(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036013
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20230306BHJP
A23L 33/13 20160101ALI20230306BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230306BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230306BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230306BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230306BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230306BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20230306BHJP
A61K 31/7084 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230306BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
A23L33/135 ZNA
A23L33/13
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/38 C
A61P17/00
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61K8/99
A61K8/60
A61K35/744
A61K31/7084
A61K31/706
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136795
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021141841
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】片倉 喜範
(72)【発明者】
【氏名】西川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】井戸垣 秀聡
(72)【発明者】
【氏名】時本 悠司
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4B117
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
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4B018LE02
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4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態を改善する目的で用いられる剤の有効成分として有用な新規の素材を提供することを目的とする。
【解決手段】 フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物は、ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤の有効成分として有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、ミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
【請求項2】
前記乳酸菌が、Fructobacillus durionis RD011727株(国際寄託番号NITEBP-02764)、Fructobacillus tropaeoil RD012353株(国際寄託番号NITEBP-02765)、Fructobacillus tropaeoil RD012354株(国際寄託番号NITEBP-02766)、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株からなる群より選ばれる、請求項1に記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
【請求項3】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部当たりの前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの含有比率が0.02重量部以上である、請求項1に記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
【請求項4】
請求項1に記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項5】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、PGC1α遺伝子発現促進剤。
【請求項6】
前記乳酸菌が、Fructobacillus durionis RD011727株(国際寄託番号NITEBP-02764)、Fructobacillus tropaeoil RD012353株(国際寄託番号NITEBP-02765)、Fructobacillus tropaeoil RD012354株(国際寄託番号NITEBP-02766)、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株からなる群より選ばれる、請求項5に記載のPGC1α遺伝子発現促進剤。
【請求項7】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部当たりの前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの含有比率が0.02重量部以上である、請求項5に記載のPGC1α遺伝子発現促進剤。
【請求項8】
請求項5に記載のPGC1α遺伝子発現促進剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の高齢化社会において、日常的又は継続的な医療又は介護に依存することなく自立した生活ができる期間、つまり健康寿命をいかに長くするかという点に関心が集まっている。このため、健康寿命の延長を目指した老化制御研究が活発に進められている。
【0003】
老化を誘発する要因として知られているものの例として、ミトコンドリアの機能低下(つまり、細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアの数及び活動量が加齢と共に低下すること)等が挙げられる。従って、抗老化を防ぐための有効成分として、ミトコンドリアの機能を改善する成分等の創出が望まれる。
【0004】
例えば、特許文献1には、所定の構造を有するトコフェリルリン酸エステル誘導体及び/又はその塩が、ミトコンドリア機能障害抑制剤の有効成分となることが開示されており、特許文献2には、有効量のウロリチン又はその前駆体と細胞を接触させることでミトコンドリアの機能を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-055923号公報
【特許文献2】国際公開第2012/088519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態を改善する目的で用いられる剤の有効成分として有用な新規の素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、所定の乳酸菌に、ミトコンドリア機能を改善する作用、ミトコンドリア生合成を促進する作用、及びミトコンドリア生合成遺伝子発現の制御に関与している転写共役因子であるPGC1α遺伝子発現を促進する作用があり、これにより、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態の改善に有効な成分となり得ることを新たに見出した。なお、この所定の乳酸菌は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を産生するものであるものの、確認された上記作用による効果が、NMNのみの寄与に基づくものではなく、意外にも、NMNを単体で用いた場合に比べてはるかに高いことが判明した。つまり、当該所定の乳酸菌に由来するNMN以外の成分の存在が、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果、及びPGC1α遺伝子発現促進効果に極めて大きく寄与していることが見出された。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、ミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
項2. 前記乳酸菌が、Fructobacillus durionis RD011727株(国際寄託番号NITEBP-02764)、Fructobacillus tropaeoil RD012353株(国際寄託番号NITEBP-02765)、Fructobacillus tropaeoil RD012354株(国際寄託番号NITEBP-02766)、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株からなる群より選ばれる、項1に記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
項3. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部当たりの前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの含有比率が0.02重量部以上である、項1又は2に記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤。
項4. 項1~3のいずれかに記載のミトコンドリア機能改善剤又はミトコンドリア生合成促進剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
項5. フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、PGC1α遺伝子発現促進剤。
項6. 前記乳酸菌が、Fructobacillus durionis RD011727株(国際寄託番号NITEBP-02764)、Fructobacillus tropaeoil RD012353株(国際寄託番号NITEBP-02765)、Fructobacillus tropaeoil RD012354株(国際寄託番号NITEBP-02766)、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株からなる群より選ばれる、項5に記載のPGC1α遺伝子発現促進剤。
項7. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部当たりの前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの含有比率が0.02重量部以上である、項5又は6に記載のPGC1α遺伝子発現促進剤。
項8.項5~7のいずれかに記載のPGC1α遺伝子発現促進剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態を改善する目的で用いられる剤の有効成分として有用な新規の素材が提供される。具体的には、本発明によれば、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、及び/又は前記乳酸菌の培養上清が、ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1αの発現量促進剤の有効成分として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】筋肉細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図2】筋肉細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図3】筋肉細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図4】筋肉細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図5】皮膚細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図6】皮膚細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図7】皮膚細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【
図8】皮膚細胞におけるミトコンドリア生合成に関わる転写共役因子(PGC1α)の発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、及び/又は前記乳酸菌の培養上清を含有することを特徴とする。以下、ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤について詳述する。
【0012】
有効成分
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤の有効成分は、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物である。
【0013】
有効成分が乳酸菌の形態である場合、当該有効成分は、菌体成分及び当該乳酸菌に内在する産生物が含まれる。乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体が破砕されていてもよい。また、破砕菌の場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。さらに、乳酸菌は、凍結乾燥、棚乾燥、スプレードライ等の手段により乾燥された菌体粉末の形態であってもよい。
【0014】
有効成分が乳酸菌の培養物である場合、当該有効成分は、乳酸菌とともに、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。なお、当該有効成分に乳酸菌の産生物を含んでいれば、培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。また、培養物に含まれる乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体が破砕されていてもよい。さらに、破砕菌の場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。
【0015】
有効成分が乳酸菌の培養上清である場合、培養上清は、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。なお、当該乳酸菌の産生物を含んでいれば、培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。
【0016】
有効成分が乳酸菌の抽出物である場合、当該抽出物は、上記乳酸菌又は乳酸菌の培養物を抽出処理に供して得られる多成分系の組成物である。当該抽出物の調製に用いられる抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、好ましくは水が挙げられる。つまり、好ましい形態において、乳酸菌の抽出物は、乳酸菌の水エキスである。また、抽出時の温度条件としては、室温(例えば、5~35℃、好ましくは20~30℃)であることが好ましい。抽出物の具体的な調製方法としては、例えば、記乳酸菌又は乳酸菌の培養物若しくはそれらの粉砕物を抽出溶媒中に含む懸濁液を調製し、当該懸濁液を固液分離することで抽出液(エキス液)を得る方法、又は必要に応じて当該抽出液を乾燥させることで粉末(エキス末)を得る方法が挙げられる。
【0017】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を産生する微生物である。また、フルクトバシラス属に属する乳酸菌は、NMNに加えて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を産生する微生物であってもよい。
【0018】
本発明で用いられる有効成分であるフルクトバシラス属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清は、当該乳酸菌が産生したNMN(又はNMN及びNAD)だけでなく、当該乳酸菌が産生した(NMN、NAD以外の)他の代謝物、及び/又は菌体成分等も含む。本発明による優れたミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果及びPGC1α遺伝子発現促進効果は、これらの成分が相まって奏されるものと考えられる。
【0019】
また、本発明で用いられる有効成分がNMN及びNADを含む場合、その比率としては特に限定されず、NAD1重量部当たりのNMNの比率として、例えば0.02重量部以上、0.035重量部以上、0.04重量部以上、又は0.05重量部以上が挙げられる。本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤又はPGC1α遺伝子発現促進剤が外用組成物(好ましくは皮膚外用組成物)である場合及び皮膚ミトコンドリア機能の改善を目的とする用途で用いられる場合、当該比率として、例えば0.02重量部以上、が挙げられ、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、好ましくは0.035重量部以上、より好ましくは0.04重量部以上、さらに好ましくは0.05重量部以上が挙げられる。NAD1重量部当たりのNMNの比率の上限としては特に限定されないが、例えば5重量部以下が挙げられ、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2.3重量部以下、さらに好ましくは1.7重量部以下、一層好ましくは1重量部以下、より一層好ましくは0.5重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以下、最も好ましくは0.07重量部以下が挙げられる。
【0020】
あるいは、NAD1モル当たりのNMNの比率として、例えば0.04モル以上、0.07モル以上、0.08モル以上、0.09モル以上、又は0.1モル以上が挙げられる。本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤又はPGC1α遺伝子発現促進剤が外用組成物(好ましくは皮膚外用組成物)である場合及び皮膚ミトコンドリア機能の改善を目的とする用途で用いられる場合、NAD1モル当たりのNMNの比率として、例えば0.04モル以上が挙げられ、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、好ましくは0.07モル以上、より好ましくは0.08モル以上、さらに好ましくは0.09モル以上、一層好ましくは0.1モル以上が挙げられる。NAD1モル当たりのNMNの比率の上限としては特に限定されないが、例えば10モル以下が挙げられ、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、好ましくは6モル以下、より好ましくは4.6モル以下、さらに好ましくは3.4モル以下、一層好ましくは2モル以下、より一層好ましくは1モル以下、特に好ましくは0.2モル以下、最も好ましくは0.14モル以下が挙げられる。
【0021】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌の好ましい例としては、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、フルコトバシラス・ドゥリオニス(Fructobacillus durionis)、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)、及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が挙げられ、より好ましくは、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)、及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が挙げられる。
【0022】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌のより好ましい例としては、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosus NBRC3516株、及びFructobacillus durionis NBRC113239株が挙げられ、更に好ましくは、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株が挙げられる。
【0023】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌のさらに好ましい例としては、ミトコンドリア機能改善効果、ミトコンドリア生合成促進効果又はPGC1α遺伝子発現促進効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株が挙げられ、好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、及びFructobacillus fructosus NBRC3516株が挙げられ、特に好ましくはFructobacillus fructosus NBRC3516株が挙げられる。
【0024】
Fructobacillus durionis RD011727株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02764として国際寄託されている。
【0025】
Fructobacillus tropaeoil RD012353株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02765として国際寄託されている。
【0026】
Fructobacillus tropaeoil RD012354株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02766として国際寄託されている。
【0027】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
フルクトバシラス属乳酸菌の培養物又は培養上清は、上記のフルクトバシラス属乳酸菌
がニコチンアミドモノヌクレオチドを産生する条件で培養することで得ることができる。フルクトバシラス菌乳酸菌の培養に用いられる培地及び培養条件は適宜選択することができる。
【0029】
培地としては、拡大培養に用いられるもの(前培養培地)、及び生産培養に用いられるもの(本培養培地)が挙げられる。本培養培地は、前培養培地として用いられる培地を基本として、更に添加物を含有させて調製することができる。培地の性状については、好ましくは液体培地であるが、寒天培地であってもよい。培地は、炭素源の他、一般的には窒素源、ミネラル等を含む。
【0030】
炭素源としては、糖質及び糖質材料が挙げられる。糖質としては、糖類(単糖、二糖、オリゴ糖)、多糖類、及び糖アルコールが挙げられる。糖質としては、乳糖、ショ糖、グルコース、デンプン、キシリトール、デキストロース等が挙げられる。糖質材料は、糖質を含む有機組成物であればよく、例えば、乳及びその加工品(脱脂粉乳、ホエイ、ミルクパウダー、練乳等)、豆乳及びその加工品(豆乳加水分解物等)、穀類、果実、野菜等の食品が挙げられる。乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、水牛、ラクダ、ラマ、ロバ、ヤク、ウマ、トナカイ等の任意の哺乳動物に由来するものが挙げられる。なお糖質は、単離されたものであってもよいし、糖質材料に含まれているものであってもよい。例えば、フルクトース(糖質)は、果実(糖質材料)に含まれる形態のものを用いてもよい。これらの炭素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの炭素源の中でも、好ましくはグルコースが挙げられる。
【0031】
培地中の炭素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~4w/w%、好ましくは1~3w/w%、より好ましくは1.5~2.5w/w%が挙げられる。
【0032】
窒素源としては、任意の無機窒素源又は有機窒素源を使用することができる。例えば、酵母エキス(ビール酵母等)、肉エキス、カゼイン等のタンパク質;ペプトン(プロテアーゼペプトン等)等のタンパク質加水分解物、ペプチド等のペプチド類;アンモニウム塩(クエン酸アンモニウム等)、硝酸塩等の含窒素塩等が挙げられる。これらの窒素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
培地中の窒素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、タンパク質の場合、例えば0.3~4w/w%、好ましくは0.5~3w/w%、より好ましくは1~2w/w%が挙げられ;ペプチド類の場合、例えば0.1~2w/w%、好ましくは0.3~1.8w/w%、より好ましくは0.5~1.5w/w%が挙げられ;含窒素塩の場合、例えば0.03~1.5w/w%、好ましくは0.05~1w/w%、より好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられる。
【0034】
ミネラルとしては、例えば、マンガン(例えば、硫酸マンガン等のマンガン塩)、亜鉛、鉄、ナトリウム(例えば、酢酸ナトリウム等のナトリウム塩)、カリウム(例えば、硫酸水素二カリウム、リン酸水素二カリウム等のカリウム塩)、マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩)、カルシウム、リン(例えば、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩)、硫黄(例えば、硫酸マンガン、硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩)、微量元素等が挙げられる。これらのミネラルは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのミネラルの中でも、好ましくは、マンガン、ナトリウム、マグネシウム、カリウムが挙げられる。
【0035】
培地中のミネラルの濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、マンガン塩の場合、例えば0.001~0.01w/w%、好ましくは0.003~0.008w/w%が挙げられ;ナトリウム塩の場合、例えば0.05~1.5w/w%、好ましくは0.1~1w/w%が挙げられ;マグネシウム塩の場合、例えば0.001~0.02w/w%、好ましくは0.005~0.015w/w%が挙げられ;カリウム塩の場合、例えば0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;リン酸塩の場合、例えば0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;硫酸塩の場合、0.001~0.04w/w%、好ましくは0.005~0.02w/w%が挙げられる。
【0036】
培地は、上記成分以外に、ビタミン(ビタミンB群など)、界面活性剤(非イオン性界面活剤(Tween等)、陰イオン性界面活性剤(SDS等)等)、抗菌剤(トリクロサン等)、抗生物質(モネシン等)等の他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの他の成分の中でも、好ましくは界面活性剤、より好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
培地中の他の成分の濃度については特に限定されず、他の成分の種類、培地の種類、培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、界面活性剤を含む場合、界面活性剤の濃度として、例えば0.01~0.5w/w%、好ましくは0.05~0.3w/w%が挙げられる。
【0038】
培養条件としては、フルクトバシラス属乳酸菌が生育できる条件下であれば特に限定されない。
【0039】
培養温度としては、培養対象となるフルクトバシラス属乳酸菌の至適温度であればよく、例えば26~40℃、好ましくは27~38℃、より好ましくは28~36℃、更に好ましくは29~34℃が挙げられる。培養時間としては、実際に培養するフルクトバシラス属乳酸菌の種類等に合せて適宜設定すればよく、例えば4~48時間、好ましくは8~36時間、より好ましくは12~24時間が挙げられる。
【0040】
培養中の操作については、培養中における培養液の攪拌の要否は問わない。また、具体的な培養手順の例については、上述の培養を一定時間生産培養(本培養)として行い、その前に、少量(例えば体積比で本培養培地の1/6~1/4)の培地で拡大培養を(前培養)行うことができる。前培養の培養条件は、フルクトバシラス属乳酸菌の種類などに合せて適宜設定すればよく、上述の条件を採用することができる。また、本培養においては、前培養で得られた培養物を、OD660が例えば0.01~0.04、好ましくは0.01~0.03となるように本培養培地に植菌することができる。
【0041】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌の培養物又は培養上清は、上記のフルクトバシラス属乳酸菌の1種を単独で用いて調製したものでもよいし、複数種を組み合わせて用いて調製したものでもよいし、ある1種を単独で用いて調製したものと他の1種を単独で用いて調製したものとの混合物であってもよい。
【0042】
本発明で用いられるフルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌としては、培養後の乳酸菌をそのまま用いてもよく、培養によって得られた乳酸菌を、回収し、後述する休止菌体反応に付したものを用いてもよい。
【0043】
培養によって得られたフルクトバシラス属に属する乳酸菌は、そのままミトコンドリア機能改善剤の有効成分として用いてもよいし、あるいはろ紙を用いたろ過、遠心分離、デカンテーション、スクリュープレス、ローラープレス、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、振動スクリーン、多重板振動フィルター、真空脱水、加圧脱水、ベルトプレス、遠心濃縮脱水、多重円板脱水等によって固液分離を行い、培養液から回収した菌体を休止菌体反応に付して得られた菌体をミトコンドリア機能改善剤の有効成分として用いてもよい。
【0044】
なお、培養で得られたフルクトバシラス属に属する乳酸菌を休止菌体反応に用いる場合、乳酸菌中のニコチンアミドモノヌクレオチド含有量を向上させることができる。
【0045】
休止菌体反応に用いる液体としては、フルクトバシラス属に属する乳酸菌が効率よく反応できるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、水、緩衝液、有機溶剤等を用いることができる。
【0046】
休止菌体反応に用いる液体のpHとしては、例えば、4.0~10.0、好ましくはpH5.0~9.0、より好ましく5.5~7.5が挙げられる。
【0047】
休止菌体反応に用いる液体が緩衝液である場合、緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES衝液、MES緩衝液等が挙げられる。
【0048】
緩衝液のより具体的な例としては、KHC8H4O4-NaOH (pH4.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH4.0)、MES-NaOH (pH5.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH5.0)、KH2PO4-K2HPO4(pH6.0)、MES-NaOH(pH6.0)、 KH2PO4-K2HPO4(pH7.0)、PIPES-NaOH (pH7.0) 、HEPES-NaOH(pH8.0)、H3BO4-NaOH(pH8.0)、CHES-NaOH(pH9.0)、H3BO4-NaOH(pH9.0)、H2CO3-NaHCO3(pH10.0)、CHES-NaOH(pH10.0)等が挙げられ、好ましくはCH3COOH-CH3COONa、KH2PO4-K2HPO4、H3BO4-NaOH、より好ましくはKH2PO4-K2HPO4が挙げられる。
【0049】
休止菌体反応に用いる液体が有機溶剤である場合、有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のジオール類、炭素数1~7の直鎖又は分岐アルキルを有するアルコール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0050】
休止菌体反応に用いる液体としては、上記の液体の中でも、好ましくは水、緩衝液が挙げられる。
【0051】
休止菌体反応における反応温度としては、例えば21~37℃、好ましくは24~28℃が挙げられる。反応時間としては、例えば0.1~24時間、好ましくは6~12時間が挙げられる。
【0052】
休止菌体反応は、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を上記の液体に懸濁し、静置、攪拌または振盪することで行うことができる。
【0053】
また、休止菌体反応は、上記の液体を用いることなく、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を含む培養液のpHを4.0~10.0、好ましくはpH5.0~9.0、より好ましくは5.5~7.5の範囲に調整することにより行ってもよい。
【0054】
他の成分
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、上記の有効成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗炎症剤、抗酸化剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。
【0055】
また、本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)等の水性基剤;天然由来油、鉱物油、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール等の油性基剤;界面活性剤;清涼化剤、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0056】
性状及び形態
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤の性状については、特に制限されず、液状、固形状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。また、本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、水性製剤、油性製剤等の非乳化製剤であってもよく、また水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよい。
【0057】
また、本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、内用組成物又は外用組成物(好ましくは皮膚外用組成物)の形態で用いることができる。
【0058】
具体的には、本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、及びPGC1α遺伝子発現促進剤は、飲食品、化粧品、医薬品(内服薬又は外用薬)の形態で用いることができる。
【0059】
飲食品としては特に限定されないが、例えば、発酵乳(ドリンクヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳等)、茶系飲料(緑茶、紅茶及び烏龍茶等)、果物・野菜系飲料(オレンジ、りんご、ぶどう等の果汁、トマト、ニンジン等の野菜汁を含む飲料)、アルコール性飲料(ビール、発泡酒、ワイン等)、炭酸飲料、清涼飲料、水ベースの飲料等の飲料;及び発酵乳(セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト等)、菓子、インスタント食品、調味料等の加工食品等の食品が挙げられる。
【0060】
また、飲食品としては、機能性食品も挙げられる。機能性食品は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能食品等の保健機能食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等の各種剤形のもの)及び美容食品(例えばダイエット食品)等が挙げられる。更に、機能性食品は、病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品、介護用食品等の特別用途食品であってもよい。
【0061】
化粧品としては、化粧水、乳液、クリーム、エッセンス、ゲル、パック、シートマスク、リップクリーム等の基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし(クレンジング剤を含む)、角質除去剤、ボディーシャンプーなどの皮膚洗浄料;サンスクリーン剤、ボディー用ジェル、ボディー用マッサージ剤、抑汗剤、防臭剤、除毛剤、入浴剤等のボディーケア化粧料;ファンデーション、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、眉墨等のメークアップ化粧料;マネキュア、ネイルリムーバー等の爪用化粧料;ヘアスタイリング剤、シャンプー、コンディショナー、リンス、育毛剤等の毛髪化粧料;液体歯磨、練歯磨、洗口液、マウススプレー等の口腔用化粧料等が挙げられる。
【0062】
医薬品としては、内服薬又は外用薬(医薬部外品を含む)が挙げられる。内服薬の剤形としては、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等が挙げられ、外用薬の剤型としては、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤等が挙げられる。
【0063】
ミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤、又はPGC1α遺伝子発現促進剤を含む飲食品、化粧品又は医薬品の適用対象としては、好ましくは哺乳動物が挙げられ、例えば、ヒト、チンパンジー、ゴリラ等の霊長類;イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ等のペット又は家畜;マウス、ラット、ハムスター、サル等の実験動物が挙げられる。
【0064】
用途
本発明のミトコンドリア機能改善剤は、ミトコンドリア機能の改善を目的とした用途(つまり、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態の改善を目的とした用途)に用いられる。標的となるミトコンドリアとしては特に限定されないが、好ましくは皮膚ミトコンドリア及び筋肉ミトコンドリアが挙げられ、より好ましくは皮膚ミトコンドリアが挙げられる。ミトコンドリア機能の改善を目的とした具体的な用途としては、皮膚ミトコンドリア機能の改善を目的とするものとして、例えば、皮膚のシワ形成の抑制又は改善等の用途が挙げられ;筋肉ミトコンドリア機能の改善を目的とするものとして、例えば、運動能力低下改善、筋力低下抑制等の用途が挙げられ;その他の例として、代謝機能の改善、寿命延長、老化防止、神経系異常回復、認知機能改善等の用途が挙げられる。
【0065】
本発明のミトコンドリア生合成促進剤は、ミトコンドリア生合成の促進を目的とした用途(ひいては、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態の改善を目的とした用途)で用いられる。標的となるミトコンドリアとしては特に限定されないが、好ましくは皮膚ミトコンドリア及び筋肉ミトコンドリアが挙げられ、より好ましくは皮膚ミトコンドリアが挙げられる。ミトコンドリア生合成の促進を目的とした具体的な用途としては、皮膚ミトコンドリア生合成の促進を目的とするものとして、例えば、皮膚のシワ形成の抑制又は改善等の用途が挙げられ;筋肉ミトコンドリア生合成の促進を目的とするものとして、例えば、運動能力低下改善、筋力低下抑制等の用途が挙げられ;その他の例として、代謝機能の改善、寿命延長、老化防止、神経系異常回復、認知機能改善等の用途が挙げられる。
【0066】
本発明のPGC1α遺伝子発現促進剤は、PGC1α遺伝子発現の促進を目的とした用途で用いられる。PGC1α遺伝子発現の促進を目的とした具体的な用途としては特に限定されないが、ミトコンドリア生合成の促進(ひいては、ミトコンドリアの機能低下に起因する状態の改善)、マイオカイン産生の促進等の用途が挙げられる。PGC1α遺伝子発現の標的となる組織については特に限定されないが、好ましくは皮膚及び筋肉が挙げられ、より好ましくは皮膚が挙げられる。PGC1α遺伝子発現の促進を目的としたさらに具体的な用途としては、皮膚のPGC1α遺伝子発現の促進を目的とするものとして、例えば、皮膚のシワ形成の抑制又は改善等の用途が挙げられ;筋肉のPGC1α遺伝子発現の促進を目的とするものとして、例えば、運動能力低下改善、筋力低下抑制等の用途が挙げられる。
【0067】
用量
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤及びPGC1α遺伝子発現促進剤が内用される場合、有効成分量が、例えば、0.01~200mg/kg/日、好ましくは0.1~20mg/kg/日となる量で、1日に1~5回、内用することができる。
【0068】
本発明のミトコンドリア機能改善剤、ミトコンドリア生合成促進剤及びPGC1α遺伝子発現促進剤が外用される場合、有効成分量が、例えば、1回当たりの塗布量で0.0001~0.2mg/cm2、好ましくは0.001~0.02mg/cm2となる量で、1日に1~5回外用することができる。
【実施例0069】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
試験例1
(1)フルクトバシラス属乳酸菌の粉末(サンプルA)の調製
Fructobacillus fructosus NBRC3516株を、Difco社製のMRS培地(前培養培地)30mlに植菌し、30℃で24時間、静置で拡大培養した。得られた培養液をOD660が0.02となるように、MRS培地(本培養培地)1Lに植菌し、30℃で12時間、pH6.0~7.0で攪拌培養した。
得られた培養液を遠心分離に供して菌体を回収した。回収した菌体を1Lの0.85w/w%KCl水溶液で洗浄した。洗浄した菌体を再度遠心分離に供し、菌体を回収した。回収した菌体を殺菌後、凍結乾燥を行い、乳酸菌粉末(サンプルA)を得た。後述するHPLC条件にて分析し、回収した菌体中のニコチンアミドモノヌクレオチド及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産量を測定した。測定の結果、サンプルAのNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は0.055重量部であった。サンプルAを実施例1、2に用いた。
【0071】
(2)フルクトバシラス属乳酸菌の粉末(サンプルB)の調製
Fructobacillus fructosus NBRC3516株を、Difco社製のMRS培地(前培養培地)30mlに植菌し、30℃で24時間、静置で拡大培養した。得られた培養液をOD660が0.02となるように、MRS培地(本培養培地)1Lに植菌し、30℃で12時間、pH6.0~7.0で攪拌培養した。
得られた培養液を遠心分離に供して菌体を回収した。回収した菌体を1Lの0.85w/w%KCl水溶液で洗浄した。洗浄した菌体を再度遠心分離に供し、菌体を回収した。
回収した菌体を200mlのイオン交換水に懸濁し、pH6.0~7.0で25℃で8時間攪拌し、休止菌体反応を実施した。休止菌体反応終了後、遠心分離に供して菌体を回収した。回収した菌体を1Lの0.85w/w%KCl水溶液で洗浄した。洗浄した菌体を再度遠心分離に供し、菌体を回収した。回収した菌体を殺菌後、凍結乾燥を行い、乳酸菌粉末(サンプルB)を得た。後述するHPLC条件にて分析し、回収した菌体中のニコチンアミドモノヌクレオチド及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産量(を測定した。測定の結果、サンプルBのNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は1.55重量部であった。サンプルBを実施例3、4に用いた。
【0072】
(MRS培地組成)
2w/w% グルコース
1w/w% プロテアーゼペプトン
1w/w% 牛肉エキス
0.5w/w% 酵母エキス
0.2w/w% クエン酸アンモニウム
0.1w/w% Tween80
0.5w/w% 酢酸ナトリウム
0.01w/w% 硫酸マグネシウム
0.005w/w% 硫酸マンガン
0.2w/w% リン酸水素二カリウム
【0073】
(HPLC分析条件)NMNの測定方法
カラム:DaisoPak SP-100-5-ODS-P(4.6×150mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0)
流速 :0.6ml/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :14.5分
【0074】
(HPLC分析条件)NADの測定方法
カラム:DAISOPAK SP-100-5-ODS-P(4.6×250mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0):メタノール=95:5(w:w)
流速 :0.7mL/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :33分
【0075】
(3)ミトコンドリア機能改善試験及び結果
C2C12細胞を1.0×104Cells/wellとなるよう96-WELL μClear fluorescence black plate (Greiner-Bio One, Tokyo, Japan)に播種し、37℃、5%CO2存在下で24時間培養した。その後、水中に表1に示す成分を添加し、24時間培養した。その後、細胞をHoechst33342及びMitoTracker Green FMで染色し、ミトコンドリア数をIN CELL Analyzer2200にて解析した。比較例1(水のみを添加したコントロール)におけるミトコンドリア数を100とした場合の各実施例及び各比較例によるミトコンドリアの相対数を導出した。ミトコンドリア相対数が100を超えていると、ミトコンドリアの生合成が促進されている、つまり、ミトコンドリア機能が改善していると評価できる。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
さらに、比較例1及び4、並びに実施例3及び4について、MitoTracker Green FMで染色されたミトコンドリアの面積について、IN CELL Analyzer2200にて解析した。比較例1(水のみを添加したコントロール)におけるミトコンドリア面積を100とした場合の各実施例及び比較例によるミトコンドリアの相対面積を導出した。ミトコンドリア相対面積が100を超えている場合も、ミトコンドリアの生合成が促進されている、つまり、ミトコンドリア機能が改善していると評価できる。結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
表1に示すように、試薬としてのNAD及びNMNは、比較例2及び比較例4で用いた程度の量ではミトコンドリア機能を改善できなかったが、実施例1~4に示す通り、フルクトバシラス属乳酸菌粉末は、NAD及びNMNの含有量が比較例2又は比較例3よりはるかに少なくても、ミトコンドリア機能を顕著に改善することが確認できた。表2に示される結果も、表1に示される傾向を良く反映している。また、表1の比較例3及び比較例5に示すように、試薬としてのNAD及びNMNでは、比較例2及び比較例4で用いた場合の10倍量に増量しても実質的なミトコンドリア機能改善効果を奏しなかった。これらの事実から、フルクトバシラス属乳酸菌粉末によるミトコンドリア機能改善効果は驚異的であるといえる。
【0080】
試験例2
(1)フルクトバシラス属乳酸菌の抽出液(サンプルa)の調製
試験例1で調製した乾燥乳酸菌(サンプルA)20gを乳鉢で細かくすりつぶし、滅菌水1Lに懸濁し、懸濁液を調製した。懸濁液を室温(約25℃)で1時間撹拌し、遠心分離(12,000rpm×10min)後、上清を0.2μmのフィルターでろ過し、乳酸菌抽出液(サンプルa)を得た。前述するHPLC条件にて分析し、得られたサンプルa中のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生産量を測定した。測定の結果、サンプルaのNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は0.0527重量部であった。サンプルaを実施例5、9に用いた。
【0081】
(2)他のフルクトバシラス属乳酸菌の抽出液(サンプルc、d、e)の調製
乳酸菌として、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、又はFructobacillus durionis RD011727株を用いた以外は、試験例1の「(1)フルクトバシラス属乳酸菌の粉末(サンプルA)の調製」と同じ方法で、各乳酸菌の粉末を調製した。得られた各乳酸菌の粉末を用い、本試験例の「(1)フルクトバシラス属乳酸菌の抽出液(サンプルa)の調製」と同様にして抽出液を調製し得た。具体的には、Fructobacillus tropaeoil RD012353株の粉末からその抽出液(サンプルc)を調製し、Fructobacillus tropaeoil RD012354株の粉末からその抽出液(サンプルd)、及びFructobacillus durionis RD011727株の粉末からその抽出液(サンプルe)を得た。試験例1の「(HPLC分析条件)NMNの測定方法」及び「(HPLC分析条件)NADの測定方法」の方法を用い、サンプルc、d、e中のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生産量を測定した。測定の結果、サンプルc中のNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は0.0202重量部であった。サンプルd中のNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は0.0250重量部であった。サンプルe中のNAD1重量部当たりのNMNの重量比率は0.0421重量部であった。サンプルcを実施例6、10に用い、サンプルdを実施例7、11に用い、サンプルeを実施例8、12に用いた。
【0082】
【0083】
(3)マウス筋芽細胞におけるミトコンドリア生合成の遺伝子発現に関わる転写共役因子PGC1αの発現量の測定及び結果(実施例5~8)
マウス筋芽細胞C2C12(RIKEN Cell Bank、RCB0987)を6ウェルプレートに播種し、10重量%牛胎児血清を含むDMEM(富士フイルム和光純薬)培地にて、37℃、5体積%CO2条件下で培養した。サブコンフルエントな状態になったところで、2体積%ウマ血清を含むDMEM培地に交換し、6日間培養した。
【0084】
サンプルa、c~dそれぞれを終濃度が1重量%となるよう添加した2体積%ウマ血清を含むDMEM培地に置き換えて、37℃、5体積%CO2条件下で24時間培養した。また、コントロールとして、サンプルa、c~dを添加しないことを除いて同様の操作を行った。得られた培養物について、総RNAの抽出を行った。
【0085】
総RNAの抽出は、C2C12細胞をPBSで洗浄後、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて抽出した。総RNAの定量はQubit RNA HSアッセイキット(インビトジェン社)を用いて行った。抽出したRNAをReverTra qPCR RT Master Mix(東洋紡社)を用いて逆転写し、1本鎖cDNAを合成した。このcDNAを鋳型にTHUNDERBIRD NextSYBR qPCR Mix(東洋紡社)で蛍光色素CyberGreenを用いたリアルタイムPCRを行った。PCR反応は95℃、30秒の初期変性ののち、95℃、5秒・60℃、30秒の増幅反応を40回繰り返した。遺伝子発現量は、一定量のPCR産物が得られるまでのサイクル数から相対値を算出した。リアルタイムPCRはPGC1α遺伝子の他に内部標準としてGAPDH遺伝子についても行い、PGC1αの相対発現量をGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)の相対発現量で補正することによって評価を行った。
【0086】
PGC1αを増幅するためのプライマーとして、センス:5’- GAATCAAGCCACTACAGACACCG-3’(配列番号1)、アンチセンス:5’-CATCCCTCTTGAGCCTTTCGTG-3’(配列番号2)を、GAPDHを増幅するためのプライマーとして、5’- CATCACTGCCACCCAGAAGACTG-3’(配列番号3)、アンチセンス:5’-ATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCAG-3’(配列番号4)を使用した。
【0087】
遺伝子発現量の測定は、リアルタイムPCR法により行った。PGC1α遺伝子発現量を、内部標準であるGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)遺伝子発現量に対する割合として求めた。コントロールにおけるPGC1α遺伝子発現量を1とした場合の各乳酸菌抽出液添加によるPGC1α遺伝子発現の相対量を算出した。結果を
図1~
図4に示す。
【0088】
図1~4に示す通り、フルクトバシラス属乳酸菌抽出液は、乳酸菌抽出液無添加に比べて、マウス筋芽細胞において、ミトコンドリア生合成の遺伝子発現に関わる転写共役因子PGC1α遺伝子発現量を顕著に増加させることが確認できた。
【0089】
(4)ヒト表皮角化細胞におけるミトコンドリア生合成の遺伝子発現に関わる転写共役因子PGC1αの発現量の測定及び結果(実施例9~12)
ヒト表皮角化細胞PSVK1(JCRB Cell Bank、JCRB1093 細胞樹立者:Yasumoto,S)を6ウェルプレートに5×105cells/ウェルとなるように播種し、37℃、5体積%CO2の条件下で一晩培養した。培地は、KMG-Gold基本培地(ロンザ)培地に添加剤(KGM-Gold Single Quots(ロンザ))を添加した培地にて、37℃、5体積%CO2条件下で24時間培養した。
【0090】
培養後、培地をKMG-Gold基本培地に交換し37℃、5体積%CO2の条件下で24時間培養した。その後、サンプルa、c~dそれぞれを終濃度が1重量%となるよう添加したKMG-Gold基本培地に交換し、37℃、5体積%CO2の条件下で3時間培養した。また、コントロールとして、サンプルa、c~dを添加しないことを除いて同様の操作を行った。得られた培養物について、総RNAの抽出を行った。
【0091】
総RNAの抽出はPSVK1細胞をPBSで洗浄後、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて抽出した。総RNAの定量はQubit RNA HSアッセイキット(インビトジェン社)を用いて行った。抽出したRNAをReverTra qPCR RT Master Mix(東洋紡社)を用いて逆転写し、1本鎖cDNAを合成した。このcDNAを鋳型にTHUNDERBIRD NextSYBR qPCR Mix(東洋紡社)で蛍光色素CyberGreenを用いたリアルタイムPCRを行った。PCR反応は95℃、30秒の初期変性ののち、95℃、5秒・60℃、30秒の増幅反応を40回繰り返した。遺伝子発現量は、一定量のPCR産物が得られるまでのサイクル数から相対値を算出した。リアルタイムPCRはPGC1α遺伝子の他に内部標準としてGAPDH遺伝子についても行い、PGC1αの相対発現量をGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)の相対発現量で補正することによって評価を行った。
【0092】
PGC1αを増幅するためのプライマーとして、センス:5’- CCAAAGGATGCGCTCTCGTTCA-3’(配列番号5)、アンチセンス:5’-CGGTGTCTGTAGTGGCTTGACT-3’(配列番号6)を、GAPDHを増幅するためのプライマーとして、5’- GTCTCCTCTGACTTCAACAGCG-3’(配列番号7)、アンチセンス:5’-ACCACCCTGTTGCTGTAGCCAA-3’(配列番号8)を使用した。
【0093】
遺伝子発現量の測定は、リアルタイムPCR法により行った。PGC1α遺伝子発現量を、内部標準であるGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)遺伝子発現量に対する割合として求めた。コントロールにおけるPGC1α遺伝子発現量を1とした場合の乳酸菌抽出液添加によるPGC1α遺伝子発現の相対量を算出した。結果を
図5~
図8に示す。
【0094】
図5~8に示す通り、フルクトバシラス属乳酸菌抽出液は、乳酸菌抽出液無添加に比べて、ヒト表皮角化細胞においてミトコンドリア生合成の遺伝子発現に関わる転写共役因子PGC1α遺伝子発現量を顕著に増加させることが確認できた。