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特開2023-36038ウェーハ上の半導体部品のポジションを復元するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036038
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ウェーハ上の半導体部品のポジションを復元するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137602
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10 2021 209 608.5
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュタイマー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ゼバスティアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴェアナー
(72)【発明者】
【氏名】メユール バンサル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル ヤヌス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パトリック リンツ
(72)【発明者】
【氏名】チャバ ドモコス
(57)【要約】
【課題】本発明は、同一の半導体素子の異なるテストのテスト結果を結び付けるために、マッピングルールを求めるための方法に関し、その際に半導体素子製造時の歩留まり損失が考慮される。
【解決手段】本方法は、モデル、例えば線形回帰モデルを調整し、テストデータを予測するためにこのモデルを使用するステップ(S23)と、予測に基づきコスト行列を計算するステップ(S24)と、ハンガリアンアルゴリズムをこのコスト行列に適用して、新たなマッピングルールを取得するステップ(S25)と、これらのステップを何度も繰り返すステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変数から成る第1の集合に属する複数の第1の変数に、第2の変数から成る第2の集合に属する第2の変数をマッピングするマッピングルールを求めるための方法であって、
前記マッピングルールを初期化するステップ(S21a)と、
前記第1の集合及び前記第2の集合を準備するステップ(S21a)であって、前記第1の集合は、前記第2の集合よりも多くの変数を有する、ステップ(S21a)と、
複数の第1の変数をランダムに選択するステップ(S21b)であって、選択される前記第1の変数の個数は、少なくとも以下の個数に相当する、即ち、当該個数の分だけ前記第1の集合が前記第2の集合よりも多い変数を有する、ステップ(S21b)と、
ステップa)~d)を繰り返し実施するステップ、即ち、
a)機械学習システムが、選択された前記第1の変数を含まない前記第1の集合の前記第1の変数に依存して、前記マッピングルールに従ってそれぞれマッピングされた前記第2の変数を求めるように、前記機械学習システムをトレーニングするステップ(S23)と、
b)コスト行列を求めるステップ(S24)であって、前記コスト行列のエントリは、前記第1の集合の前記第1の変数及び前記第2の集合の前記第2の変数に依存して、前記機械学習システムの予測間の距離を表す、ステップ(S24)と、
c)前記マッピングルールに従った前記第2の変数に対する前記第1の変数のマッピングが、前記コスト行列の前記エントリに基づき、最小の総コストをもたらすように、前記コスト行列に依存して前記マッピングルールを最適化するステップ(S25)と、
d)最適化された前記マッピングルールによっても前記第2の変数のうちの1つにはマッピングされない第1の変数を選択するステップ(S26)と、
を繰り返し実施するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記マッピングルールを最適化するステップ(S25)を、ハンガリアンアルゴリズム又はグリーディ実装法を用いて行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コスト行列の列及び行の個数は、前記第1の変数及び前記第2の変数の個数に等しく、前記コスト行列を求めるステップ(S24)において、それぞれすべての第2の変数に対するすべての第1の変数についての前記機械学習システムの予測間の距離を求める、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機械学習システムは、回帰モデル(53)であり、前記回帰モデル(53)は、前記第1の変数と当該回帰モデル(53)のパラメータとに依存して前記第2の変数を求める、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の変数及び前記第2の変数は、それぞれ異なる製造プロセスステップに従って製品が製造される際の製品を表し、前記マッピングルールは、前記第1の集合及び前記第2の集合の変数のいずれが同一の製品を表すのかを表し、
前記ランダムに選択するステップ(S21b)においてランダムに選択される前記第1の変数の個数、又は、前記選択するステップ(S26)において選択される前記第1の変数の個数は、製造時の歩留まり損失(英語ではyield)に相当する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の変数は、ウェーハ上の半導体素子の第1のテスト結果であり、前記第2の変数は、前記ウェーハから前記半導体素子が切り出された後の前記半導体素子の第2のテスト結果であり、前記マッピングルールは、いずれの第1及び第2のテスト結果が同一の半導体素子に由来するものであるのかを表す、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のテスト結果は、ウェーハレベルテスト結果であり、前記第2のテスト結果は、ファイナルテスト結果である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体素子は、複数の異なるウェーハ上において製造されたものである、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マッピングルールに依存して、いずれの第2のテスト結果がいずれの第1のテスト結果に属するかを求め、次いで、属する第1のテスト結果に依存して、前記半導体素子がウェーハ内においていずれのポジションに配置されていたのかを求め、かつ、第2のテスト結果が存在しない半導体素子がいずれのポジションに配置されていたのかを求める、
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体素子は、パワーMOSFET(英語では“power MOSFET”)である、
請求項6乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている装置(30)。
【請求項12】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実施させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品をウェーハから切り出した後に、それらの半導体部品が載置されていたウェーハ上の半導体部品のポジションを復元するための方法、及び、この方法を実施するように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
(特にパワーMOSの)半導体部品のパッケージングプロセスの場合においては、半導体部品の元のウェーハに対するその半導体部品のトレーサビリティ、及び、ウェーハ上におけるその半導体部品の元のポジションが失われる。具体的には、このことは、一旦、ウェーハを切断又はダイシングし(英語では“diced”=半導体部品をウェーハから分離するプロセス)、パッケージングしたならば、ウェーハ上の半導体部品各々のポジションをもはや入手することができない、ということを意味する。パッケージングプロセスのベンダは、ファイナルテスト(英語では“Final Test”=パッケージング後の半導体部品のテストプロセス)におけるばらばらの半導体部品と、ウェーハレベルテスト(パッケージング前のテストプロセス)におけるウェーハ上の半導体部品との間の少なくとも大雑把なマッチングを提供することができる。しかしながら、これによっても依然として、複数のウェーハに対してマッピング不可能な数千の半導体部品が生じることとなる。これは、実質的に組合せの問題であるので、この課題の解決手段の複雑さは階乗的なものとなり、その理由は、半導体部品をそれらが正しい順序と一致するように配置する、nの階乗の多数の異なる可能性が存在するからであり、ここで、nは、半導体部品の個数である。
【0003】
ASIC半導体部品については、この組合せ問題についての解決手段が存在する。このために、ウェーハレベルテスト中に、一義的な識別子がASIC半導体部品のメモリ内に記憶され、この識別子によって、パッケージング後にファイナルテストをウェーハレベルテストにマッピングすることができる。しかしながら、パワーMOSのような半導体部品の場合には、メモリが欠如しているため、このことは不可能である。
【0004】
ファイナルテストとウェーハレベルテストとのマッチングにおいてさらに難しい課題は、個々の半導体部品がウェーハレベルテスト後に選り分けられ、その際にも、具体的にいずれの半導体部品が選り分けられたのかの情報が失われるということである。このため、組合せの問題が複雑になる。それというのも、このとき、ファイナルテスト結果に対して、属する可能性のあるさらに多くのウェーハレベルテストが存在し、いずれのウェーハレベルテストが対応するファイナルテスト結果を有していないのかも判定しなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の利点
独立請求項1の特徴を備えた本発明が有する利点とは、本発明によれば、ウェーハレベルテストの結果に関係する半導体部品と、ファイナルテスト(英語ではFinal Test)の結果に関係するパッケージングされた半導体部品との間において、可能性のあるマッピングを求めることができ、その際に、一義的な識別子等のような事後的に付け加えられるメタデータがなくても十分である、ということである。
【0006】
本発明が有する利点とは、さらに、製造に際して発生する可能性のある歩留まり損失が考慮される、ということである。これによって実現されることは、すべての半導体部品をテストにマッピングするわけではない、ということである。歩留まり損失及び結果のマッピングに基づき、ウェーハ上のいずれのポジションにおいて歩留まり損失が発生したのかの推定を可能にする付加的なトレーサビリティ情報を取得することができる。これに依存して、改善されたプロセスコントロール(例えば、欠陥部分の原因解析)が可能となる。
【0007】
他の独立請求項には、本発明のさらに他の態様が記載されている。従属請求項には有利な発展形態が記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の開示
第1の態様によれば、本発明は、第1の変数から成る第1の集合に属する複数の変数に、第2の変数から成る第2の集合に属する変数をそれぞれマッピングするマッピングルールを求めるための、特にコンピュータ実装による方法に関する。第1の集合は、第2の集合よりも多くの変数を含む。マッピングルールは、一義的な手法により、複数の第1の変数に第2の変数をマッピングすることができ、即ち、第1の変数に最大でも1つの第2の変数が、マッピングルールによってマッピングされ、好ましくは、その逆のようにもマッピングされる。換言すれば、マッピングルールは、第1の変数の部分集合に第2の変数をマッピングするように構成されている。好ましくは、第1の変数の部分集合の変数の個数は、第2の集合の変数の個数と一致している。次いで、マッピングルールは、第2の変数各々に第1の変数をマッピングし、その際、第1の集合は第2の集合よりも多い変数を有することによって、いくつかの第1の変数は第2の変数にマッピングされない。ただし、部分集合が第2の集合よりも小さいということもあり得る。
【0009】
ここで、集合とは、個別の変数がまとめられた形態のことであると解することができる。好ましくは、第1の集合及び第2の集合は、共通の変数を有していないそれぞれ異なる集合である。好ましくは、第1の集合及び第2の集合の変数に、それぞれ1つの添字がマッピングされている。第1の集合及び第2の集合のすべての添字は、添字集合と捉えることができる。即ち、第1の集合又は第2の集合の変数に対し通し番号で添字を付す要素を含む集合であると捉えることができる。この場合に、マッピングルールは、第1の添字集合に、第2の添字集合に属するそれぞれ1つの添字をマッピングする。従って、マッピングルールは、いずれの第1の変数がいずれの第2の変数に属するのかを記述し、好ましくは、逆の場合も記述する。マッピングルールは、リスト又はテーブルなどとして設けておくことができる。
【0010】
この方法は、マッピングルールを初期化するステップと、第1の集合及び第2の集合を準備するステップとから始まり、ここで、第1の集合は、第2の集合よりも多くの変数を有する。初期マッピングルールは、ランダムに選択することができ、又は、恒等マッピングとして選択することができる。好ましくは、マッピングルールは、以下のように初期化される。即ち、マッピングルールがそのマッピングにおいて、すべての第2の変数を考慮するように、つまり、第2の変数が存在するのと同等の量の第1の変数だけに第2の変数がマッピングされるように、又は、すべての第2の変数に第1の変数がマッピングされるように、初期化される。代案として、他の初期マッピングルールを考えることができ、例えば、予め設定された既に部分的に正しいマッピングを考えることができる。
【0011】
次いで、複数の第1の変数をランダムに選択するステップが続き、この場合、選択される第1の変数の個数は、少なくとも以下の個数に等しく相当し、即ち、この個数の分だけ第1の集合が第2の集合よりも多い変数を有する。このステップをコンピュータによって実施する場合には、擬似乱数発生器によってランダムな選択を行うことができる。即ち、一般的に、ランダムな選択は、第1の変数のうちの1つが優先されることなく行われる。ただし、例えば、特定の変数が第1の集合の残余の変数に関して見ると異常なものであるといった理由によって、それらの変数をより高い確率で選択する、ということも考えられる。
【0012】
これに続き、以下に説明するステップa)~e)が繰り返し実施される。この反復を、予め設定された最大反復回数だけ実施することができ、又は、中断判定基準を定義することができ、ここで、中断判定基準が満たされた場合には、反復が中断される。中断判定基準は、例えば、マッピングルールの最小変化である。
【0013】
a)データセットを作成するステップであって、このデータセットは、現在選択されている第1の変数を含まない第1の変数と、マッピングルールに従ってこれらの第1の変数にそれぞれマッピングされた第2の変数とを有する、ステップである。現在選択されている変数は、ステップa)~e)を前回実施したときに選択された第1の変数であり、又は、これらのステップの実施が初めて行われるときには、現在選択されている変数は、ランダムに選択された第1の変数である。
【0014】
このデータセットをトレーニングデータセットと称することもでき、この場合、マッピングされた第2の変数は、第1の変数のいわゆる「ラベル」である。ここで留意されたいことは、このステップを任意選択肢とすることができるという点であり、その理由は、このデータセットを使用する後続のステップは、実質的に、このデータセット又は現在のマッピングルールのいずれかにより提供可能な、第1の変数と第2の変数との間の現在のマッピングルールの情報しか必要としないからである。現在のマッピングルールは、ステップa)~e)の現在の反復において存在しているマッピングルールであり、即ち、データセットの最後の作成が実施されたときに用いられたマッピングルールである。
【0015】
b)機械学習システムが第1の変数に依存して、データセットのそれぞれマッピングされた第2の変数を求めるように、機械学習システムをトレーニングするステップである。ここで、トレーニングとは、機械学習システムのパラメータが調整され、それによって、機械学習システムの求められた予測が、データセットの第2の変数(「ラベル」)に可能な限り近づくようになる、ということであると解することができる。コスト関数に関して最適化を行うことができる。コスト関数は、好ましくは、機械学習システムの出力とラベルとの間の数学的差分を表す。最適化は、好ましくは、勾配降下法によって実施される。機械学習システムは、1つ又は複数の決定木(英語ではdecision tree)、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシンなどとすることができる。トレーニングしても機械学習システムのそれ以上の改善がごくわずかでしかないようになるまで、即ち、第2の中断判定基準が満たされた状態になるまで、トレーニングを実施することができる。
【0016】
c)コスト行列を求めるステップであって、コスト行列のエントリは、機械学習システムの予測と、マッピングルールに従った第2の変数との間の距離を表し、特に、機械学習システムの予測と第2の集合のすべての変数との間の距離を表す、ステップである。この距離は、Lノルムを用いて求めることができる。他の距離尺度も考えられる。コスト行列の構造は、以下のようにすることができる。即ち、それぞれ第1の変数又は第1の変数に依存する機械学習システムの予測と、第2の変数とに、行と列とがマッピングされているような構造にすることができ、ここで、エントリは、行及び列の個々の対応する変数間の距離を表す。
【0017】
d)マッピングルールがコスト行列のエントリに基づき最小の総コストをもたらすように、コスト行列に依存してマッピングルールを最適化するステップである。総コストは、コスト行列からの現在のマッピングルールに従って第2の集合に対する第1の集合の変数のマッピングを実行する際に必要とされる、コスト行列のエントリの合計に相当する。換言すれば、マッピングルールに依存してコスト行列から選択されるエントリについて合計が最適化され、特に最小化される。エントリは、マッピングルールに依存して以下のように選択されることに留意されたい。即ち、マッピングルールに従って互いにマッピングされている第1の変数及び第2の変数にマッピングされている、コスト行列の個々の列及び行のエントリが、マッピングルールに従って選択される。
【0018】
e)最適化されたマッピングルールによっても第2の変数のうちの1つにはマッピングされない第1の変数を選択するステップである。好ましくは、選択された第1の変数は、リストに格納され、このリストは、ステップa)~e)が新たに実施されるたびに更新される。
【0019】
ステップd)の最後の反復の際に求められたマッピングルールは、任意選択肢のステップにおいて出力される最終的なマッピングルールである。同様に、例えば、いずれの第1の変数が対応する第2の変数を有していないのかを求める目的で、ステップe)の最後の反復において選択された第1の変数を出力することができる。
【0020】
これらの変数は、例えば、時系列のようなスカラ若しくはベクトルとすることができ、特にセンサによって検出することができ、又は、間接的に求められたセンサデータとすることができる。好ましくは、第1及び第2の変数は、複数の対象物のうちそれぞれ1つの対象物において実施された1つの測定又は複数の異なる測定からの、それぞれ1つの測定結果又は複数の測定結果である。即ち、変数各々は、複数の対象物のうちの1つにマッピングされている。データセットを作成するステップにおいて、第2の変数について、複数の測定結果のうち予め設定可能な個数の測定結果だけを使用することも可能である。マッピングルールは、いずれの第1の変数及び第2の変数が同一の対象物の測定結果であるかを示すことができる。特に好ましくは、第1の時点において、第1の変数のために対象物の少なくとも1つの測定が実施されており、第2の時点において、第2の変数のための測定が実施されており、ここで、第2の時点は、第1の時点よりも後に位置する。対象物に対し修正又は変更が加えられた後に、第2の時点を定めることができる。種々の測定結果の個数の差は、対象物の測定プロセスにおける、例えば選り分けなどによるそれらの損失とすることができる。
【0021】
ここで提案されることは、マッピングルールの最適化を、所定のコスト行列のもとでコスト最小化のためのアルゴリズムを用いて行うことである。ここで想定されることは、例えば、コスト行列に適用されるハンガリアンアルゴリズムを用いて最適化を行う、ということである。ハンガリアンアルゴリズム(英語ではHungarian method)は、Kuhn-Munkresアルゴリズムとも称されるが、重み付けられた割当問題を解決するためのアルゴリズムである。代案として、アルゴリズムのグリーディ実装法をコスト最小化のために使用することもできる。
【0022】
さらに提案されることは、機械学習システムは回帰モデルであり、この回帰モデルは、第1の変数と回帰モデルのパラメータとに依存して第2の変数を求める、ということであり、その際に、トレーニングにおいて回帰モデルのパラメータが調整される。
【0023】
回帰は、従属変数(しばしば被説明変数とも称される)と1つ又は複数の独立変数(しばしば説明変数とも称される)との間の関係をモデリングするために用いられる。回帰は、比較的複雑な関数をパラメータ化することができ、従って、それらのデータは、決定された数学的基準に従って最良に再現される。例えば、一般的な最小二乗法は、以下のような一義的な直線(又は超平面)を計算するものであり、即ち、この直線は、実際のデータとこの線(又は超平面)との間の偏差平方の合計、即ち、残差二乗和、を最小化する。
【0024】
さらに提案されることは、第1の変数及び第2の変数は、それぞれ異なる製造プロセスステップに従って製品が製造される際の製品を表す、ということである。例えば、この場合には、ある製造プロセスステップが終了したときに、第2の時点を設定することができる。この製品は、製造工場において製造される任意の製品とすることができる。特に、製品の製造時、その製品の先行するプロセスステップに対するトレーサビリティが失われるのは(いわゆる「ばら荷」)、例えば、その製品を例えばねじなどのばら荷からある1つの製造バッチにダイレクトにマッピングすることが、もはや不可能である場合である。ここで想定されることは、第1の変数は、構成要素、特に部品を表し、第2の変数は、最終製品を表し、マッピングルールは、いずれの構成要素が加工されていずれの製品が形成されたのか、又は、いずれの部品がいずれの製品に組み込まれたのかを記述する、ということである。例えば、これは、シリアル番号を読み出すために、製品内の部品を壊すことなく取り出すことがもはやできない場合である。このような場合に、本発明によれば、製品の測定に基づき部品の製造バッチをマッピングすることができる。両方の集合における種々の変数の個数の差は、製造時の歩留まり損失とすることができる。
【0025】
第1及び第2の変数は、測定結果/テスト結果とすることができ、又は、製品、構成要素等のその他の特性とすることができる。第1の変数及び第2の変数は、特に、例えば、製造公差に起因して互いにわずかに異なっているが、製品、構成要素等の同一の測定/特性を記述する。
【0026】
さらに提案されることは、第1の変数は、ウェーハ上の半導体素子の第1のテスト結果又は測定結果であり、第2の変数は、半導体素子がウェーハから切り出された後のこの半導体素子の第2のテスト結果又は測定結果である、ということである。半導体素子は、ウェーハ上において成長させられた電気部品の一部とすることができ、例えば、集積回路のトランジスタ群とすることができる。テスト結果は、半導体部品全体に関係させることもできる。この場合、機械学習システムのために線形回帰は、最良のマッピングルールを見出すために特に効果的であることが判明した。それというのも、線形回帰は、ここでは、テスト結果のマッピングについて合理的な仮定を成す線形関係を前提とするからである。線形回帰は、回帰の特別なケースである。その際に線形回帰においては、線形関数が前提とされる。即ち、従属変数が回帰係数(ただし、必ずしも独立変数ではない)の線形結合であるという関係だけが考慮される。
【0027】
さらに提案されることは、第1のテスト結果は、ウェーハレベルテスト結果であり、第2のテスト結果は、ファイナルテスト結果である、ということである。好ましくは、ファイナルテスト結果は、ウェーハレベルテスト結果よりも少ない。これらのテストは、例えば、電圧テスト及び/又は接触接続テストである。
【0028】
さらに提案されることは、半導体素子は、複数の異なるウェーハ上において製造されたものである、ということである。それというのも、この方法は、適当な計算時間内に複数のウェーハにまで及んで、正しいマッピングルールを見出すことすらできる、ということが判明したからである。
【0029】
さらに提案されることは、マッピングルールに依存して、いずれの第2のテスト結果がいずれの第1のテスト結果に属するかを求め、次いで、その際に、属する第1のテスト結果に依存して、半導体部品がウェーハ内においていずれのポジションに配置されていたのかを求める、ということである。このことにより、半導体製造の最後の製造プロセスステップから先行するプロセスステップへと半導体部品を一義的に辿ることを初めて実現するポジション復元が可能となる。同様の手順を、最適化されたマッピングルールによっても第2の変数のうちの1つにマッピングされない選択された第1の変数に対しても、いずれの半導体部品が選り分けられたのか又は除去されたかのかを追跡する目的で、実施することができる。これに応じて、ウェーハの対応する個所においてこれ以降に生産される半導体部品をもはや選り分ける必要がないように、製造プロセスステップを変更することができる。
【0030】
さらに他の態様によれば、本発明は、これまで述べてきた方法を実施するように(実施するために)それぞれ構成されている装置及びコンピュータプログラム、並びに、このコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体に関する。
【0031】
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】パッケージングプロセスについて概略的に示す図である。
図2】本発明のフローチャートの1つの実施例について概略的に示す図である。
図3】トレーニング装置について概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例の説明
半導体部品又は半導体素子のパッケージングプロセスにおいては、一般に、それらの元のウェーハ及び個々のウェーハ上におけるそれらの元のポジションに対する素子のトレーサビリティが失われる。なぜならば、半導体素子が切り出された後、個別の半導体素子の混在が生じる場合があり、それによって、部品の一義的なマーキングなしではウェーハ上におけるそれらのポジションが失われるからである。このことが、図1に概略的に示されている。ウェーハ10は、それぞれ複数の半導体部品又は半導体素子11を有する。この段階では各半導体素子11は、ウェーハ10上の既知のポジションを有する。一般に、半導体素子11に対し、この段階において、ウェーハレベルテストとも称される複数のテストが実施される。これに続いてウェーハ10の切断が行われ、それによって半導体素子11が互いに分離される。切断は、鋸12又はレーザによって行うことができる。最後に、切断された半導体素子がパッケージングされ、例えば、マイクロコントローラ13内に組み込まれる。このようにした場合、遅くともこの段階において、いずれのウェーハ10上に、また、そのウェーハ10内のいずれのポジションに、半導体素子が当初ポジショニングされていたのか、という情報が失われている。一般に、半導体素子11を備えたマイクロコントローラ13に対し、ファイナルテストとも称される複数のテストが再び実施される。ただし、ウェーハ10の切断により混在が生じるため、いずれのウェーハ10にマイクロコントローラ13の個々の半導体素子11が配置されていたのかを、及び、いずれのウェーハレベルテストがいずれのファイナルテストに対応するのかを、即ち、同一の半導体素子のテスト結果であるということを一義的に遡ることは、容易ではない。半導体素子は、例えば、集積回路(以下においては、チップとも称する)、センサなどのようなマイクロエレクトロニクスモジュールとすることができる。
【0034】
本発明の課題は、半導体製造プロセスにおいて、パッケージングプロセス後のトレーサビリティを復旧することである。かかるマッピングによって、より良好なプロセス制御又は最終的なチップ特性の早期予測といった、さらなる貢献が実現される。これに加えて、チップ平面においてファイナルテストの際に測定された偏差の原因分析は、ウェーハ生産におけるプロセスにまで拡張することができる。さらに、このことによって、プロセスのより深い理解が可能となり、より良好なプロセス制御がもたらされ、ひいては品質が改善される。
【0035】
(ウェーハレベルテストからファイナルテストのテストデータへの回帰における)回帰パラメータの最適化、及び、これに続くテストパートナーのマッピングの最適化の交互のシーケンスから成る、マッピングアルゴリズムが提案される。最終的なテストチップの現在のマッピングは、「回帰ラベル」として反復各々において使用される。
【0036】
本発明は、さらに、コストを最小化するアルゴリズムを利用し、このアルゴリズムは、予め設定されたコスト行列のもとで、最適な1対1の対応付けを求めることができる。適当なコスト行列を構築するために回帰誤差が利用され、これは、トレーニングされたリグレッサの最終的なテスト予測と回帰ラベルとの間の適当な距離サイズ(例えば、Lノルム)を計算する、というようにして行われる。このコスト行列に基づいて、アルゴリズムは、ファイナルテストにおけるチップを、回帰損失が最小になるように再配置する。データの特性に応じて、リグレッサ又は回帰モデルを任意に選択することができる(例えば、線形の依存関係については線形回帰)。
【0037】
図2には、マッピングルールを求める方法のフローチャート20が概略的に示されており、このマッピングルールによって、ファイナルテストのテスト結果がそれぞれ対応するウェーハレベルテストのテスト結果にマッピングされる。この方法の終了後、ウェーハレベルテストの関連するテスト結果をファイナルテストにマッピングするマッピングルールが得られることになる。即ち、これによって、同一の半導体部品に由来する関連するテスト結果が記述される。
【0038】
この方法は、ステップS21aから始まる。このステップにおいてマッピングルールが初期化される。さらにこのステップにおいて、ウェーハレベルテスト(WLT)及びファイナルテスト(FT)のテスト結果が準備される。歩留まり損失に起因して、WLTテスト結果よりもわずかなFTテスト結果しか存在しない可能性がある。
【0039】
ステップS21aの後にステップS21bが続く。このステップにおいて、歩留まり損失が求められ、これは、例えば、WLTのテスト結果とFTのテスト結果との比から得られる。歩留まり損失に依存して、WLTテスト結果の部分集合がランダムに選択される。この部分集合は、例えば、半導体部品の損失集合に相当する。
【0040】
次いで、ステップS22が続く。このステップにおいては、トレーニングデータセットが作成され、このトレーニングデータセットは、WLTテスト結果と、マッピングルールに従ってこれらのテスト結果にそれぞれマッピングされたFTテスト結果とを有し、その際、ステップS21bにより選択された部分集合がWLTテスト結果から除去される。
【0041】
ここで留意されたいことは、この実施例については、トレーニングデータセットが同等の個数のWLTテスト結果とFTテスト結果とを有するように、テスト結果を除去することが採用された、ということである。ただし、同様に想定されることは、除去する代わりにFTテスト結果の追加を実施することができる、ということである。この追加は、例えば、ヒューリスティックに基づき行うことができる。
【0042】
ステップS22の終了後、ステップS23が続く。このステップにおいて、リグレッサfがトレーニングされ、これによってリグレッサは、ウェーハレベルテスト(WLT)に依存して、トレーニングデータセットに従ってそれぞれマッピングされたファイナルテストを求める:f(WLT)=FT。リグレッサfは、線形回帰モデルとすることができる。リグレッサのトレーニングは、公知の方法によって、例えば、トレーニングデータセットにおける回帰誤差の最小化を介して、リグレッサfのパラメータを調整することによって行われる。
【0043】
リグレッサがトレーニングされた後、ステップS24が続く。ここで、コスト行列が作成される。行及び列はそれぞれ、ウェーハレベルテスト及びファイナルテストにマッピングされている。コスト行列のエントリは、例えば、個々の行の対応するWFTテスト結果と、個々の列の対応するFTテスト結果とに依存して、リグレッサの予測間のLノルムを用いることによって、トレーニングデータから求められ、コスト行列に格納される。テスト結果の個数は、それぞれ異なる大きさであるため、コスト行列は、矩形の形状を有する。
【0044】
ステップS24が終了すると、ステップS25においてマッピングルールの最適化が続く。この最適化は、コスト行列に基づく改善されたマッピングルールを取得するために、ハンガリアンアルゴリズムをコスト行列に適用しながら行われる。
【0045】
次いで、ステップS26が続き、このステップにおいて、最適化されたマッピングルールによっても第2の変数のうちの1つにはマッピングされない第1の変数が選択される。このようにした場合には、これらの選択された第1の変数は、対応するFTテスト結果にマッピングされない第1の変数の部分集合を成す。
【0046】
中断判定基準が満たされていない場合には、ステップS22乃至S25が改めて実施される。ここで留意されたいことは、ステップS22を反復するということは、ステップS26における直前の反復において選択された部分集合が、トレーニングデータセットから除去される、ということである。中断判定基準は、予め設定された最大反復回数とすることができる。
【0047】
中断判定基準が満たされている場合には、この方法は終了し、マッピングルールを出力することができる。
【0048】
ステップS25の後に任意選択肢として続くステップにおいて、このマッピングルールを用いることによって、ウェーハ10上の半導体部品11のポジションが復元される。ここでは、マッピングルールに基づいて、FTテスト結果を起点とし、逆方向に遡ってWLTテスト結果を特定することができる。一般的にはWLTテスト結果に加えて、ウェーハ内のいずれのポジションにおいて個々のテストが実施されたかが記憶されるので、それによって、まさに対応する半導体素子がウェーハ上において製造された場所を復元することができる。従って、WFTテスト結果がマッピングルールによってもFTテスト結果にマッピングされない半導体部品のポジションも復元することができる。即ち、WLTテスト後に選り分けられた半導体部品及びそれらの個々のポジションが同定される。ここで想定されることは、ステップS25及び/又はステップS26によるポジション復元に依存して、製造機械、特にウェーハ用の加工機械など、例えば、コンピュータ制御される機械のような物理的システムを制御するための制御信号をトリガする、ということである。例えば、FTテスト結果が最適でない場合には、制御信号によって、先行する製造ステップを相応に整合させることができ、これによって、以降は、より良好なFTテスト結果が得られる。
【0049】
図3には、図2による方法を実施するための装置30が概略的に示されている。
【0050】
この装置は、ステップS22によるトレーニングデータセットを準備する準備部51を含む。トレーニングデータは、次いでリグレッサ52に供給され、これによって出力変数が求められる。トレーニングデータは、次いでリグレッサ52に供給され、これによって出力変数が求められる。出力変数及びトレーニングデータは、判定部53に供給され、判定部53は、リグレッサ52の更新されたパラメータをそれらから求め、これらのパラメータは、パラメータメモリPに伝送され、そこにおいて、現在のパラメータを置き換える。判定部53は、ステップS23を実施するように構成されている。
【0051】
装置30によって実施されるステップを、コンピュータプログラムとして実装して、機械可読記憶媒体54に格納することができ、プロセッサ55によって実行することができる。
【0052】
用語「コンピュータ」には、予め設定可能な計算ルールを処理するための任意の装置が含まれる。これらの計算ルールは、ソフトウェアの形態において、又は、ハードウェアの形態において、又は、ソフトウェア及びハードウェアの混合形態において、提供することができる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】