IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社竹中電機の特許一覧 ▶ 株式会社SoBrainの特許一覧

<>
  • 特開-鉄道車両 図1
  • 特開-鉄道車両 図2
  • 特開-鉄道車両 図3
  • 特開-鉄道車両 図4
  • 特開-鉄道車両 図5
  • 特開-鉄道車両 図6
  • 特開-鉄道車両 図7
  • 特開-鉄道車両 図8
  • 特開-鉄道車両 図9
  • 特開-鉄道車両 図10
  • 特開-鉄道車両 図11
  • 特開-鉄道車両 図12
  • 特開-鉄道車両 図13
  • 特開-鉄道車両 図14
  • 特開-鉄道車両 図15
  • 特開-鉄道車両 図16
  • 特開-鉄道車両 図17
  • 特開-鉄道車両 図18
  • 特開-鉄道車両 図19
  • 特開-鉄道車両 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036058
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20230306BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20230306BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20230306BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20230306BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20230306BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20230306BHJP
【FI】
B60L3/00 C
B60L3/00 Q
G01R31/12 Z
G01R31/52
G01R31/56
G01R27/02 R
G01R31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138569
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021141813
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021141816
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596041168
【氏名又は名称】株式会社竹中電機
(71)【出願人】
【識別番号】517161142
【氏名又は名称】株式会社SoBrain
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】内藤 恒陽
(72)【発明者】
【氏名】新村 浩
(72)【発明者】
【氏名】下村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 徳仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 凌
(72)【発明者】
【氏名】頭本 頼数
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
2G028
5H125
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AA04
2G014AB23
2G014AB35
2G015AA25
2G015CA04
2G028BE10
2G028CG03
2G028FK07
2G028HN07
2G028LR06
2G028LR07
2G028MS02
2G028MS03
5H125AA05
5H125AC02
5H125BB00
5H125CC04
5H125CD04
5H125DD10
(57)【要約】
【課題】電気回路の絶縁抵抗の計測を容易にできる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】パンタグラフ17が下降して電源線18への電力の供給が遮断された非通電時には、電磁開閉器44aが開き、VVVFインバータ20の入力側の電源線18及び接地側電線42が接地線40から切り離される。この状態で、接触式監視装置70gは、接地線40と電源線18との間に電圧を印加して、その電源線18の絶縁抵抗を計測する。このように、鉄道車両110に接触式監視装置70gを搭載することによって、従来の絶縁抵抗の計測方法と比べ、電源線18の絶縁抵抗の計測を容易にできる。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を変換して出力する変換装置が搭載された鉄道車両、又は、前記変換装置が搭載された別の車両へ電力を送る鉄道車両であり、レール上を走行する鉄道車両であって、
前記レールに接続される接地部と、
その接地部に前記変換装置の入力側を接続させる接地側電線と、
前記変換装置に入力される電力が供給され、前記接地側電線に前記変換装置を介して連結される電源線と、
その電源線への電力の供給の遮断に応じて開くことで前記接地側電線を前記接地部から切り離す電磁開閉器と、
その電磁開閉器が開いた状態で、前記接地部と、前記電源線および前記接地側電線の少なくとも一方との間に電圧を印加して、その少なくとも一方の絶縁抵抗を計測する電源監視装置と、
を備えていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記変換装置の出力側に接続されるコイルと、そのコイルを囲み前記接地部の一部を構成する筐体と、を有し前記鉄道車両を走行させる電動機と、
前記電磁開閉器が開いた状態で、前記コイルと前記接地部との間に電圧を印加して前記電動機の絶縁抵抗を計測する電動機監視装置と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記変換装置として、交流電力を出力する交流出力装置と、
その交流出力装置から交流電力が供給される複数本1組の交流電路と、
その交流電路に接続されて交流電力により作動する少なくとも1の交流機器と、
前記1組の交流電路が貫通する零相変流器を有し、閉じた前記電磁開閉器により前記接地側電線と前記接地部とが接続されて前記電源線に電力が供給された状態で前記零相変流器の検出値に基づき前記交流機器の絶縁抵抗を計測する交流監視装置と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記交流監視装置は、閉じた前記電磁開閉器により前記接地側電線と前記接地部とが接続されて前記電源線に電力が供給され、前記鉄道車両が走行している間に定期的に絶縁抵抗を計測することを特徴とする請求項3記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記交流監視装置で計測した走行中の絶縁抵抗の計測結果を前記鉄道車両の外部へ送信する送信部を備えることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記交流電路は、
前記交流出力装置から延びる1組の幹電線と、
その幹電線からそれぞれ分岐する複数組の分岐電線と、を備え、
前記交流機器は、1組の前記分岐電線ごとにそれぞれ接続されて複数設けられ、
前記交流監視装置は、
複数組の前記分岐電線よりも前記交流出力装置側の前記幹電線が貫通する前記零相変流器を有し、それら複数組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗の合計を計測する幹監視装置を備えることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記交流電路は、
前記交流出力装置から延びる1組の幹電線と、
その幹電線からそれぞれ分岐する複数組の分岐電線と、を備え、
前記交流機器は、1組の前記分岐電線ごとにそれぞれ接続されて複数設けられ、
前記交流監視装置は、
1組の前記分岐電線が貫通する前記零相変流器を有し、その1組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗を計測する分岐監視装置を備えていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記交流電路は、
前記交流出力装置から延びる1組の幹電線と、
その幹電線からそれぞれ分岐する複数組の分岐電線と、を備え、
前記交流機器は、1組の前記分岐電線ごとにそれぞれ接続されて複数設けられ、
前記鉄道車両は、
前記幹電線に接続されて交流電力を直流電力に変換する整流器と、
その整流器に接続されて直流電力により作動する直流機器と、を備え、
前記交流監視装置は、
前記整流器および複数組の前記分岐電線よりも前記交流出力装置側の前記幹電線が貫通する前記零相変流器を有し、その整流器に接続された直流機器の絶縁抵抗と、それら複数組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗との合計を計測する幹監視装置と、
その幹監視装置の零相変流器を通る幹電線から分岐した複数組の前記分岐電線がそれぞれ貫通する複数の前記零相変流器を有し、それらの分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗をそれぞれ計測する分岐監視装置と、
を備えていることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項9】
請求項3から8のいずれかに記載の鉄道車両を交流出力装置保有車とする車両編成内において、その交流出力装置保有車から交流電力の供給を受ける鉄道車両であって、
前記交流出力装置保有車に直接または別の車両を介して連結される連結部と、
その連結部を介して前記交流出力装置保有車の前記交流電路に接続される複数本1組の自車交流電路と、
その自車交流電路に接続されて交流電力により作動する自車交流機器と、
前記1組の自車交流電路が貫通する零相変流器を有し、前記交流電路から前記自車交流電路に交流電力が供給された状態で前記零相変流器の検出値に基づき前記自車交流機器の絶縁抵抗を計測する自車交流監視装置と、
を備えていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の鉄道車両を電磁開閉器保有車とする車両編成内において、レール上を走行する鉄道車両であって、
前記レールに接続される接地部と、
前記電磁開閉器保有車に直接または別の車両を介して連結される連結部と、
その連結部を介して前記電磁開閉器保有車の前記電源線に接続され、電力が供給される自車電源線と、
前記連結部および前記電磁開閉器保有車の前記接地側電線を介して前記接地部に接続される自車接地側電線と、
前記自車電源線への電力の供給が遮断されて前記連結部による連結が解除された状態で、前記接地部と、前記自車電源線および前記自車接地側電線の少なくとも一方との間に電圧を印加して、その少なくとも一方の絶縁抵抗を計測する自車電源監視装置と、
を備えていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の絶縁抵抗の計測を容易にできる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、例えば架線からパンタグラフを介して供給される電力をVVVFインバータやSIV等の変換装置で変換して出力し、その出力された電力で電動機などの各種の電気機器を作動させる。従来より、パンタグラフと変換装置とを繋ぐ電源線や、変換装置と複数の電気機器とを繋ぐ出力電線などの電気回路の健全性を評価するために、例えば90日毎の定期検査にて電気回路の絶縁抵抗を計測している。
【0003】
定期検査では、パンタグラフを下降させて架線からの鉄道車両への電力供給を遮断すると共に、複数の開閉器を手動で操作して計測対象の電気回路を接地から切り離した後、その計測対象に絶縁抵抗測定器を接続して絶縁抵抗を計測する。その計測後には、絶縁抵抗測定器を外し、計測対象を再び接地させて電力供給し、その機器が正常動作するのを確認する必要がある。この計測や確認の各種作業を鉄道車両毎に個別に行うには多くの労力と時間を要する。
【0004】
特許文献1には、鉄道車両の電気回路のうちパンタグラフから変換装置までの主回路(電源線)の一部の絶縁抵抗(漏洩電流)を、鉄道車両に搭載した試験回路で計測することが開示されている。具体的に、特許文献1では、架線から離したパンタグラフと変換装置との間を高速度遮断機で切り離すと共に、変換装置を接触器(開閉器)で接地部から切り離した状態で、高速度遮断機よりもパンタグラフ側の主回路と接地部(車体)との間に試験回路で電圧を印加することにより、その主回路の絶縁抵抗を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-223020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、電気回路の絶縁抵抗の計測前に、計測対象の電気回路を接地部から切り離す開閉器を開ける作業が必要であり、電気回路の絶縁抵抗の計測に時間を要すると共に、作業工程が多いという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、電気回路の絶縁抵抗の計測を容易にできる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、入力電力を変換して出力する変換装置が搭載されたもの、又は、前記変換装置が搭載された別の車両へ電力を送るものであり、レール上を走行するものであって、前記レールに接続される接地部と、その接地部に前記変換装置の入力側を接続させる接地側電線と、前記変換装置に入力される電力が供給され、前記接地側電線に前記変換装置を介して連結される電源線と、その電源線への電力の供給の遮断に応じて開くことで前記接地側電線を前記接地部から切り離す電磁開閉器と、その電磁開閉器が開いた状態で、前記接地部と、前記電源線および前記接地側電線の少なくとも一方との間に電圧を印加して、その少なくとも一方の絶縁抵抗を計測する電源監視装置と、を備えている。
【0009】
なお、変換装置としては、直流電力を交流電力に変換するインバータや、交流電力を直流電力に変換するコンバータ、電圧を変圧するトランスが挙げられる。また、これらのインバータ、コンバータ、トランスを複数組み合わせたものを変換装置としても良い。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の鉄道車両によれば、電源線への電力の供給が遮断された非通電時には、電磁開閉器が開き、変換装置の入力側の接地側電線が接地部から切り離されると共に、変換装置を介して接地側電線に連結される電源線も接地部から切り離される。この状態で、電源監視装置は、接地部と電源線および接地側電線の少なくとも一方との間に電圧を印加して、その電源線および接地側電線の少なくとも一方の絶縁抵抗を計測する。このように、鉄道車両に電源監視装置を搭載することによって、従来、電力供給の遮断、計測対象の接地部からの切り離し及び計測対象への計測器の接続などの各種作業を、各鉄道車両に対し個別に行っていた絶縁抵抗の計測方法と比べ、電源線および接地側電線の絶縁抵抗の計測を容易にできる。特に、電磁開閉器によって、電力供給の遮断に応じて計測対象が接地部から切り離されるので、計測対象を接地部から手動で切り離す作業を不要にでき、計測対象の絶縁抵抗の計測をより容易にできる。
【0011】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。電動機のコイルは、変換装置の出力側に接続され、接地側電線を介して接地部に接続される。そのため、非通電時に電磁開閉器が開き、接地側電線が接地部から切り離されると、コイルと接地部との接続が切れる。この状態で、電動機監視装置は、コイルと接地部との間に電圧を印加して、接地部の一部を構成する筐体とコイルとの間の絶縁抵抗、即ち電動機の絶縁抵抗を計測する。このように、鉄道車両に電動機監視装置を搭載することによって、従来、各鉄道車両に対し個別に行っていた絶縁抵抗の計測方法と比べ、電動機の絶縁抵抗の計測を容易にできる。特に、電磁開閉器によって、電力供給の遮断に応じて電動機のコイルが接地部から切り離されるので、コイルを接地部から手動で切り離す作業を不要にでき、電動機の絶縁抵抗の計測をより容易にできる。
【0012】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項1又は2に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。閉じた電磁開閉器により変換装置としての交流出力装置と接地部とが接地側電線を介して接続され、電源線に電力が供給される通電時には、交流出力装置から複数本1組の交流電路へ交流電力が出力される。この通電時において、1組の交流電路が貫通する零相変流器は、その貫通位置よりも交流電路の下流(交流出力装置から離れた側)に接続された交流機器で生じる漏洩電流を検出する。交流監視装置は、この通電時の零相変流器の検出値に基づき交流機器の絶縁抵抗を計測する。その結果、鉄道車両に交流監視装置を搭載することによって、実際に作動中の交流機器の絶縁抵抗を計測できると共に、電圧印加による絶縁抵抗の計測時に必要な交流機器と接地部との切り離し作業などを不要にできる。
【0013】
なお、交流監視装置が計測対象の絶縁抵抗を計測するとは、計測対象に生じる絶縁抵抗の値自体を計測する場合に限らず、漏洩電流のうち絶縁抵抗に起因した成分を計測する場合も含む。
【0014】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項3記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。交流監視装置は、閉じた電磁開閉器により接地側電線と接地部とが接続されて電源線に電力が供給され、鉄道車両が走行している間に定期的に絶縁抵抗を計測する。これにより、交流監視装置は、例えば走行に伴う負荷が生じた機器の絶縁抵抗など、停車中では把握できない状態での絶縁抵抗を計測できる。
【0015】
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項4記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。交流監視装置で計測した走行中の計測結果が送信部によって鉄道車両の外部へ送信されるので、例えば走行中の計測結果を外部でモニタリングできる。これにより、モニタリングで異常が発見された場合に、鉄道車両のメンテナンスのタイミング等を早期に計画できる。
【0016】
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項3から5のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。交流出力装置から1組の幹電線が延び、その幹電線から分岐した複数組の分岐電線がそれぞれ複数の交流機器に接続される。交流監視装置は幹監視装置を備え、その幹監視装置の零相変流器には、複数組の分岐電線よりも交流出力装置側の幹電線が通る。これにより、幹監視装置は、それら複数組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0017】
請求項7記載の鉄道車両によれば、請求項3から6のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。交流出力装置から1組の幹電線が延び、その幹電線から分岐した複数組の分岐電線がそれぞれ複数の交流機器に接続される。交流監視装置は分岐監視装置を備え、その分岐監視装置の零相変流器には、1組の分岐電線が通るので、分岐監視装置は、その1組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗を、他の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗に影響されることなく計測できる。
【0018】
請求項8記載の鉄道車両によれば、請求項3から7のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。交流出力装置から1組の幹電線が延び、その幹電線から分岐した複数組の分岐電線がそれぞれ複数の交流機器に接続される。幹電線に接続される整流器で交流電力を直流電力に変換し、その整流器に接続される直流機器が直流電力で作動する。幹電線に整流器を介して直流機器が接続されるため、直流機器で生じる漏洩電流が幹電線に流れる。
【0019】
交流監視装置は幹監視装置と分岐監視装置とを備える。幹監視装置の零相変流器には、整流器および複数組の分岐電線よりも交流出力装置側の幹電線が通るので、幹監視装置は、その整流器に接続された直流機器の絶縁抵抗と、それら複数組の分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗との合計を計測できる。また、その幹監視装置の零相変流器を通る幹電線から分岐した複数組の分岐電線がそれぞれ、分岐監視装置の複数の零相変流器を通るので、それらの分岐電線に接続された交流機器の絶縁抵抗を分岐監視装置で計測できる。これにより例えば、幹監視装置の計測結果が絶縁抵抗の劣化を示し、分岐監視装置の計測結果が絶縁抵抗の劣化を示していない場合には、分岐電線に接続された交流機器ではなく、直流機器の絶縁抵抗が劣化していると推測できる。
【0020】
請求項9記載の鉄道車両は、請求項3から8のいずれかに記載の鉄道車両を交流出力装置保有車とする車両編成内において、その交流出力装置保有車から交流電力の供給を受けるものである。この鉄道車両は、交流出力装置保有車に直接または別の車両を介して連結部により連結される。その連結部を介して交流出力装置保有者の交流電路に複数本1組の自車交流電路が接続され、交流電路から供給される交流電力によって自車交流電路に接続された自車交流機器が作動する。
【0021】
この通電時において、1組の自車交流電路が貫通する零相変流器は、その貫通位置よりも自車交流電路の下流に接続された自車交流機器で生じる漏洩電流を検出する。自車交流監視装置は、通電時の零相変流器の検出値に基づき自車交流機器の絶縁抵抗を計測する。その結果、鉄道車両に自車交流監視装置を搭載することによって、実際に作動中の自車交流機器の絶縁抵抗を計測できると共に、電圧印加による絶縁抵抗の計測時に必要な自車交流機器と接地部との切り離し作業などを不要にできる。
【0022】
請求項10記載の鉄道車両は、請求項1から8のいずれかに記載の鉄道車両を電磁開閉器保有車とする車両編成内において、レール上を走行するものである。この鉄道車両は、電磁開閉器保有車に直接または別の車両を介して連結部により連結される。その連結部を介して電磁開閉器保有車の電源線に自車電源線が接続され、レールに接続される接地部に連結部および電磁開閉器保有車の接地側電線を介して自車接地側電線が接続される。
【0023】
自車電源線への電力の供給が遮断された非通電時に、連結部による連結が解除されると、自車電源線および自車接地側電線が接地部から切り離される。この状態で、自車電源監視装置は、接地部と自車電源線および自車接地側電線の少なくとも一方との間に電圧を印加して、その自車電源線および自車接地側電線の少なくとも一方の絶縁抵抗を計測する。これにより、自車電源監視装置は、車両編成内の他の車両の電源線および接地側電線の絶縁抵抗に影響されることなく、自車電源線および自車接地側電線の少なくとも一方の絶縁抵抗を個別に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図2】SIVよりも上流の鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図3】SIVよりも下流の鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図4】鉄道車両の電気的構成を示したブロック図である。
図5】接触式監視装置の電気的構成を示したブロック図である。
図6】各計測結果メモリの内容を模式的に示した図である。
図7】接触式監視装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。
図8】抵抗計測処理のフローチャートである。
図9】計測後処理のフローチャートである。
図10】自己診断処理のフローチャートである。
図11】鉄道車両の制御装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。
図12】絶縁抵抗の計測結果の経時変化と今後の予測とを示すグラフである。
図13】第2実施形態におけるSIVよりも上流の鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図14】第2実施形態におけるSIVよりも下流の鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図15】第3実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図16】交流監視装置の電気的構成を示したブロック図である。
図17】交流監視装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。
図18】第4実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
図19】警告表示処理のフローチャートである。
図20】第5実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して第1実施形態における鉄道車両10の概要を説明する。図1は、鉄道車両10,11の電気回路を模式的に示した回路図である。
【0026】
鉄道車両10,11はいずれも、直流型電車であって、金属製の車体12と、その車体12を支持してレール2上を転動する複数の車輪13と、車体12のレール方向(前後方向)の両端にそれぞれ設けた連結部14と、空調機器15や照明16等の複数の電気機器と、を主に備えている。連結部14は、鉄道車両10,11同士を機械的に連結して車両間の引張力や圧縮力を伝達する連結器と、鉄道車両10,11同士を電気的に連結する電気連結器と、を含む。
【0027】
鉄道車両10,11の連結部14同士を連結することで車両編成が構成される。鉄道車両10は、動力としての複数の電動機22を有し、電動機22で車輪13を回転させてレール2上を自走する動力車である。一方、鉄道車両11は動力を持たず鉄道車両10に付随して走行する付随車である。
【0028】
レール2の上方には架線4が架け渡されている。この架線4には、接地されたレール2に対し変電所6で起電力を生じさせることにより、高電圧(本実施形態では1500V)の直流電流が流れる。鉄道車両10の車体12の上部に設けたパンタグラフ17を上昇させて架線4に接触させることで、架線4からパンタグラフ17を介して鉄道車両10の電源線18に直流電力が供給される。
【0029】
この電源線18は、鉄道車両10に搭載されたVVVFインバータ20及びSIV(静止型インバータ)30にそれぞれ接続される。VVVFインバータ20及びSIV30はいずれも、電源線18から入力される直流電力を交流電力に変換・調整して出力する変換装置である。
【0030】
VVVFインバータ20の出力側が電動機用電線24を介して複数の電動機22にそれぞれ接続され、VVVFインバータ20から出力される交流電力により電動機22が作動する。VVVFインバータ20は、出力する交流電力の電圧および周波数を可変制御可能に構成されている。この交流電力の電圧および周波数の制御に応じて、電動機22の回転数およびトルクが制御され、鉄道車両10の走行速度が制御される。
【0031】
SIV30は、固定電圧(本実施形態では440V)および固定周波数の交流電力を出力する。SIV30の出力側には、第1低圧交流電路32が接続される。この第1低圧交流電路32は、鉄道車両10の両端の連結部14間に引き通される。鉄道車両11の連結部14間にも第1低圧交流電路32が引き通され、鉄道車両10,11の第1低圧交流電路32同士が連結部14を介して接続される。鉄道車両10,11それぞれにおいて、第1低圧交流電路32に空調機器15が接続され、第1低圧交流電路32から供給される交流電力で空調機器15が作動する。
【0032】
また、第1低圧交流電路32には、絶縁トランス34を介して第2低圧交流電路36が接続される。絶縁トランス34は、第1低圧交流電路32に接続される1次巻線(図示せず)と、第2低圧交流電路36に接続される2次巻線(図示せず)とを同一の鉄心に巻きつけたものであり、1次巻線と2次巻線とが絶縁されている。絶縁トランス34は、第1低圧交流電路32から入力された交流電力の電圧を、本実施形態では100Vに変圧して第2低圧交流電路36に出力する。
【0033】
第2低圧交流電路36は、第1低圧交流電路32と同様に、鉄道車両10,11の両端の連結部14間にそれぞれ引き通される。鉄道車両10,11の第2低圧交流電路36同士が連結部14を介して接続される。鉄道車両10,11それぞれにおいて、第2低圧交流電路36に照明16等の複数の電気機器が接続され、第2低圧交流電路36から供給される電力で複数の電気機器が作動する。
【0034】
次に図2及び図3を参照して鉄道車両10の電気回路についてより詳しく説明する。図2は、SIV30よりも上流(パンタグラフ17側)の鉄道車両10の電気回路を模式的に示した回路図である。図3は、SIV30よりも下流(空調機器15等の電気機器側)の鉄道車両10の電気回路を模式的に示した回路図である。
【0035】
図2に示すように、車体12(接地部の一部)は、車輪13を介してレール2に接続されることで接地される。また、鉄道車両10には、両端の連結部14(図1参照)間に引き通される接地線40(接地部の一部)が設けられる。この接地線40は、車体12及び車輪13を介してレール2に接続されることで接地される。
【0036】
VVVFインバータ20及びSIV30の入力側には、電源線18が接続される正極端子と、接地側電線42が接続される負極端子とがそれぞれ設けられている。この接地側電線42が接地線40に接続され、パンタグラフ17が架線4に接触することで、VVVFインバータ20及びSIV30と変電所6との間に架線4及びレール2を介した閉回路が形成される。これにより、鉄道車両10が通電状態となる。
【0037】
接地側電線42と接地線40との間には、並列に設けた2基の電磁開閉器(MS)44aと、その電磁開閉器44aの接地線40側に直列に接続される手動開閉器(S)46aとが設けられる。電磁開閉器44aは、電気信号で開閉するラッチ式の開閉器であり、パンタグラフ17の下降に応じて電路を開き、パンタグラフ17の上昇に応じて電路を閉じる。即ち、電磁開閉器44aは、鉄道車両10の通電時(走行時)に閉じている。手動開閉器46aは、手動操作に応じて電路を開閉する開閉器である。
【0038】
2基の電磁開閉器44aのうち少なくとも一方と、手動開閉器46aとを閉じることで、接地側電線42と接地線40とが接続される。電磁開閉器44aの両方と手動開閉器46aとのうち少なくとも一方を開くことで、接地側電線42が接地線40から切り離される。
【0039】
なお、後述する電磁開閉器44b~44iは、配置が異なる以外は電磁開閉器44aと同一に構成される。図2以外の各図面では、並列に設けた2基の電磁開閉器44a~44iのうち一方のみを図示し、他方の図示を省略している。以下、電磁開閉器44a~44iを区別せずに説明する場合、電磁開閉器44と称す。また、後述する手動開閉器46b~46iは、配置が異なる以外は手動開閉器46aと同一に構成される。以下、手動開閉器46a~46iを区別せずに説明する場合、手動開閉器46と称す。
【0040】
従来、鉄道車両10の各部の絶縁抵抗を計測する定期検査では、まず、パンタグラフ17を下降させて架線4から離し、架線4から電源線18への電力の供給を遮断する。次いで、手動開閉器46aを手動で開いて接地線40から接地側電線42を切り離すと共に、VVVFインバータ20及びSIV30を介した接地線40と電源線18との接続を切り離す。その後、電源線18と接地線40とに接続した絶縁抵抗の計測器(図示せず)によって、接地線40や車体12等の接地部に電圧を印加したときの、電源線18に生じる漏洩電流を検出し、接地部に対する電源線18の絶縁抵抗を計測する。同様に、接地側電線42と接地線40とに接続した絶縁抵抗の計測器によって、接地側電線42の絶縁抵抗を計測する。
【0041】
これに対し、本実施形態の鉄道車両10には、接地部に対する電源線18又は接地側電線42の絶縁抵抗を所定のタイミングで自動で計測する接触式監視装置70aが搭載されている。接触式監視装置70aは、電線AVを介し接地線40に接続される端子Vと、電線Aaを介し電源線18に接続される端子aと、電線Abを介し接地側電線42に接続される端子bと、を備えている。
【0042】
なお、後述する接触式監視装置70b~70gは、配置と、印加する電圧値と、端子の数とが異なる以外は接触式監視装置70aと略同一に構成される。以下、接触式監視装置70a~70gを区別せずに説明する場合、接触式監視装置70と称す。
【0043】
接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測タイミングは、パンタグラフ17を下降して鉄道車両10の電源線18への電力供給が遮断されたときである。なお、鉄道車両10の非通電時(架線4から鉄道車両10への電力供給の遮断時)でも、接触式監視装置70は、蓄電池82(図3参照)によって作動する。
【0044】
鉄道車両10への電力供給の遮断に応じて電磁開閉器44aが開き、接地線40から電源線18及び接地側電線42が切り離される。この状態で、接触式監視装置70aは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加することにより、端子aに接続された電源線18の絶縁抵抗を計測する。同様の状態で、端子Vと端子aとの間に代えて、端子Vと端子bとの間に電圧を印加することで、端子bに接続された接地側電線42の絶縁抵抗を計測できる。
【0045】
なお、接触式監視装置70aによる印加電圧は、架線4から電源線18へ供給される電力の電圧(直流1500V)以下とする。これにより、接触式監視装置70aの印加電圧に起因して、電源線18に接続されたVVVFインバータ20等が絶縁破壊されることを抑制できる。
【0046】
以上のような接触式監視装置70aが鉄道車両10に搭載されているので、従来、電力供給の遮断、計測対象の接地線40(接地部)からの切り離し及び計測対象への計測器の接続などの各種作業を、各鉄道車両10に対し個別に行っていた定期検査の絶縁抵抗の計測方法と比べ、電源線18及び接地側電線42の絶縁抵抗の計測を容易にできる。
【0047】
また、パンタグラフ17の下降をトリガーとして接触式監視装置70による計測が自動で行われるので、手動で絶縁抵抗を計測する従来の計測方法と比べ、計測対象(接触式監視装置70aでは電源線18及び接地側電線42)の絶縁抵抗の計測をより容易にできる。更に、電磁開閉器44によって、パンタグラフ17の下降に応じて計測対象が接地線40から切り離されるので、計測対象を接地線40から手動で切り離す作業を不要にでき、計測対象の絶縁抵抗の計測をより容易にできる。
【0048】
なお、電磁開閉器44に手動開閉器46が直列接続されているので、手動開閉器46を開いて行う従来通りの定期検査でも鉄道車両10の各部の絶縁抵抗を計測することができる。これにより、接触式監視装置70によって計測対象の絶縁抵抗の劣化が疑われる場合に、定期検査によって鉄道車両10の各部の絶縁抵抗を詳細に計測することができる。
【0049】
また、2基の電磁開閉器44を並列に設けているので、パンタグラフ17の上昇に応じ、並列な2基の電磁開閉器44のうち一方が故障により閉じなくても、他方が閉じれば、計測対象(例えば接地側電線42)を接地線40に接続でき、鉄道車両10を正常に走行させることができる。即ち、接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測のために電磁開閉器44を設けても、並列な2基の電磁開閉器44が同時に故障しない限り、鉄道車両10を正常に走行させることができる。
【0050】
VVVFインバータ20は、三相交流電力を電動機用電線24へ出力する。そのため、電動機用電線24は、3本の電線24u,24v,24wが1組になって構成される。電線24u,24v,24wは、それぞれが分岐して複数の電動機22に接続される。
【0051】
電動機22は、三相交流電力により作動する三相誘導電動機であり、電線24u,24v,24wがそれぞれ接続されるコイル22aと、コイル22aを囲む筐体22bと、を備えている。筐体22bは、筐体接地線22cを介して接地線40に接続され、接地部の一部を構成する。
【0052】
鉄道車両10には、筐体22b及び車体12等の接地部に対するコイル22a及び電線24u,24v,24wの絶縁抵抗を、所定のタイミングで自動で計測する接触式監視装置70bが搭載されている。接触式監視装置70bは、電線BVを介し接地線40に接続される端子Vと、電線Baを介し電線24wに接続される端子aと、を備えている。なお、電線Baを電線24u又は電線24vに接続しても良い。
【0053】
パンタグラフ17の下降(電源線18への電力供給の遮断)に応じて電磁開閉器44aが開き、接地線40から接地側電線42が切り離されると、接地側電線42及びVVVFインバータ20を介した、電動機用電線24及びコイル22aと接地線40との接続が切れる。この状態で、接触式監視装置70bは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加する。
【0054】
これにより、接触式監視装置70bは、端子aに接続された電線24wと、電線24wに接続されたコイル22aと、コイル22aに接続された電線24u,24vとの絶縁抵抗を計測する。その結果、鉄道車両10に接触式監視装置70bを搭載することにより、接触式監視装置70aと同様に、従来の絶縁抵抗の計測方法と比べて、電動機22及び電動機用電線24の絶縁抵抗の計測を容易にできる。
【0055】
なお、接触式監視装置70bによる印加電圧は、VVVFインバータ20の出力側の耐圧規格以下(例えば250~500V)とする。これにより、接触式監視装置70bの印加電圧に起因して、VVVFインバータ20内部が絶縁破壊されることを抑制できる。
【0056】
図3に示すように、SIV30の出力側に接続される第1低圧交流電路32は、3本の電線32u,32v,32wが1組になって構成される。また、第1低圧交流電路32は、SIV30の内部を通って電磁開閉器44b及び手動開閉器46bを介し接地線40に接続される。そのため、鉄道車両10の通電時(架線4から鉄道車両10への電力供給時)には、第1低圧交流電路32が接地されている。
【0057】
SIV30は、三相交流電力を電線32u,32v,32wへ出力し、電線32u,32v,32wに接続された空調機器15を作動させる。また、絶縁トランス34の1次巻線によって、電線32u,32v,32wが互いに接続される。
【0058】
絶縁トランス34の2次巻線に接続される第2低圧交流電路36は、3本の電線36r,36n,36tが1組になって構成される。絶縁トランス34の2次巻線によって、電線36r,36n,36tが互いに接続される。電線36nは、電磁開閉器44c及び手動開閉器46cを介し接地線40に接続される。そのため、鉄道車両10の通電時には、電線36nが接地され、接地線40が電線36n(第2低圧交流電路36の一部)としても機能する。
【0059】
絶縁トランス34は、この電線36nに対する電線36rの電位差と、電線36nに対する電線36tの電位差とがそれぞれ100Vとなるように単相の交流電力をそれぞれ出力する。電線36rには照明16が接続され、電線36tには、充電器84の絶縁トランス86が接続される。なお図示しないが、電線36r,36tには、照明16や充電器84の絶縁トランス86以外にも、交流電力で作動する複数の交流機器が接続されている。
【0060】
照明16及び絶縁トランス86を含む複数の交流機器は、電磁開閉器44d及び手動開閉器46dを介し接地線40に接続される。そのため、電磁開閉器44dが閉じる鉄道車両10の通電時には、複数の交流機器が交流電力によって作動する。
【0061】
充電器84は、接触式監視装置70の蓄電池82を充電するための機器である。絶縁トランス86によって、充電器84及び蓄電池82が第2低圧交流電路36から絶縁されているので、接触式監視装置70の出力電圧を安定化でき接触式監視装置70の誤動作を抑制できると共に、感電に対する安全性を確保できる。
【0062】
電線36r,36tには、複数の交流機器の他に、整流器38を介してブレーキ19や制御装置60、それら以外の複数の直流機器(図示せず)が接続されている。整流器38は、第2低圧交流電路36からの交流電力を直流電力に変換して出力する機器である。
【0063】
ブレーキ19や制御装置60を含む複数の直流機器は、電磁開閉器44e及び手動開閉器46eを介し接地線40に接続される。そのため、電磁開閉器44eが閉じる鉄道車両10の通電時には、複数の直流機器が直流電力によって作動する。
【0064】
ブレーキ19は、走行中の鉄道車両10を減速させるための装置である。制御装置60は、鉄道車両10の加減速や、複数の電気機器(交流機器や直流機器)の動作などを制御するための装置である。
【0065】
例えば、制御装置60は、VVVFインバータ20に内蔵されたスイッチ回路20aの動作を制御する。スイッチ回路20aは、複数のスイッチング素子をオンオフするタイミングを切り換えることで、VVVFインバータ20から出力される電力の電圧や周波数を制御するための回路である。
【0066】
制御装置60とスイッチ回路20aとは、複数の制御線201,202,203で接続されている。制御装置60には、その制御線201~203への電力供給と供給の遮断とを切り換えるリレー201a,202a,203aが設けられている。なお、図3では、図示の都合上、リレー201a~203aを制御装置60の外部に配置している。
【0067】
リレー201aを閉じて、第2低圧交流電路36から制御装置60を介し制御線201に電力が供給されると、制御線201に対応する電圧や周波数の電力をVVVFインバータ20から出力するようにスイッチ回路20aが制御される。リレー202a,203aを閉じた場合も同様に、制御線202,203にそれぞれ対応する電圧や周波数の電力をVVVFインバータ20から出力するようにスイッチ回路20aが制御される。なお、鉄道車両10の非通電時には、全てのリレー201a~203aが開き、制御線201~203が第2低圧交流電路36に繋がらなくなる。
【0068】
鉄道車両10には、接地線40及び車体12等の接地部に対する、第1低圧交流電路32、第2低圧交流電路36及び制御線201~203の絶縁抵抗を、所定のタイミングで自動で計測する接触式監視装置70cが搭載されている。
【0069】
接触式監視装置70cは、電線CVを介し接地線40に接続される端子Vと、電線Caを介し電線32vに接続される端子aと、電線Cbを介し複数の交流機器(照明16及び絶縁トランス86等)と電磁開閉器44dとの間に接続される端子bと、電線Ccを介し制御線201に接続される端子cと、電線Cdを介し制御線202に接続される端子dと、電線Ceを介し制御線203に接続される端子eと、電線Cfを介し複数の直流機器(ブレーキ19及び制御装置60等)と電磁開閉器44eとの間に接続される端子fと、を備えている。なお、電線Caを電線32u又は電線32wに接続しても良い。
【0070】
パンタグラフ17(図2参照)の下降に応じて全ての電磁開閉器44b~44eが開くと、接地線40から第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36が切り離されると共に、第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36を介した複数の電気機器(空調機器15や照明16)と接地線40との接続が切れる。この状態で、接触式監視装置70cは、端子Vと端子a~fのいずれか1との間に電圧を印加する。
【0071】
接触式監視装置70cは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加した場合、端子aに接続された電線32vと、電線32vに接続された絶縁トランス34の1次巻線と、その1次巻線に接続された電線32u,32wとの絶縁抵抗を計測する。
【0072】
なお、鉄道車両10の第1低圧交流電路32(電線32u,32v,32w)は、連結部14を介して鉄道車両11の第1低圧交流電路32に接続されているので、接触式監視装置70cは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加した場合、鉄道車両10,11の両方の第1低圧交流電路32の絶縁抵抗を計測できる。
【0073】
また、接触式監視装置70cは、端子Vと端子bとの間に電圧を印加した場合、端子bに接続されている複数の交流機器(照明16及び絶縁トランス86等)と電磁開閉器44dとの間の電線と、その交流機器に接続された電線36r,36tと、電線36r,36tに接続された絶縁トランス34の2次巻線と、その2次巻線に接続された電線36nとの絶縁抵抗を計測する。この場合、接触式監視装置70cは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加した場合と同様に、端子Vと端子bとの間に電圧を印加した場合には、鉄道車両10の第2低圧交流電路36(電線36r,36n,36t)だけでなく、鉄道車両11の第2低圧交流電路36の絶縁抵抗も合わせて計測できる。
【0074】
加えて、接触式監視装置70cは、端子Vと端子c~eのいずれかとの間に電圧を印加した場合、その電圧が印加された端子c~eに接続されている制御線201~203のいずれかの絶縁抵抗を計測する。このように、鉄道車両10の非通電時に第2低圧交流電路36に繋がっていない制御線201~203も接触式監視装置70cで計測できる。
【0075】
更に、接触式監視装置70cは、端子Vと端子fとの間に電圧を印加した場合、端子fに接続されている複数の直流機器(ブレーキ19及び制御装置60等)と電磁開閉器44eとの間の電線と、その直流機器に接続された整流器38と、整流器38に接続された電線36r,36tと、電線36r,36tに接続された絶縁トランス34の2次巻線と、その2次巻線に接続された電線36nとの絶縁抵抗を計測する。
【0076】
これらの結果、鉄道車両10に接触式監視装置70cを搭載することにより、接触式監視装置70a,70bと同様に、従来の絶縁抵抗の計測方法と比べて、第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36の各部の絶縁抵抗の計測を容易にできる。
【0077】
なお、接触式監視装置70cは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加する場合、その電圧を、SIV30から第1低圧交流電路32へ出力される電圧(交流440V)以下とする。また、接触式監視装置70cは、端子Vと端子b~fとの間に電圧を印加する場合、絶縁トランス34から第2低圧交流電路36へ出力される電圧(交流100V)以下とする。これらの結果、接触式監視装置70cの印加電圧に起因して、第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36に接続される各電気機器が絶縁破壊されることを抑制できる。
【0078】
また、接触式監視装置70cによる端子Vと端子aとの間への印加電圧も100V以下とし、電圧の誤印加を避けるために接触式監視装置70cによる印加電圧を一定にすることが好ましい。これにより、第2低圧交流電路36に第1低圧交流電路32向けの電圧を印加することを抑制でき、電圧の誤印加に起因して接触式監視装置70cによる絶縁抵抗の計測値が変動することを低減できる。
【0079】
加えて、接触式監視装置70a,70b,70cは別々に設けられているので、接触式監視装置70aに繋がる電線Aa,Abと、接触式監視装置70bに繋がる電線Baと、接触式監視装置70cに繋がる電線Ca~Cfとが1か所に集中することを抑制できる。これにより、電線Aa~Cf同士の短絡を抑制できると共に、電線Aa~Cfをまとめることに起因したノイズの発生を抑制できる。
【0080】
更に、接触式監視装置70a,70b,70cによる絶縁抵抗の計測をそれぞれ同時に行うことができるので、接触式監視装置70a,70b,70cをまとめる場合と比べ、接触式監視装置70a,70b,70cを別々に設ける方が絶縁抵抗の計測にかかる時間を短縮できる。
【0081】
この他、接触式監視装置70a,70b,70c毎に計測対象へ印加する電圧が異なるので、接触式監視装置70a,70b,70cをまとめる場合と比べ、それぞれの計測対象への電圧の誤印加を抑制できる。これにより、電圧の誤印加に起因して接触式監視装置70a,70b,70cによる絶縁抵抗の計測値が変動することを低減できる。
【0082】
次に図4図12を参照して、接触式監視装置70a~70cを搭載した鉄道車両10の各部の制御についてより詳しく説明する。図4は、鉄道車両10の電気的構成を示したブロック図である。図5は、接触式監視装置70の電気的構成を示したブロック図である。なお、図4では、接触式監視装置70(70a~70c)が蓄電池82から電力供給を受けていることを模式的に示している。
【0083】
図4に示すように、鉄道車両10の制御装置60は、CPU61と、ハードディスクドライブ(HDD)62と、CPU61のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM63とを有し、これらはバスライン64を介して、入出力ポート65にそれぞれ接続されている。
【0084】
入出力ポート65には、更に、パンタグラフ17と、電磁開閉器44(44a~44e)と、給電スイッチ66と、VVVFインバータ20と、SIV30と、空調機器15と、照明16と、ブレーキ19と、接触式監視装置70a~70cと、インターネット等を介して外部サーバ90との間で情報を送受信する無線通信装置68と、がそれぞれ接続されている。
【0085】
CPU61は、バスライン64により接続された各部を制御する演算装置である。HDD62は、CPU61により実行されるプログラムや各種データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム62aと、車両情報メモリ62bと、各計測結果メモリ62cとが設けられる。CPU61によって制御プログラム62aが実行されると、図11のメイン処理が実行される。
【0086】
車両情報メモリ62bは、鉄道車両10の車両番号や編成情報などの車両情報が記憶されるメモリである。各計測結果メモリ62cは、接触式監視装置70a~70cにおける絶縁抵抗の計測結果を、外部サーバ90へ送信するまで一時的に記憶するメモリである。
【0087】
図6を参照して各計測結果メモリ62cの内容について説明する。各計測結果メモリ62cには、接触式監視装置70a~70c毎、且つ、それらの計測対象(計測対象a~fのいずれか1、又は、基準抵抗)毎に日時メモリ及び計測結果メモリが設けられている。日時メモリ及び計測結果メモリには、鉄道車両10に搭載された接触式監視装置70a~70cによる計測日時と計測結果とがそれぞれ通し番号順に累積して記憶される。
【0088】
なお、接触式監視装置70a~70cの計測中にエラーが有った場合には、その計測対象の日時メモリに、日時の代わりに「エラー」が有ったことを記憶し、対応する計測結果メモリに、計測結果の代わりにエラーの内容を示す情報を記憶する。例えば、接触式監視装置70aによる計測対象bの計測中にエラーが有った場合には、各計測結果メモリ62cのうち、接触式監視装置70aの計測対象bに対応する日時メモリに「エラー」を記憶し、計測結果メモリに「SW22」を記憶する。なお、「SW22」とは、第2スイッチSW2-2が溶着して開かなくなったことを示している。
【0089】
給電スイッチ66は、パンタグラフ17の昇降および電磁開閉器44の開閉を操作するためのスイッチである。給電スイッチ66をオフにするとパンタグラフ17が下降した後、接触式監視装置70により絶縁抵抗を計測できるように全ての電磁開閉器44が開く。給電スイッチ66をオンにすると全ての電磁開閉器44が閉じた後、パンタグラフ17が上昇する。このようにパンタグラフ17を架線4と接触させる前に電磁開閉器44を閉じることで、電磁開閉器44の溶着を避けることができる。なお、鉄道車両10の非通電時に電磁開閉器44などを作動させるために、蓄電池67が設けられている。
【0090】
図5に示すように、接触式監視装置70は、CPU71と、フラッシュROM72と、CPU71のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM73とを有し、これらはバスライン74を介して、入出力ポート75にそれぞれ接続されている。入出力ポート75には、更に、鉄道車両10の入出力ポート65に接続されるインターフェイス(I/F)76と、計測部77と、電圧印加部78と、切換部79と、がそれぞれ接続されている。
【0091】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM72は、CPU71により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、接触監視プログラム72aと、固有番号メモリ72bと、接触式計測メモリ72cとが設けられる。CPU71によって接触監視プログラム72aが実行されると、図7のメイン処理が実行される。
【0092】
固有番号メモリ72bは、接触式監視装置70の固有番号が記憶されるメモリである。この固有番号は、接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測対象を示す情報の一部である。接触式計測メモリ72cは、接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測結果を、鉄道車両10の非通電時の間に記憶しておくためのメモリである。
【0093】
接触式計測メモリ72cは、図6を用いて説明した各計測結果メモリ62cの内容のうち、この接触式計測メモリ72c自身を持つ接触式監視装置70に対応する部分と構成が略同一である。例えば、鉄道車両10の接触式監視装置70aの接触式計測メモリ72cは、各計測結果メモリ62cのうち接触式監視装置70aに対応する部分の記憶容量を少なくしたものである。
【0094】
電圧印加部78は、端子Vから接地線40へ直流の正の電圧を印加する機器である。計測部77は、計測対象の絶縁抵抗の値を算出(計測)する機器である。具体的に例えば、計測部77としては、計測部77の内部に設けた内部抵抗と、計測対象の絶縁抵抗とで、電圧印加部78による印加電圧を分圧し、その内部抵抗にかかる電圧から絶縁抵抗の値を算出するものが挙げられる。
【0095】
なお、計測部77は、絶縁抵抗の値を算出する機器に限らず、絶縁抵抗の計測対象を流れる漏洩電流の値を検出する機器としても良い。この場合、電圧印加部78で印加した電圧と、計測部77で検出した漏洩電流の値とに基づき、CPU71によって計測対象の絶縁抵抗の値が算出される。
【0096】
切換部79は、端子a~fに接続された電線の中から1の電線を計測部77に接続し、その計測部77に接続された電線を絶縁抵抗の計測対象とするための回路である。なお、以下、端子aに接続された計測対象の電線を計測対象aとし、同様に端子b~fに接続された計測対象の電線を計測対象b~fとする。
【0097】
端子a~fそれぞれと計測部77との間には、端子a~f側から順に第1スイッチSW1-n(n:整数)と第2スイッチSW2-nとが直列接続されている。また、第1スイッチSW1-nと第2スイッチSW2-nとの間には、電圧検出部VDnが接続されている。端子a(計測対象a)がn=1、端子bがn=2、端子cがn=3、端子dがn=4、端子eがn=5、端子fがn=6にそれぞれ対応する。
【0098】
第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nは、CPU71からの指示に応じて電気回路を開閉するスイッチであり、非通電時に開状態を維持する。第1スイッチSW1-nを閉じることで、対応する計測対象a~fが電圧検出部VDnに接続される。これにより、電圧検出部VDnは、計測対象a~fにかかる電圧を検出する。
【0099】
第1スイッチSW1-nを閉じて、それに直列接続される第2スイッチSW2-nを閉じることで、対応する計測対象a~fが計測部77に接続される。これにより、電圧印加部78と計測部77との間に、計測対象a~fの絶縁抵抗を計測する計測回路が形成される。
【0100】
鉄道車両10の走行時には、全ての第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nを開くことで、鉄道車両10の走行とは無関係な接触式監視装置70の各部を、電源線18や電動機用電線24等の走行に関係する回路から切り離すことができる。更に、直列接続された第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nのいずれか一方が溶着してしまっても、いずれか他方が開いていれば、走行に関係する回路に接触式監視装置70の各部が接続されないようにできる。即ち、鉄道車両10の既存回路の信頼性の低下を抑制できる。
【0101】
なお、既存回路とは、鉄道車両10の電気回路のうち、接触式監視装置70と、その接触式監視装置70を鉄道車両10の各部に接続するための電線Aa~CVとを除いた回路である。言い換えると、既存回路とは、接触式監視装置70を搭載する前から鉄道車両10に配置されていた機器および回路のことであり、電源線18やVVVFインバータ20、SIV30、電動機用電線24等が挙げられる。
【0102】
また、切換部79を介して計測対象a~f同士が接続するには、直列接続された第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nの2組以上が同時に閉じる場合に限られる。即ち、第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nを直列接続することによって、切換部79で計測対象a~f同士を接続し難くできる。これにより、切換部79で互いに接続されることに起因した計測対象a~fの各電気機器の故障を抑制できる。
【0103】
加えて、切換部79には、端子Vと電圧印加部78との間から分岐した電線に接続される基準抵抗81と、その基準抵抗81と計測部77とを開閉可能に接続する第3スイッチSW3と、を備える。基準抵抗81は、基準となる予め定めた抵抗値を有する負荷である。なお、第3スイッチSW3は、端子Vと電圧印加部78との間から分岐した電線と、基準抵抗81との間に設けても良い。
【0104】
第3スイッチSW3を閉じることで、基準抵抗81を介して電圧印加部78と計測部77とが接続される。この場合に電圧印加部78で電圧を印加すると、計測部77は、絶縁抵抗値に代えて基準抵抗81の抵抗値を算出する。この算出した抵抗値と、基準抵抗81の予め定めた抵抗値とを比較し、両者が殆ど一致していれば、接触式監視装置70が正常動作していると判断できる。また、接触式監視装置70で測定(算出)した基準抵抗81の抵抗値が、基準抵抗81の予め定めた抵抗値に近づくように、接触式監視装置70を校正することもできる。
【0105】
次に図7図10を参照して、接触式監視装置70のCPU71で実行されるメイン処理を説明する。図7は、接触式監視装置70のメイン処理のフローチャートである。図8は、メイン処理中に行われる抵抗計測処理S33のフローチャートである。図9は、抵抗計測処理S33中に行われる計測後処理S49のフローチャートである。図10は、抵抗計測処理S33中に行われる自己診断処理S53のフローチャートである。接触式監視装置70のメイン処理は、接触式監視装置70の電源が投入されると実行される。
【0106】
図7に示すように、メイン処理はまず、上昇状態であったパンタグラフ17が下降したかを確認する(S31)。この確認は、パンタグラフ17が下降したときにオンになるセンサからの信号に基づいても良く、給電スイッチ66がオフ操作されたことを示す鉄道車両10の制御装置60からの信号に基づいても良い。
【0107】
なお、パンタグラフ17が下降して架線4から電源線18への電力供給が遮断された場合には、上記の通り、全ての電磁開閉器44が開き、接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測が可能となる。なお、S31の処理の直後に、全ての電磁開閉器44が開いたかをセンサ等で確認する処理を行っても良い。
【0108】
S31の処理において、パンタグラフ17が下降した場合には(S31:Yes)、鉄道車両10の電気回路の各部に残留する電力を放出させるため、パンタグラフ17の下降から所定時間が経過したかを確認する(S32)。接触式監視装置70の計測対象に電力が残留していると、接触式監視装置70に過電圧の印加がされ、接触式監視装置70が破損する懸念があるためである。また、その計測対象の絶縁抵抗の計測結果が残留電力に影響する懸念もある。なお、所定時間は、少なくとも鉄道車両10内に配置されたコンデンサ(図示せず)の残留電力の放電時間以上とする。
【0109】
S32の処理において、所定時間が経過していない場合には(S32:No)、絶縁抵抗の計測結果に残留電力が影響する可能性が高いので、S32の処理をループして所定時間の経過を待つ。
【0110】
所定時間が経過した場合には(S32:Yes)、絶縁抵抗の計測結果に残留電力が影響する可能性が十分に低くなったので、計測対象の絶縁抵抗を計測する抵抗計測処理S33を実行し、S34の処理に移行する。なお、S31の処理において、パンタグラフ17が上昇している場合、又は、パンタグラフ17が既に下降していた場合には(S31:No)、S32,S33の処理をスキップしてS34の処理に移行する。
【0111】
ここで図8を参照して抵抗計測処理S33を説明する。抵抗計測処理S33では、まず、計測対象aの絶縁抵抗を計測するためにn=1を設定する(S41)。次いで、計測対象の電線を電圧検出部VDnに接続するために、第1スイッチSW1-nを閉じる(S42)。S41の処理後の1回目のS42の処理では、第1スイッチSW1-1を閉じて計測対象aを電圧検出部VD1に接続する。
【0112】
S42の処理後は、電圧検出部VDnで検出した電圧が閾値以下になったかを確認する(S43)。なお、この閾値は、計測対象の電線に電圧印加部78で印加する電圧よりも小さい値に設定する。S43の処理において、検出した電圧が閾値よりも高い場合には(S43:No)、非通電時の計測対象の残留電圧が高いので、その残留電圧が放電されるまで待つ。なお、図示しないが、一定時間待っても検出した電圧が閾値以下にならない場合には、計測対象が通電状態にあって絶縁抵抗を計測可能な状態ではないので、絶縁抵抗を計測せずに抵抗計測処理S33を終了する。
【0113】
S43の処理において、検出した電圧が閾値以下になった場合には(S43:Yes)、絶縁抵抗の計測に影響する電圧が低くなったので、第2スイッチSW2-n(S41後の1回目の処理ではSW2-1)を閉じる(S44)。これにより、計測対象の絶縁抵抗を計測する計測回路が形成されたので、電圧印加部78で計測対象に電圧を印加する(S45)。
【0114】
このように、S43,S44の処理によって、計測対象に過大な電圧が印加されている場合には、第2スイッチSW2-nを閉じないことで、接触式監視装置70の計測部77等の電気回路を過大な電圧から保護できる。よって、電圧検出部VDn及び第2スイッチSW2-nにより、接触式監視装置70の耐久性を確保できると共に、計測対象の絶縁抵抗の検出精度を向上できる。更に、計測対象と計測部77との間の開閉を第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nにより多重化して冗長性を持たせることで安全性を高めている。その結果、接触式監視装置70に必要以上の耐久性(耐電圧性)を持たせなくても良くなり、接触式監視装置70のコストの低減や小型化が期待できる。
【0115】
S45の処理後、電圧の印加から所定時間が経過したかを確認し(S46)、所定時間が経過していない場合には(S46:No)、絶縁抵抗の計測値が安定していないので、S46の処理をループする。
【0116】
一方、電圧の印加から所定時間が経過した場合には(S46:Yes)、計測部77で計測対象の絶縁抵抗を計測する(S47)。次いで、その計測結果と、計測対象(S41後の1回目の処理では計測対象a)と、計測した日時とを接触式計測メモリ72cに記憶させ(S48)、計測後処理S49を実行する。
【0117】
図9に示すように、計測後処理S49では、まずS44の処理で閉じた第2スイッチSW2-nを開ける(S61)。次いで、計測部77で計測対象の絶縁抵抗が未だに検出されるかを確認する(S62)。
【0118】
S62の処理で絶縁抵抗が検出された場合には(S62:Yes)、S61の処理で開けるように指示した第2スイッチSW2-nが溶着などによって実際には開かなかったと判断できる。この場合、第2スイッチSW2-nが開かなかったというエラー情報を接触式計測メモリ72cに記憶させて(S63)、S64の処理を実行する。
【0119】
一方、S62の処理で絶縁抵抗が検出されなかった場合には(S62:No)、S61の処理で開くように指示した第2スイッチSW2-nが問題無く開いたので、S63の処理をスキップして、S64の処理を実行する。
【0120】
S64の処理では、S42の処理で閉じた第1スイッチSW1-nを開ける。S64の処理後、開けたはずの第1スイッチSW1-nが接続される電圧検出部VDnで電圧が検出されるかを確認する(S65)。S64の処理で開けるように指示した第1スイッチSW1-nが溶着などにより実際には開かなかった場合には、S65の処理で電圧が検出される(S65:Yes)。この場合、第1スイッチSW1-nが開かなかったというエラー情報を接触式計測メモリ72cに記憶させ(S66)、電圧印加部78による電圧の印加を終了し(S67)、計測後処理S49を終了する。
【0121】
一方、S65の処理で電圧が検出されなかった場合には(S65:No)、S64の処理で開くように指示した第1スイッチSW1-nが問題無く開いたので、S66の処理をスキップしてS67の処理を実行し、計測後処理S49を終了する。
【0122】
このように計測後処理S49では、第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nを段階的に開けながら、それらの正常動作を確認することができる。よって、接触式監視装置70では、第1スイッチSW1-n及び第2スイッチSW2-nの動作確認を自動化できる。
【0123】
図8に戻って説明する。計測後処理S49の後、この処理でエラーが無かったかを確認する(S50)。エラーが有った場合には(S50:No)、他の計測対象の絶縁抵抗を計測せずに抵抗計測処理S33を終了する。
【0124】
ここで例えば、第1スイッチSW1-1及び第2スイッチSW2-1が両方とも溶着により開かずエラーとなっている場合に、計測対象bの絶縁抵抗の計測のために第1スイッチSW1-2及び第2スイッチSW2-2を閉じると、計測対象aと計測対象bとが接続されてしまう。この状態で電圧印加部78により電圧を印加すると、意図しない電圧によって接触式監視装置70や計測対象a,bの各電気機器が故障する可能性がある。
【0125】
これに対し、計測後処理S49でエラーが有った場合に(S50:No)、抵抗計測処理S33を終了することで、切換部79を介して複数の計測対象同士が接続されてしまうことを抑制できる。その結果、意図しない電圧によって接触式監視装置70や計測対象の各電気機器が故障する可能性を低減できる。
【0126】
S50の処理において、計測後処理S49でエラーが無かった場合(S50:Yes)、未計測の計測対象の絶縁抵抗を計測するためにn=n+1をする(S51)。次いで、n≧7であるかを確認し(S52)、n<7であれば(S52:No)、未計測の計測対象が残っているので、S42以下の処理を再び実行する。
【0127】
一方、n≧7であれば(S52:Yes)、全ての計測対象の絶縁抵抗の計測が完了したので、自己診断処理S53を実行して抵抗計測処理S33を終了する。なお、S52の処理では、接触式監視装置70の端子a~fが繋がっている数に応じて、上限を設定する。例えば、接触式監視装置70aのように端子a,bのみが計測対象に繋がっている場合、S52の処理では、n≧3であるかを確認する。また、接触式監視装置70bのように端子aのみが計測対象に繋がっている場合、S52の処理では、n≧2であるかを確認する。
【0128】
図10に示すように、自己診断処理S53ではまず、第3スイッチSW3を閉じて(S71)、電圧印加部78と計測部77とを基準抵抗81を介して接続する。次いで、電圧印加部78で電圧を印加し(S72)、基準抵抗81を通る電流の値が安定するように、電圧の印加から所定時間が経過したかを確認する(S73)。電圧の印加から所定時間が経過していない場合には(S73:No)、S73の処理をループする。
【0129】
一方、電圧の印加から所定時間が経過した場合には(S73:Yes)、計測部77による計測値が安定したので、計測部77で基準抵抗81の抵抗値を計測する(S74)。次いで、この抵抗値の計測結果と、計測対象(基準抵抗81)と、計測した日時とを接触式計測メモリ72cに記憶させる(S75)。
【0130】
この抵抗値の計測結果を取得した外部サーバ90等において、基準抵抗81の抵抗値の計測結果と、予め定められている基準抵抗81の抵抗値とを比較し、両者の値が殆ど同一であれば、接触式監視装置70が正常動作していることを確認できる。一方、抵抗値の計測結果と、予め定められている抵抗値とが大きくずれている場合には、接触式監視装置70の正常動作が疑われるので、接触式監視装置70のメンテナンスを外部サーバ90の管理者などに通知することができる。
【0131】
S75の処理後は、S71の処理で閉じた第3スイッチSW3を開けて(S76)、基準抵抗81を介した電圧印加部78と計測部77との接続を切り離す。この状態で、計測部77で未だに基準抵抗81の抵抗値が検出されるかを確認する(S77)。
【0132】
S76の処理で開けるように指示した第3スイッチSW3が溶着などにより実際には開かなかった場合には、S77の処理で抵抗値が検出される(S77:Yes)。この場合、第3スイッチSW3が開かなかったというエラー情報を接触式計測メモリ72cに記憶させ(S78)、電圧印加部78による電圧の印加を終了し(S79)、自己診断処理S53を終了して図8の抵抗計測処理S33を終了する。
【0133】
一方、S77の処理で抵抗値が検出されなかった場合には(S77:No)、S76の処理で開けるように指示した第3スイッチSW3が問題無く開いたので、S78の処理をスキップしてS79の処理を実行し、自己診断処理S53を終了して図8の抵抗計測処理S33を終了する。このように、接触式監視装置70では、第1スイッチSW1-1及び第2スイッチSW2-1と同様に、第3スイッチSW3の動作確認を自動化できる。
【0134】
図7に戻って説明する。抵抗計測処理S33の後は、鉄道車両10の制御装置60から計測結果を要求されたかを確認し(S34)、要求が有った場合には(S34:Yes)、接触式計測メモリ72cに対応付けて記憶されている未送信の計測結果(又はエラー情報)、計測対象、日時と、固有番号メモリ72bに記憶されている接触式監視装置70の固有番号と、を制御装置60へ送信する(S35)。
【0135】
次いで、その他の処理を実行し(S36)、S31以下の処理を繰り返し実行する。なお、S36の処理では、例えば、蓄電池82の充電制御や、端子a~fへの計測対象a~fの接続の有無の確認などを行う。
【0136】
次に図11を参照して、鉄道車両10の制御装置60のCPU61で実行されるメイン処理を説明する。図11は、制御装置60のメイン処理のフローチャートである。制御装置60のメイン処理は、パンタグラフ17が上昇して鉄道車両10に架線4から電力が供給され、制御装置60の電源が投入されると実行される。
【0137】
図11に示すように、メイン処理はまず、制御装置60の電源が投入されていない間に接触式監視装置70で絶縁抵抗の計測が行われているので、各々の接触式監視装置70へ計測結果を要求する(S81)。上述した通り、この要求に応じた図7のS34,S35の処理によって、接触式監視装置70から制御装置60へ未送信の計測結果などが送信される。
【0138】
S81の処理後、接触式監視装置70から受信した計測結果(又はエラー情報)、計測対象、日時と、その接触式監視装置70の固有番号とを、互いに対応付けて各計測結果メモリ62cに記憶させる(S82)。各々の接触式監視装置70による計測結果を制御装置60で集約することによって、接触式監視装置70の記憶容量を少なくでき、接触式監視装置70を小型化できる。これにより、接触式監視装置70の配置場所の自由度を向上できる。更に、接触式監視装置70の記憶容量を少なくすることでコストの低減も期待できる。
【0139】
S82の処理後、制御装置60から外部サーバ90への未送信の計測結果またはエラー情報が各計測結果メモリ62cに記憶されているかを確認する(S83)。未送信の計測結果またはエラー情報が記憶されている場合には(S83:Yes)、それらを外部サーバ90へ送信するために、無線通信装置68を介して鉄道車両10と外部サーバ90とが通信可能であるかを確認する(S84)。
【0140】
外部サーバ90と通信可能であれば(S84:Yes)、各計測結果メモリ62cに記憶された未送信の計測結果(又はエラー情報)、計測対象、日時、接触式監視装置70の固有番号と、車両情報メモリ62bに記憶されている鉄道車両10の車両情報と、を外部サーバ90へ送信する(S85)。
【0141】
次いで、その他の処理を実行し(S86)、S81以下の処理を繰り返し実行する。なお、S86の処理としては、鉄道車両10を走行させるための各種処理が挙げられる。
【0142】
また、S83の処理で未送信の計測結果またはエラー情報が無い場合(S83:No)、又は、S84の処理で外部サーバ90との通信が不可能である場合(S84:No)には、S85の処理をスキップしてS86の処理を実行する。
【0143】
外部サーバ90は、鉄道車両10から受信した計測結果に基づき、絶縁抵抗の劣化の疑いを判定する。例えば、外部サーバ90では、図12に示すように、鉄道車両10の接触式監視装置70aの計測対象aに関し、過去の絶縁抵抗の計測結果を縦軸に、日時を横軸にしたグラフを生成し表示する。図12のグラフでは、過去の計測結果(実測値)の経時変化を実線で示し、その実測値を最小二乗法で近似した直線の延長線による今後の計測結果(予測値)の経時変化を二点鎖線で示している。また、図12のグラフには、絶縁抵抗の劣化が疑われる閾値を破線で示している。
【0144】
過去の計測結果が閾値を下回っている場合には、絶縁抵抗の劣化が疑われることを外部サーバ90の管理者へ通知する。なお、鉄道車両10において絶縁抵抗を計測する際、計測時の温度や湿度も取得し、それらの情報を絶縁抵抗の劣化の判断に利用しても良い。
【0145】
今後の計測結果(予測値)の経時変化と閾値とから、今後の計測結果が閾値以下となる日時が予測され、その日時が図12のグラフに表示されている。よって、外部サーバ90の管理者は、今後の計測結果が閾値以下となる日時を目安に鉄道車両10のメンテナンス等のスケジュールを計画することができると共に、交換が必要な機器や部品の発注などを計画することができる。
【0146】
次に図13及び図14を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、パンタグラフ17から電源線18へ電力が供給され、VVVFインバータ20及びSIV30が1台の鉄道車両10に搭載されている場合について説明した。これに対し、第2実施形態では、鉄道車両100a,100b,100cが連結された車両編成において、鉄道車両100aに搭載した発電機や蓄電池などからなる電源102から電源線18a~18cへ電力が供給され、VVVFインバータ20が鉄道車両100cに搭載され、SIV30が鉄道車両100bに搭載される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0147】
図13は、第2実施形態におけるSIV30よりも上流の鉄道車両100a,100b,100cの電気回路を模式的に示した回路図である。図14は、第2実施形態におけるSIV30よりも下流の鉄道車両100bの電気回路を模式的に示した回路図である。
【0148】
図13に示すように、鉄道車両100a~100cは、車体12と車輪13と連結部14と複数の電気機器とを主に備えている。鉄道車両100a~100cは、連結部14同士を連結して車両編成を構成している。鉄道車両100aの電源線18aと、鉄道車両100bの電源線18bと、鉄道車両100cの電源線18cとがそれぞれ連結部14を介して接続される。
【0149】
同様に、鉄道車両100aの接地側電線42aと、鉄道車両100bの接地側電線42bと、鉄道車両100cの接地側電線42cとがそれぞれ連結部14を介して接続される。また、鉄道車両100aの接地線40aと、鉄道車両100bの接地線40bと、鉄道車両100cの接地線40cとがそれぞれ連結部14を介して接続される。更に、各車両につき接地側電線42a~42cと接地線40a~40cとは、電磁開閉器44aと、その電磁開閉器44aの接地線40a~40c側に直列に接続される手動開閉器46aとを介して接続されている。
【0150】
鉄道車両100aには、鉄道車両100a~100cを走行させるための電源102が搭載されている。電源102は、発電機(燃料電池を含む)や蓄電池からなり、直流電力を供給する。この電源102の正極が電源開閉器104を介して電源線18aに接続される。電源102の負極が接地側電線42aに接続される。
【0151】
電源開閉器104を閉じることで、電源102から電源線18a~18cへ電力が供給される。電源開閉器104を開くことで、電源102から電源線18a~18cへの電力供給が遮断される。
【0152】
鉄道車両100bには、SIV30が搭載されている。このSIV30の入力側の正極端子が電源線18bに接続され、負極端子が接地側電線42bに接続されている。鉄道車両100cには、VVVFインバータ20が搭載されている。このVVVFインバータ20の入力側の正極端子が電源線18cに接続され、負極端子が接地側電線42cに接続されている。
【0153】
また、鉄道車両100aには、接触式監視装置70aが搭載されている。この接触式監視装置70aは、端子Vが電線AVを介して接地線40aに接続され、端子aが電線Aaを介して電源線18aに接続され、端子bが電線Abを介して接地側電線42aに接続されている。
【0154】
鉄道車両100a,100b,100cが連結されている状態であれば、第1実施形態と同様に、電源開閉器104を開けて電源線18a~18cへの電力供給が遮断されると、電磁開閉器44aが開き、接地線40a~40cから電源線18a~18c及び接地側電線42a~42cが切り離される。この状態で、接触式監視装置70aは、端子Vと端子a又は端子bとの間に電圧を印加することによって、印加された端子aに接続されている電源線18a~18cの絶縁抵抗の合計、又は、印加された端子bに接続されている接地側電線42a~42cの絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0155】
鉄道車両100aと、鉄道車両100b,100cとの連結が解除されている状態であれば、鉄道車両100aの非通電時に、接触式監視装置70aは、端子Vと端子a又は端子bとの間に電圧を印加することによって、端子aに接続された電源線18a、又は、端子bに接続された接地側電線42aの絶縁抵抗を、他の鉄道車両100b,100cの電源線18a又は接地側電線42aの絶縁抵抗に影響させることなく個別に計測できる。
【0156】
鉄道車両100bには、接触式監視装置70dが搭載されている。この接触式監視装置70dは、端子Vが電線DVを介して接地線40bに接続され、端子aが電線Daを介して電源線18bに接続され、端子bが電線Dbを介して接地側電線42bに接続されている。
【0157】
鉄道車両100bと、鉄道車両100a,100cとの連結が解除されている状態であれば、電源線18aから電源線18bへの電力の供給が遮断されると共に、接地側電線42a及び接地線40aを介した接地側電線42bと接地線40bとの接続が切り離される。更に、電力供給の遮断に応じて、接地側電線42bと接地線40bとの間の電磁開閉器44aが開く。この状態で、接触式監視装置70dは、端子Vと端子a又は端子bとの間に電圧を印加することにより、印加された端子aに接続されている電源線18b、又は、印加された端子bに接続されている接地側電線42bの絶縁抵抗を、他の鉄道車両100a,100cとは別に計測できる。
【0158】
鉄道車両100cには、接触式監視装置70eが搭載されている。この接触式監視装置70eは、端子Vが電線EVを介して接地線40cに接続され、端子aが電線Eaを介して電源線18cに接続され、端子bが電線Ebを介して接地側電線42cに接続されている。
【0159】
鉄道車両100cと、鉄道車両100a,100bとの連結が解除されている状態であれば、電源線18a,18bから電源線18cへの電力の供給が遮断されると共に、接地側電線42a,42b及び接地線40a,40bを介した接地側電線42cと接地線40cとの接続が切り離される。更に、電力供給の遮断に応じて、接地側電線42cと接地線40cとの間の電磁開閉器44aが開く。この状態で、接触式監視装置70eは、端子Vと端子a又は端子bとの間に電圧を印加することにより、印加された端子aに接続されている電源線18c、又は、印加された端子bに接続されている接地側電線42cの絶縁抵抗を、他の鉄道車両100a,100cとは別に計測できる。
【0160】
以上のように、鉄道車両100a~100cそれぞれに接触式監視装置70a,70d,70eを搭載し、通電時(走行時)には連結部14を介して繋がっている電線同士を非通電時に切り離すことで、電源線18a~18cの絶縁抵抗や、接地側電線42a~42cの絶縁抵抗を鉄道車両100a~100c毎に個別に計測できる。
【0161】
図14を用いて、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36の構成について説明する。なお、鉄道車両100a,100cの第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36は、鉄道車両100bと略同一に構成されているので、その説明を一部省略する。
【0162】
鉄道車両100a~100cの通電時、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32には、SIV30から交流電力が供給され、鉄道車両100bの第2低圧交流電路36には、絶縁トランス34から交流電力が供給される。一方、鉄道車両100a,100cの第1低圧交流電路32には、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32から交流電力が供給され、鉄道車両100a,100cの第2低圧交流電路36には、鉄道車両100bの第2低圧交流電路36から交流電力が供給される。
【0163】
鉄道車両100bにおいて、交流機器である充電器84の絶縁トランス86は、電磁開閉器44f及び手動開閉器46fを介し接地線40bに接続される。交流機器である照明16は、電磁開閉器44g及び手動開閉器46gを介し接地線40bに接続される。なお、図示しないが、充電器84及び照明16以外の複数の交流機器も個別に電磁開閉器44及び手動開閉器46を介し接地線40bに接続される。
【0164】
また、直流機器である制御装置60は、電磁開閉器44h及び手動開閉器46hを介し接地線40bに接続される。直流機器であるブレーキ19は、電磁開閉器44i及び手動開閉器46iを介し接地線40bに接続される。なお、図示しないが、制御装置60及びブレーキ19以外の複数の直流機器も個別に電磁開閉器44及び手動開閉器46を介し接地線40bに接続させる。
【0165】
鉄道車両100bには、接触式監視装置70fが搭載されている。接触式監視装置70fは、端子Vが電線FVを介して接地線40bに接続され、端子aが電線Faを介し第1低圧交流電路32の電線32vに接続され、端子bが電線Fbを介し絶縁トランス86と電磁開閉器44fとの間に接続され、端子cが電線Fcを介し照明16と電磁開閉器44gとの間に接続され、端子dが電線Fdを介し制御装置60と電磁開閉器44hとの間に接続され、端子eが電線Feを介しブレーキ19と電磁開閉器44iとの間に接続される。なお、その他の交流機器や直流機器と電磁開閉器44との間にも個別に接触式監視装置70fの端子を接続する。
【0166】
鉄道車両10の非通電時に全ての電磁開閉器44b,44c,44f~44iが開いた状態で、接触式監視装置70fは、端子Vと端子a~eのいずれか1との間に電圧を印加し、その端子a~eが接続されている部分の絶縁抵抗を計測する。
【0167】
第1実施形態では、接触式監視装置70cによって、複数の交流機器の絶縁抵抗の合計を計測し、複数の直流機器の絶縁抵抗の合計を計測する場合を説明した。これに対し、第2実施形態では、複数の交流機器および直流機器が個別に電磁開閉器44を介して接地線40bに接続され、接触式監視装置70fの端子b~eに複数の交流機器および直流機器がそれぞれ個別に接続されている。よって、接触式監視装置70fは、複数の交流機器および直流機器の絶縁抵抗を個別に計測できる。これにより、接触式監視装置70fの計測結果から、いずれの交流機器または直流機器の絶縁抵抗が劣化しているかを容易に判断できる。
【0168】
また、接触式監視装置70fは、端子Vと端子aとの間に電圧を印加した場合、端子aに接続された鉄道車両100bの第1低圧交流電路32の絶縁抵抗を計測する。このとき、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32と鉄道車両100a,100cの第1低圧交流電路32とが連結されている場合には、鉄道車両100a~100cの第1低圧交流電路32の絶縁抵抗の合計を接触式監視装置70fで計測できる。
【0169】
一方、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32と鉄道車両100a,100cの第1低圧交流電路32との連結が解除されている場合には、鉄道車両100a,100cの第1低圧交流電路32とは別に、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32の絶縁抵抗を計測できる。
【0170】
なお、鉄道車両100a~100cの接触式監視装置70による絶縁抵抗の計測結果は、鉄道車両100a~100cが非通電状態から通電状態になった後、図11のS81,82の処理によって、鉄道車両100bの各計測結果メモリ62cにまとめて記憶する。複数の接触式監視装置70からそれぞれ外部サーバ90へ計測結果を送信する場合と比べ、鉄道車両100bから外部サーバ90へ接触式監視装置70の計測結果をスムーズに送信することができる。
【0171】
次に図15から図17を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36の各部の絶縁抵抗を接触式監視装置70で計測する場合について説明した。これに対し、第3実施形態では、第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36の各部の絶縁抵抗を交流監視装置120で計測する場合について説明する。なお、第1,2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0172】
図15は第3実施形態における鉄道車両110の電気回路を模式的に示した回路図である。鉄道車両110は、車体12と車輪13と連結部14(図1参照)と複数の電気機器(空調機器15や照明16等)と接触式監視装置70gとを主に備えている。
【0173】
接触式監視装置70gは、端子Vが電線GVを介して接地線40に接続され、端子aが電線Gaを介し電動機用電線24に接続され、端子bが電線Gbを介し電源線18に接続され、端子cが電線Gcを介し接地側電線42に接続される。パンタグラフ17の下降に応じて電磁開閉器44aが開いた状態で、接触式監視装置70gは、端子Vと端子a~cのいずれか1との間に電圧を印加することにより、印加された端子a~cに接続されている部分の絶縁抵抗を計測できる。
【0174】
即ち、接触式監視装置70gは、第1実施形態における接触式監視装置70aと接触式監視装置70bとを1つにまとめたものである。これにより、鉄道車両110に搭載する接触式監視装置70の数を低減できる。
【0175】
第1実施形態では説明を省略したが、第1低圧交流電路32は、SIV30の出力側から延びて車両前後の連結部14間に引き通される3本1組の幹電線32u1,32v1,32w1と、その幹電線32u1,32v1,32w1からそれぞれ分岐する分岐電線32u2,32v2,32w2と、を備えている。図示しないが、第1低圧交流電路32は、SIV30の内部を通って電磁開閉器44b及び手動開閉器46bを介し接地線40に接続される。分岐電線32u2,32v2,32w2は、空調機器15等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0176】
同様に、第2低圧交流電路36は、絶縁トランス34から延びて車両前後の連結部14間に引き通される幹電線36r1,36t1と、その幹電線36r1,36t1からそれぞれ分岐する分岐電線36r2,36t2と、を備えている。また、絶縁トランス34から接地線40に接続される幹電線36n1が延びているため、接地線40が幹電線36n1の一部としても機能し、接地線40から分岐電線36n2が分岐する。
【0177】
分岐電線36r2と分岐電線36n2とで1組の単相2線の電路を構成し、分岐電線36t2と分岐電線36n2とで1組の単相2線の電路を構成する。これらの電路は、照明16等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0178】
鉄道車両110には、鉄道車両110の通電時において第1低圧交流電路32及びそれに接続された電気機器(例えば空調機器15)の絶縁抵抗を自動で定期的に計測する交流監視装置120aと、通電時において第2低圧交流電路36及びそれに接続された電気機器(例えば照明16やブレーキ19)の絶縁抵抗を自動で定期的に計測する交流監視装置120bと、が搭載されている。
【0179】
交流監視装置120aは、1組の第1低圧交流電路32(幹電線32u1,32v1,32w1)が貫通する零相変流器127aと、第1低圧交流電路32の幹電線32u1,32w1間に発生している電圧を検出する基準検出部128aと、を備える。同様に、交流監視装置120bは、1組の第2低圧交流電路36(幹電線36r1,36n1,36t1)が貫通する零相変流器127bと、第2低圧交流電路36の幹電線36r1,36t1間に発生している電圧を検出する基準検出部128bと、を備える。交流監視装置120a,120bを作動させる電力は、第1低圧交流電路32や第2低圧交流電路36から図示しない電線を介して供給されても良いし、第1低圧交流電路32や第2低圧交流電路36以外の電線から供給されても良い。
【0180】
なお、交流監視装置120aと、交流監視装置120bと、後述する交流監視装置120c~120hとは、配置(接続位置)が異なる点以外は略同一に構成される。以下、交流監視装置120a~120hを区別せずに説明する場合、交流監視装置120と称す。同様に、交流監視装置120a~120hがそれぞれ有する零相変流器127a及び基準検出部128aを区別せずに説明する場合、それぞれ零相変流器127及び基準検出部128と称す。
【0181】
零相変流器127は、計測対象となる1組の交流電路が貫通する環状の変流器であり、鉄道車両110の通電時にその1組の交流電路を流れる漏洩電流を検出する。より具体的に、1組の交流電路が貫通する零相変流器127は、その貫通位置よりも交流電路の下流(第1低圧交流電路32ではSIV30から離れた側、第2低圧交流電路36では絶縁トランス34から離れた側)の電線と、その電線に接続された各電気機器とで生じる漏洩電流を検出する。
【0182】
零相変流器127により検出する漏洩電流には、対地静電容量に起因する漏洩電流Igcと、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流Igrと、が含まれている。なお、漏洩電流Igcは、計測対象の電線の長さに応じて容量が増大するだけでなく、電気機器に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する。
【0183】
基準検出部128は、計測対象となる1組の交流電路の電圧を検出する電圧プローブである。計測対象が三相3線式の場合、例えばSIV30の内部で幹電線32v1及び分岐電線32v2が巻線を介さずに接地されている場合、基準検出部128は、接地されていないU相(幹電線32u1又は分岐電線32u2)とW相(幹電線32w1又は分岐電線32w2)との間の電圧のクロスポイントを検出する。計測対象が三相4線式の場合、例えばSIV30の内部で幹電線32u1,32v1,32w1が巻線および中性線を介して接地されている場合、基準検出部128は、接地線(中性線)以外の相間から電圧のクロスポイントを検出する。計測対象が単相2線式の場合、基準検出部128は、N相(幹電線36n1又は分岐電線36n2)とL相(幹電線36r1,36t1、分岐電線36r2,36t2のいずれか1)との間の電圧のクロスポイントを検出する。
【0184】
交流監視装置120は、零相変流器127の検出結果と、基準検出部128の検出結果とから、計測対象の漏洩電流Igrを算出し、その漏洩電流Igrから計測対象の絶縁抵抗の値を算出する。漏洩電流Igr及び絶縁抵抗の算出には、既知の方法を用いればよく、例えば特許第4945727号公報に開示されている方法を用いればよい。
【0185】
なお、交流監視装置120は、計測対象の絶縁抵抗の値を計測結果として算出(計測)せずに、計測対象の絶縁抵抗に起因する漏洩電流Igrを計測結果として算出しても良い。本明細書において、交流監視装置120が計測対象の絶縁抵抗を計測するとは、絶縁抵抗の値自体を算出する場合も、漏洩電流Igrを算出する場合も含むこととする。
【0186】
以上説明した通り交流監視装置120は、鉄道車両110の通電時の零相変流器127の検出値に基づき、その零相変流器127を貫通する位置よりも下流の交流電路および電気機器の絶縁抵抗を計測する。その結果、鉄道車両110に交流監視装置120を搭載することによって、実際に作動中の電気機器の絶縁抵抗を計測できると共に、電圧印加による絶縁抵抗を計測する接触式監視装置70では必要な電気機器と接地線40(接地部)との切り離し作業などを不要にできる。
【0187】
更に、交流監視装置120は、鉄道車両110が走行している間に定期的に絶縁抵抗を計測する。これにより、交流監視装置120は、例えば走行に伴う負荷が生じた電気機器の絶縁抵抗など、停車中では把握できない状態での電気機器の絶縁抵抗を計測できる。
【0188】
また、交流監視装置120a,120bの零相変流器127a,127bにはいずれも、分岐電線32u2~36t2ではなく、幹電線32u1~36t1が通るので、交流監視装置120a,120bはそれぞれ、その零相変流器127a,127bよりも下流側の複数の分岐電線32u2~36t2に接続された交流機器の絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0189】
特に、零相変流器127aには、全ての分岐電線32u2~32w2よりも上流側の幹電線32u1~32w1が通るので、交流監視装置120aは第1低圧交流電路32に接続された全ての交流機器の絶縁抵抗の合計を計測できる。また、零相変流器127bには、全ての分岐電線36r2~36t2よりも上流側の幹電線36r1~36t1が通るので、交流監視装置120bは第2低圧交流電路36に接続された全ての交流機器の絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0190】
更に、零相変流器127bよりも下流側の幹電線36r1,36t1に整流器38を介してブレーキ19等の直流機器が接続されているので、直流機器の漏洩電流を零相変流器127bで検出でき、交流監視装置120bは、その直流機器の絶縁抵抗と、零相変流器127bよりも下流側の交流機器の絶縁抵抗との合計を計測できる。
【0191】
次に図16及び図17を参照して、交流監視装置120の制御について説明する。図16は、交流監視装置120の電気的構成を示したブロック図である。図17は交流監視装置120のCPU121で実行されるメイン処理のフローチャートである。
【0192】
交流監視装置120は、CPU121と、フラッシュROM122と、CPU121のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM123とを有し、これらはバスライン124を介して、入出力ポート125にそれぞれ接続されている。入出力ポート125には、更に、鉄道車両110の入出力ポート65に接続されるインターフェイス(I/F)126と、上述した零相変流器127と、上述した基準検出部128と、がそれぞれ接続されている。
【0193】
CPU121は、バスライン124により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM122は、CPU121により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、交流監視プログラム122aと、固有番号メモリ122bと、交流計測メモリ122cとが設けられる。CPU121によって交流監視プログラム122aが実行されると、図17のメイン処理が実行される。
【0194】
固有番号メモリ122bは、交流監視装置120の固有番号が記憶されるメモリである。この固有番号は、交流監視装置120による絶縁抵抗の計測対象を示す。交流計測メモリ122cは、交流監視装置120による絶縁抵抗の計測結果を一時的に記憶しておくためのメモリであり、第1実施形態における接触式計測メモリ72c(図6参照)と略同一に構成される。
【0195】
図17を参照して、交流監視装置120のCPU121で実行されるメイン処理を説明する。交流監視装置120のメイン処理は、交流監視装置120の電源が投入されると実行される。
【0196】
交流監視装置120のメイン処理は、まず、計測対象の絶縁抵抗を計測する定期的な計測タイミングが到来したかを確認する(S111)。なお、定期的な計測タイミングとしては、例えば1時間毎が例示されるが、その計測タイミングを適宜変更しても良い。
【0197】
S111の処理において、定期的な計測タイミングが到来した場合には(S111:Yes)、鉄道車両110が通電時であるかを確認するために、パンタグラフ17が上昇状態にあるかを確認すると共に(S112)、全ての電磁開閉器44が閉じているかを確認する(S113)。
【0198】
パンタグラフ17が上昇状態にあると共に、全ての電磁開閉器44が閉じている場合には(S112:Yes且つS113:Yes)、鉄道車両110は通電時であって、交流監視装置120による計測対象の絶縁抵抗の計測が可能な状態にあるので、交流監視装置120により計測対象の絶縁抵抗を計測する(S114)。
【0199】
なお、本実施形態では、交流監視装置120の電源は、パンタグラフ17が上昇して全ての電磁開閉器44が閉じている鉄道車両110の通電時にのみ投入され、鉄道車両110の非通電時には投入されない。そのため、交流監視装置120のメイン処理が実行されている間は、パンタグラフ17が上昇状態にあると共に、全ての電磁開閉器44が閉じているので(S112:Yes且つS113:Yes)、S112,S113の処理を省略しても良い。
【0200】
S114の処理後は、交流監視装置120による絶縁抵抗の計測結果と、計測した日時とを対応付けて交流計測メモリ122cに記憶させ(S115)、S116の処理を実行する。
【0201】
なお、S111の処理において、定期的な計測タイミングが到来していない場合には(S111:No)、絶縁抵抗を計測するためのS112~S115の処理をスキップし、S116の処理を実行する。また、S112の処理でパンタグラフ17が下降状態にある場合(S112:No)、又は、S113の処理で電磁開閉器44が開いている場合には(S113:No)、鉄道車両110は非通電時であって、交流監視装置120による計測対象の絶縁抵抗の計測が不可能な状態にあるので、S114,S115の処理をスキップし、S116の処理を実行する。
【0202】
S116の処理では、鉄道車両110の制御装置60から計測結果を要求されたかを確認する。なお、この制御装置60から交流監視装置120への計測結果の要求は、図11のS81の処理で実行される。
【0203】
S116の処理において、計測結果を要求された場合には(S116:Yes)、交流計測メモリ122cに対応付けて記憶されている未送信の計測結果、日時と、固有番号メモリ122bに記憶されている交流監視装置120の固有番号と、を制御装置60へ送信し(S117)、S111以下の処理を繰り返す。一方、S116の処理において、計測結果を要求されていない場合には(S116:No)、S117の処理をスキップして、S111以下の処理を繰り返す。
【0204】
S117の処理で送信した計測結果、日時、交流監視装置120の固有番号は、制御装置60による図11のS82の処理で、互いに対応付けて各計測結果メモリ62cに記憶され、図11のS85の処理で外部サーバ90へ送信される。これらのデータを受信した外部サーバ90では、そのデータに基づき交流監視装置120による計測対象の絶縁抵抗の劣化を判断し、劣化が疑われる場合に管理者に通知する。
【0205】
以上のように、交流監視装置120による絶縁抵抗の計測結果が、鉄道車両110の外部の外部サーバ90へ送信されるので、鉄道車両110の走行中における交流監視装置120の測定結果を外部サーバ90でモニタリングできる。これにより、モニタリングで異常(交流監視装置120の測定対象の絶縁抵抗の劣化)が発見された場合に、鉄道車両110のメンテナンスのタイミング等を早期に計画できる。
【0206】
次に図18及び図19を参照して第4実施形態について説明する。第3実施形態では、1台の鉄道車両110に交流監視装置120が搭載されている場合について説明した。これに対し、第4実施形態では、鉄道車両130a,130b,130cが連結された車両編成において、それぞれの鉄道車両130a,130b,130cの各部に交流監視装置120が搭載される場合について説明する。なお、第1~3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0207】
図18は、第4実施形態における鉄道車両130a,130b,130cの電気回路を模式的に示した回路図である。なお、図18では、SIV30よりも下流の鉄道車両130a,130b,130cの電気回路を模式的に示している。SIV30よりも上流の鉄道車両130a,130b,130cの電気回路は、図13に示す第2実施形態における鉄道車両100a,100b,100cの電気回路と同一に構成される。
【0208】
図18に示すように、鉄道車両130a~130cは、車体12と車輪13と連結部14と複数の電気機器(照明16やブレーキ19等)とを主に備えている。鉄道車両130a~130cは、連結部14同士を連結して車両編成を構成している。
【0209】
鉄道車両130bの第1低圧交流電路32は、鉄道車両130bに搭載されたSIV30から延びて鉄道車両130bの車両前後の連結部14間に引き通される3本1組の幹電線32u1b,32v1b,32w1bと、その幹電線32u1b,32v1b,32w1bからそれぞれ分岐する分岐電線32u2b,32v2b,32w2bと、を備えている。図示しないが、第1低圧交流電路32は、SIV30の内部を通って電磁開閉器44b及び手動開閉器46bを介し接地線40に接続される。分岐電線32u2b,32v2b,32w2bは、空調機器15等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0210】
鉄道車両130aには、連結部14を介して幹電線32u1b,32v1b,32w1bにそれぞれ接続される幹電線32u1a,32v1a,32w1aと、その幹電線32u1a,32v1a,32w1aからそれぞれ分岐する分岐電線32u2a,32v2a,32w2aと、を備えている。分岐電線32u2a,32v2a,32w2aは、空調機器15等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0211】
鉄道車両130cには、連結部14を介して幹電線32u1b,32v1b,32w1bにそれぞれ接続される幹電線32u1c,32v1c,32w1cと、その幹電線32u1c,32v1c,32w1cからそれぞれ分岐する分岐電線32u2c,32v2c,32w2cと、を備えている。分岐電線32u2c,32v2c,32w2cは、空調機器15等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0212】
鉄道車両130a~130cには、1組の分岐電線32u2a~32w2c毎に交流監視装置120c,120d,120eがそれぞれ搭載される。交流監視装置120cの零相変流器127cに1組の分岐電線32u2a~32w2aが通り、交流監視装置120cの基準検出部128cが幹電線32u1a,32w1aに接続される。
【0213】
交流監視装置120dの零相変流器127dに1組の分岐電線32u2b~32w2bが通り、交流監視装置120dの基準検出部128dが幹電線32u1b,32w1bに接続される。交流監視装置120eの零相変流器127eに1組の分岐電線32u2c~32w2cが通り、交流監視装置120eの基準検出部128eが幹電線32u1c,32w1cに接続される。
【0214】
よって、交流監視装置120c~120eはそれぞれ、1組の分岐電線32u2a~32w2cが接続された交流機器(空調機器15等)の絶縁抵抗を、他の分岐電線32u2a~32w2cに接続された交流機器の絶縁抵抗に影響されることなく計測できる。
【0215】
鉄道車両130bの第2低圧交流電路36は、鉄道車両130bに搭載された絶縁トランス34から延びて鉄道車両130bの車両前後の連結部14間に引き通される幹電線36r1b,36t1bと、その幹電線36r1b,36t1bからそれぞれ分岐する分岐電線36r2b(図示せず),36t2bと、を備えている。また、絶縁トランス34から接地線40bに接続される幹電線36n1bが延びているため、接地線40bが幹電線36n1bの一部としても機能し、接地線40bから分岐電線36n2bが分岐する。
【0216】
鉄道車両130aには、連結部14を介して幹電線36r1b,36t1bにそれぞれ接続される幹電線36r1a,36t1aと、その幹電線36r1a,36t1aからそれぞれ分岐する分岐電線36r2a(図示せず),36t2aと、を備えている。また、接地線40bに接続される接地線40aが幹電線の一部として機能し、その接地線40aから分岐電線36n2aが分岐する。
【0217】
鉄道車両130cには、連結部14を介して幹電線36r1b,36t1bにそれぞれ接続される幹電線36r1c,36t1cと、その幹電線36r1c,36t1cからそれぞれ分岐する分岐電線36r2c,36t2c(図示せず)と、を備えている。また、接地線40bに接続される接地線40cが幹電線の一部として機能し、その接地線40cから分岐電線36n2cが分岐する。
【0218】
幹電線36r1a,36t1aと、幹電線36r1b,36t1bと、幹電線36r1c,36t1cとにそれぞれ整流器38が接続され、それら整流器38と幹電線36n1a,36n1b,36n1cとの間にブレーキ19等の直流機器がそれぞれ接続される。
【0219】
分岐電線36r2a,36n2aで1組の単相2線の電路を構成し、同様に、分岐電線36t2a,36n2aで、分岐電線36r2b,36n2bで、分岐電線36t2b,36n2bで、分岐電線36r2c,36n2cで、分岐電線36t2c,36n2cで、それぞれ1組の単相2線の電路を構成する。これらの分岐電線36r2a~36t2cによる1組の電路は、照明16等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0220】
鉄道車両130bには交流監視装置120bが搭載される。交流監視装置120bの零相変流器127bには、最上流(全ての分岐電線36r2b~36t2bよりも上流)の幹電線36r1b~36t1bが貫通する。これにより、交流監視装置120bは、幹電線36r1a~36t1a,36r1c~36t1cや分岐電線36r2a~36t2c、整流器38を介して、幹電線36r1b~36t1bに接続される複数の電気機器(照明16等の交流機器や、ブレーキ19等の直流機器)の絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0221】
鉄道車両130a~130cには、分岐電線36r2a~36t2cによる1組の電路毎に交流監視装置120f,120g,120hがそれぞれ搭載される。交流監視装置120fの零相変流器127fに、分岐電線36r2a~36t2aによる1組の電路が通り、交流監視装置120fの基準検出部128fが幹電線36t1a及び接地線40aに接続される。
【0222】
交流監視装置120gの零相変流器127gに、分岐電線36r2b~36t2bによる1組の電路が通り、交流監視装置120gの基準検出部128gが幹電線36t1b及び接地線40bに接続される。交流監視装置120hの零相変流器127hに、分岐電線36r2c~36t2cによる1組の電路が通り、交流監視装置120hの基準検出部128hが幹電線36r1c及び接地線40cに接続される。
【0223】
これらの結果、交流監視装置120f~120hはそれぞれ、分岐電線36r2a~36t2cによる1組の電路に接続された交流機器(照明16)の絶縁抵抗を、他の分岐電線36r2a~36t2cに接続された交流機器の絶縁抵抗に影響されることなく計測できる。
【0224】
更に、交流監視装置120f,120g,120hによる計測結果と、交流監視装置120bによる計測結果とを比較することで、ブレーキ19等の直流機器の絶縁抵抗の劣化を判断できる。これを図19を参照して説明する。図19は、外部サーバ90で実行される警告表示処理のフローチャートである。
【0225】
図19に示すように、警告表示処理では、まず、第2低圧交流電路36の幹電線36r1a~36t1cにおける交流監視装置120bの計測結果が閾値以下となったかを確認する(S121)。
【0226】
交流監視装置120bの計測結果が閾値以下となった場合には(S121:Yes)、鉄道車両130a~130cの第2低圧交流電路36に接続される複数の交流機器および直流機器の少なくとも1の絶縁抵抗の劣化が疑われる。そこで、この場合、いずれの機器の絶縁抵抗が劣化しているかを判断(推測)するために、第2低圧交流電路36の分岐電線36r2a~36t2cにおける交流監視装置120f~120gの計測結果のいずれかが閾値以下となったかを確認する(S122)。
【0227】
交流監視装置120f~120gの計測結果のいずれかが閾値以下となった場合には(S122:Yes)、交流監視装置120bの計測結果が閾値以下となった原因が、交流監視装置120f~120gの計測対象(分岐電線36r2a~36t2cによる1組の電路が接続された交流機器)の絶縁抵抗の劣化であると推測できる。
【0228】
よって、この場合には、計測結果が閾値以下となった交流監視装置120f~120gの計測対象の交流機器に関して警告表示を行い(S123)、警告表示処理を終了する。なお、この警告表示では、外部サーバ90の表示装置に、絶縁抵抗の劣化が疑われる計測対象を表示して、その劣化の疑いを外部サーバ90の管理者へ通知する。
【0229】
一方、S122の処理で、交流監視装置120f~120gの計測結果のいずれも閾値以下とならなかった場合には(S122:No)、交流監視装置120bの計測結果が閾値以下となった原因が、交流監視装置120f~120gの計測対象の交流機器ではなく、直流機器の絶縁抵抗の劣化であると推測できる。よって、この場合には、直流機器に関して警告表示を行い(S124)、警告表示処理を終了する。
【0230】
またS121の処理で、交流監視装置120bの計測結果が閾値以下とならなかった場合には(S121:No)、具体的に例えば、交流監視装置120cの計測結果や、接触式監視装置70dの計測結果が閾値以下となっただけの場合には、その閾値以下となった交流監視装置120cや接触式監視装置70dの計測対象に関して警告表示を行い(S125)、警告表示処理を終了する。
【0231】
次に図20を参照して第5実施形態について説明する。第1~4実施形態では、直流型電車である鉄道車両10,100a~100c,110,130a~130cに接触式監視装置70及び交流監視装置120が搭載される場合について説明した。これに対し、第5実施形態では、交流型電車である鉄道車両150に接触式監視装置70及び交流監視装置120が搭載される場合について説明する。なお、第1~4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0232】
図20は第5実施形態における鉄道車両150の電気回路を模式的に示した回路図である。鉄道車両150は、交流型電車であって、車体12と車輪13と連結部14と複数の電気機器(空調機器15や照明16等)とを主に備えている。
【0233】
レール2の上方に架け渡される架線140には、接地されたレール2に対し変電所141で起電力を生じさせることで、高電圧(本実施形態では25000V)の単相交流電流が流れる。パンタグラフ17を上昇させて架線140に接触させることで、架線140からパンタグラフ17を介して鉄道車両150の電源線18に交流電力が供給される。
【0234】
電源線18と接地側電線42とは、主変圧器151の1次巻線で連結される。主変圧器151は、入力された電圧を変圧して出力すると共に入力側と出力側とを絶縁する絶縁トランスであって、入力側の1次巻線に対して出力側に2次巻線と3次巻線とが設けられている。
【0235】
主変圧器151の2次巻線には、主変圧器151から出力された交流電力を直流電力へ変換するAC/DCコンバータ152が接続される。このAC/DCコンバータ152の出力側にはVVVFインバータ20が接続される。VVVFインバータ20から電動機用電線24を介して電動機22へ交流電力が供給される。
【0236】
主変圧器151の3次巻線には、単相2線式の第1低圧交流電路154が接続される。第1低圧交流電路154には、第1~4実施形態の第1低圧交流電路32と同様に、固定電圧(例えば440V)及び固定周波数の単相交流電力が主変圧器151から供給される。
【0237】
第1低圧交流電路154は、主変圧器151から延びて鉄道車両150の両端の連結部14間に引き通される2本1組の幹電線154L1,154N1と、その幹電線154L1,154N1からそれぞれ分岐する分岐電線154L2,154N2と、を備えている。図示しないが、幹電線154N1は接地線40に接続されている。分岐電線154L2,154N2は、空調機器15等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。
【0238】
第1低圧交流電路154の幹電線154L1,154N1には、絶縁トランス155の1次巻線が接続されている。絶縁トランス155の2次巻線には、単相2線式の第2低圧交流電路156が接続される。絶縁トランス155は、第1低圧交流電路154から入力された交流電力の電圧を、本実施形態では100Vに変圧して第2低圧交流電路156に出力すると共に、第1低圧交流電路154と第2低圧交流電路156とを絶縁する。
【0239】
第2低圧交流電路156は、絶縁トランス155から延びて鉄道車両150の両端の連結部14間に引き通される幹電線156L1と、その幹電線156L1から分岐する分岐電線156L2と、を備えている。また、絶縁トランス155から接地線40に接続される幹電線156N1が延びているため、接地線40が幹電線156N1の一部としても機能し、接地線40から分岐電線156N2が分岐する。
【0240】
分岐電線156L2,156N2は、照明16等の複数の交流機器にそれぞれ接続されるように複数組が設けられている。幹電線156L1に整流器38が接続され、その整流器38と接地線40(幹電線156N1)との間にブレーキ19等の直流機器がそれぞれ接続される。
【0241】
このような鉄道車両150には、各部の絶縁抵抗を計測するための接触式監視装置70a及び交流監視装置120a,120b,120iが搭載されている。
【0242】
接触式監視装置70aは、端子Vが電線AVを介して接地線40に接続され、端子aが電線Aaを介して電源線18に接続される。鉄道車両150の非通電時に(パンタグラフ17を下降させて電磁開閉器44aを開けた状態で)、端子Vと端子aとの間に電圧を印加することにより、互いに接続されている電源線18と、主変圧器151の1次巻線と、接地側電線42との絶縁抵抗の合計を計測できる。
【0243】
交流監視装置120a,120bは、1組の幹電線154L1,154N1又は1組の幹電線156L1,156N1の最上流が貫通する零相変流器127a,127bと、それら1組の幹電線154L1~156N1間の電圧を検出する基準検出部128a,128bと、を備えている。零相変流器127aの検出値と、基準検出部128aの検出値とに基づき、交流監視装置120aは、第1低圧交流電路154及びそれに接続された複数の電流機器の絶縁抵抗の合計を計測する。零相変流器127bの検出値と、基準検出部128bの検出値とに基づき、交流監視装置120bは、第2低圧交流電路156及びそれに接続された複数の電流機器の絶縁抵抗の合計を計測する。
【0244】
交流監視装置120iは、電動機用電線24の3本1組の電線24u,24v,24wが貫通する零相変流器127iと、非接地の電線24u,24w間の電圧を検出する基準検出部128iと、を備えている。零相変流器127iの検出値と、基準検出部128iの検出値とに基づき、交流監視装置120iは、電動機用電線24及び電動機22の絶縁抵抗を計測できる。
【0245】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推測できるものである。例えば、架線4の電圧やSIV30からの出力電圧の数値や、互いに連結される鉄道車両10,11,100a~100c,110,130a~130c,150の数などを適宜変更しても良い。また、鉄道車両10,11,100a~100c,110,130a~130c,150の各部の詳細な電気回路を適宜変更しても良い。
【0246】
上記実施形態では、鉄道車両10,11,100a~100c,110,130a~130c,150がレール2上を走行する場合について説明したが、これに限られない。例えば、レールに吊り下げられる鉄道車両に本発明を適用しても良い。
【0247】
上記実施形態では、架線4,140(パンタグラフ17)又は電源102から電源線18へ電力を供給する場合について説明したが、これに限られない。例えば、架線4,140から電源線18への供給と、電源102から電源線18への供給とを切り換え可能にしても良い。
【0248】
上記実施形態では、電源線18から入力された電圧を変換して出力する変換装置として、VVVFインバータ20と、SIV30と、SIV30及び絶縁トランス34の組み合わせと、主変圧器151と、主変圧器151、AC/DCコンバータ152及びVVVFインバータ20の組み合わせと、主変圧器151及び絶縁トランス155の組み合わせと、を例示したが、これに限られない。例えば、電源線18からの直流電力を分圧により降圧して出力する装置を変換装置としても良い。
【0249】
上記実施形態では、1の交流電路(電動機用電線24、第1低圧交流電路32又は第2低圧交流電路36)の計測対象に、接触式監視装置70又は交流監視装置120のいずれか一方を設ける場合について説明したが、これに限られない。1の交流電路の計測対象に、接触式監視装置70及び交流監視装置120の両方を設けても良い。
【0250】
上記実施形態では、蓄電池67によって電磁開閉器44を開閉する場合について説明したが、これに限られない。例えば、接触式監視装置70の蓄電池82によって電磁開閉器44を開閉しても良い。この場合、図7の接触式監視装置70のCPU71のメイン処理において、パンタグラフ17が下降した場合(S31:Yes)、CPU71から全ての電磁開閉器44を開けるように信号を送った後、S32,S33の処理に移行し、そのS33の処理後に、CPU71から全ての電磁開閉器44を閉じるように信号を送っても良い。
【0251】
また、電磁開閉器44は、電気信号で開閉するラッチ式の開閉器である場合について説明したが、電磁開閉器44への通電時に電磁石によって開いた状態を維持し、電磁開閉器44への非通電時にばねによって閉じた状態を維持するようにしても良い。この場合、電磁開閉器44への電力の供給回路が故障しても、鉄道車両10,11,100a~100c,110,130a~130c,150の走行時(通電時)に電磁開閉器44が閉じた状態を維持でき、車両を正常に走行させることができる。
【0252】
上記実施形態では、全ての電磁開閉器44を並列に2基配置する場合を説明したが、1基でも良く、3基以上を並列に配置しても良い。また、電磁開閉器44が設けられる回路に応じ、複数基を並列配置する部分と、1基のみ配置する部分とを組み合わせても良い。
【0253】
上記実施形態では、接触式監視装置70cによって、鉄道車両10の非通電時に第2低圧交流電路36や電源線18、第1低圧交流電路32等に繋がっていない制御線201~203を計測する場合について説明した。これらの制御線201~203は、鉄道車両10の通電時において、いずれか1本が選択的に制御装置60を介して第2低圧交流電路36に繋がるだけなので、交流監視装置120による第2低圧交流電路36では制御線201~203の絶縁抵抗を計測し難い。これに対し、接触式監視装置70では、制御線201~203の絶縁抵抗を容易に計測できる。また、制御線201~203以外にも、鉄道車両10の非通電時に第2低圧交流電路36や電源線18、第1低圧交流電路32等に繋がっていない種々の制御線の絶縁抵抗を、接触式監視装置70で計測しても良い。
【0254】
上記実施形態では、基準抵抗81の抵抗値を接触式監視装置70で計測することにより、接触式監視装置70の正常動作を確認する場合について説明した。この正常動作の確認以外で第3スイッチSW3を閉じ、基準抵抗81を介して計測部77や切換部79の各部を接地線40に接続しても良い。この場合、接触式監視装置70内に寄生する残留電圧や静電容量を、基準抵抗81を利用して放電することができる。
【0255】
上記実施形態では、接触式監視装置70c,70fによって第1低圧交流電路32及び第2低圧交流電路36の各部の絶縁抵抗を計測する場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1低圧交流電路32の絶縁抵抗を計測する接触式監視装置70と、第2低圧交流電路36の各部の絶縁抵抗を計測する接触式監視装置70とを別々に設けても良い。この場合、第1低圧交流電路32と第2低圧交流電路36とは電圧が異なるため、それぞれ専用の接触式監視装置70を設置することによって、各電路の絶縁抵抗の計測を高精度にできる。更に、第2低圧交流電路36に第1低圧交流電路32向けの電圧を印加することを抑制できる。
【0256】
また、接触式監視装置70による計測時の印加電圧は、鉄道車両10,100a~100c,110,130a~130c,150の通電時に計測対象の各電路を流れる電圧以下に設定されているので、過大な電圧を印加する従来の絶縁抵抗試験が禁止された電気機器を各電路に接続したまま、接触式監視装置70による計測が可能である。
【0257】
また、端子Vと端子a~fとの間に印加する電圧の値などに関係無く、1又は複数の計測対象毎に接触式監視装置70を設けても良い。また、接触式監視装置70の端子a~fの数を増やして、1台の鉄道車両10,100a~100c,110,130a~130c,150の各部の絶縁抵抗を1台の接触式監視装置70で計測しても良い。
【0258】
上記実施形態では、交流監視装置120は、零相変流器127の検出結果と、基準検出部128の検出結果とから計測対象の絶縁抵抗を算出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、基準検出部128を省略しても良い。但し、零相変流器127の検出結果と、基準検出部128の検出結果とから計測対象の絶縁抵抗を算出することで、交流監視装置120による絶縁抵抗の計測結果の検出精度を向上できる。
【0259】
上記実施形態では、ブレーキ19や制御装置60が整流器38を介して第2低圧交流電路36,156に接続される場合について説明したが、これに限られない。例えば、第2低圧交流電路36,156や第1低圧交流電路32,154とは異なる電線を介して、バッテリにブレーキ19及び制御装置60を接続しても良い。これにより、架線4,140からの電力供給が遮断された場合でも、ブレーキ19及び制御装置60を作動させることができる。
【0260】
上記実施形態では、第1低圧交流電路32,154に空調機器15が接続される場合を例示したが、これに限られない。第1低圧交流電路32,154に接続される交流機器としては、空調機器15以外に、電動空気圧縮機や換気装置、各種の冷却用送風機が挙げられる。
【符号の説明】
【0261】
2 レール
10,100b,100c,110,130a,130c,150 鉄道車両
100a 鉄道車両(電磁開閉器保有車)
130b 鉄道車両(交流出力装置保有車)
12 車体(接地部の一部)
14 連結部
15 空調機器(交流機器、自車交流機器)
16 照明(交流機器、自車交流機器)
18,18a 電源線
18b,18c 電源線(自車電源線)
19 ブレーキ(直流機器)
20 VVVFインバータ(変換装置(交流出力装置)、又は、変換装置の一部)
22 電動機(交流機器)
22a コイル
22b 筐体(接地部の一部)
24 電動機用電線(交流電路)
30 SIV(変換装置(交流出力装置)、又は、変換装置の一部)
32,154 第1低圧交流電路(交流電線)
32u1~32w1,32u1b~32w1b,154L1,154N1 幹電線
32u2~32w2,32u2b~32w2b,154L2,154N2 分岐電線
32u1a~32w1a,32u1c~32w1c 幹電線(自車交流電路の一部)
32u2a~32w2a,32u2c~32w2c 分岐電線(自車交流電路の一部)
34,155 絶縁トランス(変換装置(交流出力装置)の一部)
36,156 第2低圧交流電路(交流電線)
36r1~36t1,36r1b~36t1b,156L1,156N1 幹電線
36r2~36t2,36r2b~36t2b,156L2,156N2 分岐電線
36r1a~36t1a,36r1c~36t1c 幹電線(自車交流電路の一部)
36r2a~36t2a,36r2c~36t2c 分岐電線(自車交流電路の一部)
38 整流器
40,40a~40c 接地線(接地部の一部)
42,42a 接地側電線
42b,42c 接地側電線(自車接地側電線)
44a 電磁開閉器
60 制御装置(直流機器)
68 無線通信装置(送信部)
70a 接触式監視装置(電源監視装置)
70b 接触式監視装置(電動機監視装置)
70d,70e 接触式監視装置(自車電源監視装置)
70g 接触式監視装置(電源監視装置および電動機監視装置)
86 絶縁トランス(交流機器)
120,120i 交流監視装置
120a,120b 交流監視装置(幹監視装置)
120d,120g 交流監視装置(分岐監視装置)
120c,120e,127f,127h 交流監視装置(自車交流監視装置)
127,127a~127i 零相変流器
151 主変圧器(変換装置、又は、変換装置の一部)
152 AC/DCコンバータ(変換装置の一部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20