(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036102
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】不燃性積層構造およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230307BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20230307BHJP
B32B 37/04 20060101ALI20230307BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230307BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
E04B1/94 E
E04B1/94 V
B32B33/00
B32B37/04
B32B27/40
B32B27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142909
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521236807
【氏名又は名称】eco断熱株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513239210
【氏名又は名称】小川商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤森 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕二
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA06
2E001HA10
2E001HA11
2E001HF12
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AG00D
4F100AK36A
4F100AK36B
4F100AK36C
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4F100GB07
4F100JJ07
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】既存の構造物にも設けることができ、耐火性能のレベルが難燃化よりも高い不燃化を達成できる積層構造を提供する。
【解決手段】本発明の不燃性積層構造LSは、構造物Stの表面に設けられる不燃性の積層構造であって、前記構造物St側から順に、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層L1と、シリカ粉末Pを含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層L2と、ガラスからなる第3層L3とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に設けられる不燃性の積層構造であって、
前記構造物側から順に、
ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層と、
シリカ粉末を含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層と、
ガラスからなる第3層と
を有することを特徴とする不燃性積層構造。
【請求項2】
前記第1層と前記第2層との間に、前記第2層よりもシリカ粉末の含有量の少ないポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第4層をさらに有する請求項1記載の不燃性積層構造。
【請求項3】
前記第4層のシリカ粉末の含有量が50質量%以下である請求項2記載の不燃性積層構造。
【請求項4】
前記第2層のシリカ粉末の含有量が70質量%以上80質量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の不燃性積層構造。
【請求項5】
前記第3層の層厚が0.2mm以上0.5mm以下である請求項1~4のいずれかに記載の不燃性積層構造。
【請求項6】
構造物の表面に不燃性の積層構造を形成する方法であって、
前記構造物の表面にポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層を形成する第1工程と、
前記第1層の外側に、シリカ粉末を含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層を形成する第2工程と、
前記第2層の表面にレーザ光を照射して前記シリカ粉末を溶融し、前記第2層の表面にガラス化した第3層を形成する第3工程と、
を有することを特徴とする不燃性積層構造の形成方法。
【請求項7】
前記第1層と前記第2層との間に、前記第2層よりもシリカ粉末の含有量の少ないポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第4層を形成する第4工程をさらに有する請求項6記載の不燃性積層構造の形成方法。
【請求項8】
前記第4層のシリカ粉末の含有量を50質量%以下とする請求項7記載の不燃性積層構造の形成方法。
【請求項9】
前記第2層のシリカ粉末の含有量を70質量%以上80質量%以下とする請求項6~8のいずれかに記載の不燃性積層構造の形成方法。
【請求項10】
前記第3層の層厚が0.2mm以上0.5mm以下である請求項6~9のいずれかに記載の不燃性積層構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の表面に設けられる不燃性の積層構造およびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、住宅などの建築構造物の耐火強度を高めるため内装材として不燃性の積層パネルや化粧板などが用いられてきた(例えば特許文献1,2)。しかしながら、基本的にこれらの積層パネルや化粧板は構造物の建築時に組み付けられるものであって、既存の構造物に取り付けるには既存のパネルを取り外して交換する必要があり大きな労力が必要となる。
【0003】
そこで、土木構造物や建築構造物等の構造物の表面に、リン酸エステル系の難燃剤を含有したポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂などの樹脂層を形成することによって、構造物の耐火強度を向上させることも行われている。しかしながら、このような樹脂層によれば、耐火性能の指標である酸素指数は25レベルまで高めることはできるものの不燃化のレベルまで高めることは未だできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-137183号公報
【特許文献2】特開2009-160908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、既存の構造物にも設けられる積層構造であって、耐火性能のレベルが難燃化よりも高い不燃化を達成できる積層構造およびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成する本発明に係る不燃性積層構造は、構造物の表面に設けられる不燃性の積層構造であって、前記構造物側から順に、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層と、シリカ粉末を含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層と、ガラスからなる第3層とを有することを特徴とする。
【0007】
前記構成の不燃性積層構造において、前記第1層と前記第2層との間に、前記第2層よりもシリカ粉末の含有量の少ないポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第4層をさらに有する構成としてもよい。
【0008】
また前記構成の不燃性積層構造において、前記第4層のシリカ粉末の含有量が50質量%以下である構成としてもよい。
【0009】
また前記構成の不燃性積層構造において、前記第2層のシリカ粉末の含有量が70質量%以上80質量%以下である構成としてもよい。
【0010】
また前記構成の不燃性積層構造において、前記第3層の層厚が0.2mm以上0.5mm以下である構成としてもよい。
【0011】
また本発明によれば、構造物の表面に不燃性の積層構造を形成する方法であって、前記構造物の表面にポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層を形成する第1工程と、前記第1層の外側に、シリカ粉末を含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層を形成する第2工程と、前記第2層の表面にレーザ光を照射して前記シリカ粉末を溶融し、前記第2層の表面にガラスからなる第3層を形成する第3工程とを有することを特徴とする不燃性積層構造の形成方法が提供される。
【0012】
前記構成の不燃性積層構造の形成方法において、前記第1層と前記第2層との間に、前記第2層よりもシリカ粉末の含有量の少ないポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第4層を形成する第4工程をさらに有する構成としてもよい。
【0013】
また前記構成の不燃性積層構造の形成方法において、前記第4層のシリカ粉末の含有量を50質量%以下とする構成としてもよい。
【0014】
また前記構成の不燃性積層構造の形成方法において、前記第2層のシリカ粉末の含有量を70質量%以上80質量%以下とする構成としてもよい
【0015】
また前記構成の不燃性積層構造の形成方法において、前記第3層の層厚が0.2mm以上0.5mm以下である構成としてもよい。
【0016】
なお、本明細書における「不燃性」とは、ISO 5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験により、時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に下記要件を満たすものをいう。
(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であること
(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないこと
(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る不燃性積層構造によれば、構造物の表面に形成されることによって構造物の耐火性を従来よりも向上させることが可能となる。
【0018】
また本発明に係る形成方法によれば、本発明の不燃性積層構造が効率的かつ確実に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る不燃性積層構造の一例を示す概説図である。
【
図2】不燃性積層構造の形成工程の一例を示す工程図である。
【
図3】本発明の形成方法で使用可能なスプレーガンの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る不燃性積層構造(以下、単に「積層構造」と記すことがある。)およびその形成方法についてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0021】
図1に、本発明に係る積層構造の一例を示す概説図を示す。
図1に示す積層構造LSは、土木構造物や建築構造物等の構造物Stの表面に形成され、構造物Stの表面から順に、ポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなる第1層L1、シリカ粉末Pを含有するポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなる第4層L4、第4層L4よりも多くのシリカ粉末Pを含有するポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなる第2層L2、ガラスからなる第3層L3とから構成される。
【0022】
このような積層構造LSによれば不燃化レベルの耐火性能が得られる。表層である第3層L3はガラスからなり高い耐熱性を有する。しかし、ガラスは脆性材であり剪断力が加わると弾性変形し変形値を超えると弾性破壊する。そこで本実施形態の積層構造LSでは、ポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなる第1層L1と、第4層L4と、第2層L2とが、構造物Stの表面と第3層(ガラス層)L3との間に設けられている。第1層L1、第4層L4および第2層L2を構成するポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)は弾性変形材であり、第1層L1、第4層L4および第2層L2は、熱膨張・収縮や振動などによって第3層(ガラス層)L3に加わる剪断応力を吸収して第3層(ガラス層)L3の弾性破壊を抑制する働きを奏する。
【0023】
なお、第2層L2においてポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)にシリカ粉末Pが含有されているのは第2層L2の断熱性を向上させることの外、後段の積層構造LSの形成方法で説明するように、第2層L2に含有されるシリカ粉末Pをレーザ光の照射で溶融して第3層(ガラス層)L3を形成するためでもある。
【0024】
また本実施形態では第1層L1と第2層L2との間に、第2層L2よりもシリカ粉末Pの含有量の少ないポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなる第4層L4が設けられている。これは、第2層L2に含有されるシリカ粉末Pの溶融によって第3層(ガラス層)L3を形成する場合には、第2層L2におけるシリカ粉末Pの含有量は多い方が望ましい一方で、第2層L2のシリカ粉末Pの含有量が多いと、第2層L2の弾性が低くなって剪断応力の吸収性や第1層L1との密着性が低下するおそれがある。そこで、第1層L1と第2層L2との間に第2層L2よりもシリカ粉末Pの含有量の少ない第4層L4を設けて第3層(ガラス層)L3の形成と剪断応力の吸収性と第1層L1と第2層L2との密着性の両立を図った。もちろん、本発明の積層構造LSは第4層L4を設けることなく第1層L1から第3層L3までを設けた構成としても構わない。以下、これらの層について説明する。
【0025】
(第1層L1)
構造物Stの表面に形成される第1層L1はポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂から構成される。ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂は、イソシアネートとポリオールとの2液またはイソシアネートとアミンとの2液をスプレーガンで衝突混合させて構造物Stの表面に塗布することができ、作業労力の軽減および作業時間の短縮化が可能となる。ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層L1を前述の2液をスプレー塗布して形成する場合には、後述の
図3及び
図4に示すスプレーガンSGを用いるのが好ましい。
【0026】
第1層L1の厚みは、剪断応力の吸収する働きを発揮する限りにおいて特に限定はないが、通常、1.0mm~3.0mmの範囲が好ましい。第1層L1の厚みが薄すぎると剪断応力の吸収が不足する一方、第1層L1が厚すぎると原料費用が高くなって経済的でない。
【0027】
(第2層L2)
第2層L2はポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂から構成されシリカ粉末Pを含有する。ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂は第1層L1と同じスプレーガンを用いて塗布形成できる。
【0028】
シリカ粉末Pの含有量は、表面に第3層(ガラス層)L3が形成な限りにおいて特に限定はないが、通常、70質量%~80質量%の範囲が好ましい。シリカ粉末Pの含有量が70質量%よりも少ないと、加熱溶融による第3層(ガラス層)L3の均一な形成が困難になるおそれがある。一方、シリカ粉末Pの含有量が80質量%よりも多いと、第2層L2の弾性が低くなって剪断応力の吸収や第1層L1との密着性が低下するおそれがある。
【0029】
シリカ粉末Pとしては、淘汰シラスやシラスバルーンが好適に使用できるが、珪酸を50質量%以上含有するものであればよい。シリカ粉末Pとしてシラスバルーンを用いる場合、シラスバルーンの平均粒径は30μm~50μmの範囲が好ましく、かさ比重は0.2g/cm3~0.6g/cm3の範囲が好ましい。このような平均粒径およびかさ比重を有するシリカバルーンを用いることにより、加熱溶融させたときに連続した均一な第3層(ガラス層)L3が形成される。なお、加熱溶融によって第3層(ガラス層)L3を安定して形成する観点からはシラスバルーンの含水率は1質量%以下であるのが好ましい。
【0030】
第2層L2の厚みに特に限定はないが、通常、0.5mm~1.5mmの範囲が好ましい。第2層L2の厚みが薄すぎると剪断応力の吸収が不足する一方、第2層L2が厚すぎると原料費用が高くなって経済的でない。
【0031】
(第3層L3)
第3層L3はガラスから構成される。第3層L3は、好適には、第3層L3が形成される前の第2層L2前駆体の表面を加熱溶融して第2層L2前駆体に含まれるシリカ粉末Pを溶融しガラス化することで形成される。すなわち、第2層前駆体の表面から所定深さが加熱溶融されて第3層L3となり、残り部分が第2層L2となる。第2層前駆体の表面加熱には、例えばレーザ光の照射加熱が使用でき、レーザ光の照射エネルギー量によって、形成される第3層L3の層厚が制御される。
【0032】
あるいはまた第3層L3は、第2層L2の表面に粉末ガラスを噴霧した後、レーザ光照射などによって加熱溶融してガラス化させて形成してもよい。シリカの溶融温度が約1700℃であるのに対して粉末ガラスの溶融温度は約600℃であるので、より低温度でガラス化させることが可能となり照射エネルギー量を少なくできる。また第2層L2の弾性などの特性をより確実に保持できる。
【0033】
第3層L3の厚みに特に限定はないが、通常、0.2mm~0.5mmの範囲が好ましい。第3層L3の厚みが0.2mmよりも薄いと耐熱性が不足するおそれがある。一方、第3層L3を0.5mmよりも厚くするにはシリカ粉末Pを加熱溶融してガラス化するために大容量のレーザ出力装置が必要となり現実的でない。
【0034】
(第4層L4)
第4層L4は、シリカ粉末Pを含有したポリウレタン樹脂(またはポリウレア樹脂)からなり、必要により第1層L1と第2層L2との間に設けられる。第4層L4は剪断応力を吸収する働きと第1層L1と第2層L2との接着を高める働き、断熱性を向上させる働きなどを奏する。
【0035】
第4層L4におけるシリカ粉末Pの含有量は、剪断応力の吸収や第1層L1と第2層L2との接着を高める観点からは、第2層L2のそれよりも少ないのが好ましい。具体的には第4層L4のシリカ粉末Pの含有量は50質量%以下であるのが好ましい。シリカ粉末Pの含有量の好ましい下限値は30質量%である。
【0036】
第4層L4の厚みに特に限定はないが、通常、0.5mm~1.5mmの範囲が好ましい。
【0037】
(その他)
本発明に係る積層構造LSは第1層L1から第4層L4の外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の機能を有する層を備えてもよい。
【0038】
(構造物St)
本発明の積層構造LSが設けられる構造物Stに特に限定はなく、例えば、土木構造物や建築構造物、船舶・輸送機器等の内外壁が挙げられる。
【0039】
(積層構造の形成方法)
積層構造LSの形成方法に特に限定はないが、以下に説明する形成方法が作業効率等の点が好ましい。
図2に積層構造LSの形成例を示す工程図を示す。
【0040】
(第1工程)
まず、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層L1が構造物Stの表面に形成される。具体的には、
図2(a)に示すように、イソシアネートとポリオールとの2液またはイソシアネートとアミンとの2液がスプレーガンの液体噴射ノズル62から噴射され混合されて構造物Stの表面に塗布されることでポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第1層L1が形成される。
【0041】
図3および
図4に、本発明の形成方法で使用可能なスプレーガンの一例である斜視図および正面図を示す。なお、これらの図に示すスプレーガンSGは、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂の層を形成する外、これらの樹脂にシリカ粉末Pを含有させた層を形成する際にも使用可能である。
【0042】
スプレーガンSGは、円筒形状のガン本体61と、一対の粉末噴射ノズル71a,71bとを有する。ガン本体61は、軸方向一方端面(
図4では下面)に前述の2液を噴射して混合する液体噴射ノズル62を備える。ガン本体61には、イソシアネートを供給する供給管63と、ポリオールまたはアミンを供給する供給管64とが接続されている。またガン本体61の外周の略対向位置には、軸方向に延びる長方形状の一対の支持板65a,65bが、ガン本体61の外周面から外方に突出した張出板66a,66bによって軸方向に移動可能に保持されている。具体的には、張出板66a,66bの外方端に形成された貫通孔(不図示)と、支持板65a,65bに形成された軸方向に長さを有する長孔67a,67bとにボルトBのネジ部が挿通された後、ネジ部の先端にナット(不図示)が螺合される。支持板65a,65bは、ボルトBのネジ部が長孔67a,67b内を相対的に移動可能な範囲でガン本体61の軸方向に移動可能である。そして、支持板65a,65bの位置が定まったところでナットがボルトBのネジ部に強く螺合されることで支持板65a,65bは張出板66a,66bに固定される。
【0043】
一対の粉末噴射ノズル71a,71bは柱状を有し、一方端側は一対の支持板65a,65bに固定され、他方端(噴射口)側は液体噴射ノズル62よりも液体噴射方向下流側に位置するように調整される。また一対の粉末噴射ノズル71a,71bの各々の一方端側には粉末供給管72a,72bが接続されている。
【0044】
このような構成のスプレーガンSGでは、供給管63からイソシアネートが、供給管64からポリオールまたはアミンがそれぞれガン本体61に供給される。そして、液体噴射ノズル62から2液が噴射・混合され混合液が構造物Stの表面に広角に塗布され樹脂層が形成される。樹脂層にシリカ粉末Pを含有させる場合には、液体噴射ノズル62から噴射された混合液に向かって粉末噴射ノズル71a,71bからシリカ粉末Pが噴射される。これにより、シリカ粉末Pがポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂の原料液よりも比重が軽い場合であってもこれらの樹脂中に均一に混合されるようになる。また樹脂中のシリカ粉末Pの含有量は、シリカ粉末Pの噴射量を制御することによって容易に制御できる。
【0045】
なお、粉末噴射ノズル71a,71bは2つに限定されるものではなく、1つであってもよいし3つ以上であっても構わない。粉末噴射ノズルの設置個数は、通常、8個である。また粉末噴射ノズルが2つ以上である場合、必要により2種類の粉末を噴射させてもよい。
【0046】
(第2工程)
第1層L1の外側に、シリカ粉末Pを含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第2層L2を形成する。第2層L2の形成にも第1層L1の形成で用いたスプレーガンSGが好適に使用できる。
図2(b)に示すように、第2層L2の形成では、スプレーガンSGの液体噴射ノズル62から噴射された混合液に向かって粉末噴射ノズル71a,71bからシリカ粉末Pが噴射される。樹脂中のシリカ粉末Pの含有量は粉末の噴射量を制御することによって制御できる。第2層L2におけるシリカ粉末Pの含有量は、通常、70質量%~80質量%の範囲が好ましい。
【0047】
(第3工程)
図2(c)に示すように、第2層L2の表面にレーザ光LBが照射されて前記シリカ粉末Pが加熱溶融され、第2層L2の表面にガラスからなる第3層L3が形成される。シリカの溶融温度は約1700℃であるところ、レーザ光LBの照射によって第2層L2の表面は瞬時に前記溶融温度以上となる。
【0048】
ここで使用するレーザとしては従来公知の物が使用可能であるが、短パルスレーザが好適に使用される。例えば、波長:1070nm、パルス幅:60ns、周波数:10kHz、エネルギー:100mJの短波長パルスレーザが用いられると、1/(6×107)secという超短時間に1.6MWの強大なエネルギーが与えられて第2層L2の表面から0.3mm~0.5mmまでがガラス化する。一方、第2層L2の表面からそれ以下の部分はポリウレタンまたはポリウレアの本来の特性が損なわれずに保持される。
【0049】
(第4工程)
第4工程として、第1層L1と第2層L2との間に、シリカ粉末Pを含有するポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂からなる第4層L4を形成してもよい。第3層(ガラス層)L3が効率的且つ確実に形成されると同時に、剪断応力の吸収性と第1層L1と第2層L2との密着性が維持、向上されるようにするためである。
【0050】
第4層L4は第1層L1と第2層L2との間に形成されるので、第4工程は第1工程の後に行われる。第4層L4の形成では、前述の第2層L2の形成で用いられたスプレーガンSGが好適に使用でき、第2層L2の形成と同様に、スプレーガンSGの液体噴射ノズル62から噴射された混合液に向かって粉末噴射ノズル71a,71bからシリカ粉末Pが噴射される。樹脂中のシリカ粉末Pの含有量は粉末の噴射量を制御することによって制御される。第4層L4におけるシリカ粉末Pの含有量は、第2層L2におけるシリカ粉末Pの含有量よりも少なく制御され、通常、50質量%以下であるのが好ましい。
【0051】
(その他)
本発明に係る積層構造LSの形成方法において、第1層L1から第4層L4の形成工程の外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の機能を有する層の形成工程が挿入・付加されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る不燃性積層構造によれば、構造物Stの表面に形成されることによって構造物Stの耐火性を従来よりも向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
L1 第1層
L2 第2層
L3 第3層
L4 第4層
LS 積層構造
LB レーザ光
P シリカ粉末
St 構造物