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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036091
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/04 20060101AFI20230307BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20230307BHJP
   F26B 13/04 20060101ALI20230307BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230307BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
F26B21/04 A
F26B21/00 J
F26B13/04
H01M4/139
B05C9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142876
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【テーマコード(参考)】
3L113
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC51
3L113AC67
3L113AC90
3L113BA34
3L113CA12
3L113CB05
3L113CB21
3L113CB24
3L113DA02
4F042AA22
4F042AB00
4F042DB02
4F042DB28
4F042DB30
4F042DB32
4F042DB39
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる乾燥システムを提供すること。
【解決手段】リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された電極材料のスラリーの塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、塗膜を乾燥させるガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部からのガスを加熱し、加熱されたガスにより塗膜を加熱して乾燥させる乾燥ユニットと、前期乾燥ユニットの一部を排気するガス排気部と、塗膜が加熱させられて気化した溶剤を冷却して回収する溶剤回収ユニットと、前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間で前記ガスを循環させる循環路と、前記循環路を介し前記乾燥ユニットから前記溶剤回収ユニットに向かうガスと前記循環路を介して前記溶剤回収ユニットから前記乾燥ユニットに向かうガスとの間で熱交換を行う第1の熱交換ユニットと、を備える構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された電極材料のスラリーからなる塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、
塗膜を乾燥させるために用いるガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部により供給された前記ガスを加熱し、加熱された前記ガスにより前記基材に形成された前記塗膜を加熱して乾燥させる乾燥ユニットと、
前記乾燥ユニットから前記ガスの一部を排気するガス排気部と、
前記乾燥ユニットにより前記塗膜が加熱させられることで気化した溶剤を冷却して回収する溶剤回収ユニットと、
前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間で前記ガスを循環させる循環路と、
前記循環路を介して前記乾燥ユニットから前記溶剤回収ユニットに向かう前記ガスと前記循環路を介して前記溶剤回収ユニットから前記前記乾燥ユニットに向かう前記ガスとの間で熱交換を行う第1の熱交換ユニットと、
を備えることを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記ガス供給部は、前記循環路を介して前記第1の熱交換ユニットを経由して前記乾燥ユニットに前記ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記乾燥ユニットを基材の搬送経路に沿って複数備えており、
少なくとも基材の搬送方向における最初若しくは最後の前記乾燥ユニットは、前記溶剤回収ユニットと接続されていないことを特徴とする請求項1若しくは請求項2のいずれかに記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記乾燥ユニットから前記ガス排気部に向かう前記ガスと前記ガス供給部から前記乾燥ユニットに向かう前記ガスとの間で熱交換を行う第2の熱交換ユニットを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の乾燥システム。
【請求項5】
前記溶剤回収ユニットにより回収された溶剤を再利用する溶剤再利用手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の乾燥システム。
【請求項6】
前記ガス排気部から排気された前記ガスに含まれる前記溶剤を回収する排気溶剤回収手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の乾燥システム。
【請求項7】
前記ガスに含まれる前記溶剤の濃度を測定する濃度測定手段を備えており、
前記濃度測定手段により測定した結果をもとに前記ガス供給部による前記ガスの供給量と前記ガス排気部による前記ガスの排気量を調節することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された塗膜を乾燥させる乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成される。なお、正極を形成する場合は、主にNMP(N‐メチル‐ピロリドン)溶剤を含有するスラリーが塗布される。
【0003】
塗膜を乾燥させる乾燥装置は、乾燥炉内に空気などのガスを加熱供給し、乾燥炉内へ連続搬送した基材上の塗膜を搬送させながら一定時間、高温環境にさらすことで、塗膜を乾燥させている(たとえば、下記特許文献1)。
【0004】
このような乾燥装置は、塗膜を加熱することで、スラリーに含まれるNMP溶剤等を気化させて塗膜を乾燥する。この気化したNMP溶剤は、大気に放出されると環境汚染してしまうため、回収して再利用することが一般的である。NMP溶剤を回収して再利用する方法としては、気化したNMP溶剤が含まれる乾燥炉内の雰囲気ガスを乾燥炉に設けられた排気口から排気し、排気したガスを水が貯留されたタンクに配管を通して送り、ガスに含まれるNMP溶剤を水に吸収させて回収する方法や、吸着剤を用いて吸着回収する方法がある。そして、NMP溶剤を水に吸収する方法を用いた場合、吸収されたNMP溶剤を蒸留精製することで、NMPの純度を上げて再利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-258084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したNMP溶剤を回収して再利用する従来の方法では、NMP溶剤を回収する際に消費するエネルギーが多くなってしまう。
【0007】
具体的に説明する。NMP溶剤は、乾燥炉内で加熱されて気化する。乾燥炉内のガスに含まれるNMP溶剤の濃度が基準値を超えると爆発するおそれがあるため、基準値を超えることがないように空気やNなどの雰囲気ガスを大量に供給して希釈し、気化したNMP溶剤を含むガスを乾燥炉から供給量と同様、すなわち大量に排気する必要がある。そして、乾燥炉内の温度を維持するために供給したガスを加熱しなおす必要があるので、消費するエネルギーが多くなってしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の乾燥装置は、リチウムイオン電池の製造工程において基材に形成された電極材料のスラリーからなる塗膜を乾燥させる乾燥システムであって、塗膜を乾燥させるために用いるガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部により供給された前記ガスを加熱し、加熱された前記ガスにより前記基材に形成された前記塗膜を加熱して乾燥させる乾燥ユニットと、前記乾燥ユニットから前記ガスの一部を排気するガス排気部と、前記乾燥ユニットにより前記塗膜が加熱させられることで気化した溶剤を冷却して回収する溶剤回収ユニットと、前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間で前記ガスを循環させる循環路と、前記循環路を介して前記乾燥ユニットから前記溶剤回収ユニットに向かう前記ガスと前記循環路を介して前記溶剤回収ユニットから前記前記乾燥ユニットに向かう前記ガスとの間で熱交換を行う第1の熱交換ユニットと、を備えることを特徴としている。
【0010】
上記乾燥システムによれば、乾燥ユニット内のガスが、循環路を介して乾燥ユニットと溶媒回収ユニットとの間で循環させられているため、ガスの供給量を抑えつつ、溶剤の回収と乾燥ユニットへのガスの供給を行うことができる。また、第1の熱交換ユニットにより乾燥ユニットから溶剤回収ユニットに向かうガスが、溶剤回収ユニットで冷却されて乾燥ユニットに向かうガスにより冷却され、溶剤回収ユニットから乾燥ユニットに向かうガスが、乾燥ユニットにより加熱されて溶剤回収ユニットに向かうガスにより加熱されるため、加熱ユニットと溶剤回収ユニットのそれぞれでガスを加熱、冷却する際に必要なエネルギーを低減できる。したがって、従来よりも塗膜を乾燥するために消費するエネルギーを削減することができる。
【0011】
また、前記ガス供給部は、前記循環路を介して前記第1の熱交換ユニットを経由して前記乾燥ユニットに前記ガスを供給する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、ガス供給部により供給されたガスが第1の熱交換ユニットで加熱されてから乾燥ユニットに供給されるので、加熱ユニットによりガスを加熱する際に消費するエネルギーをより削減できる。
【0013】
また、前記乾燥ユニットを基材の搬送経路に沿って複数備えており、少なくとも基材の搬送方向における最初若しくは最後の前記乾燥ユニットは、前記溶剤回収ユニットと接続されていない構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、複数の乾燥ユニットのうち、溶剤が気化しにくい基材の搬送方向における最初若しくは最後の乾燥ユニットを溶剤回収ユニットと接続していない。そのため、すべての乾燥ユニットを溶剤回収ユニットと接続する場合に比べて消費するエネルギーを削減することができる。
【0015】
また、前記乾燥ユニットから前記ガス排気部に向かう前記ガスと前記ガス供給部から前記乾燥ユニットに向かう前記ガスとの間で熱交換を行う第2の熱交換ユニットをさらに備える構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第2の熱交換ユニットによりガス供給部から供給されるガスが、乾燥ユニットからガス排気部に向かうガスにより加熱されるため、加熱ユニットでガスを加熱する際に消費するエネルギーをより削減できる。
【0017】
また、前記溶剤回収ユニットにより回収された溶剤を再利用する溶剤再利用手段を備える構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、溶剤回収ユニットにより回収された溶剤を再利用できるため、溶剤にかかるコストを削減できる。
【0019】
また、前記ガス排気部から排気された前記ガスに含まれる前記溶剤を回収する排気溶剤回収手段を備える構成としてもよい。
【0020】
この構成によれば、ガス排気部から排気されたガスに含まれる溶剤も回収できるため、コストをより削減できる。
【0021】
また、前記ガスに含まれる前記溶剤の濃度を測定する濃度測定手段を備えており、前記濃度測定手段により測定した結果をもとに前記ガス供給部による前記ガスの供給量と前記ガス排気部による前記ガスの排気量を調節する構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、濃度測定手段による測定結果をもとにガス供給部によるガスの供給量とガス排気部によるガスの排気量を調節することができるため、乾燥炉内や循環路内のガスに含まれるNMP溶剤の濃度が基準値を超えないように調節することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の乾燥システムによれば、リチウムイオン電池の製造工程における塗膜の乾燥工程において従来よりも消費するエネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態における乾燥システムを有する塗布装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の第一実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
図3】本発明の第二実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態における乾燥進行と塗膜の含水率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態における乾燥システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0026】
図1は、本実施形態における乾燥システム100を有する塗布装置900を概略的に示す図である。図2は、本実施形態における乾燥システム100を説明するための図である。
【0027】
本発明の乾燥システム100を有する塗布装置900は、図1に示すようにシート状の基材Wを搬送する搬送機構91と、基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布機構92と、をさらに有している。乾燥システム100が備え、塗膜を乾燥するための乾燥ユニット1は、搬送機構91による基材Wの搬送経路上に配置されている。
【0028】
本実施形態における乾燥システム100を有する塗布装置900は、搬送機構91により搬送される基材Wの所定面に塗布機構92により塗膜を形成し、これら塗膜を乾燥システム100により乾燥させる。
【0029】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構91により塗布装置900を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0030】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)溶剤などの溶媒により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、塗膜Mが形成される。
【0031】
本実施形態における搬送機構91は、基材Wを搬送するためのものである。搬送機構91は、図1に示すように基材Wを巻き出す巻出ロール91aと、基材Wを巻き取る巻取ロール91bと、巻出ロール91aから巻き出された基材Wが巻取ロール91bに巻き取られるまでに経由する搬送ロール91cと、後述する塗布機構92により塗布液を塗布する位置に基材Wを案内する塗布ロール91dとを有している。
【0032】
巻出ロール91aは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材Wを巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロール91bは、巻出ロール91aと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向の張力のことである。
【0033】
搬送ロール91cは、図1に示すように複数設けられ、基材Wが塗布装置900を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール91cのうち一部、またはすべての搬送ロール91cは、巻出ロール91aおよび巻取ロール91bと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを搬送する。
【0034】
塗布ロール91dは、図1に示すように後述する塗布機構92と対向するよう配置されている。そのため、塗布機構92と一定間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0035】
これら構成により、搬送機構91は、所定の張力を基材Wに付与しながら基材Wを所定の速度で搬送することができる。
【0036】
本実施形態における塗布機構92は、搬送される基材Wの所定面に塗布液を塗布して塗膜を形成するためのものである。なお、本実施形態では塗布機構92が、電極材料のスラリーを塗布するスリットダイであるものを例に説明するが、塗布機構92はスリットダイに限らず、たとえば、グラビア塗布方式やコンマコーター塗布方式、インクジェット塗布方式に対応するものであってもよい。
【0037】
塗布機構92は、基材Wの幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール91dが、塗布機構92に対して、塗布ロール91dの回転軸方向と塗布機構92の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。
【0038】
また、塗布機構92は、図1に示すように塗布液供給路92dに接続され、幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド92aと、このマニホールド92aと繋がった幅方向に広いスリット92bと、幅方向においてスリット92bと同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口92cにより構成される。これにより、マニホールド92aに溜められた塗布液がスリット92bを経由して、吐出口92cから基材Wに吐出される。また、吐出口92cは、塗布ロール91dと基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口92cは基材Wの表面側で基材Wと対向している。これにより、吐出口92cと基材Wとの間隔を一定に保った状態で、基材Wに塗布液を塗布することができる。
【0039】
塗布液供給路92dは、マニホールド92aと塗布液が貯留されている塗布液タンク92eを接続している。そして、図示しないポンプにより塗布液タンク92eから塗布液供給路92dを介してマニホールド92aに塗布液を供給する。
【0040】
これらの構成を有する塗布機構92によって、基材Wの所定面に塗膜を形成することができる。
【0041】
また、基材Wの所定面の裏面に塗布液を塗布して塗膜を形成できるよう塗布機構92を設けてもよい。これにより、基材Wの所定面の裏面に塗膜を形成することができる。また、基材Wの両面に塗布液を塗布して塗膜を形成できるよう塗布機構92を2つ設けてもよい。これにより、基材Wの両面に塗膜を形成することができる。
【0042】
本実施形態における乾燥システム100は、塗布機構92により基材Wに形成された塗膜を乾燥させるためのものであり、図2に示すように塗膜を加熱して乾燥する乾燥ユニット1と、乾燥ユニット1により塗膜が加熱されることで気化したNMP溶剤(以下、溶剤と呼ぶ)を冷却して回収する溶剤回収ユニット2と、乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させる循環路3と、循環路3を介して乾燥ユニット1から溶剤回収ユニット2に向かうガスと循環路3を介して溶剤回収ユニット2から乾燥ユニット1に向かうガスとの間で熱交換を行う第1の熱交換ユニット4と、を備えている。
【0043】
本実施形態におけるガスは、特に制限されず、たとえば、空気であってもよいし、NガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、乾燥ユニット1による塗膜の乾燥に用いられる。
【0044】
循環路3は、乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させるための所謂配管である。この循環路3は、ガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えないように希釈するための大量のガスを循環させることができるよう、十分な開口面積を有している。
【0045】
本実施形態における循環路3は、図2に示すように後述する加熱部12から後述する乾燥炉11にガスを送るよう接続された循環路3a、乾燥炉11から後述する第1の熱交換ユニット4にガスを送るよう接続された循環路3b、第1の熱交換ユニット4から後述する冷却部21にガスを送るよう接続された循環路3c、冷却部21から第1の熱交換ユニット4にガスを送るよう接続された循環路3d、第1の熱交換ユニット4から加熱部12にガスを送るよう接続された3eにより構成されている。
【0046】
そして、これら循環路3の各所にガスを循環させるためのファンが設けられている。
【0047】
これら構成により、循環路3は、加熱部12から乾燥炉11、第1の熱交換ユニット4、冷却部21、第1の熱交換ユニット4、加熱部12へ、というようにガスを循環させる。
【0048】
本実施形態における乾燥ユニット1は、塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、図1に示すように搬送機構91による基材Wの搬送経路上において塗布機構92よりも下流側に設けられている。この乾燥ユニット1は、図2に示すように塗膜をその内部で加熱するための乾燥炉11と、乾燥炉11に向かうガスを加熱する加熱部12と、を有している。
【0049】
乾燥炉11は、図1に示すように基材Wの搬送方向に長く形成された筐体であり、搬送機構91による基材Wの搬送経路上に設けられる。この乾燥炉11は、内部に基材Wが通過する空間と、この空間に基材Wが出入りするための入口および出口を有している。そして、塗膜が形成された基材Wが搬送機構91により乾燥炉11内を通過するよう搬送される。
【0050】
加熱部12は、循環路3によるガスの循環方向において乾燥炉11の手前に設けられ、循環路3による循環において冷却部21から乾燥炉11に向かうガス、および循環路3を介して後述するガス供給手段5から乾燥炉11に向かうガスを加熱するためのものである。この加熱部12は、図2に示すように循環路3aにより乾燥炉11に接続されている。この加熱部12により乾燥炉11に向かうガスを加熱することができる。なお、加熱部12は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであるとよい。
【0051】
そして、加熱部12により加熱されて高温となったガスが循環路3aを通じて図示しないノズルから乾燥炉11内に導入される。これにより、乾燥炉11内の塗膜を高温環境にさらし、乾燥させることができる。このとき、乾燥炉11内で溶剤が気化する。
【0052】
本実施形態における溶剤回収ユニット2は、乾燥炉11内で気化した溶剤を回収するためのものであり、乾燥炉11と付設するよう設けられている。この溶剤回収ユニット2は、図2に示すように気化した溶剤を含むガスを冷却するための冷却部21と、冷却により液化した溶剤を貯留する溶剤貯留部22と、冷却部21と溶剤貯留部22を接続する溶剤回収配管23と、を有している。
【0053】
冷却部21は、乾燥炉11で塗膜が加熱されて気化した溶剤を含むガスを冷却し、溶剤を液化させるためのものであり、図2に示すように循環路3bおよび循環路3cにより乾燥炉11と接続されている。この冷却部21により循環路3bおよび循環路3cを通じて乾燥炉11から送られてきたガスを冷却し、ガスに含まれる溶剤を液化することができる。なお、冷却部21は、たとえば、水冷方式若しくは冷媒方式を用いる冷却器であるとよい。
【0054】
また、冷却部21を乾燥炉11の近傍に配置するとよい。これにより、循環路3bおよび循環路3cの経路長を短くすることができ、乾燥システム100の導入に必要なダクト容積にかかるコストを削減することができる。
【0055】
溶剤貯留部22は、冷却部21により溶剤を含むガスを冷却し、液化した溶剤を貯留するためのものであり、図2に示すように後述する溶剤回収配管23により冷却部21と接続されている。この溶剤貯留部22は、たとえばタンクであり、溶剤回収配管23から送られてきた溶剤を貯留する。
【0056】
溶剤回収配管23は、図2に示すように冷却部21と溶剤貯留部22を接続し、冷却部21により液化された溶剤を溶剤貯留部22に送るためのものである。なお、溶剤回収配管23は、必須ではなく、たとえば冷却部21に開口を設けてその開口から液剤回収部22に直接溶剤を回収する構成としてもよい。
【0057】
これら構成により溶剤回収ユニット2は、乾燥炉11から循環路3を介して送られてきたガスから溶剤を分離回収することができる。
【0058】
そして、溶剤回収ユニット2で溶剤が分離回収されたガスは、再び循環路3を介して乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間で循環されるようになっている。
【0059】
第1の熱交換ユニット4は、循環路3を介して乾燥ユニット1から溶剤回収ユニット2に向かうガスと循環路3を介して溶剤回収ユニット2から乾燥ユニット1に向かうガスとの間で熱交換を行うためのものであり、図2に示すように乾燥炉11から冷却部21に向かうガスが通過するように循環路3bと循環路3cに接続され、冷却部21から加熱部12に向かうガスが通過するように循環路3dと循環路3eに接続されるよう配置されている。
【0060】
この第1の熱交換ユニット4は、所謂熱交換器であり、その内部を乾燥炉11から冷却部21に向かうよう循環路3bを通る高温のガスと冷却部21から加熱部12に向かうよう循環路3dを通る低温のガスが通過することで、高温のガスと低温のガスとで熱交換を行う。これにより、乾燥炉11から冷却部21に向かうガスは、循環路3bを通るガスよりも第1の熱交換ユニット4を通過後の循環路3cを通るガスの方が低温になり、冷却部21から加熱部12に向かうガスは、循環路3dを通るガスよりも第1の熱交換ユニット4を通過後の循環路3eを通るガスの方が高温になる。
【0061】
これら構成により、乾燥炉11から冷却部21に向かうガスが冷却部21に到達するまでに冷却され、冷却部21から加熱部12に向かうガスが加熱部12に到達するまでに加熱されるため、第1の熱交換ユニット4がない場合と比べて加熱部12と冷却部21により所定温度までガスを加熱、冷却するために必要なエネルギーを抑えることができる。すなわち、従来よりも消費するエネルギーを削減することができ、ランニングコストを削減することができる。
【0062】
また、乾燥システム100は、ガスを供給するガス供給手段5と、ガスを排気するガス排気手段6と、ガスに含まれる溶剤の濃度を測定する図示しない濃度測定手段とを備えている。
【0063】
ガス供給手段5は、乾燥システム100の動作中に乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間で循環するガスの流量の一部となる流量のガスを連続して加えるためのものである。このガス供給手段5は、図2に示すようにガスの供給源であるガス供給部51と、ガス供給部51と循環路3を接続するガス供給配管52とを有している。そして、図示しないファンをガス供給配管52に設けることで、ファンによりガス供給配管52を介してガス供給部51に貯留されたガスを循環路3に送る。
【0064】
また、ガス供給配管52は、図2に示すように冷却部21と第1の熱交換ユニット4を接続する循環路3dと接続されているとよい。これにより、ガス供給部51から供給されるガスが、冷却部21から第1の熱交換ユニット4に向かうガスと循環路3dで合流し、第1の熱交換ユニット4を通過してから加熱部12を経由して乾燥炉11に供給される。したがって、ガス供給部51から供給されるガスが加熱部12に到達するまでに第1の熱交換ユニット4で加熱されるため、ガス供給配管52がたとえば循環路3eと接続されて直接加熱部12に送られる場合と比べて、加熱部12が所定の温度までガスを加熱するために必要なエネルギーを削減することができる。すなわち、従来よりもランニングコストを削減することができる。
【0065】
ガス排気手段6は、乾燥炉11内のガスを排気する図示しない排気部と、乾燥炉11内のガスを排気部へ送るための所謂配管であるガス排気配管61とを有している。このガス排気配管61のファンの回転速度は制御可能であり、このファンにより排気量を調節しながら乾燥炉11内のガスを排気部へ送って排気させるようになっている。
【0066】
そして、ガス排気手段6により排気部から排気する量と同等のガスをガス供給手段5により供給するようになっている。これにより、排気量を調節しながら乾燥炉11内のガスを排気部から排気することができるため、乾燥炉11内の圧力が所定の値を維持するよう制御することができ、乾燥炉11内を乾燥炉11外に対して負圧にして乾燥炉11からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0067】
濃度測定手段は、ガスに含まれる溶剤の濃度を測定するための所謂濃度測定器であって、乾燥システム100の所定位置に配置される。この濃度測定手段による測定結果をもとに乾燥システム100を構成する各部でガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えないようにガス供給手段5から送る溶剤を含まないガスの量を調節する。ここで、ガス供給手段5から送るガスの量と同等の量のガスをガス排気手段6により排気する。これにより、乾燥炉11内の圧力を所定の値に維持しつつ、ガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えないようにすることができる。なお、冷却部21による冷却温度を調節し、溶剤回収部22により冷却回収する能力を調節することで、冷却部21から乾燥炉11に戻されるガスに含まれる溶剤の濃度を調節してもよい。
【0068】
また、乾燥システム100は、乾燥炉11から排気部に向かうガスとガス供給部51から循環路3dに向かうガスとの間で熱交換を行う第2の熱交換ユニット7を備えているとよい。
【0069】
第2の熱交換ユニット7は、図2に示すように乾燥炉11から排気部に向かうガスが通過するようにガス排気配管61aとガス排気配管61bに接続され、ガス供給部51から循環路3dに向かうガスが通過するようにガス供給配管52aとガス供給配管52bに接続されるよう配置されている。
【0070】
この第2の熱交換ユニット7は、所謂熱交換器であり、その内部を乾燥炉11から排気部に向かうようガス排気配管61aを通る高温のガスとガス供給部51から循環路3dに向かうようガス供給配管52aを通る低温のガスが通過することで、高温のガスと低温のガスとで熱交換を行う。これにより乾燥炉11から排気部に向かうガスは、ガス排気配管61aを通るガスよりも第2の熱交換ユニット7を通過後のガス排気配管61bを通るガスの方が低温になり、ガス供給部51から循環路3dに向かうガスは、ガス供給配管52aを通るガスよりも第2の熱交換ユニット7を通過後のガス供給配管52bを通るガスの方が高温になる。
【0071】
これら構成により、ガス供給部51から循環路3dに向かうガスが循環路3dに到達するまでに加熱される。そして、第2の熱交換ユニット7によって加熱されたガスが第1の熱交換ユニット4を経由してさらに加熱された状態で加熱部12に送られるため、第2の熱交換ユニット7がない場合と比べて加熱部12により所定の温度までガスを加熱するために必要なエネルギーをより削減することができる。すなわち、従来よりも消費するエネルギーをより削減することができ、ランニングコストをより削減することができる。
【0072】
また、乾燥システム100は、溶剤回収ユニット2により回収された溶剤を再利用するための図示しない溶剤再利用手段を備えていているとよい。
【0073】
溶剤再利用手段は、溶剤を塗布液として再利用するために溶剤と溶剤以外の塗布液の材料(たとえば、活物質、バインダー、導電助剤など)を調合するための図示しない調合部と、調合部に溶剤を送るための図示しない配管と、調合部により調合された塗布液を調合部から塗布液タンク92eに送るための図示しない配管を有している。これら配管には図示しないポンプが設けられ、溶剤と塗布液が配管内を送液されるようになっている。そして、調合部からタンク92eに送液された塗布液は、塗布機構92により塗布される。
【0074】
これら構成により、溶剤回収ユニット2により回収した溶剤を再利用することができるため、溶剤の消費量を抑えることができ、コストをより削減することができる。
【0075】
また、乾燥システム100は、ガス排気手段6により排気されたガスに含まれる溶剤を回収するための図示しない排気溶剤回収手段を備えているとよい。
【0076】
排気溶剤回収手段は、たとえば水などに吸収させるものであるとよい。以下の説明では、溶剤を水に吸収させるものを例に説明する。
【0077】
この排気溶剤回収手段は、溶剤を吸収させるための水を貯留する図示しない排気溶剤貯留部を有している。この排気溶剤貯留部は、排気部に接続された水が貯留された所謂タンクであり、貯留された水に乾燥炉11から送り込まれたガスに含まれる溶剤を吸収させるようになっている。これにより、排気部から排気されたガスに含まれる溶剤を吸収することができる。
【0078】
そして、排気溶剤貯留部により回収され、水と混ざった溶剤を蒸留精製して水と分離し、前述した溶剤再利用手段と同様に調合部で溶剤以外の塗布液の材料(たとえば、活物質、バインダー、導電助剤など)と調合し、塗布液として塗布液タンク92eに供給して塗布機構92により塗布してもよい。これにより、コストをより削減することができる。
【0079】
このように本実施形態における乾燥システム100によれば、ガスを循環路3により循環させているため、ガスの供給・排気量を従来のものと比べて大幅に削減することができる為、ファンの駆動エネルギーや加熱エネルギーを削減することができる。すなわち、従来よりも消費するエネルギーを削減することができる。また、ガス供給・排気ファンをコンパクトにできると共に、ランニングコストを削減することができる。これに加えて、ガスを供給、排気するための配管の開口面積を従来よりも小さくすることができるため、設備の導入にかかるコストを削減することができる。
【0080】
また、循環路3により循環するガスを加熱部12と冷却部21に到達するまでに第1の熱交換ユニット4と第2の熱交換ユニット7より加熱、冷却するため、加熱部12と冷却部21により所定の温度までガスを加熱、冷却する際に必要なエネルギーを削減することができる。これにより、従来よりも消費するエネルギーを削減することができ、ランニングコストを削減することができる。そして、従来よりも消費するエネルギーを削減することができるため、排出されるCOを削減することができる。
【0081】
また、溶剤回収ユニット2と排気溶剤回収手段により回収された溶剤を塗布液として塗布機構92から再び塗布できるよう再利用するため、溶剤にかかる費用を削減することができる。
【0082】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における乾燥システム100について図3および図4を用いて説明する。本実施形態では、乾燥システム100が、乾燥ユニット1を基材Wの搬送経路に沿って複数備え、これら複数の乾燥ユニット1のうち、基材Wの搬送方向における最初と最後の乾燥ユニット1を溶剤回収ユニット2と接続しない点で第一実施形態と異なっている。
【0083】
図3は、本実施形態における乾燥システム100を説明するための図である。図4は、本発明の一実施形態における乾燥進行と塗膜の含水率の関係を示す図であり、図4に示すAが塗膜の温度を示し、図4に示すBが含水率を示す。ここでいう含水率とは、塗膜内の溶剤の含有量において塗布直後の含有量と比較したもののことであり、含水率が下がるほど塗膜が乾燥している。
【0084】
本実施形態における乾燥システム100は、図3に示すように乾燥ユニット1を基材Wの搬送経路に沿って複数備えている。
【0085】
そして、複数の乾燥ユニット1のうち、後述の通り塗膜の乾燥工程で塗膜から溶剤がほぼ気化しない乾燥ユニット1には、溶剤回収ユニット2を接続しない。本実施形態では、図3に示すように基材Wの搬送方向における最初に位置する乾燥ユニット1aを含む後述する乾燥初期にあたる乾燥ユニット1と最後に位置する乾燥ユニット1bを含む後述する乾燥後期にあたる乾燥ユニット1には、溶剤回収ユニット2を接続しない。
【0086】
これら乾燥ユニット1aと乾燥ユニット1bは、循環路3を介して溶剤回収ユニット2と接続していない点以外は、第一の実施形態で説明した乾燥ユニット1の構成と同様の構成をしている。すなわち、乾燥ユニット1aと乾燥ユニット1bは、それぞれを溶剤回収ユニット2と接続するための循環路3c、循環路3d、および循環路3eと接続されておらず、循環路3bがガス供給配管52と接続され、ガス供給配管52が加熱部12に接続されるようになっている。そのため、乾燥ユニット1aと乾燥ユニット1bの各々の乾燥炉11内のガスは、ガス排気手段6により排気されるものを除いて循環路3b、ガス供給配管52、および循環路3aにより循環する。
【0087】
また、複数の乾燥ユニット1のうち、塗膜の乾燥工程で塗膜から溶剤が気化しやすい乾燥ユニット1には、溶剤回収ユニット2を接続する。本実施形態では、図3に示すように乾燥ユニット1aと乾燥ユニット1bの間に位置する乾燥ユニット1cを含む後述する乾燥中期にあたる乾燥ユニット1には、溶剤回収ユニット2を接続する。
【0088】
具体的に説明する。本実施形態における乾燥システム100による塗膜の乾燥工程は、図4に示すように乾燥初期、乾燥中期、および乾燥後期に分けられる。乾燥初期は、図4に示すように塗膜の温度を比較的急速に上げる領域となり、塗膜の含水率が含水率aのようにほぼ横ばいになる。すなわち、乾燥初期は、塗膜の温度を高める領域になっており、塗膜から溶剤が気化しにくくなっている。そのため、塗膜を最初に加熱する乾燥ユニット1aによる乾燥工程が乾燥初期にあたり、溶剤を回収する必要がないので、乾燥ユニット1aを溶剤回収ユニット2と接続しない。
【0089】
乾燥中期では、図4に示すように溶剤が気化し塗膜の含水率が含水率bから含水率cのように下がり乾燥する領域である。乾燥する領域では溶剤の蒸発による状態変化により塗膜の温度がほぼ一定に維持される。そのため、乾燥ユニット1aと乾燥ユニット1bの間に位置する乾燥ユニット1cによる乾燥工程が乾燥中期にあたり、溶剤を回収する必要があるので、乾燥ユニット1cを溶剤回収ユニット2と接続する。
【0090】
そして乾燥後期では、塗膜中の溶剤が残留分の僅かな量となり含水率として図4に示すように低くなり一定に保たれながら、再び塗膜の温度が上昇し設定した温度プロセスとなる。すなわち、乾燥後期では、塗膜の温度が所定温度まで上がり塗膜が乾燥しきった領域であり、溶剤が気化しやすい状態から気化しにくい状態になっている。そのため、塗膜を最後に加熱する乾燥ユニット1bによる乾燥工程が乾燥後期にあたり、溶剤を回収する必要がないので、乾燥ユニット1bを溶剤回収ユニット2と接続しない。
【0091】
これにより、溶剤回収ユニット2を溶剤がほぼ気化せず、回収を必要としない乾燥ユニット1のために設けていないため、すべての乾燥ユニット1に溶剤回収ユニット2を接続する場合に比べて設備の設置費と設備を稼働するためのランニングコストを削減することができる。
【0092】
また、溶剤回収ユニット2に接続しない乾燥ユニット1では、溶剤回収ユニット2の冷却部21によりガスを冷却させることがないため、循環経路における加熱部12の手前のガスの温度が比較的高くなる。これにより、加熱部12がガスを所定の温度まで加熱するために必要なエネルギーを比較的少なくすることができる。すなわち、消費するエネルギーを削減することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、乾燥システム100が複数の乾燥ユニット1を備え、これら乾燥ユニット1に溶剤回収ユニット2が接続して設けられている場合、それぞれの乾燥ユニット1に溶剤回収部22を必ず設ける必要がなく、それぞれの冷却部21から共通の溶剤回収部22に溶剤が回収されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
100 乾燥システム
1 乾燥ユニット
1a 乾燥ユニット
1b 乾燥ユニット
1c 乾燥ユニット
11 乾燥炉
12 加熱部
2 溶剤回収ユニット
21 冷却部
22 溶剤貯留部
23 溶剤回収配管
3 循環路
3a 循環路
3b 循環路
3c 循環路
3d 循環路
3e 循環路
4 第1の熱交換ユニット
5 ガス供給手段
51 ガス供給部
52 ガス供給配管
52a ガス供給配管
52b ガス供給配管
6 ガス排気手段
61 ガス排気配管
61a ガス排気配管
61b ガス排気配管
7 第2の熱交換ユニット
8 排気溶剤回収手段
900 塗布装置
91 搬送機構
91a 巻出ロール
91b 巻取ロール
91c 搬送ロール
91d 塗布ロール
92塗布機構
92a マニホールド
92b スリット
92c 吐出口
92d 塗布液供給路
92e 塗布液タンク
W 基材
a 含水率
b 含水率
c 含水率
d 含水率
e 含水率
図1
図2
図3
図4