(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036093
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】吸引車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20230307BHJP
E01H 1/08 20060101ALI20230307BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B60P3/00 Q
E01H1/08 B
F04C25/02 P
F04C25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142887
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山田 大二
【テーマコード(参考)】
2D026
3H129
【Fターム(参考)】
2D026AC02
2D026AC03
3H129AA07
3H129AB06
3H129BB32
3H129CC22
3H129CC26
3H129CC42
(57)【要約】
【課題】洗浄用水タンクの所要搭載スペースの狭小化を実現することで、限られた車両空間をより有効に利用できる吸引車を提供すること。
【解決手段】吸引した回収物1を収容する収容タンク20と、シール及び冷却に水を要し収容タンク20を減圧する真空ポンプ30と、収容タンク20から真空ポンプ30へ向かう空気と回収物1の混合流体が流入し、流入した混合流体を内部に貯留している水を利用して空気と回収物1に分離するセパレータ50と、真空ポンプ30に供給する水を貯留すると共に、真空ポンプ30から吐出された気水流体を気体と水に分離する補給水タンク60と、洗浄に用いる水を貯留する洗浄用水タンク70とを備え、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70が、水平方向に連設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引した回収物を収容する収容タンクと、
シール及び冷却に水を要し前記収容タンクを減圧する真空ポンプと、
前記収容タンクから前記真空ポンプへ向かう空気及び前記回収物の混合流体が流入し、流入した前記混合流体を内部に貯留している水を利用して前記空気と前記回収物に分離するセパレータと、
前記真空ポンプに供給する水を貯留すると共に、前記真空ポンプから吐出された気水流体を気体と水に分離する補給水タンクと、
洗浄に用いる水を貯留する洗浄用水タンクとを備え、
前記セパレータ、前記補給水タンク、及び前記洗浄用水タンクが、水平方向に連設されていることを特徴とする吸引車。
【請求項2】
前記洗浄用水タンクの一方に前記セパレータが密接し、前記洗浄用水タンクの他方に前記補給水タンクが密接していることを特徴とする請求項1に記載の吸引車。
【請求項3】
前記洗浄用水タンクが貯留する水の液面は、前記セパレータ及び前記補給水タンクが貯留する水の液面よりも高くすることが可能であることを特徴とする請求項2に記載の吸引車。
【請求項4】
前記セパレータ、前記洗浄用水タンク、及び前記補給水タンクが一直線に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸引車。
【請求項5】
一つの容器内が複数の仕切板により複数の区画に分割され、前記セパレータ、前記補給水タンク、及び前記洗浄用水タンクは、それぞれ前記区画の一つとして設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸引車。
【請求項6】
前記仕切板が弓状に湾曲していることを特徴とする請求項5に記載の吸引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道・側溝清掃などで生じる汚泥や、建設現場で発生する土砂などを吸引して運搬する吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
強力吸引車は、真空ポンプの入口側に配置され集塵機能を有するセパレータ(3次キャッチャ)と、真空ポンプの出口側に配置され封入水分離機能及び封入水貯留機能を有する補給水タンク(4次キャッチャ)と、車両や床面等の洗浄に用いる水を貯え水ポンプに供給する洗浄用水タンク等を備える。
セパレータ(3次キャッチャ)と補給水タンク(4次キャッチャ)は一体で設けられることもあるが、洗浄用水タンクは、セパレータや補給水タンクとは別に設けられる。
例えば、特許文献1には、汚水、汚泥や土砂などの処理物を収容するタンクと、シールと冷却に水を要する真空ポンプと、真空ポンプに供給する水を貯えるポンプ冷却水タンクとを備え、真空ポンプによってタンクを減圧し、ポンプ冷却水タンクの水を真空ポンプに供給するとともに、真空ポンプから吐出された水をポンプ冷却水タンクに戻すことで水を循環させて真空ポンプをシールするとともに冷却し、更に、洗浄に用いる洗浄水を貯える洗浄用水タンクを有し、真空ポンプを冷却した後の水を、洗浄用水タンク内の洗浄水で冷却する吸引作業車が開示されている。
また、特許文献2には、レシーバタンクと、該レシーバタンク内を減圧する吸引装置を車両に搭載し、吸引装置は、水封式真空ポンプと、レシーバタンクと水封式真空ポンプとの間に設けられた集塵装置を備え、集塵装置はサイクロンからなる2次キャッチャと水槽からなる3次キャッチャとからなり、レシーバタンクは、内部空間が仕切られて、一方の空間が被回収物を収容する被回収物収容室、他方の空間が封入水を入れた封入水室とされ、これら被回収物収容室と封入水室は2次キャッチャを介して連通連結され、封入水室は3次キャッチャを構成し且つ水封式真空ポンプと接続されて内部の封入水を冷却水として水封式真空ポンプ内に供給可能に構成した吸引車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-224422号公報
【特許文献2】特開2006-336567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に対する排ガス規制強化の影響等により、強力吸引車には従来にも増して様々な機器類が搭載されるようになってきている。そのため、例えば補給水タンクの上方に設けた架台に洗浄用水タンクを載せるなど、洗浄用水タンクの搭載スペースは、限られた車両空間の中で工夫してようやく確保している。
そこで、本発明は、洗浄用水タンクの所要搭載スペースの狭小化を実現することで、限られた車両空間をより有効に利用できる吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の吸引車は、吸引した回収物1を収容する収容タンク20と、シール及び冷却に水を要し収容タンク20を減圧する真空ポンプ30と、収容タンク20から真空ポンプ30へ向かう空気と回収物1の混合流体が流入し、流入した混合流体を内部に貯留している水を利用して空気と回収物1に分離するセパレータ50と、真空ポンプ30に供給する水を貯留すると共に、真空ポンプ30から吐出された気水流体を気体と水に分離する補給水タンク60と、洗浄に用いる水を貯留する洗浄用水タンク70とを備え、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70が、水平方向に連設されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の吸引車において、洗浄用水タンク70の一方にセパレータ50が密接し、洗浄用水タンク70の他方に補給水タンク60が密接していることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の吸引車において、洗浄用水タンク70が貯留する水の液面は、セパレータ50及び補給水タンク60が貯留する水の液面よりも高くすることが可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸引車において、セパレータ50、洗浄用水タンク70、及び補給水タンク60が一直線に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸引車において、一つの容器内が複数の仕切板71により複数の区画に分割され、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70は、それぞれ区画の一つとして設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の吸引車において、仕切板71が弓状に湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄用水タンクの所要搭載スペースが狭小化され、限られた車両空間をより有効に利用できる吸引車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】同連設されたセパレータ、補給水タンク、及び洗浄用水タンクを示す図
【
図4】同連設されたセパレータ、補給水タンク、及び洗浄用水タンクを示すイメージ図
【
図5】同洗浄用水タンクの液面高さを変えて実施した騒音測定結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態による吸引車は吸引した回収物を収容する収容タンクと、シール及び冷却に水を要し収容タンクを減圧する真空ポンプと、収容タンクから真空ポンプへ向かう空気と回収物の混合流体が流入し、流入した混合流体を内部に貯留している水を利用して空気と回収物に分離するセパレータと、真空ポンプに供給する水を貯留すると共に、真空ポンプから吐出された気水流体を気体と水に分離する補給水タンクと、洗浄に用いる水を貯留する洗浄用水タンクとを備え、セパレータ、補給水タンク、及び洗浄用水タンクが、水平方向に連設されているものである。
本実施の形態によれば、洗浄用水タンクの所要搭載スペースを狭小化することができる。
【0014】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による吸引車において、洗浄用水タンクの一方にセパレータが密接し、洗浄用水タンクの他方に補給水タンクが密接しているものである。
本実施の形態によれば、セパレータ及び補給水タンクから生じる騒音、並びにセパレータ及び補給水タンクの温度変化を効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による吸引車において、洗浄用水タンクが貯留する水の液面は、セパレータ及び補給水タンクが貯留する水の液面よりも高くすることが可能であるものである。
本実施の形態によれば、セパレータ及び補給水タンクから生じる騒音をより一層抑制することができる。
【0016】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による吸引車において、セパレータ、洗浄用水タンク、及び補給水タンクが一直線に配置されているものである。
本実施の形態によれば、他の機器等の搭載スペースを確保しやすくなる。
【0017】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態による吸引車において、一つの容器内が複数の仕切板により複数の区画に分割され、セパレータ、補給水タンク、及び洗浄用水タンクは、それぞれ区画の一つとして設けられているものである。
本実施の形態によれば、より一層の、洗浄用水タンク所要搭載スペースの狭小化と、架装作業等の効率化等を図ることができる。
【0018】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による吸引車において、仕切板が弓状に湾曲しているものである。
本実施の形態によれば、仕切板が圧力変動や脈動等によっても振動しにくくなり、騒音をより一層軽減することができる。
【実施例0019】
以下、本発明の一実施例による吸引車について説明する。
図1は本実施例による吸引車の外観図であり、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は側面図である。
図2は本実施例による吸引車の主要構成を示すフローシートであり、太矢印は吸引作業時の空気の流れを示し、二連矢印は排出作業時の空気の流れを示し、細矢印は補給水の流れを示し、点線矢印は回収物1の流れを示している。
吸引車は、下水道・側溝清掃などで生じる汚泥や、建設現場で発生する土砂などといった回収物1を吸引して回収する。
吸引車は、吸入コック11を有し回収物1を吸引する吸引ホース10と、吸引ホース10が吸引した回収物1を収容する収容タンク20(1次キャッチャ)と、シール及び冷却に水を要し収容タンク20を減圧する水封式の真空ポンプ30と、収容タンク20から真空ポンプ30へ向かう空気と回収物1の混合流体から回収物1をある程度除去するサイクロン式の集塵機40(2次キャッチャ)と、集塵機40を経た混合流体が流入し、流入した混合流体を内部に貯留している水を利用して空気と回収物1に分離するセパレータ50(3次キャッチャ)と、真空ポンプ30に供給する水(補給水)を貯留すると共に、真空ポンプ30から吐出された気水流体を気体と水に分離する補給水タンク60(4次キャッチャ)と、車両や床面等の洗浄に用いる水を貯留する洗浄用水タンク70を備える。洗浄用水タンク70内の水は、水ポンプ(図示なし)等を介して散水される。
【0020】
収容タンク20は円筒形であり、荷台の後部において中心軸を水平方向かつ車体前後方向として設置されている。吸引ホース10は、後端が収容タンク20内に上向きに位置し、先端側が収容タンク20の外へ延出している。収容タンク20内には、吸引ホース10の後端近傍にて吸引ホース10の後端よりも上方に配置された衝突板21と、衝突板21から水平方向に所定距離あけた位置において上方へ突出した主マンホール22が設けられている。
吸引ホース10の先端から吸引された回収物1は、空気と共に吸引ホース10の後端から噴出して衝突板21に斜めの角度から衝突し、下方へ跳ね返されて収容タンク20の下部に溜まっていく。
主マンホール22には第一配管80の一端が接続しており、第一配管80の他端は集塵機40に接続している。第一配管80の途中にはメインバルブ81が設けられている。吸引作業時は、メインバルブ81が開となり、収容タンク20を出た混合流体(回収物1混じりの空気)が第一配管80を流れて集塵機40に流入する。回収物1は集塵機40内に生じる旋回流によって集塵機40内の下部に落ちて溜まり、空気は集塵機40の上部に一端が接続している第二配管90へ排出される。集塵機40を出た空気には回収物1がまだ混じっている可能性がある。
【0021】
第二配管90の他端はセパレータ50の上部に接続しており、集塵機40を出た空気はセパレータ50に下方向きに流入する。セパレータ50内は、所定量の水が貯留されていると共にその上方は空間となっており、水面は、概ねセパレータ50を形成する容器の高さの約1/3~1/2の高さにある。セパレータ50に流入した回収物1混じりの空気は水に衝突し、これによって回収物1が水に捕捉され、回収物1が分離された空気はセパレータ50の上部に一端が接続している第三配管100へ排出される。
【0022】
第三配管100の他端は真空ポンプ30に接続しており、セパレータ50を出た空気は真空ポンプ30に流入する。真空ポンプ30は、シールと冷却に水を用いるポンプである。本実施例では、真空ポンプ30として、1段側ポンプ室31と2段側ポンプ室32が直列につながれた湿式ルーツブロワを用いている。
1段側ポンプ室31の出口には第四配管110の一端が接続しており、第四配管110の他端は補給水タンク60の上部に接続している。第四配管110の途中には、一端が第四配管110に接続し他端が2段側ポンプ室32の入口に接続した第一分岐管111が設けられていると共に、チェッキ弁112が第一分岐管111との接続箇所よりも下流側に設けられている。
2段側ポンプ室32の出口には第五配管120の一端が接続しており、第五配管120の他端は第四配管110にチェッキ弁112よりも下流側の位置で接続している。第五配管120の途中には、一端が第五配管120に接続し他端が第一配管80に接続した第二分岐管121が設けられていると共に、第二分岐管121との接続箇所よりも下流側には、吸引作業時に開、排出作業時に閉となる加圧切替バルブ122が設けられている。第二分岐管121の途中には、第三分岐管123の一端が接続していると共に、その接続箇所よりも下流側には、吸引作業時に閉、排出作業時に開となる加圧バルブ124が設けられている。第三分岐管123の他端は第五配管120に加圧切替バルブ122よりも下流側の位置で接続しており、その途中には加圧安全弁125が設けられている。
また、第一配管80において、第二分岐管121との接続箇所よりも下流側にはドレントラップ150と圧力計160が設けられている。
【0023】
真空ポンプ30から排出された空気及び水からなる気水流体は、第四配管110を流れて補給水タンク60に流入する。
補給水タンク60内は、所定量の水が貯留されていると共にその上方は空間となっており、水面は、概ね補給水タンク60を形成する容器の高さの約1/3~1/2の高さにある。補給水タンク60に流入した空気及び水のうち、水は補給水として利用するため回収され、空気は補給水タンク60の上部に設けられた排気管61から大気に放出される。
排気管61には第四分岐管140の一端が接続しており、第四分岐管140の他端は第二配管90に接続している。第四分岐管140の途中には、吸引作業時に閉、排出作業時に開となる負荷開放弁141が設けられている。
補給水タンク60の下部には、補給水を真空ポンプ30へ送出する送出配管130の一端が接続しており、送出配管130の他端は第三配管100のうち真空ポンプ30に近い位置に接続している。送出配管130には、補給水の供給有無を作業員等が目視確認するための透視管131が設けられている。
【0024】
図3は連設されたセパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は上方斜視図、
図3(c)は下方斜視図、
図3(d)は左側面図、
図3(e)は右側面図である。なお、
図3においては、セパレータ50と補給水タンク60の上半分を透視化している。透視化している部分は水の無い空間であり、その下半分には水が貯留されている。また、
図4は連設されたセパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を示すイメージ図である。
セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70は、一つの円筒形容器で一体に形成され、荷台のうち収容タンク20よりも前方の位置において、中心軸を水平方向かつ車体幅方向として設置されている。このようにセパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を水平方向に連設することで、洗浄用水タンク70の所要搭載スペースの狭小化を図ることができる。また、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を一つの架台170を利用して設置することができるため、部品点数を減らし架装作業等を効率化できる。また、洗浄用水タンク70を補給水タンク60の上方に設置する場合などと比べて洗浄用水タンク70の設置高さを低くできるため、吸引車の走行安定性の向上に寄与する。
セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70は、例えば、上方視したときに弧状になるように連設することもできるが、一直線に連設することが好ましい。これにより、他の機器等の搭載スペースを確保しやすくなる。
なお、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70に加えて、作動油タンクなど、他のタンク等を連設することもできる。
【0025】
一つの円筒形容器の内部は、二つの仕切板71により三つの区画に分割されており、セパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70は、各区画の一つとして設けられている。
それぞれ別個の容器として製造したセパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を、荷台において水平方向に連結又は近接配置することで、水平方向に連設することも可能であるが、本実施例のように、一つの容器にセパレータ50、補給水タンク60、及び洗浄用水タンク70を一体に設けることで、より一層の、洗浄用水タンク70所要搭載スペースの狭小化と、架装作業等の効率化等を図ることができる。
なお、セパレータ50及び補給水タンク60よりも洗浄用水タンク70の高さ寸法を小さくしたり、洗浄用水タンク70の一部を凹ませたりすること等により、配管やポンプ等を配置するスペースを設けることもできる。
【0026】
本実施例においては、各区画のうち中央の区画を洗浄用水タンク70、一端側の区画をセパレータ50、他端側の区画を補給水タンク60とすることで、洗浄用水タンク70の一方にセパレータ50を密接させ、洗浄用水タンク70の他方に補給水タンク60を密接させている。
また、セパレータ50及び補給水タンク60は、略下半分にのみ水を貯留でき、上方は水の無い空間となっているが、洗浄用水タンク70は、底面から上面にかけて水を貯留することができる。これにより、洗浄用水タンク70における水の液面は、セパレータ50及び補給水タンク60における水の液面よりも高くすることが可能となっている。
吸引作業時、セパレータ50においては、内部の圧力変動により側壁が膨張と収縮を繰り返し、振動による騒音が発生する。また、補給水タンク60においても、真空ポンプ30が排出する流体の脈動の影響により騒音が発生する。この騒音は、セパレータ50及び補給水タンク60において上半分が水の無い空間となっていることで増幅される。
これに対し本実施例においては、洗浄用水タンク70がセパレータ50と補給水タンク60との間に位置し、かつ洗浄用水タンク70内の水面はセパレータ50及び補給水タンク60における水面よりも高くなっているため、洗浄用水タンク70が振動抑制ダンパの役割を果たし、騒音を軽減することができる。なお、洗浄用水タンク70は、吸引作業後の洗浄に備えて吸引作業時はほぼ満水になっていることが通常である。
また、仕切板71は、
図4に示すように、弓状に湾曲していることが好ましい。これにより、仕切板71が圧力変動や脈動等によっても振動しにくくなり、騒音をより一層軽減することができる。なお、仕切板71は平板状とすることもできるが、その場合はリブ等の補強材を設けることが好ましい。これにより仕切板71が振動し難くなり、騒音をより一層軽減することができる。
【0027】
また、セパレータ50は、吸引作業時の減圧に伴い温度が低下するが、常温の水を貯留する洗浄用水タンク70が密接していることで、この温度低下を抑制し、セパレータ50の結露を防止することができる。
また、補給水タンク60は、吸引作業時に真空ポンプ30から排出された高温の流体(空気及び水)が流入する影響で内部に貯留している水(補給水)の温度が上昇するが、常温の水を貯留する洗浄用水タンク70が密接していることで、この温度上昇を抑制し、補給水による真空ポンプ30の冷却効果を高めることができる。
このように、洗浄用水タンク70の一方にセパレータ50を密接させ、洗浄用水タンク70の他方に補給水タンク60を密接させることで、洗浄用水タンク70の所要設置スペースの狭小化のみならず、騒音を抑制する効果、及び温度変化を抑制する効果も得ることができる。
また、従来、セパレータ50や補給水タンク60はステンレス製又は鉄製であるのに対して洗浄用水タンク70は樹脂製であることが多いが、洗浄用水タンク70もステンレスや鉄等の金属製とすることが好ましい。これにより、洗浄用水タンク70の一方にセパレータ50を密接させ、洗浄用水タンク70の他方に補給水タンク60を密接させる場合の振動抑制効果、及び温度変化抑制効果を高めることができる。
【0028】
図5は洗浄用水タンク70の液面高さを変えて実施した騒音測定結果を示すグラフであり、縦軸は騒音値(dB)、横軸は周波数である。
図1に示すような吸引車を準備し、円筒形容器内の中央の区画に設けた洗浄用水タンク70の液面が、その両隣の区画に設けられたセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも高い場合と低い場合のそれぞれについて、吸引作業中の騒音を測定した。使用した騒音計はNA-27精密騒音計(リオン株式会社製)であり、測定距離は吸引車の左側面から1m、測定高は1.2mである。なお、本測定においては、洗浄用水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも高い状況とする際は、洗浄用水タンク70をほぼ満水とし、洗浄用水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも低い状況とする際は、洗浄用水タンク70をほぼ空の状態とした。
図5において、単色の棒は洗浄水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも高い場合の騒音値、斜線の棒は洗浄水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも低い場合の騒音値である。
図5に示すように、洗浄用水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも高い場合は、低い場合よりも騒音を抑制できていることが分かる。特に、200Hz以上の高音域においても洗浄用水タンク70の液面がセパレータ50及び補給水タンク60の液面よりも高いほうが騒音値が小さくなっており、洗浄用水タンク70内の水によってセパレータ50及び補給水タンク60の微振動を吸収できていることが見て取れる。