出し、
前記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は前記可変情報に関連する変異情報を含み、
前記可変情報の各々、前記変異情報の各々、及び前記可変情報及び前記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、
前記可変情報及び/又は前記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含む
ことを特徴とする組み合わせ決定支援方法。
【請求項8】
複数の選択肢で構成される組み合わせの決定を支援するコンピュータに、
前記組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得させ、
取得された前記組み合わせ情報を記憶させ、
記憶された前記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定させ、
記憶された前記組み合わせ情報並びに設定された前記制約情報及び前記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出させ、
前記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は前記可変情報に関連する変異情報を含み、
前記可変情報の各々、前記変異情報の各々、及び前記可変情報及び前記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、
前記可変情報及び/又は前記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含む
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な組み合わせ決定支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば製造業で設計・開発・生産・製造される製品の仕様を構成する複数の選択肢の中から所望の組み合わせの決定を支援する組み合わせ決定支援システム、組み合わせ決定支援方法、組み合わせ決定支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば製造業の分野では、CAD(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided Engineering)等のツール(ソフトウェア)に代表されるように、コンピュータを使用して製品の設計・開発・生産・製造(以下「製造等」ともいう。)を支援するツールが多く用いられている。このようなツールに関する技術として、例えば特許文献1には、製品の製造等の計画を立案するものが開示されている。
【0003】
具体的には、計画の仕様を特定する複数の要素に関する仕様情報と複数の要素の各々についての制約条件を規定した制約条件情報とを基に計画の候補となる複数の計画候補を立案し、立案した複数の計画候補の各々の内容を計画データとして生成する計画立案装置と、各計画データを評価し、各計画データに対する評価結果を示す複数の評価データを生成する計画評価装置と、計画立案装置により生成された各計画データをユーザー用端末に送信し、ユーザー用端末から各計画データに対するユーザーの評価結果を示すユーザーデータをそれぞれ受信する評価入力装置と、少なくとも評価入力装置の受信による各ユーザーデータを学習データとして学習し、学習結果から各計画候補に対する評価学習器を構築する評価学習装置と、を備える計画立案システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、計画の仕様を特定する複数の要素(例えば製品の納期・品種・生産時間・コスト)に関係するユーザー毎の制約条件(例えば納期・数量・同品種の連続製造量)を計画立案に反映し切れていない。そのため、予測値や予測信頼度により高評価されたとしても、ユーザーによっては制約条件が考慮されていない計画であれば、複数の要素の最適な組み合わせとは言い切れない。
【0006】
一般的な製造業で製造等される製品は、企画部門でデザイン・色・機能等を選択して開発すべき製品を決め、設計部門で素材・部品・適用技術等を選択して設計を行い、製造部門において物流・搬送・ライン配置等を選択して製品に仕上げる等、様々な選択肢の組み合わせで構成されることから、製品の仕様を特定する選択肢の組み合わせを最適化するには、各部門(ユーザー毎)にしか知り得ない制約条件を反映すべきである。
【0007】
また、製造業における製品のみならず、世の中には複数の選択肢で構成される組み合わせの制約や最適化の問題が多岐に渡り、そういった問題に遭遇するユーザーにとって、選択肢やユーザーの都合に関する制約や組み合わせの最適化に関する目的関数を正確に反映するのは容易でない。そのため、組み合わせの生成・ユーザー毎の制約条件の加味・目的関数の設定といった作業におけるユーザービリティの向上が求められていることに、発明者は創意工夫の末に辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、複数の選択肢で構成される組み合わせをユーザー単位で集約し、かつ上記組み合わせに対して所定のユーザーの制約を含む希望を反映して最適な組み合わせを決定できる組み合わせ決定支援システム、組み合わせ決定支援方法、組み合わせ決定支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、複数の選択肢で構成される組み合わせの決定を支援するコンピュータシステムであって、上記組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得する取得部と、取得した上記組み合わせ情報を記憶する記憶部と、記憶した上記組み合わせ情報に基づいて上記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定する設定部と、記憶した上記組み合わせ情報並びに設定した上記制約情報及び上記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出する算出部と、を備え、上記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は上記可変情報に関連する変異情報を含み、上記可変情報の各々、上記変異情報の各々、及び上記可変情報及び上記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、上記可変情報及び/又は上記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含むことを特徴とする組み合わせ決定支援システムである。
【0010】
このような構成によれば、モデル化により複数の選択肢同士の依存制約が加味された組み合わせ情報をユーザー単位で全て集約し、全ての組み合わせのうち所定のユーザーの制約情報及び目的関数をさらに設定することで、上記ユーザーにとって所望の組み合わせ情報を算出できることから、一個人の経験・勘・試行錯誤に頼ることなく、組み合わせの絞り込み・抽出・決定の効率化といった効果を期待できる。すなわち、モデル化された組み合わせ情報はユーザーにより加味された依存制約情報を伴うため、各ユーザー同士や各ユーザーに従属する個人(担当者等)同士で依存制約に関する調整・合意が不要であるばかりでなく、最適な組み合わせ情報の算出精度の向上といった効果を期待できる。したがって、特に製造業のような上流工程(企画や設計等)から下流工程(生産や物流等)に渡って膨大な数の選択肢・組み合わせの制約・ユーザーが存在する製品開発にとって、本発明により上述した効果が得られれば、生産性の向上を図ることができる。
【0011】
以下、本発明の内容を補足するために、これを表現する言葉の意味や例示のうち、特筆すべきものを列挙する。
【0012】
「コンピュータシステム」は、例えばインターネット等のネットワーク回線を介して通信し合うユーザー毎に管理されたパーソナルコンピュータ等の情報処理端末と所定の箇所で管理されたサーバ装置で構成されるが、サーバ装置は物理サーバ或いはクラウドサーバ又はこれらを統合した複合サーバのいずれでもよく、サーバ装置に換えてサーバ装置として機能する情報処理端末同士で構成されてもよく、情報処理端末を介して操作されるサーバ装置(コンピュータ)単体で構成されてもよく、量子コンピュータで構成されてもよい。情報処理端末やサーバ装置は、電子情報の演算処理・保存・送受信のような公知技術を実行するものであればよく、スペックに制限はない。
【0013】
「複数の選択肢」とは、例えば製造業で製造される製品、製品を構成する部品、製品や部品(以下「部品等」ともいう。)の仕様(例えば形状・デザイン・色・構造・寸法・成分・精度・機能・性能・グレード・適用技術・ライン製造方法・物流方法・試験方法)であるが、所定の組み合わせを実現させる要素(例えば衣類・飲食物・住居といった商品に関すること、人種・相性・国籍といった人に関すること、金銭・時間・価値といった概念に関すること)も含み、限定されない。
【0014】
また「複数の選択肢」とは、部品等の管理用に付与される部品等共通識別情報、部品等の管理用に付与される部品等非共通識別情報、部品等が市場に流通するまでの流れの全部又は一部(以下「フロー」ともいう。)、フロー又はフローにおいて採用される品目(例えば部品・ソフトウェアパッケージ・図面・原料・素材・消耗品・治具)の管理用に付与されるフロー共通識別情報、フロー共通識別情報と組み合わさってフロー又はこれらにおいて採用される品目の管理用に付与されるフロー非共通識別情報、部品等非識別情報及び/又はフロー非識別情報に付加してこれらの情報を具体的にする非共通識別付加情報、部品等非識別情報及び/又はフロー非識別情報を所定の順序を示す順序情報(例えば、所定の実行や変更等の指示に関する情報)及び/又は年月日時分秒を示す時系列情報で特定する非共通識別特定情報、仕様や部品等共通識別情報やフロー共通識別情報でカテゴライズした部品等の分類やフローの分類であってもよい。部品等共通識別情報は、部品等の分類に相当してもよく、フロー共通識別情報は、フローの分類に相当してもよい。
【0015】
部品等は、ハードウェアでもソフトウェアでも所定の文字列で構成された電子データでもよく、ハードウェアの場合、所定の原料から得られる素材、上記素材を形成して得られる部材、上記部材を加工したり組み立てたりして得られる完成品でもよい。
【0016】
フローとは、所定の品目の状態を別の状態に変更することでもあり、例えば部品等の製造工程{例えば、加工工程・成型工程・塗装工程・組立工程・検査工程といった所定の終了条件(Exit Criteria)を満たす工程(以下「プロセス」ともいう。)、上記製造工程の成立に必要な手順(以下「ステップ」ともいう。)、上記手順の成立に必要な行為(以下「タスク」ともいう。)である。
【0017】
部品等共通識別情報とは、例えば機能番号や機能に付随する規格番号・計測単位・法規であり、部品等の名称や仕様又はこれらを文字列化した番号や記号でもよい。
【0018】
部品等非共通識別情報とは、例えば部品番号・図面番号であり、部品等共通識別情報と組み合わさって製品や部品を識別可能にするものであってもよく、部品等の名称や仕様又はこれらを文字列化した番号や記号でもよい。
【0019】
フロー共通識別情報とは、例えば標準となる工程(以下「標準工程」ともいう。)を識別する標準工程番号や工程に付随する規格番号・計測単位・法規であり、プロセス・ステップ・タスクの名称や仕様又はこれらを文字列化した番号や記号でもよい。
【0020】
フロー非共通識別情報とは、例えば標準工程に適用するように調整された工程(以下「適用工程」ともいう。)を識別する適用工程番号であり、フロー非共通識別情報と組み合わさって部品等が市場に流通するまでの流れの全部或いは一部又はこれらにおいて採用される品目を識別可能にするものであってもよく、プロセス・ステップ・タスクの名称や仕様又はこれらを文字列化した番号や記号でもよい。
【0021】
換言すると、部品等共通識別情報及びフロー共通識別情報は、所定の条件(識別対象の外部環境、例えば、温度、場所などの設計・製造に関する条件)に関わらず変化しない情報、部品等非共通識別情報及びフロー非共通識別情報は上記条件に応じて変化する情報である。
【0022】
非共通識別付加情報とは、例えば部品等やフローを対象とするエリア・団体等による経路(以下「ルート」ともいう。)の設定に関する情報(以下「ルート情報」ともいう。)であり、ルートの名称や仕様又はこれらを文字列化した番号や記号でもよく、また、部品等やフローを対象とする選択(以下「チョイス」ともいう。)に関する情報(以下「チョイス情報」ともいう。)であり、チョイスの名称又はこれを文字列化した番号や記号でもよい。
【0023】
非共通識別特定情報とは、部品等やフローや上記経路や上記選択に対する実行や変更等の指示(以下「インストラクション」ともいう。)に関する情報(以下「インストラクション情報」ともいう。)を意味し、例えば設変番号・承認番号・指示番号であり、インストラクションの名称又はこれを文字列化した番号や記号でもよい。
【0024】
ルート情報・チョイス情報・インストラクション情報は、フローに相当してもよく、フロー情報の分類に相当してもよい。品目は、製造工程・手順・行為・指示・経路・選択のいずれか1つ又は2つ以上において採用されてよい。
【0025】
製品や部品は、部品等共通識別情報や部品等共通識別情報と部品等非共通識別情報との組み合わせとして選択されてもよい。フローは、フロー共通識別情報やフロー共通識別情報とフロー非共通識別情報との組み合わせとして選択されてもよい
【0026】
「複数の選択肢」は、上記可変情報及び/上記変異情報に変換されてもよく、また、上記可変情報や上記変異情報に対して互いの構成を示す依存制約情報で所定の関係を有してもよい。すなわち、組み合わせ情報は、上記可変情報と上記変異情報と複数の選択肢に含まれる部品等共通識別情報・部品等非共通識別情報・フロー共通識別情報・フロー非共通識別情報・非共通識別付加情報・非共通識別特定情報のいずれか或いは2つ以上とで構成されてもよく、これによれば、組み合わせ情報に起因する制約と探索範囲のバリエーションを増やせ、非共通識別情報に対して非共通識別特定情報を付与してモデル化できることから、所望の組み合わせ情報をより高い精度(確度)で得られる効果を期待できる。
【0027】
「組み合わせ」とは、複数の選択肢のうち少なくとも2つ以上であればいずれの関係にあるもの同士でもよいが、例えば製品と製品、部品と部品のような並列関係にあるもの同士、製品と部品、部品と部品の仕様のような従属関係(又は選択関係)にあるもの同士、所定の上位概念と下位概念の関係にあるもの同士、一方が他方又はその他多数を必須とする関係(以下「必須関係」)や要求する関係(以下「要求関係」ともいう。)にあるもの同士、双方で排他する関係(以下「排他関係」ともいう。)にあるもの同士、一方が1つ又は2つ以上の他方を所属させる関係(以下「所属関係」ともいう。)、一方が1つの他方を所有する関係(以下「所有関係」ともいう。)、一方が1つ又は2つ以上の他方を共有する関係(以下「共有関係」ともいう。)、一方が他方に派生した関係(以下「派生関係」ともいう。)である。
【0028】
「モデル化」とは、複数の選択肢で構成される組み合わせを規定の図形・線・符号等を用いて図化したり、選択視の種類(項目)・名称・属性値等をリスト化したりすることであり、ユーザーの情報処理端末で操作可能な所定のツールで行ってもよい。
【0029】
「ユーザー」とは、複数の選択肢で構成される1つ又は2つ以上の組み合わせを検討・作成・選択・決定等する法人・個人・その他所定の組織であり、例えば製造業における完成品メーカー・パーツメーカー・OEM(Original Equipment Manufacturing)メーカー・部品や部材やソフトウェアの供給会社(いわゆるサプライヤー、ベンダー)・ソフトハウス・物流業者等・その他関連する会社であり、これらのうち2社以上で構成されるグループでもよく、選択視の要素や組み合わせの構成に応じて追加・変更・削除されてもよい。「ユーザー毎」とは、グループを含む2社以上のユーザーの各々であり、それぞれ発注側と受注側の関係にあってもなくてもよく、資本関係にあってもなくてもよく、秘密保持や共同開発のような契約を交わしていてもいなくてもよい。
【0030】
「組み合わせの制約充足」とは、組み合わせの依存制約を前提に、さらにユーザーが所望の組み合わせを得るために抽出する組み合わせを絞ることを意味する。「組み合わせの最適化」とは、組み合わせの制約充足を前提に、さらにユーザーが所望の組み合わせを得るために抽出する組み合わせを絞ることを意味する。制約充足する組み合わせの数や最適な組み合わせの数は、1つでも2つ以上でもよく、ユーザー所望の数でもよい。
【0031】
「依存制約」とは、所定の組み合わせを実現させる選択関係、必須関係、要求関係、排他関係、所属関係、所有関係、共有関係、派生関係のうち少なくとも1つの関係性を示すものである。
【0032】
「属性値」とは、例えば価格・評価・寸法・重量・温度・速度・面積のような各項目に関する数値である。
【0033】
「組み合わせ情報」、「制約情報」、「目的関数」、「可変情報」、「変異情報」、「依存制約情報」、及び「属性値情報」は、例えば送信・受信・記憶・閲覧・追加・編集・演算といった各種処理を情報処理端末装置やサーバ装置により行われる電子情報であり、電子情報には文字・動画像・静止画像・音が含まれてもよい。
【0034】
以下、本発明に含まれると望ましい発明を列挙する。
【0035】
本発明において、上記制約情報は、上記属性値情報又は上記属性値情報の計算値を閾値として設定され、上記目的関数は、上記属性値情報の計算値の最大、最小、又は極値として設定されてもよい。
【0036】
このような構成によれば、制約情報及び目的関数の設定数が有限になるため、ユーザーが所望の組み合わせを得るために抽出する組み合わせの精度が高まり、かつ容易に絞れる効果を期待できる。
【0037】
具体的には、制約情報は、属性値情報(個別値)又は属性値情報の計算値を閾値として所定の数値範囲内あること、所定の数値以上であること、又は以下であることの全6通りのいずれかとして設定され、目的関数は、属性値情報の計算値が最大、最小、又は極値となることの全3通りのいずれかとして設定されてもよい。制約情報及び目的関数は、属性値の各項目に応じて1つ又は2つ以上設定されてもよく、目的関数が2つ以上ある場合は優先順位があってもよい。「計算値」とは、例えば複数の属性値情報の総和やいずれか2つ以上の属性値情報の合計値であるが、四則演算等の計算式により算出される値であればいずれでもよい。
【0038】
本発明は、記憶された上記組み合わせ情報に対するユーザーからのアクセスの可否を判定する判定部をさらに備えていてもよい。また、本発明において、上記記憶部は、単一又は規定のユーザーからのアクセスのみを受け付ける第1組み合わせ情報を記憶する第1記憶部と、全てのユーザーからのアクセスを受け付ける第2組み合わせ情報を記憶する第2記憶部とを有し、上記設定部は、上記制約情報及び上記目的関数を暗号化して設定し、上記算出部に算出された所望の組み合わせ情報を復号化してもよい。
【0039】
このような構成によれば、コンピュータシステムの構成に応じて、ユーザー毎の組み合わせ情報に対する他のユーザーのアクセス権限を、判定部により論理的に設定したり、第1記憶部及び第2記憶部により物理的に設定したりできることから、ユーザー毎に依存制約情報の開示・非開示に応じて組み合わせ情報を生成できるため、ユーザー側で組み合わせ情報を生成した理由や経緯を履歴として管理しやすい効果を期待できる。すなわち、開示できる依存制約情報を伴う組み合わせ情報と、開示できない依存制約情報を伴う組み合わせ情報とを分けて、かつこれらをそれぞれ紐づけて管理できるため、組み合わせ情報の追加・変更・削除を容易に行える効果も期待できる。
【0040】
本発明は、算出された所望の組み合わせ情報を画像として認識する認識部と、上記画像として認識された組み合わせ画像情報を教師データとして機械学習させた学習済み第1モデルを用いて、上記組み合わせ画像情報から特徴量を分析する分析部と、をさらに備え、上記制約情報は、分析された特徴量を加味して設定されてもよい。
【0041】
このような構成によれば、関連性の高い選択肢が個々に存在することにより、算出される所望の組み合わせ情報の数が冗長になることを回避する効果が期待できる。換言すると、関連性の高い選択肢同士を束とする制約情報を加味することにより、算出される所望の組み合わせ情報の数が最小となって最適化を図りやすい。
【0042】
本発明において、上記算出部は、過去に記憶された上記組み合わせ情報並びに設定された上記制約情報及び上記目的関数と、過去に算出された所望の組み合わせ情報とを教師データとして機械学習させた学習済み第2モデルを用いて、新たに記憶された上記組み合わせ情報から推定される新たな所望の組み合わせ情報を算出してもよい。
【0043】
このような構成によれば、教師データにより学習済み第2モデルを機械学習させればさせるほど、ユーザーにとって所望の組み合わせ情報の算出の高速化かつ高精度化といった効果を期待できる。
【0044】
「教師データ」とは、学習済み第1モデル又は学習済み第2モデルにおける学習データであり、所定の入力データと、所定の出力データとを組み合わせたデータセットを用いた教師あり学習に対応するものでも、上記入力データのみを用いた教師なし学習に対応するものでもよく、文字情報でも画像情報でもよい。
【0045】
「学習済み第1モデル」及び「学習済み第2モデル」とは、所定の入力データが入力されると、上記入力データに含まれる所定の特徴量から所定の出力データ(上記特徴量のみでもよい。)を推定するプログラムであって、教師データを用いた機械学習が完了したモデルであるが、上記教師データにより継続して常時又は随時学習させてプログラムの精度を向上させてもよい。「学習済み第1モデル」及び/又は「学習済み第2モデル」で採用される分析手法は、公知の非階層クラスタリングや階層クラスタリングでもよい。
【0046】
「学習済み第1モデル」及び「学習済み第2モデル」は、例えばSVM(Support Vector Machine)等の線形モデル・CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)やBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)といったニューラルネットワーク・多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)といった学習方法で生成され、上記学習方法の実行主体である所定の装置又は部位(モデル生成部)は、同コンピュータシステムに含まれていてもいなくてもよい。モデル生成部が同コンピュータシステムに含まれていない場合、学習済み第1モデル及び学習済み第2モデルは所定のネットワーク回線を介して同コンピュータシステムに提供されてもよい。
【0047】
また、以下は、本発明に対してカテゴリーのみ異なる方法及びプログラムに関する発明であることから、発明の作用効果や発明を表現する言葉の意味や例示を省略する。
【0048】
本発明に相当するコンピュータシステムが実行する組み合わせ決定支援方法は、複数の選択肢で構成される組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得し、取得された上記組み合わせ情報を記憶し、上記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定し、記憶された上記組み合わせ情報並びに設定された上記制約情報及び上記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出し、上記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は上記可変情報に関連する変異情報を含み、上記可変情報の各々、上記変異情報の各々、及び上記可変情報及び上記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、上記可変情報及び/又は上記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含むことを特徴とする。
【0049】
本発明に相当するコンピュータシステムとして実行するコンピュータが読み取り可能なプログラムは、複数の選択肢で構成される組み合わせに基づいてモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得させ、取得された上記組み合わせ情報を記憶させ、上記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定させ、記憶された上記組み合わせ情報並びに設定した上記制約情報及び上記目的関数に基づいて所望の組み合わせ情報を算出させ、上記組み合わせ情報は、複数の選択肢に相当する可変情報及び/又は上記可変情報に関連する変異情報を含み、上記可変情報の各々、上記変異情報の各々、及び上記可変情報及び上記変異情報の少なくともいずれかは、互いの関係を示す依存制約情報を伴い、上記可変情報及び/又は上記変異情報は、各々に関連する属性値情報を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、複数の選択肢で構成される組み合わせをユーザー単位で集約し、かつ上記組み合わせに対して所定のユーザーの制約を含む希望を反映して最適な組み合わせを決定できる効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の一実施形態におけるコンピュータシステムの構成図である。
【
図2】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【
図3】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【
図4】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【
図5】上記ソフトウェア画面の一部について別の例を示す図である。
【
図6】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【
図7】上記システムで取り扱うモデル化された組み合わせ情報の一例を示す図である。
【
図8】上記システムで取り扱うモデル化された組み合わせ情報の一例を示す図である。
【
図9】上記システムによる実行処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】上記システムによる実行処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態における別のコンピュータシステムの構成図である。
【
図12】本発明の一実施形態におけるまた別のコンピュータシステムの構成図である。
【
図13】上記システムによる実行処理の概要を示す図である。
【
図14】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【
図15】上記システムにより実行されるソフトウェア画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、
図1~
図9を参照しつつ、本発明の一実施形態における組み合わせ決定支援システムの一例について説明する。
【0053】
<組み合わせ決定支援システムの概要>
組み合わせ決定支援システムは、製造業における製品開発に必要な複数の選択肢で構成される組み合わせのうち、製品開発に関わるユーザーにとって最適な組み合わせの決定を支援するものである。製品開発における複数の選択肢は、例えば部品や部品の仕様等であり、これらの組み合わせには、例えば製品と部品や部品と部品の仕様のような選択関係にあるもの同士、一方(部品)が他方(仕様のいずれか)を必須とする必須関係や要求する要求関係にあるもの同士、双方(部品と部品の仕様のいずれか)で排他する排他関係にあるもの同士等であり、ユーザーの都合に応じて1つ又は2つ以上の関係を有してもよい。ユーザーは、例えば発注側に相当する完成品メーカー・OEMメーカーと、受注側に相当する部品や部材やソフトウェアの供給会社(いわゆるサプライヤー、ベンダー)・ソフトハウス・物流業者等である。
【0054】
<組み合わせ決定支援システムを構成する基本的なハードウェア・ソフトウェア>
組み合わせ決定支援システムは、コンピュータ又は2つ以上のコンピュータで構成されたコンピュータシステムであって、電子情報{例えばOS(Operating System)・ミドルウェア・ファームウェア・アプリケーションといったソフトウェア・これらを実行するプログラム・その他文字・静止画像・動画像・音}を演算処理したり各ハードウェアに命令処理したりするCPU(Central Processing Unit)を含むマイクロプロセッサ、電子情報を記憶するハードディスクやSSDといったROM(Read Only Memory)、CPUによる制御に伴い一時的に上記電子情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、RFチップ・ベースバンドチップ・その他通信モジュールといった通信機器、キーボード・マウス・タッチパネル・マイク・カメラ・ボイスレコーダー・センサ等の入力機器、ディスプレイ・プリンタ・スピーカ・ヘッドホン等の出力機器、バッテリー等の電源機器、モーター等の稼働機器といったハードウェアを適宜組み合わせて形成されてもよく、ハードウェアの各々はバスやUSB等の入出力インタフェースを介して相互に接続されてもよい。
【0055】
コンピュータは、例えばサーバ装置や、パーソナルコンピュータ・スマートフォン・タブレットといった情報処理端末である。コンピュータが搭載するハードウェアやソフトウェアの種類・数・サイズは、用途やスペックに応じて適宜決定してもよく、量子コンピュータとして構成されてもよい。2つ以上のコンピュータの各々は、入出力インタフェース又は通信機器から通信ネットワークを介して相互に接続され、これ以外の方式で接続されてもよい。通信ネットワークは、例えば、インターネット・イントラネット・エキストラネット・LAN・CATV通信網・VPN・電話回線・移動体通信網・衛星通信網である。通信ネットワークを構成する伝送媒体は、IEEE1394・電力線搬送・電話線等の有線やIrDA、ブルートゥース(登録商標)・IEEE802.11(wifi等)・携帯電話網・衛星回線・地上波デジタル網等の無線でもよい。コンピュータの各々は、通信機器から通信ネットワークを介して電子情報を相互に送受信してもよい。
【0056】
<組み合わせ決定支援システムとハードウェアとの関係>
図1に示すように、組み合わせ決定支援システムは、サーバ装置Sと、情報処理端末Cとで構成されており、サーバ装置Sと情報処理端末Cとは通信ネットワークを介して通信し合っている。サーバ装置Sは、マイクロプロセッサに相当する制御部1と、ROMに相当する記憶部2と、電子情報を情報処理端末Cに送信したり情報処理端末Cから受信したりする通信機器に相当する付番しない通信部とを備えているが、出力機器に相当する出力部や入力機器に相当する入力部を備えていてもよい。情報処理端末Cは、図示しないが、マイクロプロセッサに相当する制御部と、ROMに相当する記憶部と、電子情報をサーバ装置Sに送信したりサーバ装置Sから受信したりする通信機器に相当する通信部と、出力機器に相当する出力部と、入力機器に相当する入力部とを備えている。なお、サーバ装置S及び情報処理端末Cは、電子情報を取り扱う公知のコンピュータに備わる部品や機能を全て備えてもよい。
【0057】
<組み合わせのモデル化>
組み合わせ決定支援システムは、複数の選択肢で構成される組み合わせを公知のOVM(Orthogonal Variability Model、直交可変性モデル)によって記述するアプリケーション(以下「OVMモデラ―」ともいう。)でモデル化する。「OVM」とは、可変性の情報をモデル化する手法であり、モデルを構成するのは、変異の対象を示す可変点{以下「バリエーションポイント」又は「VP」(Variation Pointの略称)ともいう)}、変異の内容(可変点の具体的なインスタンス)を示す変異体(以下「バリアント」又は「V」(Variantの略称)ともいう。)、及び各々の依存関係である。
【0058】
すなわち、組み合わせ決定支援システムは、OVMにより、製品開発に必要な複数の選択肢をバリエーションポイントやバリアントで表し、かつ複数の選択肢同士の選択関係・必須関係・要求関係・排他関係を依存関係として表すことで、複数の選択肢で構成される組み合わせをモデル化する。具体的には、組み合わせ決定支援システムは、サーバ装置SがOVMモデラ―を搭載している場合、情報端末装置CはOVMモデラ―をクラウドソフトウェアとしてユーザーからの操作入力に応じて電子情報をサーバ装置Sに送信する。一方、情報端末装置CがOVMモデラ―を搭載している場合、情報端末装置CはOVMモデラ―をインストールされた状態でユーザーからの操作入力に応じて電子情報をサーバ装置Sに送信する。
【0059】
OVMモデラ―でモデル化された組み合わせ情報は、複数の選択肢としてバリエーションポイントに相当する可変情報及びバリアントに相当して可変情報に関連する変異情報を含み、2つ以上の可変情報の各々、2つ以上の変異情報の各々、及び可変情報と変異情報とのセットの少なくともいずれかは、依存関係に相当して互いの関係を示す依存制約情報を伴い、可変情報及び/又は変異情報は、各々に関連する属性値情報を含む。
【0060】
図2及び
図3は、OVMモデラ―画面の一例を示す。
図2に示すように、ユーザーのドラッグ操作により、「VP」、「V」、「VP」や「V」の関係を示す線や矢印が描写され、対応する「VP」と「V」、「VP」と「VP」とが上記線や上記矢印でつながれて所定の依存制約情報が付与されることで、複数の選択肢の組み合わせに基づいてユーザーの組み合わせ情報がモデル化される。また、ユーザーのクリック操作により、上記組み合わせ情報をリスト化した「テーブルビュー」が展開されたり、上記組み合わせ情報を「他のユーザーに公開」設定されたり、「保存」されたりする。そして、「テーブルビュー」が展開されると、
図3に示すように、ユーザーのキータッチや音声といった入力操作により、「V」の属性値(例えば「価格」、「評価」)が設定されることで、上記組み合わせ情報に所定の属性値情報が付与される。
【0061】
すなわち、OVMモデラ―により、例えばOEMメーカーの発注を受注するサプライヤーは、部品M(可変情報)の種類として部品M1・M2・M3・M4・M5(変異情報)、部品N(可変情報)の種類として部品N1・N2・N3(変異情報)、及びこれらの依存関係(依存制約情報)と共に、変異情報の各々に関連する価格・評価(属性値情報)を付与して、組み合わせ情報をモデル化する。同様に、OEMメーカーの発注を受注する別のサプライヤーも、可変情報、変異情報、及び依存制約情報と共に、変異情報に関連する属性値情報を付与して、組み合わせ情報をモデル化する。これにより、ユーザー毎の組み合わせ情報が生成される。
【0062】
上記組み合わせ情報は、リアルタイムにサーバ装置Sの記憶部2に記憶(保存)されるが、ファイル形式として保存されなくてもされてもよい。すなわち、組み合わせ情報は、OVMモデラ―を介して保存され、また保存された組み合わせ情報は、OVMモデラ―を介して呼び出される。なお、組み合わせ情報は、公知のエクスポート機能により所定のファイル形式で出力されてもよい。
【0063】
<サーバ装置Sの詳細>
サーバ装置Sが備える制御部1は、OVMモデラ―でモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得する取得部11と、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報に基づいて組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定する設定部12と、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報並びに設定部12に設定された制約情報及び目的関数に基づいて最適な組み合わせ情報を算出する算出部13と、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報に対するユーザーからのアクセスの可否を判定する判定部14とを備えている。
【0064】
<取得部>
取得部11は、通信部を介して情報端末装置Cから送信されたユーザー毎の組み合わせ情報を取得する処理を行うが、上記組み合わせ情報を記憶部2に提供する処理を行ってもよい。取得部11による各処理のタイミングは、情報端末装置CがOVMモデラ―を介してユーザーからの操作入力を認識しない所定時間経過後(例えば1~3秒)だが、ユーザーからの所定の操作入力を認識した直後であってもよい。
【0065】
<設定部>
設定部12は、公知のASP(Answer Set Programming、解集合プログラミング)を実行するプログラム(以下「ASPソルバ」ともいう。)のインタフェース(以下「ASPソルバインタフェース」ともいう。)の一機能として、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報に対して制約情報及び目的関数を設定する処理を行うが、上記組み合わせ情報並びに設定された制約情報及び目的関数を符号化したプログラムをASPソルバの一機能として動作する算出部13に投入する処理と、設定された制約情報及び目的関数を記憶部2に提供する処理と、算出された所望の組み合わせ情報を文字情報や画像情報として(又は文字情報や画像情報に変換して)提供する処理とを行ってもよく、また、2つ以上設定された制約情報の各々に対してクラス(分類)又は必須とするか否かを設定する処理を行ってもよい。「ASP」とは、論理プログラミングと制約プログラミングの概念を融合した概念であり、変数を含むプログラムを符号化し、符号化されたプログラムの解集合を計算するものである。
【0066】
図4は、ASPソルバインタフェース画面の一例を示し、制約情報及び目的関数を設定する処理は、この画面からの操作により実行される。
図4に示すように、まず、ユーザーの入力操作により、OVMモデラ―を介して設定された属性値情報における属性項目(「価格」、「評価」)が、変数(例えば「W1」、「W2」)として設定される。
【0067】
次に、制約情報の設定として、「タイプ」(例えば「計算値が値1以上」)がプルダウンメニューからの選択により設定され、閾値として「値1」がOVMモデラ―を介して設定された変異情報(部品M1~M5及び部品N1~N3)の属性値情報(価格)に基づく計算値(例えば「300」)の入力により設定され、「値2」が空欄とし設定され、「式」が変数(「W1」)として設定される。さらに、目的関数の設定として、「タイプ」(例えば「最大化」)がプルダウンメニューからの選択により設定され、「式」が変数(例えば「W2」)として設定される。
【0068】
すなわち、設定部12によれば、サプライヤー毎の組み合わせ情報に基づいて、例えばOEMメーカーは、制約情報として「部品M1~M5及び部品N1~N3(変異情報)の価格(属性値情報)の計算値(変数)が300(値1)以下であること」、目的関数として「部品A1~A5及び部品B1~B3(変異情報)の評価(属性値情報)の計算値(変数)が最大であること」を設定する。なお、結果的に目的関数を満たす組み合わせ情報(解)が複数算出された場合、算出された解全てではなく、「バリアントの選択肢を最少化」とする解、又は「バリアントの選択肢を最大化」とする解、のいずれかを抽出する設定をしてもよい。
【0069】
ここで、制約情報で設定される「タイプ」は、「式」の「計算値が値1以下」の他に、「計算値が値1以上」、「計算値が値1と値2の間」、「個別値が値1以下」、「個別値が値1以上」、「個別値が値1と値2の間」も含む。さらに、目的関数で設定する「タイプ」は、「式」の計算値が最大となる解(組み合わせ)を求める「最大化」の他に、最小となる解(組み合わせ)を求める「最小化」、極値となる解(組み合わせ)を求める「極値化」も含み、最大化又は最小化と極値化とが結果的に同等であってもよい。すなわち、制約情報が属性値情報(個別値)又は属性値情報の計算値を閾値とする6タイプであり、かつ目的関数が属性値情報の計算値の最大、最小、又は極値とする3タイプであることで、ユーザーは複数の選択肢の組み合わせに対して所望の制約を設定しやすい。
【0070】
図5は、
図4に示す制約情報の設定部分の別の例を示す。
図5における
図4との相違点は、設定部12が2つ以上の制約情報の各々に対してクラス(分類)又は必須とするか否かを設定する処理を行う点である。そこで、以下では上記相違点のみについての説明をし、その他についての説明を省略する。
【0071】
図5(a)に示すように、例えば「式」が4種類あり、それぞれについて「クラス」が上から「1」、「2」、「2」、「3」と設定されている。実際の制約情報のパターンは、各数字以下のクラスを全て含み、具体的には、クラス1の場合は「W1」のみ、クラス2の場合は「W1」かつ「W2」、クラス3の場合は「W1」かつ「W2」かつ「W3」、全3パターンとなる。同じ数字は、同じクラスを意味し、具体的には、クラス2は「「W2」と「「W3」とのアンド条件となる。なお、相反関係を伴う「式」同士を含むパターンは、制約情報として採用されない。
【0072】
図5(b)に示すように、例えば「式」が3種類あり、「W1」の「必須(チェックボックス)」にチェックが設定されている。実際の制約情報のパターンは、「W1」のみ、「W1」かつ「W2」、「W1」かつ「W3」、「W1」かつ「W2」かつ「W3」、の全4パターンとなる。なお、相反関係を伴う「式」同士を含むパターンは、制約情報として採用されない。
【0073】
これらの構成によれば、必ず満たされなければならない制約情報とそうではない(優先順位が低い)制約情報とを予め指定し、制約情報のパターンを設定した上で、上記パターン毎に所望の組み合わせ情報を得られる。すなわち、2つ以上の制約情報の設定を二段階式にすることで、所望の組み合わせ情報の獲得精度が向上する。
【0074】
<算出部>
算出部13は、ASPソルバに含まれる一機能として、設定部12で符号化されたプログラムに基づいて最適な組み合わせ情報を算出する処理を行うが、算出された最適な組み合わせ情報をASPソルバインタフェースに提供する処理と、算出された最適な組み合わせ情報を記憶部2に提供する処理とを行ってもよい。
【0075】
図6は、ASPソルバインタフェース画面の一例を示し、最適な組み合わせ情報は、この画面を介してユーザーに確認される。
図6に示すように、可変情報に相当する「VP」、変異情報に相当する「V」、制約情報及び目的関数に相当する「式」、及び組み合わせのパターンに相当する「解N」として「〇」又は「×」がリスト化されている。
【0076】
すなわち、算出部12によれば、例えばOEMメーカーは、設定部12で設定された制約情報の「式」に相当する変数「W1」が「280」及び目的関数の「式」に相当する変数「W2」が「27」を満たす組み合わせパターン「解1」として、「部品M1~M5及び部品N1~N3」のうちの最適な組み合わせ情報として「〇」が記された「部品M3・M5及び部品N1・N3」を得る。
【0077】
<判定部>
判定部14は、記憶部2に記憶されたユーザー毎の組み合わせ情報に対するユーザーからのアクセスの可否を判定する処理を行う。
図2に示すように、例えばユーザーのクリック操作によりモデル化された組み合わせ情報に対して「他のユーザーに公開」設定された場合、判定部14は、公開用の組み合わせ情報として他のユーザーからのアクセスを許可する。なお、「アクセス」とは、閲覧を意味するが、書き込みを含んでもよい。
【0078】
図7及び
図8は、OVMモデラ―によりモデル化されたユーザー毎の組み合わせ情報の一例を示す。
図7に示すように、例えばOEMメーカーの発注内容として、「部品P」として「部品p1」・「部品p2」、「部品Q」として「部品q1」・「部品q2」、「部品R」として「部品r1」・「部品r2」、「部品S」として「部品s1」・「部品s2」という公開用の組み合わせ情報が生成される。これに対するサプライヤー1の受注条件として、「部品p1」・「部品p2」・「部品q1」・「部品q2」かつ「部品p1」と「部品q1」との排他関係を示す公開用の組み合わせ情報、サプライヤー2の受注条件として「部品q1」・「部品q2」・「部品r1」・「部品r2」かつ「部品q2」と「部品r1」との排他関係を示す公開用の組み合わせ情報、サプライヤー3の受注条件として「部品r1」・「部品r2」・「部品s1」・「部品s2」かつ「部品r2」と「部品s2」との排他関係を示す公開用の組み合わせ情報が生成される。
【0079】
一方、
図8に示すように、例えばサプライヤー1の受注条件として、公開用の組み合わせ情報に関連付く非公開用の組み合わせ情報が生成される。非公開用の組み合わせ情報は、サプライヤー1の選択肢である「部品p1」・「部品p2」・「部品q1」・「部品q2」のうち、「部品p1」は「部品X」と関係があり、「部品q1」は「部品Y」と関係があり、「部品X」は「部品x1」・「部品x2」を含む組み合わせ情報を伴い、「部品Y」は「部品y1」・「部品y2」を含む組み合わせ情報を伴い、最終的に「部品X」に関係する「部品xxx」と「部品Y」に関係する「部品yyy」との排他関係を示す。
【0080】
すなわち、サプライヤー1は、OEMメーカーやサプライヤー2、3に対する公開用の組み合わせ情報だけでなく、公開用の組み合わせ情報に起因する非公開用の組み合わせ情報を生成して記憶部2に記憶しておくことで、部外秘であるノウハウを管理しやすくなる。一方、OEMメーカーは、発注に関する必要な組み合わせ情報のみサプライヤー1から提供されるため、所望の組み合わせ情報を抽出しやすい。
【0081】
以下、上述した内容を参照しつつ、組み合わせ決定支援システムを構成するサーバ装置Sの実行処理の流れについて説明する。
【0082】
<基本的な実行処理の流れ>
図9に示すように、まず、部品や部品の仕様といった複数の選択肢で構成される組み合わせに基づいてOVMモデラーでモデル化された発注側のOEMメーカーや受注側のサプライヤー数社を含むユーザー毎の組み合わせ情報を取得部11が取得する(Step1)。次に、取得部11に取得された上記組み合わせ情報を記憶部2が記憶する(Step2)。そして、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報に基づいて、例えばOEMメーカーに関する上記組み合わせの制約充足に寄与する制約情報及び最適化に寄与する目的関数を設定部13が設定する(Step3)。そして、記憶2にされた上記組み合わせ情報並びに設定12で設定された上記制約情報及び上記目的関数に基づいてOEMメーカー所望の組み合わせ情報を算出部13が算出する(Step4)。
【0083】
このような流れによれば、モデル化により複数の選択肢同士の依存制約が加味された組み合わせ情報をユーザー単位で全て集約でき、全ての組み合わせのうち所定のユーザー(例えばOEMメーカー)の制約情報及び目的関数をさらに設定することで、上記ユーザーにとって所望の組み合わせ情報を算出できることから、一個人の経験・勘・試行錯誤に頼ることなく、組み合わせの絞り込み・抽出・決定の効率化が実現する。すなわち、モデル化された組み合わせ情報はユーザーにより加味された依存制約情報を伴うため、各ユーザー同士や各ユーザーに従属する個人(担当者等)同士で依存制約に関する調整・合意が不要であるばかりでなく、最適な組み合わせ情報の算出精度の向上が実現する。したがって、特に製造業のような上流工程(企画や設計等)から下流工程(生産や物流等)に渡って膨大な数の選択肢・組み合わせの制約・ユーザーが存在する製品開発にとって、組み合わせ決定支援システムにより全体的な生産性の向上が実現する
【0084】
<ユーザーからのアクセスに関する実行処理の流れ>
図10に示すように、記憶部2に記憶された上記組み合わせ情報に対し、情報端末装置を介して所定のユーザーからのアクセスを受け付けた場合、例えば上記組み合わせ情報の生成者に相当する単一のユーザー又は上記組み合わせ情報へのアクセスを事前に許可された規定のユーザーかを判定部14が判定する(Step2-1)。そして、判定部14が認めたユーザーには非公開用を含む全ての組み合わせ情報へのアクセスを許可し、認めなかったユーザーには公開用の組み合わせ情報のみへのアクセスを許可する。
【0085】
このような流れによれば、ユーザー毎の組み合わせ情報に対する他のユーザーのアクセス権限を、判定部14により論理的に設定できることから、ユーザー毎に依存制約情報の開示・非開示に応じて組み合わせ情報を生成できるため、ユーザー側で組み合わせ情報を生成した理由や経緯を履歴として管理しやすくなる。すなわち、開示できる依存制約情報を伴う組み合わせ情報と、開示できない依存制約情報を伴う組み合わせ情報とを分けて、かつこれらをそれぞれ紐づけて管理できるため、組み合わせ情報の追加・変更・削除を比較的容易に行えるようになる。
【0086】
次に、
図11~
図15を参照しつつ、本発明の一実施形態における別の組み合わせ決定支援システムについて、上述した内容と相違する部分を説明し、同等の部分の説明を省略する。
図1~
図9で示した部品又は部位と同等なものは、参照を容易にするため、
図1~
図9において一律100を加えた番号にしている。
【0087】
<組み合わせ決定支援システムの分散化>
図11に示すように、サーバ装置100Sは、通信ネットワークを介して、第1サーバ装置100Saと、第2サーバ装置100Sbとに分散されている。第1サーバ装置100Saは、ネットワークを介して情報処理端末100Cから操作されてもよいが、第1サーバ装置100Saが情報処理端末を兼ねてもよい。第1サーバ装置100Saがユーザ毎のローカルな物理サーバ、第2サーバ装置100Sbがクラウドサーバでもよい。
【0088】
第1サーバ装置100Saは、制御部101aと、第1記憶部102aと、付番しない通信部とを備えている。制御部101aは、取得部111と、設定部112とを備えている。第2サーバ装置100Sbは、制御部101bと、算出部113と、第2記憶部102bと、付番しない通信部とを備えている。
【0089】
第1記憶部102aは、非公開用の組み合わせ情報を含む単一又は規定のユーザーからのアクセスのみを受け付ける第1組み合わせ情報を記憶する。第2記憶部102bは、公開用として全てのユーザーからのアクセスを受け付ける第2組み合わせ情報を記憶する。このような構成により、物理的に非公開用の組み合わせ情報と公開用の組み合わせ情報との管理を分け、ユーザ毎に非公開用の組み合わせ情報を管理しやすくなる。
【0090】
取得部111は、OVMモデラ―を介して取得したユーザー毎の組み合わせ情報のうち、第1組み合わせ情報を第1記憶部102aに提供し、第2組み合わせ情報を第2記憶部102bに提供する処理を行う。
【0091】
設定部112は、第1記憶部102aに記憶された第1組み合わせ情報及び第2記憶部102bに記憶された第2組み合わせ情報に対して制約情報及び目的関数を設定する処理と、上記組み合わせ情報並びに設定された制約情報及び目的関数を符号化したプログラムを暗号化して算出部113に投入する処理と、算出部113に算出された所望の組み合わせ情報を復号化して提供する処理とを行う。上記暗号化及び上記復号化は、公知の暗号方式で行われてもよく、上記復号化では第1記憶部102に問い合わせしてもよい。このような構成により、別のユーザーに非公開用の組み合わせ情報を開示することなく、ユーザー毎に所望の組み合わせ情報を得られやすくなる。
【0092】
<機械学習による組み合わせ情報の分析>
図12に示すように、サーバ装置200Sは、取得部211と、設定部212と、算出部213と、判定部214と、認識部215と、分析部216と、を備えている。認識部215は、算出部213により算出され、設定部212から提供された所望の組み合わせ情報を画像として認識する。分析部216は、認識部215に認識された組み合わせ画像情報を教師データとして機械学習させた学習済み第1モデルを用いて、上記組み合わせ画像情報から特徴量を分析する。
【0093】
図13は、算出部213の算出結果がマトリックス状に出力された所望の組み合わせ情報の一部である。
図12及び
図13に示すように、認識部215は、上記所望の組み合わせ情報を、画像情報に変換した組み合わせ画像情報として認識してもよい。分析部216は、複数の上記組み合わせ画像情報を教師データとして機械学習させた学習済み第1モデルを用いてクラスタ分析し、マトリックス状に出力された所望の組み合わせ情報の特徴量を分析し、特徴量毎に上記組み合わせ画像情報を分類する。学習済み第1モデルは、分析部216の一機能であってもよいが、別の部位として機能してもよい。
【0094】
図13では、例えば選択肢としてケーブル(部品)が含まれた所望の組み合わせ情報であり、このように複数の解(所望の組み合わせ情報)を有するマトリックス状の組み合わせ画像情報の複数を教師データとして学習済み第1モデルでクラスタ分析したところ、図上で四角に囲まれた部分を特徴量として分析した。すなわち、この分析結果から、複数の組み合わせ画像情報を用いた機械学習により、ケーブル1・2・7の各々の関連性と、ケーブル5・6・9の各々の関連性が高いことが発覚した。クラスタ分析では、kmeans法といった公知の手法を採用している。
【0095】
制約情報は、分析部216で分析された特徴量を加味して、設定部212に設定される。すなわち、設定部212は、ケーブル1・2・7を1セット、ケーブル5・6・9を1セットとして制約情報を設定する。これにより、上記特徴量を加味する前と比較して、複数の選択肢のうち関連性の高い選択肢を束(グルーピング、クラスタ化)することで、算出部213で算出される所望の組み合わせ情報(解)の数が冗長になることを回避し、最適化が実現する。
【0096】
<組み合わせ決定支援システムにおける選択肢の拡充>
組み合わせ決定支援システムで処理される複数の選択肢は、例えば部品等、部品等の仕様、部品等共通識別情報、部品等非共通識別情報、フロー共通識別情報、フロー非共通識別情報、ルート情報、チョイス情報、インストラクション情報であり、これらは可変情報や変異情報と同等に扱われてもよい。
【0097】
<組み合わせ情報モデルの多様化>
組み合わせ決定支援システムは、複数の選択肢で構成される組み合わせをBOM(Bill Of Material)として記述するアプリケーションでモデル化してもよく、OVMモデラ―でBOMも記述してモデル化してもよい。BOMとして記述されるモデルは、「VP」と「V」で構成されてもよいが、例えばフローチャート用のアイコンで構成されてもよく、「VP」と「V」、又は上記アイコン同士の依存関係を伴う。
【0098】
すなわち、組み合わせ決定支援システムは、BOMとして記述するOVMモデラ―により、製品開発に必要な複数の選択肢をバリエーションポイントやバリアントや所定のアイコンで表し、かつ複数の選択肢同士の選択関係・必須関係・要求関係・排他関係・所属関係・所有関係・共有関係・派生関係を依存関係として表すことで、複数の選択肢で構成される組み合わせ情報モデルの多様化を期待できる。
【0099】
<依存関係の一例>
複数の選択肢としてOVMモデラーで記述されるバリエーションポイント(VP)・バリアント(V)・部品等共通識別情報(以下「MasterItem」ともいう。)、部品等非共通識別情報(以下「AffectedItem」ともいう。)、フロー共通識別情報(以下「MasterLink」ともいう。)、フロー非共通識別情報(以下「AffectedLink」ともいう。)、ルート情報(以下「CodeLine」ともいう。)、チョイス情報(以下「Choice」ともいう。)、インストラクション情報(以下「EngineeringChange」や「WorkItem」ともいう。)の依存関係の詳細例を表1に示す。
【0100】
【0101】
表1は、縦軸(From)が主体側、横軸(To)が主体と所定の関係を有する側を示し、表内に記載されている関係を有したり、「×」印のように所定の関係を有さなかったりするが、表内に記載されていない他の関係を有したり、「×」印ではなく所定の関係を有したりしてもよく、限定されない。
【0102】
「VP」に対して別の「VP」は要求関係又は排他関係を有し、「V」は要求関係、排他関係、必須関係、又は選択関係を有する。換言すると、「VP」は別の「VP」を要求又は排他し、「V」を要求、排他、必須、又は選択する。
【0103】
「V」に対して「VP」及び別の「V」は要求関係又は排他関係を有する。換言すると、「V」は「VP」及び別の「V」を要求又は排他する。
【0104】
「VP」に対して「MasterItem」や「MasterLink」や「Choice」は具体化の関係を有する。換言すると、「VP」が抽象的な記述であるのに対し、「MasterItem」や「MasterLink」や「Choice」は具体性を伴う記述である。
【0105】
「V」に対して「MasterItem」や「MasterLink」や「AffectedLink」や「CodeLine」や「Choice」や「EngineeringChange」は具現化の関係を有する。換言すると、「V」が抽象的な記述であるのに対し、「MasterItem」や「MasterLink」や「AffectedLink」や「CodeLine」や「Choice」や「EngineeringChange」は具体性を伴う記述である。
【0106】
「MasterItem」に対して別の「MasterItem」や「AffectedLink」や「Choice」は所属関係を有する。換言すると、「MasterItem」は別の「MasterItem」や「AffectedLink」や「Choice」を所属させる。
【0107】
「AffectedItem」に対して「MasterItem」や「MasterLink」は所有関係又は共有関係を有し、別の「AffectedItem」は派生関係にある。換言すると、「AffectedItem」は「MasterItem」や「MasterLink」を所有又は共有し、別の「AffectedItem」を派生する。
【0108】
「MasterLink」に対して別の「MasterLink」や「AffectedLink」や「CodeLine」は所属関係にある。換言すると、「MasterLink」は別の「MasterLink」や「AffectedLink」や「CodeLine」を所属させる。
【0109】
「AffectedLink」に対して「MasterItem」や「MasterLink」は所有関係又は共有関係にあり、別の「AffectedLink」は派生関係にある。換言すると、「AffectedLink」は「MasterItem」や「MasterLink」を所有し、別の「AffectedLink」を派生する。
【0110】
「CodeLine」に対して「AffectedItem」や「AffectedLink」は所属関係にある。換言すると、「CodeLine」は「AffectedItem」や「AffectedLink」を所属させる。
【0111】
「Choice」に対して「AffectedItem」や「AffectedLink」は共有関係にある。換言すると、「Choice」は「AffectedItem」や「AffectedLink」を共有する。
【0112】
「EngineeringChange」対して「AffectedItem」や「AffectedLink」や「CodeLine」や「Choice」は所有関係にあり、別の「EngineeringChange」は共有関係にある。換言すると、「EngineeringChange」は「AffectedItem」や「AffectedLink」や「CodeLine」や「Choice」を所有し、別の「EngineeringChange」を共有する。
【0113】
次に、
図14及び
図15を参照しつつ、上述した複数の選択肢及び選択肢同士の依存関係に基づいて作成される組み合わせ情報モデルとその解の一例を説明する。
【0114】
図14に示すように、「VP」が部品A、「VP」に対して選択関係を有する「V」が部品A-1及び部品A-2とする。これにより、部品Aの種類として部品A-1と部品A-2があることを記述できる。一方、「VP」と「V」のみでは部品A並びに部品A-1及び部品A-2に関する組み合わせ情報をモデル化しきれないことから、他の選択肢との併用によりBOMとしての組み合わせ情報モデルを記述しやすくなる。
【0115】
まず「VP」である部品Aを「MasterItem」として具体化し、「V」である部品A-1及び部品A-2を「AffectedItem」として具体化する。そして「MasterItem」である部品Aに「CodeLine」である第1工場を介して「AffectedItem」である部品A-1を所属させ、「CodeLine」である第2工場を介して「AffectedItem」である部品A-2を所属させる。これにより、例えば上位概念として定義される部品Aのうち、下位概念として定義される部品A-1を第1工場での製造等を経由して得られ、部品A-2を第2工場での製造等を経由して得られることを記述できる。
【0116】
次に「EngineeringChange」である製造指示が「Choice」である変更(例えば2022年1月1日より)を所有し、上記変更が「AffectedItem」である部品A-1と部品A-2とを共有する。これにより、製造指示が2022年1月1日より変更して部品A-1又は部品A-2を製造することを記述できる。
【0117】
また「AffectedItem」である部品A-1は別の「AffectedItem」である部品A-1aに派生する。これにより、例えば部品A-1と略同等だが仕様の一部のみ異なる部品A-1aを記述できる。
【0118】
また「AffectedItem」である部品A-1は「MasterLink」である部品A-1の組立工程を所有しており、上記部品A-1の組立工程は「AffectedLink」である部品A-1の組立手順1と組立手順2を所属させる。これより、部品A-1における組立工程に組立手順1と組立手順2が含まれることを記述できる。
【0119】
また「AffectedLink」である部品A-1の組立手順1と組立手順2は「MasterItem」である部品Bを共有し、上記部品Bは「AffectedItem」である部品B-1と部品B-2を所属させる。これにより、部品A-1の組立手順1と組立手順2には部品B-1及び/又は部品B-2が使われることを記述できる。
【0120】
また「EngineeringChange」である部品A-1の組立指示は2パターンあり、1パターン目は「EngineeringChange」が部品A-1の組立工程の設計変更(以下「設変」ともいう。)指示1と部品B-1の仕様の設変指示とを共有し、2パターン目は「EngineeringChange」が部品A-1の組立工程の設変指示2と部品B-2の仕様の設変指示とを共有する。これによれば、部品A-1の組立手順1と組立手順2とのいずれかは部品A-1の組立指示に従うことを記述できる。すなわち、部品A-1の組立工程が2つ以上のパターンを含み、かつ各パターンで部品Bに分類される部品B-1や部品B-2が用いられる場合、部品A-1の組立指示として部品A-1の組立工程の設計変更指示1と部品B-1の仕様の設変指示とをし、または部品A-1の組立工程の設計変更指示2と部品B-2の仕様の設変指示とをそれぞれ記述できる。
【0121】
図15に示すように、
図14の組み合わせ情報モデルを構成する各選択肢の組み合わせのパターンを、ASPソルバインタフェースを介して解として算出する。
図15には、「VP」が可変点かつ「V」がこの選択肢(変位点)、「MasterItem」と「Choice」と「CodeLine」が可変点かつ「AffectedItem」がこれらの選択肢(変位点)、「MasterLink」が可変点かつ「AffectedLink」がこの選択肢(変位点)、「EngineeringChange」が可変点かつこの内容が選択肢(変位点)であることと、それぞれの可変点及び選択肢の組み合わせを満たす場合に「〇」、満たさない場合に「×」、満たすが関連する他の組み合わせの一部を満たさない場合に「△」として算出された解1~5とがリスト化されている。解1~5の算出に制約情報及び目的関数は設定されていないが、これらが設定されたら解の数が減ることもある。
【0122】
なお、本実施形態は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆるシステム構成・方法・ソフトウェア・ハードウェア・機能、及びこれらの相互関係を含む。具体的には、ASP以外のプログラムにより組み合わせ問題を解くソルバ(solver)であっても、本実施形態と同等の構成であり、かつ同等の操作により同等の効果を得られることから、例えば公知のSAT(Satisfiability Problem、充足可能性問題)といった所定のプログラムで実行されるソルバや、量子コンピュータで実行されるソルバを採用してもよい。
【符号の説明】
【0123】
S、100S、200S サーバ装置
C、100C 情報処理端末
1、101、201 制御部
11,111、211 取得部
12、112、212 設定部
13、113、213 算出部
14、 214 判定部
215 認識部
216 分析部