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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036082
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】除雪装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/00 20060101AFI20230307BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
E04D15/00 X
E04H9/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142861
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】521388070
【氏名又は名称】日野 一男
(71)【出願人】
【識別番号】501218566
【氏名又は名称】学校法人片柳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】日野 一男
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA03
2E139AC02
2E139DA51
2E139DA53
2E139DB04
(57)【要約】
【課題】 屋根からの転落等の危険や落雪による事故を防止して安全かつ低コストに除雪できる除雪装置を得る。
【解決手段】 装置の基端側及び他の部材の支持部分を構成する支持本体部12の上部に軸材24A、24B、24Cが同軸状に配置された構造の伸縮支持材24の一端が固定される。伸縮支持材24の他端に案内アーム26が支持され、この案内アーム26に除雪機構本体36が支持用のフック38を介して取り付けられる。除雪機構本体36の背面側上部に薄く板状に形成された分離プレート42の一端が固定されたリール部40が設置される。分離プレート42がリール部40から側に延び、さらに除雪機構本体36の前側に分離プレート42の先端側が突出可能になる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の基端側及び他の部材を支持する支持本体部と、
支持本体部に一端が固定され伸縮可能な伸縮支持材と、
伸縮支持材の他端に回動可能に連結された案内アームと、
案内アームに取り付けられて断面がコ字形とされる除雪機構本体と、
送り出し及び引き戻し可能に除雪機構本体に支持された分離プレートと、
を含む除雪装置。
【請求項2】
分離プレートが加熱用のヒータを有した請求項1に記載の除雪装置。
【請求項3】
除雪機構本体が分離プレートを振動する振動発生機器を有した請求項1または請求項2に記載の除雪装置。
【請求項4】
支持本体部が、駆動源を備えると共にこの駆動源により駆動されるクローラを下部に有した請求項1から請求項3のいずれかに記載の除雪装置。
【請求項5】
除雪機構本体がカメラを装備した請求項1から請求項4のいずれかに記載の除雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根からの転落等の危険や落雪による事故を防止して安全かつ低コストに除雪し得る除雪装置に関し、豪雪地域における屋根の除雪作業に好適な装置である。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界中でも有数の降雪国であり、豪雪地域では数mにもおよぶ積雪が積雪期においてはまれではない。そして、家屋の屋根上の雪の重量は、水分保有状態にもよるが3.3m2あたり1メートルの積雪で約1トン以上の重さになると言われている。そのため、豪雪地域での降雪期における家屋の倒壊防止作業として、屋根の除雪作業が欠かせない。
【0003】
簡易的な除雪用具も考案されているものの、除雪作業のまだまだ多くは、一階だけでなく二階部分であっても屋根上にあがり、スコップ等の用具による雪下ろし作業が占めると言える。この雪下ろし作業は、重労働の上、雪で滑りやすい傾斜面とされる屋根上での作業であって、時に足を滑らせ転落したり、落下する雪の塊に巻き込まれたりし、結果として痛ましい事故も発生している。
【0004】
また、このような事故の被害者は老若男女を問わない上、豪雪地域では住民の高齢化によって屋根に上ることも至難であり、仮に屋根に上れても高齢者による雪下ろし作業では事故発生の危険が一層高いと言える。
【0005】
この一方、屋根に人が上ることなく安全に除雪ができる除雪装置も既に考えられていて、この除雪装置に関する先行技術文献として、下記特許文献1~7が知られていて、これら先行技術について以下に説明する。
特許文献1、6には共に、車両から延びるパイプから屋根に熱水を撒布する技術が開示されている。また、特許文献2、7には、油圧ショベルや車両のアームの先端部に掻き板や除雪ユニットを取り付け、これらで屋根上を除雪する技術が開示されている。特許文献3、4には共に、屋根上を自走する雪降ロボットに関する技術が開示されている。特許文献5には、屋根の棟から軒先に達しつつ自走するヒータパネルに通電し、雪を解して滑り落とす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62-178610号公報
【特許文献2】特開2000-234426号公報
【特許文献3】特開2007-321527号公報
【特許文献4】特開2007-321528号公報
【特許文献5】特開2008-69593号公報
【特許文献6】特開2015-151123号公報
【特許文献7】特許第6462092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、車両から延びるパイプから屋根に熱水を撒布するには、熱水を多量に必要とすることから多大なエネルギーが必要で作業コストが大きくなり、また、油圧ショベルや車両のアームの先端部に掻き板や除雪ユニットを取り付け、これらで屋根上を除雪しようとしても、除雪時における屋根破損のリスクを有し、且つ雪が積もって狭くなった道路を油圧ショベルや車両が通行することは困難であった。
他方、屋根上を自走する雪降ロボットや、屋根の棟から軒先に達しつつ自走するヒータパネルに通電するのでは、屋根上に雪降ロボットを乗せたり、自走するヒータパネルを屋根に設置したりするために、多大な労力やコストが必要であった。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、屋根からの転落等の危険や落雪による事故を防止して安全かつ低コストに除雪し得る除雪装置を提供することを目的とするだけでなく、道路の法面の除排雪など多様な用途での技術活用を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、装置の基端側及び他の部材を支持する支持本体部と、
支持本体部に一端が固定され伸縮可能な伸縮支持材と、
伸縮支持材の他端に回動可能に連結された案内アームと、
案内アームに取り付けられて断面がコ字形とされる除雪機構本体と、
送り出し及び引き戻し可能に除雪機構本体に支持された分離プレートと、
を含む除雪装置である。
【0010】
請求項1のような除雪装置によれば、装置の基端側及び他の部材を支持する支持本体部に伸縮可能な伸縮支持材の一端が固定され、この伸縮支持材の他端に回動可能に連結された案内アームに、断面がコ字形とされる除雪機構本体が取り付けられている。そして、この除雪機構本体に支持された分離プレートが除雪機構本体から送り出し及び除雪機構本体への引き戻し可能とされている。
【0011】
以上より、屋根上の除雪に際して、支持本体部の移動や伸縮支持材の他端の高さ等を操作して、除雪機構本体が風などの外的要因で回転することなく、断面がコ字形とされる除雪機構本体を屋根上の雪の内部にまでめり込ませて、雪に亀裂を入れた状態とし、この状態において除雪機構本体から分離プレートを送り出すこととする。これに伴って、表層雪崩と同様に雪崩を屋根上で人工的に誘発することで、屋根上の除雪が可能となる。
【0012】
この後、この分離プレートを除雪機構本体に引き戻し、この除雪機構本体の位置を若干上げるように操作すると共に、支持本体部を移動し、屋根上の他の部分における雪の内部にまで除雪機構本体を再度めり込ませることで、除雪済みの部分と隣り合った屋根上の部分の除雪作業を同様に行い、さらにこれらの手順を繰り返す。
以上より、本請求項の除雪装置によれば、屋根に上ることなく安全かつ低コストに屋根上全体にわたって除雪ができるので、屋根の破損リスクを低減し、転落等の危険と落雪による事故防止が可能となる。さらに、道路の法面の除排雪など多様な用途での技術活用をも可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、分離プレートが加熱用のヒータを有した請求項1に記載の除雪装置である。このように分離プレートにヒータが熱を加えることで、分離プレート周りの雪が熱で溶け出し、表層雪崩の誘発を促進可能となり、屋根上の雪をより確実に除雪できるようになる。
【0014】
請求項3の発明は、除雪機構本体が分離プレートを振動する振動発生機器を有した請求項1または請求項2に記載の除雪装置である。このように分離プレートに振動を加えることでも、分離プレート周りの雪に振動で亀裂が大きくなり、表層雪崩の誘発を促進可能となり、屋根上の雪をより確実に除雪できるようになる。
【0015】
請求項4の発明は、支持本体部に駆動源を備えると共に、支持本体部の下部に駆動源により駆動されるクローラを有した請求項1から請求項3にいずれかに記載の除雪装置である。 このように駆動源により駆動可能とされたクローラを支持本体部に備えることで、他の伸縮支持材、案内アーム、除雪機構本体等の部材を支持している支持本体部が移動することにより、地面の状態に関わらず雪上においても安全かつ自由に稼働可能な除雪装置となる。
【0016】
請求項5の発明は、除雪機構本体がカメラを装備した請求項1から請求項4にいずれかに記載の除雪装置である。このように除雪機構本体がカメラを装備したことで、除雪位置や除雪状態の把握が容易となり、より効率的で安全な除雪が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る除雪装置によれば、屋根からの転落等の危険や落雪による事故を防止して安全かつ低コストに除雪し得る優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の動作前の概略斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の動作時の概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の支持本体部周辺の拡大斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の除雪を示す概略斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の除雪時における除雪機構本体周辺の拡大斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置の除雪時における除雪機構本体周辺の別方向から見た拡大斜視図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る除雪装置のブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る除雪装置の除雪時における除雪機構本体周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る除雪装置の第1の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1から図7に示すように本実施形態の除雪装置10においては、装置の基端側及び他の部材の支持部分を構成する支持本体部12が本体部分をなしている。
【0020】
図1から図3に示すように、この支持本体部12内に駆動源とされるモータ14とバッテリ16を備えるだけでなく、支持本体部12の下部に一対のモータ14によりそれぞれ駆動される左右一対のクローラ18を有していて、左右のクローラ18を任意に回転或いは停止することで、雪上であっても任意の位置に容易に移動可能になっている。例えば支持本体部12を移動して、図4に示すように屋根YA上より除雪すべき家屋KAに隣り合ってこの除雪装置10を位置することができるようになっている。
【0021】
尚、支持本体部12内には一対のモータ14の動作及び、左右のクローラ18の動作を制御する制御ボックス20も内蔵されている。この結果として、本実施形態の除雪装置10は制御ボックス20及びクローラ18を有していることから、狭小地へも安定して走行可能となっている。また、本実施形態における支持本体部12の駆動源は、モータ14の電動によらず、内燃機などの駆動源を用いる事もある。
【0022】
他方、図1から図3に示すように、この支持本体部12の上部には、金属製のブラケット22が設置されていると共に、複数段からなる軸材24A、24B、24Cが同軸状に配置された構造の伸縮支持材24の一端が固定されていて、この伸縮支持材24がブラケット22を貫通して延びる形になっている。尚、この支持本体部12は幅寸法Wが1700mm程度であり、奥行き寸法Bが1500mm程度である。また、図1に示す状態の伸縮支持材24の長さ寸法Lが4800mm程度を想定するが、支持本体部12の寸法は除雪部分の高さや面積に応じて変更する事を想定しており、更には足場の状況に応じてクレーンのアウトリガー(補助足)の設置も考えられる。
【0023】
伸縮支持材24の複数の軸材24A、24B、24Cは図1に示す姿勢に対し、基端側の軸材24Aから順次引き出すことが可能となっていると共に、図示しないコイルスプリングが内蔵されていて無負荷状態ではコイルスプリングにより引き伸ばされた形になる。これに伴い、図2及び図4に示すように、例えば本実施形態のように3段式であれば、突出した際に、屋根YA上に届くように本来の3倍近くの長さとなる。そして例えば、軸材24Aの直径は350mmとし、軸材24Bの直径は250mmとし、軸材24Cの直径は150mmとすることが考えられるが、軸材の材質や除雪部分の高さに応じて変更する事もある。
【0024】
この伸縮支持材24の他端には、直線状に形成された案内アーム26の基端側寄りの部分が回動可能に支持されているだけでなく、図示しない固定具等により伸縮支持材24に対して任意の角度でこの案内アーム26が固定可能となっている。また、支持本体部12の上部のブラケット22にワイヤーリール28が取り付けられていて、このワイヤーリール28から延びるワイヤ30の先端部分が伸縮支持材24に設置された滑車32を介して案内アーム26の基端部に繋がっている。このワイヤーリール28は歯車と歯止め爪を組み合わせた図示しないラチエットを備えると共に回転用のハンドル28Bが外周に取り付けられている。
【0025】
従って、操作者の手でハンドル28Bを回してワイヤ30を送り出したり巻き戻したりすると共に動作方向を一方に制限可能なラチエットにより任意の回転位置で停止できるようになっていて、ワイヤーリール28からのこのワイヤ30の送り出し長さにより、伸縮支持材24の長さが変化するようになっている。
【0026】
そして、案内アーム26の先端側には、支持用のフック38及び、このフック38に隣り合って配置された回転止め用の姿勢安定ワイヤ39を介して、除雪機構本体36が吊り下げられている。この除雪機構本体36に図5及び図6に示すように、正面側の両側に突出した一対の翼部36Aが形成されていることで、屋根YAの上側から下側に向かう正面側が開放された形で断面がコ字形に形成されている。ここで、この除雪機構本体36の幅寸法は、1000mm程度であり、翼部36Aの突出量は500mm程度であり、図2に示す動作時における地上面からのこの除雪機構本体36の下部までの高さ寸法Hは8000mm程度である。
【0027】
この除雪機構本体36の背面側上部には、プレート用モータ40A(図7に示す)により任意のタイミングで駆動回転可能となっているリール部40が設置されていて、このリール部40には、アルミニウム材で薄く板状に形成された分離プレート42の一端が固定されている。さらに、この分離プレート42を案内するガード部材36Bが除雪機構本体36の背面側両サイドに設けられていて、分離プレート42が左右一対のガード部材36Bにより案内されてリール部40から背面側の下側に延びるようになっている。
【0028】
この除雪機構本体36の下部には、図5に示すように屋根YAの頂上に除雪機構本体36を固定できるように断面へ字形の当接部材44が設けられている。この接続部材44の上部中央には、分離プレート42を除雪機構本体36の背面側から正面側に通過可能とする図示しないスリットが設けられている。
【0029】
このため、リール部40がプレート用モータ40Aにより任意のタイミングで駆動回転されることで、分離プレート42はリール部40に巻き取ることで引き戻されたり、リール部40から送り出されたりし、さらにスリットを介して除雪機構本体36の前側に分離プレート42の先端側が突出可能になっている。ただし、分離プレート42のリール部40寄りの部分は、ポリプロピレンを原料としたプラスチック製のダンボール材料の使用や、ポリエチレンテレフタレートで加熱用のヒータをラミネーションし形状を成型することで、リール部40への巻き付けを軽量で安価、且つ容易にすることもできる。
【0030】
以上のことから、除雪機構本体36の背面側に分離プレート42が位置していて、リール部40から分離プレート42の送り出しにより、下部から除雪機構本体36の前面側に分離プレート42が突出可能になっている。
【0031】
この一方、この除雪機構本体36には、分離プレート42を加熱するためのヒータ50が設けられていて、屋根YA上の積雪SNを融雪し積雪SNを分離し易くしている。図6に示すように、このヒータ50は分離プレート42上に貼り付けられた何度も湾曲されて長く延びる電熱線50Aとされていて、伸縮支持材24等を介して、支持本体部12までこのヒータ50から図示しないコードが延びている。ただし、ヒータ50はポリエチレンテレフタレート材内にラミネートされる形で、アルミニウム材とされる分離プレート42に直接接しないようにすることも考えられる。
【0032】
他方、図7に示すように、家屋KAから離れて位置する操作者が操作するリモコン60からの信号を受信すると共に、左右のクローラ18の回転方向や停止等の制御を一対のモータ14に対してする制御ボックス20に信号を送信するだけでなく、除雪機構本体36に取り付けたプレート用モータ40Aの動作およびヒータ50の通電の制御をする信号を送信する送受信装置62が、支持本体部12に取り付けられている。ただし、送受信装置62の取り付け場所としては、除雪機構本体36を単独で使用する場合には除雪機構本体36に取り付ける事とする。また、除雪機構本体36の前面側の状態をリモコン60のモニター64に映し出すように、図5に示すようなカメラ54も除雪機構本体36に装備されていて、除雪の際の除雪装置10の作業性を高めている。
【0033】
次に、本実施形態の除雪装置10の作用を説明する。
本実施形態の除雪装置10によれば、装置の基端側を構成すると共に他の部材を支持する支持本体部12に伸縮可能な伸縮支持材24の一端が固定され、この伸縮支持材24の他端に回動可能に案内アーム26が連結されている。この案内アーム26の先端側には断面がコ字形とされる除雪機構本体36がフック38等を介して取り付けられている。そして、この除雪機構本体36に固定されたリール部40に巻き付けられつつ支持された分離プレート42が、除雪機構本体36のリール部40から送り出し及びこのリール部40への引き戻し可能とされている。
【0034】
以上より、屋根YA上の除雪に際しては、リモコン60で操作して支持本体部12を移動したり、伸縮支持材24の他端の高さ等を操作して除雪機構本体36を屋根YA上の雪の内部にまでめり込ませて雪に亀裂を入れた状態としたりし、この状態において除雪機構本体36から分離プレート42を送り出すこととする。これに伴って、分離プレート42の上下で屋根YA上の積雪SNが分離する結果として、表層雪崩と同様に雪崩を屋根YA上で人工的に誘発し、このことで、屋根YA上の除雪が可能となる。
【0035】
さらに、この除雪機構本体36には、分離プレート42を加熱するヒータ50が内蔵されているため、このヒータ50により分離プレート42に熱を加えることで、分離プレート42周りの雪が熱で溶け出し、表層雪崩の誘発を促進可能となり、屋根YA上の雪をより確実に除雪できるようになる。すなわち、ヒータ50を用いることで、より除雪の効果が高まることになる。
【0036】
この後、プレート用モータ40Aを逆回転して分離プレート42をリール部40に引き戻し、ワイヤーリール28を回転することで、除雪機構本体36の位置を若干上げるように操作すると共に、一対のモータ14により一対のクローラ18を駆動回転して支持本体部12を移動してから、例えば除雪済みの部分と隣り合った屋根YA上の部分の雪の内部にまで除雪機構本体36を再度めり込ませることで、この部分の除雪作業を上記と同様に行い、さらにこれらの手順を繰り返す。
【0037】
この際、除雪機構本体36が周囲を映し出すカメラ54を装備し、この映像をリモコン60内のモニター64に表示するようにしたことで、除雪位置や除雪状態の把握が容易となり、より効率的な除雪が可能になる。
以上より、本実施形態の除雪装置10によれば、人が屋根YAに上ることなく安全かつ低コストで屋根YA上全体にわたって除雪ができるので、転落等の危険と落雪による事故防止が可能となる。
【0038】
そして、本実施形態では、支持本体部12にモータ14やバッテリ16等の駆動源を備えると共に、支持本体部12の下部にモータ14により駆動されるクローラ18を有していることで、他の部材である伸縮支持材24、案内アーム26、除雪機構本体36等を支持している支持本体部12が、クローラ18の回転により移動することにより、除雪装置10が自由に位置を変えつつ稼働可能になる。
【0039】
次に、本発明に係る除雪装置の第2の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第1の実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
本実施形態の除雪装置10においては、除雪機構本体36の分離プレート42を振動する振動発生機器が備えられている。具体的には、ヒータ50の代わりに、図8に示すように分離プレート42上に複数の圧電素子であるピエゾ素子70及びこれらのピエゾ素子70に通電するための電気配線70Aが分離プレート42上に貼り付けられていて、伸縮支持材24等を介して、支持本体部12までこの電気配線70Aから図示しないコードが延びて、ピエゾ素子70に電力が供給されるようになる。ただし、ピエゾ素子70はポリエチレンテレフタレート材内にラミネートされる形で、アルミニウム材とされる分離プレート42に直接接しないようにすることも考えられる。
【0040】
ここで、圧電素子とは、加えられた力を電圧に変換しあるいは電圧を力に変換する圧電効果を利用した受動素子であり、ピエゾ素子70はその一種であるが、電気を流すことで、このピエゾ素子70が振動しかつ素子自体が発熱する為、更に効果的に表層雪崩の誘発を促進することができる。
【0041】
このため、ピエゾ素子70で分離プレート42に振動を加えることにより、分離プレート42周りの雪に振動で亀裂が大きくなって表層雪崩の誘発を促進可能となり、屋根YA上の雪をより確実に除雪できるようになったりする。すなわち、ヒータ50の代わりにピエゾ素子70を有することでも、屋根YA上の積雪SNを融雪したり、分離し易くしたりしてより除雪の効果が高まることになる。
【0042】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
本変形例の除雪装置10においては、除雪機構本体36の分離プレート42を振動する振動発生機器としてピエゾ素子70の代わりに図示しない、地面を平らにする転圧機の振動構造が備えられている。転圧機の振動構造は偏心した重りを回転させることで機械的な振動を起こすものであり、例えば携帯電話のバイブレータ構造と同様な構造とされている。
【0043】
具体的には、分離プレート42を巻き取り送り出されたりするリール部40に偏心したおもりを入れて、除雪機構本体36と分離プレート42を機械的に振動させることで、表層雪崩の誘発を促進することが可能となる。
【0044】
なお、上記実施形態では、分離プレートをアルミニウム材で薄く例えば3mm程度の厚みの板状に形成することが考えられるが、薄くて必要な強度を有する他の金属材や強化プラスチック材等であっても良い。さらに、上記実施形態では、駆動源はモータとバッテリを用いたが、エンジンと軽油やガソリン等を用いても良い。また、バッテリの代わりに太陽パネル等によりモータに給電しても良い。
【0045】
他方、支持本体部が自走しないで人が押して移動するようにしても良く、この場合には手押し用のハンドルを支持本体部に設置することが考えられる。また、支持本体部の下部にクローラを有する代わりに、タイヤを4本装着しても良い他、ラッセル器具を配置しても良く、左右にスキー板のような板状の安定板を配置しても良い。
【0046】
この一方、除雪機構本体及び分離プレートにヒータや振動発生機器を設置したが、十分な除雪効果があれば、これらヒータや振動発生機器はなくとも良い。また、振動発生機器もピエゾ素子70やタンパーでなく、他の振動を発生する公知な装置であっても良い。さらに、上記実施形態の除雪機構本体に一対の翼部36Aが固定的に形成されていたが、これら一対の翼部36Aは折りたたみ式として、必要時に開かれるようにしても良い。
【0047】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、安全かつ屋根上全体にわたって除雪ができるだけでなく、各種システム類や各種産業分野に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0049】
10 除雪装置
12 支持本体部
14 モータ(駆動源)
16 バッテリ(駆動源)
18 クローラ
24 伸縮支持材
26 案内アーム
36 除雪機構本体
42 分離プレート
50 ヒータ
54 カメラ
70 ピエゾ素子(振動発生機器)
KA 家屋
SN 積雪
YA 屋根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8