(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036170
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20230307BHJP
F22B 1/28 20060101ALI20230307BHJP
F22B 37/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
F24C1/00 320F
F24C1/00 320C
F22B1/28 A
F22B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143047
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晃央
(72)【発明者】
【氏名】足立 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】大矢 敏史
(72)【発明者】
【氏名】堀田 佳歩
(72)【発明者】
【氏名】宮地 乃里子
(57)【要約】
【課題】スケールの付着及び発熱体の劣化を抑制する。
【解決手段】加熱調理器では、運転ボタンから運転終了入力(運転停止情報)が入力された場合(S21;YES)、制御装置は、給排水制御による給排水の状態及び蒸気発生容器内の水位に関係なく、発熱体のヒートパイプの水没水位または水没近傍水位まで蒸気発生容器内に給水した後(S903;YES)、待機状態(停止状態)に移行する。これにより、加熱制御を開始不能または続行不能な待機状態に移行する前においては、必ず蒸気発生装置の蒸気発生容器内に給水されて発熱体のヒートパイプの水没水位または水没近傍水位まで水が貯水されるため、蒸気発生容器の水は、スケール成分の濃度が低くなりまた発熱体のヒートパイプも冷却される。したがって、スケールの付着及び発熱体のヒートパイプの劣化を抑制することができる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫内に水蒸気を供給し前記調理庫内の食材を加熱調理する加熱調理器であって、
貯水用の容器及び前記容器内に収容される発熱体を有し前記発熱体により前記容器内の水を加熱して前記水蒸気を発生させる蒸気発生部と、
前記発熱体の加熱制御及び前記容器内の水の給排水制御を行う制御部と、
前記加熱制御を開始可能または前記加熱制御中である運転状態から、前記加熱制御を開始不能または続行不能な停止状態に前記制御部を移行させる運転停止情報の入力を受け付ける入力部と、を備え、
前記入力部から前記運転停止情報が入力された場合、前記制御部は、前記給排水制御による給排水の状態及び前記容器内の水位に関係なく、前記発熱体の水没水位または水没近傍水位まで前記容器内に給水した後、前記停止状態に移行することを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理庫内に水蒸気を供給して食材を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理庫内に水蒸気を供給して食材を加熱調理するスチームコンベクションオーブン(以下、スチコンと記載する場合がある)が開示されている。このスチコンでは、調理庫内に供給する水蒸気を発生させる蒸気発生装置を備えており、運転時には蒸気発生装置本体内の水を加熱体(発熱体)により加熱して発生させた水蒸気を調理庫内に供給する。そして、運転を停止すると、防錆処理によって蒸気発生装置本体内に給水して加熱体を水没させる。これにより、本体内空間で加熱体が空気中に露出することを回避して加熱体の防錆を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のスチコンでは、蒸気発生処理後の防錆処理において、一旦、蒸気発生装置本体内の水を排出した後に本体内に給水して加熱体を水没させる。そのため、例えば、排水処理中に運転が停止した場合には、蒸気発生装置本体内に給水する前の排水途中でスチコンの運転が終了することがあり、排出できなかった水が運転終了後に本体内に残留する可能性がある。残留した水が少量であるときには、加熱体が水没する量の水に比べてスケール成分の濃度が高くなるため、このような残留水に加熱体が浸かった状態で長時間放置されると加熱体にスケールが付着しやすくなるという問題がある。また少量の残留水では、加熱終了直後の加熱体を十分には冷却することが難しいことから、加熱体(発熱体)の劣化が進みやすくなるおそれもある。本発明は、スケールの付着及び発熱体の劣化を抑制する加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、調理庫内に水蒸気を供給し調理庫内の食材を加熱調理する加熱調理器であって、貯水用の容器及び容器内に収容される発熱体を有し発熱体により容器内の水を加熱して水蒸気を発生させる蒸気発生部と、発熱体の加熱制御及び容器内の水の給排水制御を行う制御部と、加熱制御を開始可能または加熱制御中である運転状態から、加熱制御を開始不能または続行不能な停止状態に制御部を移行させる運転停止情報の入力を受け付ける入力部と、を備え、入力部から運転停止情報が入力された場合、制御部は、給排水制御による給排水の状態及び容器内の水位に関係なく、発熱体の水没水位または水没近傍水位まで容器内に給水した後、停止状態に移行することを特徴とする加熱調理器を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した加熱調理器においては、入力部から運転停止情報が入力された場合、制御部は、給排水制御による給排水の状態及び容器内の水位に関係なく、発熱体の水没水位または水没近傍水位まで容器内に給水した後、停止状態に移行する。これにより、加熱制御を開始不能または続行不能な停止状態に移行する前においては、必ず蒸気発生部の容器内に給水されて発熱体の水没水位または水没近傍水位まで水が貯水されるため、容器内の水は、スケール成分の濃度が低くなりまた発熱体も冷却される。したがって、スケールの付着及び発熱体の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の加熱調理器の一実施形態の正面図である。
【
図3】ハウジングの左パネルを取り外した状態で左側後方から見た斜視図である。
【
図4】ハウジングの左パネルを取り外して左側部機械室が見えるようにした左側面図である。
【
図10】メインプログラムのフローチャートである。
【
図11】運転終了入力監視プログラムのフローチャート(a)であり、シャットダウンプログラムのフローチャート(b)である。
【
図12】ファン異常監視プログラムのフローチャートである。
【
図13】運転プログラムのフローチャートであり(a)、運転プログラムで表示するホームメニュー画面の例である(b)。
【
図15】本加熱プログラムのフローチャートである。
【
図16】予備加熱プログラムのフローチャートである。
【
図17】クールダウンプログラムのフローチャートである。
【
図18】コンビモード処理で表示される各画面の説明図である。
【
図19】予備加熱処理で表示される各画面の説明図である。
【
図20】クールダウン処理で表示される各画面の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の加熱調理器の一実施形態について添付図面を参照して説明する。実施形態の加熱調理器10は、スチームコンベクションオーブンと呼ばれるものであり、水蒸気を含んだ熱風を対流させて食材を加熱調理するものである。
図1に示したように、加熱調理器10は、ハウジング11内の左側部及び下部を機械室12,13(以下、左側部機械室12,下部機械室13とも記載する)とし、ハウジング11内の機械室12,13を除いた部分に食材を加熱調理するための調理庫20を備えている。調理庫20は、加熱調理する食材を収容するためのものである。左側部機械室12には蒸気発生装置30や給気ダンパ装置80が収容され、また下部機械室13にはIH基板ボックス70が収容されている。
【0009】
図2に示したように、調理庫20の前面部には食材を出し入れする開口部20aが設けられており、開口部20aにはこれを開閉する扉14と、扉14の開閉状態を検出する扉センサ19aが設けられている。扉センサ19aは、例えばリードスイッチであり、近傍にマグネット(磁石)が存在するとオン(導通)になる磁気感応スイッチである。この実施形態ではマグネット19bが扉14に設けられており、扉センサ19aは電気配線(図示省略)を介して制御装置95に接続されている。そのため、扉センサ19aは、扉14の開状態でオフ(遮断)になり、扉14の閉状態でオンになる検出信号が制御装置95に出力される。
【0010】
加熱調理器10の左側には操作パネル90が設けられ、また左側壁(操作パネル90の左側部)には運転ボタン18が設けられている。操作パネル90には、後述するように、液晶ディスプレイ91、スタート/ストップボタン92、ジョグダイヤル93、戻るボタン94、制御装置95等により構成されており、液晶ディスプレイ91により加熱調理器10の作動状態を表示したり、スタート/ストップボタン92やジョグダイヤル93等により加熱調理器10を操作したりするときに使用される。液晶ディスプレイ91、スタート/ストップボタン92、ジョグダイヤル93、戻るボタン94は、それぞれ電気配線(図示省略)を介して制御装置95に接続されている。なお、操作パネル90の下側の4箇所に形成されている複数のパンチング穴の裏側には、ブザーユニット(図示省略)が設けられており、このブザーユニットも電気配線を介して制御装置95に接続されている。
【0011】
運転ボタン18は、加熱調理器10の運転開始や運転終了の操作に使用される。
図2において、ハウジング11の左パネルに図示されている楕円は、通気用メッシュフィルタで覆われた通気穴であり、その裏側には、左側部機械室12の内気を排気して同室12内を冷却する左側部冷却ファン73が設けられている。左側部冷却ファン73は、ファンブレード(以下、ファンと記載する)の回転により左側部機械室12の内気を加熱調理器10外(外部空間)に排気するものである。
【0012】
図5に示したように、調理庫20の左側壁には蒸気導入口20bと外気導入口20cとが形成され、
図6に示したように、調理庫20の底壁には排水口20dが形成されている。蒸気導入口20bには後述する蒸気発生装置30が接続され、外気導入口20cには後述する給気ダンパ装置80が接続されている。なお、外気導入口20cは後述する対流ファン26のファン羽根に隠れる位置(左側)に形成されている。また、排水口20dは、第1排水管15により排水タンク16(
図7及び
図8参照)に接続されており、調理庫20内の水は第1排水管15を通って排水タンク16に排水される。排水タンク16には第2排水管(図示省略)が接続されており、調理庫20内の水は第1排水管15を通って後述する排水タンク16内に排出された後で第2排水管を通ってハウジング11の外側に排出される。なお、排水タンク16には排気筒17が立設しており、排水タンク16内の空気は、排気筒17を経由してハウジング11の天板に形成した開口部から外部空間に排出される(
図4参照)。
【0013】
図2及び
図6に示したように、調理庫20にはホテルパンと呼ばれる食材を入れるトレイ(図示省略)を上下に多段状に支持する左右一対の支持フレーム24が設けられている。
図5及び
図6に示したように、調理庫20内には、仕切板23の裏側にヒータ25と対流ファン26が設けられている。ヒータ25は、調理庫20内を加熱するものであり、調理庫20の左側壁にて略環状に巻回されている。対流ファン26は、調理庫20内の空気を対流させるものであり、調理庫20の左側壁にて略環状に巻回されたヒータ25の内側に取り付けられている。この実施形態の対流ファン26は、シロッコファンよりなる遠心ファンが採用されている。調理庫20の左側壁には庫内温度センサ27が設けられており、庫内温度センサ27は調理庫20内の温度を検出する。庫内温度センサ27は、電気配線(図示省略)を介して制御装置95に接続されている。
【0014】
対流ファン26を作動させると、食材収容室21の空気は仕切板23の吸込口23aを通って仕切板23の裏側に吸い込まれ、吸い込まれた空気は対流ファン26にて遠心方向外向きに吹き出され、吹き出された空気は上下及び前後の通風路23bを通って仕切板23の表側、つまり食材を入れるトレイ側に戻される。また、ヒータ25とともに対流ファン26を作動させたときには、仕切板23の裏側に吸い込まれた空気は対流ファン26の外側に配置されるヒータ25に吹き付けられて高温の熱風となり、高温の熱風は上下及び前後の通風路23bを通って仕切板23の表側(トレイ側)に戻される。
【0015】
図3、
図4及び
図7に示したように、ハウジング11の左側部機械室12の後部には調理庫20内に水蒸気を供給する蒸気発生装置30が設けられており、蒸気発生装置30は左側部機械室12の後部に設けた排水タンク16の上側に立設している。この実施形態の蒸気発生装置30は、誘導加熱によって水を加熱して水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気を送出先として調理庫20に送出するものである。
図2に示した操作パネル90の裏側には、後述するように、制御装置95を構成するマイクロコンピュータ等や基板温度センサ97を実装した制御基板96が設けられている。制御基板96は左側部機械室12内に存在するため、基板温度センサ97は左側部機械室12内の温度を検出して出力する。基板温度センサ97は、電気配線を介して制御装置95に接続されている。
【0016】
図7及び
図8に示したように、蒸気発生装置30は、内部に所定量の水を貯え、上端部に水蒸気を送出する送出口31cを有した蒸気発生容器31と、蒸気発生容器31内の水を加熱して水蒸気を発生させる加熱部32と、蒸気発生容器31内で発生した水蒸気を送出口31cから水平方向に隣接する調理庫20に送出する蒸気送出部40とを備えている。
【0017】
蒸気発生容器31は、上下が開口した略筒形状を有する。蒸気発生容器31は、下部に下方に進むに従って径が細くなるテーパ形状をしたテーパ部31aと、テーパ部31aの下側に他の部分よりも径の小さな小径部31bとを備えている。蒸気発生容器31は、上端部に水蒸気を送出する送出口31cと、小径部31bの下端部に排水をするための排水口31dと、テーパ部31aの上側に給水をするための給水口31eとを備えている。給水口31eには後述する連通管51により水位検知タンク50が接続されており、蒸気発生容器31には給水管53から送出される水が水位検知タンク50を介して供給される。
【0018】
加熱部32は、蒸気発生容器31内の水を加熱するものであり、この実施形態では誘導加熱により蒸気発生容器31内の水を加熱する。加熱部32は、蒸気発生容器31内に設けた磁性体部材を用いた発熱体33と、蒸気発生容器31の外周にて上下方向の中間部から下部に巻回された誘導加熱コイル34とを備えている。発熱体33は、誘導加熱コイル34に高周波電流を供給したときに発生する磁界の影響によって渦電流が流れるときの電気抵抗により発生するジュール熱によって蒸気発生容器31内の水を加熱するものである。発熱体33は蒸気発生容器31の上部に支持された略円環形のホルダ33aと、ホルダ33aに上端部が固定された複数のヒートパイプ33bとを備えている。
【0019】
蒸気発生容器31には上下方向の中間部と下部にブラケット35,36が設けられており、ブラケット35,36の間に誘導加熱コイル34が巻回されている。ブラケット35,36には誘導加熱コイル34から漏出する磁力線を遮るための複数のフェライト部材37が設けられている。また蒸気発生容器31の後側には水位検知タンク50が立設しており、このタンク50の下部は連通管51によって蒸気発生容器31の下部に連通接続されている。水位検知タンク50にはフロートスイッチを用いた水位センサ52が設けられており、水位センサ52は、蒸気発生容器31内の水位と等しい水位検知タンク50内の水位を検知することで、蒸気発生容器31内の水位を検知している。この実施形態では、水位センサ52は、水位検知タンク50内、すなわち蒸気発生容器31内の上限水位LUと下限水位LLとを検出することが可能に構成されている。水位センサ52は、電気配線(図示省略)を介して制御装置95に接続されている。
【0020】
水位検知タンク50の上部には給水源から導出された給水管53が接続されており、給水管53にはハウジング11の下部の機械室13内で後述する給水弁54(
図9参照)が介装されている。給水源から供給される水は、給水弁54を開放することにより給水管53を通って水位検知タンク50内に供給され、水位検知タンク50内に供給された水は連通管51を通って蒸気発生容器31に供給される。また水位検知タンク50の上部には、排水タンク16に連通接続されたオーバーフロー管(図示省略)が設けられており、このオーバーフロー管は、蒸気発生容器31と水位検知タンク50に水が過剰に供給されたときに溢れ出るのを防止する。この実施形態では、水位検知タンク50内の水が、発熱体33のヒートパイプ33bが水没する手前の水没近傍水位LOに到達すると、オーバーフロー管を介して溢流して排水タンク16に排出される。なお、水位検知タンク50内の水が、ヒートパイプ33bが水没する水位(水没水位)に達した場合に溢流するようにオーバーフロー管を設けてもよい。
【0021】
蒸気発生容器31の下側には排水弁60が設けられており、蒸気発生容器31内の水は排水弁60を開放することによって排水タンク16内に排出される。排水弁60は、上下に接続口を有した管部材61内の弁体を開状態とすることで蒸気発生容器31内の水を排水可能とするものであり、管部材61の外側に弁体を開閉作動させるモータ62が設けられている。蒸気発生容器31の下端部の小径部31bの外周面には筒状の第1ソケット61に嵌合されており、第1ソケット61は排水弁60の上側の接続口に螺着して取り付けられている。排水弁60の下側の接続口には第2ソケット64が螺着されており、第2ソケット64の下部外周面は排水タンク16の上部に嵌合されている。
【0022】
図4~
図6に示したように、ハウジング11の下部機械室13には蒸気発生装置30の誘導加熱コイル34に高周波電流を供給するためのインバータユニット71(
図9参照)を備えたIH基板ボックス70が設けられている。IH基板ボックス70は、下部機械室13の前後方向の中間部に配置されており、下部機械室13から左側部機械室12側に引出可能となっている。ハウジング11の下部機械室13には下部冷却ファン72が設けられており、下部冷却ファン72は、加熱調理器10の正面視において下部機械室13内(IH基板ボックス70)の右側に配置されている。
【0023】
下部冷却ファン72は、ファンの回転により加熱調理器10の外部から吸い込んだ外気を下部機械室13内に流通させるものであり、後述する主制御処理の初期化処理(S11)において起動される。下部冷却ファン72は、ファンの回転中においてのみオン信号を制御装置95に出力する。前述した左側部冷却ファン73も同様に、主制御処理の初期化処理(S11)において起動され、ファンの回転中においてのみオン信号を制御装置95に出力する。下部冷却ファン72及び左側部冷却ファン73は、ファンの回転が停止すると、オン信号を出力しなくなる(オフ信号を出力する)。
【0024】
図4に示したように、ハウジング11の左側部機械室12の前部には調理庫20内に空気を導入する給気ダンパ装置80が設けられている。給気ダンパ装置80は、左側部機械室12の前部にて上下に延びるメインパイプ81と、メインパイプ81に設けられた後述する給気弁82(
図9参照)と、メインパイプ81の下部から調理庫20側に屈曲する第1エルボ管83と、第1エルボ管83の調理庫20側の端部から屈曲して調理庫20の左側壁の外気導入口20cまで延びる第2エルボ管(図示省略)とを備えている。メインパイプ81は、その一端側が第1エルボ管83等を介してハウジング11の天板に形成した開口部から突出し、また他端側には虫等の異物の進入を防ぐための網部材85が設けられており外部空間に連通している。
【0025】
図9に示したように、加熱調理器10は制御装置95を備えており、制御装置95は、運転ボタン18、扉センサ19a、ヒータ25、対流ファン26、庫内温度センサ27、水位センサ52、給水弁54、排水弁60、インバータユニット71、下部冷却ファン72、左側部冷却ファン73、給気弁82、操作パネル90、基板温度センサ97に接続されている。制御装置95はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM(EEPROMを含む)、タイマや時計機能(いずれも図示省略)を備えている。
【0026】
このように加熱調理器10のハードウェアを構成することによって、制御装置95が
図10に示したメインプログラムによる主制御処理を実行する。このメインプログラムは制御装置95のROMに格納されている。また、加熱調理器10に供給される商用電力は、運転ボタン18の操作による運転停止の状態においても、直流電力に変換されて制御装置95に供給されている(待機状態)。
【0027】
[主制御処理]
図10に示したように、ブレーカ等の主電源スイッチが投入(オン)されて加熱調理器10が起動すると、制御装置95は、まずステップ11の初期化処理によりRAMに確保されているワーク領域やフラグ等を所定の初期値に設定したり、後述する前回のシャットダウン処理において記憶した各種の設定情報をEEPROM等の不揮発性メモリから読み出したりする。またこのステップ11では、前述の下部冷却ファン72及び左側部冷却ファン73を起動してそれぞれのファンを回転させる。
【0028】
次に、制御装置95はステップ12において運転開始入力があるかを判定する。この実施形態では、運転開始入力、すなわち加熱調理器10の運転を開始する入力は、例えば、加熱調理器10のユーザが運転ボタン18を押下することにより入力される情報(運転開始情報)である。ステップ12で運転ボタン18による運転開始入力がなければ「NO」と判定して、運転開始入力があるまでステップ12の判定を繰り返し行う。つまり、運転ボタン18が押下されるまで待機する(待機状態)。そして、運転開始入力があると「YES」と判定した後、ステップ13により運転終了入力監視処理を起動し、さらにステップ14によりファン異常監視処理を起動した後、ステップ15の運転制御処理(S100)に移行する。
【0029】
[運転終了入力監視処理]
ステップ13により起動される運転終了入力監視処理は、制御装置95のROMに格納されている運転終了入力監視プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、運転開始情報が入力された後に加熱調理器10の運転を終了するために、例えば、ユーザが再び運転ボタン18を押下したことを監視するものである。この実施形態では、運転終了入力監視処理は、後述する運転制御処理(S100)と並行して実行される。運転終了入力監視処理(S20)は、その処理の詳細が
図11(a)や(b)に示されているので、ここからは
図11も参照しながら説明する。
【0030】
図11(a)に示したように、運転終了入力監視処理(S20)では、ステップ21により運転終了入力があるかを判定する。運転終了入力は、例えば、ユーザが運転ボタン18を長押しすることにより入力される情報(運転停止情報)である。ステップ21により運転ボタン18による運転終了入力がなければ「NO」と判定して、運転終了入力があるまでステップ21の判定を繰り返し行い、運転終了入力があると「YES」と判定してステップ22の
図11(b)のシャットダウン処理(S900)に移行する。
【0031】
図11(b)に示したように、シャットダウン処理(S900)では、まずステップ901により状態情報取得処理が行われる。この処理では、蒸気発生装置30やヒータ25等の作動状態に関する情報を水位センサ52や制御装置95のRAMに保持されているフラグ等から取得する。これらの情報に基づいて、次のステップ902により蒸気発生装置30が排水中であるかを判定する。
【0032】
後述する調理処理(S200)においては、調理モードがスチームモードやコンビモードであった場合には、蒸気発生装置30が水蒸気を発生させた後に残った蒸気発生容器31内の水を排出することがあり、排水処理中は、例えば、状態フラグが排水中を表す値にセットされる。そのため、ステップ902ではこのような状態フラグの情報に基づいて排水処理中であるかを判定する。排水中でなければ「NO」と判定して次のステップ903に処理を移行し、排水中であれば「YES」、排水中でなくなるまで状態情報取得処理(S901)と判定処理(S902)を繰り返し行う。つまり、排水が終わるまで待つ。
【0033】
ステップ903では蒸気発生容器31内の水が満水であるかを判定する。前述したように、水位センサ52は、水位検知タンク50内の水位を介して蒸気発生容器31内の上限水位LUと下限水位LLとを検出することが可能である。そのため、水位センサ52から制御装置95に入力された水位情報に基づいて上限水位LUになるまで給水した後、水没近傍水位LOに到達するまでに要する所定時間が経過するまで給水を続ける。
【0034】
したがって、ここでは満水であるか否かの判定として、上限水位LUまで給水してから経過した時間が所定時間に達したか否かを判定する。満水でなければ(所定時間が経過していなければ)「NO」と判定して次のステップ904の給水処理に移行して給水弁54を開放するように給水弁54を制御した後、ステップ903に戻って再度、満水判定処理を行う。なお、ヒートパイプ33bが水没する水位(水没水位)に達した場合に溢流するようにオーバーフロー管が設けられている場合には、上限水位LUになるまで給水した後、水没水位に到達するまでに要する所定時間が経過するまで給水を続けてもよい。
【0035】
これに対して、満水であるときには(所定時間を経過しているときには)「YES」と判定して、ステップ905の動作停止処理に移行する。動作停止処理では、ヒータ25や蒸気発生装置30の加熱部32等が動作中である場合には、それらの動作を停止させるとともに、現在、並行して実行している運転制御処理(S100)や後述のファン異常管理処理(S30)を強制終了させるものである。例えば、後述する本加熱処理(S210)や予備加熱処理(S230)において、ヒータ25や蒸気発生装置30の加熱部32が加熱中であったり対流ファン26が作動中であったりした場合には、それらの動作を停止させる。なお、下部冷却ファン72及び左側部冷却ファン73は、この動作停止処理(S905)の制御対象ではないため、機械室12,13の温度が所定温度以下に低下するまで作動し続ける。
【0036】
動作停止処理(S905)が終わると、ステップ906により設定情報保存処理が行われる。この処理では、動作停止処理(S905)が行われる直前の状態情報として、例えば、設定されていた調理モード、調理温度、調理時間や水蒸気量の各設定情報を制御装置95のRAMやEEPROMに保存する。これにより、加熱調理器10が、次回、運転ボタン18が押下されて待機状態から再起動したり、主電源スイッチが投入されて加熱調理器10が初期状態から起動されたりした場合においても、ユーザは、前回の設定情報を引き継いで調理や操作を行うことが可能になる。
【0037】
図11(b)のシャットダウン処理が終了すると(リターン)、
図11(a)の運転終了入力監視処理に戻りこの処理も終了する(エンド)。
図10に示した主制御処理では、ステップ15の運転制御処理(S100)が強制的に終了されたことにより、再度、ステップ12に戻って運転ボタン18が押下されるまで待機する。つまり、待機状態に移行する。このようにシャットダウン処理では、加熱調理器10が待機状態に移行する前においては、蒸気発生装置30の蒸気発生容器31内の水がヒートパイプ33bの水没近傍水位LOまたは水没水位に到達するまでに給水されて蒸気発生容器31内を満水にする。これにより、蒸気発生容器31内の水はスケール成分の濃度が低くなり、またヒートパイプ33bは蒸気発生容器31内の水により迅速に冷却される。したがって、ヒートパイプ33bにスケールが付着したりヒートパイプ33bが劣化したりすることを抑制できる。
【0038】
[ファン異常監視処理]
続いて、
図10のステップ14により起動されるファン異常監視処理について説明する。ファン異常監視処理(S30)は、制御装置95のROMに格納されているファン異常監視プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、下部冷却ファン72や左側部冷却ファン73の異常(ファンの回転停止)を監視するものである。この実施形態では、ファン異常監視処理は、これらのファン72,73に対して個別に実行され、また前述の運転終了入力監視処理と同様に後述する運転制御処理(S100)と並行して実行される。そのため、ここでは、下部冷却ファン72に対応するファン異常監視処理を代表して説明するが、左側部冷却ファン73に対するファン異常監視処理も、ほぼ同様に行われるので、その説明を省略する。ファン異常監視処理(S30)は、その処理の詳細が
図12に示されているので、ここからは
図12も参照しながら説明する。
【0039】
図12に示したように、ファン異常監視処理(S30)では、まずステップ31によりカウンタをリセットする処理が行われる。このカウンタは、監視対象の下部冷却ファン72のファンが停止した回数(下部冷却ファン72の停止回数)を数える計数手段であり、このステップ31によりリセット(0(ゼロ)にセット)される。
【0040】
次のステップ32ではファン回転情報取得処理が行われる。下部冷却ファン72は、前述したように、ファンの回転中はオン信号を制御装置95に出力し、ファンの回転が停止するとオフ信号を出力する。そのため、この処理では、ファン回転情報として、制御装置95に入力されるこれらの信号を取得する。そして、これらの信号に基づいて続くステップ33により、下部冷却ファン72が現在回転中である否かの判定を行う。
【0041】
ファンが回転中であるオン信号が入力されている場合には下部冷却ファン72は正常に作動しているため、ステップ33により「YES」と判定してステップ31に戻る。これに対して、ファンが回転中でない、つまり停止しているオフ信号が入力されている場合には、何らかの原因によりファンが回転不能状態である可能性が高い。この場合には、ステップ33により「NO」と判定してステップ34でカウンタの値を1つ加算(カウントアップ)した後、ステップ35でカウンタの値が所定回数を超えていないか判定する。
【0042】
所定回数は、下部冷却ファン72が出力するオフ信号の誤検出を回避したり、一時的な回転ロック(回転停止)の場合には再起動によりロックが解けたりするために設けられている。そのため、ここでは例えば3回に設定されるが、誤検出の発生頻度に関する実験や計算機シミュレーションの結果に基づいて予め選択される(例えば、5回や10回以上でも、また1回でもよい)。
【0043】
ステップ35において所定回数を超えていない場合には「NO」と判定した後、次のステップ36により下部冷却ファン72を再度起動する。これにより、回転停止が一時的なものであればファンの回転が再開する可能性がある。また、所定回数を超えている場合には「YES」と判定した後、ステップ37により下部冷却ファン72に対する駆動電力の供給を停止する。下部冷却ファン72を駆動する回路の出力負荷を軽減して当該回路部品の発熱を防ぐためである。
【0044】
ステップ36により下部冷却ファン72を再起動した場合には、その後、ステップ32に戻ってファン回転情報取得処理を行う。また、ステップ37により下部冷却ファン72の給電を停止した場合には、ステップ38により、主制御処理に対してエラー情報を出力する。エラー情報は、下部冷却ファン72に故障が発生した旨の情報であり、例えば、主制御処理において後述する運転制御処理(S100)が実行されている場合には、液晶ディスプレイ91に異常停止の表示や、下部冷却ファン72の故障を表すエラーメッセージやエラーコード等の表示が出力される。
【0045】
ファン異常監視処理は、加熱調理器10の運転中においては、下部冷却ファン72が回転している限り実行し続け、ステップ38によりエラー情報を出力すると処理を終了する(エンド)。また、前述のシャットダウン処理(S900)により加熱調理器10が待機状態に移行する場合においても、ファン異常監視処理は、前述したように処理が強制的に終了される。なお、左側部冷却ファン73のファン異常監視処理も同様に行われるが、ステップ38により出力されるエラー情報は、左側部冷却ファン73に故障が発生した旨の情報になる。
【0046】
このようにファン異常監視処理では、下部冷却ファン72に対して駆動電力を供給しているにもかかわらず、ファンが回転していないときには(S33;NO)、再起動して(S36)、その再起動が所定回数に到達してもファンが回転しない場合には(S35;YES)、給電を停止する(S37)。これにより、下部冷却ファン72の駆動回路を構成する回路部品の発熱を抑制するため、当該回路部品を保護することができる。
【0047】
[機械室温度異常監視処理]
ところで、左側部機械室12の内気を外部空間に排気する左側部冷却ファン73は、ファンが正常に回転しているときであっても、通気穴を覆う通気用メッシュフィルタが埃等により目詰まりしたり、通気穴のある加熱調理器10の左側に当該通気穴を覆う壁や他の厨房機器等が存在したりしている場合には排気が不十分になりがちである。そのような場合には、左側部機械室12内の温度が許容範囲を超えて上昇する可能性があることから、左側部機械室12内に設けられている制御基板96の基板温度センサ97から出力される温度情報に基づいて、制御装置95が機械室温度異常監視処理を行う。
【0048】
この機械室温度異常監視処理は、
図12に示した前述のファン異常監視処理のフローチャートを用いて処理の流れを説明することが可能である。機械室温度異常監視処理も、ファン異常監視処理と同様に、運転制御処理(S100)の実行前に主制御処理により起動されて運転制御処理(S100)と並行して実行される。機械室温度異常監視処理では、例えば、ステップ32を「温度情報取得」、ステップ33を「所定温度以下」、ステップ36を「所定時間経過待ち」、ステップ37を「加熱停止」に変更する。これにより、処理の流れを以下のように説明することができる。
【0049】
機械室温度異常監視処理では、まずステップ31により、温度異常を判定した回数を数えるカウンタをリセットする処理が行われた後、ステップ32により、基板温度センサ97から入力される温度情報を取得する処理が行われて、その温度情報に基づいてステップ33により左側部機械室12内の温度が所定温度(例えば75℃)以下であるかを判定する。ステップ33により左側部機械室12内の温度が所定温度以下でなければ「NO」と判定してステップ34でカウンタの値を1つ加算(カウントアップ)した後、ステップ35でカウンタの値が所定回数を超えていないか判定する。
【0050】
基板温度センサ97が出力する温度情報が一時的に高温値を表す場合もあるので誤検出を抑制するため、所定回数を設定する(例えば3回)。そして、所定温度を超える温度異常の判定が所定回数を超えて続くときには、ステップ35により「YES」と判定して、後述する本加熱処理(S210)や予備加熱処理(S230)における加熱制御をステップ37により停止した後、ステップ38により、主制御処理に対してエラー情報を出力する。一方、所定温度を超える温度異常の判定がまだ所定回数以下であるときには、ステップ36により所定時間の経過を待ってステップ32に移行して再度温度情報を取得する。
【0051】
ステップ38で出力されるエラー情報は、左側部機械室12の温度が異常である旨の情報であり、例えば、主制御処理において後述する運転制御処理(S100)が実行されている場合には、液晶ディスプレイ91に異常停止の表示や、左側部機械室12の温度異常を表すエラーメッセージやエラーコード等の表示が出力される。これにより、左側部機械室12内に収容されている機構部品や電子部品等を保護することができる。なお、庫内温度センサ27が熱電対タイプである場合には、基板温度センサ97から制御装置95に入力される温度情報は、調理庫20内の温度算出にも用いられる。この場合には、熱電対の温度補償に制御基板96に実装された基板温度センサ97を、制御基板96が設けられている左側部機械室12内の温度検出にも用いる。そのため、温度センサの使用数を1つ減らせるため、部品点数及び製品コストの削減に寄与することができる。
【0052】
[運転制御処理]
図10に戻ると、主制御処理では、ステップ14によりファン異常監視処理を起動した後、ステップ15により運転制御処理(S100)に移行する。この実施形態では、この処理は、前述したシャットダウン処理(S900)の動作停止処理(S905)によって強制的に終了されるまで繰り返し行われる。運転制御処理(S100)は、制御装置95のROMに格納されている運転プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、その処理の詳細が
図13に示されている。そのため、ここからは
図13を参照しながら説明する。
【0053】
図13(a)に示したように、制御装置95は、まずステップ110により操作パネル90の液晶ディスプレイ91にホームメニューを表示する。
図13(b)に示したように、ホームアイコンのピクトグラムが表示されたホームメニューの表示画面100は、例えば、調理バー101、お気に入りバー102、お手入れバー103、機器設定バー104及び点検バー105で構成される。表示画面100の左上に表されている12:34は、制御装置95の時計機能による現在時刻(12時34分)の24時間制表示である。
【0054】
調理バー101、お気に入りバー102、お手入れバー103、機器設定バー104及び点検バー105は、ユーザが操作パネル90のジョグダイヤル93を周方向に回すことにより選択可能な項目バーである。選択状態の項目バーはその周囲に白枠が表示される(
図13(b)では調理バー101が選択状態にある)。選択状態の項目バーは、ユーザがジョグダイヤル93を軸方向に押すことでその項目バーの選択が決定される。
【0055】
ユーザによるジョグダイヤル93の操作により調理バー101が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S110;「調理」)、ステップ200の調理処理に移行する。調理処理(S200)については
図14を参照して後述する。ステップ200では、後述するように、操作パネル90の戻るボタン94が押されるまで調理処理が繰り返し実行される。
【0056】
また、ユーザによるジョグダイヤル93の操作により、お気に入りバー102が選択かつ決定されたと判定された場合には(S110;「お気に入り」)、ステップ300のお気に入り処理に移行する。お気に入り処理は、ユーザがメニュー番号(例えば01~99ごとに設定して登録した調理モード、調理温度、調理時間や水蒸気量を、メニュー番号を選択して呼び出したり、新たに設定し登録したり登録内容を変更したりすることができるように構成されている。
【0057】
さらに、ユーザによるジョグダイヤル93の操作により、お手入れバー103が選択かつ決定されたと判定された場合には(S110;「お手入れ」)、ステップ400のお手入れ処理に移行する。お手入れは、ユーザが調理庫20の底壁の排水口20dに取り付けられる排水フィルタ(図示省略)を洗浄したり、調理庫20内をハンドシャワー装置(図示省略)で洗浄したりする場合において、必要な操作や洗浄手順を液晶ディスプレイ91に表示するとともに洗浄に伴う操作入力に従って蒸気発生装置30等が機能するように構成されている。
【0058】
なお、ステップ300のお気に入り処理やステップ400のお手入れ処理も、ステップ200の調理処理と同様に、操作パネル90の戻るボタン94が押されるまで繰り返し実行される。また、機器設定バー104が選択かつ決定された場合の機器設定処理では、後述する予熱温度オフセット、クールダウン温度、液晶ディスプレイ91の画面表示の明るさ設定、ブザー音量設定、日付設定や時刻設定等を行うことが可能である。点検バー105が選択かつ決定された場合の点検処理については説明を省略する。
【0059】
[調理処理]
次に、
図14を参照しながら調理処理を説明する。調理処理(S200)は、制御装置95のROMに格納されている調理プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものである。
【0060】
図14に示したように、制御装置95は、ステップ201により操作パネル90の液晶ディスプレイ91に調理設定画面を表示する。液晶ディスプレイ91には、例えば、
図18(a)に示したような表示画面100aaが出力される。表示画面100aaの例では、上から、「調理モード」、「タイマアイコン」、「温度」、「時間」、「蒸気」、「予熱」、「クールダウン」が表示されている。「調理モード」、「温度」、「時間」、「蒸気」、「予熱」、「クールダウン」は、ユーザが操作パネル90のジョグダイヤル93を回すことにより選択可能な設定項目であり、選択状態の設定項目はその周囲に白枠が表示される(
図18では調理モードが選択状態にある)。
【0061】
ジョグダイヤル93は、右(時計回り)方向に回すことで「調理モード」→「温度」→「時間」→「蒸気」→「予熱」→「クールダウン」の順番で下方に移動するように選択対象が変わる(「クールダウン」が選択された場合にはジョグダイヤル93をさらに右に回しても選択対象は変わらない)。またジョグダイヤル93を左(反時計回り)方向に回すことで「クールダウン」→「予熱」→「蒸気」→「時間」→「温度」→「調理モード」の順番で上方に移動するように選択対象が変わる(「調理モード」が選択された場合にはジョグダイヤル93をさらに左に回しても選択対象は変わらない)。選択状態の設定項目は、ユーザがジョグダイヤル93を押すことでその設定項目の選択が決定される。
【0062】
ユーザによるジョグダイヤル93の操作により「調理モード」の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「調理モード」)、ステップ202の調理モード選択に移行する。
【0063】
調理モードは、「ホットエアーモード」、「スチームモード」及び「コンビモード」の3種類がある。ホットエアーモードは、ヒータ25と対流ファン26を作動させて対流する熱風により食材を加熱調理する調理モードである。スチームモードは、対流ファン26と蒸気発生装置30を作動させて対流する水蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理する調理モードである。コンビモードは、ヒータ25と対流ファン26と蒸気発生装置30を作動させて対流する水蒸気を含んだ高温の熱風により食材を加熱調理する調理モードである。なお、これらの3つの調理モードに関して蒸気発生装置30に対して行われる各制御処理(発熱体33の加熱制御及び蒸気発生容器31内の水の給排水制御)は、制御装置95のROMにそれぞれ格納されている調理モードごとのプログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われる。
【0064】
調理モードの選択はジョグダイヤル93を左右方向に回すことにより可能であり(S203;NO)、ユーザに選択された調理モードはジョグダイヤル93を押下することで決定される(S203;YES)。決定後は設定項目の表示に戻って
図18(a)に示したような表示画面100aaを表示する。この表示画面100aaには、調理モードとして「コンビモード」が表示されている。
【0065】
また、「温度」の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「温度」)、ステップ204により食材を調理する温度(調理温度)の入力を可能にする。なお、表示画面100aaに表示されている温度(300℃)は、調理庫20内の現在の温度であり、現在設定されている温度ではない。そのため、調理温度の入力が可能になると、表示温度の文字色とその背景色が反転(文字色は黒色、背景色は白色)して現在温度から設定温度に表示が変更されるとともに、ジョグダイヤル93を左右(時計回りで温度が上がり、反時計回りで温度が下がる)方向に回すことにより、例えば、30℃~300℃の範囲内において1℃刻みで設定温度を入力することが可能になる(S205;NO)。ユーザに選択された設定温度はジョグダイヤル93を押下することで決定される(S205;YES)。
【0066】
さらに、「時間」の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「時間」)、ステップ206の食材を調理する時間(調理時間)の入力を可能にする。例えば、表示画面100aaに表示されている時間(130分00秒)は、現在設定されている時間であり、調理時間の入力が可能になると、表示温度の文字色とその背景色が反転(文字色は黒色、背景色は白色)されるとともに、ジョグダイヤル93を左右(時計回りで時間が長くなり、反時計回りで時間が短くなる)方向に回すことにより、例えば、1分00秒~999分50秒の範囲内において設定時間を入力することが可能になる(S207;NO)。ユーザに選択された設定時間はジョグダイヤル93を押下することで決定される(S207;YES)。
【0067】
時間入力は、1分刻みの分入力(1分~999分)と10秒刻みの秒入力(0秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒)との2パートに分けて行うことが可能であり、分入力パートにおいては「連続運転」の設定も可能である。例えば、保温目的のために加熱調理器10を使用する場合においては、終了時間が定められた時間ではなく、終了時間が定められていない時間(連続)を設定できる方が便利な場合がある。そのため、この実施形態では、分入力パートにおいて連続して加熱を行う「連続運転」の設定も可能にしている。連続運転の設定は、例えば、ジョグダイヤル93を時計回りに回して最大時間の999分が表示された次に「連続運転」が現れるようにするとともに、ジョグダイヤル93を反時計回りに回して最小時間の1分が表示された次にも「連続運転」が現れるように分表示及び分選択のアルゴリズムを構成する(連続運転←1分←2分←3分← … →997分→998分→999分→連続)。
【0068】
つまり、連続運転の選択を、ジョグダイヤル93の回転方向において、時間増加方向と時間減少方向の両方向端(時間増加方向端に設けられる連続運転入力と、時間減少方向端に設けられる連続運転入力)で行うことができるように液晶ディスプレイ91の時間(分秒)表示の分入力部分(分入力パート)を構成した。これにより、ユーザは、ジョグダイヤル93を左右どちらの方向に回しても「連続運転」を選択することが可能になるので、例えば、連続運転を999分が表示された次にのみ選択可能である場合に比べて、短い時間で素早く「連続運転」を選択することが可能になる。
【0069】
なお、この実施形態では、時間増加方向端に設けられる連続運転入力と、時間減少方向端に設けられる連続運転入力との2つの選択入力を別々に設ける。そのため、ジョグダイヤル93の回転方向において、例えば、時計回りでは「 … →997分→998分→999分→連続→1分→2分→3分→ … 」、反時計回りでは「 … ←997分←998分←999分←連続←1分←2分←3分← … 」というように現れる循環状(サイクリック)に分表示及び分選択のアルゴリズムを構成する場合とは異なる。
【0070】
このように分表示が循環状に現れる場合には、時間増加方向端や時間減少方向端では分表示が停止することがないため、例えば、ユーザがジョグダイヤル93を勢いよく右方向に回した場合には「 … →999分→連続→1分→ … 」というように、また勢いよく左方向に回した場合には「 … ←999分←連続←1分← … 」のように、それぞれ「連続」で分表示が止まることなくその後も表示が遷移するため、予期しない分表示がされてしまうことがある。これに対してこの実施形態では、時間増加方向と時間減少方向の両方向端においてそれぞれ別々に2つの選択入力を設けるため、ユーザがジョグダイヤル93を勢いよく右方向や左方向に回しても「時間増加方向端の連続運転」または「時間減少方向端の連続運転」のいずれかにおいて表示を必ず停止させることが可能になる。
【0071】
また、「蒸気」の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「蒸気」)、ステップ208の調理庫20内に供給する水蒸気量の入力を可能にする。例えば、表示画面100aaに表示されている時間(40%)は、現在設定されている水蒸気量であり、水蒸気量の入力が可能になると、表示水蒸気量の文字色とその背景色が反転(文字色は黒色、背景色は白色)されるとともに、ジョグダイヤル93を左右(時計回りで水蒸気量が多くなり、反時計回りで水蒸気量が少なくなる)方向に回すことにより、例えば、0%、40%、90%及び100%の4段階で水蒸気量を入力することが可能になる(S209;NO)。ユーザに選択された設定水蒸気量はジョグダイヤル93を押下することで決定される(S209;YES)。
【0072】
ユーザによるスタート/ストップボタン92の押下により「調理スタート」の項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「スタート/ストップボタンの押下」)、ステップ210の本加熱処理に移行する。この本加熱処理(S210)については、
図15及び
図18を参照して後述する。
【0073】
また、ユーザによるジョグダイヤル93の通常操作または所定操作により「予熱」の項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「予熱」)、ステップ230の予備加熱処理に移行する。この予備加熱処理(S230)については、
図16及び
図19を参照して後述する。なお、ジョグダイヤル93の通常操作は、「調理モード」、「温度」、「時間」や「蒸気」を選択した場合にユーザが行ったジョグダイヤル93を回す操作であり、ジョグダイヤル93の所定操作はそれよりも格段に速い速度で左(反時計回り)方向にジョグダイヤル93を回す操作である。
【0074】
例えば、ジョグダイヤル93はその回転速度に比例した周期でパルス信号を出力可能なロータリーエンコーダ(パルスエンコーダ)タイプのダイヤル入力デバイスである。そのため、ジョグダイヤル93の通常操作時の出力周期に比べて桁違いに速い(例えば10倍以上速い)周期で反時計回り方向回転時のパルス信号が出力された場合には「予熱」の項目が選択されたと判定してその時の選択対象が「予熱」よりも離れた項目であっても、一足飛びに「予熱」の項目にジャンプして同項目の周囲を白枠で表示する。そして、選択状態においてジョグダイヤル93が押された場合には「予熱」の項目の選択が決定されたと判定する。これにより、ジョグダイヤル93を通常操作で回した場合に比べて、素早く「予熱」の項目を選択しかつ決定することが可能になる(ショートカット操作)。
【0075】
また、ジョグダイヤル93の通常操作または所定操作により「クールダウン」の項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には(S201;「クールダウン」)、ステップ250の判定処理の後にステップ260のクールダウン処理に移行する。この判定処理(S250)では、調理庫20の開口部20aを閉じる扉14が閉状態であるか否かを判定する。制御装置95には、扉14の開閉状態を検出する扉センサ19aから出力される検出信号が入力されるため、扉14の閉状態の判定は、この検出信号に基づいて行われる。そして、扉14が閉状態でない場合には「NO」と判定して、扉14が開いた状態ではクールダウンを行うことができない旨をユーザに知らせる所定のブザー音をブザーユニット(図示省略)から出力したり、液晶ディスプレイ91にその旨のメッセージを表示したりする。一方、扉14が閉状態である場合には「YES」と判定して、続くステップ260のクールダウン処理に移行する。このクールダウン処理(S260)については、
図17及び
図20を参照して後述する。
【0076】
ここでの所定操作は、「予熱」の項目を選択したジョグダイヤル93の回転方向(右方向)と逆方向(右方向(時計回り))方向にジョグダイヤル93を高速に回転させる操作である。通常操作時の出力周期に比べて桁違いに速い(例えば10倍以上速い)周期で時計回り方向回転時のパルス信号が出力された場合には「クールダウン」の項目が選択されたと判定してその時の選択対象が「クールダウン」よりも離れた項目であっても、一足飛びに「クールダウン」の項目にジャンプして同項目の周囲を白枠で表示する。そして、選択状態においてジョグダイヤル93が押された場合には「クールダウン」の項目の選択が決定されたと判定する。これにより、ジョグダイヤル93を通常操作で回した場合に比べて、素早く「クールダウン」の項目を選択しかつ決定することが可能になる(ショートカット操作)。
【0077】
[本加熱処理]
続いて、
図15及び
図18を参照しながら、本加熱処理について説明する。本加熱処理(S210)は、制御装置95のROMに格納されている本加熱プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、前述の調理処理において設定された調理モード(ホットエアーモード、スチームモード及びコンビモード)ごとに行われるものである。ここでは、コンビモードの場合を主に例示して説明する。
【0078】
図15に示したように、本加熱処理では、まずステップ211により液晶ディスプレイ91に「スタンバイ中」と表示する。
図18(a)に示す表示画面100aaでは、調理モードとして表示されている「コンビモード」の上側の運転状態表示欄に表示される(
図18(a)では何も表示されていない)。「スタンバイ中」は、調理庫20内の温度等が前述の調理処理(S200)において設定された調理モードで加熱調理することが可能でない場合に運転状態表示欄に出力する運転状態表示であるが、ここではデフォルト表示として出力する。
【0079】
次のステップ212の庫内温度取得では調理庫20内の温度を取得する。例えば、調理庫20内の温度として、庫内温度センサ27から入力された温度情報と基板温度センサ97から入力された温度情報とに基づいて庫内温度情報を算出して得る。また、加熱準備に関する情報として、ヒータ25や蒸気発生装置30の作動状態の情報を得てもよい。
【0080】
続くステップ213では加熱準備が完了したかを判定する。ステップ212により取得した庫内温度情報等と、調理処理(S200)において設定された調理温度等の情報とに基づいて、調理庫20内の食材をコンビモードで加熱調理することが可能であるかを判定する。この実施形態では、本加熱処理に先立って予備加熱処理(S230)も行うことができるように構成されている。そのため、本加熱処理に移行した状態においては調理庫20内の温度(庫内温度)は、調理処理により設定された調理温度に既に到達している場合もあるが、本加熱処理の前に予備加熱処理を行っていない場合には庫内温度が調理温度に達していない場合もある。従ってこのような判定処理が行われる。
【0081】
ステップ213により加熱準備がまだ完了していない場合には「NO」と判定して、例えば、庫内温度が調理処理により設定された調理温度に到達するまで、つまり加熱準備が完了するまで待つ。これに対して加熱準備が完了している場合には「YES」と判定して次のステップ214により液晶ディスプレイ91に「調理中」と表示する。例えば、
図18(b)に示した表示画面100abのように表示される。この後、ステップ215により調理時間を計時するタイマのカウントダウンを開始するとともに、ステップ216により加熱調理を開始(加熱開始)する。これらのステップ214~216はほとんど同時期に行われる。
【0082】
コンビモードやスチームモードの場合には、制御装置95は、調理庫20内に蒸気を供給するように蒸気発生装置30の誘導加熱コイル34に高周波電流を供給するインバータユニット71を制御する。インバータユニット71から誘導加熱コイル34に高周波電流が供給されると、誘導加熱コイル34から発生する磁界の影響により発熱体33の各ヒートパイプ33bに渦電流が流れることから、各ヒートパイプ33bは渦電流が流れるときの電気抵抗によって発熱する。蒸気発生容器31内の水は発熱する各ヒートパイプ33bにより加熱されて、蒸気発生容器31の水面から蒸気が発生する。蒸気発生容器31内の上部で発生した水蒸気は、蒸気受容体41内に入った後、送出筒42を通過して調理庫20内に供給される。
【0083】
このため、例えば、食材をコンビモードで加熱調理する場合には、ステップ216では、ヒータ25と対流ファン26との作動により調理庫20内の空気は熱風になって対流するとともに、蒸気発生装置30の作動により調理庫20内には水蒸気が供給される。これにより、調理庫20内を対流する熱風は蒸気を含むことから、調理庫20内の食材は水蒸気を含んで対流する熱風によって加熱調理される。また、食材をスチームモードで加熱調理する場合には蒸気発生装置30と対流ファン26との作動により調理庫20内は水蒸気を含んだ空気が対流する。これにより、調理庫20内の食材は水蒸気を含んで対流する空気によって加熱調理される。なお、食材をホットエアーモードで加熱調理する場合には、蒸気発生装置30からは水蒸気が供給されないが、ヒータ25と対流ファン26との作動により調理庫20内の空気は熱風になって対流する。そのため、調理庫20内の食材は対流する熱風によって加熱調理される。
【0084】
このような加熱調理は、原則として、調理処理(S200)において設定された調理時間が経過するまで、つまりタイマカウントによる残り時間が0秒になるまで続けられるが(S218;NO)、例えば、加熱調理中にユーザが扉14を開けた場合には(S217;YES)、加熱調理は停止される。
【0085】
すなわち、制御装置95には扉14の開閉状態を検出する扉センサ19aから開状態でオンになる検出信号が入力されるため、制御装置95はこの検出信号に基づいて扉14が開けられた情報を得るとステップ217の扉開判定処理により「YES」と判定した後、ステップ221によりタイマのカウントダウンを停止するとともに加熱調理も停止(加熱停止)しさらにステップ223により液晶ディスプレイ91に「一時停止中」と表示する。これらのステップ221~223はほとんど同時期に行われる。例えば、
図18(c)に示した表示画面100acのように表示される。
【0086】
このように運転状態表示欄に「一時停止中」と表示されている場合には、ステップ224により、調理温度、調理時間や水蒸気量の設定を変更することが可能になる。そのため、例えば、ジョグダイヤル93の操作により時間の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には、前述した調理処理(S200)のステップ201により液晶ディスプレイ91に調理設定画面が表示されているときの調理時間入力(S206)と同様に、ステップ224により調理時間を変更することが可能になる(
図18(d)参照)。この表示例では調理時間を9分50秒から30分00秒に変更している。
【0087】
また、調理温度や水蒸気量についても、調理温度入力(S204)や水蒸気量入力(S208)と同様に変更することが可能になる。なお、このステップ224において調理時間を変更する場合にも、ユーザは、ジョグダイヤル93を左右どちらの方向に回しても「連続運転」を選択することが可能になる。
【0088】
このような調理温度等の設定変更は、ステップ225の扉閉判定処理により扉14が閉じて「YES」と判定されない限り(S225;NO)、つまりユーザが扉14を閉じるまで可能である。ステップ225により、扉14が閉じて「YES」と判定された場合には、調理温度の設定が変更されたり、加熱停止により庫内温度が低下していたりする可能性があるため、ステップ212に戻って庫内温度を取得するところから各処理を行う。そして、ステップ214により、再度、液晶ディスプレイ91に「調理中」と表示する。例えば、
図18(e)に示した表示画面100aeのように表示される。この表示例では、ステップ224により変更された調理時間30分00秒から加熱調理を再開している。
【0089】
また、ユーザが扉14を閉じることなく開いた状態でスタート/ストップボタン92を所定時間(例えば1秒間)以上、長押しを行った場合には(S225;ストップ)、本加熱処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。つまり扉14を開けた状態で加熱調理を直ちに中止したい場合には、スタート/ストップボタン92を長押しすることで可能になる。
【0090】
ステップ218によりタイマカウントによる残り時間が0秒になった場合には「YES」と判定して(設定された調理時間に達したため)、ステップ219で加熱調理を終了(加熱終了)する。その後、ステップ220により液晶ディスプレイ91に「調理完了」と表示する。これらのステップ219,220はほとんど同時期に行われる。例えば、
図18(f)に示した表示画面100afのように表示される。ユーザがスタート/ストップボタン92を長押したり、扉14を開けたりした場合には、本加熱処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。
【0091】
[予備加熱処理]
続いて、
図16及び
図19を参照しながら、予備加熱処理について説明する。予備加熱処理(S230)は、制御装置95のROMに格納されている予備加熱プログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、調理モード(ホットエアーモード、スチームモード及びコンビモード)に関係なく、本来、前述の本加熱処理に先立って行われるものである。
【0092】
図19(a)に示した表示画面100baのような前述した調理設定画面から予備加熱処理に移行するためには、前述したように、ユーザがジョグダイヤル93の通常操作または所定操作を行うことにより
図19(b)に示した表示画面100bbのように「予熱」の項目が選択可能になる。そして、ジョグダイヤル93を押す操作を行うことにより「予熱」の項目の選択が決定されて予備加熱処理が開始される。
【0093】
図16に示したように、予備加熱処理では、まずステップ231により液晶ディスプレイ91に「予熱中」と表示する。例えば、
図19(c)に示した表示画面100bcのように液晶ディスプレイ91に表示される。ここでは、現在の庫内温度として100℃が表示されている。また「予熱の設定温度を変更しても、調理温度には反映されません。」と表示されている。これは、後述するステップ244に関連した注意喚起表示である。
【0094】
次のステップ232では予熱温度オフセットが取得される。この予熱温度オフセットは、予熱完了後の扉14の開閉により庫内温度が低下し得る温度降下分の見込み温度である。
図13の運転制御処理のホームメニュー表示(S110)によって液晶ディスプレイ91に表示される表示画面100の機器設定バー104を選択することで行われる機器設定処理により、予熱温度オフセットを設定したり変更したりすることが可能である。予熱温度オフセットは、例えば50℃に設定されている。
【0095】
次のステップ233により実加熱温度が算出される。この実施形態では、実際の加熱温度(実加熱温度)は、予め設定された設定上の加熱温度(予熱温度)と、ステップ232で取得した予熱温度オフセットとの和により得られる。例えば、設定上の加熱温度が100℃であり予熱温度オフセットが50℃である場合には、両者の和から実際の加熱温度として150℃(=100℃+50℃)が算出される。実加熱温度は、加熱調理器10が加熱可能な上限温度(例えば、コンビモードやホットエアーモードでは300℃、スチームモードでは130℃)を超えることはできない。
【0096】
このため、ステップ233により算出された実加熱温度が、加熱調理器10の加熱可能な上限温度以下であるかをステップ234により判定する。実加熱温度が上限温度以下でない場合には「NO」と判定して、次のステップ235により実加熱温度を上限温度に変更する。また実加熱温度が上限温度以下である場合には「YES」と判定して、続くステップ236によりその実加熱温度で加熱を開始する。
【0097】
このような予備加熱は、原則として、調理庫20内の温度(庫内温度)が実加熱温度に到達するまで続けられるが(S239;NO)、例えば、
図19(c)に示した表示画面100bcに表示されているストップ項目を、ユーザが予備加熱中に選択した場合には(S237;YES)、予備加熱は直ちに中止されて予備加熱処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。また例えば、予備加熱中にユーザが扉14を開けた場合には(S238;YES)、予備加熱は停止される。
【0098】
すなわち、制御装置95は扉センサ19aの検出信号に基づいて扉14が開けられた情報を得るとステップ238の扉開判定処理により「YES」と判定した後、ステップ242により予備加熱を停止(予熱停止)するとともにステップ243により液晶ディスプレイ91に「一時停止中」と表示する。これらのステップ242,243はほとんど同時期に行われる。例えば、
図19(d)に示した表示画面100bdのように表示される。
【0099】
このように運転状態表示欄に「一時停止中」と表示されている場合には、ステップ244により、予熱温度の設定を変更することが可能になる。そのため、例えば、ジョグダイヤル93の操作により予熱温度の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には、前述した調理処理(S200)のステップ201により液晶ディスプレイ91に調理設定画面が表示されているときの調理温度入力(S204)と同様に、ステップ244により予熱温度を変更することが可能になる(
図19(d)参照)。この表示例では予熱温度を100℃から300℃に変更している。
【0100】
このような予熱温度の設定変更は、ステップ245の扉閉判定処理により扉14が閉じて「YES」と判定されない限り(S245;NO)、つまりユーザが扉14を閉じるまで可能である。ステップ245により、扉14が閉じて「YES」と判定された場合には、予熱温度の設定が変更されている可能性があるため、ステップ233に戻って実加熱温度を算出するところから各処理を行う。そして、液晶ディスプレイ91に「予熱中」と表示する。例えば、
図19(e)に示した表示画面100beのように表示される。この表示例では、ステップ244により予熱温度が100℃から300℃が変更されているため、現在の庫内温度として150℃が表示されている。
【0101】
ステップ239により庫内温度が実加熱温度に到達した場合には「YES」と判定して、ステップ240で予備加熱を終了(予熱終了)する。その後、ステップ241により液晶ディスプレイ91に「予熱完了」と表示する。これらのステップ240,241はほとんど同時期に行われる。例えば、
図19(f)に示した表示画面100bfのように表示される。表示画面100bfに表示されているストップ項目をユーザが選択したり、扉14を開けたりした場合には、予備加熱処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。このようにこの実施形態の予備加熱処理では、実際の加熱温度(実加熱温度)として、設定上の予熱温度と予熱温度オフセットとの和を設定した(S233)。
【0102】
例えば、ユーザが設定上の予熱温度として100℃を設定した場合には、予熱完了後において調理庫20内に食材を入れるために扉14を開け閉めしたことで庫内温度が例えば70℃に下がってしまうことがある。そのため、ユーザは、扉14の開閉に伴う温度降下分を見込んでその見込み温度降下分だけ予熱開始後に予熱温度を上げるという操作を行っていたが、この実施形態では、そのような見込み温度降下分を予熱温度オフセットとして設定上の予熱温度に加えて実際の加熱温度(実加熱温度)を算出している。これにより、ユーザは、見込み温度降下分だけ予熱開始後に予熱温度を上げる、というような煩雑な操作を行う必要がなくなる。そのため、加熱調理器10の操作性が向上する。なお、予熱温度オフセットは、予め表示画面100(
図13(b)の機器設定バー104を選択することで機器設定処理により設定することが可能である。
【0103】
[クールダウン処理]
続いて、
図17及び
図20を参照しながら、クールダウン処理について説明する。クールダウン処理(S260)は、制御装置95のROMに格納されているクールダウンプログラムを制御装置95のCPUが実行することにより行われるものであり、調理モード(ホットエアーモード、スチームモード及びコンビモード)に関係なく、前述の本加熱処理後に行われるものである。
【0104】
図20(a)に示した表示画面100caのような前述した調理設定画面からクールダウン処理に移行するためには、前述したように、ユーザがジョグダイヤル93の通常操作または所定操作を行うことにより
図20(b)に示した表示画面100cbのように「クールダウン」の項目が選択可能になる。そして、ジョグダイヤル93を押す操作を行うことにより「クールダウン」の項目の選択が決定されてクールダウン処理が開始される。
【0105】
図17に示したように、クールダウン処理では、まずステップ261により液晶ディスプレイ91に「クールダウン中」と表示する。例えば、
図20(c)に示した表示画面100ccのように液晶ディスプレイ91に表示される。ここでは、現在の庫内温度として140℃が表示されている。また「警告/ケガのおそれあり/庫内のファンカバー吹出口に手や物を入れないでください。内部でファンが高速回転しています。」と表示されている(「」内の/は改行を表す)。これは、クールダウン時においては、調理庫20が空の状態でユーザが扉14を開く可能性があるため、庫内に手を入れることが危険である旨を伝える警告表示である。
【0106】
次のステップ262ではクールダウン温度が取得される。このクールダウン温度は、クールダウン処理において、調理庫20内を空気冷却して温度低下させる目標温度である。
図13の運転制御処理のホームメニュー表示(S110)によって液晶ディスプレイ91に表示される表示画面100の機器設定バー104を選択することで行われる機器設定処理により、クールダウン温度を設定したり変更したりすることが可能である。
【0107】
続くステップ263によりクールダウンを開始する。クールダウンは、給気ダンパ装置80の給気弁82を開放するとともに対流ファン26を作動させることにより行う。この実施形態では、本クールダウン処理に移行する前の調理処理(
図14)において扉14が閉じられていることを確認している(S250)。そのため、給気ダンパ装置80の給気弁82を開放して調理庫20内を冷却するための外気を給気ダンパ装置80から取り込む。給気ダンパ装置80により取り込まれ外気導入口20cから仕切板23の裏側に流入した外気は、上下及び前後の通風路23bを通って仕切板23の表側に吹き出された後、食材収容室21内を循環する。また、仕切板23の吸込口23aを通って仕切板23の裏側に吸い込まれた後、対流ファン26の外向きに吹き出されて、再び上下及び前後の通風路23bを通って仕切板23の表側に戻される。給気ダンパ装置80により取り込まれた外気は、このように調理庫20内を循環するため、庫内が冷却されて庫内温度が低下する。
【0108】
このようなクールダウンは、原則として、庫内温度がクールダウン温度に到達するまで続けられるが(S266;NO)、例えば、
図20(c)に示した表示画面100ccに表示されているストップ項目を、ユーザがクールダウン中に選択した場合には(S264;YES)、クールダウンは直ちに中止されてクールダウン処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。また
図20(d)に示した表示画面100cdに表示されている調理設定項目を、ユーザがクールダウン中に選択した場合には(S265;YES)、ステップ268により調理設定温度等の設定を変更することが可能になる。
【0109】
この場合、例えば、
図20(e)に示した表示画面100ceのように液晶ディスプレイ91に表示されて、ステップ268により、調理温度、調理時間や水蒸気量の設定を変更することが可能になる。そのため、例えば、ジョグダイヤル93の操作により温度の設定項目が選択かつ決定されたと制御装置95が判定した場合には、前述した調理処理(S200)のステップ204により液晶ディスプレイ91に調理設定画面が表示されているときの調理温度入力(S206)と同様に、ステップ268により調理温度を変更することが可能になる。
【0110】
このような調理設定温度等の設定変更は、例えば、
図20(e)に示した表示画面100ccに表示されているクールダウン画面項目をユーザがジョグダイヤル93を操作して選択かつ決定して「YES」と判定されない限り(S269;NO)、つまりユーザが前画面に戻る操作をしない限り可能である。ステップ269により、ユーザが前画面に戻る操作をして「YES」と判定された場合には、ステップ261に戻って液晶ディスプレイ91に「クールダウン中」と表示するところから各処理を行う。
【0111】
ステップ266により庫内温度がクールダウン温度に到達した場合には「YES」と判定して、ステップ267でクールダウンを終了(クールダウン終了)する。クールダウンが終了すると、表示画面100ceに表示されているストップ項目をユーザが選択した場合には、クールダウン処理を終了して
図14の調理処理に戻る(リターン)。例えば、
図20(f)に示した表示画面100cfのように表示される。この表示例では、現在の庫内温度として、クールダウン後の100℃が表示されている。
【0112】
このようにこの実施形態のクールダウン処理では、扉14が閉じられている状態でのみ当該クールダウン処理が実行されて、扉14が開いた状態ではクールダウン処理が開始されない(ステップ250;NO)。これにより、クールダウン中は扉14が閉じているため、ユーザが調理庫20内に手等を調理庫20内に入れることができなくなる。また、給気ダンパ装置80を介して外気を取り入れる構成にしたので、扉14が閉じていてもクールダウンを行うことが可能になる。
【0113】
上記のように構成した加熱調理器10では、運転ボタン18から運転終了入力(運転停止情報)が入力された場合、制御装置95は、蒸気発生装置30に対して行う給排水制御による給排水の状態及び蒸気発生容器31内の水位に関係なく、発熱体33のヒートパイプ33bの水没水位または水没近傍水位LOまで蒸気発生容器31内に給水した後、待機状態(停止状態)に移行する。これにより、加熱制御を開始不能または続行不能な待機状態(停止状態)に移行する前においては、必ず蒸気発生装置30の蒸気発生容器31内に給水されて発熱体33の水没水位または水没近傍水位LOまで水が貯水されるため、蒸気発生容器31の水は、スケール成分の濃度が低くなりまた発熱体33のヒートパイプ33bも冷却される。したがって、スケールの付着及び発熱体33のヒートパイプ33bの劣化を抑制することができる。
【0114】
なお、上記の加熱調理器10では、制御装置95において、運転終了入力監視処理(S20)は、運転制御処理(S100)とは別タスクで並行して実行するによう構成したが、運転制御処理(S100)の中に運転終了入力監視処理(S20)を組み込んで、直列に実行するようにアルゴリズムを構成してもよい。また、ファン異常監視処理(S30)についても同様である。
【0115】
また、上記の加熱調理器10では、運転終了入力監視処理(S20)及び運転制御処理(S100)を同一の制御装置95により実行するように構成したが、運転終了入力監視処理(S20)と運転制御処理(S100)とを異なる制御装置でそれぞれ別個に実行するように構成してもよい。また、ファン異常監視処理(S30)についても同様である。
【符号の説明】
【0116】
10…加熱調理器、18…運転ボタン(入力部)、30…蒸気発生装置(蒸気発生部)、31…蒸気発生容器(貯水用の容器)、33…発熱体、33b…ヒートパイプ(発熱体)、95…制御装置(制御部)、S210…本加熱制御(加熱制御)、S230…予備加熱制御(加熱制御)、S904…給水制御(給排水制御)。