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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036182
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】記録方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230307BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230307BHJP
   E04G 23/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01C15/00 103Z
E04G23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143075
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 湧人
(72)【発明者】
【氏名】水上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 涼太
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小林 利充
【テーマコード(参考)】
2E176
2F065
【Fターム(参考)】
2E176BB38
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB05
2F065BB15
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065LL62
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】設置物の影響を受けずに建造物の表面を記録すること。
【解決手段】本開示に係る記録方法は、建造物の表面の記録方法であって、前記建造物は
、前記表面から離間して配置された設置物を備えており、前記表面を撮影するための撮影
手段を、前記設置物を避けて、前記表面と前記設置物との間に配置する配置ステップと、
前記表面と前記設置物との間から前記撮影手段により前記表面を撮影する撮影ステップと
、前記撮影ステップで得られた前記表面の撮影データを記録する記録ステップと、を有す
る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の表面の記録方法であって、
前記建造物は、前記表面から離間して配置された設置物を備えており、
前記表面を撮影するための撮影手段を、前記設置物を避けて、前記表面と前記設置物と
の間に配置する配置ステップと、
前記表面と前記設置物との間から前記撮影手段により前記表面を撮影する撮影ステップ
と、
前記撮影ステップで得られた前記表面の撮影データを記録する記録ステップと、
を有する記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記録方法であって、
前記撮影ステップにおいて、前記撮影手段と前記表面との間の障害物が撮影されること
によって、前記撮影データに前記障害物の障害物データが含まれており、
前記記録ステップにおいて、前記撮影データから障害物の障害物データを除去すること
によって、撮影目的物の撮影目的物データを取得することを特徴とする記録方法。
【請求項3】
請求項2に記載の記録方法であって、
前記撮影データは、3次元形状を示す3次元データであり、
前記撮影データにおける前記障害物を含む範囲の3次元形状のデータを除去することに
よって、前記撮影目的物データを取得することを特徴とする記録方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の記録方法であって、
前記撮影ステップにおいて、前記表面と前記設置物との間で前記撮影手段を移動させつ
つ前記表面を連続撮影することによって、前記表面の撮影データを取得することを特徴と
する記録方法。
【請求項5】
請求項4に記載の記録方法であって、
前記撮影ステップにおいて、前記撮影手段の移動データを取得し、前記移動データによ
って推定された前記撮影手段の位置に基づいて、連続撮影された前記表面の撮影結果をマ
ッチングさせ、前記表面の撮影データを取得することを特徴とする記録方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の記録方法であって、
前記記録ステップにおいて、前記表面の第1範囲に対応する第1撮影データと、前記第
1範囲と隣接する第2範囲に対応する第2撮影データとを取得し、前記第1撮影データと
前記第2撮影データとを合成する撮影データ合成ステップが行われることを特徴とする記
録方法。
【請求項7】
請求項6に記載の記録方法であって、
前記第1撮影データと前記第2撮影データの座標系の整合が行われた後、前記第1撮影
データと前記第2撮影データとの合成が行われることを特徴とする記録方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の記録方法であって、
前記撮影データは、前記建造物の前記表面の色情報を示すデータであることを特徴とす
る記録方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の記録方法であって、
前記撮影データは、前記建造物の前記表面の3次元形状と色情報を示すデータであるこ
とを特徴とする記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の表面の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば外壁タイル張り工事の際に、施工記録を作成し、保管することが行われている。
また、施工記録として、下地となるコンクリートに下地調整塗材を塗布した調整範囲(補
修範囲とも呼ばれる)を記録することが行われている。従来では、作業者が調整箇所を目
視観察しながら手書きによるスケッチを行い、若しくは、作業者が調整箇所を写真撮影し
、その後、スケッチや写真に基づいて調整箇所の位置や範囲の記録が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-134470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の記録方法では、スケッチや写真に基づいて調整範囲を特定していたため、作業者
の作業負荷が大きいだけでなく、調整記録の精度が低いおそれがあった。
特許文献1には、外壁タイルの診断結果を記録する際に、作業者による診断結果情報(
例えばチョークで記載した判別記号)が記録された壁面画像を撮影し、撮影した壁面画像
を解析することによって、診断結果情報の位置を記録することが記載されている。但し、
特許文献1記載の記録方法では、作業者が搭乗する架台を昇降装置で移動させる必要があ
り、架台や架台を移動させる昇降装置の設置に費用がかかる。
一方、作業者が仮設足場から壁面を撮影する場合、仮設物が壁面の一部を遮蔽してしま
い、壁面の一部の状態を記録できないおそれがある。
【0005】
本発明は、設置物の影響を受けずに建造物の表面を記録することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明は、建造物の表面の記録方法であって、前記建造物
は、前記表面から離間して配置された設置物を備えており、前記表面を撮影するための撮
影手段を、前記設置物を避けて、前記表面と前記設置物との間に配置する配置ステップと
、前記表面と前記設置物との間から前記撮影手段により前記表面を撮影する撮影ステップ
と、前記撮影ステップで得られた前記表面の撮影データを記録する記録ステップと、を有
する記録方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設置物の影響を受けずに建造物の表面を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、建造物の表面の撮影の様子の説明図である。
図2図2は、建造物の表面の撮影の様子を別の方向から見た説明図である。
図3図3は、記録システム100の説明図である。
図4図4は、本実施形態の記録方法のフロー図である。
図5図5は、撮影範囲の説明図である。
図6図6は、連続撮影の様子の説明図である。
図7図7Aは、撮影データから障害物データを除去する様子の説明図である。図7Bは、障害物データを除去した後の撮影データの3次元画像の説明図である。
図8図8A図8Cは、S105~S107の処理の説明図である。
図9図9は、比較例の説明図である。
図10図10は、撮影装置10の3次元スキャナー12とカメラ13の配置の説明図である。
図11図11Aは、比較例の撮影データの説明図である。図11Bは、比較例の撮影データに除去処理を施した目的物データの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
建造物の表面の記録方法であって、前記建造物は、前記表面から離間して配置された設
置物を備えており、前記表面を撮影するための撮影手段を、前記設置物を避けて、前記表
面と前記設置物との間に配置する配置ステップと、前記表面と前記設置物との間から前記
撮影手段により前記表面を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップで得られた前記表
面の撮影データを記録する記録ステップと、を有する記録方法が明らかとなる。このよう
な記録方法によれば、設置物の影響を受けずに建造物の表面を記録することができる。
【0011】
前記撮影ステップにおいて、前記撮影手段と前記表面との間の障害物が撮影されること
によって、前記撮影データに前記障害物の障害物データが含まれており、前記記録ステッ
プにおいて、前記撮影データから障害物の障害物データを除去することによって、撮影目
的物の撮影目的物データを取得することが望ましい。これにより、障害物によって表面の
一部が遮蔽されていても、表面の撮影目的物データを取得できる。
【0012】
前記撮影データは、3次元形状を示す3次元データであり、前記撮影データにおける前
記障害物を含む範囲の3次元形状のデータを除去することによって、前記撮影目的物デー
タを取得することが望ましい。これにより、障害物によって表面の一部が遮蔽されていて
も、表面の撮影目的物データを取得できる。
【0013】
前記撮影ステップにおいて、前記表面と前記設置物との間で前記撮影手段を移動させつ
つ前記表面を連続撮影することによって、前記表面の撮影データを取得することが望まし
い。これにより、広い範囲の撮影データを取得できる。
【0014】
前記撮影ステップにおいて、前記撮影手段の移動データを取得し、前記移動データによ
って推定された前記撮影手段の位置に基づいて、連続撮影された前記表面の撮影結果をマ
ッチングさせ、前記表面の撮影データを取得することが望ましい。これにより、精度の高
い撮影データを取得することができる。
【0015】
前記記録ステップにおいて、前記表面の第1範囲に対応する第1撮影データと、前記第
1範囲と隣接する第2範囲に対応する第2撮影データとを取得し、前記第1撮影データと
前記第2撮影データとを合成する撮影データ合成ステップが行われることが望ましい。こ
れにより、広い範囲の撮影データを取得できる。
【0016】
前記第1撮影データと前記第2撮影データの座標系の整合が行われた後、前記第1撮影
データと前記第2撮影データとの合成が行われることが望ましい。これにより、第1撮影
データと第2撮影データとを合成するための演算を簡易にできる。
【0017】
前記撮影データは、前記建造物の前記表面の色情報を示すデータであることが望ましい
。これにより、表面の色情報を記録することができ、例えば下地調整塗材の塗布した表面
の記録が可能になる。
【0018】
前記撮影データは、前記建造物の前記表面の3次元形状と色情報を示すデータであるこ
とが望ましい。これにより、建造物の表面の3次元形状を色付きで記録することが可能に
なる。
【0019】
===実施形態===
<撮影について>
図1及び図2は、建造物の表面の撮影の様子の説明図である。
【0020】
図中の建造物は、例えばRC造の建築物である。ここでは、コンクリートの壁面3の一
部に下地調整塗材が塗布されており、下地調整塗材が塗布された範囲(補修範囲)の記録
のため、計測装置を用いて壁面3の撮影が行われている。なお、撮影対象となる構造物の
表面は、コンクリートの下地面に限らずに、押出成形セメント板やモルタルなどを下地と
する面や他の塗装された面でも良い。また、構造物の表面は、壁面3に限らずに、床面や
天井面でも良い。
【0021】
建造物は、表面から離間して配置された設置物5を備えている。ここでは、設置物5と
して、建造物の建造のために仮設される仮設物が設けられている。仮設物は、例えば、上
下方向に配置される縦柱5A、縦柱5A間に水平に配置される横桟5B、作業者の足場と
なる足場板5C、補強のため斜めに配置されるブレース5D(図2参照)、作業者や資材
の落下防止のための保護ネット(不図示)などの仮設部材で構成されている。図1に示す
ように、作業者は、仮設物の足場板5Cに立ち、仮設物の足場板5Cから壁面3を撮影す
ることになる。
【0022】
撮影装置10は、建造物の表面の撮影を行うための撮影手段である。撮影装置10は、
例えばスマートフォンやタブレットデバイスなどの携帯型端末である。但し、建造物の表
面を撮影する撮影手段は、撮影装置10のような携帯型端末でなくても良い。後述するよ
うに、撮影装置10は、3次元スキャナー12及びカメラ13を有しており、撮影データ
として構造物の表面の色付き3次元データを生成する。
【0023】
図9は、比較例の説明図である。比較例では、作業者は、足場板5C上から撮影装置1
0を用いて構造物の壁面3を撮影している。このような比較例の記録方法では、例えばブ
レース5D(図2参照)のような設置物5が壁面3の一部を遮蔽してしまい、壁面3の一
部を記録できないおそれがある。
【0024】
これに対し、本実施形態では、図1及び図2に示すように、作業者は、設置物5を避け
て、壁面3と設置物5との間の空間に撮影装置10を配置させる(配置ステップ)。そし
て、壁面3と設置物5との間から撮影装置10によって壁面3の撮影を行い(撮影ステッ
プ)、壁面3の撮影データを記録することになる(記録ステップ)。本実施形態では、撮
影装置10が設置物5よりも壁面3に近接した状態で撮影が行われるため、設置物5によ
って壁面3の一部が遮蔽されることを抑制できる。このため、本実施形態では、設置物5
の影響を避けて、建造物の表面を記録することができる。
【0025】
図1に示すように、撮影装置10は、棒状の支持部材20の端部に支持されている。
支持部材20は、いわゆる自撮り棒で構成されており、棒状の本体部21と、支持部2
2と、把持部23とを有する。支持部22は、撮影装置10を支持する部位であり、棒状
の本体部21の一端に設けられている。把持部23は、作業者が把持する部位であり、本
体部21の他端(支持部22とは逆側の端部)に設けられている。支持部材20を用いる
ことによって、仮設物(ここでは足場板5C)に立つ作業者が、仮設物(例えばブレース
5D:図2参照)を避けて壁面3と設置物5との間に撮影装置10を配置させることが容
易になる。また、支持部材20を用いることによって、後述する連続撮影が容易になる。
但し、支持部材20を用いずに、作業者が手を伸ばして撮影装置10を壁面3と設置物5
との間に配置させても良い。
【0026】
なお、支持部材20の本体部21は、伸縮可能であることが望ましい。これにより、撮
影装置10を壁面3と設置物5との間に配置させることが容易になる。また、支持部材2
0を用いることによって、後述する連続撮影が容易になる。但し、本体部21が伸縮でき
なくても良い。
【0027】
<記録システム100>
図3は、記録システム100の説明図である。記録システム100は、撮影装置10と
、記録装置40とを備えている。
【0028】
撮影装置10は、既に説明した通り、建造物の表面の撮影を行う装置であり、例えばス
マートフォンやタブレットデバイスなどの携帯型端末である。撮影装置10は、撮影制御
部11と、3次元スキャナー12と、カメラ13と、慣性計測装置14と、通信装置15
とを有する。
撮影制御部11は、撮影装置10の制御を司る制御部である。撮影制御部11は、演算
処理装置11Aと、記憶装置11Bとを有する。記憶装置11Bに記憶されている撮影プ
ログラムを演算処理装置11Aが実行することによって、撮影装置10の各部(3次元ス
キャナー12やカメラ13等)が制御されるとともに、撮影装置10の各部から取得した
データに基づいて撮影データが生成されることになる。
【0029】
3次元スキャナー12は、計測対象物の3次元形状を計測する装置であり、例えばLi
DARで構成されている。3次元スキャナー12は、建造物の表面の3次元形状の計測結
果として、点群データを撮影制御部11に出力する。点群データは、3次元座標(X座標
、Y座標、Z座標)の情報を有する点データの集まりである。3次元座標を示す点データ
の集まりによって、建造物の表面の3次元形状が示されることになる。点群データは、3
次元形状を示す3次元データである。なお、3次元スキャナー12は、点群データとは異
なる形式の3次元データを出力しても良い。
【0030】
カメラ13は、画像を撮影するデジタルカメラである。カメラ13は、建造物の表面の
撮影結果として、2次元のカラー画像のデータ(画像データ)を撮影制御部11に出力す
る。画像データは、2次元のカラー画像を示すデータである。例えば、画像データは、2
次元配置されるピクセルのピクセルデータから構成されており、それぞれのピクセルデー
タはRGBの階調値を示す色情報を有している。カメラ13は、色情報を示すデータであ
る画像データを出力することになる。
【0031】
慣性計測装置14は、撮影装置10の移動(並進移動や回転移動)を計測する装置であ
り、例えば加速度センサやジャイロセンサなどで構成されている。慣性計測装置14は、
IMU(Inertial Measurement Unit)と呼ばれることもある。慣性計測装置14は、撮
影装置10の移動データを撮影制御部11に出力する。移動データは、例えば撮影装置1
0の並進移動の情報(変位や速度の情報)や、撮影装置10の回転移動の情報(角度や角
速度の情報)を有している。
【0032】
通信装置15は、外部の装置との間でデータを送受信する装置である。ここでは、撮影
制御部11は、通信装置15を介して、記録装置40に撮影データを送信することになる
【0033】
記録装置40は、建造物の表面の撮影データを記録する装置である。記録装置40は、
1台又は複数台のコンピューターで構成される。記録装置40は、記録制御部41と、通
信装置42とを有する。記録制御部41は、記録装置40の制御を司る制御部である。記
録制御部41は、演算処理装置41Aと、記憶装置41Bとを有する。記憶装置41Bに
記憶されている記録プログラムを演算処理装置41Aが実行することによって、後述する
各種処理が行われ、これにより建造物の表面の記録が行われることになる。通信装置42
は、外部の装置との間でデータを送受信する装置である。ここでは、記録制御部41は、
通信装置42を介して、撮影装置10から撮影データを受信することになる。
【0034】
記録装置40は、表示装置43や入力装置44を備えていても良い。表示装置43は、
例えば撮影データや、構造物の表面の記録内容を確認する確認画面を表示する。入力装置
44は、例えばキーボードやマウスなどである。
【0035】
<記録方法>
図4は、本実施形態の記録方法のフロー図である。
【0036】
まず、建造物の表面の撮影が行われる(S101)。このとき、図1及び図2に示すよ
うに、壁面3と設置物5との間の空間に撮影装置10が配置され(配置ステップ)、壁面
3と設置物5との間から撮影装置10によって壁面3の撮影が行われる(撮影ステップ)
。撮影装置10が壁面3を撮影すると、撮影制御部11は、3次元スキャナー12から3
次元形状を示す点群データ(3次元データ)を取得するとともに、カメラ13からカラー
画像(色情報)を示す画像データを取得する。
【0037】
図5は、撮影範囲の説明図である。
撮影装置10の3次元スキャナー12は、図中のハッチングで示す撮影範囲に向かって
所定角ごとにレーザー光を照射し、レーザー光を照射してから反射光を受光するまでの時
間を計測し、撮影範囲の多数の点の3次元座標を計測し、これにより点群データを取得す
る。但し、3次元スキャナー12が取得する点群データには、壁面3の色情報は含まれて
いない。
撮影装置10のカメラ13は、図中のハッチングで示す撮影範囲のカラー画像の画像デ
ータを取得する。そして、撮影制御部11は、点群データ及び画像データに基づいて、点
群データの各点に対応する色情報を求め、点データに色情報を付加する。これにより、撮
影制御部11は、3次元座標(X座標、Y座標、Z座標)とその3次元座標における色情
報(例えばRGB情報)とを備えた点データの集まりで構成された色付き点群データを生
成する。撮影装置は、色付き点群データを撮影データとして出力することになる。
【0038】
ところで、図5に示すように、1回の撮影で計測可能な撮影範囲は、壁面3の全面に比
べると、とても小さい。このため、仮に1つの撮影データの撮影範囲が図5のハッチング
の撮影範囲だけを示すとすると、壁面3の全体の記録を行うためには大量の撮影データを
用意する必要があり、大量の撮影データのファイル管理が煩雑になる。このため、本実施
形態では、連続撮影を行うことによって、1つの撮影データの撮影範囲を広げている。
【0039】
図6は、連続撮影の様子の説明図である。
本実施形態では、作業者は、壁面3に沿って撮影装置10を移動させながら、連続して
壁面3の撮影を複数回行う。なお、壁面3の撮影を複数回行うことには、撮影モード中の
撮影装置10を壁面3に沿って移動させて連続撮影することも含まれる。連続撮影では、
一部の撮影範囲が重複するように、それぞれの撮影が行われる。本実施形態では、撮影装
置10は、連続して壁面3の撮影を複数回行い、複数の撮影範囲のそれぞれの点群データ
及び画像データを合成することによって、広い範囲の色付き点群データ(撮影データ)を
生成する。例えば、撮影制御部11は、点群データ及び画像データを取得するとともに慣
性計測装置14(IMU)から移動データを取得し、連続して壁面3の撮影したときの或
る撮影で得られた点群データ及び画像データと別の撮影で得られた点群データ及び画像デ
ータとを、それぞれの点群データ及び画像データの特徴点や移動データによる撮影装置1
0の位置推定結果等に基づいてマッチングさせることによって、広い範囲の色付き点群デ
ータ(撮影データ)を生成する。慣性計測装置14の移動データを利用して複数の撮影範
囲の点群データ及び画像データのマッチングが行われることによって、精度の高い撮影デ
ータを取得することができる。なお、本実施形態では、連続撮影によって点群データ及び
画像データを随時マッチングさせることによって広い範囲の色付き3次元データを生成す
る方法として、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)を採用している。
但し、他の方法を用いて連続撮影による色付き3次元データを生成しても良い。
【0040】
ところで、デジタルカメラを用いて壁面3の2次元画像を1枚撮影する場合、カメラ1
3と壁面3の間に配置された障害物6によって壁面3の一部が遮蔽されてしまうと、遮蔽
された壁面3の情報を再現することが難しい。これに対し、本実施形態のように、壁面3
に沿って撮影装置10を移動させながら壁面3の連続撮影を行う場合には、図6に示すよ
うに、壁面3の同じ部位を様々な角度から撮影するため、仮に或る撮影において壁面3の
一部が障害物(後述)によって遮蔽されていても、別の撮影において、その壁面3の一部
を障害物に遮蔽されずに撮影することが可能であり、或る撮影時に障害物で遮蔽された壁
面3の情報を再現することが可能になる。
【0041】
ここでは、撮影データは、XYZRGB形式のデータであり、3次元座標(X座標、Y
座標、Z座標)とその3次元座標における色情報(例えばRGB情報)とを備えた点デー
タの集まりで構成された色付き点群データである。但し、撮影データは、XYZRGB形
式の色付き点群データに限られるものではなく、例えば、更に法線ベクトル情報が追加さ
れたXYZNxNyNzRGB形式の色付き点群データでも良い。また、撮影データは、
色付き点群データに限られるものでは無く、三次元形状及び色情報を示す色付き3次元デ
ータであれば良い。例えば、撮影装置10は、3次元スキャナー12から取得した点群デ
ータに基づいて3次元形状を示すポリゴンデータ(例えばSTLデータ)を生成するとと
もに、カメラ13から取得した画像データに基づくカラー画像をポリゴンデータの表面に
貼り合わせることによって、三次元形状及び色情報を示す撮影データ(色付き3次元デー
タ)を生成しても良い。このように、撮影データは、壁面3の三次元形状及び色情報を示
すデータであれば、どのような形式でも良い。
【0042】
壁面3と設置物5との間から撮影装置10によって壁面3の撮影が行われた後(撮影ス
テップ)、壁面3の撮影データが記憶装置に記録される(記録ステップ)。なお、撮影デ
ータが記録される記憶装置は、撮影装置10の記憶装置11Bでも良いし、記録装置40
の記憶装置41Bでも良い。
【0043】
建造物の表面の撮影が行われた後、壁面3の全体を撮影したか否かの判断が行われる(
S102)。S102の判断は、作業者が行っても良いし、記録制御部41が行っても良
い。例えば、建造物が3階建ての場合であって、1階部分の撮影データだけしか保存され
ておらず、他の階の撮影データが保存されていない場合には、記録制御部41は、壁面3
の全体の撮影が終わっていないと判断する。壁面3の全体の撮影が終わっていない場合(
S102でNO)、建造物の表面の撮影が再度行われる(S101)。例えば、建造物が
3階建てであり、1階部分の撮影しか終わっていない場合には、S102の判断はNOと
なるため、記録制御部41は、作業者に残りの階の撮影を行うことを報知し、この結果、
建造物の表面の撮影が再度行われることになる(S101)。若しくは、建造物の北面の
撮影しか終えてない場合には、S102の判断はNOとなるため、記録制御部41は、作
業者に残りの面(例えば西面)の撮影を行うことを報知し、この結果、建造物の例えば西
面の撮影が再度行われることになる(S101)。壁面3の全体の撮影が終わった場合に
は、S102の判断はYESになり、次の工程(S103)に移行する。
【0044】
建造物の表面の全体の撮影が行われた後(S102)、障害物6の除去処理が行われる
(S103)。障害物6の除去処理は、記録装置40の記録制御部41によって行われる
。なお、記憶装置41Bに記憶されている除去処理プログラムを演算処理装置41Aが実
行することによって、障害物6の除去処理が実現されることになる。
【0045】
S103の障害物6の除去処理では、まず、記録制御部41は、撮影装置10の記憶装
置11B又は記録装置40の記憶装置41Bから撮影データを読み込む(S111)。本
実施形態では、壁面3と設置物5(仮設物)との間から壁面3の撮影が行われるが、撮影
装置10と壁面3との間で壁面3を遮蔽する障害物6が撮影されることがある。例えば、
壁面3を遮蔽する障害物6として、壁面3に沿って配置される配管や、壁面3の近傍に設
置された鋼製手摺などが挙げられる。このような障害物6が撮影された場合、撮影データ
には、壁面3のデータ(色付き3次元データ)とともに、障害物6のデータ(障害物デー
タ;色付き3次元データ)が記録されることになる。そこで、次に、記録制御部41は、
撮影データから障害物データを除去する(S112)。
【0046】
図7Aは、撮影データから障害物データを除去する様子の説明図である。図7Bは、障
害物データを除去した後の撮影データの3次元画像の説明図である。
S112の処理では、まず、記録制御部41は、撮影データが示す3次元画像を表示装
置43(図3参照)に表示する。例えば、図7Aに示すように、記録制御部41は、撮影
データに基づいて、壁面3の3次元画像とともに、障害物6(例えば配管や、仮設部材の
保護ネットなど)の3次元画像を表示装置43に表示することになる。
次に、記録制御部41は、作業者に入力装置44(キーボード、マウスなど)を用いて
障害物6を含む範囲を入力させる。例えば、作業者は、障害物6の全体を含むように、図
7Aの白枠の範囲(座標)を入力装置44によって入力することになる。これにより、記
録制御部41は、入力装置44から、削除すべき範囲(3次元空間)の情報を取得するこ
とになる。
次に、記録制御部41は、撮影データから、入力装置44によって入力された範囲のデ
ータを除去する。ここでは、記録制御部41は、色付き点群データで構成されている撮影
データから、入力装置44によって入力された範囲の点群データを除去することになる。
この結果、図7Bに示すように、撮影データに含まれていた障害物6の点群データ(障害
物データに相当)が、撮影データから除去されることになる。
S112の処理の後、記録制御部41は、障害物データを除去した撮影データを、撮影
目的物データとして記憶装置41Bに保存する(S113)。例えば、記録制御部41は
図7Bに相当する撮影データ(加工後の撮影データ)を、撮影目的物データとして保存
することになる。
【0047】
障害物6の除去処理が行われた後(S103)、全ての撮影データの障害物6の除去処
理をしたか否かの判断が行われる(S104)。S104の判断は、作業者が行っても良
いし、記録制御部41が行っても良い。例えば、記録制御部41は、記憶装置に保存され
ている全ての撮影データに対して除去処理(S103)が行われたか否かを判断する。全
ての撮影データの障害物6の除去処理が終わっていない場合(S104でNO)、残りの
撮影データに対する障害物6の除去処理が行われる(S103;S111~S113)。
例えば、1~3階のそれぞれの階ごとに撮影データが存在し、1階の撮影データの除去処
理を終えた後、2~3階の撮影データの除去処理が終わっていない場合には、S104の
判断はNOとなり、2~3階の撮影データに対する障害物6の除去処理が行われることに
なる(S103;S111~S113)。若しくは、建造物の面ごとに撮影データが存在
し、建造物の北面の撮影データの除去処理を終えた後、西面の撮影データの除去処理が終
わっていない場合には、S104の判断はNOとなり、西面の撮影データに対する障害物
6の除去処理が行われることになる(S103;S111~S113)。全ての撮影デー
タの障害物6の除去処理が終わった場合には、S104の判断はYESになり、次の工程
(S105)に移行する。
【0048】
図8A図8Cは、S105~S107の処理の説明図である。
【0049】
全ての撮影データの除去処理が行われた後(S104でYES)、撮影目的物データの
座標系の整合が行われる(S105)。なお、撮影目的物データの座標系の向き(X軸、
Y軸、Z軸の向き)は、例えば撮影開始時の撮影装置10の位置や向きを基準に定められ
るため、複数の撮影目的物データの座標系の向きは、互いに異なっている。そこで、S1
05の処理において、記録制御部41は、それぞれの撮影目的物データの座標系の向きを
整合する。
【0050】
S105の処理では、まず、記録制御部41は、撮影目的物データが示す3次元画像を
表示装置43に表示する。例えば、図8Aの1枚目の画像に示すような、建造物の1階部
分の東面と北面を示す撮影目的物データを表示装置43に表示する。次に、記録制御部4
1は、作業者に入力装置44(キーボード、マウスなど)を用いて、3次元表示された建
造物が所定の向きになるように設定させる。例えば、作業者は、3次元表示された建造物
(撮影目的物データの3次元画像)の高さ方向がZ方向になり、建造物の北面がXZ平面
になるように、3次元表示された建造物の向きを設定する。次に、記録制御部41は、設
定された向きに従って、撮影目的物データの座標系を補正する。例えば、建造物の1階部
分の撮影目的物データの座標系の補正と同様の処理を、他の撮影目的物データ(例えば2
~3階部分の撮影目的物データ)に対しても行うことになる。このとき、作業者は、他の
撮影目的物データに基づき3次元表示された建造物(例えば2階部分や3階部分の建造物
)のそれぞれの向きを、前述の1階部分の建造物の向きに合わせるように設定することに
なる。この結果、全ての撮影目的物データの座標系が補正され、これにより、全ての撮影
目的物データの座標系が整合することになる。
【0051】
S105の処理の後、隣接する撮影目的物データの合成が行われる(S106)。例え
ば、記録制御部41は、図8Bに示すように、撮影目的物データから建造物の所定の面(
例えば北面)の壁面3の画像を抽出する。なお、図8Bに示すように、下から順に、1階
の下部、1階の上部、2階の下部、2階の上部及び3階の撮影目的物データがあり、記録
制御部41は、それぞれの撮影目的物データの北面の画像を抽出する。そして、記録制御
部41は、抽出した画像の共通部分を重ね合わせることによって、図8Cに示すように、
建造物の北面の全体の画像を合成することができる。なお、記録制御部41は、建造物の
北面だけでなく、他の面においても同様に複数の撮影目的物データを合成することになる
。この結果、記録制御部41は、建造物の壁面全体の3次元データ(複数の撮影目的物デ
ータを合成したデータ)を生成することができる。なお、S105の処理において複数の
撮影目的物データの座標系が整合されているため、合成すべき画像の抽出や、抽出画像の
共通部分の探索が簡易になり、S106の合成処理のための演算が簡易になる。
【0052】
S106の処理の後、合成した壁面全体の3次元データに欠損が無いか否かの判断が行
われる(S107)。S107の判断は、作業者が行っても良いし、記録制御部41が行
っても良い。例えば、記録制御部41は、予め保存された立面図データ上の壁面3と、S
106で合成した撮影目的物データ上の壁面3とを照合し、立面図データ上の壁面3に対
する撮影目的物データ上の壁面3の割合が閾値未満の場合には、欠損があると判断する。
欠損がある場合には(S107で「ある」)、建造物の表面の撮影が再度行われる(S1
01)。例えば、壁面3の未撮影の部分がある場合には、その未撮影の部分を撮影するよ
うに、建造物の表面の撮影が再度行われ(S101)、その後、同様の処理(S101~
S106)が行われる。これにより、欠損した部分が補充され、壁面全体の3次元データ
を取得することができる。
【0053】
S107の処理で欠損が無いと判断された場合(S107で「無い」)、撮影目的物の
記録が行われる。例えば、記録制御部41は、S106で合成した撮影目的物データ(図
8C参照)を記憶装置41Bに記憶することになる。撮影目的物データ上の撮影目的物に
は、建造物の壁面3が含まれており、その壁面3には下地調整塗材を塗布した範囲が示さ
れている(撮影目的物データ上には、下地調整塗材を塗布した壁面3の画像が示されてい
る)。このため、このような撮影目的物データを記録することによって、下地調整塗材を
壁面3(下地)に塗布した位置や範囲を記録することができる。
【0054】
<補足説明>
図9は、比較例の説明図である。
【0055】
既に説明したように、比較例の記録方法では、撮影装置10と壁面3との間にブレース
5D(図2参照)のような設置物5があるため、設置物5が壁面3の一部を遮蔽してしま
い、壁面3の一部の状態を記録できないおそれがある。また、比較例の記録方法では、前
述の除去処理(S103)で障害物6(例えばブレース5D)のデータを完全に除去でき
ないおそれがある。以下、この点について説明する。
【0056】
図10は、撮影装置10の3次元スキャナー12とカメラ13の配置の説明図である。
図11Aは、比較例の撮影データの説明図である。図11Bは、比較例の撮影データに除
去処理を施した目的物データの説明図である。なお、図11Aの撮影データには、壁面3
のデータだけでなく、ブレース5D(及び保護ネット)のデータが障害物データとして含
まれている。
【0057】
図10に示すように、3次元スキャナー12とカメラ13との間には間隔があいている
。このため、3次元スキャナー12とカメラ13との間で視差が生じる(3次元スキャナ
ー12と対象点とを結ぶ線と、カメラ13と対象点とを結ぶ線との間で角度差が生じる)
。3次元スキャナー12とカメラ13との間の寸法は既知であるため、撮影装置10の撮
影制御部11は、3次元スキャナー12とカメラ13との間の視差の影響を軽減するよう
に対象点までの角度差を補正した上で、点群データの各点(対象点)に対応する色情報を
求め、点データに色情報を付加している。但し、図9に示すように、撮影装置10と壁面
3との距離L1と、撮影装置10と障害物6(例えばブレース5D)との距離L2との差
が大きい場合には、対象点までの角度差を補正した上で点群データの各点(対象点)に対
応する色情報を求めても、3次元スキャナー12とカメラ13との間の視差の影響を受け
ることがある。この結果、図11A及び図11Bに示すように、壁面3上の点データに対
応する色情報として、障害物6(ここではブレース5D)の色情報が付加されるおそれが
ある。
【0058】
これに対し、本実施形態では、図1に示すように、撮影装置10は、壁面3と設置物5
との間の空間に配置される(配置ステップ)。このように撮影装置10を配置させた場合
には、仮に図7Aに示すように壁面3を遮蔽する障害物6が撮影されても、撮影装置10
と壁面3との距離と、撮影装置10と障害物6との距離との差が小さくなり、3次元スキ
ャナー12とカメラ13との間の視差の影響を受けにくくなるため、壁面3上の点データ
に、障害物6の色情報が付加されてしまうことを抑制できる。このように、壁面3と設置
物5との間に撮影装置10を配置することには、点データに付加する色情報の精度を高め
る効果がある。また、図10のように3次元スキャナー12とカメラ13との間に間隔が
あいている場合に、壁面3と設置物5との間に撮影装置10を配置することが特に有効と
なる。
【0059】
<小括>
上記の建造物は、図1に示すように、壁面3(建造物の表面の一例)から離間して配置
された設置物5を備えている。そして、上記の記録方法では、設置物5を避けて撮影装置
10(撮影手段の一例)を壁面3と設置物5との間に配置する配置ステップと、壁面3と
設置物5との間から撮影装置10により壁面3を撮影する撮影ステップと、撮影ステップ
で得られた壁面3の撮影データを記録する記録ステップとを有する。このような記録方法
によれば、設置物5によって壁面3の一部が遮蔽されることを抑制できるため、設置物5
の影響を避けて、建造物の表面を記録することができる。
【0060】
上記の設置物5は、建造物を建造するための仮設物である。図1及び図2に示すように
、例えば縦柱5A、横桟5B、足場板5C、ブレース5Dなどの仮設物が設置された状況
下で壁面3の記録が行われるため、上記の記録方法は、仮設物が設置された状況下でも仮
設物(例えばブレース5D;図2参照)によって壁面3の一部が遮蔽されることを抑制で
きるため、特に有利である。但し、建造物の表面から離間して配置される設置物5は、仮
設物に限られるものではなく、他のものでも良い。
【0061】
図1及び図2に示すように、撮影装置10(撮影手段の一例)は、本体部21、支持部
22及び把持部23を有する支持部材20の端部に支持されている。そして、配置ステッ
プにおいて、足場板5C(仮設物の一例)の上に立ち把持部23を把持する作業者が、支
持部材20を用いて、ブレース5D(仮設物の一例)を避けて、壁面3(表面の一例)と
仮設物との間に撮影装置10を配置させている。このように、支持部材20を用いること
によって、仮設物を避けて壁面3と設置物5との間に撮影装置10を配置させることが容
易になる。
また、支持部材20の本体部21は、伸縮可能であることが望ましい。これにより、撮
影装置10を壁面3と設置物5との間に配置させることが容易になる。
【0062】
撮影装置10と壁面3との間の障害物6が配置されることがあるため、図7Aに示すよ
うに、撮影ステップにおいて障害物6が撮影されることによって撮影データに障害物6の
障害物データが含まれることがある。このような場合、図7Bに示すように、記録ステッ
プにおいて、撮影データから障害物データを除去することによって、撮影目的物(ここで
は建造物の壁面3)の撮影目的物データを取得することが特に有効である。これにより、
障害物6によって壁面3の一部が遮蔽されていても、壁面3のデータを撮影目的物データ
として取得できる。
また、上記の撮影データは、3次元形状を示す点群データ(3次元データの一例)であ
り、上記の記録方法では、図7A及び図7Bに示すように、撮影データにおける障害物6
を含む範囲(図7Aの白枠参照)の点群データを除去する。これにより、障害物6によっ
て壁面3の一部が遮蔽されていても、壁面3のデータを撮影目的物データとして取得でき
る。但し、撮影データは、点群データに限られるものでは無い。また、撮影データは、3
次元データに限られるものでは無く、例えば2次元の画像データでも良い。仮に撮影デー
タが2次元の画像データであっても、撮影データから障害物データを除去することができ
れば、撮影目的物データを取得することが可能である。
【0063】
上記の記録方法では、図6に示すように、撮影ステップにおいて、撮影装置10(撮影
手段の一例)を移動させつつ壁面3(表面の一例)を連続撮影することによって、壁面3
の撮影データを取得している。これにより、広い範囲の撮影データを取得できる。
【0064】
図3に示すように、撮影装置10(撮影手段の一例)は慣性計測装置14(IMU)を
有している。そして、上記の記録方法では、撮影ステップにおいて、慣性計測装置14か
ら撮影装置10の移動データを取得し、移動データによって推定された撮影装置10の位
置に基づいて、連続撮影された壁面3の撮影結果をマッチングさせている。これにより、
精度の高い撮影データを取得することができる。
【0065】
図8B及び図8Cに示すように、上記の記録方法では、壁面3の1階部分の撮影目的物
データ(第1範囲に対応する第1撮影データに相当)と、2階部分の撮影目的物データ(
第1範囲と隣接する第2範囲に対応する第2撮影データに相当)とを取得し、隣接する撮
影目的物データの合成が行われる(S106参照)。これにより、更に広い範囲の撮影デ
ータを取得することが可能になる。なお、撮影目的物データを合成する代わりに、障害物
の除去処理を施していない撮影データを合成しても良い。また、上下に隣接する撮影デー
タ(撮影目的物データを含む)を合成する代わりに、水平方向に隣接する撮影データを合
成しても良い。
なお、上記の記録方法では撮影目的物データ(撮影データの一例)の座標系の整合が行
われた後(S105参照)、隣接する撮影目的物データの合成(S106)が行われる。
これにより、S106の合成処理のための演算を簡易にできる。但し、前述のS105の
座標系の整合を行わずに、S106の合成処理が行われても良い。
【0066】
上記の撮影データは、建造物の表面の色情報を示すデータである。このため、建造物の
表面に塗布した下地調整塗材の記録を行うことが可能になる。また、上記の撮影データは
、建造物の表面の3次元形状と色情報を示すデータである。これにより、下地調整塗材を
塗布した表面の3次元形状と色情報の両方の記録が可能になる。なお、撮影データは、色
付き点群データのような色付き3次元データに限られるものではない。例えば、撮影デー
タが2次元の画像データであっても、撮影データに建造物の表面の色情報を示すデータが
含まれるため、建造物の表面に塗布した下地調整塗材の記録を行うことが可能である。
【0067】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定し
て解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良さ
れ得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0068】
3 壁面(建造物の表面)、5 設置物(仮設物)、
5A 縦柱、5B 横桟、
5C 足場板、5D ブレース、
6 障害物、
10 撮影装置(撮影手段)、11 撮影制御部、
11A 演算処理装置、11B 記憶装置、
12 3次元スキャナー、13 カメラ、
14 慣性計測装置、15 通信装置、
20 支持部材、21 本体部、
22 支持部、23 把持部、
40 記録装置、41 記録制御部、
41A 演算処理装置、41B 記憶装置、
42 通信装置、43 表示装置、44 入力装置、
100 記録システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11