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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036146
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】雌コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20230307BHJP
   H01R 13/436 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01R13/187 A
H01R13/436
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143001
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 英人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF02
5E087FF13
5E087FF16
5E087FF27
5E087GG24
5E087JJ04
5E087JJ09
5E087MM05
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】雌端子金具の構造を簡素化することができる。
【解決手段】雌コネクタ1は、ハウジング10と、ハウジング10に収容される雌端子金具20と、を備えている。雌端子金具20は、一対の弾性片52,53を具備するばね部材50と、平板部材60と、を有している。ばね部材50には、一対の弾性片52,53の間に収容空間55が設けられている。平板部材60と雄端子金具82とが収容空間55に入り込んで接続状態となる。収容空間55は、ハウジング10の内側壁44Dに臨むように開口している。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容される雌端子金具と、
を備え、
前記雌端子金具は、
一対の弾性片を具備するばね部材と、
前記弾性片に接触する平板部材と、
を有し、
前記ばね部材には、一対の前記弾性片の間に収容空間が設けられ、
前記平板部材と相手側端子とが前記収容空間に入り込んで接続状態となり、
前記収容空間は、前記ハウジングの内側壁に臨むように開口している雌コネクタ。
【請求項2】
前記平板部材は、前記収容空間に一方側から挿入され、
前記相手側端子は、前記収容空間に前記一方側とは反対側から挿入され、
前記相手側端子は、前記平板部材よりも強度が高い請求項1に記載の雌コネクタ。
【請求項3】
前記平板部材及び前記相手側端子は、積層状態で前記収容空間に収容されている請求項1又は請求項2に記載の雌コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、
前記平板部材を収容するキャビティが設けられる第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間で変位する第2ハウジングと、
を有し、
前記平板部材には、電線と接続する接続部が設けられ、
前記第1ハウジングには、前記第2ハウジングが前記仮係止位置にある状態で、前記キャビティに収容された前記平板部材の前記接続部を露出させる切欠き部が設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の雌コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記平板部材を収容するキャビティが設けられ、
前記平板部材は、電線と接続され、
前記キャビティの壁部には、突出して前記電線を保持する保持部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の雌コネクタ。
【請求項6】
一方の前記弾性片には、前記相手側端子の前記収容空間への挿入をガイドする第1ガイド部が設けられ、
他方の前記弾性片には、前記平板部材の前記収容空間への挿入をガイドする第2ガイド部が設けられている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の雌コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される雌型端子金具は、金属の板材を折り曲げ加工して形成されている。雌型端子金具は、端子接続部と、電線接続部と、を備えている。端子接続部は、雄型端子のタブと接触する弾性片を収容する角筒状に構成されている。電線接続部は、端子接続部の後部側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-235849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、雌型端子金具が角筒状の端子接続部を備えることで、端子形状が複雑になってしまう。このような雌型端子金具は、端子形状が複雑になると、材料の使用量が増えるとともに、成形するための曲げ加工等の工程数が増えるため、コストの増大を招いてしまう。
【0005】
本開示は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、雌端子金具の構造を簡素化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の雌コネクタは、
ハウジングと、
前記ハウジングに収容される雌端子金具と、
を備え、
前記雌端子金具は、
一対の弾性片を具備するばね部材と、
前記弾性片に接触する平板部材と、
を有し、
前記ばね部材には、一対の前記弾性片の間に収容空間が設けられ、
前記平板部材と相手側端子とが前記収容空間に入り込んで接続状態となり、
前記収容空間は、前記ハウジングの内側壁に臨むように開口している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、雌端子金具の構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1に係る雌コネクタの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の分解斜視図である。
図3図3は、第1ハウジングの平面図である。
図4図4は、第1ハウジングの背面図である。
図5図5は、ばね部材の後側かつ右側から見た斜視図である。
図6図6は、ばね部材の背面図である。
図7図7は、ばね部材の左側面図である。
図8図8は、組み付け状態の雌コネクタ及び雄コネクタの左側から見た断面図である。
図9図9は、組み付け状態の雌コネクタ及び雄コネクタの平断面図である。
図10図10は、平板部材を省略した状態で、雌コネクタにおけるばね部材及びその周辺を示す後側から見た断面図である。
図11図11は、図10において、収容空間に平板部材及び相手側端子が挿入された状態を示す断面図である。
図12図12は、実施例1に係る雌コネクタの製造方法において、第1ハウジングに平板部材を組み付ける工程を説明する平面図である。
図13図13は、図12に続く工程において、第1ハウジングと第2ハウジングとを仮係止状態とする工程を説明する平面図である。
図14図14は、図13に続く工程において、平板部材に電線を接続する工程を説明する平面図である。
図15図15は、図14に続く工程において、第1ハウジングと第2ハウジングとを本係止状態とする工程を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の雌コネクタは、
(1)ハウジングと、
前記ハウジングに収容される雌端子金具と、
を備え、
前記雌端子金具は、
一対の弾性片を具備するばね部材と、
前記弾性片に接触する平板部材と、
を有し、
前記ばね部材には、一対の前記弾性片の間に収容空間が設けられ、
前記平板部材と相手側端子とが前記収容空間に入り込んで接続状態となり、
前記収容空間は、前記ハウジングの内側壁に臨むように開口している。
本開示の雌端子金具によれば、ばね部材の一対の弾性片の間に平板部材を収容する収容空間が設けられ、その開口がハウジングの内側壁に臨む構成であるため、平板部材を囲むような箱部が存在しない。このように、雌端子金具が平板部材を囲む箱部を有していないため、雌端子金具の構造を簡素化することができる。
【0010】
(2)前記平板部材は、前記収容空間に一方側から挿入され、前記相手側端子は、前記平板部材が前記収容空間に収容されている状態で、前記収容空間に前記一方側とは反対側から挿入され、前記相手側端子は、前記平板部材よりも強度が高いことが好ましい。
この構成によれば、平板部材よりも強度が高い相手側端子が、平板部材よりも後にばね部材の収容空間に挿入されるため、平板部材が座屈し難くなる。
【0011】
(3)前記平板部材及び前記相手側端子は、一対の前記弾性片の対向方向と同じ方向に積層した状態で前記収容空間に収容されていることが好ましい。
この構成によれば、平板部材と相手側端子とが、積層されずに収容空間への挿入方向に並ぶように配置される構成に比べて、収容空間への挿入方向におけるばね部材の長さを小さくすることができる。
【0012】
(4)前記ハウジングは、前記平板部材を収容するキャビティが設けられる第1ハウジングと、前記第1ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間で変位する第2ハウジングと、を有し、前記平板部材には、電線と接続する接続部が設けられ、前記第1ハウジングには、前記第2ハウジングが前記仮係止位置にある状態で、前記キャビティに収容された前記平板部材の前記接続部を露出させる切欠き部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、平板部材がキャビティに収容された状態で、切欠き部を介して接続部を溶接等することができ、平板部材と電線の接続をし易くなる。
【0013】
(5)前記ハウジングには、前記平板部材を収容するキャビティが設けられ、前記平板部材は、電線と接続され、前記キャビティの壁部には、突出して前記電線を保持する保持部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、保持部によって電線が保持されるため、平板部材と電線との接続部分に不要な力が掛かることを抑制することができる。
【0014】
(6)一方の前記弾性片には、前記相手側端子の前記収容空間への挿入をガイドする第1ガイド部が設けられ、他方の前記弾性片には、前記平板部材の前記収容空間への挿入をガイドする第2ガイド部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、両方の弾性片に相手側端子及び平板部材の両方をガイドする部分を設ける構成に比べて、ばね部材の構造を簡素化することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示の雌コネクタを具体化した実施例1を、図1図15を参照して説明する。本実施例1において、上下の方向については、図1図2図4~10、図11図13図15にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図1図3図7図9図12~15にあらわれる左方、右方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、図3図9図12図14にあらわれる上方、下方を、それぞれ左方、右方と定義する。
【0016】
(雌コネクタの構成)
本実施例1の雌コネクタ1は、図1図2に示すように、ハウジング10と、雌端子金具20と、を備えている。雌端子金具20は、ハウジング10に収容されている。雌端子金具20は、電線70に固着されている。電線70は、ハウジング10から後方へ導出されている。
【0017】
雌コネクタ1は、図8に示すように、雄コネクタ80に接続される。雄コネクタ80は、例えば、雄ハウジング81と、雄端子金具82と、を備えている。雄端子金具82は、「相手側端子」の一例に相当する。雄ハウジング81の内部にハウジング10が挿入されることで、雌端子金具20と雄端子金具82とが接続される。
【0018】
ハウジング10は、図2に示すように、第1ハウジング30と、第2ハウジング40と、を有している。第1ハウジング30、及び第2ハウジング40は、それぞれ合成樹脂製の単一部品である。第1ハウジング30と第2ハウジング40とが組み付けられてハウジング10が構成されている。
【0019】
第1ハウジング30は、図2図3に示すように、左右方向を長手とする扁平形状をなしている。第1ハウジング30には、複数のキャビティ31が設けられている。キャビティ31には、雌端子金具20が収容されている。なお、図1図2図9図12図14では、一部のキャビティ31にのみ雌端子金具20が収容される状態を例示する。複数のキャビティ31は、左右方向に一列に並んで配置されている。キャビティ31は、前後方向に長い。
【0020】
キャビティ31は、図3に示すように、前側収容部31Aと、中側収容部31Bと、後側収容部31Cと、を具備している。前側収容部31Aは、キャビティ31の前端側部分を構成している。後側収容部31Cは、キャビティ31の後端側部分であって、キャビティ31の大部分を構成している。中側収容部31Bは、キャビティ31における前側収容部31Aと後側収容部31Cとの間の部分を構成している。前側収容部31Aの左右方向の幅は、後側収容部31Cの左右方向の幅よりも小さい。中側収容部31Bの左右方向の幅は、前方に向かうにつれて小さくなっている。
【0021】
後側収容部31Cを構成する下壁において、前端よりわずかに後方の位置に、上下方向に貫通する切欠き部32が設けられている。切欠き部32は、四角形状である。前側収容部31Aの左右両壁には、左右方向に突出する第1突部33Aが設けられている。第1突部33Aの上端は、上方に向かって外側に傾斜している。後側収容部31Cにおける切欠き部32の前方側の左右両壁には、左右方向に突出する第2突部33Bが設けられている。第2突部33Bの上端は、上方に向かって外側に傾斜している。後側収容部31Cにおける切欠き部32と重なる位置(第2突部33Bに対して後方に隣接する位置)には、左右方向に突出する第3突部33Cが設けられている。第3突部33Cの上端は、上方に向かって外側に傾斜している。後側収容部31Cにおける後端に近い位置の左右両壁には、左右方向に突出する第4突部33Dが設けられている。第4突部33Dは、後側収容部31Cの左右両壁の上下全体に亘って設けられている。第4突部33Dは、後側収容部31Cの左右両壁のそれぞれに一対設けられている。
【0022】
第1ハウジング30は、図2図3に示すように、一対の側壁34を有している。側壁34は、第1ハウジング30の前端側から後端側にかけて前後方向に長く形成されている。側壁34の外面(他方の側壁34とは反対側の面)には、第1係止片34Aと、第2係止片34Bと、が設けられている。第1係止片34Aは、側壁34の前端よりわずかに方向に設けられている。第1係止片34Aは、平面視台形状の突起である。第1係止片34Aの前端は、前方に向かって内側(他方の側壁34側)に傾斜している。第2係止片34Bは、側壁34の後端側において第1係止片34Aと離間して設けられている。第2係止片34Bは、前後に長い突起である。
【0023】
第2ハウジング40は、図2図4に示すように、左右方向を長手とする扁平形状をなしている。第2ハウジング40における上面の左右方向の中央部に、片持ち状に突出する撓み可能なロックアーム41が設けられている。第2ハウジング40は、一対の側壁42を有している。側壁42は、第2ハウジング40の前端側から後端側にかけて前後方向に長く形成されている。側壁42の後端部側は、可変部42Aとして構成されている。可変部42Aは、側面視U字状である。可変部42Aは、第2ハウジング40の上壁との間にスリットが設けられており、左右方向に弾性変形可能になっている。側壁42には、孔42Bが設けられている。孔42Bは、側壁42を左右方向に貫通している。孔42Bは、側壁42の前端側から可変部42Aに至るまで前後に長い形状である。
【0024】
第2ハウジング40には、図2図4に示すように、内部空間43が設けられている。内部空間43は、後方に開放されている。内部空間43の前端には、後述するばね部材50を収容する複数の収容部44が設けられている。収容部44の前壁44Aは、第2ハウジング40の前壁によって構成されている。前壁44Aには、前後方向に貫通する孔44Bが設けられている。前壁44Aの後面において孔44Bの右側(図4では左側)には、後方に突出する第1突出部44Cが設けられている。収容部44の左側の壁(図4では右側の壁)は、上壁から下方に延びる内側壁44Dとして構成されている。内側壁44Dは、上壁から下方に延びている。内側壁44Dは、収容部44の下壁と離間している。収容部44の下壁には、上方に突出する第2突出部44Eが設けられている。
【0025】
図8図9に示すように、内部空間43に第1ハウジング30が収容されることで、第1ハウジング30と第2ハウジング40とが組み付けられる。キャビティ31の上端は、第2ハウジング40の上壁によって閉塞される。第1係止片34A及び第2係止片34Bが孔42Bに挿通することで、第1ハウジング30と第2ハウジング40とが本係止される。
【0026】
雌端子金具20は、図2に示すように、ばね部材50と、平板部材60と、を有している。ばね部材50と平板部材60は、互いに別体の部品として製造されたものである。ばね部材50は、雌端子金具20の前端側部分を構成する。ばね部材50は、例えばSUS(ステンレス鋼材)等で形成されている。ばね部材50は、同一材料の単一部品である。ばね部材50は、図5図7に示すように、基部51と、一対の弾性片52,53と、延出部54と、を具備している。基部51は、四角板状である。基部51の中央には、右方向(図5図6では左方向)に膨らむ第1凸部51Aが設けられている。第1凸部51Aは、上下方向に沿った一対の切り込み51Bを介して膨出するようにプレス加工して形成されている。第1凸部51Aの前端(図7では左端)は、上下方向の幅が前方(図7では左方)に向かうにつれて小さくなっている。
【0027】
弾性片52は、基部51の上縁から左方(図5図6では右方)に延びている。弾性片52は、第1片52Aと、第2片52Bと、を含んでいる。第1片52Aは、基部51の上縁から上方に凸となるように湾曲している。第1片52Aは、先端(左方の端部)に向かって下方に傾斜する形状である。第2片52Bは、第1片52Aの先端から左方(図5図6では右方)に延びている。第2片52Bの前後方向の中心には、下方に突出する第2凸部52Cが設けられている。第2片52Bの前端には、第1ガイド部52Dが設けられている。第1ガイド部52Dは、基部51および第1片52Aよりも前方に突出している。第1ガイド部52Dは、前方に向かうにつれて上方側(弾性片53とは反対側)に傾斜している。
【0028】
弾性片53は、基部51の下縁から左方(図5図6では右方)に延びている。弾性片53は、第1片53Aと、第2片53Bと、を含んでいる。第1片53Aは、基部51の下縁から下方に凸となるように湾曲している。第1片53Aは、先端(左方の端部)に向かって上方に傾斜する形状である。第2片53Bは、第1片53Aの先端から左方(図5図6では右方)に延びている。第2片53Bの前後方向の中心には、上方に突出する第2凸部53Cが設けられている。第2片53Bの前端には、第2ガイド部53Dが設けられている。第2ガイド部53Dは、基部51および第1片53Aよりも後方に突出している。第2ガイド部53Dは、後方に向かうにつれて下方側(弾性片52とは反対側)に傾斜している。
【0029】
延出部54は、図7に示すように、基部51の前縁から延びている。延出部54は、一端前方に延び、それから下方に延びている。延出部54には、その延び方向に沿って右方に突出する第3凸部54Aが設けられている。
【0030】
ばね部材50は、図8図10に示すように、収容部44に収容されている。図10に示すように、基部51は、第1突出部44Cと、右側(図10では左側)で隣接する収容部44の内側壁44Dとの間の隙間に配置されている。基部51は、第1突出部44Cと、右側(図10では左側)で隣接する収容部44の内側壁44Dとによって、左右方向への移動が規制される。延出部54は、第2突出部44Eの右端の前方に配置されている。延出部54は、第2突出部44Eによって後方への移動が規制される。
【0031】
ばね部材50には、図5図6に示すように、一対の弾性片52,53の間に収容空間55が設けられている。収容空間55は、平板部材60と雄端子金具82とが入り込んで接続状態となる空間である。収容空間55には、第2ハウジング40の内側壁44Dに臨むように開口する開口56が設けられている。開口56は、第2片52Bの左縁(図5図6では右側の縁)と、第2片53Bの左縁(図5図6では右側の縁)とによって構成されている。開口56は、左方向(図6図10では右方向)に向かって開放されている。開口56は、図10に示すように、第2ハウジング40の内側壁44Dによって覆われている。
【0032】
ばね部材50に平板部材60を収容する収容空間55が設けられ、その開口56が第2ハウジング40の内側壁44Dで覆われる構成である。すなわち、雌端子金具20は、平板部材60に対するばね機能を、別部材(ばね部材50)に付加する構成となっている。このばね部材50は、角筒部(4枚の板部からなる)を有しておらず、弾性片52,53がばね部材50の外面に露出している。このように、雌端子金具20が平板部材60を囲む角筒部を有していないため、雌端子金具20の構造を簡素化することができる。ひいては、雌端子金具20の製造コストの低減、及び小型化を図ることができる。
【0033】
平板部材60は、図2に示すように、長手状の板部材によって構成されている。平板部材60は、例えばスズめっきされたアルミニウム等で形成されている。平板部材60は、第1板部61Aと、第2板部61Bと、第3板部61Cと、を含んでいる。平板部材60は、前側から第1板部61A、第2板部61B、第3板部61Cの順で連なっている。第1板部61Aは、平面視長方形状である。第2板部61Bは、前側から後側に向かって幅広になる板形状である。第3板部61Cは、平面視長方形状である。第3板部61Cは、第1板部61Aよりも幅広である。第3板部61Cにおける前端よりわずかに後方の位置には、左右方向内側に凹む一対の凹部62が設けられている。
【0034】
平板部材60には、図2に示すように、電線70が接続されている。具体的には、電線70から導出される導線71が、第3板部61Cに溶接(超音波溶着等)、圧着等によって接続されている。第3板部61Cは、本開示の「接続部」の一例に相当する。
【0035】
平板部材60は、図9に示すように、キャビティ31に収容されている。第1板部61Aは、一対の第1突部33Aの下方に位置する。これにより、第1板部61Aは、一対の第1突部33Aによって上方への移動が規制される。一対の凹部62には、それぞれ一対の第2突部33Bが入り込んでいる。第2突部33Bによって凹部62の前後方向への移動が規制されるため、平板部材60がキャビティ31に対して前後方向への移動が規制される。第3板部61Cは、一対の第3突部33Cの下方に位置する。これにより、第3板部61Cは、一対の第3突部33Cによって上方への移動が規制される。第3板部61Cの前端(電線70との接続箇所)は、切欠き部32と上下方向で重なっている。
【0036】
電線70は、図9に示すように、4つの第4突部33Dに接触している。第4突部33Dは、電線70に対するストレインリリーフ構造をなしている。第4突部33Dは、本開示の「保持部」に相当する。第4突部33Dは、電線70を保持している。これにより、第4突部33Dは、平板部材60と電線70との接続箇所に不要な力が掛かることを抑制することができる。
【0037】
平板部材60の第1板部61Aは、図8に示すように、ばね部材50の収容空間55に後方側(本開示の「一方側」に相当)から挿入されている。第1板部61Aは、図11に示すように、下側の弾性片53に上方側から接触している。具体的には、第1板部61Aは、第2凸部53Cに上方側から接触している。平板部材60を収容空間55に後方側から挿入する際に、第1ガイド部52Dによって平板部材60の収容空間55への挿入がガイドされる。
【0038】
雄端子金具82は、図8に示すように、ばね部材50の収容空間55に前方側(本開示の「他方側」に相当)から挿入されている。雄端子金具82は、図11に示すように、上側の弾性片52に下方側から接触している。具体的には、雄端子金具82は、第2凸部52Cに下方側から接触している。雄端子金具82を収容空間55に前方側から挿入する際に、第2ガイド部53Dによって雄端子金具82の収容空間55への挿入がガイドされる。
【0039】
平板部材60及び雄端子金具82は、図11に示すように、収容空間55に入り込んで接続状態となる。平板部材60及び雄端子金具82は、積層状態で収容空間55に収容されている。具体的には、上下方向外側に弾性変形した一対の弾性片52,53によって上下方向から挟まれた状態で、平板部材60及び雄端子金具82が上下方向に重なっている。
【0040】
雄端子金具82は、図11に示すように、平板部材60よりも上下方向の厚みが大きい。雄端子金具82は、平板部材60よりも強度が高くなっている。平板部材60よりも強度が高い雄端子金具82が、平板部材60よりも後にばね部材50の収容空間55に挿入されるため、平板部材60が座屈し難くなる。
【0041】
(雌コネクタの製造工程)
図12図15を用いて、雌コネクタ1の製造工程について説明する。図12図15は、雌コネクタ1の製造工程の流れを説明する説明図である。まず、図12に示すように、第1ハウジング30のキャビティ31に平板部材60を組み付ける。第1板部61Aを、一対の第1突部33Aの下方に配置する。一対の凹部62に、それぞれ一対の第2突部33Bを入り込ませる。第3板部61Cを、一対の第3突部33Cの下方に配置する。このような状態で、第3板部61Cの前端(電線70との接続箇所)は、切欠き部32と上下方向で重なっている。
【0042】
続いて、第2ハウジング40の収容部44にばね部材50を収容させる。ばね部材50を後方から収容部44に挿入する過程で、延出部54が第2突出部44Eによって右側に弾性変形させられる。延出部54が第2突出部44Eを乗り越えることで、図10に示すように、延出部54が第2突出部44Eの右端の前方に配置される。これにより、第2突出部44Eによって延出部54の後方への移動が規制され、収容部44からのばね部材50の抜け出しが抑制される。
【0043】
続いて、図13に示すように、第1ハウジング30と第2ハウジング40とを仮係止状態とする。一対の可変部42Aを左右方向外側に広げつつ、第1ハウジング30を第2ハウジング40の内部空間43に入り込ませる。第1係止片34Aが可変部42Aの孔42Bに入り込み、可変部42Aが弾性復帰することで、可変部42Aの先端42C(上下に連なる部分)が第1係止片34Aと第2係止片34Bに挟まれる。これにより、第1ハウジング30と第2ハウジング40とが仮係止状態となる。
【0044】
続いて、図14に示すように、キャビティ31に収容された平板部材60の第3板部61Cの前端が、切欠き部32を介して下方に露出する。第3板部61Cの前端と電線70の接続箇所を、切欠き部32を介して溶接(超音波溶接等)等によって接続する。
【0045】
続いて、図15に示すように、第1ハウジング30と第2ハウジング40とを本係止状態とする。一対の可変部42Aを左右方向外側に広げつつ、第1ハウジング30を第2ハウジング40の内部空間43により一層入り込ませる。第2係止片34Bが可変部42Aの孔42Bに入り込み、可変部42Aが弾性復帰することで、可変部42Aの先端42Cによって第2係止片34Bの後方への移動が規制される。これにより、第1ハウジング30と第2ハウジング40とが本係止状態となる。
【0046】
(実施例1の効果)
実施例1の雌コネクタ1の雌端子金具20によれば、ばね部材50の一対の弾性片52,53の間に平板部材60を収容する収容空間55が設けられ、その開口56がハウジング10の内側壁44Dに臨む構成であるため、平板部材60を囲むような箱部が存在しない。このように、雌端子金具20が平板部材60を囲む箱部を有していないため、雌端子金具20の構造を簡素化することができる。
【0047】
更に、平板部材60は、収容空間55に一方側から挿入される。雄端子金具82は、平板部材60が収容空間55に収容されている状態で、収容空間55に一方側とは反対側から挿入される。雄端子金具82は、平板部材60よりも強度が高い。この構成によれば、平板部材60よりも強度が高い雄端子金具82が、平板部材60よりも後にばね部材50の収容空間55に挿入されるため、平板部材60が座屈し難くなる。
【0048】
更に、平板部材60及び雄端子金具82は、一対の弾性片52,53の対向方向と同じ方向に積層した状態で収容空間55に収容されている。この構成によれば、平板部材60と雄端子金具82とが、積層されずに収容空間55への挿入方向に並ぶように配置される構成に比べて、収容空間55への挿入方向に沿う方向におけるばね部材50の長さを小さくすることができる。
【0049】
更に、ハウジング10は、平板部材60を収容するキャビティ31が設けられる第1ハウジング30と、第1ハウジング30に対して仮係止位置と本係止位置との間で変位する第2ハウジング40と、を有している。平板部材60には、電線70と接続する第3板部61Cが設けられている。第1ハウジング30には、第2ハウジング40が仮係止位置にある状態で、キャビティ31に収容された平板部材60の第3板部61Cを露出させる切欠き部32が設けられている。この構成によれば、平板部材60がキャビティ31に収容された状態で、切欠き部32を介して第3板部61Cを溶接等することができ、平板部材60と電線70の接続をし易くなる。
【0050】
更に、ハウジング10には、平板部材60を収容するキャビティ31が設けられている。平板部材60は、電線70と接続されている。キャビティ31の壁部には、突出して電線70を保持する第4突部33Dが設けられている。この構成によれば、第4突部33Dによって電線70が保持されるため、平板部材60と電線70との接続部分に不要な力が掛かることを抑制することができる。
【0051】
更に、弾性片52には、雄端子金具82の収容空間55への挿入をガイドする第1ガイド部52Dが設けられている。弾性片53には、平板部材60の収容空間55への挿入をガイドする第2ガイド部53Dが設けられている。この構成によれば、両方の弾性片52,53に雄端子金具82及び平板部材60の両方をガイドする部分を設ける構成に比べて、ばね部材50の構造を簡素化することができる。
【0052】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、ばね部材50の収容空間55内において、平板部材60と雄端子金具82とが上下方向で接触する構成を例示したが、平板部材60と雄端子金具82とが接触しない構成であってもよい。この場合、例えば、平板部材60が弾性片53と接触し、雄端子金具82が弾性片52と接触することで、平板部材60と雄端子金具82とがばね部材50を介して導通状態となる。
上記実施例1では、平板部材60と雄端子金具82とが上下方向に積層される構成を例示したが、積層されない構成であってもよい。例えば、平板部材60の前端と雄端子金具82の後端とが前後方向で重なる構成であってもよい。
上記実施例1では、ばね部材50の収容空間55が左方向に開口する構成を例示したが、その他の方向に開口する構成であってもよい。例えば、実施例1のばね部材50の形状を左右反転させた構成や、収容空間55の開口56が上方を向く構成等であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…雌コネクタ
10…ハウジング
20…雌端子金具
30…第1ハウジング
31…キャビティ
31A…前側収容部
31B…中側収容部
31C…後側収容部
32…切欠き部
33A…第1突部
33B…第2突部
33C…第3突部
33D…第4突部(保持部)
34…側壁
34A…第1係止片
34B…第2係止片
40…第2ハウジング
41…ロックアーム
42…側壁
42A…可変部
42B…孔
42C…先端
43…内部空間
44…収容部
44A…前壁
44B…孔
44C…第1突出部
44D…内側壁
44E…第2突出部
50…ばね部材
51…基部
51A…第1凸部
51B…切り込み
52,53…弾性片
52A…第1片
52B…第2片
52C…第2凸部
52D…第1ガイド部
53A…第1片
53B…第2片
53C…第2凸部
53D…第2ガイド部
54…延出部
54A…第3凸部
55…収容空間
56…開口
60…平板部材
61A…第1板部
61B…第2板部
61C…第3板部(接続部)
62…凹部
70…電線
71…導線
80…雄コネクタ
81…雄ハウジング
82…雄端子金具(相手側端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15