IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2023-36143鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法
<>
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図1
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図2
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図3
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図4
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図5
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図6
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図7
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図8
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図9
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図10
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図11
  • 特開-鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036143
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20220101AFI20230307BHJP
【FI】
B61L27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142992
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 光司
(72)【発明者】
【氏名】中西 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小池 潤
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ29
(57)【要約】
【課題】鉄道の運行に関する多様な情報の効率的な利用を実現すること。
【解決手段】鉄道運行データ管理装置は、演算装置と、記憶装置とを備え、前記記憶装置は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶し、前記演算装置は、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付け、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索して提供することを特徴とする。かかる構成及び動作により、鉄道の運行に関する多様な情報の効率的な利用を実現することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算装置と、
記憶装置とを備え、
前記記憶装置は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶し、
前記演算装置は、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付け、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索して提供する
ことを特徴とする鉄道運行データ管理装置。
【請求項2】
前記演算装置は、同一の状態に関し異なる形式で取得された複数の状態情報を比較することで、前記状態情報について生じた誤差を発生誤差として求めることを特徴とする請求項1に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項3】
前記演算装置は、鉄道車両の位置情報に関し、鉄道車両のドアの開閉、速度パルスに基づく移動距離情報、GPS(Global Positioning System)位置情報を取得し、ドア開のイベント発生時には当該イベントに基づく位置情報の信頼性を高くし、走行速度が所定以下の場合に前記移動距離情報の信頼性を低くし、地図情報に応じて前記GPS位置情報の信頼性を変更することを特徴とする請求項2に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記データ提供要求が許容誤差をさらに指定した場合に、検索結果の状態情報の発生誤差と前記許容誤差との比較結果をさらに提供することと特徴とする請求項2に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項5】
前記データ提供要求は、階層化されたデータ取得目的を含み、
前記演算装置は、前記データ取得目的に前記発生誤差を対応付けて管理することを特徴とする請求項2に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項6】
前記記憶装置は、前記状態情報を階層化した階層構造として保持し、
前記演算装置は、前記階層構造を前記状態情報の識別に寄与する構造に含めて検索を行うことを特徴とする請求項1に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項7】
前記記憶装置は、前記状態情報に対し、当該状態情報の取得主体に係る情報を関連付けて管理し、
前記演算装置は、障害に係る複数の状態情報について、前記取得主体を分析することで前記障害の発生場所を切り分けることを特徴とする請求項1に記載の鉄道運行データ管理装置。
【請求項8】
演算装置と、
記憶装置とを備え、
前記記憶装置は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶し、
前記演算装置は、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付け、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索して提供する
ことを特徴とする鉄道運行データ管理システム。
【請求項9】
データ管理装置が、
鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶するステップと、
前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付けるステップと、
形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索するステップと、
前記検索の結果を提供するステップと
を含むことを特徴とする鉄道運行データ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道運行データ管理装置、鉄道運行データ管理システム及び鉄道運行データ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の安全運行を確保するため、特開2011-31711号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には、「車上にて情報を集約する高度列車安全制御システムにおいて、線区内の地理空間情報を記憶する記憶装置を有する制御処理装置と車上観測装置とリアルタイム列車位置・速度計測装置とを有する列車と、線区内の地上観測装置と、指令所と、気象情報や地震情報の提供を行う外部機関とを備え、前記地上観測装置からの地上観測データと、前記車上観測装置からの車上観測データと、前記リアルタイム列車位置・速度計測装置からの車両の位置・速度情報と、前記地理空間情報と、前記外部機関からの気象情報や地震情報と、前記指令所から送信される他列車から得られた観測データとを組み合わせることにより、前記列車において高精度の災害予測を行う」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-31711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、地上や他の車両で収集した情報を車上に集約し、災害を予測して運転制御に反映させることができる。しかしながら、収集可能な情報の多様性や、収集した情報の利用方法の多様性に対する考慮はなされていなかった。
【0005】
例えば、車両の位置情報を収集する場合には、速度パルスからの移動距離情報、GPS(Global Positioning System)による位置情報、ドア開のイベントに基づく位置情報などを用いることができる。これらの位置情報は、形式や信頼度が異なるため、如何にして形式等の差異を超えて簡易に取り扱うかが重要な課題となっていた。さらに、位置情報は、運行制御、障害対応、分析など様々な目的・用途で使用され、目的・用途に応じてデータの数や信頼性に対する要求が異なる。
【0006】
そこで、本発明では、鉄道の運行に関する多様な情報の効率的な利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムの一つは、演算装置と、記憶装置とを備え、前記記憶装置は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶し、前記演算装置は、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付け、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索して提供することを特徴とする。
また、代表的な本発明の鉄道運行データ管理方法の一つは、データ管理装置が、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶するステップと、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付けるステップと、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索するステップと、前記検索の結果を提供するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉄道の運行に関する多様な情報の効率的な利用を実現できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】鉄道運行データ管理システムの構成の説明図である。
図2】データ提供要求の入力の説明図である。
図3】データ提供要求パケットの具体例である。
図4】次元統合テーブルの具体例である。
図5】データの信頼性と比較についての説明図である。
図6】鉄道車両からの情報収集の処理手順を示すフローチャートである。
図7】データ提供要求に対応する応答処理を示すフローチャートである。
図8】実施例1におけるデータ応答の表示の具体例である。
図9】障害と場所の情報を管理するテーブルの説明図である。
図10】取得主体と関連づけた状態情報の具体例である。
図11】実施例2におけるデータ応答の表示の具体例である。
図12】ユースケース学習処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態例について、図を参照して説明する。
まず、実施例1として、多様なデータを効率的に利用するシステムについて図1図8を参照して説明する。次に、実施例2として、障害の発生場所を切り分けるシステムについて図9図12を参照して説明する。
なお、本明細書及び図において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【実施例0011】
図1は、鉄道運行データ管理システムの構成の説明図である。
鉄道運行データ管理システムは、ユーザ端末1と、鉄道運行データ管理装置としてのサーバシステム2を備える。
ユーザ端末1は、その内部にCPU(Central Processing Unit)1-3及び主記憶装置1-4を備えたコンピュータであり、表示装置1-1や補助記憶装置であるディスク1-2などの周辺機器が接続される。
ユーザ端末1は、ユーザ9の操作を受け付けて、サーバシステム2に対してデータ提供要求を送信する。そして、サーバシステム2からデータ応答を受信し、表示装置1-1に表示させる。
【0012】
サーバシステム2は、1又は複数のサーバ3と、1又は複数のストレージ5を有する。
ストレージ5は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶する記憶装置である。
1又は複数のサーバ3の一つであるサーバ3-aを例示し、サーバ3の構成を説明する。サーバ3は、演算装置であるCPU3-1、主記憶装置であるメモリ3-2、ネットワークインターフェースカード(NIC)3-3、ディスクコントローラ3-4、補助記憶装置であるディスク3-5を有する。
【0013】
CPU3-1は、メモリ3-2にプログラムやデータを展開し、プログラムを順次実行することで、各種機能を実現する。
具体的には、メモリ3-2には、OS(Operating System)3-11、対ユースケース閾値表3-12、状態管理機能3-13、次元統合テーブル3-14、信頼度分析機能3-15に関するデータが展開される。
【0014】
OS3-11は、サーバ3の基本的な動作の制御を担うプログラム群である。
対ユースケース閾値表3-12は、ユースケースごとに求められるデータの閾値を対応付けたテーブルである。
状態管理機能3-13は、同一の状態に関し異なる形式で取得された複数の状態情報を比較することで、状態情報について生じた誤差を発生誤差として求める機能である。
次元統合テーブル3-14は、階層化されたデータ取得目的と、検索の結果に対応する状態情報のデータテーブルと、状態情報の発生誤差とを対応付けたテーブルである。
【0015】
信頼度分析機能3-15は、同一の状態に関し異なる形式で取得された複数の状態情報について、信頼度の分析を行う機能である。
例えば、鉄道車両の位置情報に関し、鉄道車両のドアの開閉、速度パルスに基づく移動距離情報、GPS位置情報を取得した場合、信頼度分析機能3-15は、ドア開のイベント発生時には当該イベントに基づく位置情報の信頼性を高くし、走行速度が所定以下の場合に移動距離情報の信頼性を低くし、地図情報に応じてGPS位置情報の信頼性を変更する。そして、それぞれの位置情報と対応する信頼性を統合し、最終的な位置情報の信頼性を求める。
信頼度分析機能3-15は、データ提供要求が許容誤差を指定した場合には、検索結果の状態情報とともに、発生誤差と許容誤差との比較結果をさらに提供する。
【0016】
図2は、データ提供要求の入力の説明図である。ユーザ端末1の表示装置1-1は、図2に示したデータ提供要求の入力画面において、入力領域1-1-1a~1-1-1hを表示している。
【0017】
入力領域1-1-1aは、データ取得テンプレートのうち、階層型目的選択画面である。この階層型目的選択画面では、例えばリアルタイムでの利用か過去歴分析での利用かを選択することができ、リアルタイムであればさらに旅客、制御、障害分析のいずれに該当するかを選択する、といったように、目的を階層構造で指定することができる。
【0018】
入力領域1-1-1bは、データ取得テンプレートの多次元許容度のうち、時空間の許容度に対応する。
入力領域1-1-1cは、データ取得テンプレートの多次元許容度のうち、エリアの大きさの許容度に対応する。
多次元許容度は、次元を問わず任意のデータ形式について指定可能であり、ユーザが追加することも可能である。
【0019】
入力領域1-1-1dは、状態情報の検索範囲の期間を指定する。このとき、単位を時間にするかイベントにするかを選択できる。
入力領域1-1-1eは、状態情報の検索範囲の線区を指定する。
入力領域1-1-1fは、注目するイベントを指定する。注目するイベントは、階層構造で指定可能である。
入力領域1-1-1gは、データ取得の実行操作の入力に使用する。
入力領域1-1-1hは、階層型目的選択画面における選択が反映され、データ取得目的を階層構造で示す。
【0020】
図3は、データ提供要求パケットの具体例である。図3には、イベント区間と多次元許容範囲を指定するパケット1-1-2a、時間区間と多次元許容範囲を指定するパケット1-1-2bを例示している。これらのパケットは、データ分析目的、多次元許容量、時刻又はイベントによる区間など、データを絞り込む情報をサーバ3に送るための要素を含む。
【0021】
例えば、パケット1-1-2aでは、データ分析目的が「過去歴分析/停車時間/停車時間分析/運行効率」である。また、多次元許容が「”*/キロ程”, value:”0”, unit”m”」と指定されている。このように、ワイルドカード「*」を用いてデータの一部を無視することで、任意のデータ形式で格納されたデータベースから、「キロ程」で単位が「m」のデータを検索することができる。なお、キロ程は、速度パルスに基づいて求められた移動距離を示す。
【0022】
また、パケット1-1-2aが「制御イベント/ドア開」から「制御イベント/ドア閉」までのイベントを指定しているのに対し、パケット1-1-2bは「2021-01-01T00:00:00」から「2021-01-01T00:01:00」までの時間を指定している。このように、検索範囲の期間について、任意の形式を指定して検索を行うことができる。
【0023】
図4は、次元統合テーブルの具体例である。次元統合テーブル3-14は、少なくとも1階層以上に階層化されたデータ取得目的(ユーザ入力値)、サーバ3側のデータのテンプレートとその学習状態、データテーブル、対象データ識別子、許容誤差と比較するための発生誤差値を含む管理テーブルであり、分析目的と対象データの自動学習に用いられる。
【0024】
図5は、データの信頼性と比較についての説明図である。図5では、キロ程、GPS、ドア開閉イベントと信頼度を示している。
キロ程は、鉄道車両の走行速度が3k/m以下のときには、車輪の回転に基づく速度パルスを精度よく得ることが難しいために信頼度が低くなり、走行速度が3k/mを超えれば高い信頼性を示す。
GPSは、駅ビルの下を走行しているときのように、場所によって位置情報を算出できないことがあるが、駅ビルを抜けるなど建造物や地形の影響を脱すれば信頼性は高くなる。また、実際には停止中であっても位置情報に揺らぎが生じる場合がある。
ドア開イベントは、鉄道車両の位置をホームに対して精度よく合わせることを条件に発生するため、キロ程やGPSよりも信頼性が高い。一方、ドア閉イベントは、鉄道車両の位置を特定することに寄与しないため、信頼性は低い。
【0025】
このように、異なる形式で位置情報を取得し、各位置情報について状況に応じた信頼性を設定して、それぞれの位置情報と対応する信頼性を統合することで、最終的な位置情報の信頼性を求めることができる。
また、図5に示すように、各位置情報と信頼性を重ね合わせて表示装置1-1に表示することで、位置情報と信頼性の関係を可視化することができる。
なお、例示の他、手動運転から自動運転への切り替わりなど、鉄道車両の走行に関する任意の状態を信頼性の設定に用いることができる。
【0026】
図6は、鉄道車両からの情報収集の処理手順を示すフローチャートである。鉄道車両は、位置の信頼度が最も高いドア開閉の停車時におけるGPS揺らぎを収集し、サーバ3に誤差情報を送信する(ステップ300)。次に、鉄道車両は、線路上に敷設された地上子を踏んでキロ程を補正したときに、補正量と地上子の位置情報を収集し、サーバ3に誤差情報を送信する(ステップ301)。さらに、鉄道車両は、キロ程を高い信頼性で計測可能な区間のキロ程、速度、GPSの相互比較による誤差情報の収集とサーバ3への送信を行う(ステップ302)。
【0027】
サーバ3の信頼度分析機能3-15は、鉄道車両から受信した誤差情報や、同様に地上設備から集まる誤差情報を使い、統計などの信頼性分析処理を行う。状態管理機能3-13は、信頼性分析の結果得られた誤差情報を発生誤差とし、次元統合テーブル3-14を自動更新する。なお、ここでは鉄道車両が誤差を求めて、誤差情報をサーバ3に送信する場合を例示したが、サーバ3がドア開閉イベント、GPS位置情報、キロ程と補正情報を取得し、サーバ3が誤差を求める構成としてもよい。
【0028】
図7は、データ提供要求に対応する応答処理を示すフローチャートである。
本処理に先立って、サーバ3は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報をストレージ5などに記憶するステップを実行している。
そのうえで、サーバ3がデータ提供要求パケットを受信すると、信頼度分析機能3-15は、データ提供要求のパケットと次元統合テーブル3-14に管理される誤差を比較する(ステップ400)。
つぎに、信頼度分析機能3-15は、信頼性を掛け合わせスコアリングし、管理されている誤差値が許容誤差を超えている場合は信頼度をゼロに設定する(ステップ401)。
そして、サーバ3は、検索結果である要求データと信頼度、状態情報をまとめてデータ応答としてユーザ端末1へ送信し(ステップ402)、処理を終了する。
【0029】
図8は、実施例1におけるデータ応答の表示の具体例である。図8では表示装置1-1は、データ種別、対象データ識別子、誤差値、データ及び信頼度、活用可否判定を表示している。具体的には、同図では、位置情報を要求した結果として、GPS位置情報とドア開閉イベントが得られている。活用可否判定は、ユーザ9が求めたデータとして活用できると判定したか否かを示すものであり、ユーザ9から活用可能との入力を受けたならば、サーバ3の次元統合テーブル3-14に反映される。例えば、ユーザ9から活用可能との入力をうけたデータについて、次元統合テーブル3-14のテンプレート状態を「学習中」から「確定」に変更することができる。
【実施例0030】
実施例2では、障害の発生場所を切り分けるシステムについて説明する。
障害の発生場所を切り分けるには、「場所に着目した」複数の情報を収集する必要があり、追加のデータ関連テーブルを用いる。
【0031】
図9は、障害と場所の情報を管理するテーブルの説明図である。図示のテーブルは、障害を階層構造で指定するテンプレートと、情報種類と、状態と、発生誤差値とを対応付けている。情報種類は、状態情報の取得主体の場所を階層構造で示しており、ワイルドカード「*」も使用できる。例えば、「車上/列車*/装置D」であれば、車上に搭載された装置Dからの状態情報であり、車両は任意となる。
【0032】
図10は、取得主体と関連づけた状態情報の具体例である。図示のテーブルは、時刻、メッセージ連番、情報種類、検知者、検知対象、値、状態、信頼度の項目を有する。
時刻は、障害に係る時刻の情報を示す。例えば、障害情報の取得主体が障害を検知した時刻を設定してもよいし、障害情報の送信時刻や受信時刻を用いてもよい。
メッセージ連番は、障害情報の管理のために付与した番号である。
情報種類は、状態情報の取得主体の場所を階層構造で示す。
検知者は、状態情報の取得主体としての装置を示す。
検知対象は、状態情報として示された障害の内容である。
値は、障害の内容を示す具体的な数値等である。
状態は、障害の原因を示す。
信頼度は、障害を示す状態情報がどの程度信頼できるかを示し、最大値を100、最小値を0としている。この信頼度は、例えば、位置情報の精度、自分についての情報か否か、累積誤差、遮蔽物との関係、地上子によるリセットのタイミングなどにより定める。
【0033】
このテーブルを参照すれば、サーバ3は、障害に関する状態情報の場所(取得主体)を比較し、障害が地上で発生したか車上で発生したかを切り分けることができる。
例えば、特定の地上の装置が障害に関する状態情報を出力している場合や、異なる車両の装置が同一の場所で障害に関する状態情報を出力しているならば、地上で障害が発生したと認識できる。一方、特定の車両に搭載された装置が、場所を問わず繰り返し障害に関する状態情報を出力しているならば、車上で障害が発生したと認識できる。
【0034】
図11は、実施例2におけるデータ応答の表示の具体例である。実施例2では、時間と場所の関係を管理しているため、データ応答の表示画面で、時空間と場所空間のシフトが可能である。
例えば、異なる装置で基準時刻がずれている場合、それぞれから繰り返し得られる状態情報は、時刻情報にズレがあるが、同一周期を示している場合がある。このような場合には、時空間のシフトを利用することで、異なる状態情報の基準時刻の差異を補正し、適正に比較できる。同様に、異なる装置から取得した位置情報にずれがある場合には、場所空間のシフトを利用することで適正な比較が実現できる。
【0035】
図12は、ユースケース学習処理のフローチャートである。
サーバ3は、ユーザ端末1に提供した提供データについて、ユーザ9の目的に対して活用できたか否かの判定結果を受け取り(ステップ500)、ユースケースと活用対象データの関係を更新する(ステップ501)。例えば、図4に示した次元統合テーブル3-14においてデータ取得目的とデータテーブルの関係を更新すればよい。
また、サーバ3は、ユーザ9が補正した誤差情報をデータの信頼性を管理するテーブルに反映させる(ステップ502)。
【0036】
図12に概念図を示したように、あるユースケースには複数のデータが活用される可能性があるが、その頻度は一律ではなく、そのユースケースに活用される頻度の高いデータが存在する。図12では、DB016が他のデータよりも顕著に活用されている。このように、特に活用頻度の高いデータを、そのユースケースに対応するデータとして登録しておくことで、ユースケースとデータの関係の分析や、ユースケースに対する効率的かつ高精度なデータの提供に寄与することができる。
【0037】
上述してきたように、開示の実施例によれば、鉄道運行データ管理装置としてのサーバ3を含む鉄道運行データ管理システムは、演算装置としてのCPU3-1と、記憶装置としてのストレージ5を備え、前記記憶装置は、鉄道の運行に関する状態を示す状態情報を記憶し、前記演算装置は、前記状態情報の識別に寄与する構造を部分的に指定するデータ提供要求を受け付け、形式の異なる状態情報から前記部分的な指定に適合する状態情報を検索して提供する。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、鉄道の運行に関する多様な情報の効率的な利用を実現することができる。
【0038】
また、前記演算装置は、同一の状態に関し異なる形式で取得された複数の状態情報を比較することで、前記状態情報について生じた誤差を発生誤差として求めることができる。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、多様なデータを有効に活用し、精度の高い情報を提供することができる。
【0039】
また、前記演算装置は、鉄道車両の位置情報に関し、鉄道車両のドアの開閉、速度パルスに基づく移動距離情報、GPS位置情報を取得し、ドア開のイベント発生時には当該イベントに基づく位置情報の信頼性を高くし、走行速度が所定以下の場合に前記移動距離情報の信頼性を低くし、地図情報に応じて前記GPS位置情報の信頼性を変更する。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、状況に応じて種々の位置情報を組合せ、高い精度で位置情報を提供することができる。
【0040】
また、前記演算装置は、前記データ提供要求が許容誤差をさらに指定した場合に、検索結果の状態情報の発生誤差と前記許容誤差との比較結果をさらに提供する。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、例えば発生誤差が許容誤差を超える場合には信頼度を「0」としてデータを提供するなど、提供したデータの精度に関する情報をさらに提供することができる。
【0041】
また、前記データ提供要求は、階層化されたデータ取得目的を含み、前記演算装置は、前記データ取得目的に前記発生誤差を対応付けて管理する。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、多様な目的・用途に対して効率的に応答することができる。
【0042】
また、前記記憶装置は、前記状態情報を階層化した階層構造として保持し、前記演算装置は、前記階層構造を前記状態情報の識別に寄与する構造に含めて検索を行う。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、多様な状態情報を効率的に管理することができる。
【0043】
また、前記記憶装置は、前記状態情報に対し、当該状態情報の取得主体に係る情報を関連付けて管理し、前記演算装置は、障害に係る複数の状態情報について、前記取得主体を分析することで前記障害の発生場所を切り分けることを特徴とする。
このため、鉄道運行データ管理装置及び鉄道運行データ管理システムは、障害の発生場所に関する分析を効率的に行うことができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【0045】
例えば、提供したデータの出力に際し、イベント(故障だけでなく、駅への停車なども含む)が発生した場所を路線図上や地図上に表示する構成とすることもできる。
また、ユーザが「イベント」に着目して、地上設備の位置や複数の車両で検出したイベント発生位置を比較し、それぞれの位置の誤差を把握、閾値として設定できるようしてもよい。
加えて、ユーザが利用する他のシステムと連携し、同種のイベントの位置関係や時刻の差異をシステムを超えて比較可能とする構成としてもよい。システムを超えた位置関係の差異の一例として、運行管理で車両の番線への到着を検知する場内信号機の位置と、車上システムの停車位置のズレがある。このように、システム、データの取得主体、データ形式、データの次元などが異なっても、本発明を適用することにより、効率的にデータ管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1:ユーザ端末、1-1:表示装置、1-1-1:入力領域、1-1-2:パケット、1-2:ディスク、1-4:主記憶装置、2:サーバシステム、3:サーバ、3-1:CPU、3-12:対ユースケース閾値表、3-13:状態管理機能、3-14:次元統合テーブル、3-15:信頼度分析機能、3-2:メモリ、3-4:ディスクコントローラ、3-5:ディスク、5:ストレージ、9:ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12