(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036195
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ウインチドラム
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B66D1/30 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143092
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】岩下 秀和
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼町 彰博
(57)【要約】
【課題】ロープ巻取時にロープに対する負荷が小さい場合又はロープの可撓性が低い場合であっても、ロープ巻取時に巻胴においてロープの巻き取り状態が乱れるのを抑制する。
【解決手段】ウインチドラム1のガイド領域5Aは、ロープ巻取時に最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なようにロープガイド53からウインチドラム1の軸方向に凹むような形状を有するガイド凹部62を含み、ガイド凹部62は、ロープ巻取時に特定層における最終列のロープ部分がガイド凹部62のうちで最初に隣接する部分である凹部始端と、最終列のロープ部分がガイド凹部62のうちで最後に隣接する部分である凹部終端と、を有し、凹部始端は、ロープガイド53の頂部よりもロープガイド53のガイド始端に近い位置にあり、凹部終端は、ロープガイド53の頂部よりもロープガイド53のガイド終端に近い位置にある。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを巻き取る回転方向である巻取回転方向に回転軸の回りに回転可能なウインチドラムであって、
前記ロープの一部を構成する複数のロープ部分が前記回転軸の方向である軸方向に沿って複数列に並ぶとともに前記ウインチドラムの径方向に沿って複数層に並ぶように前記ロープを巻き取る巻胴と、
前記軸方向における前記巻胴の両端から前記径方向の外側にそれぞれ突出する第1フランジ及び第2フランジと、を備え、
前記第1フランジ及び前記第2フランジのそれぞれは、前記複数層のうちの少なくとも一つの層である特定層における最終列のロープ部分に対して前記特定層の一つ上の層である特定上層における第1列のロープ部分が交差するように前記第1列のロープ部分を案内するロープガイドを含む領域であるガイド領域を有し、前記第1フランジの前記ロープガイドは、前記第1フランジの内面から前記第2フランジに向かって突出するような形状を有し、前記第2フランジの前記ロープガイドは、前記第2フランジの内面から前記第1フランジに向かって突出するような形状を有し、
前記第1フランジ及び前記第2フランジのそれぞれの前記ロープガイドは、前記内面との境界に位置するガイド始端であって前記ロープが前記ウインチドラムに巻き取られるロープ巻取時に前記第1列のロープ部分が前記ロープガイドのうちで最初に隣接する部分であるガイド始端と、前記内面との境界に位置するガイド終端であって前記ロープ巻取時に前記第1列のロープ部分が前記ロープガイドのうちで最後に隣接する部分であるガイド終端と、前記ガイド始端と前記ガイド終端との間に位置する頂部であって前記ロープガイドにおける突出方向の先端部である頂部と、を有し、
前記ガイド領域は、前記特定層における前記最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部であって前記ロープ巻取時に前記最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように前記ロープガイドから前記軸方向に凹むような形状を有するガイド凹部をさらに含み、
前記ガイド凹部は、前記ロープ巻取時に前記特定層における前記最終列のロープ部分が前記ガイド凹部のうちで最初に隣接する部分である凹部始端と、前記最終列のロープ部分が前記ガイド凹部のうちで最後に隣接する部分である凹部終端と、を有し、前記凹部始端は、前記ロープガイドの前記頂部よりも前記ロープガイドの前記ガイド始端に近い位置にあり、前記凹部終端は、前記ロープガイドの前記頂部よりも前記ロープガイドの前記ガイド終端に近い位置にある、ウインチドラム。
【請求項2】
請求項1に記載のウインチドラムであって、
前記凹部始端における前記ガイド凹部の前記径方向の寸法は、前記凹部終端における前記ガイド凹部の前記径方向の寸法よりも大きい、ウインチドラム。
【請求項3】
請求項2に記載のウインチドラムであって、
前記凹部始端における前記ガイド凹部の前記径方向の外側の端である始端側外端は、前記凹部終端における前記ガイド凹部の前記径方向の外側の端である終端側外端よりも前記径方向の外側に位置している、ウインチドラム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のウインチドラムであって、
前記ロープガイドの前記頂部は、直線状に延びる形状を有し、
前記頂部を前記巻胴に向けて延長した仮想線である頂部仮想線と前記巻胴との交点を頂部内端と定義する場合において、前記頂部仮想線は、前記回転軸と前記頂部内端とを通る直線である基準線に対して、前記巻取回転方向とは反対側に傾くような姿勢で形成されている、ウインチドラム。
【請求項5】
請求項4に記載のウインチドラムであって、
前記ロープガイドは、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、前記頂部と前記ガイド終端との周方向の距離が大きくなるような形状を有する、ウインチドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クレーン等に使用されるロープ巻き取り用のウインチドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3のそれぞれは、クレーン等に使用されるウインチドラムを開示している。このウインチドラムは、回転軸の回りに回転してロープを巻き取るための装置である。当該ウインチドラムは、巻胴と、一対のフランジと、を備える。前記巻胴は、ロープの一部を構成する複数のロープ部分が前記回転軸の方向である軸方向に複数列に並ぶとともに前記ウインチドラムの径方向に複数層に並ぶように前記ロープが配置される部分である。前記一対のフランジは、前記軸方向における前記巻胴の両端から前記径方向の外側にそれぞれ突出している。一対のフランジのそれぞれは、当該フランジの内面から反対側のフランジに向かって突出するロープガイドを備える。ロープガイドは、ロープキックと称されることがある。ロープガイドは、ロープがウインチドラムに巻き取られるロープ巻取時に、下層における最終列のロープ部分に対してその一つ上の層である上層における第1列のロープ部分が交差するようにこの第1列のロープ部分を案内するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-23995号公報
【特許文献2】特開2019-123585号公報
【特許文献3】特開2015-209283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばクレーンにおいて、ロープの先端に取り付けられたフックに支持される吊り荷の重量が小さい場合や、フックに吊り荷が取り付けられていない場合、などのように、ウインチドラムから繰り出されているロープに対する負荷が小さい場合には、ウインチドラムにおいて次のような問題が生じることがある。すなわち、前記ロープ巻取時においてロープに対する負荷が小さい場合、ロープガイドが形成された領域の近傍において、前記下層における最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジとの間の隙間が理想的な寸法よりも小さくなることがある。言い換えると、前記最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジとの前記軸方向における距離が理想的な寸法よりも小さくなることがある。この場合、ロープガイドが形成された領域の近傍において、前記下層における最終列のロープ部分が前記隙間に入らないことがある。このような事象が発生した場合、前記上層における第1列のロープ部分が前記下層における最終列のロープ部分に対して適正に配置されず、その結果、巻胴においてロープの巻き取り状態が乱れることになり、巻胴にロープを整然と巻き取ることができない。また、ロープの可撓性が低い場合にも、上記と同様の課題が生じやすい。
【0005】
本開示は、ロープ巻取時にロープに対する負荷が小さい場合又はロープの可撓性が低い場合であっても、ロープ巻取時に巻胴においてロープの巻き取り状態が乱れるのを抑制することができるウインチドラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、ロープを巻き取る回転方向である巻取回転方向に回転軸の回りに回転可能なウインチドラムであって、前記ロープの一部を構成する複数のロープ部分が前記回転軸の方向である軸方向に沿って複数列に並ぶとともに前記ウインチドラムの径方向に沿って複数層に並ぶように前記ロープを巻き取る巻胴と、前記軸方向における前記巻胴の両端から前記径方向の外側にそれぞれ突出する第1フランジ及び第2フランジと、を備え、前記第1フランジ及び前記第2フランジのそれぞれは、前記複数層のうちの少なくとも一つの層である特定層における最終列のロープ部分に対して前記特定層の一つ上の層である特定上層における第1列のロープ部分が交差するように前記第1列のロープ部分を案内するロープガイドを含む領域であるガイド領域を有し、前記第1フランジの前記ロープガイドは、前記第1フランジの内面から前記第2フランジに向かって突出するような形状を有し、前記第2フランジの前記ロープガイドは、前記第2フランジの内面から前記第1フランジに向かって突出するような形状を有し、前記第1フランジ及び前記第2フランジのそれぞれの前記ロープガイドは、前記内面との境界に位置するガイド始端であって前記ロープが前記ウインチドラムに巻き取られるロープ巻取時に前記第1列のロープ部分が前記ロープガイドのうちで最初に隣接する部分であるガイド始端と、前記内面との境界に位置するガイド終端であって前記ロープ巻取時に前記第1列のロープ部分が前記ロープガイドのうちで最後に隣接する部分であるガイド終端と、前記ガイド始端と前記ガイド終端との間に位置する頂部であって前記ロープガイドにおける突出方向の先端部である頂部と、を有し、前記ガイド領域は、前記特定層における前記最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部であって前記ロープ巻取時に前記最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように前記ロープガイドから前記軸方向に凹むような形状を有するガイド凹部をさらに含み、前記ガイド凹部は、前記ロープ巻取時に前記特定層における前記最終列のロープ部分が前記ガイド凹部のうちで最初に隣接する部分である凹部始端と、前記最終列のロープ部分が前記ガイド凹部のうちで最後に隣接する部分である凹部終端と、を有し、前記凹部始端は、前記ロープガイドの前記頂部よりも前記ロープガイドの前記ガイド始端に近い位置にあり、前記凹部終端は、前記ロープガイドの前記頂部よりも前記ロープガイドの前記ガイド終端に近い位置にある。
【0007】
このウインチドラムでは、ガイド凹部の凹部始端がロープガイドの頂部よりもガイド始端に近い位置にあり、凹部終端がロープガイドの頂部よりもロープガイドのガイド終端に近い位置にある。従って、このガイド凹部は、ロープ巻取時において特定層における最終列のロープ部分がガイド領域に到達した比較的初期の段階から最終列のロープ部分の一部を収容することができ、しかも、ロープガイドの頂部よりもガイド終端に近い位置にある凹部終端に至る段階まで最終列のロープ部分の一部が収容された状態を継続して頂部を迂回することができる。このことは、ロープ巻取時にロープに対する負荷が小さい場合又はロープの可撓性が低い場合であっても、特定層における最終列のロープ部分が当該最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジとの間の隙間に入らないという事象が生じることが抑制される。これにより、ロープ巻取時に巻胴においてロープの巻き取り状態が乱れることが抑制される。
【0008】
前記凹部始端における前記ガイド凹部の前記径方向の寸法は、前記凹部終端における前記ガイド凹部の前記径方向の寸法よりも大きいことが好ましい。ロープ巻取時にロープに対する負荷が小さい場合又はロープの可撓性が低い場合には、特定層における最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジとの前記軸方向における距離が理想的な寸法よりも小さくなるだけでなく、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向にずれることがある。このような事象は、ロープ巻取時において特定層における最終列のロープ部分がガイド領域に到達した比較的初期の段階において特に生じやすい。本構成では、凹部始端におけるガイド凹部の前記径方向の寸法が凹部終端におけるガイド凹部の前記径方向の寸法に対して相対的に大きく設定されているので、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向にずれた場合であっても、最終列のロープ部分の一部が凹部始端の部位からガイド凹部に入りやすくなる。
【0009】
前記凹部始端における前記ガイド凹部の前記径方向の外側の端である始端側外端は、前記凹部終端における前記ガイド凹部の前記径方向の外側の端である終端側外端よりも前記径方向の外側に位置していることが好ましい。上述したような最終列のロープ部分の前記径方向の位置の位置ずれは、特に前記径方向の外側に生じやすい。本構成では、凹部始端におけるガイド凹部の前記径方向の寸法が凹部終端におけるガイド凹部の前記径方向の寸法よりも大きく、かつ、凹部始端の始端側外端が凹部終端の終端側外端よりも前記径方向の外側に位置しているので、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向の外側にずれた場合であっても、最終列のロープ部分の一部が凹部始端の部位からガイド凹部にさらに入りやすくなる。
【0010】
前記ロープガイドの前記頂部は、直線状に延びる形状を有し、前記頂部を前記巻胴に向けて延長した仮想線である頂部仮想線と前記巻胴との交点を頂部内端と定義する場合において、前記頂部仮想線は、前記回転軸と前記頂部内端とを通る直線である基準線に対して、前記巻取回転方向とは反対側に傾くような姿勢で形成されていることが好ましい。この構成では、特定上層の第1列のロープ部分がロープガイドの頂部に対向する位置を、巻取回転方向の反対側にずらすことができる。これにより、ロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープを整然と巻き取ることができる。
【0011】
前記ロープガイドは、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、前記頂部と前記ガイド終端との周方向の距離が大きくなるような形状を有することが好ましい。この構成では、頂部と前記ガイド終端との周方向の距離は、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、上の層になればなるほど、基準線から巻取回転方向の反対側によりずれた位置において、ロープガイドの厚みを持たせることができる。このように付与された厚みによって特定上層の第1列のロープ部分が特定層の最終列のロープ部分をより乗り越えやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ロープ巻取時にロープに対する負荷が小さい場合又はロープの可撓性が低い場合であっても、ロープ巻取時に巻胴においてロープの巻き取り状態が乱れるのを抑制することができるウインチドラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係るウインチドラムを備えるクレーンを示す側面図である。
【
図2】前記実施形態に係るウインチドラムを示す斜視図である。
【
図3】参考例に係るウインチドラムを示す平面図である。
【
図5】
図4におけるA-A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図である。
【
図6】
図3の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図である。
【
図7】
図3の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図であり、適正な巻取状態を示している。
【
図8】
図3の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。
【
図9】
図3の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図であり、不適正な巻取状態を示している。
【
図10】本開示の実施形態に係るウインチドラムを示す平面図である。
【
図11】前記実施形態に係るウインチドラムの巻胴の外周面に設けられたロープ溝の配置を説明するためのウインチドラムの展開図である。
【
図12】
図10のXII-XIIにおけるウインチドラムの断面図である。
【
図13】
図10のXIII-XIII線におけるウインチドラムの断面図である。
【
図14】前記実施形態に係るウインチドラムのフランジにおけるガイド領域の特徴を説明するための図である。
【
図15】
図12のXV-XV線におけるウインチドラムの断面図である。
【
図16】
図13のXVI-XVI線におけるウインチドラムの断面図である。
【
図17】
図10の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図である。
【
図18】前記実施形態に係るウインチドラムを示す平面図である。
【
図19】前記実施形態の変形例に係るウインチドラムにおけるフランジの一部を拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係るウインチドラム1を備えるクレーン100の概略を示す側面図である。
図1に示すように、クレーン100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に配置された上部旋回体102と、起伏部材と、ウインチ装置107と、を備える。
【0016】
上部旋回体102は、下部走行体101上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム103と、旋回フレーム103の前部に支持されたキャビンと、旋回フレーム103の後部に支持されたカウンタウエイトと、を備える。前記起伏部材は、旋回フレーム103の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム104を含む。前記起伏部材は、ブーム104の先端部に取り付けられるジブをさらに含んでいてもよい。
【0017】
ウインチ装置107は、フック105に繋がるロープR(ワイヤロープ)の巻き取り又は繰り出しを行うことにより、フック105に吊作業のための昇降動作を行わせる装置である。ウインチ装置107は、ウインチドラム1と、油圧モータ、減速機などの図略の駆動源とを備えている。ウインチ装置107の配置位置は、例えば、旋回フレーム103におけるブーム104の取り付け部位の後方である。ウインチ装置107は、ブーム104に取り付けられていてもよい。ロープRの一端は、ウインチドラム1に固定されている。
【0018】
図2は、本開示の実施形態に係るウインチドラム1を示す斜視図である。
図2に示すように、ウインチドラム1は、ロープRを巻き取る回転方向である巻取回転方向D1及びロープRを繰り出す回転方向である繰出回転方向D2に回転軸K回りに回転可能なように構成される。繰出回転方向D2は、巻取回転方向D1の反対の方向である。ウインチドラム1は、ロープRが複数層に巻き取られる巻胴2と、一対のフランジ3,3と、を備える。
【0019】
巻胴2は、例えば円筒形状又は円柱形状を有する部分であり、巻胴2の外周面にロープRが複数層に巻き取られる。一対のフランジ3,3は、前記軸方向における巻胴2の両端から前記径方向の外側にそれぞれ突出する第1フランジ3A及び第2フランジ3Bである。ウインチドラム1は、ロープRの巻き取り又は繰り出しのために、前記駆動源によって駆動されて回転軸Kの回りに回転する。ウインチドラム1は、例えば、上部旋回体102の幅方向と回転軸Kとが一致するように、旋回フレーム103に支持されている。
【0020】
ロープRは、巻胴2から引き出され、ブーム104の先端部に取り付けられたシーブを経由し、ブーム104の先端部から下方に延び、フック105を支持している。フック105には、吊り荷106が取り付けられる。ウインチドラム1は、回転軸K回りに巻取回転方向D1に回転することにより、ロープRを巻胴2に巻き取り、それによってフック105を上昇させる。また、ウインチドラム1は、回転軸K回りに繰出回転方向D2に回転することにより、ロープRを繰り出し、それによってフック105を降下させる。
【0021】
以下、本開示の実施形態に係るウインチドラム1について詳細に説明するが、それに先だって、参考例に係るウインチドラム及びその問題点について説明する。
図3~
図9は、参考例に係るウインチドラムを示す図である。
【0022】
参考例に係るウインチドラムは、
図3に示すように、ロープRが多層に巻き取られる巻胴202と、前記軸方向における巻胴202の両端から径方向の外側にそれぞれ突出する一対のフランジ203(第1フランジ203A及び第2フランジ203B)と、を備える。このウインチドラムでは、巻胴202の外周面にロープ溝204が設けられている。
【0023】
また、
図3、
図4及び
図5に示すように、一対のフランジ203のそれぞれは、ロープガイド205を有する。第1フランジ203Aのロープガイド205(第1ロープガイド205A)は、第1フランジ203Aの内面203Sから第2フランジ203Bに向かって突出するような形状を有し、第2フランジ203Bのロープガイド205(第2ロープガイド205B)は、第2フランジ203Bの内面203Sから第1フランジ203Aに向かって突出するような形状を有する。
図6は、
図3の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図であり、
図7は、
図3の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図であり、
図8は、
図3の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。
【0024】
図7に示すL1は、第1フランジ203Aの第1ロープガイド205Aと第2フランジ203Bの第2ロープガイド205Bの間の寸法(ガイド間寸法)である。寸法L1は、第1ロープガイド205Aの頂部250及び第2ロープガイド205Bの頂部250が存在する部分におけるガイド間寸法を示している。第1フランジ203Aの第1ロープガイド205Aと第2フランジ203Bの第2ロープガイド205Bは、互いに回転軸Kの前記軸方向に対向する位置に形成されている。このガイド間寸法L1は、各層のロープ部分の列数にロープ直径を乗じて求められる寸法又はこの寸法に近い値に設定されている。 従って、ロープRは、ロープガイド205の頂部250が存在する部分では、
図7に示すように上層のロープ部分と下層のロープ部分が上下方向に重なった状態となる。その一方で、
図6及び
図8に示すように、ロープガイド205以外の部分では隣り合う2つの下層ロープ部分の谷間に上層ロープ部分が位置する状態となる。
【0025】
このようなウインチドラムでは、まず、ロープRのうち、第1層のロープ部分R1~R5がロープ溝204に入り込むことによって整然と巻き取られる。そして、第2層の第1列にあるロープ部分R6は、
図6に示すように第1層のロープ部分R5よりも第2フランジ203B寄りの位置から、
図7に示すようにロープガイド205Bに案内されてロープ部分R5の真上に移動し、さらに、ロープガイド205Bに案内されることにより、
図8に示すように第1層のロープ部分R4とロープ部分R5によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第2層のロープ部分R6~R10が整然と巻き取られる。そして、第3層の第1列にあるロープ部分R11は、ロープ部分R6の場合と同様に第1ロープガイド205Aに案内されて、
図6に示す位置から
図8に示す位置、すなわち、第2層のロープ部分R9とロープ部分R10によって形成される谷間の真上に移動する。
【0026】
本明細書及び図面において、ロープ部分R1~ロープ部分R12のそれぞれは、連続する1本のロープRの一部分を構成する。また、図面において、例えば
図6に示すように、第1層の第1列に位置するロープ部分R1を表す円の内側には数字「1」が記載され、その隣の第2列に位置するロープ部分R2を表す円の内側には数字「2」が記載されている。また、前記第1層は、例えば
図6に示すように、当該第1層の第1列に位置するロープ部分R1から最終列(
図6では第5列)に位置するロープ部分R5により構成される。すなわち、前記第1層は、ロープ部分R1,R2,R3,R4,R5により構成される。前記第2層は、当該第2層の第1列に位置するロープ部分R6から最終列(
図6では第5列)に位置するロープ部分R10により構成される。すなわち、前記第2層は、ロープ部分R6,R7,R8,R9,R10により構成される。第3層以上の層においても同様に、各層は、その第1列に位置するロープ部分から最終列に位置するロープ部分により構成される。上記のことは、後述する他の図においても同様である。
【0027】
クレーン100において、ウインチドラムから繰り出されているロープRに対する負荷が小さい場合又はロープRの可撓性が低い場合には、ウインチドラムにおいて以下のような問題が生じることがある。ロープRに対する負荷が小さい場合には、例えば、ロープRに取り付けられたフック105に支持される吊り荷106の重量が小さい場合及びフック105に吊り荷106が取り付けられていない場合を含む。
【0028】
すなわち、ロープRがウインチドラムに巻き取られるロープ巻取時において、ロープRに対する負荷が小さい場合又はロープRの可撓性が低い場合、
図9に示すように、ロープガイド205が形成された領域の近傍において、例えば第2層における最終列(第5列)の一つ前の第4列のロープ部分R9と第1フランジ203Aとの間の隙間G1が理想的な寸法よりも小さくなることがある。言い換えると、最終列の一つ前の第4列のロープ部分R9と第1フランジ203Aのロープガイド205との前記軸方向における距離G1が、例えば
図7に示す理想的な寸法G0よりも小さくなることがある。この場合、ロープガイド205が形成された領域又はその近傍において、第2層における最終列のロープ部分R10が前記隙間G1に入らないことがある。このような事象が発生した場合、第3層における第1列のロープ部分R11が第2層における最終列のロープ部分R10に対して適正に配置されず、その結果、巻胴202においてロープRの巻き取り状態が乱れることになり、巻胴202にロープRを整然と巻き取ることができない。
【0029】
本実施形態に係るウインチドラム1は、上記のような課題を解決するための構造を備える。以下、
図10~
図17を参照しながら、本実施形態に係るウインチドラム1の特徴について説明する。
【0030】
図10は、本実施形態に係るウインチドラム1を示す平面図である。
図11は、ウインチドラム1のロープ溝4の配置を説明するためのウインチドラム1の展開図である。
図12は、
図10のXII-XII線におけるウインチドラム1の断面図であり、
図13は、
図10におけるウインチドラムのXIII-XIII断面図である。
図14は、ウインチドラム1の第1フランジ3Aにおけるガイド領域の特徴を説明するための図である。
図14の上側の図は、
図12におけるA-A線の位置で矢印の方向に見たときの第1フランジ3Aを示す断面図であり、
図14の中央の図は、
図12におけるB-B線の位置で矢印の方向に見たときの第1フランジ3Aを示す断面図であり、
図14の下側の図は、
図12におけるC-C線の位置で矢印の方向に見たときの第1フランジ3Aを示す断面図である。
図15は、
図12のXV-XV線におけるウインチドラムの断面図であり、
図16は、
図13のXVI-XVI線におけるウインチドラムの断面図である。
図17は、
図10の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図である。
【0031】
図2、
図10及び
図17に示すように、本実施形態に係るウインチドラム1は、ロープRが多層に巻き取られる巻胴2と、回転軸Kの軸方向における巻胴2の両端から径方向の外側にそれぞれ突出する一対のフランジ3,3(第1フランジ3A及び第2フランジ3B)と、を備える。巻胴2は、ロープRの一部を構成する複数のロープ部分が回転軸Kの方向である軸方向に沿って複数列に並ぶとともにウインチドラム1の径方向に沿って複数層に並ぶようにロープRを巻き取る。巻胴2の幅方向Wは、ウインチドラム1の回転軸Kの軸方向に平行である。
【0032】
図10、
図11及び
図17に示すように、ウインチドラム1では、巻胴2の外周面20にロープ溝4が設けられている。ロープRのうち、第1層のロープ部分R1~R5は、ロープ溝4に入り込むことにより、整然と巻き取られる。
【0033】
図11に示すように、ロープ溝4は、第1平行部S1に形成されて幅方向Wに並ぶ複数の第1平行溝4S1と、第1交差部T1に形成されて幅方向Wに並ぶ複数の第1傾斜溝4T1と、第2平行部S2に形成されて幅方向Wに並ぶ複数の第2平行溝4S2と、第2交差部T2に形成されて幅方向Wに並ぶ複数の第2傾斜溝4T2とを含む。第1平行部S1、第1交差部T1、第2平行部S2及び第2交差部T2は、巻胴2の外周面20においてその周方向にこの順に並んでいる。
【0034】
第1平行部S1の複数の第1平行溝4S1及び第2平行部S2の複数の第2平行溝4S2は、巻胴2の外周面20の周方向に平行な溝である。第1交差部T1における複数の第1傾斜溝4T1及び第2交差部T2における複数の第2傾斜溝4T2は、巻胴2の外周面20の周方向に対して傾斜した溝である。これらの交差部T1,T2の複数の傾斜溝4T1,4T2は、同じ方向に傾斜している。
【0035】
具体的には、
図11の展開図において、上端の一点鎖線Zで示す部位と、下端の一点鎖線Zで示す部位とは、実際のウインチドラム1の巻胴2においては互いにつながっており、巻胴2の外周面20における同じ位置である。
図11における右上に矢印AL1で示す第1平行溝4S1は、第1平行部S1の第1列に位置する平行溝であり、
図11における右下に矢印AL2で示す第1平行溝4S1は、同様に、第1平行部S1の第1列に位置する平行溝である。また、
図11における右上に矢印AL6で示す第1平行溝4S1は、第1平行部S1の第2列に位置する平行溝であり、
図11における右下に矢印AL7で示す第1平行溝4S1は、同様に、第1平行部S1の第2列に位置する平行溝である。
【0036】
図11の展開図の下部に図示されている複数の第1平行溝4S1は、その上方に図示されている複数の第1傾斜溝4T1にそれぞれ接続されている。当該複数の第1傾斜溝4T1は、その上方に図示されている複数の第2平行溝4S2にそれぞれ接続されている。当該複数の第2平行溝4S2は、その上方に図示されている複数の第2傾斜溝4T2にそれぞれ接続されている。当該第2傾斜溝4T2は、その上方に図示されている複数の第1平行溝4S1にそれぞれ接続されている。このように複数の第1平行溝4S1、複数の第1傾斜溝4T1、複数の第2平行溝4S2、及び複数の第2傾斜溝4T2は、前記周方向に隣り合う溝が互いにつながることにより、連続する1本のロープ溝4を構成する。
【0037】
例えばロープRの巻始め位置が右上の矢印AL1で示す第1平行溝4S1に設定されている場合、ロープRは、第1平行溝4S1に入って矢印AL1に沿って巻き取られ、
図11における上端の一点鎖線Zで示す位置まで達すると、右下の矢印AL2で示す第1平行溝4S1に入って矢印AL2に沿って巻き取られる。その後、ロープRは、さらに、矢印AL3で示す第1交差部T1の第1傾斜溝4T1、矢印AL4で示す第2平行部S2の第2平行溝4S2、矢印AL5で示す第2交差部T2の第2傾斜溝4T2、及び矢印AL6,7で示す第1平行部S1の第1平行溝4S1の順に、これらの溝に入って巻き取られる。以下同様に、ロープRは、前記の連続する1本のロープ溝4に入って巻き取られる。
【0038】
より具体的に、第1交差部T1における複数の第1傾斜溝4T1は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、次のような機能を有する。すなわち、第1層のロープ部分R1~R5のそれぞれが対応する第1傾斜溝4T1に入り込むことにより、ロープ部分R1~R5のそれぞれの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけ第2フランジ3Bに近づく方向に移動させる。同様に、第2交差部T2における複数の第2傾斜溝4T2は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、次のような機能を有する。すなわち、第1層のロープ部分R1~R5のそれぞれが対応する第2傾斜溝4T2に入り込むことにより、ロープ部分R1~R5のそれぞれの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけ第2フランジ3Bに近づく方向に移動させる。したがって、ロープRが巻胴2を一周することにより、ロープRの位置は、1ピッチ(おおよそロープRの直径)だけ第2フランジ3Bに近づく方向に移動することになる。
【0039】
また、
図11に示すように、第2交差部T2における最終列4Eは、ロープRの巻き取り時にはロープ溝4の幅が1ピッチから1/2ピッチまで減少するように構成されている。したがって、第1層の最終列4Eのロープ溝4に入り込んでいたロープRは、巻き取りが進むにつれて最終列4Eのロープ溝4に入らなくなり、第2層の第1列に押し上げられる。
【0040】
上層のロープ部分(例えば
図10における第3層のロープ部分R12)は、
図10に示すように平面視したときに、
図11に示す第1平行部S1において、ロープ部分R12の下層にあって互いに隣り合う2つのロープ部分(例えば
図10における第2層のロープ部分R9とロープ部分R10)と平行であり、
図10に示すように、これらのロープ部分R9,R10によって形成される谷間の真上に位置する。また、上層のロープ部分(例えば
図10における第3層のロープ部分R12)は、
図10に示すように平面視したときに、
図11に示す第2平行部S2において、ロープ部分R12の下層にあって互いに隣り合う2つのロープ部分(例えば
図10における第2層のロープ部分R8とロープ部分R9)と平行であり、
図10に示すように、これらのロープ部分R8,9によって形成される谷間の真上に位置する。すなわち、第1平行部S1及び第2平行部S2においては、上層のロープ部分は、その直下の下層のロープ部分に対して1/2ピッチだけ幅方向Wにずれた位置にある。
【0041】
上層のロープ部分(例えば
図10における第3層のロープ部分R12)は、
図10に示すように平面視したときに、
図11に示す第1交差部T1において、下層のロープ部分(例えば
図10における第2層のロープ部分R9)と交差する。これにより、例えば第3層のロープ部分R12は、第2層のロープ部分R9とロープ部分R10によって形成される谷間の真上の位置から、第2層のロープ部分R8とロープ部分R9によって形成される谷間の真上の位置に移動する。同様に、上層のロープ部分は、平面視したときに、
図11に示す第2交差部T2において、下層のロープ部分と交差する。
【0042】
第1平行部S1は、前記周方向において、例えば巻胴2の外周面20のうちの1/3を占める領域に設けられている。第2平行部S2は、前記周方向において、例えば巻胴2の外周面20のうちの他の1/3を占める領域に設けられている。第1交差部T1は、前記周方向において、例えば巻胴2の外周面20のうちの1/6を占める領域に設けられている。第2交差部T2は、前記周方向において、例えば巻胴2の外周面20のうちの他の1/6を占める領域に設けられている。
【0043】
言い換えると、巻胴2の外周面20における回転軸Kに垂直な断面において、第1平行部S1の前記周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度であり、第2平行部S2の前記周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度である。また、第1交差部T1の前記周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度であり、第2交差部T2の前記周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度である。ただし、平行部S1,S2及び交差部T1,T2が設けられる範囲(割合)は、上記の具体例に限定されるものではない。
【0044】
図10~
図17に示すように、第1フランジ3Aは、ガイド領域5Aを有し、第2フランジ3Bは、ガイド領域5Bを有する。ガイド領域5A,5Bのそれぞれは、第1列のロープ部分が適正な位置に配置されるように第1列のロープ部分を案内するとともに、最終列のロープ部分が適正な位置に配置されるように最終列のロープ部分のための配置スペースを確保する。
【0045】
図12、
図15及び
図17に示すように、第1フランジ3Aのガイド領域5Aは、複数のロープガイド51,53,55,57と、複数のガイド凹部62,64,66と、を含む。
図13、
図16及び
図17に示すように、第2フランジ3Bのガイド領域5Bは、複数のロープガイド52,54,56と、複数のガイド凹部63,65と、を含む。第1フランジ3Aのガイド領域5Aと第2フランジ3Bのガイド領域5Bは、前記軸方向(幅方向W)に互いに対向する位置に設けられている。本実施形態では、
図11に示すように、ガイド領域5A,5Bは、第1交差部T1に対応する部位に形成されており、第2交差部T2、第1平行部S1及び第2平行部S2に対応する部位には形成されていない。
【0046】
図10、
図14、
図15及び
図17に示すように、第1フランジ3Aの複数のロープガイド51,53,55,57のそれぞれは、第1フランジ3Aの内面3Sから第2フランジ3Bに向かって突出するような形状を有する。
図10、
図16及び
図17に示すように、第2フランジ3Bのロープガイド52,54,56のそれぞれは、第2フランジ3Bの内面3Sから第1フランジ3Aに向かって突出するような形状を有する。複数のロープガイド52~57のそれぞれは、当該ロープガイドを前記径方向の外側から見たときに三角形状を有する。
【0047】
図12及び
図15に示すように、第1フランジ3Aにおけるガイド領域5Aの複数のロープガイド51,53,55,57は、前記複数層のうちの奇数層に対応する部位に形成されている。ロープガイド51は、第1層における第1列のロープ部分R1を案内するものである。ただし、本実施形態では、巻胴2の外周面20に溝4が形成されているので、ロープガイド51は省略可能である。従って、ガイド領域5Aの複数のロープガイドは、3層以上の奇数層のみに形成されていてもよい。ロープガイド53は、
図10及び
図17に示すように、第2層における最終列のロープ部分R10に対して第3層における第1列のロープ部分R11が交差するようにこの第3層における第1列のロープ部分R11を案内する。この場合、第2層は特定層の一例であり、第3層は特定上層の一例である。ロープガイド55は、第4層における最終列のロープ部分に対して第5層における第1列のロープ部分が交差するようにこの第5層における第1列のロープ部分を案内する。この場合、第4層は特定層の一例であり、第5層は特定上層の一例である。ロープガイド57は、第6層における最終列のロープ部分に対して第7層における第1列のロープ部分が交差するようにこの第7層における第1列のロープ部分を案内する。この場合、第6層は特定層の一例であり、第7層は特定上層の一例である。
【0048】
図12及び
図15に示すように、第1フランジ3Aにおけるガイド領域5Aの複数のガイド凹部62,64,66は、前記複数層のうちの偶数層に対応する部位に形成されている。
図15及び
図17に示すように、ガイド凹部62は、第2層における最終列のロープ部分R10に対応する部位にある凹部である。ガイド凹部62は、ロープ巻取時に最終列のロープ部分R10の一部が入ることが可能なように、ガイド凹部62に対して前記径方向の内側と外側に位置するロープガイド51,53から、回転軸Kの方向である前記軸方向に凹むような形状を有する。ガイド凹部64は、第4層における最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部である。ガイド凹部64は、ロープ巻取時に第4層における最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように、ガイド凹部64に対して前記径方向の内側と外側に位置するロープガイド53,55から、前記軸方向に凹むような形状を有する。ガイド凹部66は、第6層における最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部である。ガイド凹部66は、ロープ巻取時に第6層における最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように、ガイド凹部66に対して前記径方向の内側と外側に位置するロープガイド55,57から、前記軸方向に凹むような形状を有する。
【0049】
図13及び
図16に示すように、第2フランジ3Bにおけるガイド領域5Bの複数のロープガイド52,54,56は、前記複数層のうちの偶数層に対応する部位に形成されている。ロープガイド52は、
図10及び
図17に示すように、第1層における最終列のロープ部分R5に対して第2層における第1列のロープ部分R6が交差するようにこの第1列のロープ部分R6を案内する。この場合、第1層は特定層の一例であり、第2層は特定上層の一例である。ロープガイド54は、第3層における最終列のロープ部分に対して第4層における第1列のロープ部分が交差するようにこの第4層における第1列のロープ部分を案内する。この場合、第3層は特定層の一例であり、第4層は特定上層の一例である。ロープガイド56は、第5層における最終列のロープ部分に対して第6層における第1列のロープ部分が交差するようにこの第6層における第1列のロープ部分を案内する。この場合、第5層は特定層の一例であり、第6層は特定上層の一例である。
【0050】
図13及び
図16に示すように、第2フランジ3Bにおけるガイド領域5Bの複数のガイド凹部63,65は、前記複数層のうちの奇数層(本実施形態では、3層以上の奇数層)に対応する部位に形成されている。
図16及び
図17に示すように、ガイド凹部63は、第3層における最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部である。ガイド凹部63は、ロープ巻取時に第3層の最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように、ガイド凹部63に対して前記径方向の内側と外側に位置するロープガイド52,54から、回転軸Kの方向である前記軸方向に凹むような形状を有する。ガイド凹部65は、第5層における最終列のロープ部分に対応する部位にある凹部である。ガイド凹部65は、ロープ巻取時に第5層における最終列のロープ部分の一部が入ることが可能なように、ガイド凹部65に対して前記径方向の内側と外側に位置するロープガイド54,56から、前記軸方向に凹むような形状を有する。
【0051】
複数のロープガイド51~57のそれぞれは、ガイド始端153と、ガイド終端154と、頂部150と、を有する。ガイド始端153は、内面3Sとの境界に位置するロープガイドの始端であり、ロープRがウインチドラム1に巻き取られるロープ巻取時に第1列のロープ部分がロープガイドのうちで最初に隣接する部分である。ガイド終端154は、内面3Sとの境界に位置するロープガイドの終端であり、ロープ巻取時に第1列のロープ部分がロープガイドのうちで最後に隣接する部分である。頂部150は、ガイド始端153とガイド終端154との間に位置する稜線であり、ロープガイドにおける突出方向(前記軸方向)の先端部である。
【0052】
複数のガイド凹部62~66のそれぞれは、凹部始端163と、凹部終端164と、を有する。凹部始端163は、ロープ巻取時に最終列のロープ部分がガイド凹部のうちで最初に隣接する部分である。凹部終端164は、ロープ巻取時に最終列のロープ部分がガイド凹部のうちで最後に隣接する部分である。凹部始端163は、ロープガイドの頂部150よりもロープガイドのガイド始端153に近い位置にある。具体的には、例えば、
図13に示すように、ガイド凹部63の凹部始端163は、このガイド凹部63に対して前記径方向に隣接するロープガイド54の頂部150よりもロープガイド54のガイド始端153に近い位置にある。凹部終端164は、ロープガイドの頂部150よりもロープガイドのガイド終端154に近い位置にある。具体的には、例えば、
図13に示すように、ガイド凹部63の凹部終端164は、このガイド凹部63に対して前記径方向に隣接するロープガイド54の頂部150よりもロープガイド54のガイド終端154に近い位置にある。
【0053】
図12及び
図13に示す本実施形態では、複数のガイド凹部62~66のそれぞれの凹部始端163は、ロープガイドのガイド始端153に対応する位置にあり、複数のガイド凹部62~66のそれぞれの凹部終端164は、ロープガイドのガイド終端154に対応する位置にある。
【0054】
具体的には、第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、複数のガイド凹部62,64,66のそれぞれの凹部始端163は、複数のロープガイド51,53,55,57のガイド始端153を含む仮想の直線(後述する始端側直線C3)上又は当該直線に隣り合うような位置に配置されている。同様に、第2フランジ3Bのガイド領域5Bにおいて、複数のガイド凹部63,65のそれぞれの凹部始端163は、複数のロープガイド52,54,56のガイド始端153を含む仮想の直線(始端側直線C3)上又は当該直線に隣り合うような位置に配置されている。
【0055】
第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、複数のガイド凹部62,64,66のそれぞれの凹部終端164は、複数のロープガイド51,53,55,57のガイド終端154を含む仮想の直線(後述する終端側直線C2)上又は当該直線に隣り合うような位置に配置されている。同様に、第2フランジ3Bのガイド領域5Bにおいて、複数のガイド凹部63,65のそれぞれの凹部終端164は、複数のロープガイド52,54,56のガイド終端154,154,154を含む仮想の直線(終端側直線C2)上又は当該直線に隣り合うような位置に配置されている。
【0056】
さらに具体的には、第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、複数のガイド凹部62,64,66の底部(すなわち、
図15において複数のガイド凹部62,64,66の右端部)は、凹部始端163から凹部終端164まで第1フランジ3Aの内面3Sと同一平面上に位置している。同様に、第2フランジ3Bのガイド領域5Bにおいて、複数のガイド凹部63,65の底部(すなわち、
図16において複数のガイド凹部63,65の左端部)は、凹部始端163から凹部終端164まで第2フランジ3Bの内面3Sと同一平面上に位置している。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るウインチドラム1では、ガイド凹部62~66のそれぞれの凹部始端163がロープガイドの頂部150よりもガイド始端153に近い位置にあり、ガイド凹部62~66のそれぞれの凹部終端164がロープガイドの頂部150よりもロープガイドのガイド終端154に近い位置にある。具体的には、ガイド凹部62~66のそれぞれの凹部始端163が前記始端側直線C3上にあり、ガイド凹部62~66のそれぞれの凹部終端164が前記終端側直線C2上にある。従って、これらのガイド凹部は、ロープ巻取時において特定層における最終列のロープ部分がガイド領域(5A又は5B)に到達した時点から最終列のロープ部分の一部を収容することができ、しかも、ロープガイドの頂部150よりもガイド終端154に対応する位置にある凹部終端164に至る時点まで最終列のロープ部分の一部が収容された状態を継続して頂部150を迂回することができる。このことは、ロープ巻取時にロープRに対する負荷が小さい場合又はロープRの可撓性が低い場合であっても、特定層における最終列のロープ部分が当該最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジ(3A又は3B)との間の隙間に入らないという事象が生じることが抑制される。これにより、ロープ巻取時に巻胴2においてロープRの巻き取り状態が乱れることが抑制される。
【0058】
また、本実施形態に係るウインチドラム1では、
図12及び
図13に示すように、複数のロープガイド51~57のそれぞれの頂部150は、直線状に延びる形状を有する。第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、ロープガイド51,53,55,57の頂部150は、
図12に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。これらの頂部150を巻胴2に向けて延長した仮想線である頂部仮想線と巻胴2との交点を頂部内端150Eと定義する。この場合において、頂部仮想線は、回転軸Kと頂部内端150Eとを通る直線である基準線C1に対して、巻取回転方向D1とは反対側(すなわち繰出回転方向D2)に傾くような姿勢で形成されている。基準線C1は、ウインチドラム1の径方向に平行な直線である。本実施形態では、基準線C1は、巻胴2の前記周方向における第1交差部T1の中央又はその近傍を通る直線である。
【0059】
同様に、第2フランジ3Bのガイド領域5Bにおいて、ロープガイド52,54,56の頂部150は、
図13に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。これらの頂部150を巻胴2に向けて延長した仮想線である頂部仮想線と巻胴2との交点を頂部内端150Eと定義する。この場合において、頂部仮想線は、回転軸Kと頂部内端150Eとを通る直線である基準線C1に対して、巻取回転方向D1とは反対側(すなわち繰出回転方向D2)に傾くような姿勢で形成されている。
【0060】
また、本実施形態に係るウインチドラム1では、
図12及び
図13に示すように、複数のロープガイド51~57のそれぞれは、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、頂部150とガイド終端154との周方向の距離が大きくなるような形状を有する。また、複数のロープガイド51~57のそれぞれは、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、頂部150とガイド始端153との周方向の距離が大きくなるような形状を有する。
【0061】
以下、これらの特徴について具体的に説明する。
図12~
図14に示すように、複数のロープガイド51~57のそれぞれは、第1傾斜面151と、第2傾斜面152とを有する。第1傾斜面151及び第2傾斜面152は、ウインチドラム1の周方向に並んでいる。第1傾斜面151と第2傾斜面152とは、頂部150において互いの内側辺同士が接続されている。第1傾斜面151は、頂部150に対して巻取回転方向D1に位置する面であり、第2傾斜面152は、頂部150に対して巻取回転方向D1の反対側(繰出回転方向D2)に位置する面である。第1傾斜面151は、ロープ巻取時においてロープRが対向する面である。第2傾斜面152は、第1傾斜面151に対して巻取回転方向D1の反対側に隣接し、ロープ巻取時において第1傾斜面151よりも後にロープRが対向する面である。
【0062】
第1傾斜面151は、頂部150に対して巻取回転方向D1にずれた位置にある外側辺である前記ガイド始端153を有する。第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のガイド始端153は、
図12に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のガイド始端153は、
図13に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のガイド始端153は、第1フランジ3Aの内面3Sと同一平面上にある。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のガイド始端153は、第2フランジ3Bの内面3Sと同一平面上にある。第1フランジ3Aの内面3S及び第2フランジ3Bの内面3Sは、回転軸Kに垂直な平面と平行である。
【0063】
第1傾斜面151は、回転軸Kに垂直な平面に対して傾斜している。具体的には、第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のそれぞれの第1傾斜面151は、ガイド始端153から頂部150に向かうにつれて第2フランジ3Bに近づくように、第1フランジ3Aの内面3Sに対して傾斜している。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のそれぞれの第1傾斜面151は、ガイド始端153から頂部150に向かうにつれて第1フランジ3Aに近づくように、第2フランジ3Bの内面3Sに対して傾斜している。
【0064】
第2傾斜面152は、頂部150に対して巻取回転方向D1の反対側(繰出回転方向D2)にずれた位置にある外側辺である前記ガイド終端154を有する。第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のガイド終端154は、
図12に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のガイド終端154は、
図13に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置している。第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のガイド終端154は、第1フランジ3Aの内面3Sと同一平面上にある。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のガイド終端154は、第2フランジ3Bの内面3Sと同一平面上にある。
【0065】
第2傾斜面152は、回転軸Kに垂直な平面に対して傾斜している。具体的には、第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57のそれぞれの第2傾斜面152は、ガイド終端154から頂部150に向かうにつれて第2フランジ3Bに近づくように、第1フランジ3Aの内面3Sに対して傾斜している。第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56のそれぞれの第2傾斜面152は、ガイド終端154から頂部150に向かうにつれて第1フランジ3Aに近づくように、第2フランジ3Bの内面3Sに対して傾斜している。
【0066】
複数のロープガイド51,53,55,57の頂部150は、巻胴2の外周面20とフランジ3の外周30との間に形成されている。複数のロープガイド51,53,55,57のそれぞれの頂部150は、その径方向の内端から径方向の外端に向かうにつれて基準線C1から遠ざかるような形状を有する。
【0067】
図12に示すように第1フランジ3Aを回転軸Kの軸方向に見たときの基準線C1に対する頂部150の傾斜角度θ1は、特に限定されるものではないが、好ましくは10°~20°の範囲にあるのがよく、より好ましくは12°~18°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは14°~16°の範囲にあるのがよい。
【0068】
第1傾斜面151は、平面であってもよく、曲面であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。同様に、第2傾斜面152は、平面であってもよく、曲面であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0069】
本実施形態では、複数のロープガイド51~57のそれぞれのガイド始端153(第1傾斜面151のガイド始端153)は、基準線C1に対して巻取回転方向D1にずれた位置にあり、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、頂部150とガイド始端153との周方向の距離が大きくなるように形成されている。
【0070】
また、本実施形態では、複数のロープガイド51~57のそれぞれのガイド終端154(第2傾斜面152のガイド終端154)は、基準線C1に対して繰出回転方向D2にずれた位置にあり、当該ロープガイドを前記軸方向に見たときに、前記径方向の外側の部位ほど、頂部150とガイド終端154との周方向の距離が大きくなるように形成されている。
【0071】
図17に示すL1は、第1フランジ3Aにおける複数のロープガイド51,53,55,57の頂部150を含む仮想直線(頂部仮想線)と、第2フランジ3Bにおける複数のロープガイド52,54,56の頂部150を含む仮想直線(頂部仮想線)と、の間の寸法(ガイド間寸法)である。このガイド間寸法L1は、例えば、各層のロープ列数にロープ直径を乗じて求められる寸法又はこの寸法に近い値に設定されている。 従って、ロープRは、ロープガイドの頂部150が存在する部分では、
図17に示すように複数層のロープ部分同士が上下にほぼ重なった状態となる。一方、第1平行部S1及び第2平行部S2に対応する部分では下層のロープ部分により形成される谷間に上層のロープ部分が位置する状態となる。
【0072】
本実施形態では、上述した参考例と同様に、ロープRは、ウインチドラム1によって次のように巻き取られる。まず、
図17に示すように、ロープRのうち、第1層のロープ部分R1~R5がロープ溝4に入り込むことによって整然と巻き取られる。そして、第2層の第1列にあるロープ部分R6は、
図10に示すように第1層のロープ部分R5よりもフランジ3Bに近い位置から、ロープガイドに案内されて
図17に示すようにロープ部分R5の真上に移動し、さらに、ロープガイドに案内されて第1層のロープ部分R4(
図10において図示省略)とロープ部分R5によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第2層のロープ部分R6~R10が整然と巻き取られる。そして、第3層の第1列にあるロープ部分R11は、ロープ部分R6の場合と同様に、ロープガイドに案内されて、第2層のロープ部分R9とロープ部分R10によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第3層のロープ部分R11~R15が整然と巻き取られる。
【0073】
図18は、本実施形態に係るウインチドラム1を示す平面図である。
図18は、ロープRの減径に起因してロープRとフランジ3Aとの間に隙間G2が生じている状態を示す図である。ロープRの径が理想的な寸法である場合に比べて、
図18に示すようにロープRの径が小さくなると、例えば第2層のロープ部分R6~R10は、理想的な配置に比べて第2フランジ3Bに近づくように位置することになる。その結果、第2層の最終列(第5列)のロープ部分R10とフランジ3Aとの間の隙間G2が大きくなる。
【0074】
このため、仮に、
図4に示す参考例に係るウインチドラムのように、ロープガイド205の頂部250(稜線部)が、回転軸Kを通る直線であってウインチドラム1の径方向に平行な直線上にある場合、すなわち前記基準線C1上に位置する場合には、第3層の第1列のロープ部分R11は、ロープガイド205の頂部250に対向する位置においても、下層(第2層)のロープ部分R10の真上に位置することができず、フランジ203Aに近づくような位置にずれることになる。その結果、第3層の第1列のロープ部分R11と第2列のロープ部分R12との間には大きな隙間が形成されてしまう。
【0075】
一方、本実施形態では、
図12に示すように、複数のロープガイドのそれぞれの頂部150は、基準線C1に対して頂部150の内端から外端に向かうにつれて巻取回転方向D1の反対側(繰出回転方向D2)に遠ざかるような形状を有している。したがって、
図18に示すように、第2層の最終列のロープ部分R10と第1フランジ3Aとの間の隙間G2が大きくなっていたとしても、第3層の第1列のロープ部分R11は、ロープガイドの頂部150に対応する位置において、下層のロープ部分R10のほぼ真上に位置することができる。なぜなら、ウインチドラム1における第1交差部T1においては、下層のロープ部分R10は、第1傾斜面151のガイド始端153に対応する位置から第2傾斜面152のガイド終端154に向かうにつれて第1フランジ3Aの内面3Sに近づくように配置されるからである。
【0076】
したがって、本実施形態では、第3層の第1列のロープ部分R11は、ロープガイドによる案内効果を効果的に得ることができるため、
図18に示すように、第2層のロープ部分R10を幅方向Wの内側に乗り越えて第2層のロープ部分R9とロープ部分R10によって形成される谷間の真上に移動することができる。これにより、ロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、第3層の第1列のロープ部分R11と第2列のロープ部分R12との間に大きな隙間が形成されるといった問題が生じるのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態において
図12に示すように頂部150を基準線C1に対して傾斜させているもう一つの理由は、次のような問題を解消するためである。すなわち、ロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなることに起因して、巻胴2に巻き取られているロープRが形成する複数の層のうち、径方向外側に位置する層ほど、ロープRと第1フランジ3Aとの間の隙間G2が累積されて大きくなることがある。すなわち、ウインチドラム1においては、上層のロープ部分は、基本的に、下層における隣り合う2つのロープ部分の間の谷間をレールとして巻き取られる。このため、上層のロープ部分の配列状態は、下層のロープ部分の配列状態にある程度影響を受けることになる。したがって、ある層において最終列のロープ部分とフランジ3の内面3Sとの間に隙間G2が形成されるような配列状態が形成されると、その上層の配列は下層の配列状態の影響を受け、さらにその上層の配列は下の2層の配列状態の影響を受ける。このように、前記複数の層のうち、巻胴2の径方向外側に位置する層ほど、最終列のロープ部分とフランジ3の内面3Sとの隙間が累積される傾向にある。したがって、径方向外側に位置する層ほど、最終列のロープ部分とフランジ3の内面3Sとの隙間G2が大きくなる傾向にある。
【0078】
このような隙間G2の累積という問題を解決するために、本実施形態では、頂部150が、内端から外端に向かうにつれて基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対側に遠ざかるような形状を有するという構成を採用している。これにより、ロープガイドの頂部150が基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対側に離れる距離は、径方向外側に向かうにつれて大きくなる。したがって、前記複数層のうち径方向外側に位置する層ほど最終列のロープ部分とフランジ3の内面3Sとの隙間G2が累積されて大きくなる場合であっても、その累積される隙間G2の大きさに応じて上述の距離を大きくすることができる。これにより、隙間G2が大きくなる径方向外側に位置する層においても、第1列のロープ部分が下層の最終列のロープ部分を幅方向Wの内側に乗り越えて適正な位置に配置されるので、ロープRを整然と巻き取ることができる。その結果、本実施形態では、ロープRを整然と巻き取る効果をさらに高めることができる。
【0079】
図12及び
図13に示すように、本実施形態では、第2傾斜面152の外側辺であるガイド終端154が基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対側に離れる距離は、当該ガイド終端154の内端から外端に向かうにつれて大きくなる。したがって、ガイド終端154が基準線C1に平行である場合に比べて、本実施形態では、基準線C1から巻取回転方向D1の反対側により離れた位置においても、第2傾斜面152を設けることが可能になる。すなわち、第2実施形態では、基準線C1から巻取回転方向D1の反対側により離れた位置においても、前記回転軸Kの方向における厚みを有するロープガイドを設けることができる。このような厚みを有するロープガイドを設けることができる範囲は、ガイド終端154の内端から外端に向かうにつれて大きくなる。このような厚みが付与されることにより、次のような利点がある。
【0080】
すなわち、上述したように前記巻胴2に巻き取られているロープRが形成する複数の層のうち、径方向外側に位置する層ほど、最終列のロープ部分とフランジ3の内面3Sとの隙間G2が累積されて大きくなる傾向にある。このことに起因して、径方向外側に位置する層ほど、上層の第1列のロープ部分が下層の最終列のロープ部分を幅方向Wの内側に乗り越えにくくなる傾向にある。このような場合であっても、本実施形態では、径方向外側に位置する層ほど、基準線C1から巻取回転方向D1の反対側により離れた位置においても、ロープガイドのうち第2傾斜面152に対応する部分の厚みが付与されているので、その付与された厚みによって上層の第1列のロープ部分が下層の最終列のロープ部分を幅方向Wの内側に乗り越えることが容易になる。また、このように付与された厚みは、下層の最終列のロープ部分を乗り越えた上層の第1列のロープ部分が、当該下層のロープ部分を逆方向(幅方向Wの外側)に乗り越えて再びフランジ3の内面3S側の位置に戻るという動きを規制する役割も果たす。
【0081】
図12に示すように、本実施形態では、上述したように、複数のロープガイド51~57のガイド始端153は、
図12及び
図13に示すように前記軸方向に見たときに、同一直線上に位置しており、以下、この直線を始端側直線C3という。また、複数のロープガイド51~57のガイド終端154は、同一直線上に位置しており、以下、この直線を終端側直線C2という。
【0082】
第1傾斜面151の外側辺であるガイド始端153は、ガイド始端153と基準線C1との距離が径方向の外側に向かうにつれて大きくなるように、基準線C1に対して傾斜する形状を有する。
【0083】
図12に示すように、第1フランジ3Aを回転軸Kの軸方向に見たときの基準線C1に対する始端側直線C3の傾斜角度θ3は、特に限定されるものではないが、好ましくは25°~35°の範囲にあるのがよく、より好ましくは27.5°~32.5°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは29°~31°の範囲にあるのがよい。
【0084】
また、第1フランジ3Aを回転軸Kの軸方向に見たときの基準線C1に対する終端側直線C2の傾斜角度θ2は、特に限定されるものではないが、好ましくは25°~35°の範囲にあるのがよく、より好ましくは27.5°~32.5°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは29°~31°の範囲にあるのがよい。
【0085】
また、角度θ2と角度θ3の合計角度(θ2+θ3)は、好ましくは50°~70°の範囲にあるのがよく、より好ましくは55°~65°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは58°~62°の範囲にあるのがよい。
【0086】
図12に示すように、本実施形態では、第1傾斜面151の外側辺であるガイド始端153が基準線C1に対して巻取回転方向D1に離れる距離は、径方向の外側に向かうにつれて大きくなる。したがって、本実施形態では、ガイド始端153が基準線C1に平行である場合に比べて、フランジ(3A又は3B)の内面3Sに対する第1傾斜面151の傾斜角度θ4(図示省略)は、ガイド始端153の内端(径方向の内端)から外端(径方向の外端)に向かうにつれて小さくなる。クレーン100に用いられるロープRは通常ある程度の剛性があってしなやかさはあまりない。したがって、当該傾斜角度θ4を小さくできれば、上層の第1列のロープRは第1傾斜面151に沿って円滑に案内される。すなわち、前記傾斜角度θ4が小さい当該第1傾斜面151は、当該上層のロープRを少しずつ曲げながら、当該上層のロープRが下層の最終列のロープRを幅方向Wの内側に乗り越える(クロスオーバーする)ように、当該上層のロープRを案内することができる。したがって、本実施形態では、前記複数の層のうち径方向外側に位置する層ほど、ロープRを円滑にクロスオーバーさせることができる。このことは、径方向外側に位置する層ほど、最終列のロープ部分とフランジ(3A又は3B)の内面3Sとの隙間G2が累積されて大きくなる場合であっても、第1列のロープ部分が下層の最終列のロープ部分を幅方向Wの内側に乗り越えて適正な位置に配置されやすくなる。
【0087】
[変形例]
図19は、前記実施形態の変形例に係るウインチドラムにおけるフランジの一部を拡大した側面図である。なお、以下では、第1フランジ3Aを示す
図19を参照しながら変形例の特徴を説明するが、この変形例では、図示を省略する第2フランジ3Bも第1フランジ3Aと同様の特徴を備えている。
【0088】
図19に示す変形例では、複数のガイド凹部のそれぞれにおいて、凹部始端163における前記径方向の寸法は、凹部終端164における前記径方向の寸法よりも大きい。具体的には、例えば第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、ガイド凹部62の凹部始端163における前記径方向の寸法L12は、当該ガイド凹部62の凹部終端164における前記径方向の寸法L22よりも大きい。同様に、ガイド凹部64の凹部始端163における前記径方向の寸法L14は、当該ガイド凹部64の凹部終端164における前記径方向の寸法L24よりも大きく、ガイド凹部66の凹部始端163における前記径方向の寸法L16は、当該ガイド凹部66の凹部終端164における前記径方向の寸法L26よりも大きい。
【0089】
ロープ巻取時にロープRに対する負荷が小さい場合又はロープRの可撓性が低い場合には、特定層における最終列の一つ前の列のロープ部分とフランジ(3A又は3B)との前記軸方向における距離が理想的な寸法よりも小さくなるだけでなく、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向にずれることがある。このような事象は、ロープ巻取時において特定層における最終列のロープ部分がガイド領域に到達した比較的初期の段階において特に生じやすい。また、特定層における第1列のロープ部分がガイド領域の近傍においてその下層の最終列のロープ部分に対して交差するタイミングが理想的なタイミングよりも早まった場合にも、特定層における最終列のロープ部分がガイド領域に到達した際に上記のような径方向のずれが生じやすい。従って、この変形例では、凹部始端163におけるガイド凹部の前記径方向の寸法が凹部終端164におけるガイド凹部の前記径方向の寸法に対して相対的に大きく設定されているので、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向にずれた場合であっても、最終列のロープ部分の一部が凹部始端の部位からガイド凹部に入りやすくなる。
【0090】
また、この変形例では、複数のガイド凹部のそれぞれにおいて、凹部始端163における前記径方向の外側の端である始端側外端は、凹部終端164における前記径方向の外側の端である終端側外端よりも前記径方向の外側に位置している。具体的には、例えば第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、ガイド凹部62の凹部始端163における前記径方向の外側の端である始端側外端163Aは、ガイド凹部62の凹部終端164における前記径方向の外側の端である終端側外端164Aよりも前記径方向の外側に位置している。同様に、ガイド凹部64の凹部始端163における前記径方向の外側の端である始端側外端163Bは、ガイド凹部64の凹部終端164における前記径方向の外側の端である終端側外端164Bよりも前記径方向の外側に位置しており、ガイド凹部66の凹部始端163における前記径方向の外側の端である始端側外端163Cは、ガイド凹部66の凹部終端164における前記径方向の外側の端である終端側外端164Cよりも前記径方向の外側に位置している。
【0091】
上述したような最終列のロープ部分の前記径方向の位置の位置ずれは、特に前記径方向の外側に生じやすい。従って、この変形例では、凹部始端163におけるガイド凹部の前記径方向の寸法が凹部終端164におけるガイド凹部の前記径方向の寸法よりも大きく、かつ、凹部始端163の始端側外端が凹部終端164の終端側外端よりも前記径方向の外側に位置しているので、最終列のロープ部分の前記径方向の位置が理想的な位置よりも前記径方向の外側にずれた場合であっても、最終列のロープ部分の一部が凹部始端の部位からガイド凹部にさらに入りやすくなる。
【0092】
また、この変形例では、ロープガイドの頂部150に対応する部位におけるガイド凹部の前記径方向の寸法は、凹部終端164における前記径方向の寸法よりも大きい。これにより、ロープガイドの頂部150に対応する部位において、最終列のロープ部分の一部がガイド凹部に入りやすくなる。具体的には以下の通りである。
【0093】
図19に示すように、例えば第1フランジ3Aのガイド領域5Aにおいて、ガイド凹部62は、ガイド凹部62に対して前記径方向の外側に隣接するロープガイド53の頂部150の内端に対応する位置にある外端である中間部外端165Aを有する。頂部150の内端は、頂部150における前記径方向の内側に位置する端である。この中間部外端165Aを含む部位におけるガイド凹部62の前記径方向の寸法L32は、ガイド凹部62の凹部終端164における前記径方向の寸法L22よりも大きい。この変形例では、寸法L32は、ガイド凹部62の凹部始端163における前記径方向の寸法L12と同じであるが、寸法L12よりも大きくてもよく、寸法L12よりも小さくてもよい。なお、寸法L12、寸法L22及び寸法L32の関係は、上記の関係に限られない。例えば、寸法L12は、寸法L22及び寸法L32よりも大きくてもよく、この場合、寸法L22は、寸法L32と同じであってもよく、寸法L32より大きい又は小さくてもよい。
【0094】
同様に、ガイド凹部64は、ガイド凹部64に対して前記径方向の外側に隣接するロープガイド55の頂部150の内端に対応する位置にある外端である中間部外端165Bを有する。この中間部外端165Bを含む部位におけるガイド凹部64の前記径方向の寸法L34は、ガイド凹部64の凹部終端164における前記径方向の寸法L24よりも大きい。この変形例では、寸法L34は、ガイド凹部64の凹部始端163における前記径方向の寸法L14と同じであるが、寸法L14よりも大きくてもよく、寸法L14よりも小さくてもよい。なお、寸法L14、寸法L24及び寸法L34の関係は、上記の関係に限られない。例えば、寸法L14は、寸法L24及び寸法L34よりも大きくてもよく、この場合、寸法L24は、寸法L34と同じであってもよく、寸法L34より大きい又は小さくてもよい。
【0095】
ガイド凹部66は、ガイド凹部66に対して前記径方向の外側に隣接するロープガイド57の頂部150の内端に対応する位置にある外端である中間部外端165Cを有する。この中間部外端165Cを含む部位におけるガイド凹部66の前記径方向の寸法L36は、ガイド凹部66の凹部終端164における前記径方向の寸法L26よりも大きい。この変形例では、寸法L36は、ガイド凹部66の凹部始端163における前記径方向の寸法L16と同じであるが、寸法L16よりも大きくてもよく、寸法L16よりも小さくてもよい。なお、寸法L16、寸法L26及び寸法L36の関係は、上記の関係に限られない。例えば、寸法L16は、寸法L26及び寸法L36よりも大きくてもよく、この場合、寸法L26は、寸法L36と同じであってもよく、寸法L36より大きい又は小さくてもよい。
【0096】
ガイド凹部の凹部始端163における前記径方向の寸法は、そのガイド凹部よりも前記径方向の内側に位置するガイド凹部の凹部始端163における前記径方向の寸法よりも大きくてもよい。具体的には、寸法L16は、寸法L14よりも大きくてもよく、寸法L14は、寸法L12よりも大きくてもよい。
【0097】
前記中間部外端を含む部位におけるガイド凹部の前記径方向の寸法は、そのガイド凹部よりも前記径方向の内側に位置するガイド凹部における前記中間部外端を含む部位の前記径方向の寸法よりも大きくてもよい。具体的には、寸法L36は、寸法L34よりも大きくてもよく、寸法L34は、寸法L32よりも大きくてもよい。
【0098】
また、この変形例では、ウインチドラム1の回転軸Kとガイド凹部の前記中間部外端との距離は、回転軸Kとそのガイド凹部の始端側外端との距離と同じであり、回転軸Kとそのガイド凹部の終端側外端との距離よりも大きい。具体的には以下の通りである。
【0099】
回転軸Kとガイド凹部62の中間部外端165Aとの距離は、回転軸Kとガイド凹部62の始端側外端163Aとの距離と同じであり、回転軸Kとガイド凹部62の終端側外端164Aとの距離よりも大きい。ガイド凹部62において、始端側外端163Aと中間部外端165Aとは円弧状の曲線で滑らかにつながっており、中間部外端165Aと終端側外端164Aとはスプライン曲線で滑らかにつながっている。
【0100】
回転軸Kとガイド凹部64の中間部外端165Bとの距離は、回転軸Kとガイド凹部64の始端側外端163Bとの距離と同じであり、回転軸Kとガイド凹部64の終端側外端164Bとの距離よりも大きい。ガイド凹部64において、始端側外端163Bと中間部外端165Bとは円弧状の曲線で滑らかにつながっており、中間部外端165Bと終端側外端164Bとはスプライン曲線で滑らかにつながっている。
【0101】
回転軸Kとガイド凹部66の中間部外端165Cとの距離は、回転軸Kとガイド凹部66の始端側外端163Cとの距離と同じであり、回転軸Kとガイド凹部66の終端側外端164Cとの距離よりも大きい。ガイド凹部66において、始端側外端163Cと中間部外端165Cとは円弧状の曲線で滑らかにつながっており、中間部外端165Cと終端側外端164Cとはスプライン曲線で滑らかにつながっている。
【0102】
なお、ガイド凹部における始端側外端、中間部外端及び終端側外端の位置、並びに前記径方向の寸法は、上述した具体例に限られず、例えば次のように設定されていてもよい。
【0103】
すなわち、ガイド凹部において、前記中間部外端は、始端側外端及び終端側外端よりも前記径方向の外側に位置していてもよい。言い換えると、回転軸Kとガイド凹部の前記中間部外端との距離は、回転軸Kとガイド凹部の始端側外端との距離よりも大きく、かつ、回転軸Kとガイド凹部の終端側外端との距離よりも大きくてもよい。この場合、ガイド凹部において、始端側外端と中間部外端とはスプライン曲線で滑らかにつながり、中間部外端と終端側外端とはスプライン曲線で滑らかにつながる。なお、回転軸Kとガイド凹部の始端側外端との距離は、回転軸Kとガイド凹部の終端側外端との距離と同じであってもよく、回転軸Kとガイド凹部の終端側外端との距離よりも大きくてもよい。このような形態の場合、ガイド凹部のうちロープガイドの頂部150に対応する部位において、最終列のロープ部分の一部がガイド凹部に入りやすくなる。
【0104】
また、
図19に示すガイド凹部62において、寸法L32は、寸法L12及び寸法L22よりも大きくてもよく、ガイド凹部64において、寸法L34は、寸法L14及び寸法L24よりも大きくてもよく、ガイド凹部66において、寸法L36は、寸法L16及び寸法L26よりも大きくてもよい。このような形態の場合、ガイド凹部のうちロープガイドの頂部150に対応する部位において、最終列のロープ部分の一部がガイド凹部に入りやすくなる。なお、ガイド凹部62において、寸法L12は、寸法L22と同じであってもよく、寸法L22よりも大きくてもよい。同様に、ガイド凹部64において、寸法L14は、寸法L24と同じであってもよく、寸法L24よりも大きくてもよい。ガイド凹部66において、寸法L16は、寸法L26と同じであってもよく、寸法L26よりも大きくてもよい。
【0105】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような態様を包含する。
【0106】
ロープガイドのガイド始端153は、基準線C1に平行であってもよく、ロープガイドのガイド終端154は、基準線C1に平行であってもよい。
【0107】
ガイド凹部の凹部始端163は、必ずしもロープガイドのガイド始端153に対応する位置に配置されていなくてもよく、ガイド始端153に対して、巻取回転方向D1又は繰出回転方向D2にずれた位置に配置されていてもよい。
【0108】
ガイド凹部の凹部終端164は、必ずしもロープガイドのガイド終端154に対応する位置に配置されていなくてもよく、ガイド終端154に対して、巻取回転方向D1又は繰出回転方向D2にずれた位置に配置されていてもよい。
【0109】
複数のロープガイドのガイド始端153は、必ずしも同一直線上に配置されていなくてもよく、これらのガイド始端153の少なくとも一つが他のガイド始端153に対して巻取回転方向D1又は繰出回転方向D2にずれた位置に配置されていてもよい。同様に、複数のロープガイドのガイド終端154は、必ずしも同一直線上に配置されていなくてもよく、これらのガイド終端154の少なくとも一つが他のガイド終端154に対して巻取回転方向D1又は繰出回転方向D2にずれた位置に配置されていてもよい。また、複数のロープガイドの頂部150は、必ずしも同一直線上に配置されていなくてもよく、これらの頂部150の少なくとも一つが他の頂部150に対して巻取回転方向D1又は繰出回転方向D2にずれた位置に配置されていてもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、ガイド凹部の底部は、凹部始端163から凹部終端164までフランジ(3A又は3B)の内面3Sと同一平面上に位置しているが、このような形態に限られない。ガイド凹部の底部の少なくとも一部は、フランジ(3A又は3B)の内面3Sに対して前記軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0111】
図19の変形例では、上述したように、各ガイド凹部において、始端側外端と中間部外端とはスプライン曲線で滑らかにつながり、中間部外端と終端側外端とはスプライン曲線で滑らかにつながるが、
図12及び
図13に示す実施形態にも同様のことが適用可能である。具体的には、
図12及び
図13のそれぞれに示すフランジのガイド領域では、各ガイド凹部は、そのガイド凹部に対して前記径方向の外側に隣接するロープガイドの頂部150の内端に対応する位置にある外端である中間部外端と、そのガイド凹部の凹部始端163における前記径方向の外側の端である始端側外端と、そのガイド凹部の凹部終端164における前記径方向の外側の端である終端側外端と、を有する。そして、
図12及び
図13のそれぞれに示すフランジのガイド領域では、各ガイド凹部において、始端側外端と中間部外端とはスプライン曲線で滑らかにつながっていてもよく、中間部外端と終端側外端とはスプライン曲線で滑らかにつながっていてもよい。また、
図12、
図13及び
図19のそれぞれに示すフランジでは、始端側外端と中間部外端とをつなぐ曲線、及び中間部外端と終端側外端とをつなぐ曲線は、スプライン曲線に限られず、例えばベジェ曲線、ラグランジュ補間による曲線などの曲線であってもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 :ウインチドラム
2 :巻胴
3A :第1フランジ
3B :第2フランジ
3S :フランジの内面
5A :第1フランジのガイド領域
5B :第2フランジのガイド領域
51~57 :ロープガイド
62~66 :ガイド凹部
100 :クレーン
150 :ロープガイドの頂部
150E :頂部内端
153 :ガイド始端
154 :ガイド終端
163 :凹部始端
163A,163B,163C :始端側外端
164 :凹部終端
164A,164B,164C :終端側外端
C1 :基準線
C2 :終端側直線
C3 :始端側直線
D1 :巻取回転方向
D2 :繰出回転方向
K :回転軸
R :ロープ
R1~R12 :ロープ部分