IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武漢理工大学の特許一覧

<>
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図1
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図2
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図3
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図4
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図5
  • 特開-エルボの製造方法及びシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036009
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】エルボの製造方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/00 20060101AFI20230306BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20230306BHJP
   B21D 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B21D22/00
B21D5/01 R
B21D7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136695
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】202111000929.0
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】509136264
【氏名又は名称】武漢理工大学
【氏名又は名称原語表記】Wuhan University of Technology
【住所又は居所原語表記】122 Luoshi Road,Hongshan District Wuhan,Hubei 430070 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宋 燕利
(72)【発明者】
【氏名】王 中美
(72)【発明者】
【氏名】董 翔
(72)【発明者】
【氏名】路 ▲じゅえ▼
【テーマコード(参考)】
4E063
4E137
【Fターム(参考)】
4E063KA15
4E063MA18
4E137AA05
4E137AA06
4E137AA08
4E137BA01
4E137BA02
4E137BA05
4E137CA09
4E137CB01
4E137EA01
4E137EA22
4E137EA23
4E137GA11
4E137GB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金型プレスプロセスで製造し、製造フローが簡単であり、操作が単純であり、製造効率が高く、成形精度が高いエルボの製造方法を提供する。
【解決手段】目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するステップと、前記元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するステップと、前記元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップと、前記エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するステップと、を含む。本発明は、一体としてプレスされ溶接された薄肉エルボの高効率製造方法及びシステムを提供し、マルチプロセス成形での精度調整制御モデルを構築し、プロセスパラメータの最適化によって、薄肉エルボの高精度製造を実現し、残留応力及び変形を減少させ、製品の合格率を向上させ、製造コストを低減させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルボの製造方法であって、
目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するステップと、
前記元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するステップと、
前記元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップと、
前記エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するステップと、を含み、
前記元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップは、引き抜き過程及び巻き取る過程と、前記エルボプリフォームの精度を制御するステップを含み、
前記引き抜き過程は具体的に、前記元のビレットを加圧して型締めし、縦方向中央が屈曲した所定形状のエルボを形成し、
前記巻き取り過程は具体的に、前記所定形状のエルボの両側を中間に屈曲させ、1本のスリットを有するエルボプリフォームを形成し、
前記エルボプリフォームの精度を制御するステップは、
エルボで重要な測定点を選択し、前記重要な測定点でのプレス反発値を取得するステップと、
前記エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得するステップと、
前記プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算するステップと、
前記相関関係に基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップと、
前記精度調整制御モデルに基づいて、前記エルボの精度を制御するステップと、を含むことを特徴とするエルボの製造方法。
【請求項2】
前記エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得した後、前記プロセスパラメータに対して無次元化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のエルボの製造方法。
【請求項3】
前記プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算した後、前記プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエルボの製造方法。
【請求項4】
前記プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算した後、前記相関関係の平均値に基づいて、特定の相関度を有するプロセスパラメータをスクリーニングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のエルボの製造方法。
【請求項5】
スクリーニングされた、前記特定の相関度を有するプロセスパラメータに基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップは、具体的には、二次多項式の形式で精度調整制御モデルを構築し、その式は以下の通り、
【請求項6】
前記精度調整制御モデルに基づいて、前記エルボ精度を制御する前に、P値によって前記精度調整制御モデルの有意性を分析し、決定係数Rによって前記精度調整制御モデルのフィッティング度を計算するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のエルボの製造方法。
【請求項7】
前記精度調整制御モデルに基づいて、最適プロセスパラメータを計算するステップは、具体的には、
前記精度調整制御モデルのフィッティング度によって、最小反発値を解くための目的関数を確立するステップと、
所定アルゴリズムによって前記目的関数を解いて、最適プロセスパラメータを計算するステップと、を含むことを特徴とする請求項6に記載のエルボの製造方法。
【請求項8】
エルボの製造システムであって、
目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するための分析モジュールと、
前記元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するための製造モジュールと、
前記元のビレットをエルボプリフォームにプレスするためのプレスモジュールと、
前記エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するための溶接モジュールと、を含み、
前記元のビレットをエルボプリフォームにプレスすることは、引き抜き過程及び巻き取りことと、前記エルボプリフォームの精度を制御することと、を含み、
前記引き抜き過程は具体的に、前記元のビレットを加圧して型締めし、縦方向中央が屈曲した所定形状のエルボを形成し、
前記巻き取り過程は具体的に、前記所定形状のエルボの両側を中間に屈曲させ、1本のスリットを有するエルボプリフォームを形成し、
前記エルボプリフォームの精度を制御することは、具体的には以下を含み、
エルボで重要な測定点を選択し、前記重要な測定点でのプレス反発値を取得し、
前記エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得し、
前記プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算し、
前記相関関係に基づいて、精度調整制御モデルを構築し、
前記精度調整制御モデルに基づいて、前記エルボの精度を制御する、ことを特徴とするエルボの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルボの製造の技術分野に関し、特に、エルボの製造方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体及び気体を輸送するために必要な部品として、吸排気管、オイルパイプなどの薄肉エルボが自動車、高速鉄道、機械設備などの分野で使用量が急増している。薄肉エルボの使用環境は非常に過酷な場合が多く、耐食性、耐高温などの性能を有する必要があるため、継目無鋼管では上記の使用要求を満たしにくい場合が多くある。
【0003】
従って、多くのエルボは、板状ビレットに対して巻き取りプロセスを行って、直円柱状を形成してから、折曲、押曲げなどで成形され、そして、溶接によって閉鎖管継手を形成する。管路面の複雑で不規則な対称性により、このような製造プロセスを採用する場合、薄肉エルボの製造精度に対する要求が高い。
【0004】
プレス過程で、エルボは深絞り、屈曲及び複合変形が生じ、板材の流動状況は複雑であり、積み重ね、しわ及び割れなどの欠陥が生じやすい。その外形特徴、寸法などの要求に従って、適切な材料を選択して正確なビレット輪郭を設計し、局所位置に対して、ダイ表面の最適化を行うことで、欠陥の発生を減少させることを保証し、最的終な成形品質を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような観点から、従来技術において、プレス過程で、エルボは積み重ね、しわ及び割れが生じるという問題を解決するために、エルボの製造方法、装置、機器及び記憶媒体を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を採用し、即ち、
第1の態様では、本発明はエルボの製造方法を提供し、
目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するステップと、
元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するステップと、
元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップと、
エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するステップと、を含む。
【0007】
好ましくは、元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップは、引き抜き過程及び巻き取り過程を含み、引き抜き過程は具体的には以下の通り、元のビレットを加圧して型締めし、縦方向中央が屈曲した所定形状のエルボを形成し、巻き取り過程は具体的には以下の通り、所定形状のエルボの両側を中間に屈曲させ、1本のスリットを有するエルボプリフォームを形成する。
【0008】
好ましくは、元のビレットをエルボプリフォームにプレスする時、エルボプリフォームの精度を制御するステップを含み、具体的には、
エルボで重要な測定点を選択し、重要な測定点でのプレス反発値を取得するステップと、
エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得するステップと、
プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算するステップと、
相関関係に基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップと、
精度調整制御モデルに基づいて、エルボの精度を制御するステップと、を含む。
【0009】
好ましくは、エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得した後、プロセスパラメータに対して無次元化処理を行う。
【0010】
好ましくは、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算した後、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算するステップをさらに含む。
【0011】
好ましくは、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算した後、相関関係の平均値に基づいて、特定の相関度を有するプロセスパラメータをスクリーニングするステップをさらに含む。
【0012】
好ましくは、スクリーニングされた、特定の相関度を有するプロセスパラメータに基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップは、具体的には、二次多項式の形式で精度調整制御モデルを構築し、その式は以下の通りである。
【0013】
好ましくは、精度調整制御モデルに基づいて、エルボの精度を制御する前に、P値によって精度調整制御モデルの有意性を分析し、決定係数Rによって精度調整制御モデルのフィッティング度を計算するステップを含む。
【0014】
好ましくは、精度調整制御モデルに基づいて、最適プロセスパラメータを計算するステップは、具体的には、
精度調整制御モデルのフィッティング度によって、最小反発値を解くための目的関数を確立するステップと、
所定アルゴリズムによって目的関数を解いて、最適プロセスパラメータを計算するステップと、を含む。
【0015】
第2の態様では、本発明はエルボの製造装置をさらに提供し、
目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するための分析モジュールと、
元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するための製造モジュールと、
元のビレットをエルボプリフォームにプレスするためのプレスモジュールと、
エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するための溶接モジュールと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
上記実施例の有益な効果は以下の通りである。即ち、本発明のエルボの寸法が大きく、厚さが薄くて、正確なビレット輪郭を製造し、プレス過程でエッジによって応力分布を最適化することで、成形品質が向上する。金型プレスプロセスで製造し、製造フローが簡単であり、操作が単純であり、製造効率が高く、成形精度が高い。そして、プレス過程でマルチプロセス成形条件での誤差の積み重ねを考慮し、反発量を評価指標とする精度調整制御モデルを構築し、成形プロセスパラメータに対する最適化を実現し、製品の最大の反発値を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が提供するエルボの製造方法の一実施例のフロー模式図である。
図2】本発明が提供する引き抜き過程の一実施例の金型構成の模式図である。
図3】本発明が提供する引き抜き過程の一実施例のエッジ構成の模式図である。
図4】本発明が提供する巻き取り過程の一実施例の金型構成の模式図である。
図5】本発明が提供するエルボの精度制御の一実施例のフロー模式図である。
図6】本発明が提供するエルボの製造システムの一実施例の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を具体的に記載する。図面は本出願の一部を構成するとともに、本発明の実施例と共に本発明の原理を説明するために使用されるが、本発明の範囲を限定するために使用されるものではない。
【0019】
本出願の記載において、別段の明示的かつ具体的な限定がない限り、「複数」の意味は2つ又は2つ以上である。
【0020】
本明細書で言及される「実施例」は、実施例を結合して記載される特定の特徴、構成又は特性が本発明の少なくとも一実施例に含まれ得ることを意味する。明細書の様々な個所で出現する用語は、必ずしも同一の実施例を指すものではなく、他の実施例と互いに矛盾する、独立の又は代替的な実施例でもない。当業者が明示的又は暗黙的に理解できるように、本明細書に記載の実施例は他の実施例と結合できる。
【0021】
本発明はエルボの製造方法及びシステムを提供し、以下それぞれ説明する。
【0022】
図1を参照すると、図1は本発明が提供するエルボの製造方法の一実施例のフロー模式図であり、本発明の1つの具体的な実施例はエルボの製造方法を開示するものであり、
S1、目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するステップと、
S2、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するステップと、
S3、元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップと、
S4、エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するステップと、を含む。
【0023】
好適な実施例として、当該目的エルボについて自動車の排気管を例として説明すると、ステップS1では、まず、実際のニーズに応じて自動車の排気管を分析し、ステンレス鋼製品を選択するために必要な元のスラブを決定し、実際のニーズに応じて外形輪郭寸法を制御し、製造しようとする自動車の排気管の寸法及び使用環境に基づいて、エルボの製造について事前準備を行う。
【0024】
本発明の一実施例では、ステップS2において、元のスラブを製造する場合、排気管の使用環境は一般的に高温、酸性などの環境にあるため、排気管の製造材料に対して耐高温、耐酸性のものを選択しなければならない。ここで、選択される材料はステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金板であってもよく、これに対して本発明の実施例はさらに限定していない。元のスラブを製造する場合、向かい合わせて配列する材料配置方式で、必要な形状を加工するためのプレス品に対して材料配置を行うことで、材料の使用率を向上させ、製造コストを低減させ、ワークの品質を保証する。
【0025】
本発明の一実施例では、ステップS3において、プレス機はビレットを、1本の均一なスリットを有する自動車の排気管にプレスする。ここで、圧力装置は空気圧プレス機、螺旋プレス機、クランクプレス機であってもよく、本発明の実施例はプレス機の具体的なタイプをさらに限定していない。使用要求を満たして、ビレットを、1本の均一なスリットを有する自動車の排気管にプレスすればよい。薄肉部品の成形は一般的にマルチプロセス製造フローであり、部品を金型から取り外すたびに、内部の残留応力が放出され、反発が生じ、これが成形精度に影響する主な要因となる。実際の使用ニーズを達成するために、エルボプリフォームの精度を制御する必要がある。
【0026】
ステップS4では、プレス過程でいくつかのスリットが生じ、残されたスリットを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖された自動車の排気管を形成する。自動車の排気管にスリットが存在すると、自動車の排気管の使用寿命を短縮させ、最悪の場合、安全上の問題が発生するので、溶接プロセスによって自動車の排気管の製造で生じたスリットを除去する。溶接方法に対してタングステンイナートガス溶接(Tig溶接)を使用し、以下の式に従って、熱入力量を計算する。
式において、Iは溶接電流であり、単位はAであり、Uはアーク電圧であり、単位はVであり、ηは熱効率係数であり、Vは溶接速度であり、単位はmm/sであり、Eは溶接熱入力量であり、単位はJ/cmである。溶接熱影響領域の、溶接後の板材性能に対する影響を減少させるために、十分な溶接を保証することを前提として、その平炉の幅と深さの比をできるだけ小さくする。
【0027】
従来技術と比較すると、本発明のエルボは、寸法が大きく、厚さが薄くて、正確なビレット輪郭を製造して、エッジによって応力分布を最適化することで、成形品質が向上する。金型プレスプロセスで製造することで、製造フローが簡単であり、操作が単純であり、製造効率が高くて、成形精度が高い。マルチプロセス成形条件での誤差の積み重ねを考慮し、反発量を評価指標とする精度調整制御モデルを構築し、成形プロセスパラメータに対する最適化を実現し、製品の最大の反発値を減少させる。
【0028】
図2図3及び図4を参照すると、図2は本発明が提供する引き抜き過程の一実施例の金型構成の模式図であり、図3は本発明が提供する引き抜き過程の一実施例のエッジ構成の模式図であり、図4は本発明が提供する巻き取り過程の一実施例の金型構成の模式図である。本発明のいくつかの実施例では、元のビレットをエルボプリフォームにプレスするステップは、引き抜き過程及び巻き取り過程を含み、引き抜き過程は具体的には以下の通り、元のビレットを加圧して型締めし、縦方向中央が屈曲した所定形状のエルボを形成し、巻き取り過程は具体的には以下の通り、所定形状のエルボの両側を中間に屈曲させ、1本のスリットを有するエルボプリフォームを形成する。
【0029】
上記実施例では、引き抜き過程及び巻き取り過程によって、元のビレットはエルボプリフォームとして形成されるが、引き抜き過程において、まず、元のビレットを位置決めした後、プレス機のスライダーを下へ移動させるように操作し、上型ベース4を同時に下へ移動させるように押し、押え板インサート8を動かして、ビレットを下部挟持板7内の成形雌型のキャビティに圧入させ、型締めして、縦方向中央が屈曲した所定形状のエルボを形成する。本発明の実施例では、所定形状はU字状であり、引き抜き過程によってU字状部材を形成し、当該過程で、ビレットの流れが均一であることを保証し、しわ及び割れを防止し、引き抜き過程によってU字状部材を形成する過程で、端部に応力が集中する現象が存在し、プレス角を5~15°だけ適切に調整して、改善し、成形品質を向上させる。巻き取り過程においてU字状部材を雌型16のキャビティ内に配置し、円筒柱体はシュート11に沿って左右両端から張り出し、U字状部材の上面を押圧し、位置決めを行って、上型パンチ12は下へ移動し、U字状部材の両側を円筒柱体に押圧させ、1本の均一なスリットを有する排気管を形成し、プリフォームの製造を完了させる。
【0030】
エルボの製造過程では、プレス成形において不可避な現象である反発が成形精度に影響する主な要因であり、薄肉部品の成形は一般的にマルチプロセス製造フローであり、部品を金型から取り外すたびに、内部の残留応力が放出され、反発が生じる。即ち、各工程は最終的な部品の反発値に対して、それぞれの寄与は異なる。本発明のエルボの製造方法によれば、プレス過程において、エルボの精度に対する制御をさらに追加し、プレス反発値を減少させ、エルボの製造精度を向上させる。
【0031】
図5を参照すると、図5は本発明が提供するエルボの精度制御の一実施例のフロー模式図であり、本発明のいくつかの実施例では、元のビレットをエルボプリフォームにプレスする時、エルボプリフォームの精度を制御するステップを含み、具体的には、
S501、エルボで重要な測定点を選択し、重要な測定点でのプレス反発値を取得するステップと、
S502、エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得するステップと、
S503、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算するステップと、
S504、相関関係に基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップと、
S505、精度調整制御モデルに基づいて、エルボの精度を制御するステップと、を含む。
【0032】
ステップS501では、ビレットを広げることで、排気管ビレットの輪郭寸法を取得し、その上から15個の重要な測定点を選択し、成形後の当該15個の重要な測定点のプレス反発値を取得する。評価指標として、重要な測定点の二乗平均平方根反発値を計算し、重要な測定点に対して、ビレットの、反発が大きい箇所を選択する。これらの重要な測定点の反発値は参照する意味がより大きい。
【0033】
ステップS502では、プレス過程において不可避な反発現象である反発が成形精度に影響する主な要因であり、エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得することで、プロセスパラメータとプレス反発値との相関関係を構築でき、異なるプロセスパラメータの、プレス反発値に対する影響を分析する。
【0034】
ステップS503では、引き抜き過程のプロセスパラメータには、エッジ力F、摩擦係数μ、金型隙間d及びプレス速度vがあり、巻き取り過程のプロセスパラメータには円筒圧力F、摩擦係数μ、金型隙間d及びプレス速度vがあり、合理的なプロセスパラメータは、最終的な成形効果に大きく影響を与える。プロセスパラメータの数量が多いため、成形精度を向上するために、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算することで、プレス反発値に大きく影響するプロセスパラメータを知って、当該相関関係は灰色相関係数シーケンスの計算であり、灰色相関分析法によって、評価指標との相関度が大きいプロセスパラメータをスクリーニングする。反発値とプロセスパラメータとの間の灰色相関係数シーケンスの計算は、具体的には以下の式である。
【0035】
ステップS504では、計算された反発値とプロセスパラメータとの間の灰色相関係数シーケンスに基づいて、評価指標との相関度が大きいプロセスパラメータをスクリーニングし、これらのパラメータに基づいて、応答曲面法で評価指標と各工程の重要プロセスパラメータとの間のマルチプロセス精度調整制御モデルを構築する。当該方法は多変量の非線形問題の解决に対して、高い信頼性を有する。
【0036】
ステップS505では、構築された精度調整制御モデルによって、プロセスパラメータの最適値をさらに計算してから、自動車の排気管のプロセスパラメータを最適値に設定し、成形プロセスパラメータに対する最適化を実現し、製品の最大の反発値を減少させることで、エルボの精度制御を実現する。
【0037】
本発明のいくつかの実施例では、エルボプリフォームのプロセスパラメータを取得した後、プロセスパラメータに対して無次元化処理を行う。
【0038】
上記実施例では、無次元化処理は具体的には以下の通りである。
【0039】
本発明のいくつかの実施例では、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係を計算した後、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算するステップをさらに含む。
【0040】
上記実施例では、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値、即ち、プレス反発値とプロセスパラメータとの灰色相関度の平均値を計算し、以下のように記す。
ラメータとの灰色相関度の平均値である。収集された重要な測定点のプロセスパラメータは複数組のデータを有し、各組のデータは、エルボに対して僅かに偏った影響を与える。エルボの反発値と重要な測定点のプロセスパラメータとの間の灰色相関係数シーケンスを計算した後、各プロセスパラメータの灰色相関度の平均値をさらに計算し、当該値によって、エルボの反発値に対して主な作用を発揮するプロセスパラメータをスクリーニングする。
【0041】
本発明のいくつかの実施例では、プレス反発値とプロセスパラメータとの間の相関関係の平均値を計算した後、相関関係の平均値に基づいて、特定の相関度を有するプロセスパラメータをスクリーニングするステップをさらに含む。
【0042】
上記実施例では、複数組のプロセスパラメータの灰色相関度の平均値は、当該プロセスパラメータの、プレス反発値に対する影響を反映し、その計算結果が大きいほど、相関性が強く、即ち、プレス反発値に対する影響が大きく、灰色相関度の平均値が小さいプロセスパラメータに対して、これらのプレス反発値に対する影響を配慮する必要がないため、破棄される。本発明の実施例は、灰色相関度の平均値が0.7より大きいプロセスパラメータをスクリーニングする。
【0043】
本発明のいくつかの実施例では、スクリーニングされた、特定の相関度を有するプロセスパラメータに基づいて、精度調整制御モデルを構築するステップは、具体的には、二次多項式の形式で精度調整制御モデルを構築し、その式は以下の通りである。
【0044】
上記実施例では、応答曲面法で評価指標と各工程の重要プロセスパラメータとの間のマルチプロセス精度調整制御モデルを構築する。当該方法は、多変量の非線形問題の解决に対して高い信頼性を有する。モデルの構築は、実関数を説明できることを前提として、できるだけ簡単である上に、数値分析の仕事量を減少させるために、未定係数をできるだけ少なく設計し、エンジニアリング経験に基づいて、二次多項式の形式を選択する。
【0045】
本発明のいくつかの実施例では、精度調整制御モデルに基づいて、エルボの精度を制御する前に、P値によって精度調整制御モデルの有意性を分析し、決定係数Rによって精度調整制御モデルのフィッティング度を計算するステップを含む。
【0046】
上記実施例では、構築された精度調整制御モデルに対して分散分析を行って、P値によって精度調整制御モデルの有意性を分析し、決定係数Rによってフィッティングの良否のレベルを分析し、モデルは、要因変数と目的関数との間の関係をよく反映できることを保証し、高い予測精度を備え、分散分析によって、フィッティング度が高い精度調整制御モデルを取得でき、具体的な計算過程は従来技術であるため、ここでは繰り返さない。
【0047】
本発明のいくつかの実施例では、精度調整制御モデルに基づいて、最適プロセスパラメータを計算するステップは、具体的には、
精度調整制御モデルのフィッティング度によって、最小反発値を解くための目的関数を確立するステップと、
所定アルゴリズムによって目的関数を解いて、最適プロセスパラメータを計算するステップと、を含む。
【0048】
上記実施例では、フィッティング度が高い精度調整制御モデルを選択し、溶接工程の要求を満たすために、成形後、その値をできるだけ小さくすべきであり、精度誤差による溶接欠陥の発生確率を低減させ、従って、目的関数を構築し、最小の反発値を解いてから、所定アルゴリズムで当該目的関数を解いて、本発明の実施例では、所定アルゴリズムは遺伝的アルゴリズムであり、遺伝的アルゴリズムを使用して選択―交差―変異という操作を行って、最適解、即ち、各工程の最適なプロセスパラメータを取得し、エルボ成形精度に対する調整制御を実現する。
【0049】
【0050】
本発明は自動車の排気管の精度を調整して制御する1つの具体的な実施例を提供する。引き抜き過程のプロセスパラメータにはエッジ力F、摩擦係数μ、金型隙間d及びプレス速度vがあり、巻き取り過程のプロセスパラメータには円筒圧力F、摩擦係数μ、金型隙間d及びプレス速度vがあり、合理的なプロセスパラメータは最終的な成形効果に大きく影響する。
【0051】
プロセスパラメータを最適化して、反発量を減少させ、成形精度を向上させる。パラメータが多すぎるため、まず、灰色相関分析法で、スクリーニングされた、評価指標との相関度が大きい主な要因に対して、複数組の試験を行って、上記計算過程で結果を処理した。その結果を表1に示す。
【0052】
表1 各プロセスパラメータの灰色相関度値
引き抜き工程のエッジ力F、摩擦係数μ、金型隙間d、及び巻き取り工程の摩擦係数μ、金型隙間dは、二乗平均平方根反発値との灰色相関度が大きく、何れも0.7より大きいため、主な影響要因として、当該5つのプロセスパラメータを選択する。
【0053】
応答曲面法で排気管のマルチプロセス精度調整制御モデルを構築し、得られたエッジ力F、摩擦係数μ、金型隙間d、摩擦係数μ和及び金型隙間dを要因変数とし、測定点での二乗平均平方根反発値を目的応答とする。表2に示すように、各試験の要因変数の値のレベル表を計画する。
【0054】
表2 各試験の要因変数の値のレベル表
【0055】
Box―Behnken実験計画法を採用し、要因とレベル数とが同じ場合、当該方法において軸方向点は存在せず、必要な実験回数が少なく、合計、44組の異なる実験の組み合わせを計画する。
【0056】
表3 Box―Behnken実験計画及び結果
【0057】
実験結果に基づいて、二乗平均平方根反発値e及びプロセスパラメータに対して二項回帰フィッティングを行って、以下に示す精度伝達モデルを取得した。
e=3.08508―0.040727F―13.40198μ―1.54619d―2.44979μ+0.47894+
0.05675Fμ+0.02085F―0.083625Fμ―0.0054F―7.6375μ
19.5μμ+4.8375μ―1.3dμ+0.510d+4.9μ+0.000246F
46.34896μ +0.59813d ―0.58854μ ―0.39354d
【0058】
フィッティングされた二項モデルに対して分散分析を行って、モデルの信頼性をテストした。これから分かるように、モデルのP<0.0001であり、モデルは高い有意性を備え、不適合項のP値は0.2383であり、0.05より大きく、即ち、不適合項は有意ではなく、要因変数と目的関数との間の関係をよく反映できる。同時に、誤差分析を行ったところ、決定係数R=0.9651、修正係数R adj=0.9348が得られ、フィッティング効果が良好で、予測精度が高かった。
【0059】
従って、モデルの構築に基づいて、精度を調整して制御し、確立された目的関数は以下の通りである。
その制約条件は以下の通りである。
40KN≦F≦60KN
0.11≦μ≦0.15
1.1mm≦d≦1.3mm
0.11≦μ≦0.15
1.1mm≦d≦1.3mm
【0060】
遺伝的アルゴリズムで目的関数を解いて、各パラメータを符号化してから、選択、交差、変異操作を行って、最終的に、最適なプロセスパラメータを取得する。遺伝的アルゴリズムの個体群の規模を100、交差確率を0.6、変異確率を0.01に設定し、300回の反復を行って、F=53KN、μ=0.12、d=1.1mm、μ=0.13、d=1.1mmである場合、排気管成形後の二乗平均平方根の反発値が最も小さく、成形精度が最も高い。
【0061】
本発明の実施例におけるエルボの製造方法をよりよく実施するために、エルボの製造方法に基づいて、対応するように、図6を参照すると、図6は本発明が提供するエルボの製造システムの一実施例の構成模式図である。
本発明の実施例はエルボの製造システム600を提供し、
目的エルボに対して特徴分析を行って、元のスラブの材料及び外形輪郭寸法を決定するための分析モジュール601と、
元のスラブの材料及び外形輪郭寸法に基づいて、元のビレットを製造して分離するための製造モジュール602と、
元のビレットをエルボプリフォームにプレスするためのプレスモジュール603と、
エルボプリフォームを溶接して、環状方向に連続的に閉鎖されたエルボを形成するための溶接モジュール604と、を含む。
【0062】
プレスモジュール603はプレス機、引き抜き金型及び巻き取り金型を含む。
【0063】
本発明が提供するエルボの製造方法及びシステムによれば、エルボの製造過程において、プレス過程でエッジによって応力分布を最適化することで、成形品質が向上し、金型プレスプロセスで製造し、プレス機を使用して、ビレットを、1本の均一なスリットを有する自動車の排気管にプレスし、プレス過程で、エルボは積み重ね、しわ及び割れが生じるという問題を解決し、プレス過程において精度制御を追加し、精度調整制御モデルを構築することで、エルボの製造の精度を向上させる。
【0064】
ここで、上記実施例が提供するシステム600は上記各方法実施例に記載の技術的解決策を実現でき、上記各モジュール又はユニットの具体的な実現原理について、上記方法実施例の対応する内容を参照すればよいので、ここでは繰り返さない。
【0065】
以上は、本発明の好適な具体的な実施形態のみであるが、本発明の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本発明が開示した技術範囲内で、容易に想到し得る変更又は置き換えは、何れも本発明の保護範囲内に該当すべきである。
【符号の説明】
【0066】
1 上部パレット、
2 液圧装置、
3 上部台座、
4 上型ベース、
5 押え板、
6 下型ベース、
7 下部挟持板、
8 押え板インサート、
9 上部台座(中)、
10 油路、
11 円筒シュート、
12 上型パンチ、
13 ストッパ、
14 位置決めブロック、
15 シム板、
16 成形雌型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】