(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036162
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】化合物、発光材料および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230307BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230307BHJP
【FI】
C07F5/02 F CSP
H05B33/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143028
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】柏▲崎▼ 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光伯
(72)【発明者】
【氏名】森尾 桃子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亜衣子
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC07
3K107CC22
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF19
4H048AA01
4H048AB92
4H048AD17
4H048BB25
4H048BC10
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】新たな環骨格を有する化合物を開発すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物。R
1~R
16は水素原子、重水素原子または
置換基;R
7、R
8の少なくとも一方は水素原子または重水素原子;R
3~R
6、R
9~
R
12の少なくとも1つはアリール基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、R
1~R
16は各々独立に水素原子、重水素原子または置換基
を表す。ただし、R
7およびR
8の少なくとも一方は、水素原子または重水素原子であり
、R
3~R
6およびR
9~R
12の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基
である。
R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
8と
R
9、R
9とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
1
4は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(1)中のC-R
1、C-R
2、C-R
3、C-R
4、C-R
5、C-R
6、C
-R
7、C-R
8、C-R
9、C-R
10、C-R
11、C-R
12、C-R
13、C-
R
14は、Nに置換されていてもよい。]
【請求項2】
R3とR6、または、R9とR12のうちの少なくとも1組が、各々独立に置換もしく
は無置換のアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R3、R6、R9およびR12が、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基である
、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R4とR5、または、R10とR11のうちの少なくとも1組が、各々独立に置換もし
くは無置換のアリール基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R4、R5、R10およびR11が、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基であ
る、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R3およびR4の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子また
は重水素原子であり、なおかつ、R5およびR6の一方が置換もしくは無置換のアリール
基であり、他方が水素原子または重水素原子であるか、あるいは、
R9およびR10の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子ま
たは重水素原子であり、なおかつ、R11およびR12の一方が置換もしくは無置換のア
リール基であり、他方が水素原子または重水素原子である、請求項1~5のいずれか1項
に記載の化合物。
【請求項7】
R3およびR4の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子また
は重水素原子であり、
R5およびR6の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子また
は重水素原子であり、
R9およびR10の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子ま
たは重水素原子であり、なおかつ、
R11およびR12の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子
または重水素原子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R1~R16が、各々独立に水素原子、重水素原子、または置換もしくは無置換のアリ
ール基を表す、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R1、R2およびR13~R16が、各々独立に水素原子または重水素原子である、請
求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物を含む膜。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物を含む有機半導体素子。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
【請求項14】
前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、請求項13
に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記化合物を含む層が前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍光材料の
最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、請求項1
4に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる構造を有
する発光材料も含む、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、請求項13~
15のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、請求項16に記載の
有機発光素子。
【請求項19】
遅延蛍光を放射する、請求項13~18のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な発光特性を有する化合物に関する。また本発明は、その化合物を用い
た発光材料および有機発光素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに
行われている。
例えば、非特許文献1には、5,9-Diphenyl-5H,9H-[1,4]benzazaborino[2,3,4-kl]phena
zaborine (DABNA-1)のように多重共鳴効果を発現する化合物を用いることによ
り、逆系間交差過程による熱活性型遅延蛍光を発現し、半値幅が狭くて色純度が高い発光
を実現したことが記載されている。このような発光は、高い発光効率を達成することがで
きることから、ディスプレイを志向した用途において有用である。
また、非特許文献1および2には、DABNA-1を修飾することによって、最高被遷
移分子軌道(HOMO)および最低空分子軌道(LUMO)などのエネルギー準位を調整
し、また発光へと寄与する蛍光放射過程や逆系間交差過程を促進して、エレクトロルミネ
ッセンス量子効率を改善したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Adv. Mater. 2016, 28, 2777-2781
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 11316-11320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように多重共鳴効果を発現する化合物に関する研究が種々行われているが、その構
造と発光特性の関係については未知な点も多い。実用性のある発光素子を製造するために
は、少しでも発光特性が優れた材料を提供することが必要とされている。
そこで、本発明者らは、新たな環骨格を有する化合物の開発を目的として鋭意検討を進
めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、多重共鳴効果を発現する化合物であって特定の
条件を満たすものが有機発光素子の材料として有用であることを見いだした。本発明は、
このような知見に基づいて提案されたものであり、以下の構成を有する。
【0006】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、R
1~R
16は各々独立に水素原子、重水素原子または置換基
を表す。ただし、R
7およびR
8の少なくとも一方は、水素原子または重水素原子であり
、R
3~R
6およびR
9~R
12の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアリール基
である。
R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
8と
R
9、R
9とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
1
4は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(1)中のC-R
1、C-R
2、C-R
3、C-R
4、C-R
5、C-R
6、C
-R
7、C-R
8、C-R
9、C-R
10、C-R
11、C-R
12、C-R
13、C-
R
14は、Nに置換されていてもよい。]
[2] R
3とR
6、または、R
9とR
12のうちの少なくとも1組が、各々独立に置換
もしくは無置換のアリール基である、[1]に記載の化合物。
[3] R
3、R
6、R
9およびR
12が、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基
である、[2]に記載の化合物。
[4] R
4とR
5、または、R
10とR
11のうちの少なくとも1組が、各々独立に置
換もしくは無置換のアリール基である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5] R
4、R
5、R
10およびR
11が、各々独立に置換もしくは無置換のアリール
基である、[4]に記載の化合物。
[6] R
3およびR
4の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原
子または重水素原子であり、なおかつ、R
5およびR
6の一方が置換もしくは無置換のア
リール基であり、他方が水素原子または重水素原子であるか、あるいは、
R
9およびR
10の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子ま
たは重水素原子であり、なおかつ、R
11およびR
12の一方が置換もしくは無置換のア
リール基であり、他方が水素原子または重水素原子である、[1]~[5]のいずれか1
つに記載の化合物。
[7] R
3およびR
4の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原
子または重水素原子であり、R
5およびR
6の一方が置換もしくは無置換のアリール基で
あり、他方が水素原子または重水素原子であり、R
9およびR
10の一方が置換もしくは
無置換のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原子であり、なおかつ、R
11
およびR
12の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子または重
水素原子である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物。
[8] R
1~R
16が、各々独立に水素原子、重水素原子、または置換もしくは無置換
のアリール基を表す、[1]~[7]のいずれか1つに記載の化合物。
[9] R
1、R
2およびR
13~R
16が、各々独立に水素原子または重水素原子であ
る、[1]~[8]のいずれか1つに記載の化合物。
[10] [1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物からなる発光材料。
[11] [1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物を含む膜。
[12] [1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物を含む有機半導体素子。
[13] [1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物を含む有機発光素子。
[14] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、[
13]に記載の有機発光素子。
[15] 前記化合物を含む層が前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍
光材料の最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、
[14]に記載の有機発光素子。
[16] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる
構造を有する発光材料も含む、[13]に記載の有機発光素子。
[17] 前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、[1
3]~[15]のいずれか1つに記載の有機発光素子。
[18] 前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、[16]に
記載の有機発光素子。
[19] 遅延蛍光を放射する、[13]~[18]のいずれか1つに記載の有機発光素
子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物は、優れた発光特性を示す。本発明の化合物は有機発光素子の材料とし
て有用である。本発明の化合物を用いた有機発光素子は、発光効率、素子耐久性、色純度
向上の少なくとも1つ以上の特性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明
は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はその
ような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用
いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含
む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の一部
または全部は重水素原子(2H、デューテリウムD)に置換することができる。本明細書
の化学構造式では、水素原子はHと表示しているか、その表示を省略している。例えばベ
ンゼン環の環骨格構成炭素原子に結合する原子の表示が省略されているとき、表示が省略
されている箇所ではHが環骨格構成炭素原子に結合しているものとする。本明細書にて「
置換基」という用語は、水素原子および重水素原子以外の原子または原子団を意味する。
一方、「置換もしくは無置換の」という用語は、水素原子が重水素原子または置換基で置
換されていてもよいことを意味する。
【0010】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0011】
【0012】
一般式(1)において、R1~R16は各々独立に水素原子、重水素原子または置換基
を表す。R7およびR8の少なくとも一方は、水素原子または重水素原子を表す。本発明
の一態様では、R7およびR8は、各々独立に水素原子または重水素原子である。本発明
の一態様では、R7およびR8の一方だけが水素原子または重水素原子である。
R1~R16が採りうる置換基は、例えば置換基群Aの中から選択してもよいし、置換
基群Bの中から選択してもよいし、置換基群Cの中から選択してもよいし、置換基群Dの
中から選択してもよいし、置換基群Eの中から選択してもよく、好ましくは置換もしくは
無置換のアリール基である。
一般式(1)では、R3~R6およびR9~R12の少なくとも1つは、置換もしくは
無置換のアリール基である。R3~R6およびR9~R12のうち、置換もしくは無置換
のアリール基である数は、1~4個であることが好ましく、例えば1個または2個であっ
てもよく、また例えば3個または4個であってもよい。本発明の一態様では、R3とR6
、または、R9とR12のうちの少なくとも1組が、各々独立に置換もしくは無置換のア
リール基である。本発明の一態様では、R3、R6、R9およびR12が、各々独立に置
換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、R4とR5、または、R1
0とR11のうちの少なくとも1組が、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基であ
る。本発明の一態様では、R4とR5がともに置換もしくは無置換のアリール基であるこ
とはなく、また、R10とR11がともに置換もしくは無置換のアリール基であることは
ない。本発明の一態様では、R4、R5、R10およびR11が、各々独立に置換もしく
は無置換のアリール基である。本発明の一態様では、(1)R3およびR4の一方が置換
もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原子であり、なおかつ
、R5およびR6の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子また
は重水素原子であるか、あるいは、(2)R9およびR10の一方が置換もしくは無置換
のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原子であり、なおかつ、R11および
R12の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原
子である。本発明の一態様では、(1)R3およびR4の一方が置換もしくは無置換のア
リール基であり、他方が水素原子または重水素原子であり、(2)R5およびR6の一方
が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原子であり、(
3)R9およびR10の一方が置換もしくは無置換のアリール基であり、他方が水素原子
または重水素原子であり、なおかつ、(4)R11およびR12の一方が置換もしくは無
置換のアリール基であり、他方が水素原子または重水素原子である。
【0013】
本明細書でいう「アリール基」は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮
合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ま
しく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例として、ベンゼン環、ナ
フタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環を挙げることができ
る。アリール基の具体例として、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換
のナフタレン-1-イル基、置換もしくは無置換のナフタレン-2-イル基を挙げること
ができる。アリール基の水素原子の一部または全部は重水素原子で置換されていてもよい
。アリール基の置換基としては、例えば置換基群Aの中から選択してもよいし、置換基群
Bの中から選択してもよいし、置換基群Cの中から選択してもよいし、置換基群Dの中か
ら選択してもよいし、置換基群Eの中から選択してもよく、好ましくは炭素数1~6のア
ルキル基である。
以下において、一般式(1)に採用することができる置換もしくは無置換のアリール基
の具体例を示す。ただし、本発明で採用することができる置換もしくは無置換のアリール
基は、以下の具体例によって限定的に解釈されることはない。以下の具体例において*は
結合位置を示す。また、メチル基の表示は省略している。例えば、N4は4-メチルフェ
ニル基である。
【化3】
【0014】
一般式(1)のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6、R6
とR7、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13
、R13とR14は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
環状構造は、芳香環、複素芳香環、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環のいずれであって
もよく、また、これらが縮合した環であってもよい。好ましくは芳香環、複素芳香環であ
る。芳香環として置換もしくは無置換のベンゼン環を挙げることができる。ベンゼン環に
はさらに他のベンゼン環が縮合していてもよく、ピリジン環のような複素環が縮合してい
てもよい。複素芳香環は、環骨格構成原子としてヘテロ原子を含む芳香性を示す環を意味
し、5~7員環であることが好ましく、例えば5員環であるものや、6員環であるものを
採用したりすることができる。本発明の一態様では、複素芳香環としてフラン環、チオフ
ェン環、ピロール環を採用することができる。本発明の一態様では、環状構造は、置換も
しくは無置換のベンゾフランのフラン環、置換もしくは無置換のベンゾチオフェンのチオ
フェン環、置換もしくは無置換のインドールのピロール環のいずれでもない。本発明の一
態様では、R1とR2、R2とR3、R3とR4の中の1組が互いに結合して環状構造を
形成している。本発明の一態様では、R5とR6、R9とR10の中の1組または2組が
互いに結合して環状構造を形成している。本発明の一態様では、R6とR7、R8とR9
の中の1組が互いに結合して環状構造を形成している。本発明の一態様では、R11とR
12、R12とR13、R13とR14の中の1組が互いに結合して環状構造を形成して
いる。本発明の一態様では、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R11とR12、R
12とR13、R13とR14は、いずれも互いに結合して環状構造を形成していない。
本発明の一態様では、R5とR6、R9とR10は、いずれも互いに結合して環状構造を
形成していない。本発明の一態様では、R6とR7、R8とR9は、いずれも互いに結合
して環状構造を形成していない。本発明の一態様では、R1とR2、R2とR3、R3と
R4、R4とR5、R5とR6、R6とR7、R8とR9、R9とR10、R10とR1
1、R11とR12、R12とR13、R13とR14は、いずれも互いに結合して環状
構造を形成していない。
【0015】
本発明の一態様では、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7
、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R1
3とR14のうちの少なくとも1組が互いに結合して、置換もしくは無置換のベンゾフラ
ンのフラン環、置換もしくは無置換のベンゾチオフェンのチオフェン環、置換もしくは無
置換のインドールのピロール環、置換もしくは無置換のインデンのシクロペンタジエン環
、置換もしくは無置換のシラインデンのシロール環を形成している。ここでいうベンゾフ
ラン、ベンゾチオフェン、インドール、インデン、シラインデンは無置換であってもよく
、置換基群Aから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Bから選択され
る置換基で置換されていてもよいし、置換基群Cから選択される置換基で置換されていて
もよいし、置換基群Dから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Eから
選択される置換基で置換されていてもよい。インドールのピロール環を構成する窒素原子
には置換もしくは無置換のアリール基が結合していることが好ましく、その置換基として
は例えば置換基群A~Eのいずれかの群から選択される置換基を挙げることができる。イ
ンデンのシクロペンタジエン環のメチレン基を構成する炭素原子、およびシラインデンの
シロール環を構成する珪素原子は、置換基群Eから選択される置換基で置換されているこ
とが好ましい。この態様では、環状構造を形成することにより、一般式(1)の中にベン
ゾフラン縮合カルバゾール構造、ベンゾチオフェン縮合カルバゾール構造、インドール縮
合カルバゾール構造、インデン縮合カルバゾール構造、シラインデン縮合カルバゾール構
造が形成される。
【0016】
ベンゾフラン縮合カルバゾール構造は、ベンゾフラン環が2,3位で1つだけ縮合した
ものであってもよいし、2つ以上のベンゾフラン環が縮合したものであってもよい。また
、ベンゾフラン環が2,3位で縮合するとともに、他の環が縮合したものであってもよい
。縮合する環としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、脂肪族複
素環を挙げることができる。芳香族炭化水素環としてはベンゼン環を挙げることができる
。芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリ
アジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環を挙げることができる。脂肪族炭
化水素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環を挙げるこ
とができる。脂肪族複素環としては、ピペリジン環、ピロリジン環、イミダゾリン環を挙
げることができる。芳香族炭化水素環を構成する縮合環の具体例として、ナフタレン環、
アントラセン環、フェナントレン環、ピラン環、テトラセン環を挙げることができる。ま
た、ヘテロ原子を含む縮合環の具体例として、インドール環、イソインドール環、ベンゾ
イミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、
キノキサリン環、シンノリン環を挙げることができる。
本発明では、ベンゾフラン縮合カルバゾール構造として、置換もしくは無置換のベンゾ
フロ[2,3-a]カルバゾール構造を採用することができる。また、置換もしくは無置
換のベンゾフロ[3,2-a]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換も
しくは無置換のベンゾフロ[2,3-b]カルバゾール構造を採用することもできる。ま
た、置換もしくは無置換のベンゾフロ[3,2-b]カルバゾール構造を採用することも
できる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール構造を採用
することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール
構造を採用することもできる。
好ましいベンゾフラン縮合カルバゾール構造は、ベンゾフラン環が2,3位で1つだけ
縮合し、その他に環が縮合していないカルバゾール構造である。具体的には、下記のいず
れかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、
下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原
子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換で
あるものも好ましく採用することができる。*は結合位置を表す。
【化4】
【0017】
ベンゾフラン環が2,3位で2つ縮合し、その他に環が縮合していないカルバゾール構
造も好ましい。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素
原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換
されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好
ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化5】
【0018】
ベンゾチオフェン縮合カルバゾール構造は、ベンゾチオフェン環が2,3位で1つだけ
縮合したものであってもよいし、2つ以上のベンゾチオフェン環が縮合したものであって
もよい。また、ベンゾチオフェン環が2,3位で縮合するとともに、他の環が縮合したも
のであってもよい。縮合する環の説明と具体例については、上記のベンゾフラン縮合カル
バゾール構造の説明における縮合する環の説明と具体例を参照することができる。本発明
では、ベンゾチオフェン縮合カルバゾール構造として、置換もしくは無置換のベンゾチエ
ノ[2,3-a]カルバゾール構造を採用することができる。また、置換もしくは無置換
のベンゾチエノ[3,2-a]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換も
しくは無置換のベンゾチエノ[2,3-b]カルバゾール構造を採用することもできる。
また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[3,2-b]カルバゾール構造を採用するこ
ともできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[2,3-c]カルバゾール構造
を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のベンゾチエノ[3,2-c]カル
バゾール構造を採用することもできる。
好ましいベンゾチオフェン縮合カルバゾール構造は、ベンゾチオフェン環が2,3位で
1つだけ縮合し、その他に環が縮合していないカルバゾール構造である。具体的には、下
記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。
例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中
の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。
無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化6】
【0019】
ベンゾチオフェン環が2,3位で2つ縮合し、その他に環が縮合していないカルバゾー
ル構造も好ましい。具体的には、下記のいずれかの構造を有する基であり、下記構造中の
水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で
置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているもの
を好ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。
【化7】
【0020】
インドール縮合カルバゾール構造は、インドール環が2,3位で1つだけ縮合したもの
であってもよいし、2つ以上のインドール環が縮合したものであってもよい。また、イン
ドール環が2,3位で縮合するとともに、他の環が縮合したものであってもよい。縮合す
る環の説明と具体例については、上記のベンゾフラン縮合カルバゾール構造の説明におけ
る縮合する環の説明と具体例を参照することができる。本発明では、インドール縮合カル
バゾール構造として、置換もしくは無置換のインドロ[2,3-a]カルバゾール構造を
採用することができる。また、置換もしくは無置換のインドロ[3,2-a]カルバゾー
ル構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[2,3-b]カ
ルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ[3,2
-b]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のインドロ
[2,3-c]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換の
インドロ[3,2-c]カルバゾール構造を採用することもできる。
好ましいインドール縮合カルバゾール構造は、インドール環が2,3位で1つだけ縮合
し、その他に環が縮合していないカルバゾール構造である。具体的には、下記のいずれか
の構造を有する基であり、下記構造中のRは水素原子、重水素原子または置換基(好まし
くはRは置換基)を表す。また、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば
、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素
原子の全部が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換
であるものも好ましく採用することができる。
【化8】
【0021】
インデン縮合カルバゾール構造は、インデン環が2,3位で1つだけ縮合したものであ
ってもよいし、2つ以上のインデン環が縮合したものであってもよい。また、インデン環
が2,3位で縮合するとともに、他の環が縮合したものであってもよい。縮合する環の説
明と具体例については、上記のベンゾフラン縮合カルバゾール構造の説明における縮合す
る環の説明と具体例を参照することができる。なお、本発明でインデン環に言及する際は
、1H-インデンを前提にして説明する(2位と3位の間に二重結合が存在)。一方、イ
ンデノカルバゾールを規定する場合は、IUPAC命名法にしたがってインデノ[2,3
-x]カルバゾールまたはインデノ[3,2-x]カルバゾールと呼ぶ(xはa、bまた
はc)。本発明では、インデン縮合カルバゾール構造として、置換もしくは無置換のイン
デノ[2,3-a]カルバゾール構造を採用することができる。また、置換もしくは無置
換のインデノ[3,2-a]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もし
くは無置換のインデノ[2,3-b]カルバゾール構造を採用することもできる。また、
置換もしくは無置換のインデノ[3,2-b]カルバゾール構造を採用することもできる
。また、置換もしくは無置換のインデノ[2,3-c]カルバゾール構造を採用すること
もできる。また、置換もしくは無置換のインデノ[3,2-c]カルバゾール構造を採用
することもできる。
好ましいインデン縮合カルバゾール構造は、インデン環が2,3位で1つだけ縮合し、
その他に環が縮合していないカルバゾール構造である。具体的には、下記のいずれかの構
造を有する基であり、下記構造中の水素原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造
中の水素原子の一部が重水素原子で置換されているものや、下記構造中の水素原子の全部
が重水素原子で置換されているものを好ましく例示することができる。無置換であるもの
も好ましく採用することができる。
【化9】
【0022】
シラインデン縮合カルバゾール構造は、シラインデン環が2,3位で1つだけ縮合した
ものであってもよいし、2つ以上のシラインデン環が縮合したものであってもよい。また
、シラインデン環が2,3位で縮合するとともに、他の環が縮合したものであってもよい
。縮合する環の説明と具体例については、上記のベンゾフラン縮合カルバゾール構造の説
明における縮合する環の説明と具体例を参照することができる。なお、本発明でシライン
デン環に言及する際は、1H-シラインデンを前提にして説明する(2位と3位の間に二
重結合が存在)。一方、シラインデノカルバゾールを規定する場合は、IUPAC命名法
にしたがってシラインデノ[2,3-x]カルバゾールまたはシラインデノ[3,2-x
]カルバゾールと呼ぶ(xはa、bまたはc)。本発明では、シラインデン縮合カルバゾ
ール構造として、置換もしくは無置換のシラインデノ[2,3-a]カルバゾール構造を
採用することができる。また、置換もしくは無置換のシラインデノ[3,2-a]カルバ
ゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のシラインデノ[2,3
-b]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置換のシライン
デノ[3,2-b]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換もしくは無置
換のシラインデノ[2,3-c]カルバゾール構造を採用することもできる。また、置換
もしくは無置換のシラインデノ[3,2-c]カルバゾール構造を採用することもできる
。
好ましいシラインデン縮合カルバゾール構造は、シラインデン環が2,3位で1つだけ
縮合し、その他に環が縮合していないカルバゾール構造である。具体的には、下記のいず
れかの構造を有する基であり、下記構造中のRおよびR’は各々独立に水素原子、重水素
原子または置換基(好ましくはRおよびR’は置換基)を表す。また、下記構造中の水素
原子は置換されていてもよい。例えば、下記構造中の水素原子の一部が重水素原子で置換
されているものや、下記構造中の水素原子の全部が重水素原子で置換されているものを好
ましく例示することができる。無置換であるものも好ましく採用することができる。Rと
R’は同一であっても異なっていてもよく、また互いに結合して環状構造を形成してもよ
い。
【化10】
【0023】
一般式(1)で採用しうるベンゾフラン縮合カルバゾール構造、ベンゾチオフェン縮合
カルバゾール構造、インドール縮合カルバゾール構造、インデン縮合カルバゾール構造、
およびシラインデン縮合カルバゾール構造は、置換されていてもよい。また、無置換であ
ってもよい。置換されている場合は、重水素原子で置換されていてもよいし、それ以外の
置換基で置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、アルキル基、アルケニル基
、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、
アリールチオ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、シアノ基を挙げるこ
とができる。これらの置換基は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。例えば、重
水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されている態
様を挙げることができる。
ここでいう「アルキル基」は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、
直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルキル基の炭
素数は、例えば1以上、2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、
20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルキル基の具体例として、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、
tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、
2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチ
ル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デカニル基、イソデカニル基、シクロペンチル
基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。置換基たるアルキル基
は、さらに重水素原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子で
置換されていてもよい。
「アルケニル基」は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分
と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルケニル基の炭素数は
、例えば2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10
以下、6以下、4以下とすることができる。アルケニル基の具体例として、エテニル基、
n-プロペニル基、イソプロペニル基、n-ブテニル基、イソブテニル基、n-ペンテニ
ル基、イソペンテニル基、n-ヘキセニル基、イソヘキセニル基、2-エチルヘキセニル
基を挙げることができる。置換基たるアルケニル基は、さらに置換されていてもよい。
「アリール基」および「ヘテロアリール基」は、単環であってもよいし、2つ以上の環
が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であ
ることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例として、ベ
ンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ナフタレン環、アントラセン環、
フェナントレン環、トリフェニレン環、キノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ナフ
チリジン環を挙げることができる。アリーレン基またはヘテロアリーレン基の具体例とし
て、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アント
ラセニル基、9-アントラセニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基
を挙げることができる。
「アルコキシ基」および「アルキルチオ基」のアルキル部分については、上記のアルキ
ル基の説明と具体例を参照することができる。「アリールオキシ基」および「アリールチ
オ基」のアリール部分については、上記のアリール基の説明と具体例を参照することがで
きる。「ヘテロアリールオキシ基」および「ヘテロアリールチオ基」のヘテロアリール部
分については、上記のヘテロアリール基の説明と具体例を参照することができる。
【0024】
一般式(1)中のC-R1、C-R2、C-R3、C-R4、C-R5、C-R6、C
-R7、C-R8、C-R9、C-R10、C-R11、C-R12、C-R13、C-
R14は、Nに置換されていてもよい。Nに置換されている場合は、その置換個数は1~
6が好ましく、1~3がより好ましい。例えば、C-R1、C-R2、C-R3およびC
-R4のうちの0~1個がNに置換されていてもよい。例えば、C-R5、C-R6およ
びC-R7のうちの0~1個がNに置換されていてもよい。例えば、C-R8、C-R9
およびC-R10のうちの0~1個がNに置換されていてもよい。例えば、C-R11、
C-R12、C-R13およびC-R14のうちの0~1個がNに置換されていてもよい
。本発明の一態様では、C-R1、C-R2、C-R3およびC-R4のうちの1個がN
に置換されている。本発明の一態様では、C-R1、C-R2、C-R3およびC-R4
のうちの1個と、C-R11、C-R12、C-R13およびC-R14のうちの1個が
Nに置換されている。本発明の一態様では、C-R5、C-R6およびC-R7のうちの
1個がNに置換されている。本発明の一態様では、C-R5、C-R6およびC-R7の
うちの1個と、C-R8、C-R9およびC-R10のうちの1個がNに置換されている
。本発明の一態様では、C-R1、C-R2、C-R3、C-R4、C-R5、C-R6
、C-R7、C-R8、C-R9、C-R10、C-R11、C-R12、C-R13、
C-R14のいずれもNに置換されていない。
【0025】
一般式(1)で表される化合物は、金属原子を含まないことが好ましい。ここでいう金
属原子にはホウ素原子は含まれない。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭
素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびホウ素原子からな
る群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、一般式(1)
で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および
ホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例え
ば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子
、硫黄原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択するこ
とができる。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子、重水
素原子、窒素原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択
することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭素原子、水素原子
、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からな
る化合物を選択することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物として、炭素
原子、水素原子、窒素原子およびホウ素原子からなる群より選択される原子からなる化合
物を選択することができる。
【0026】
本明細書において「置換基群A」とは、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えばフッ素
原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アル
コキシ基(例えば炭素数1~40)、アルキルチオ基(例えば炭素数1~40)、アリー
ル基(例えば炭素数6~30)、アリールオキシ基(例えば炭素数6~30)、アリール
チオ基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30
)、ヘテロアリールオキシ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールチオ
基(例えば環骨格構成原子数5~30)、アシル基(例えば炭素数1~40)、アルケニ
ル基(例えば炭素数1~40)、アルキニル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシカ
ルボニル基(例えば炭素数1~40)、アリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~
40)、ヘテロアリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、シリル基(例え
ば炭素数1~40のトリアルキルシリル基)およびニトロ基からなる群より選択される1
つの基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群B」とは、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アルコ
キシ基(例えば炭素数1~40)、アリール基(例えば炭素数6~30)、アリールオキ
シ基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30)
、ヘテロアリールオキシ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ジアリールアミノアミ
ノ基(例えば炭素原子数0~20)からなる群より選択される1つの基または2つ以上を
組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群C」とは、アルキル基(例えば炭素数1~20)、アリー
ル基(例えば炭素数6~22)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~20)
、ジアリールアミノ基(例えば炭素原子数12~20)からなる群より選択される1つの
基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群D」とは、アルキル基(例えば炭素数1~20)、アリー
ル基(例えば炭素数6~22)およびヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~2
0)からなる群より選択される1つの基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群E」とは、アルキル基(例えば炭素数1~20)およびア
リール基(例えば炭素数6~22)からなる群より選択される1つの基または2つ以上を
組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基」や「置換もしくは無置換の」と記載されている場合の置換
基は、例えば置換基群Aの中から選択してもよいし、置換基群Bの中から選択してもよい
し、置換基群Cの中から選択してもよいし、置換基群Dの中から選択してもよいし、置換
基群Eの中から選択してもよい。
【0027】
本発明の一態様では、一般式(1)で表される化合物として線対称構造を有する化合物
を選択する。本発明の一態様では、一般式(1)で表される化合物として非対称構造を有
する化合物を選択する。
【0028】
一般式(1)で表される化合物は、環骨格に結合する置換基としてドナー性基を有して
いないものであってもよい。ここでいうドナー性基とはハメットのσp値が負の基である
。一般式(1)で表される化合物は、ハメットのσp値が-0.2以下の基を有していな
いものであってもよい。
【0029】
一般式(1)で表される化合物は、例えば下記のいずれかの骨格構造を有することが好
ましい。下記の骨格の少なくとも1つの水素原子は重水素原子または置換基で置換されて
いてもよい。また、さらに環が縮合していてもよい。置換基の詳細については、上記のR
1~R16の説明における置換基の説明を参照することができる。
【0030】
【0031】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明に
おいて用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定
的に解釈されるべきものではない。
【0032】
【0033】
以下の具体例では、各一般式に存在するR
n(nは整数)やXを特定することにより具
体的な構造を特定している。各構造の特定に際しては、R
nが置換基である場合に限って
その置換基を明示しており、R
nが水素原子である場合はR
nが水素原子であることは表
示していない。例えば化合物1aであれば、R
5、R
10、R
11、R
12、R
17は水
素原子である。
【化12】
【0034】
上記化合物1~72および1a~17hにおいて、分子中に存在する水素原子をすべて
重水素原子に置換した化合物を、それぞれ化合物1(D)~72(D)および1a(D)
~17h(D)としてここに開示する。
【0035】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含
む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下である
ことが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさ
らに好ましく、900以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式
(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布
法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。一般
式(1)で表される化合物は、有機溶媒に溶解しやすいという利点がある。このため、一
般式(1)で表される化合物は塗布法を適用しやすいうえ、精製して純度を高めやすい。
【0036】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光
材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、そ
の重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考
えられる。例えば、一般式(1)のいずれかの部位に重合性官能基を含むモノマーを用意
して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り
返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。
あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせること
により、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0037】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記2つ
の一般式のいずれかで表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化13】
【0038】
上の一般式において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL
2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より好ましくは1~
15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基は-X11-L11-で表される
構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表
し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアル
キレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1~
10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基で
あることがより好ましい。
上の一般式において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置
換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~
6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1
~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原
子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換
のアルコキシ基である。
L1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)のいずれかの部位に結
合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を
形成していてもよい。
【0039】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式で表される構造を挙げることができる。
【化14】
【0040】
これらの式を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)のいずれかの部位にヒ
ドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導
入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化15】
【0041】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を
有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り
返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表さ
れる構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。
一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられ
るモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなど
のエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることがで
きる。
【0042】
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は発光材料である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる
化合物である。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、UV領域、可視スペクトルのうち青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤
色領域(例えば約420nm~約500nm、約500nm~約600nmまたは約60
0nm~約700nm)または近赤外線領域で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち赤色またはオレンジ色領域(例えば約620n
m~約780nm、約650nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうちオレンジ色または黄色領域(例えば約570n
m~約620nm、約590nm、約570nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち緑色領域(例えば約490nm~約575nm
、約510nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、可視スペクトルのうち青色領域(例えば約400nm~約490nm
、約475nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、紫外スペクトル領域(例えば280~400nm)で光を発すること
ができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段
で励起されるとき、赤外スペクトル領域(例えば780nm~2μm)で光を発すること
ができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を用いた有機半導体素子を
作製することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物を用いたCMOS(相補
型金属酸化膜半導体)などを作製することができる。本開示のある実施形態では、一般式
(1)で表される化合物を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子や固体撮像素子(例
えばCMOSイメージセンサー)などの有機光素子を作製することができる。
【0043】
小分子の化学物質ライブラリの電子的特性は、公知のab initioによる量子化
学計算を用いて算出することができる。例えば、基底として、6-31G*、およびベッ
ケの3パラメータ、Lee-Yang-Parrハイブリッド汎関数として知られている
関数群を用いた時間依存的な密度汎関数理論を使用してHartree-Fock方程式
(TD-DFT/B3LYP/6-31G*)を解析し、特定の閾値以上のHOMOおよ
び特定の閾値以下のLUMOを有する分子断片(部分)をスクリーニングすることができ
る。
それにより、例えば-6.5eV以上のHOMOエネルギー(例えばイオン化ポテンシ
ャル)があるときは、供与体部分(「D」)が選抜できる。また例えば、-0.5eV以
下のLUMOエネルギー(例えば電子親和力)があるときは、受容体部分(「A」)が選
抜できる。ブリッジ部分(「B」)は、例えば受容体と供与体部分を特異的な立体構成に
厳しく制限できる強い共役系であることにより、供与体および受容体部分のπ共役系間の
重複が生じるのを防止する。
ある実施形態では、化合物ライブラリは、以下の特性のうちの1つ以上を用いて選別さ
れる。
1.特定の波長付近における発光
2.算出された、特定のエネルギー準位より上の三重項状態
3.特定値より下のΔEST値
4.特定値より上の量子収率
5.HOMO準位
6.LUMO準位
ある実施形態では、77Kにおける最低の一重項励起状態と最低の三重項励起状態との
差(ΔEST)は、約0.5eV未満、約0.4eV未満、約0.3eV未満、約0.2
eV未満または約0.1eV未満である。ある実施形態ではΔEST値は、約0.09e
V未満、約0.08eV未満、約0.07eV未満、約0.06eV未満、約0.05e
V未満、約0.04eV未満、約0.03eV未満、約0.02eV未満または約0.0
1eV未満である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、25%超の、例えば約30%、
約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、
約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上の量子収率を示す。
【0044】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、新規化合物を含む。
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成するこ
とができる。例えば、閉環反応を利用したり、置換反応を利用したりすることにより合成
することができる。例えば、3位と5位が置換もしくは無置換のカルバゾール-9-イル
基で置換されていて、4位が臭素原子で置換されているクロロベンゼンにn-ブチルリチ
ウムを反応させた後、三臭化ホウ素を添加し、さらにN-エチルジイソプロピルアミンを
加えて攪拌することにより環化させ、さらに塩素原子をシアノ基に置換することにより合
成することが可能である。反応条件の詳細については、後述の合成例を参考にすることが
できる。
【0045】
[一般式(1)で表される化合物を用いた構成物]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物と組み合わせ、同化合物を分散させ
、同化合物と共有結合し、同化合物をコーティングし、同化合物を担持し、あるいは同化
合物と会合する1つ以上の材料(例えば小分子、ポリマー、金属、金属錯体等)と共に用
い、固体状のフィルムまたは層を形成させる。例えば、一般式(1)で表される化合物を
電気活性材料と組み合わせてフィルムを形成することができる。いくつかの場合、一般式
(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一
般式(1)で表される化合物を電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合
、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーおよび電子輸送ポリマーと組み合わ
せてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を、正孔輸送部と電子輸送
部との両方を有するコポリマーと組み合わせてもよい。以上のような実施形態により、固
体状のフィルムまたは層内に形成される電子および/または正孔を、一般式(1)で表さ
れる化合物と相互作用させることができる。
【0046】
[フィルムの形成]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を含むフィルムは、湿式工程で形成
することができる。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解した溶液を面に塗
布し、溶媒の除去後にフィルムを形成する。湿式工程として、スピンコート法、スリット
コート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレ
キソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工程では、
本発明の化合物を含む組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して用いる。
ある実施形態では、組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げる置換基
(例えばアルキル基)を導入することができる。
ある実施形態では、本発明の化合物を含むフィルムは、乾式工程で形成することができ
る。ある実施形態では、乾式工程として真空蒸着法を採用することができる、これに限定
されるものではない。真空蒸着法を採用する場合は、フィルムを構成する化合物を個別の
蒸着源から共蒸着させてもよいし、化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよ
い。単一の蒸着源を用いる場合は、化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、そ
の混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して冷却した混合
物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度
(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含
まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比のフィルムを形成することができる。形成
されるフィルムの組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の
組成比を有するフィルムを簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着され
る各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採
用することができる。
【0047】
[一般式(1)で表される化合物の使用の例]
一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の材料として有用である。特に有機発
光ダイオード等に好ましく用いられる。
有機発光ダイオード:
本発明の一態様は、有機発光素子の発光材料としての、本発明の一般式(1)で表され
る化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明の一般式(1)で表される化合物は
、有機発光素子の発光層における発光材料として効果的に使用できる。ある実施形態では
、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発する遅延蛍光(遅延蛍光体)を含む。
ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体を提供する
。ある実施形態では、本発明は遅延蛍光体としての一般式(1)で表される化合物の使用
に関する。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物は、ホスト材料と
して使用することができ、かつ、1つ以上の発光材料と共に使用することができ、発光材
料は蛍光材料、燐光材料またはTADFでよい。ある実施形態では、一般式(1)で表さ
れる化合物は、正孔輸送材料として使用することもできる。ある実施形態では、一般式(
1)で表される化合物は、電子輸送材料として使用することができる。ある実施形態では
、本発明は一般式(1)で表される化合物から遅延蛍光を生じさせる方法に関する。ある
実施形態では、化合物を発光材料として含む有機発光素子は、遅延蛍光を発し、高い光放
射効率を示す。
ある実施形態では、発光層は一般式(1)で表される化合物を含み、一般式(1)で表
される化合物は、基材と平行に配向される。ある実施形態では、基材はフィルム形成表面
である。ある実施形態では、フィルム形成表面に対する一般式(1)で表される化合物の
配向は、整列させる化合物によって発せられる光の伝播方向に影響を与えるか、あるいは
、当該方向を決定づける。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物によって発
される光の伝播方向を整列させることで、発光層からの光抽出効率が改善される。
本発明の一態様は、有機発光素子に関する。ある実施形態では、有機発光素子は発光層
を含む。ある実施形態では、発光層は発光材料として一般式(1)で表される化合物を含
む。ある実施形態では、有機発光素子は有機光ルミネッセンス素子(有機PL素子)であ
る。ある実施形態では、有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL
素子)である。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれる
他の発光材料の光放射を(いわゆるアシストドーパントとして)補助する。ある実施形態
では、発光層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、その最低の励起一重項エネル
ギー準位にあり、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層
に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位との間に含まれる。
ある実施形態では、有機光ルミネッセンス素子は、少なくとも1つの発光層を含む。あ
る実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および
前記陽極と前記陰極との間の有機層を含む。ある実施形態では、有機層は、少なくとも発
光層を含む。ある実施形態では、有機層は、発光層のみを含む。ある実施形態では、有機
層は、発光層に加えて1つ以上の有機層を含む。有機層の例としては、正孔輸送層、正孔
注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層および励起子障壁層が挙げら
れる。ある実施形態では、正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であって
もよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。有機エレ
クトロルミネッセンス素子の例を
図1に示す。
【0048】
発光層:
ある実施形態では、発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子
が再結合して励起子を形成する層である。ある実施形態では、層は光を発する。
ある実施形態では、発光材料のみが発光層として用いられる。ある実施形態では、発光
層は発光材料とホスト材料とを含む。ある実施形態では、発光材料は、一般式(1)で表
される1つ以上の化合物である。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子
および有機光ルミネッセンス素子の光放射効率を向上させるため、発光材料において発生
する一重項励起子および三重項励起子を、発光材料内に閉じ込める。ある実施形態では、
発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いる。ある実施形態では、ホスト材料は有機
化合物である。ある実施形態では、有機化合物は励起一重項エネルギーおよび励起三重項
エネルギーを有し、その少なくとも1つは、本発明の発光材料のそれらよりも高い。ある
実施形態では、本発明の発光材料中で発生する一重項励起子および三重項励起子は、本発
明の発光材料の分子中に閉じ込められる。ある実施形態では、一重項および三重項の励起
子は、光放射効率を向上させるために十分に閉じ込められる。ある実施形態では、高い光
放射効率が未だ得られるにもかかわらず、一重項励起子および三重項励起子は十分に閉じ
込められず、すなわち、高い光放射効率を達成できるホスト材料は、特に限定されること
なく本発明で使用されうる。ある実施形態では、本発明の素子の発光層中の発光材料にお
いて、光放射が生じる。ある実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。
ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光を含む。ある実施形態では、放射
光は、ホスト材料からの放射光からなる。ある実施形態では、放射光は、一般式(1)で
表される化合物からの放射光と、ホスト材料からの放射光とを含む。ある実施形態では、
TADF分子とホスト材料とが用いられる。ある実施形態では、TADFはアシストドー
パントであり、発光層中のホスト材料よりも励起一重項エネルギーが低く、発光層中の発
光材料よりも励起一重項エネルギーが高い。
【0049】
一般式(1)で表される化合物をアシストドーパントとして用いるとき、発光材料(好
ましくは蛍光材料)として様々な化合物を採用することが可能である。そのような発光材
料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体
、ペリレン誘導体、クリセン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、
スチルベン誘導体、フルオレン誘導体、アントリル誘導体、ピロメテン誘導体、ターフェ
ニル誘導体、ターフェニレン誘導体、フルオランテン誘導体、アミン誘導体、キナクリド
ン誘導体、オキサジアゾール誘導体、マロノニトリル誘導体、ピラン誘導体、カルバゾー
ル誘導体、ジュロリジン誘導体、チアゾール誘導体、金属(Al,Zn)を有する誘導体
等を用いることが可能である。これらの例示骨格には置換基を有してもよいし、置換基を
有していなくてもよい。また、これらの例示骨格どうしを組み合わせてもよい。
以下において、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントと組み合わせ
て用いることができる発光材料を例示する。
【0050】
【0051】
また、WO2015/022974号公報の段落0220~0239に記載の化合物も
、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントとともに用いる発光材料とし
て、特に好ましく採用することができる。
【0052】
ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発
明の化合物の量は、0.1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いると
き、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、1重量%以上である。あ
る実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の
化合物の量は、50重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発
光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、20重量%以下である。ある実
施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合
物の量は、10重量%以下である。
ある実施形態では、発光層のホスト材料は、正孔輸送機能および電子輸送機能を有する
有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、放射光の波長が増加する
ことを防止する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、高いガラ
ス転移温度を有する有機化合物である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ホスト材料は以下からなる群から選択される:
【化17】
ある実施形態では、発光層は2種類以上の構造が異なるTADF分子を含む。例えば、
励起一重項エネルギー準位がホスト材料、第1TADF分子、第2TADF分子の順に高
い、これら3種の材料を含む発光層とすることができる。このとき、第1TADF分子と
第2TADF分子は、ともに最低励起一重項エネルギー準位と77Kの最低励起三重項エ
ネルギー準位の差ΔE
STが0.3eV以下であることが好ましく、0.25eV以下で
あることがより好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.15eV以下
であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.07eV
以下であることがさらにより好ましく、0.05eV以下であることがさらにまた好まし
く、0.03eV以下であることがさらになお好ましく、0.01eV以下であることが
特に好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、第2TADF分子の濃度より
も大きいことが好ましい。また、発光層におけるホスト材料の濃度は、第2TADF分子
の濃度よりも大きいことが好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、ホスト
材料の濃度よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。ある実施
形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を10~70重量%、第1TADF分子を10
~80重量%、第2TADF分子を0.1~30重量%としてもよい。ある実施形態では
、発光層内の組成を、ホスト材料を20~45重量%、第1TADF分子を50~75重
量%、第2TADF分子を5~20重量%としてもよい。ある実施形態では、第1TAD
F分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第1TADF分子の濃度=A重量
%)の光励起による発光量子収率φPL1(A)と、第2TADF分子とホスト材料の共
蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の濃度=A重量%)の光励起による発光
量子収率φPL2(A)が、φPL1(A)>φPL2(A)の関係式を満たす。ある実
施形態では、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TA
DF分子の濃度=B重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(B)と、第2TAD
F分子の単独膜の光励起による発光量子収率φPL2(100)が、φPL2(B)>φ
PL2(100)の関係式を満たす。ある実施形態では、発光層は3種類の構造が異なる
TADF分子を含むことができる。本発明の化合物は、発光層に含まれる複数のTADF
化合物のいずれであってもよい。
ある実施形態では、発光層は、ホスト材料、アシストドーパント、および発光材料から
からなる群より選択される材料で構成することができる。ある実施形態では、発光層は金
属元素を含まない。ある実施形態では、発光層は炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素
原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で
構成することができる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原
子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成すること
もできる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる
群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。
発光層が本発明の化合物以外のTADF材料を含むとき、そのTADF材料は公知の遅
延蛍光材料であってよい。好ましい遅延蛍光材料として、WO2013/154064号
公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954
号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/01195
5号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/0810
88号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256
490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-11
6975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/1
33359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/
161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014
-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-
9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-1
19663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落
0013~0026、特開2017-222623号公報の段落0012~0025、特
開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-10041
1号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016
~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光
を放射しうるものが含まれる。また、ここでは、特開2013-253121号公報、W
O2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/
115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200
号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO
2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/1
89122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号
公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2
015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/07
2470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公
報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開20
15-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129
715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報
、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO201
5/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/1595
41号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射しうるものを好ましく採用す
ることができる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここ
に引用する。
【0054】
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および発光層以外の各層に
ついて説明する。
【0055】
基材:
いくつかの実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材により保
持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子で一般的に用い
られる、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたい
ずれかの材料を用いればよい。
【0056】
陽極:
いくつかの実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス装置の陽極は、金属、合金、
導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。いくつかの実施形態では、前記
の金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。いくつかの実
施形態では、前記金属はAuである。いくつかの実施形態では、導電性の透明材料は、C
uI、酸化インジウムスズ(ITO)、SnO2およびZnOから選択される。いくつか
の実施形態では、IDIXO(In2O3-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形
成できるアモルファス材料を使用する。いくつかの実施形態では、前記陽極は薄膜である
。いくつかの実施形態では、前記薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。い
くつかの実施形態では、前記フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化され
る。いくつかの実施形態では、パターンが高精度である必要がない(例えば約100μm
以上)場合、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマ
スクを用いて形成してもよい。いくつかの実施形態では、有機導電性化合物などのコーテ
ィング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法
が用いられる。いくつかの実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超
の透過度を有し、当該陽極は、単位面積あたり数百オーム以下のシート抵抗を有する。い
くつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態
では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用
いる材料に応じて変動する。
【0057】
陰極:
いくつかの実施形態では、前記陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電
子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作
製される。いくつかの実施形態では、前記電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウ
ム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、
マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-
酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物お
よび希土類元素から選択される。いくつかの実施形態では、電子注入金属と、電子注入金
属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。いく
つかの実施形態では、前記混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニ
ウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al
2O3)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。い
くつかの実施形態では、前記混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる
。いくつかの実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜と
して形成させることによって製造される。いくつかの実施形態では、前記陰極は単位面積
当たり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は
10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmで
ある。いくつかの実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセン
ス素子の陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。いくつかの実施形態
では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンス素子は光放射輝度を向上させる。
いくつかの実施形態では、前記陰極を、前記陽極に関して前述した導電性の透明な材料
で形成されることにより、透明または半透明の陰極が形成される。いくつかの実施形態で
は、素子は陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
【0058】
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。いくつかの実施形態では、前記注入層は駆
動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。いくつかの実施形態では、前記注入層は、正
孔注入層と電子注入層とを含む。前記注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、
並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することがきる。いくつかの実施形態
では、注入層が存在する。いくつかの実施形態では、注入層が存在しない。
以下に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0059】
【0060】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化19】
【0061】
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層
の外側に拡散することを阻止できる層である。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、
発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻
止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、
正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障
壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電
子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁
層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有
する層が含まれる。
【0062】
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間
、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔
障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材
料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0063】
【0064】
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁
層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、
発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔
輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0065】
【0066】
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸
送層まで拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、発光層に
おける励起子の有効な閉じ込め(confinement)を可能にする。いくつかの実施形態では
、装置の光放射効率が向上する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と
陰極の側のいずれかで、およびその両側の発光層に隣接する。いくつかの実施形態では、
励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、
当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在す
るとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつ
かの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層
に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子
障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層
との間に存在する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと
励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、それぞれ、発光材料の励起一重項
エネルギーと励起三重項エネルギーより高い。
【0067】
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層であ
る。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障
壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料
である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本発明で使用できる
公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾ
ール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、
ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミ
ン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチ
リルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、
シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェン
オリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料
はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択さ
れる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。以下に
正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【0068】
【0069】
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層であ
る。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送す
る機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料と
しても機能する。本発明で使用できる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ
置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボ
ジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、
オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはその
ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤
またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材
料である。以下に電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げ
る。
【0070】
【0071】
さらに、各有機層に添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化
材料として添加すること等が考えられる。
【0072】
【0073】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示
したが、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に
解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても
、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
【0074】
デバイス:
いくつかの実施形態では、発光層はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには
、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター
、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極と
の間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を有するOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の構成物は、OLEDまたは光電子デバイ
スなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。いくつかの実施形態
では、前記構成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/また
は正孔輸送材料として有用でありうる。前記デバイスとしては、例えば有機発光ダイオー
ド(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、
有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽
電池(O-SC)、有機光学検出装置、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-
quench)装置(O-FQD)、発光燃料電池(LEC)または有機レーザダイオー
ド(O-レーザー)が挙げられる。
【0075】
バルブまたはランプ:
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、当該陽極と当該陰極との間の
発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。いくつかの実施形
態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、O
LEDの前記組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。いくつかの実施形態では
、OLEDの前記組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および
黄緑色)の組合せである。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、2色、4
色またはそれ以上の色の組合せである。
いくつかの実施形態では、デバイスは、
取り付け面を有する第1面とそれと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を
画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、当該少なくとも1つのOLE
Dが、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有
機層を含む、発光する構成を有する少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジ
ングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なく
とも1つのコネクターと、を備えるOLEDライトである。
いくつかの実施形態では、前記OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように
回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。いくつかの実施形態では、第1方向
に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。いくつかの実施形態では、反
射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
【0076】
ディスプレイまたはスクリーン:
いくつかの実施形態では、本発明の発光層はスクリーンまたはディスプレイにおいて使
用できる。いくつかの実施形態では、本発明に係る化合物は、限定されないが真空蒸発、
堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。いくつか
の実施形態では、前記基材は、独特のアスペクト比のピクセルを提供する2面エッチング
において有用なフォトプレート構造である。前記スクリーン(またマスクとも呼ばれる)
は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設
計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーの、並びに水平方向では
大きな広範囲の斜角開口部の配置を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上へ
の化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパタ
ーン構成が可能となる。
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三
次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された
「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカッ
トし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピ
クセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンに
より変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセ
ル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要
な局在化された深いエッチングが可能となる。
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート
状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとしてスピンマンドレル上
へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コス
トの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセ
ルマトリックスである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパター
ンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を
使用して加工される。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターン
は、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたは
ディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
【0077】
デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザー
パネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の
各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トラン
ジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光
層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断する
ことにより形成される。
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザー
パネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の
各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トラン
ジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光
層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断する
ことにより形成される。
【0078】
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提
供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上に、セルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルのディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工
程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり
、障壁層の端部はポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。い
くつかの実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位で軟らかく切断
されるように補助する。
いくつかの実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と
、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トラ
ンジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上
に形成された発光ユニットと、を有してもよく、前記インタフェース部に塗布された有機
フィルムは、前記平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、前記平坦化フィルムの形
成と同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記発光ユニットは、不動態化層と、
その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層と、によりTF
T層と連結される。前記製造方法のいくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、ディ
スプレイユニットにもカプセル化層にも連結されない。
【0079】
前記有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1
つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記障壁層は無機フィルムであってもよい
。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。前記方法
は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、当該
ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と
、インタフェース部に沿った切断の前に、前記キャリア基材をベース基材から分離する工
程と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記OLEDディスプレイはフレキシ
ブルなディスプレイである。
いくつかの実施形態では、前記不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配
置された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、不動態
化層上に形成された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルム
は、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成さ
れる。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、前記平坦化フィルム
および有機フィルムは同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは
、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、当該有機フィルムの一部が直接ベース
基材と接触し、当該有機フィルムの残りの部分が、障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接
触する。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記発光層は、ピクセル電極と、対電極と、当該ピクセル電
極と当該対電極との間に配置された有機発光層と、を有する。いくつかの実施形態では、
前記ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
いくつかの実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピ
クセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し
、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニ
ットを、ディスプレイユニットと称する。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止す
るカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化
構造に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記カプセル化層は、複数の薄膜が
積層した薄膜状カプセル化構造を有する。いくつかの実施形態では、インタフェース部に
塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置され
る。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基
材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態
様で形成される。
【0081】
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成され
た柔軟なベース基材を使用する。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はガラス材料
で形成されたキャリア基材上に形成され、次に当該キャリア基材が分離される。
いくつかの実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成
される。一実施形態では、前記障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される
。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セ
ルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェー
ス部に溝が形成される。各セルパネルは、前記溝に沿って切断できる。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記の製造方法は、更にインタフェース部に沿って切断する
工程を含み、そこでは溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝で形成
され、当該溝がベース基材に浸透しない。いくつかの実施形態では、各セルパネルのTF
T層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが
、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平
坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまた
はアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で
溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが
生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している
場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁
層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態で
は、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなけ
れば障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層
でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する
有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フ
ィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィ
ルムと有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸
入するおそれがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディス
プレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0083】
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成さ
れ、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配
置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャ
リア基材がベース基材から分離される。いくつかの実施形態では、レーザー光線がキャリ
ア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の
相違により、ベース基材から分離される。
いくつかの実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。いくつかの
実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿
って切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェ
ース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を
吸収する。いくつかの実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
いくつかの実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる
。
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイ
ユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布
された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
【実施例0084】
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材
料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる
。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものでは
ない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、
半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パ
ワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプテ
ィクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリー
クカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0085】
【0086】
窒素気流下、2-ブロモ-5-クロロ-1,3-ジフルオロベンゼン(2.0g,8.
79mmol)、3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール(6.5g,22.9mmo
l)、炭酸カリウム(3.64g,26.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド
溶液(DMF溶液、60mL)を140℃で35時間攪拌した。この混合物を室温に戻し
、水を加えて、析出した固体をろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(
クロロホルム:ヘキサン=1:1)で精製し、白色固体の中間体A(5.84g,7.0
7mmol,収率80%)を得た。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.43-8.41 (m, 4H), 7.80-7.72 (m, 14H), 7.50 (t, J =
7.6 Hz, 8H), 7.37 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 4H)
MS (ASAP) : 827.34 (M+H+). Calcd for. C54H34BrClN2 : 826.16
【0087】
【0088】
窒素気流下、中間体A(2.00g,2.42mmol)のトルエン溶液(100mL
)に-30℃でn-BuLi(1.6mol/Lヘキサン溶液,1.6mL,2.54m
mol)を加えて室温で1時間攪拌した。反応混合物を-30℃に冷却し、三臭化ホウ素
(0.667g,2.66mmol)を加えて室温で30分攪拌した。反応混合物にN-
エチルジイソプロピルアミン(0.657g,5.08mmol)を加えて120℃で1
6時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、メタノールを加えて沈殿をろ過した。この
固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、黄色固体の中間
体B(0.393g,0.520mmol,収率22%)を得た。
MS (MALDI) : 754.53 (M+). Calcd for. C54H32BClN2 : 754.23
【0089】
【0090】
窒素気流下、中間体B(200mg,0.265mmol)のテトラヒドロフラン溶液
(30mL)に-30℃でt-BuLi(1.6mol/Lペンタン溶液,0.36mL
,0.583mmol)を加えて30分間撹拌した。その後、ジメチルマロノニトリル(
37.4mg,0.397mmol)を加えて室温で21時間撹拌した。この混合物の溶
媒を留去し、メタノールを加えてろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー
(熱oDCB:オルトジクロロベンゼン)にて精製し、黄色固体の化合物1(97.7m
g,0.131mmol,収率49%)を得た。
【0091】
(実施例1)薄膜の作製と評価
石英基板上に真空蒸着法にて、真空度1×10-3Pa未満の条件にて化合物1とホス
ト材料とを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が20重量%である薄膜を100n
mの厚さで形成し、実施例1の薄膜とする。実施例1の薄膜は優れた特性を有する。
【0092】
(実施例2)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス
基材上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度1×10-6Paで積層する。まず、ITO
上に第1正孔注入材料からなる第1正孔注入層を形成し、その上に第2正孔注入材料から
なる第2正孔注入層を形成し、その上に正孔輸送材料からなる正孔輸送層を形成し、さら
にその上に電子阻止材料からなる電子阻止層を形成する。その上に、ホスト材料と遅延蛍
光材料と化合物1を異なる蒸着源から共蒸着し、ホスト材料の濃度が69重量%、遅延蛍
光材料の濃度が30重量%、化合物1の濃度が1重量%の発光層を形成する。次に、正孔
阻止材料からなる正孔阻止層を形成し、その上に電子輸送層を形成し、さらにその上に電
極を形成した。以上の手順により、実施例2の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製
する。実施例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた特性を有する。
【0093】
化合物1の代わりに、化合物以外の一般式(1)で表される化合物を用いて、実施例1
および実施例2と同様の手順により薄膜と有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する
ことができる。