(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036152
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】内空変位計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230307BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01B11/24 B
G01C15/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143012
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野渡 博道
(72)【発明者】
【氏名】宮永 隼太郎
(72)【発明者】
【氏名】大槻 亮介
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA52
2F065AA60
2F065BB08
2F065BB27
2F065CC40
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL61
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】3Dスキャナを用いたA計測をより簡易かつ安価に、なおかつ高精度に行う内空変位計測方法を提案する。
【解決手段】トンネル1の壁面形状を3Dスキャナ2により測定する内空変位計測方法である。トンネル1の頂部および左右には、三角錐形状または四角錐形状のターゲット3が設けられており、3Dスキャナ2によりターゲット3に備わる3つの面7,7,7を測定した結果に基づいて、ターゲット3の頂点6の座標データを算出し、頂点6の座標データを利用して、データ管理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの壁面形状を3Dスキャナにより測定する内空変位計測方法であって、
前記トンネルの壁面には、三角錐形状または四角錐形状のターゲットが設けられており、
前記ターゲットに備わる複数の面を測定した結果に基づいて前記ターゲットの頂点の座標データを算出することを特徴とする、内空変位計測方法。
【請求項2】
前記ターゲットは、前記頂点が下向きとなるように、前記トンネルの上部に設けることを特徴とする、請求項1に記載の内空変位計測方法。
【請求項3】
前記ターゲットの少なくとも3つの面に対して、それぞれ3点以上の測点を測定し、
前記測点により前記面の式を算出し、
算出した前記式から3つの前記面の交点を算出し、当該交点を前記ターゲットの頂点とすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の内空変位計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dスキャナを用いたトンネルの内空変位計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル施工では、地山や支保部材等の変位測定(A計測)を定期的に行うことで、工事の安全性および品質を確保している。定期的にトンネルの状況を測定すれば、切羽前方の地山状況を予測することができるとともに、支保構造の適否を判断することができる。A計測は、一定間隔ごとに管理断面を設定し、管理断面におけるトンネルの頂部や側壁部等に設けたターゲットの座標をトータルステーション等の測距儀により測定するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
なお、前記従来のA計測は、ターゲットの設置個所(点)における変位により周囲の壁面(面)の変位を予測するものである。そのため、トンネルの壁面の変位を測定することを目的として、3Dスキャナによってトンネル壁面形状を測定する場合がある。
例えば、特許文献2には、トンネル壁面に複数のターゲットを設置し、ターゲットを含むトンネル壁面形状を3Dスキャナにより計測し、ターゲットの座標に基づいて、同一箇所におけるトンネル断面形状データの比較を行い、トンネルの変位を追跡するトンネル内空変位計測方法が開示されている。
また、3Dスキャナによる計測に用いるターゲットは、一般的にプレート型と球体型がある。プレート型のターゲットは、安価である一方、スキャナとの位置関係、例えば角度、によって計測精度が大きく左右されてしまう。一方、球体型のターゲットは、精巧な球体を用いるため、非常に高価である。したがって、特許文献2のトンネル内空変位計測方法において、高精度な測定を目的として球体型のターゲットを使用すると、工事費がさらに高くなるおそれがある。また、球体からなるターゲットを用いた点情報の特定方法では、球体の半径を仮定した処理を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-170164号公報
【特許文献2】特開2014-002027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、3Dスキャナを用いたA計測をより簡易かつ安価に、なおかつ高精度に行う内空変位計測方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、トンネルの壁面形状を3Dスキャナにより測定する内空変位計測方法であって、前記トンネルの壁面に三角錐形状または四角錐形状のターゲットを設け、前記ターゲットに備わる複数の面を測定した結果に基づいて前記ターゲットの頂点の座標データを算出するものである。前記ターゲットは、前記頂点が下向きとなるように、前記トンネルの上部に設けるのが望ましい。
かかる内空変位計測方法によれば、3Dスキャナによるトンネル壁面の計測データとターゲットの計測データとを組み合わせることで、位置情報を含めた計測が可能となる。また、3Dスキャナによりトンネル壁面を計測するので、同一断面に複数のターゲットを設置する必要がなく、ターゲットの設置に要する手間や費用を低減できる。
ターゲットの頂点の座標データは、前記ターゲットの少なくとも3つの面に対して、それぞれ3点以上の測点を測定して、これらの測点により前記面の式を算出し、算出した前記式から3つの前記面の交点を算出し、当該交点を前記ターゲットの頂点とする。こうすることで、高精度にターゲットの頂点を特定できる。ターゲットの頂点の座標を高精度に算出することで、ターゲットの位置の変位をより正確に計測できるとともに、ターゲットを含めて測定したトンネル内空の形状の変化も正確に把握できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の内空変位計測方法によれば、3Dスキャナを用いたA計測を簡易かつ安価に行うとともに精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る変位計測方法の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態では、山岳トンネルの施工時の変位計測について、トータルステーションを用いたA計測に代えて、3Dスキャナ2を用いて定期的にトンネル1の壁面形状を測定する内空変位計測方法について説明する。内空変位測定は、トンネル1の掘進に伴い、一定間隔毎に設定された管理断面において、トンネル1の側壁および頂部に設置されたトンネル測量用ターゲットを、トータルステーションで測定するのが一般的である。一方、本実施形態では、3Dスキャナ2を利用してトンネル1の壁面形状を測定(スキャン)する。
図1に3Dスキャナ2による測定状況を示す。
図1に示すように、トンネル1の壁面形状の測定に伴い、トンネル1の頂部および左右(
図1では頂部のターゲット3のみ表示)に設けられた3つの三角錐形状のターゲット3(
図2参照)も測定する。なお、
図2はターゲット3の斜視図である。本実施形態のターゲット3は、正三角錐(正四面体)を呈している。
3Dスキャナ2は、測定対象物(トンネル壁面)に対してレーザー光を照射して、当該レーザー光の反射光が3Dスキャナ2に到達するまでの時間や、反射光の角度等を解析することにより、測定対象物の3次元データ(形状)を取得するものである。すなわち、3Dスキャナ2による測定は、大量の点群データを処理することにより、面的な形状をとらえるものである。
【0009】
ターゲット3は、トンネル1の掘削に伴い露出した地山G(トンネル1の壁面)に吹付けられた吹付けコンクリート4に取り付ける。本実施形態では、ターゲット3を、吹付けコンクリート4に固定された治具5の下端に取り付ける。ターゲット3は、4つの頂点のうちのいずれか1つの頂点6がトンネル1の底面を指すように下向きに設けられている。
ターゲット3を測定する際には、
図2に示すように、ターゲット3の3つの面7,7,7に対して、それぞれ3点以上の測点(プロット)8,8,…を測定する。測点8のデータは、面7に照射されたレーザー光のデータを抽出したものとする。なお、面7の特定は、測点8の数が多いほど特定精度が向上する。
測定した3点以上の測点8,8,…により各面7の式を算出する。各測点8の座標(x,y,z,)から、平面の方程式(式1)の係数(a,b,c,d)を求める。式2に3つの面7,7,7の平面の方程式を示す。
【0010】
【0011】
算出した3つの面7,7,7の式(式2)から3つの面7,7,7の交点の座標(xP,yP,zP)を算出する。この交点の座標をターゲット3の頂点6の座標とする。
3Dスキャナ2を利用して定期的にトンネル1の壁面の測定を行い、ターゲット3の頂点6の座標の変化により、トンネル1の頂部における内空変位を把握する。また、ターゲット3の頂点6の位置からトンネル1の壁面形状の測定データの正確な位置を把握し、既存のトンネル1の壁面形状(過去の測定データ)と比較して、内空変位を把握する。
内空変位計測は、トンネル1の施工に伴って定期的に行う。
【0012】
本実施形態の内空変位計測方法によれば、3Dスキャナ2によるトンネル壁面の計測データとターゲット3の計測データとを組み合わせることで、位置情報を含めた計測が可能となる。
また、同一断面に複数のターゲット3を設置する必要がないため、ターゲット3の設置に要する手間や費用を低減できる。
また、三角錐形状のターゲット3の面7を測定することで、ターゲット3の頂点6の座標を正確に算出できる。そのため、ターゲット3の位置の変化(頂点6の変位)をより正確に計測できるとともに、ターゲット3を含めて測定したトンネル内空の形状の変位(経時変化)も正確に把握できる。
トータルステーションにより複数のターゲットを測定する手間を省略できる。また、従来のA計測では、ターゲットの位置における変位を計測するものであったのに対し、本実施形態の内空変位計測方法では、トンネル1の内面形状の変化を3次元的に把握することができ、より正確な変位計測を可能としている。
ターゲット3の頂点6の位置を高精度に算出することができるため、任意の位置において壁面形状を測定した場合であっても、他の区間との関連付けが可能である。そのため、トンネル1の全長にわたって3次元的に測定することができる。
任意座標系による管理が可能なため、複雑な座標計算に要する手間を低減しつつ、正確な内空変異計測を行うことができる。
また、ターゲット3は、1点で交わる3つ以上の面7を有していればよく、従来の精巧な球体からなるターゲットに比べて簡易な形状なため、比較的安価に作成でき、経済的である。
スキャンデータは、即座に画像データ(電子データ)として処理され、各種端末にて確認できる。そのため、複数個所において、複数の人が同時に確認することができ、施工状況の報告などに要する手間を低減できる。
【0013】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、測定断面1カ所につき3つのターゲット3を設ける場合について説明したが、ターゲット3の設置数および設置個所は、限定されるものではなく、例えば、1断面に5つのターゲット3を設けてもよい。
前記実施形態では、ターゲット3が三角錐形状の場合について説明したが、ターゲット3は、四角錐形状であってもよい。
また、前記実施形態では、1断面に設けた複数のターゲット3の全てが三角錐形状である場合について説明したが、複数のターゲット3のうちの1つのみを三角錐形状または四角錐形状とし、その他のターゲットは、一般的なトンネル測量用ターゲット(例えば、プリズム)であってもよい。
ターゲット3は、トンネル1に固定してもよいし、トンネル1に着脱可能に設けてもよい。
前記実施形態では、ターゲット3を吹付けコンクリート4に取り付けるものとしたが、ターゲット3の取付か所は限定されるものではなく、例えば、鋼製支保工に取り付けてもよい。
ターゲット3と治具5は別体であってもよいし、一体であってもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 トンネル
2 3Dスキャナ
3 ターゲット
4 吹付けコンクリート
5 治具
6 頂点
7 面
8 測点
G 地山