(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036148
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02H 7/26 20060101AFI20230307BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230307BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230307BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H02H7/26 J
H02H7/26 A
H02J3/38 130
H02J3/32
H02H3/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143007
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】宇田 怜史
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【テーマコード(参考)】
5G004
5G066
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004AB02
5G004BA03
5G004CA01
5G004DA01
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】並列接続された複数の重要負荷に電力を供給する電源システムにおいて、負荷側の短絡事故の発生時に、その影響が負荷全体へ波及することを防止する。
【解決手段】商用電力系統10と、互いに並列接続された複数の重要負荷30との間に設けられ、複数の重要負荷に電力を供給する電源システム100であって、商用電力系統から複数の重要負荷に給電するための主電力線L1に接続された分散型電源2と、主電力線において分散型電源よりも重要負荷側から分岐し、各重要負荷に給電するための複数の分岐電力線L2に夫々設けられた複数の開閉スイッチ9と、各分岐電力線のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部93と、複数の分岐電力線のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合に、該当する分岐電力線に設けられた開閉スイッチを開放する第2制御部94とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と、互いに並列接続された複数の重要負荷との間に設けられ、前記複数の重要負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記商用電力系統から前記複数の重要負荷に給電するための主電力線に接続された分散型電源と、
前記主電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記主電力線を開閉する切替スイッチと、
前記主電力線において前記切替スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、
前記切替スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、
前記主電力線において前記分散型電源よりも前記重要負荷側から分岐し、前記各重要負荷に給電するための複数の分岐電力線にそれぞれ設けられた複数の開閉スイッチと、
前記各分岐電力線のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧が予め定められた整定値以下となった場合に前記切替スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とを前記インピーダンス素子を介して接続する第1制御部と、
前記複数の分岐電力線のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合に、該当する分岐電力線に設けられた前記開閉スイッチを開放する第2制御部とを備える電源システム。
【請求項2】
前記分岐電力線にかかる電圧値を検出する負荷側電圧検出部と、
前記分岐電力線を流れる電流値を検出する負荷側電流検出部とを備え、
前記インピーダンス測定部は、検出された前記電圧値及び前記電流値とに基づいて、前記分岐電力線のインピーダンスを算出する請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記第2制御部が、前記複数の分岐電力線の電流値のいずれかが予め定められた整定値以上となった場合、又は前記複数の分岐電力線のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合に、該当する分岐電力線に設けられた前記開閉スイッチを開放する請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記開閉スイッチが高速切り替えが可能なものである請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムとして、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
特許文献1の電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に、半導体スイッチ等の切替スイッチと、当該切替スイッチに並列接続されたインピーダンス素子とを設け、切替スイッチよりも重要負荷側に分散型電源を設けて構成されている。また、切替スイッチよりも商用電力系統側に解列スイッチが設けられている。この電源システムは、商用電力系統に瞬時電圧低下(以下、瞬低ともいう)が発生した場合には、切替スイッチを開放することにより、インピーダンス素子を介して商用電力系統と分散型電源を接続するとともに、分散型電源は逆潮流を含む運転を継続する(FRT運転)。一方、商用電力系統が健全状態に復帰した場合には、負荷側の電圧と比較して同期が確立すると、切替スイッチを投入することにより、常時運用時の動作を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記したような電源システムでは、複数の重要負荷が互いに並列に接続されており、それぞれに対して短絡保護用の遮断器等が設けられることがある。このような電源システムでは、
図6に示すように、常時運用時に重要負荷側で短絡事故が生じると、その直後に商用電極系統及び分散型電源から短絡点に向かって事故電流が流れる。これに伴い、商用電力系統側の電圧が低下すると、切替スイッチを開放することにより分散型電源がFRT運転を開始する。ここで、切替スイッチが開放され、インピーダンス素子を介して商用電力系統が接続されることにより、商用電力系統側からの事故電流は限流し、商用電力系統側の電圧が回復する。一方、重要負荷側では、短絡点が遮断されるまで、電圧の低下と分散型電源の事故電流の供給が継続する。
【0006】
ここで、
図7に示すように、商用電力系統側の電圧低下の検出及び切替スイッチの開放の速度は、重要負荷の耐量を想定すると、瞬時(例えば2m秒以内)に行われることが望ましい。一方で、負荷側の遮断器や過電流継電器は短絡電流(定格の10倍以上)に対して、20m秒程度で遮断動作するように構成されることが多い。この場合、切替スイッチの開放が瞬時(2m秒以内)に行なわれると、短絡点を遮断する前にインピーダンス素子が挿入されることで商用電力系統側からの事故電流が抑制され、短絡点に向かう短絡電流が例えば定格の1.5倍程度にまで減少してしまう。これにより、遮断器や過電流継電器が反限時特性により遮断時間が延びてしまう(一般的な低圧遮断器の場合、定格の1.3~1.5倍に対して1~30分程度)。その結果、健全な重要負荷において短絡事故による電圧低下が長引いたり、分散型電源において過電流供給時間が長期化したり、電圧低下に伴って商用電力系統側との同期が確立せず装置保護により分散型電源が故障停止してしまい、短絡故障の影響が重要負荷全体に波及してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、並列接続された複数の重要負荷に電力を供給する電源システムにおいて、負荷側の短絡事故の発生時に、その影響が重要負荷全体へ波及することを防止することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る電源システムは、商用電力系統と、互いに並列接続された複数の重要負荷との間に設けられ、前記複数の重要負荷に電力を供給する電源システムであって、前記商用電力系統から前記複数の重要負荷に給電するための主電力線に接続された分散型電源と、前記主電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記主電力線を開閉する切替スイッチと、前記主電力線において前記切替スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、前記切替スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、前記主電力線において前記分散型電源よりも前記重要負荷側から分岐し、前記各重要負荷に給電するための複数の分岐電力線にそれぞれ設けられた複数の開閉スイッチと、前記各分岐電力線のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、前記系統側電圧検出部の検出電圧が予め定められた整定値以下となった場合に前記切替スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とを前記インピーダンス素子を介して接続する第1制御部と、前記複数の分岐電力線のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合に、該当する分岐電力線に設けられた前記開閉スイッチを開放する第2制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような電源システムであれば、重要負荷に接続している各分岐電力線のインピーダンスをそれぞれ計測し、いずれかの分岐電力線のインピーダンスが整定値以下となった場合に該当する分岐電力線を遮断するようにしているので、常時運用時に重要負荷側で短絡事故が発生しても直ぐに短絡点を遮断することができ、これにより健全な重要負荷の電圧低下を瞬時に回復させるとともに、分散型電源の過電流供給を防止でき、短絡事故の影響の重要負荷全体への波及を防止することができる。
【0010】
前記電源システムの具体的構成としては、前記分岐電力線にかかる電圧値を検出する負荷側電圧検出部と、前記分岐電力線を流れる電流値を検出する負荷側電流検出部とを備え、前記インピーダンス測定部は、検出された前記電圧値及び前記電流値とに基づいて、前記分岐電力線のインピーダンスを算出するものが挙げられる。
【0011】
また前記電源システムは、前記第2制御部が、前記複数の分岐電力線の電流値のいずれかが予め定められた整定値以上となった場合、又は前記複数の分岐電力線のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合に、該当する分岐電力線に設けられた前記開閉スイッチを開放するのが好ましい。
このようにすれば、切替スイッチが開放される前に重要負荷に向かって大電流が流れる場合に、直ぐに分岐電力線を遮断することができる。
【0012】
また前記電源システムの具体的構成としては、前記開閉スイッチが、半導体スイッチ、又は半導体スイッチと機械式スイッチとを組み合わせたハイブリッドスイッチなど、高速切り替えが可能なものが挙げられる。
このようにすれば、短絡事故の影響の重要負荷全体への波及をより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、並列接続された複数の重要負荷に電力を供給する電源システムにおいて、負荷側の短絡事故の発生時に、その影響が負荷全体へ波及することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の電源システムの構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の電源システムの常時運用時の状態を示す模式図。
【
図3】同実施形態の電源システムの瞬低時の状態を示す模式図。
【
図4】同実施形態の電源システムの負荷側短絡時の状態を示す模式図。
【
図5】同実施形態の電源システムの負荷側短絡時の動作のシミュレーション結果を示す図。
【
図6】従来の電源システムの負荷側短絡時の状態を示す模式図。
【
図7】従来の電源システムの負荷側短絡時の動作のシミュレーション結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る電源システムについて、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の電源システム100は、
図1に示すように、商用電力系統10と、互いに並列に接続された複数(ここでは2つ)の重要負荷30との間に設けられ、商用電力系統10の異常時に各重要負荷30に電力を供給する無停電電源システムとしての機能(無停電電源機能)と、商用電力系統10に対して順潮流及び逆潮流することで負荷平準化する分散型電源システムとしての機能(負荷平準化機能)を発揮するものである。
【0017】
具体的に電源システム100は、商用電力系統10から各重要負荷30に給電するための主電力線L1に接続された分散型電源2と、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とを接続する切替スイッチ3と、切替スイッチ3に並列接続されたインピーダンス素子4と、切替スイッチ3よりも商用電力系統10側の電圧を検出する系統側電圧検出部5と、系統側電圧検出部5の検出電圧が整定値以下となった場合に切替スイッチ3を開放する第1制御部6とを備えている。
【0018】
ここで、商用電力系統10は、電力会社(電気事業者)の電力供給網であり、発電所、送電系統及び配電系統を有するものである。また、各重要負荷30は、停電や瞬低などの系統異常時においても電力を安定して供給すべき負荷である。各重要負荷30は、主電力線L1において、分散型電源2よりも重要負荷側30から分岐する複数の分岐電力線L2にそれぞれ接続されている。
【0019】
分散型電源2は、商用電力系統10に連系されるものであり、例えば太陽光発電や燃料電池などの直流発電設備21aと電力変換装置22とを有するもの、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)21bと電力変換装置22とを有するもの、風力発電やマイクロガスタービンなどの交流で出力された電気エネルギを直流に整流したうえで、電力変換装置を用いて系統連系をされる発電設備(不図示)、又は、同期発電機や誘導発電機などの交流発電設備21cである。なお、電源システム100は、少なくとも電力貯蔵装置21bを備えており、その他上記何れか分散型電源2を有するものであっても良い。
【0020】
切替スイッチ3は、主電力線L1において分散型電源2の接続点よりも商用電力系統10側に設けられて主電力線L1を開閉するものであり、例えば半導体スイッチ、又は、半導体スイッチと機械式スイッチとを組み合わせたハイブリッドスイッチなどの高速切り替えが可能な切替スイッチを用いることができる。例えば半導体スイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断することができる。また、ハイブリッドスイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断できるだけでなく、通電損失をゼロにすることができる。なお、この切替スイッチ3は、第1制御部6により開閉制御される。
【0021】
インピーダンス素子4は、前記主電力線L1において切替スイッチ3に並列接続されたものであり、本実施形態では、限流リアクトルである。
【0022】
系統側電圧検出部5は、主電力線L1において切替スイッチ3よりも商用電力系統10側の電圧を、計器用変圧器を介して検出するものである。具体的に系統側電圧検出部5は、切替スイッチ3及びインピーダンス素子4からなる並列回路よりも商用電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されている。
【0023】
第1制御部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧と、予め定められた整定値とを比較して、前記検出電圧が整定値以下である場合に、切替スイッチ3に制御信号を出力して切替スイッチ3を開放するものである。なお、本実施形態の前記整定値は、瞬低を検出するための電圧値である。このように第1制御部6が切替スイッチ3を開放させることにより、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とはインピーダンス素子4を介して接続された状態となる。この状態で、分散型電源は逆潮流を含む運転を継続する。
【0024】
またこの電源システム100では、主電力線L1において分散型電源2よりも商用電力系統10側に設けられた解列用スイッチ7と、解列用スイッチ7よりも分散型電源2側の電圧を検出する電源側電圧検出部8とをさらに備えている。
【0025】
解列用スイッチ7は、商用電力系統10と分散型電源2とを解列するための開閉スイッチであり、例えば機械式スイッチである。
図1では、解列スイッチ7は切替スイッチ3よりも商用電力系統10側に設けられているが、切替スイッチ3よりも分散型電源2側に設けてもよい。この解列用スイッチ7は、第1制御部6により開閉制御される。
【0026】
具体的に第1制御部6は、系統側電圧検出部5の検出電圧が所定の解列条件を満たす場合に解列用スイッチ7を開放する。ここで、所定の解列条件は、系統電圧の電圧低下(検出電圧が前記整定値以下となっている状態)の継続時間が所定値以上(瞬低継続時間よりも長い時間)となることである。解列用スイッチ7が開放された状態で、分散型電源2は自立運転モードとなり重要負荷30に給電する。なお、切替スイッチ3は既に解放されているので、解列用スイッチ7の開放による過電流はリアクトル4によって抑制される。
【0027】
また第1制御部6は、系統側電圧検出部5の検出電圧が所定の解列条件を解消し、且つ系統側電圧検出部5の検出電圧及び電源側電圧検出部8の検出電圧が同期検定条件を満たす場合に解列用スイッチ7を投入するものである。
【0028】
しかして、本実施形態の電源システム100は、負荷側の短絡事故の発生時に、その影響が負荷全体へ波及することを防止するべく、複数の分岐電力線L2にそれぞれ設けられた開閉スイッチ9と、各分岐電力線L2にかかる電圧値を検出する負荷側電圧検出部91と、各分岐電力線L2を流れる電圧値を検出する負荷側電流検出部92と、各分岐電力線L2のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部93と、インピーダンス測定部93の測定値に基づいて開閉スイッチ9を開放する第2制御部94とを備えている。
【0029】
開閉スイッチ9は、分岐電力線L2を開閉するものであり、重要負荷30毎に設けられている。具体的にこの開閉スイッチ9は、例えば半導体スイッチ、又は半導体スイッチと機械式スイッチとを組み合わせたハイブリッドスイッチ等、高速切り替えが可能な切替スイッチ(高速スイッチ)を用いることができる。例えば半導体スイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断することができる。また、ハイブリッドスイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断できるだけでなく、通電損失をゼロにすることができる。なお、この開閉スイッチ9は、第2制御部94により開閉制御される。
【0030】
負荷側電圧検出部91は、分岐電力線L2において開閉スイッチ9よりも分散型電源2側に接続されており、分岐電力線L2にかかる電圧を、計器用変圧器を介して検出するものである。負荷側電圧検出部91により検出される電圧値は、三相瞬時電圧実効値が望ましく、その周波数は基本波でもよく、高調波でもよい。負荷側電圧検出部91により検出された電圧値は、インピーダンス測定部94に入力され、インピーダンスの測定に用いられる。
【0031】
負荷側電流検出部92は、分岐電力線L2において開閉スイッチ9よりも分散型電源2側に接続されており、分岐電力線L2に流れる電流を、計器用変流器を介して検出するものである。負荷側電流検出部92により検出された電流値は、インピーダンス測定部94に入力されてインピーダンスの測定に用いられる。負荷側電流検出部92により検出される電流値は、三相瞬時電流実効値が望ましく、その周波数は基本波でもよく、高調波でもよい。またこの電流値は、第2制御部94にも入力されて、開閉スイッチ9の制御に用いられる。
【0032】
インピーダンス測定部93は、負荷側電圧検出部91により検出された電圧値と、負荷側電流検出部92により検出された電流値とに基づいて、分岐電力線L2のインピーダンスを測定するものである。測定されたインピーダンスは、第2制御部94に入力されて、開閉スイッチ9の制御に用いられる。
【0033】
第2制御部94は、複数の分岐電力線L2のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値(インピーダンス整定値)以下となった場合に、該当する分岐電力線L2に設けられた開閉スイッチ9に制御信号を出力して、開閉スイッチ9を開放するものである。このインピーダンス整定値は、分岐電力線L2における短絡(負荷側短絡)を検出するための値であり、例えばインピーダンス定常値の30%程度に設定されている。測定されたインピーダンスがインピーダンス整定値以下になると、第2制御部94は、予め設定した所定の判定時間(例えば20m秒程度)が経過した後、開閉スイッチ9を開放する。
【0034】
また第2制御部94は、複数の分岐電力線L2の電流値のいずれかが予め定められた整定値(電流整定値)以上となった場合にも、該当する分岐電力線L2に設けられた開閉スイッチ9に制御信号を出力して開閉スイッチ9を開放する。
【0035】
次に、本実施形態の電源システム100の動作(常時運用時、瞬低時及び負荷側短絡時)について説明する。
【0036】
(1)常時運用時
電源システム100は、通常時には、
図2に示すように、切替スイッチ3、解列スイッチ8及び開閉スイッチ9を閉じており、分散型電源2及び各重要負荷30は切替スイッチ3を介して商用電力系統10に接続された状態である。なお、リアクトル4は切替スイッチ3に並列接続されているが、切替スイッチ3のインピーダンスは、リアクトル4のインピーダンスよりも小さいため、商用電力系統10と分散型電源2及び各重要負荷30とは切替スイッチ3側で電力をやり取りする。分散型電源2による逆潮流によってピークカット・ピークシフトを実現することができる。
【0037】
(2)瞬低発生時とその復電時
商用電力系統10側で短絡事故(例えば三相短絡)が発生すると、商用電力系統10側の電圧が低下する。この電圧低下は、系統側電圧検出部5により検出される。第1制御部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧が整定値以下の場合には、切替スイッチ3を開放する。
図3に示すように、切替スイッチ3を開放すると、分散型電源2及び各重要負荷30はリアクトル4を介して商用電力系統10に接続された状態となる。この状態で、分散型電源2から短絡事故点に流れる電流はリアクトル4により限流されて、短絡事故点に流れる事故電流が抑制されるとともに、各重要負荷30の電圧低下を防止する。また、この状態で、分散型電源2は逆潮流を含む運転を継続しており、発電出力を継続する。
【0038】
なお、系統側電圧検出部5は、切替スイッチ3の開閉に関係なく、商用電力系統10側の電圧を検出しており、第1制御部6は、系統側電圧検出部5の検出電圧が所定の復帰電圧以上となった場合、例えば商用電力系統の残電圧が80%以上となった場合に、切替スイッチ3を閉じる。
【0039】
(3)負荷側短絡時
重要負荷30側(具体的には、分岐電力線L2)で短絡事故が発生すると、商用電力系統10側の電圧と、事故点がある分岐電力線L2のインピーダンスが低下する。この電圧低下は、系統側電圧検出部5により検出される。第1制御部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧が整定値以下の場合には、切替スイッチ3を開放する。
図4に示すように、切替スイッチ3を開放すると、分散型電源2及び各重要負荷30はリアクトル4を介して商用電力系統10に接続された状態となる。ここで、短絡が生じた分岐電力線L2では、インピーダンスの低下が継続する。この分岐電力線L2のインピーダンスの低下は、インピーダンス測定部93により検出される。第2制御部94は、インピーダンス測定部93により測定されたインピーダンスが整定値(定常値の30%程度)以下である状態が所定の判定時間(20m秒程度)を超える場合には、このインピーダンスが低下している分岐電力線L2の開閉スイッチ9を開放する。短絡事故が生じていない健全な分岐電力線L2にある開閉スイッチ9は閉じたままとする。
【0040】
次に、
図1に示す構成とした電源システム100による負荷側短絡時の動作のシミュレーション結果を
図5に示す。
【0041】
この動作のシミュレーション結果は、負荷側短絡事故の発生時に、商用電力系統10側の電圧の低下を検出して切替スイッチ3を2m秒以内に開放するとともに、負荷側のインピーダンスの低下を検出して事故点の開閉スイッチ9を20m秒以内に開放した場合の、商用電力系統側の電圧波形及び電流波形、ならびに負荷側のインピーダンス波形、電圧波形及び電流波形とを示している。なお、商用電力系統側の電圧/電流波形は、主電力線において切替スイッチ3よりも商用電力系統側で検出された電圧及び電流を示すものであり、負荷家側の電圧/電流波形は、短絡が生じた分岐電力線において検出されるインピーダンス、電圧及び電流を示すものである。
【0042】
図5のシミュレーション結果から、負荷側短絡時にインピーダンスの低下を検出し、事故点のある分岐電力線L2の開閉スイッチ9を開放することにより重要負荷30側の電圧が回復し、短絡事故の影響を負荷側全体に波及させることなく復旧できることが確認された。
【0043】
<本実施形態の電源システム100の効果>
このように構成した本実施形態の電源システム100によれば、重要負荷30に接続している各分岐電力線L2のインピーダンスをそれぞれ計測し、いずれかの分岐電力線L2のインピーダンスが整定値以下となった場合に該当する分岐電力線L2を遮断するようにしているので、常時運用時に重要負荷30側で短絡事故が発生しても直ぐに短絡点を遮断することができ、これにより健全な重要負荷30の電圧低下を瞬時に回復させるとともに、分散型電源2の過電流供給を防止でき、短絡事故の影響の重要負荷30全体への波及を防止することができる。
【0044】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0045】
また前記実施形態の電源システム100は、複数の分岐電力線L2の電流値のいずれかが予め定められた整定値(電流整定値)以上となった場合にも、該当する分岐電力線L2に設けられた開閉スイッチ9を開放するように構成されていたがこれに限らない。他の実施形態の電源システム100は、分岐電力線L2の電流値と電流整定値とを比較することなく、複数の分岐電力線L2のインピーダンスのいずれかが予め定められた整定値以下となった場合にのみ、該当する分岐電力線L2に設けられた開閉スイッチ9を開放するように構成されてもよい。
【0046】
また、インピーダンス素子4としてコンデンサを用いても良いし、リアクトル、抵抗又はコンデンサの何れかを組み合わせたものであっても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態の系統側電圧検出部5は、系統連系用保護装置が備えるものであってもよい。系統連系規程に定められた系統連系用保護装置としては、例えば過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、短絡方向継電器(DSR)、地絡過電圧継電器(OVGR)、過周波数継電器(OFR)、不足周波数継電器(UFR)、転送遮断装置等を挙げることができる。この場合、第1制御部6は、何れか1つの連係保護機器が動作した場合に、解列用スイッチ7を開放することが考えられる。また、第1制御部6は、全ての系統連系用保護装置が不動作状態となり、且つ系統側電圧検出部5の検出電圧及び電源側電圧検出部8の検出電圧が同期検定条件を満たす場合に解列用スイッチ7を投入することもできる。この構成であれば、連係保護機器が備える電圧検出部を用いているので、別途系統側電圧検出部を設ける必要がなく、装置構成を簡単にすることができる。
【0048】
また前記実施形態では、2つの重要負荷30が並列に接続されていたが、これに限らない。他の実施形態は、3つ以上の重要負荷30が並列に接続されており、各重要負荷30に開閉スイッチ9が設けられていてもよい。
【0049】
また他の実施形態の電源システム100は、解列スイッチ7を備えていなくてもよい。
【0050】
また前記実施形態の電源側電圧検出部8は、解列用スイッチ7及び切替スイッチ3の間に設けられたものであったが、分散型電源2の系統接続点電圧の計測機能で代用してもよい。
【0051】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100・・・電源システム
10 ・・・商用電力系統
30 ・・・重要負荷
L1 ・・・主電力線
L2 ・・・分岐電力線
2 ・・・分散型電源
3 ・・・切替スイッチ
4 ・・・インピーダンス素子
5 ・・・系統側電圧検出部
6 ・・・第1制御部
7 ・・・解列用スイッチ
8 ・・・電源側電圧検出部
9 ・・・開閉スイッチ
91 ・・・負荷側電圧検出部
92 ・・・負荷側電流検出部
93 ・・・インピーダンス測定部
94 ・・・第2制御部