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特開2023-36015アーク付加製造-スピニングの複合加工装置及び方法
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  • 特開-アーク付加製造-スピニングの複合加工装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036015
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】アーク付加製造-スピニングの複合加工装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/16 20060101AFI20230306BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20230306BHJP
   B21D 22/14 20060101ALI20230306BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230306BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230306BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230306BHJP
【FI】
B21D22/16 C
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B21D22/14 Z
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136836
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】202111009038.1
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512007144
【氏名又は名称】華中科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 海鴎
(72)【発明者】
【氏名】王 凱
(72)【発明者】
【氏名】戴 福生
(72)【発明者】
【氏名】趙 旭山
(72)【発明者】
【氏名】李 潤声
(72)【発明者】
【氏名】呉 俊
(72)【発明者】
【氏名】楊 海濤
(72)【発明者】
【氏名】張 華▲イク▼
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA01
4E137BB01
4E137BC04
4E137CA06
4E137CA26
4E137DA01
4E137EA18
4E137EA25
4E137GA08
4E137HA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不規則な形状の溶接ビードに対してスピニング加工を行うことができ、優れた表面形態と力学的性質の曲面部品を得る装置を提供する。
【解決手段】スピニング機構及び溶融堆積成形機構を含み、スピニングヘッド12はスピニングベース及びボールを含み、前記ボールは前記スピニングベースの底部の円弧溝内に取り付けられ、前記溶融堆積成形機構は移動軌道、ロボット43及び熱源発生器11を含み、そのうち、円弧状の移動軌道は前記工作機械41の周囲に周設され、前記ロボットは前記移動軌道に可動的に取り付けられ、前記熱源発生器は前記ロボットの末端に取り付けられる。本発明は、アーク付加製造-スピニングプロセスの複合を実現し、不規則な形状の溶接ビードにスピニング加工を行うことができ、優れた表面形態と力学的性質の曲面部品を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク付加製造-スピニングの複合加工装置であって、スピニング機構及び溶融堆積成形機構を含み、そのうち、
前記スピニング機構は工作機械(41)及びスピニングヘッド(12)を含み、そのうち、前記スピニングヘッド(12)は主軸(13)を介して前記工作機械(41)に取り付けられ、前記主軸(13)はスピニングヘッド(12)を駆動して回転させ、3つの垂直方向の動きを実現するために用いられ、前記スピニングヘッド(12)はスピニングベース(23)及びボール(24)を含み、前記ボール(24)は前記スピニングベース(23)の底部の円弧溝内に取り付けられ、
前記溶融堆積成形機構は移動軌道(433)、ロボット(43)及び熱源発生器(11)を含み、そのうち、円弧状の移動軌道(433)は前記工作機械(41)の周囲に周設され、前記ロボット(43)は該移動軌道(433)に可動的に取り付けられ、前記熱源発生器(11)は前記ロボット(43)の末端に取り付けられることを特徴とするアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項2】
前記スピニングベース(23)の横断面半径RはL>2Rを満たし、ここで、Lの決定方式は、予め設定された部品曲面積層に従って、曲面積層におけるすべての凹部領域を見つけ、各凹部領域について、該凹部領域の最下点Pを決定し、P点上の高さHで凹部領域と交差する水平面を作り、閉じた輪郭Cを得て、該閉じた輪郭Cと予め設定された加工経路との交点が複数あり、閉じた輪郭C内の各交点を通る内接円の直径をそれぞれ計算し、そのうちの最小値をLとすることであることを特徴とする請求項1に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項3】
前記高さHは、ボール(24)がスピニングベース(23)の下端に露出した高さに一層の溶接ビードの高さを加えた高さに等しいことを特徴とする請求項2に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項4】
前記ボール(24)は全部で3つあり、前記スピニングベース(23)の底部に円周方向に均等に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項5】
前記ボール(24)の半分はスピニングベース(23)の底部の円弧溝内に取り付けられ、即ち、ボール(24)の軸線はスピニングベース(23)底面と同一平面であり、前記スピニングベース(23)の底面にさらに支持片が取り付けられ、該支持片に前記ボール(24)を支えるための円弧状溝が開設されることを特徴とする請求項4に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項6】
前記スピニングヘッド(12)の各部分の寸法は、以下の関係式を満たし、
【数1】
ここで、θは加工対象の曲面の最大曲率角度であり、Dはボールの直径であり、dは支持片の厚さであり、mはボールとスピニングベースの縁との距離であり、hは支持片の下端とスピニングベースの縁との距離であることを特徴とする請求項5に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項7】
前記移動軌道(433)は環状または半環状であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の加工装置によって達成されるアーク付加製造-スピニングの複合加工方法であって、
ロボット(43)は移動軌道(433)に沿って移動すると同時に、熱源発生器(11)を駆動して予め設定された加工経路に従って溶融金属を堆積させるステップと、主軸(13)はスピニングヘッド(12)を駆動して熱源発生器(11)に追従させ、かつ熱源発生器(11)の軌跡に沿って移動させ、金属材料がまだ完全に凝固していない時に、スピニングヘッド(12)が回転して溶融金属の堆積箇所を圧延して、結晶粒を微細化し、成形部品の表面を滑らかにするステップとを含むことを特徴とするアーク付加製造-スピニングの複合加工方法。
【請求項9】
前記熱源発生器(11)は溶接ガンであり、加工時に溶接ガンを傾斜させ、傾斜方向は溶接ビードの走行方向であることを特徴とする請求項8に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク付加製造の分野に属し、より具体的には、アーク付加製造-スピニングの複合加工装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク付加製造は、溶融-堆積の原理に基づき、アークを熱源として、材料を層ごとに積み重ねて3次元実体部品を製造するものである。
【0003】
従来の平面ベースのアーク付加製造では、部品の優れた力学的性質を実現するために、圧延プロセスを複合することができる。現在の圧延機構の多くは円筒形の圧延ローラであり、溶接ガンと圧延機構のレイアウトが十分に柔軟ではなく、簡単な溶接ビード(直線または円弧状の溶接ビード)しか圧延できない。曲面アーク付加製造では、溶接ビードはもはや簡単な溶接ビードではなく、かつ溶接ビードが位置する加工面は曲面であるため、従来の圧延プロセスと複合しにくく、新しい圧延機構と方法を発明する必要がある。
【0004】
スピニングプロセスは、スピニング機構によって金属塑性成形を実現する加工プロセスである。スピニング機構の底部端面は曲面であってもよいため、曲面のスピニング加工を実現でき、アーク付加製造に適用される可能性があり、アーク付加製造-スピニングの複合プロセスを実現する。しかし、現在のスピニング機構は依然として従来のアーク付加製造プロセスと複合しにくいため、曲面アーク付加製造向けのスピニング機構及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記欠陥または改良の需要に鑑みて、本発明は、アーク付加製造-スピニングの複合加工装置及び方法を提供し、その目的は、アーク付加製造-スピニングプロセスの複合を実現し、不規則な形状の溶接ビードに対してスピニング加工を行うことができ、優れた表面形態と力学的性質の曲面部品を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、アーク付加製造-スピニングの複合加工装置が提供され、スピニング機構及び溶融堆積成形機構を含み、そのうち、
前記スピニング機構は工作機械及びスピニングヘッドを含み、そのうち、前記スピニングヘッドは主軸を介して前記工作機械に取り付けられ、前記主軸はスピニングヘッドを駆動して回転させ、3つの垂直方向の動きを実現するために用いられ、前記スピニングヘッドはスピニングベース及びボールを含み、前記ボールは前記スピニングベースの底部の円弧溝内に取り付けられ、
前記溶融堆積成形機構は移動軌道、ロボット及び熱源発生器を含み、そのうち、円弧状の移動軌道は前記工作機械の周囲に周設され、前記ロボットは前記移動軌道に可動的に取り付けられ、前記熱源発生器は前記ロボットの末端に取り付けられる。
【0007】
さらに好ましくは、前記スピニングベースの横断面半径RはL>2Rを満たし、ここで、Lの決定方式は、予め設定された部品曲面積層に従って、曲面積層におけるすべての凹部領域を見つけ、各凹部領域について、該凹部領域の最下点Pを決定し、P点上の高さHで凹部領域と交差する水平面を作り、閉じた輪郭Cを得て、該閉じた輪郭Cと予め設定された加工経路との交点が複数あり、閉じた輪郭C内の各交点を通る内接円の直径をそれぞれ計算し、そのうちの最小値をLとすることである。
【0008】
さらに好ましくは、前記高さHは、ボールがスピニングベースの下端に露出した高さに一層の溶接ビードの高さを加えた高さに等しい。
【0009】
さらに好ましくは、前記ボールは全部で3つあり、前記スピニングベースの底部に円周方向に均等に取り付けられる。
【0010】
さらに好ましくは、前記ボールの半分はスピニングベースの底部の円弧溝内に取り付けられ、即ち、ボールの軸線はスピニングベースの底面と同一平面であり、前記スピニングベースの底面にさらに支持片が取り付けられ、前記支持片に前記ボールを支えるための円弧状溝が開設される。
【0011】
さらに好ましくは、前記スピニングヘッドの各部分の寸法は以下の関係式を満たし、
【数1】
ここで、θは加工対象の曲面の最大曲率角度であり、Dはボールの直径であり、dは支持片の厚さであり、mはボールとスピニングベースの縁との距離であり、hは支持片の下端とスピニングベースの縁との距離である。
【0012】
さらに好ましくは、前記移動軌道は環状または半環状である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、上記加工装置によって達成されるアーク付加製造-スピニングの複合加工方法が提供され、
ロボットは移動軌道に沿って移動すると同時に、熱源発生器を駆動して予め設定された加工経路に従って溶融金属を堆積させるステップと、主軸はスピニングヘッドを駆動して熱源発生器に追従させ、かつ熱源発生器の軌跡に沿って移動させ、金属材料がまだ完全に凝固していない時に、スピニングヘッドが回転して溶融金属の堆積箇所を圧延して、結晶粒を微細化し、成形部品の表面を滑らかにするステップとを含む。
【0014】
さらに好ましくは、前記熱源発生器は溶接ガンであり、加工時に溶接ガンを傾斜させ、傾斜方向は溶接ビードの走行方向である。
【発明の効果】
【0015】
全体として、本発明によって構想された上記の技術的解決手段は、従来技術に比べて、主に以下の技術的利点を有する。
1.本発明は溶融堆積機構とスピニング機構を互いに独立させ、曲線溶接ビードの同期溶融堆積と圧延を実現でき、円弧状の移動軌道を使用してロボットを移動させ、成形範囲を拡大し、レイアウトが柔軟であり、全方向スピニングプロセスを実現できると同時に、ボール付きのスピニング機構は、設計が精巧で簡単であり、工作機械の主軸に直接取り付けることができ、主軸の回転によってスピニングが実現される。これにより、アーク付加製造-スピニングの複合プロセスが実現され、不規則な形状の溶接ビードに対してスピニング加工を行うことができ、結晶粒を効果的に微細化でき、部品がより優れた力学的性質を得ると同時に、部品の表面粗さをより低くし、より優れた表面形態を得ることができる。
2.アーク付加製造-スピニングの複合を実現するために、スピニングは溶接ガンに追従する必要があり、ロボットが固定される場合、移動中にスピニングと溶接ガンが干渉する可能性があり、本発明により、溶融堆積機構は円弧状の移動軌道によって成形領域を囲んで広範囲に移動すると同時に、溶接ガンの姿勢を調整し、干渉を防止する。
3.本発明では、スピニングベースの底部にボールを取り付けることで、スピニング機構と加工部品が接触するのは球面であり、その摩擦係数が低く、得られた部品は表面粗さが低く、即ち、表面形態がより良好になる。
4.曲面積層を用いる場合、溶接ガンとスピニングヘッドは曲面経路に沿って移動し、溶接ガンとスピニングヘッドは成形面に衝突する可能性がある。溶接ガンの衝突問題は、姿勢を変えることで防止でき、スピニングヘッドについて、本発明はスピニングヘッドと曲面積層との間で起こり得る衝突点を事前に判断する方法を提供し、それに応じてスピニングベースの大きさを設計し、スピニング時の衝突を防止する。
5.本発明は、ボールを支える支持片を設計することにより、安定性を向上させると同時に、スピニング機構によって加工できる曲面の最大曲率の式を提供し、それに応じてスピニングヘッドの各部品の寸法を設計し、設計されたスピニングヘッドが大きな曲率範囲の曲面を加工できることを保証する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置の構造の正面図である。
図2】本発明の実施例のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置の構造の平面図である。
図3】本発明の実施例のスピニング機構の構造及び寸法の概略図である。
図4】本発明の実施例のアーク付加製造過程における全体概略図である。
図5a】本発明の実施例の部品積層の概略図及び経路計画概略図である。
図5b】本発明の実施例の部品積層の概略図及び経路計画概略図である。
図6a】本発明の実施例の実行可能性分析の概略図である。
図6b】本発明の実施例の実行可能性分析の概略図である。
図7】本発明の実施例の衝突分析の概略図である。
【0017】
すべての図面において、同じ参照符号は同じ要素又は構造を示すために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確に分かりやすくするために、以下では、図面及び実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。理解すべきこととして、ここで説明する具体的な実施例は、本発明を説明するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。また、以下に説明する本発明の各実施形態に関わる技術的特徴は、互いに矛盾しない限り組み合わせることができる。
【0019】
本発明の実施例が提供するアーク付加製造-スピニングの複合加工装置は、アーク付加製造による成形を実現すると同時に、不規則な形状の溶接ビードに対してスピニング加工を行い、部品がより良好な表面形態と力学的性質を得るようにする。不規則な形状の溶接ビードは直線または曲線の溶接ビードを含み、その位置する加工面は平面または一定の曲率の曲面(平面は特殊な曲面であるため、以下、曲面と総称する)であってもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、該アーク付加製造-スピニングの複合加工装置はスピニング機構及び溶融堆積成形機構を含み、そのうち、
前記スピニング機構は工作機械41及びスピニングヘッド12を含み、そのうち、前記スピニングヘッド12は主軸13を介して前記工作機械41に取り付けられ、前記主軸13はスピニングヘッド12を駆動して回転させ、X、Y、Zの3つの方向の動きを実現し、前記スピニングヘッド12はスピニングベース23及びボール24を含み、前記ボール24は前記スピニングベース23の底部の円弧溝内に取り付けられる。
前記溶融堆積成形機構は移動軌道433、ロボット43及び熱源発生器11を含み、そのうち、前記移動軌道433は環状または半環状であり、該移動軌道433は前記工作機械41の周囲に周設され、具体的な配置方法は工作機械の寸法、加工領域に応じて決定され、前記ロボット43は該移動軌道433に可動的に取り付けられ、移動軌道の両端はそれぞれ、ロボットが移動可能な第1限界位置432及び第2限界位置2である。前記熱源発生器11は前記ロボット43の末端に取り付けられ、該熱源発生器11は、具体的には、溶接ガンである。
【0021】
好ましくは、前記ボール24は全部で3つあり、前記スピニングベース23の底部に円周方向に均等に取り付けられ、同時に、ボール24の半分はスピニングベース23の底部の円弧溝内に取り付けられ、即ち、ボール24の軸線はスピニングベース23の底面と同一平面である。前記スピニングベース23の底面にさらに支持片が取り付けられ、3つのボール24はそれぞれ支持片上の3つの円弧状溝よって支えられ、スピニングベース23の円弧溝内に配置される。
【0022】
さらに、アーク付加製造を行う前に、部品の3次元モデルに対して積層処理を行う必要があり、各層の高さはアーク付加製造の一層の高さ(即ち、溶接高さ)である。続いて、積層ごとに経路計画(即ち、溶接ガンの走行経路)を行う。平面積層を用いる場合、溶接ガンとスピニングヘッドは平面経路に沿って移動し、干渉が発生しない。しかし、曲面積層を用いる場合、溶接ガンとスピニングヘッドは曲面経路に沿って移動し、溶接ガンとスピニングヘッドは成形面に衝突する可能性がある。溶接ガンの衝突問題は姿勢を変えることで防止できる。スピニングヘッドについて、スピニングヘッドと曲面積層との間で起こり得る衝突点を事前に判断し、それに応じてスピニングヘッドの大きさを設計する必要がある。
【0023】
スピニングヘッドの形状特徴に基づき、曲面積層の凹部箇所はスピニングヘッドと干渉する可能性が最も高い。図5図7に示すように、まず、曲面積層におけるすべての凹部領域を見つけ、経路Pathが通過するある凹部領域Ωについて、領域の最下点はPであり、P点上の一定の高さHで1つの水平面を作り、Ωと交差し、一本の閉じた輪郭Cを得て、Pathと輪郭Cとの交点が複数ある。交点Qで、輪郭C内のQを通る最小の内接円の直径が支持片の直径より小さい場合、スピニングヘッドと成形面は必然的に衝突する。したがって、最小の内接円の直径Lに対して、スピニングベース23の横断面半径RはL>2Rを満たす必要がある。ここで、前記高さHは、ボールが支持片の下に露出した部分の高さ値に一層の溶接ビードの高さを加えた高さであり、即ち、H=D/2-d+溶接ビードの高さである。
【0024】
さらに、設計されたスピニングヘッド12が大きな曲率範囲の曲面を加工できることを保証するために、図3に示すように、前記スピニングヘッド12の各部分の寸法は、曲面とボール24を相接させ、曲面が支持片の縁に接触するのを避けるように、以下の関係式を満たし、
【数2】
ここで、θは加工対象の曲面の最大曲率角度であり、Dはボールの直径であり、dは支持片の厚さであり、mはボールとスピニングベースの縁との距離であり、hは支持片の下端とスピニングベースの縁との距離である。
【0025】
上記アーク付加製造-スピニングの複合加工装置を使用して部品成形加工を行い、図4に示すように、
ロボット43は移動軌道433に沿って移動すると同時に、溶接ガンを駆動して予め設定された加工経路に従って作業台42上に溶融金属を層ごとに堆積させるステップと、スピニングヘッド12は熱源発生器11に適切な距離で追従し、熱源発生器11の軌道に沿って移動し、主軸13によって駆動されて迅速に回転し、溶接ガンが堆積した金属材料がまだ完全に凝固していない時に、スピニングヘッド12は迅速に回転し、溶融金属の堆積箇所を圧延して、その結晶粒をより微細化し、部品の表面をより滑らかにするステップと、付加製造で得られた部品は基体14に印刷され、加工が終わった後、ワイヤーカットなどの技術を使用して、印刷部品を基体14から分離するステップとを含む。
【0026】
具体的には、スピニングヘッドと溶接ガンとの距離が遠い場合、溶接ビードが圧延される時の温度は低く、この時に溶接ビードの強度が大きく、圧延効果が明らかではない。距離が近い場合、干渉が発生しやすい。圧延効果を保証し、かつ干渉が発生しないために、溶接ガンを適切に傾斜させる必要があり、傾斜方向は溶接ビードの走行方向である。直線溶接ビードについて、印刷中に溶接ガンの姿勢を保持すればよい。曲線溶接ビードについて、溶接方向は絶えず変化し、溶接ガンの傾斜方向と溶接方向との間の角度を保持するために、6軸機器の姿勢を変えることで溶接ガンの姿勢を随時変えることができる。曲線の曲率が大きい場合、ロボットのロボットアームのストローク範囲を超える可能性があり、本発明は、工作機械を囲む円弧状の移動軌道を使用することにより、ロボットが移動軌道に取り付けられ、広範囲の移動を実現し、上記オーバーストローク問題を解決する。
【0027】
当業者が容易に理解できるように、以上の説明は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の精神及び原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等な置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
11 熱源発生器、12 スピニングヘッド、13 主軸、14 基体、23 スピニングベース、24 ボール、41 工作機械、42 作業台、43 ロボット、431 第1限界位置、432 第2限界位置、433 移動軌道。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク付加製造-スピニングの複合加工装置であって、スピニング機構及び溶融堆積成形機構を含み、そのうち、
前記スピニング機構は工作機械(41)及びスピニングヘッド(12)を含み、そのうち、前記スピニングヘッド(12)は主軸(13)を介して前記工作機械(41)に取り付けられ、前記主軸(13)はスピニングヘッド(12)を駆動して回転させ、3つの垂直方向の動きを実現するために用いられ、前記スピニングヘッド(12)はスピニングベース(23)及びボール(24)を含み、前記ボール(24)は前記スピニングベース(23)の底部の円弧溝内に取り付けられ、
前記溶融堆積成形機構は移動軌道(433)、ロボット(43)及び熱源発生器(11)を含み、そのうち、円弧状の移動軌道(433)は前記工作機械(41)の周囲に周設され、前記ロボット(43)は該移動軌道(433)に可動的に取り付けられ、前記熱源発生器(11)は前記ロボット(43)の末端に取り付けられることを特徴とするアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項2】
前記スピニングベース(23)の横断面半径RはL>2Rを満たし、ここで、Lの決定方式は、予め設定された部品曲面積層に従って、曲面積層におけるすべての凹部領域を見つけ、各凹部領域について、該凹部領域の最下点Pを決定し、P点上の高さHで凹部領域と交差する水平面を作り、閉じた輪郭Cを得て、該閉じた輪郭Cと予め設定された加工経路との交点が複数あり、閉じた輪郭C内の各交点を通る内接円の直径をそれぞれ計算し、そのうちの最小値をLとすることであることを特徴とする請求項1に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項3】
前記高さHは、ボール(24)がスピニングベース(23)の下端に露出した高さに一層の溶接ビードの高さを加えた高さに等しいことを特徴とする請求項2に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項4】
前記ボール(24)は全部で3つあり、前記スピニングベース(23)の底部に円周方向に均等に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項5】
前記ボール(24)の半分はスピニングベース(23)の底部の円弧溝内に取り付けられ、即ち、ボール(24)の軸線はスピニングベース(23)底面と同一平面であり、前記スピニングベース(23)の底面にさらに支持片が取り付けられ、該支持片に前記ボール(24)を支えるための円弧状溝が開設されることを特徴とする請求項4に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項6】
前記スピニングヘッド(12)の各部分の寸法は、以下の関係式を満たし、
【数1】
ここで、θは加工対象の曲面の最大曲率角度であり、Dはボールの直径であり、dは支持片の厚さであり、mはボールとスピニングベースの縁との距離であり、hは支持片の下端とスピニングベースの縁との距離であることを特徴とする請求項5に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項7】
前記移動軌道(433)は環状または半環状であることを特徴とする請求項に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項8】
前記移動軌道(433)は環状または半環状であることを特徴とする請求項2に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の加工装置によって達成されるアーク付加製造-スピニングの複合加工方法であって、
ロボット(43)は移動軌道(433)に沿って移動すると同時に、熱源発生器(11)を駆動して予め設定された加工経路に従って溶融金属を堆積させるステップと、主軸(13)はスピニングヘッド(12)を駆動して熱源発生器(11)に追従させ、かつ熱源発生器(11)の軌跡に沿って移動させ、金属材料がまだ完全に凝固していない時に、スピニングヘッド(12)が回転して溶融金属の堆積箇所を圧延して、結晶粒を微細化し、成形部品の表面を滑らかにするステップとを含むことを特徴とするアーク付加製造-スピニングの複合加工方法。
【請求項10】
前記熱源発生器(11)は溶接ガンであり、加工時に溶接ガンを傾斜させ、傾斜方向は溶接ビードの走行方向であることを特徴とする請求項に記載のアーク付加製造-スピニングの複合加工方法。
【外国語明細書】