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特開2023-36023トレッド測定システムの方法および装置
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  • 特開-トレッド測定システムの方法および装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036023
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】トレッド測定システムの方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01B15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137066
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】63/260703
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/815310
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ピエール フェリクス オーロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】クロード シュヴァイツァー
(72)【発明者】
【氏名】ポーリーヌ モニーク マリー-ルーシー ジスレーヌ デルロイッセ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェイン フルム
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067AA28
2F067BB04
2F067BB12
2F067BB16
2F067BB26
2F067CC11
2F067DD09
2F067EE03
2F067EE04
2F067HH02
2F067HH03
2F067JJ02
2F067KK08
2F067LL02
2F067NN03
2F067PP04
2F067PP05
2F067PP11
2F067RR24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導電層および非伝導層を有するタイヤトレッドすなわちタイヤ部品の各層の厚さを測定する方法および装置を提供する。
【解決手段】上記層の1つ以上を通過する放射ビームまたはパルスを放出する1つ以上のセンサが使用される。放射ビームまたはパルスは、上記層の表面および界面で反射され、1つ以上のセンサの受信デバイスに受信される。反射放射ビームまたはパルスは、各トレッド層の厚さを決定するために使用される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドの厚さを測定する方法において、
導電性コンパウンドで形成された第1のトレッド層と、非導電性コンパウンドで形成された第2のトレッド層とを有するタイヤトレッドを提供する工程と、
前記タイヤトレッドの上方および下方にそれぞれ配置された第1のセンサおよび第2のセンサに対して、前記タイヤトレッドを連続的に搬送する工程であって、前記第1および第2のセンサは、前記タイヤトレッドにそれぞれ第1および第2の放射ビームを放出し、前記第1の放射ビームから前記第1のトレッド層の表面による第1の反射放射ビームを受信して第1の距離d1を決定し、前記第2の放射線ビームから前記第1および第2のトレッド層の界面による第2の反射放射ビームを受信して第2の距離d2を決定し、前記第2の放射ビームから前記第2のトレッド層の表面による第3の反射放射ビームを受信して第2の距離d3を決定するように構成され、前記第1および第2のセンサは、一定の高さDで互いに接続されている、工程と、
前記第1および第2のセンサによりそれぞれ前記第1および第2の放射ビームを放出し、前記第1、第2、および第3の反射放射ビームを受信し、次に、前記一定の高さDから前記距離d1,d2,d3を差し引くことにより前記第1のトレッド層の厚さd4を決定することで、前記第1および第2のトレッド層の連続材料厚さ測定を実行する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1および第2のセンサは、同じセンサまたは異なるセンサであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のセンサは、パルステラヘルツセンサまたはパルス周波数センサであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤトレッドが、非導電性コンパウンドで形成された第3のトレッド層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のセンサは、50~200GHzの周波数範囲を有する低周波数テラヘルツセンサであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のセンサは、50GHz~2.2THzまたは50~400GHzの周波数範囲を有するパルス周波数センサであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2のセンサの一方または両方は、周波数変調連続波テラヘルツセンサであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のセンサからの第1のスペクトルデータが前記第2のセンサからの第2のスペクトルデータに重ね合わされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のセンサは、同一線上にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのトレッド層を有するタイヤトレッドの各トレッド層の深さを測定する装置において、
ブリッジテーブルであって、前記タイヤトレッドが搬送される上面と、前記ブリッジテーブルを支持する複数の支持脚とを有するブリッジテーブルと、
第1のセンサおよび第2のセンサであって、前記第1のセンサは、ステップモータに接続され、前記ステップモータは、前記ブリッジテーブルの前記上面の幅方向に前記第1のセンサを移動させるために、前記ブリッジテーブルの前記上面の上方に位置する上側レールに取り付けられ、前記第1のセンサは、並進支持フレームによって前記第2のセンサに強固に接続され、前記並進支持フレームと前記第2のセンサは、第1のセンサと共に移動する、第1のセンサおよび第2のセンサと、を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
前記第2のセンサは、前記ブリッジテーブルの前記上面の下方に位置していることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記タイヤトレッドが、導電性コンパウンドで形成された第1のトレッド層と、非導電性コンパウンドで形成された第2のトレッド層とを有することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第1および第2のセンサは、前記並進支持フレームによって一定の距離Dだけ離れていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1および第2のセンサの一方または両方は、周波数変調連続波テラヘルツセンサであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記第1および第2のセンサは、同じセンサまたは異なるセンサであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記第1および第2のセンサの一方は、パルステラヘルツセンサであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記第1および第2のセンサの一方は、50~200Hzの周波数範囲を有する低周波数テラヘルツセンサであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記第2のセンサは、50GHz~2.2THzまたは50~400GHzの周波数範囲を有するパルス周波数センサであることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ部品の製造における材料層の厚さを決定するための方法および装置に関し、より詳細には、トレッド層の厚さを決定するための方法および装置に関する。
【0002】
車両タイヤ用のトレッドの製造は、通常、押出機を用いて行われる。トレッドはまた、従来、材料のいくつかの層から形成され、それらは、所望の性能を提供するために異なる材料からなっていてもよい。各トレッド層は、タイヤの均一性および性能のために、均一で一貫した厚さを有することが重要である。トレッド製造中のトレッド層の厚さ測定のためにレーダ技術を使用することが知られている。しかしながら、この技術には、トレッド層に電気抵抗率が低い1つ以上の導電性コンパウンドが含まれる場合、かなりの制限がある。そのような材料がレーダ技術からの放射を吸収し、導電性トレッド層の測定が困難または不可能になる。したがって、この制限を克服する方法および装置が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、第1の態様において、タイヤトレッドの厚さを測定する方法を提供し、その方法は、導電性コンパウンドで形成された第1のトレッド層と、非導電性コンパウンドで形成された第2のトレッド層とを有するタイヤトレッドを提供する工程と、タイヤトレッドの上方および下方にそれぞれ配置された第1のセンサおよび第2のセンサに対して、タイヤトレッドを連続的に搬送する工程であって、第1および第2のセンサは、タイヤトレッドにそれぞれ第1および第2の放射ビームを放出し、第1の放射ビームから第1のトレッド層の表面による第1の反射放射ビームを受信して第1の距離d1を決定し、第2の放射線ビームから第1および第2のトレッド層の界面による第2の反射放射ビームを受信して第2の距離d2を決定し、第2の放射ビームから第2のトレッド層の表面による第3の反射放射ビームを受信して第2の距離d3を決定するように構成され、第1および第2のセンサは、一定の高さDで互いに接続されている、工程と、第1および第2のセンサによりそれぞれ第1および第2の放射ビームを放出し、第1、第2、および第3の反射放射ビームを受信し、次に、一定の高さDから距離d1,d2,d3を差し引くことにより第1のトレッド層の厚さd4を決定することで、第1および第2のトレッド層の連続材料厚さ測定を実行する工程と、を含んでいる。
【0004】
本発明は、第2の態様において、少なくとも2つのトレッド層を有するタイヤトレッドの各トレッド層の深さを測定する装置を提供し、その装置は、ブリッジテーブルであって、タイヤトレッドが搬送される上面と、ブリッジテーブルを支持する複数の支持脚とを有するブリッジテーブルと、第1のセンサおよび第2のセンサであって、第1のセンサは、ステップモータに接続され、ステップモータは、ブリッジテーブルの上面の幅方向に第1のセンサを移動させるために、ブリッジテーブルの上面の上方に位置する上側レールに取り付けられ、第1のセンサは、並進支持フレームによって第2のセンサに強固に接続され、並進支持フレームと第2のセンサは、第1のセンサと共に移動する、第1のセンサおよび第2のセンサと、を有している。
【0005】
(定義)
「プライ」は、ゴムで被覆された平行なコードの連続層を意味する。
【0006】
「半径方向の」および「半径方向に」は、タイヤの回転軸に向かって放射状に延びる方向、または回転軸から離れるように放射状に延びる方向を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明によるテラヘルツ放射を受ける非導電性トレッド層を有するタイヤトレッドの概略断面図である。
図1B】本発明によるテラヘルツ放射を受ける導電性外側トレッド層を有するタイヤトレッドの概略断面図である。
図2】本発明による両面微分測定を受ける導電性外側トレッド層を有するタイヤトレッドを示す概略図である。
図3】コンベヤベルトシステム上を連続的に搬送される連続したタイヤトレッドすなわちタイヤ部品と連続測定システムを示す図である。
図4】ブリッジテーブルと連続測定システムを示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1Aは、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品(サイドウォール、プライ複合材など)の各層の厚さを測定する測定システム10を示しているが、各層は、異なるコンパウンドからなっていてもよい。典型的なタイヤトレッドは、所望の転がり抵抗および他の性能特性を提供するために、コンパウンドの異なる層で形成されている。図1Aは、典型的なタイヤトレッドを示しており、それは、ベーストレッドコンパウンドで形成されたベーストレッド層20と、第1のトレッドコンパウンドで形成された中間トレッド層30と、第2のトレッドコンパウンドから形成された外側トレッド層40とを有している。ベーストレッドコンパウンド、第1のトレッドコンパウンド、および第2のトレッドコンパウンドは、それぞれ非導電性である。
【0009】
図1Aに示すように、各トレッド層20,30,40の厚さを測定するために、タイヤトレッドの上方(または下方)にテラヘルツ(THz)センサ50を配置することができる。テラヘルツセンサ50は、THz周波数範囲の連続した電磁放射ビームまたはパルスを放出する放射線源を有している。簡単のために、残りの開示では、「ビーム」という用語は、ビームまたはパルスを含むものとする。テラヘルツセンサ50は、空気とトレッド層40,30,20とを通過する高周波入射放射ビーム52を連続的に放出する。入射放射ビーム52は、100GHz~10THzの周波数範囲にあり、より好ましくは100~400GHzの周波数範囲にある。入射放射ビームの反射が起こるのは、外側トレッド層40の半径方向外側面41と、外側トレッド層40と中間トレッド層30との界面31と、中間トレッド層30とベーストレッド層20との界面21と、ベーストレッド層20の半径方向内側面11とである。したがって、入射放射ビーム52は、外側トレッド層40の半径方向外側面41で反射され、それは、反射放射ビーム42として示されている。同様に、入射放射ビーム52は、外側トレッド層40と中間トレッド層30との界面31で反射され、それは、反射放射ビーム32として示されている。また、入射放射ビーム52は、中間トレッド層30とベーストレッド層20との界面21で反射され、それは、反射放射ビーム22として示されている。最後に、入射放射ビーム52は、ベーストレッド層20の半径方向内側面11で反射され、それは、反射放射ビーム12として示されている。
【0010】
テラヘルツセンサ50は、反射放射ビーム42,32,22,12を受信する受信デバイスを含み、それにより、外側トレッド層40の半径方向外側面41、トレッド界面31,21、およびベーストレッド層20の半径方向内側面11のそれぞれからテラヘルツセンサ50までの距離が測定される。そして、各トレッド層20,30,40の厚さを計算することができる。
【0011】
各反射放射ビーム42,32,22,12を受信するテラヘルツセンサ50の受信デバイスは、時間領域形式または周波数領域形式でデータを記録する。反射間の時間は、飛行時間すなわちTOFであり、トレッド層の厚さを計算するために使用される。トレッド層の厚さを計算する式は、
厚さ=(飛行時間)/2*c/RI
であり、ここで、cは光速、RIは各トレッド層の屈折率である。
【0012】
図1Bは、図1Aと同様のタイヤトレッドの各層の厚さを測定する測定システム10を示しているが、ここでは、導電性コンパウンドで形成された外側トレッド層60を有するか、または、Keithley Resistivity Chamberを使用して決定された、10E9 Ohm*cm未満の体積抵抗率を有するタイヤトレッドが含まれている。図1Bに示すように、テラヘルツセンサ50は、空気と、外側トレッド層60の半径方向外側面61と、外側トレッド層60と、中間トレッド層30と、ベーストレッド層20とを通過する入射放射ビーム52を放出する。入射放射ビーム52は、外側トレッド層60の半径方向外側面61で反射され、それは、反射放射ビーム42として示されている。そして、反射放射ビーム42は、テラヘルツセンサ50の受信デバイスに受信される。しかしながら、トレッドが導電性外側トレッド層60を有しているため、反射放射ビーム32,22,21は、外側トレッド層60に吸収される。したがって、反射放射ビーム32,22,12は、テラヘルツセンサ50の受信デバイスには受信されない。その結果、テラヘルツセンサ50から他の表面および界面31,21,11までの距離を決定することができず、最終的にはトレッド層60,30,20の厚さを決定することができない。この問題を克服するために、以下の方法および装置を利用することができる。
【0013】
図2は、導電性外側層を有するタイヤトレッドすなわちタイヤ部品の各層の厚さを決定するための、デュアルセンサ測定システム100を用いた両面差動測定方法を示している。
【0014】
具体的には、図2に示すように、タイヤトレッドは、導電性コンパウンドで形成された外側トレッド層160、または低放射率を有する層と、非導電性コンパウンドで形成された中間トレッド層130と、非導電性コンパウンドで形成されたベーストレッド層120とを含んでいる。上側テラヘルツセンサ150は、THz周波数範囲の連続した電磁放射ビームを放出する放射線源を有している。上側テラヘルツセンサ150は、空気と、外側トレッド層160と、中間トレッド層130と、ベーストレッド層120とを通過する入射放射ビームまたはパルス152を放出する。入射放射ビーム152は、外側トレッド層160の半径方向外側面161で反射され、それは、反射放射ビーム162として示されている。反射放射ビーム162が上側テラヘルツセンサ150の受信デバイスに受信され、上側テラヘルツセンサ150から半径方向外面161までの距離d11が決定される。
【0015】
入射放射ビーム152も、外側トレッド層160と中間トレッド層130との界面141と、中間トレッド層130とベーストレッド層120との界面131と、ベーストレッド層120の半径方向内側面121とで反射される。しかしながら、このような反射放射ビームはそれぞれ、導電性外側トレッド層160に吸収される。その結果、上側テラヘルツセンサ150から各界面および表面141,131,121までの距離を決定することができず、最終的には外側トレッド層160の厚さd12を決定することができない。
【0016】
外側トレッド層160の厚さd12を決定するために、上側テラヘルツセンサ150と共に、下側テラヘルツセンサ155が使用される。下側テラヘルツセンサ155も、THz周波数範囲の連続した電磁放射ビームを放出する放射線源を有している。下側センサ155は、空気と、ベーストレッド層120の半径方向内側面121と、各トレッド層120,130,160とを通過する入射放射ビームまたはパルス166を放出する。入射放射ビーム166は、外側トレッド層160の半径方向外側面161で反射されるが、導電性外側トレッド層160に吸収される。トレッド層120,130が非導電性であるため、入射放射ビーム166の反射は、トレッド層120,130に対して可能である。入射放射ビーム166は、ベーストレッド層120の半径方向内側面121で反射され、それは、反射放射ビーム163として示されている。反射放射ビーム163が下側テラヘルツセンサ155の受信デバイスに受信され、下側テラヘルツセンサ155から半径方向内面121までの距離d21が決定される。また、入射放射ビーム166は、中間トレッド層130とベーストレッド層120との界面131で反射され、それは、反射放射ビーム164として示されている。反射放射ビーム164が下側テラヘルツセンサ155の受信デバイスに受信され、下側テラヘルツセンサ155から中間トレッド層130とベーストレッド層120との界面131までの距離d22が決定される。さらに、入射放射ビーム166は、中間トレッド層130と外側トレッド層160との界面141で反射され、それは、反射放射ビーム165として示されている。反射放射ビーム165が下側テラヘルツセンサ155の受信デバイスに受信され、下側テラヘルツセンサ155から中間トレッド層130と外側トレッド層160との界面141までの距離d23が決定される。
【0017】
そして、外側トレッド層160の厚さd12は、以下のように決定することができる。
d12=D-(d11+d21+d22+d23)
ここで、Dはセンサ間の一定の距離すなわち高さである。
【0018】
図3は、連続測定システム300が利用可能な典型的なシナリオを示している。タイヤトレッドすなわちタイヤ部品310は、押出システム320で連続的に形成された後、連続測定システム300までコンベヤベルトシステム330上を連続的に搬送される。
【0019】
図4に示すように、連続測定システム400は、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品410を支持する上面442を有するブリッジテーブル440を含んでいる。ブリッジテーブル440は、複数の支持脚443を含んでいる。測定システム400は、上側テラヘルツセンサ450と下側テラヘルツセンサ455をさらに含んでいる。上側テラヘルツセンサ450は、ステップモータ452に取り付けられている。ステップモータ452は、ブリッジテーブル440の上面442の上方に位置するCフレームすなわち上側レール454に任意に取り付けられている。任意の上側レール454を含む例では、上側レール454は、ブリッジテーブル440の幅方向に取り付けられ、したがって、ブリッジテーブル440の長手方向軸に垂直に取り付けられている。このため、上側テラヘルツセンサ450は、ステップモータ452によって、ブリッジテーブル440の幅方向、したがって、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品410の幅方向に移動し、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品410の各層の各表面および界面の連続的な深さ測定を行うことができる。
【0020】
下側テラヘルツセンサ455は、並進支持フレーム460により上側テラヘルツセンサ450に固定的に接続され、それにより、上側テラヘルツセンサ450と下側テラヘルツセンサ455は、距離Dだけ互いに離れた一定の高さを維持し、互いに同期して移動する。上側および下側テラヘルツセンサ450,455は、並進支持フレーム460に取り付けられている。並進支持フレーム460は、上側テラヘルツセンサ450に接続された上側フレーム部材462と、下側テラヘルツセンサ455に接続された下側フレーム部材464と、上側および下側フレーム部材462,464に強固に接続された対向する2つのサイド部材466,468とを有している。並進支持フレーム460は、開放内部すなわち窓部470を有し、それはブリッジテーブル440の一部を囲むように配置され、それにより、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品410は、上側および下側センサ450,455が測定を行う間、窓部470を自由に通過することができる。並進支持フレーム460と上側および下側テラヘルツセンサ450,455は、ステップモータ452によって同時に移動する。下側テラヘルツセンサ455は、安定性を提供するために、支持部材461によって下側支持レール456に任意に接続されている。
【0021】
各テラヘルツセンサ450,455は、THz周波数範囲の電磁放射ビームまたはパルスを放出する放射線源と、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品410の層による反射放射線を受信する受信デバイスとを有している。電磁放射ビームまたはパルスは、100GHz~10THzのテラヘルツ周波数範囲にあり、より好ましくは100~400GHzの周波数範囲にある。
【0022】
図5は、図2に示す方法と同様の、デュアルセンサシステム600を用いた両面差動測定方法を示している。図5は、非導電性外側トレッドキャップ層510と、任意の非導電性内側トレッドキャップ層520と、導電性ベーストレッド層530と、任意の導電性クッションガム層540とを有するタイヤトレッドを示している。トレッド500が導電性ベーストレッド層530と任意の導電性クッションガム層540を含んでいるため、トレッド層510,520,530,540の厚さを決定するために、上側センサ605と下側センサ610を有するデュアルセンサ測定システム600が必要になる。
【0023】
いくつかの例では、下側センサ610は低周波数センサであってもよい。下側センサ610は、導電性ベーストレッド層530の深さと、任意の導電性クッションガム層540の深さを測定する。低周波数センサが使用される場合、好ましい周波数範囲は、50~200GHzである。下側センサ610として、パルステラヘルツレーダを用いてもよい。パルスセンサは、50GHz~2.2THzまたは50~400GHzの周波数範囲を有していてもよい。
【0024】
任意のクッションガム層540が含まれない例では、下側センサ610は、空気と、ベーストレッド層530の半径方向内側面531と、ベーストレッド層530とを通過する入射放射ビーム511を放出する。入射放射ビーム511は、ベーストレッド層530の半径方向内側面531で反射され、反射放射ビーム513として示される。反射放射ビーム513が下側センサ610の受信デバイスに受信され、下側センサ610からベーストレッド層530の半径方向内側面531までの距離が決定される。
【0025】
任意のクッションガム層540が含まれる例では、下側センサ610は、空気と、クッションガム層540の半径方向内側面541、クッションガム層540、およびベーストレッド層530を通って移動する入射放射ビーム511を放出する。入射放射ビーム511は、クッションガム層540の半径方向内側面541で反射され、それは、反射放射ビーム512として示されている。反射放射ビーム512が下側センサ610の受信デバイスに受信され、下側センサ610からクッションガム層540の半径方向内側面541までの距離が決定される。
【0026】
任意の内側トレッドキャップ層520が含まれない例では、下側センサは、空気と、(含まれる場合には)任意のクッションガム層540の半径方向内側面541と、(含まれる場合には)任意のクッションガム層540と、ベーストレッド層530とを通過する入射放射ビーム511を放出する。下側センサ610からの入射放射ビーム511は、ベーストレッド層530と外側トレッド層510との界面522で反射され、それは、反射放射ビーム514として示されている。反射放射ビーム514が下側センサ610の受信デバイスに受信され、下側センサ610からベーストレッド層530と外側トレッド層510の界面522までの距離が決定される。
【0027】
さらに、任意の内側トレッドキャップ層520が含まれる例では、下側センサは、空気と、(含まれる場合には)任意のクッションガム層540の半径方向内側面541と、(含まれる場合には)任意のクッションガム層540と、ベーストレッド層530とを通過する入射放射ビーム511を放出する。下側センサ610からの入射放射ビーム511は、ベーストレッド層530と内側トレッドキャップ層520との界面522で反射され、それは、反射放射ビーム514として示されている。これらの測定値を使用して、各導電性トレッド層530,540の厚さを決定することができる。
【0028】
いくつかの例では、上側センサ605は、下側センサ610と同じであってもよい。他の例では、上側センサ605として、周波数変調連続波(FMCW)テラヘルツレーダが使用され、非導電性外側トレッドキャップ層510と任意の非導電性内側トレッドキャップ層520とが測定される。FMCW周波数は、90GHzの帯域幅を有する100~300GHzの範囲であってもよい。FMCWレーダが使用される場合、各界面または層までの距離は、以下によって与えられる。
【数1】
c=光速
RI=屈折率
Δf=送信周波数と受信周波数との差
df/dt=周波数変化率
【0029】
任意の内側トレッドキャップ層520が含まれない例では、上側センサ605は、空気と、外側トレッドキャップ層510の半径方向外側面509と、外側トレッドキャップ層510とを通過する入射放射ビーム501を放出する。入射放射ビーム501は、外側トレッドキャップ層510の半径方向外側面509で反射され、それは、反射放射ビーム502として示されている。入射放射ビーム501は、外側トレッドキャップ層510とベーストレッド層530との界面521からも反射され、それは、反射放射ビーム504として示されている。反射放射ビーム502,504が上側センサ605の受信デバイスに受信され、上側センサ605から外側トレッドキャップ層510の半径方向外側面509までの距離と、上側センサ605から外側トレッドキャップ層510とベーストレッド層530との界面521までの距離が決定される。
【0030】
任意の内側トレッドキャップ層520が含まれる例では、上側センサ605は、空気と、外側トレッドキャップ層510の半径方向外側面509と、外側トレッドキャップ層510と、内側トレッドキャップ層520とを通過する入射放射ビーム501を放出する。入射放射ビーム501は、外側トレッドキャップ層510と内側トレッドキャップ層520との界面521で反射され、それは、反射放射ビーム504として示されている。さらに、入射放射ビーム501は、内側トレッドキャップ層520とベーストレッド層530との界面522で反射され、それは、反射放射ビーム506として示されている。これらの測定値を使用して、各トレッド層510,520の厚さを決定することができる。
【0031】
屈折率RIの差が3%未満とわずかであるためにトレッド層の界面を見ることが難しい場合には、上側および下側センサ605,610を用い、上側および下側センサ605,610から収集されたスペクトルデータを重ね合わせることで、界面をより良く「見る」ことができる。
【0032】
測定システム600は、上側および下側センサ605,610に通信可能に結合された電子制御システムと、上側センサ605に接続されたステップモータとをさらに含んでいてもよい。電子制御システムは、本明細書に記載の様々な制御を実行するために、複数のセンサおよびアクチュエータと共に、プロセッサとメモリを含んでいてもよい。一例では、制御システムのモジュールとして、評価デバイスが含まれる。さらに、制御システムは、評価デバイスで生成されたタイヤに関するデータを表示するディスプレイを含んでいてもよい。例えば、以下で説明する放射パルスをディスプレイ上に表示することができる。
【0033】
上述した測定は、励起としてTHzパルスまたは正弦波などのTHz波の両方で実行することができる。パルスシステムでは、時間領域分光計について言及し、波動システムでは、周波数領域分光計について言及する。信号の振幅と移動時間の両方を検出する装置だけでなく、振幅だけを決定する装置もある。
【0034】
フーリエ変換によって、測定された時間信号を周波数領域に変換することができる。振幅は、振幅スペクトルの形態であるが、周波数依存振幅の形態で周波数領域において復元され、移動時間は、位相スペクトルの形態であるが、周波数依存位相の形態で復元される。スペクトル分析では、いわゆる伝達関数、すなわち、サンプルスペクトルを基準スペクトルで割った商を決定することができる。伝達関数から、ゴム試料の周波数依存屈折率を決定することができる。そのパラメータは、ゴム試料に特徴的な材料変数である。ここでの屈折率は、ゴム試料が引き起こした光学密度または時間遅延の代わりとなるものである。屈折率が既知の場合には、層の厚さを決定するのに1つのゴム試料測定で十分である。
【0035】
本明細書で説明したタイヤトレッドすなわちタイヤ部品の例のいずれかに関しても、タイヤトレッドすなわちタイヤ部品は、説明した層構成に限定されない。例えば、タイヤトレッドは、ベーストレッド層と、第1の外側トレッド層コンパウンドおよび第2の外側層トレッドコンパウンドの両方を含む外側トレッド層とを有していてもよい。第1の外側トレッド層コンパウンドおよび第2の外側層トレッドコンパウンドは、導電性と非導電性のどちらであってもよい。第1および第2の外側トレッド層コンパウンドは、第1の外側トレッド層コンパウンドが外側トレッド層の軸方向幅の第1の部分を構成し、第2の外側トレッド層コンパウンドが外側トレッド層の軸方向幅の第2の部分を構成するように、外側トレッド層の軸方向幅の一部を構成してもよい。第1および第2の外側トレッド層コンパウンドは、第1および第2の外側トレッド層コンパウンドが隣接する界面を有している。
【0036】
また、第1および第2の外側トレッド層コンパウンドの一方は、外側トレッド層がその軸方向幅に沿って第1および第2の外側トレッド層コンパウンドが交互に現れるように、外側トレッド層の軸方向幅の第3の部分を構成してもよい。一例では、第1の外側トレッド層コンパウンドが、外側トレッド層の軸方向幅の第1の部分を構成し、第2の外側トレッド層コンパウンドが、外側トレッド層の軸方向幅の第2の部分を構成し、第1の外側トレッド層コンパウンドが、外側トレッド層の軸方向幅の第3の部分を構成する。第1および第2の外側トレッド層コンパウンドは、第1および第2の部分が隣接する第1の界面を有し、第2および第1の外側トレッド層コンパウンドは、第2および第3の部分が隣接する第2の界面を有している。センサまたはデュアルセンサ測定システムを使用して、本明細書で説明したベーストレッド層および外側トレッド層の厚さを測定してもよい。
【0037】
本明細書に記載された本発明の説明を考慮すると、本発明の変形例が可能である。本発明を例示する目的で、特定の代表的な実施形態および詳細を示しているが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることが明らかであろう。したがって、上述した特定の実施形態において、以下の添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の対象となる全範囲内で行う変更が可能であることを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】